JP4641225B2 - 歩行補助装置 - Google Patents

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Description

本発明は、利用者の脚に作用する荷重を軽減して歩行を補助する歩行補助装置に関する。
従来、この種の歩行補助装置として、利用者の左右の各足平に装着される接地部材を下端に連結した左右一対の脚リンクと、両脚リンクの上端に連結される荷重伝達部とを備え、利用者の体重の少なくとも一部を荷重伝達部を介して両脚リンクで支え、利用者の脚に作用する荷重を軽減して、利用者の歩行を補助するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。このもので荷重伝達部は、利用者の腰回りに装着される腰支持ベルトで構成され、腰支持ベルトの横方向両側に人の股関節に相当する第1関節部を介して左右の脚リンクを連結している。尚、各脚リンクは、上下方向中間に人の膝関節に相当する第2関節部を有する屈伸自在なリンクで構成されている。そして、第2関節部用の動力源を設け、動力源による第2関節部の回転駆動で利用者の体重の一部を支えるアシスト力を発生させている。
上記従来例のものでは、アシスト力を利用者の胴体に確実に伝達するために、腰支持ベルトを腰回りにきつく装着する必要があって、利用者が束縛感を受けやすく、更に、利用者の腰の両側に左右の脚リンクの第1関節部が張り出すため、歩行時の腕振りに際し第1関節部や第1関節部に連結される脚リンクの上部に手が当りやすく、使い勝手が悪くなる。
また、従来、利用者の回りを後側から横方向両側に亘って囲うフレームに、下端の車輪を有する4本の脚リンクを垂設すると共に、利用者が跨ぐようにして着座するサドル状の着座部材をフレームに取り付け、利用者により着座部材に加えられる力を検出して、この力が所定の目標値になるように車輪を駆動する歩行補助装置も知られている(例えば、特許文献2参照)。
このものでは、利用者の束縛感を軽減できるものの、装置が大型になって狭い場所では使用できず、また、歩行時の腕振りに際しフレームに手が当りやすく、使い勝手は良好にならない。
特開2003−220102号公報(0143〜0149、図1) 特許第3156367号公報(0023〜0028、図8)
本発明は、以上の点に鑑み、利用者の束縛感を軽減すると共に歩行時の自由な腕振りを可能にした、小型で使い勝手の良い歩行補助装置を提供することをその課題としている。
本発明は、下端に接地部材が連結された1つ以上の脚リンクと、脚リンクの上端に連結される荷重伝達部とを備え、利用者の体重の少なくとも一部を荷重伝達部を介して脚リンクで支えるようにした歩行補助装置に関し、上記課題を解決するために、第1の態様では、前記荷重伝達部は、利用者が跨ぐようにして着座する着座部材で構成され、前記脚リンクの上端を前記着座部材に連結する連結部が設けられ、この連結部は、前記着座部材に利用者が着座した状態で利用者の左右の大腿骨頭間の横方向幅内に位置するように配置されていることを特徴とし、また、第2の態様では、前記荷重伝達部は、利用者が跨ぐようにして着座する着座部材で構成され、この着座部材の下面に、前記脚リンクの上端を連結する連結部が設けられていることを特徴とする。
本発明によれば、脚リンクによる支持力を着座部材を介して利用者の股下から胴体に確実に伝達することができる。更に、利用者は着座部材を跨ぐようにしてこれに着座するだけで済み、利用者の束縛感が軽減される。そして、本発明の第1の態様によれば、脚リンクによる支持力が利用者の左右の大腿骨頭間において着座部材に作用することになるため、着座部材の安定性が確保される。また、本発明の第2の態様によれば、着座部材の下面に連結部が設けられるため、連結部及びこれに連結される脚リンクの上部は利用者の股下に位置することになり、歩行時の腕振りに際し連結部や脚リンクの上部に手が当たることはなく、自由な腕振りが可能になる。更に、利用者を囲うフレームを備える従来例のものと異なり装置が小型になって、狭い場所でも使用でき、上記した束縛感の軽減及び腕振りの自由さの確保と相俟って、使い勝手が著しく向上する。
尚、複数の車輪を有する小型の台車状の接地部材に立設される自立可能な単一の脚リンクを着座部材の下面の連結部に連結し、利用者の歩行に合わせて車輪を駆動するようにしても良い。然し、利用者の歩行を確実に補助するには、少なくとも左右一対の脚リンクを設け、左右の各脚リンクの下端に連結される接地部材が利用者の左右の各足平に装着されるようにし、歩行時に左右の脚リンクが利用者の左右の脚の前後方向の動きに追従して前後方向に揺動可能となるようにする。この場合、上記連結部が左右の各脚リンクの前後方向の揺動のみを許容するように構成されていると、利用者の左右の各脚を外転できなくなる。そこで、連結部が左右の各脚リンクの前後方向及び横方向の揺動を許容する自由度を持つように構成されることにより、利用者の各脚を外転させることが可能になり、脚の動きの自由度が増す。
然し、このように左右の各脚リンクの横方向の揺動を許容すると、以下の不具合を生ずる。即ち、片脚支持状態では、遊脚(足平が床面から離れている脚)側の脚リンクの重量により着座部材に支持脚(足平が床面に接地している脚)側の脚リンクの横方向の揺動支点を中心にした横転モーメントが作用し、着座部材がローリングする。かかる不具合を解消するため、着座部材の下面の連結部は、左右の脚リンクの一方の脚リンクの横方向の揺動支点と他方の脚リンクの横方向の揺動支点とが前後方向の同一軸線上に位置するように構成されていることが望ましい。これによれば、片脚支持状態において、遊脚側脚リンクの重量が着座部材に作用しても、この重量の作用箇所である遊脚側脚リンクの横方向の揺動支点は支持脚側脚リンクの横方向の揺動支点と同一軸線上に位置するから、着座部材に支持脚側脚リンクの横方向の揺動支点を中心にした横転モーメントは作用しない。従って、片脚支持状態での着座部材のローリングを防止できる。
ここで、各脚リンクの下端に、利用者の各足平の装着される接地部材が関節部を介して連結されている場合、各脚リンクによる支持力の作用線はこの関節部と上記連結部とを結ぶ線に合致する。そして、関節部と連結部との間の横方向距離が長くなると、支持力の横方向成分が大きくなり、接地部材及び着座部材に作用する横力が増加して、接地部材や着座部材が不安定になる。この場合、関節部を接地部材の横幅中央より横方向内方に位置させれば、関節部と連結部との間の横方向距離が短くなり、接地部材及び着座部材に作用する横力が小さくなって、安定性が確保される。
ところで、脚リンクを、接地部材と着座部材との間の距離を変化させるように動く中間の関節部を持つものに構成すれば、利用者の各脚の膝関節の屈伸による足平と股部との間の距離変化に追従できる。この場合、脚リンクの中間の関節部を伸び方向(接地部材と着座部材との間の距離を長くする方向)に付勢する付勢手段を設けて、利用者の体重を支持する力を発生させることも可能であるが、好ましくは、脚リンクの中間の関節部を駆動する駆動源を設けるべきである。これによれば、駆動源の制御により利用者の足平に作用する荷重に応じた支持力を発生させて、歩行を適切に補助できる。
また、このように駆動源を設ける場合、駆動源が脚リンクの中間の関節部に取付けられていると、着座部材の下面の連結部回りの脚リンクの慣性モーメントが大きくなり、歩行時に利用者の脚が脚リンクの慣性モーメントを受けて重く感じる。これに対し、駆動源を脚リンクの上記連結部の近傍部分に配置すれば、連結部回りの脚リンクの慣性モーメントを小さくすることができ、有利である。
また、着座部材は、前後方向中間に後部と前部に比し横幅を狭めたくびれ部を有し、前部が上方に湾曲していることが望ましい。この場合、利用者は左右の脚をくびれ部の横方向両側に位置させて着座部材に着座するが、これによれば、幅広の後部と前部とにより利用者に対する着座部材の前後方向の位置ずれを抑制でき、且つ、前部が上方に湾曲しているため、歩行時に前方に振り出される脚が前部に当りにくくなり、歩行時の脚の動きの自由度が確保される。更に、着座部材の幅広の後部において利用者に対し坐骨接触により体重免荷アシスト力を確実に伝達することができる。
また、着座部材の前部を、横方向中間部が切欠かれた二股形状に形成しておけば、股間部等が着座部材の前部に当らず、座り心地が良くなる。更に、前部の横方向両側部が横方向に撓み易くなるため、前方に振り出される脚が前部に当接しても、この当接力を前部の撓みで吸収し、脚の当接で着座部材がヨーイングすることを抑制できる。
以下、本発明の実施形態の歩行補助装置について説明する。歩行補助装置は、図1乃至図3に示す如く、利用者Pが跨ぐようにして着座する荷重伝達部たる着座部材1と、着座部材1の下側に配置される左右一対の脚リンク2L,2Rとを備えている。
各脚リンク2L,2Rは、着座部材1の下面に設けた連結部たる第1関節部3に連結される第1リンク部4と、第1リンク部4の下端に回転式の第2関節部5を介して連結される第2リンク部6とを備える屈伸自在なリンクで構成される。また、第2リンク部6の下端には、第3関節部7を介して、利用者の左右の各足平に装着される接地部材8が連結されている。各脚リンク2L,2Rには、更に、第2関節部5用の駆動源9が搭載されており、駆動源9による第2関節部5の回転駆動で各脚リンク2L,2Rに接地部材8と着座部材1との間の距離を長くする伸び方向の力を加え、利用者の体重の少なくとも一部を支持する支持力(以下、体重免荷アシスト力という)を発生させる。各脚リンク2L,2Rで発生された体重免荷アシスト力は着座部材1を介して利用者Pの胴体に伝達され、利用者Pの脚に作用する荷重が軽減される。
また、第1関節部3は、着座部材1に利用者が着座した状態で利用者の左右の大腿骨頭間の横方向幅内に位置するように配置されている。そのため、体重免荷アシスト力は利用者の左右の大腿骨頭間において着座部材1に作用することになり、体重免荷アシスト力が確実に利用者の胴体に伝達され、且つ、着座部材1の安定性が確保される。尚、図示しないが、駆動源9用の電源及びコントローラは利用者が背負うバックパックに収納される。
本実施形態の歩行補助装置は、利用者Pが足平に接地部材8を装着して着座部材1に着座するだけで使用することができ、殆ど束縛感を受けない。また、脚リンク2L,2Rの第1関節部3及び第1リンク部4は利用者Pの股下に位置するため、歩行時の腕振りに際し手が第1関節部3や第1リンク部4に当たることがなく、自由な腕振りが可能になる。更に、装置が小型になって、狭い場所でも使用でき、束縛感の軽減及び腕振りの自由さの確保と相俟って、使い勝手が著しく向上する。
各脚リンク2L,2R用の各第1関節部3は、図4、図5に明示する如く、前後方向に長手の円弧状の案内軌道32と、案内軌道32を支持する支持板33とから成る関節部材31で構成されている。尚、本実施形態では、案内軌道32を円弧状のレールで構成しているが、支持板33に形成する円弧状の溝で案内軌道32を構成することも可能である。各脚リンク2L,2Rの第1リンク部4の上端部には、案内軌道32を上下から挟む上下各一対のローラ41aを有するスライダ41が取付けられており、案内軌道32にスライダ41がローラ41を介して移動自在に係合する。かくして、各脚リンク2L,2Rは案内軌道32の曲率中心を中心にして前後方向に揺動することになり、各脚リンク2L,2Rの前後方向の揺動支点は案内軌道32の曲率中心になる。
図2に示す如く、案内軌道32の曲率中心、即ち、各第1関節部3における各脚リンク2L,2Rの前後方向の揺動支点3aは着座部材1の上方に位置する。ここで、利用者Pが上半身を前傾する等して着座部材1に対する利用者Pの上半身の体重の作用点が各脚リンク2L,2Rの前後方向の揺動支点3aの前方にずれると、着座部材1が前下がりに傾斜する。そして、着座部材1がこのまま傾斜し続けると、着座部材1が利用者Pに対し後方にずれてしまう。然し、本実施形態では、着座部材1の前下がりの傾斜に伴い体重作用点は揺動支点3aの下側で後方に変位し、該支点3aと体重作用点との間の前後方向距離が減少して、着座部材1に作用する回転モーメントも減少する。そして、体重作用点が揺動支点3aの真下の位置まで変位したところで、着座部材1に作用する回転モーメントが零になり、この状態で着座部材1が安定する。このようにして着座部材1が自動的に安定状態に収束するため、着座部材1が利用者Pの股下で前後方向にずれることを抑制できる。
また、各脚リンク2L,2Rの上端部であるスライダ41は、各脚リンク2L,2Rの第2関節部5と各脚リンク2L,2Rの前後方向の揺動支点3a(案内軌道32の曲率中心)とを結ぶ線L1よりも後方に位置する案内軌道32の部分に係合している。これにより、利用者Pの各脚の前方への振り出しに追従する各脚リンク2L,2Rの前方への揺動ストロークを案内軌道32の長さを左程長くせずに確保できる。尚、案内軌道32の前後の各端部には、第1リンク部4の離脱防止のためのストッパ32aが取付けられている。
また、左右の各脚リンク2L,2R用の各第1関節部3を構成する上記各関節部材31は、着座部材1の下面の横方向中央に取付けられる前後一対の支持ブロック34,34に夫々支持させた前後方向の支軸35,35に、支持板33の前後の上端部に取り付けたヒンジ部材36,36において横方向に揺動自在に軸支される。従って、各第1関節部3は、各脚リンク2L,2Rの前後方向の揺動を許容する自由度に加えて各脚リンク2L,2Rの横方向への揺動を許容する自由度を持つことになり、利用者Pの脚を外転できるようになる。
また、左側の脚リンク2L用の関節部材31と右側の脚リンク2R用の関節部材31とは共通の支軸35で軸支されている。即ち、左側の脚リンク2Lの横方向の揺動支点と右側の脚リンク2Rの横方向の揺動支点とが前後方向の同一軸線上に位置する。尚、図8に示す第2実施形態のように、左側の脚リンク2L用の関節部材31と右側の脚リンク2R用の関節部材31とを横方向に並設した各別の支軸35L,35Rで軸支することも可能であるが、これでは以下の不具合を生ずる。
即ち、片脚支持状態では、遊脚(足平が床面から離れている脚)側の脚リンクの重量(後述するように脚リンクにこれを屈曲させる方向の力を加えて遊脚の持ち上げを補助するアシスト力を発生させる場合にはこのアシスト力)が、当該脚リンクの横方向の揺動支点を介して着座部材1に作用する。そして、第2実施形態の如く左側の脚リンク2Lの横方向の揺動支点(支軸35L)と右側の脚リンク2Rの横方向の揺動支点(支軸35R)とが離れていると、片脚支持状態では、着座部材1に、遊脚側の脚リンクの重量により、支持脚(足平が床面に接地している脚)側の脚リンクの横方向の揺動支点を中心にした横転モーメントが作用し、着座部材1がローリングする。
これに対し、本実施形態では、片脚支持状態において、遊脚側脚リンクの重量の作用箇所である遊脚側脚リンクの横方向の揺動支点が支持脚側の横方向の揺動支点と同一軸線(支軸35)上に位置するから、着座部材1に支持脚側脚リンクの横方向の揺動支点を中心にした横転モーメントは作用しない。従って、片脚支持状態での着座部材1のローリングを防止できる。尚、遊脚側の脚リンクの重量は支持脚側の脚リンクを介して床面に伝達され、着座部材1には、遊脚側の脚リンクの重量は作用しない。
また、第1関節部3における各脚リンク2L,2Rの前後方向の揺動支点3aと第3関節部7とを結ぶ線を基準線L2(図2参照)として、各脚リンク2L,2Rは、利用者Pの直立状態においても、第2関節部5が基準線L2の前方に張り出す屈曲状態になるような長さに形成されている。そして、駆動源9の制御で着座部材1の高さを利用者Pに合わせて自動的に調節できるようにしている。そのため、個人毎に専用の装置を製作したり、脚リンクの長さを調節する必要がなく、汎用性があってコストダウンを図ることができる。
ここで、利用者Pの直立状態において、基準線L2はほぼ鉛直になり、第2関節部5を含めて脚リンク2L,2Rの殆どの部分が第3関節部7より前方に位置してしまう。従って、駆動源9を第2関節部5と同軸上に配置した場合には、利用者Pの直立状態において、駆動源9を含む各脚リンク2L,2Rの重量により、各脚リンク2L,2Rに第3関節部7を中心にした前傾方向の大きな揺動モーメントが発生する。そして、この揺動モーメントで着座部材1に前方への押し力が作用し、着座部材1が利用者Pに対し前方にずれたり、利用者Pに前方へのぐらつき感を与えてしまう。更に、利用者Pの脚を前方に振り出す際に、脚リンク2L,2Rに第1関節部3における前後方向の揺動支点3aを中心にした後方への揺動モーメントが発生し、脚の前方への振り出しに対する抵抗感を与えてしまう。また、駆動源9を第2関節部5と同軸上に配置すると、第1関節部3回りの脚リンク2L,2Rの慣性モーメントが大きくなり、歩行時に利用者Pの脚が脚リンク2L,2Rの慣性モーメントを受けて重く感じる。
そこで、本実施形態では、各脚リンク2L,2Rの第1関節部3の近傍部分、即ち、第1リンク部4の上端のスライダ41に、基準線L2に対し第2関節部5とは前後方向反対側である後方に張り出す板部材から成る張出し部42を取付け、この張出し部42に駆動源9を搭載している。これによれば、利用者Pの直立時に、駆動源9を除く各脚リンク2L,2Rの重量によって各脚リンク2L,2Rに発生する第3関節部7を中心にした前傾方向の揺動モーメントが、駆動源9の重量により発生する逆向きの揺動モーメントにより減殺される。即ち、駆動源9がカウンタウェイトとして機能して、駆動源9を含む脚リンク2L,2R全体の揺動モーメントは小さくなる。その結果、着座部材1に作用する前方への押し力も小さくなり、安定性を確保できる。
更に、利用者Pの脚を前方に振り出す際には、駆動源9の重量により前後方向の揺動支点3aを中心にした前方への揺動モーメントが発生し、このモーメントで脚の前方への振り出しがアシストされる。従って、第2関節部5が基準線L2の前方に張出すように脚リンク2L,2Rが屈曲している場合に問題になる脚の前方への振り出しに対する抵抗感を解消できる。また、重量物たる駆動源9と揺動支点3aとの間の距離が短くなり、そのため、第1関節部3回りの脚リンク2L,2Rの慣性モーメントが小さくなる。従って、歩行時に利用者Pの脚が脚リンク2L,2Rの慣性モーメントを受けて重く感じることを防止できる。
駆動源9により発生する駆動力は駆動力伝達手段91を介して第2関節部5に伝達される。駆動力伝達手段91としては、第2リンク部6の第2関節部5から離れた部分に第1リンク部4と平行に連結されるリンクを用いた平行リンク機構や、油圧シリンダを用いた油圧伝達機構も使用できるが、本実施形態では、軽量化とコストダウンとを図るため、第2関節部5と駆動源9とを結ぶワイヤ91aを用いたワイヤ式伝達機構で駆動力伝達手段91を構成している。駆動源9からは2本のワイヤ91aが導出されており、駆動源9から一方のワイヤ91aが繰り出されるとき他方のワイヤ91aが駆動源9に引き込まれる。尚、駆動源9は、電動モータと該モータにより駆動されるワイヤ91a用の駆動プーリとで構成される。両ワイヤ91a,91aは、第1リンク部4の第2関節部5の近傍部分に形成したフランジ43と駆動源9との間に配設した2本のガイドチューブ91b,91bに挿通されている。また、第2リンク部6に第2関節部5の軸51と同軸上のプーリ52を固定し、このプーリ52に2本のワイヤ91a,91aを互いに逆方向から巻きつけ、各ワイヤ91aの端末をプーリ52に固定している。かくして、駆動源9によるワイヤ91a,91aの繰り出しと引き込みとにより、プーリ52が回転され、この回転で第2リンク部6が第1リンク部4に対し第2関節部5の軸51を中心にして揺動し、脚リンク2L,2Rが屈伸される。尚、図示しないが、プーリ52の側面に円弧状の溝を形成すると共に、第1リンク部4にこの溝に係合する突起部を形成し、第1リンク部4に対する第2リンク部6の揺動ストロークを所定範囲に規制している。
第3関節部7は、図6に示す如く、第2リンク部6の下端に、2軸の力センサ10を介して連結されるヨーク71と、ヨーク71の下端部に横設した軸72に回転自在に且つ軸方向に傾動自在に連結した可動子73とから成るフリージョイントで構成される。ここで、上記した体重免荷アシスト力は、横方向から見て、第1関節部3における脚リンク2L,2Rの前後方向の揺動支点3aと第3関節部7とを結ぶ上記基準線L2上に作用する。そして、基準線L2上に作用する実際の体重免荷アシスト力(正確には体重免荷アシスト力と着座部材1及び各脚リンク2L,2Rの重量による力との合力)を力センサ10で検出される2軸方向の力の検出値に基づいて算出している。
接地部材8は、靴81と、靴81に組み込まれた図6に示す高剛性の鐙状連結リング82とを備えている。連結リング82の上面にはカラー83が立設され、このカラー83に第3関節部7の可動子73の下端が連結されている。また、図2に示すように、連結リング82の下辺部には靴81の中敷となる弾性板84が載っており、弾性板84の下面に、利用者の足平の中趾節関節(MP関節)部分と踵部分とに作用する荷重を検出する前後一対の圧力センサ85,85が取付けられている。そして、各接地部材8の両圧力センサ85,85の検出値に基づいて、利用者の両足平に作用する全荷重に対する各足平の作用荷重の割合を算出し、予め設定される体重免荷アシスト力の設定値に各足平の荷重割合を乗算した値を各脚リンクで発生すべき体重免荷アシスト力の制御目標値とし、上記力センサ10の検出値に基づいて算出される実際の体重免荷アシスト力が制御目標値になるように駆動源9を制御している。尚、片脚支持状態では、支持脚側の脚リンクのみで設定値の体重免荷アシスト力を発生させる。この場合、遊脚側の脚リンクの駆動源の駆動を停止して、第2関節部5を自由回転状態にしても良いが、遊脚側の脚リンクに駆動源により屈曲方向の力を加え、遊脚の足平の持ち上げをアシストすることも可能である。
ところで、体重免荷アシスト力は、前方から見て、第1関節部3の横方向の揺動支点たる支軸35と第3関節部7とを結ぶ線上に作用する。そのため、支軸35と第3関節部7との間の横方向距離が長くなると、体重免荷アシスト力の横方向成分が大きくなり、接地部材8及び着座部材1に作用する横力が増加して、接地部材8や着座部材1が不安定になる。そこで、本実施形態では、図3に示す如く、第3関節部7が接地部材8の横幅中央より横方向内方に位置するように、連結リング82の上面のカラー83を横方向内側にずらして配置している。これによれば、支軸35と第3関節部7との間の横方向距離が短くなり、接地部材8及び着座部材1に作用する横力が小さくなって、接地部材8と着座部材1の安定性が確保される。
以上の如く着座部材1の安定化のための種々の工夫を施しているが、本実施形態では、着座部材1そのものにも工夫を施している。以下、これについて詳述する。着座部材1は、図7(a)に示す如く、前後方向中間に後部1aと前部1bに比し横幅を狭めたくびれ部1cを有する形状に形成されている。また、前部1bは、上方に湾曲し(図2参照)、且つ、横方向中間部が切欠かれた二股形状に形成されている。利用者は左右の脚をくびれ部1cの横方向両側に位置させて着座部材1に着座する。これによれば、幅広の後部1aと前部1bとにより利用者に対する着座部材1の前後方向の位置ずれを抑制でき、且つ、前部1bが上方に湾曲しているため、歩行時に前方に振り出される脚が前部1bに当りにくくなり、歩行時の脚の動きの自由度が確保される。更に、前部1bを二股形状に形成することで、前部1bが横方向に撓み易くなる。そのため、前方に振り出される脚が前部1bに当接しても、この当接力を前部1bの撓みで吸収し、脚の当接で着座部材1がヨーイングすることを抑制できる。また、利用者の股間部等が前部1bに当たらなくなり、座り心地が良くなる。後部1aは、利用者の左右の坐骨を受けるのに十分な横幅を持っている。そのため、利用者に対し坐骨接触により体重免荷アシスト力を確実に伝達することができる。
尚、着座部材1は、カーボンファイバー等で形成される芯材101と、芯材101の上面に取付けたクッション材102と、これら芯材101とクッション材102とを覆うカバー103とで構成されている。芯材101には、図7(b)に示す如く、生体組織の圧迫を避けるために、前後方向にのびる横方向中央の窪み104が形成されており、窪み104の両側にクッション材102を取付けている。また、芯材101の周縁部の肉厚を薄くし、側方からの脚の当接力を柔軟に吸収できるようにしている。
ところで、上記第1実施形態では、左右の各脚リンク2L,2Rの中間に回転式の第2関節部5を設けているが、図9に示す第3実施形態の如く、左右の各脚リンク2L,2Rの中間に直動式の第2関節部5´を設けても良い。この第2関節部5´には、図示しないが、電動モータから成る駆動源と送りねじ機構とが組み込まれており、駆動源の作動により送りねじ機構を介して各脚リンク2L,2Rの第2リンク部6が直線的に動き、これにより接地部材8と着座部材1との間の距離が変化する。
以上、本発明の実施形態について図面を参照して説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、複数の車輪を有する小型の台車状の接地部材に立設される自立可能な単一の脚リンクを着座部材の下面の連結部に連結し、利用者の歩行に合わせて車輪を駆動するようにしても良い。また、片方の脚が骨折等で不自由な利用者の歩行を補助するため、上記実施形態の左右の脚リンク2L,2Rのうち利用者の不自由な脚側の脚リンクのみを残して他方の脚リンクを省略することも可能である。また、脚リンク2L,2Rの中間の第2関節部5,5´用の駆動源を脚リンク2L,2Rに搭載せずに、着座部材1の後方に取付けるブラケットに搭載しても良い。更に、第2関節部5,5´を伸び方向(接地部材8と着座部材1との間の距離を長くする方向)に付勢する付勢手段を設け、駆動源を省略することも可能である。
本発明の第1実施形態の歩行補助装置の斜視図。 第1実施形態の歩行補助装置の側面図。 第1実施形態の歩行補助装置の正面図。 第1実施形態の歩行補助装置の第1関節部の部分の斜視図。 第1実施形態の歩行補助装置の第1関節部の部分の側面図。 第1実施形態の歩行補助装置の脚リンクの下端部分の斜視図。 (a)第1実施形態の歩行補助装置の着座部材の斜視図、(b)着座部材の芯材の斜視図。 第2実施形態の第1関節部分の斜視図。 第3実施形態の歩行補助装置の斜視図。
符号の説明
1…着座部材、2L,2R…脚リンク、3…第1関節部(着座部材の下面の連結部)、37…ストッパ部材、5…第2関節部(脚リンクの中間の関節部)、7…第3関節部(脚リンクの下端の関節部)、8…接地部材、9…駆動源。

Claims (5)

  1. 下端に接地部材が連結された1つ以上の脚リンクと、脚リンクの上端に連結される荷重伝達部とを備え、利用者の体重の少なくとも一部を荷重伝達部を介して脚リンクで支えるようにした歩行補助装置において、
    前記荷重伝達部は、利用者が跨ぐようにして着座する着座部材で構成され、前記脚リンクの上端を前記着座部材に連結する連結部が設けられ、この連結部は、前記着座部材に利用者が着座した状態で利用者の左右の大腿骨頭間の横方向幅内に位置するように配置され、
    前記脚リンクは少なくとも左右一対に設けられ、左右の各脚リンクの下端に連結される前記接地部材は利用者の左右の各足平に装着されるように構成され、前記連結部は左右の各脚リンクの前後方向及び横方向の揺動を許容する自由度を持つように構成され
    前記各脚リンクの下端に、前記接地部材が関節部を介して連結され、該関節部は前記接地部材の横幅中央より横方向内方に位置していることを特徴とする歩行補助装置。
  2. 下端に接地部材が連結された1つ以上の脚リンクと、脚リンクの上端に連結される荷重伝達部とを備え、利用者の体重の少なくとも一部を荷重伝達部を介して脚リンクで支えるようにした歩行補助装置において、
    前記荷重伝達部は、利用者が跨ぐようにして着座する着座部材で構成され、この着座部材の下面に、前記脚リンクの上端を連結する連結部が設けられ、
    前記脚リンクは少なくとも左右一対に設けられ、左右の各脚リンクの下端に連結される前記接地部材は利用者の左右の各足平に装着されるように構成され、前記連結部は左右の各脚リンクの前後方向及び横方向の揺動を許容する自由度を持つように構成され
    前記各脚リンクの下端に、前記接地部材が関節部を介して連結され、該関節部は前記接地部材の横幅中央より横方向内方に位置していることを特徴とする歩行補助装置。
  3. 前記連結部は、前記左右の脚リンクの一方の脚リンクの横方向の揺動支点と他方の脚リンクの横方向の揺動支点とが前後方向の同一軸線上に位置するように構成されていることを特徴とする請求項1または2記載の歩行補助装置。
  4. 前記脚リンクは、前記接地部材と前記着座部材との間の距離を変化させるように動く中間の関節部を持ち、この関節部を駆動する駆動源を備えることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の歩行補助装置。
  5. 前記駆動源は、前記脚リンクの前記連結部の近傍部分に配置されることを特徴とする請求項4記載の歩行補助装置。
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