JP4639041B2 - ポリアミド系繊維構造物の染色加工方法 - Google Patents
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これらタンニン酸−吐酒石の諸欠点を改良する代替手段の一つとして、ジヒドロキシフェニルスルホンのホルマリン縮合物などからなる、着色の少ないいわゆる合成タンニン系化合物を用いて染色後に染料を固着する方法が用いられるようになってきた。しかしながら、この方法では、タンニン酸-吐酒石を用いる方法より染料固着効果は劣り、また、極濃色での良好な染色堅牢度が得られにくいという問題がある。
しかし、この方法によると、湿潤堅牢度などは向上するが、天然タンニンを用いているために染色物への汚染をさけることが出来ず、例えば白場などの染色されていない部分を含むポリアミド系繊維含有プリント品などには用いることが出来ないという問題があった。
即ち、本発明は(1)染色前のポリアミド系繊維構造物にビスフェノール誘導体を付与後、染色することを特徴とするポリアミド系繊維構造物の染色加工方法であって、該ビスフェノール誘導体が、平均分子量が8000乃至80000のジヒドロキシジフェニルスルホンとフェノールスルホン酸塩とのホルムアルデヒド縮合物、または、ジヒドロキシジフェニルスルホンとそのスルホン化合物とのホルムアルデヒド縮合物であり、該ビスフェノール誘導体付与後に、100〜130℃で乾燥する工程を有する染色加工方法である。
また、(2)ビスフェノール誘導体の平均分子量が20000乃至30000であることを特徴とする(1)記載の染色加工方法である。
また、(3)付与されるビスフェノール誘導体の量が処理するポリアミド系繊維構造物の総重量の0.1乃至10重量%であることを特徴とする(1)乃至(2)記載の染色加工方法である。
また、(4)染色がスクリーン、ロータリー及びインクジェット等プリント染色のいずれかであることを特徴とする(1)乃至(3)記載のポリアミド系繊維構造物の染色加工方法である。
また、ポリアミド系繊維構造物のアミノ末端基をビスフェノール誘導体皮膜で保護することにより乾燥や染色時に熱が加えられても、ポリアミド系繊維のアミノ末端基の酸化が防止され、染料の染着が損なわれることを防止できると推測される。このために、ビスフェノール誘導体を付与されたポリアミド系繊維構造物はプリント染色において染色性が向上させられ、且つ染色堅牢度が向上させられると考えられる。
また、染色後に未染着染料を除くソーピング処理においては、ビスフェノール誘導体による皮膜が、洗い落とされた未染着染料のポリアミド系繊維への再付着を防止するために、汚染は生じない。
本発明に用いられるビスフェノール誘導体としては、ナフチルアミン、フェノール、ナフトール、ジヒドロキシジフェニルスルホン等の化合物をホルマリンで結合したオリゴマータイプのものを挙げることが出来、特に染色堅牢度や日光堅牢度などへの悪影響が少なく、更には生地への着色が少ない等の優れた性質を持つものとして、例えば式(1)で表される様なジヒドロキシジフェニルスルホン及びフェノールスルホン酸塩とホルムアルデヒドとを縮合反応させた縮合物や式(2)で表される様なジヒドロキシジフェニルスルホン及びそのスルホン化合物とホルムアルデヒドとを縮合反応させた縮合物などに代表されるホルムアルデヒド縮合物が挙げられるがこれらに限定されるものではない。これらのビスフェノール誘導体は、単独で使用しても良く、また2種以上を混合して使用しても良い。また、本発明で用いられるビスフェノール誘導体の平均分子量は8000乃至80000が好ましい。平均分子量が8000未満だと繊維との結合力が小さくなり洗濯に対する染色堅牢度が低下する虞があり、80000より大きいと繊維への着色、風合の硬化があるばかりか不均一に吸着しやすいため均染性不良、堅牢度のバラツキ、発色性不良といった問題が生じる虞がある。
繊維構造物の種類としては、原綿、トウ、スライバー、紡績糸、フィラメント糸、織物、編物、不織布等が挙げられる。
本発明によって改質処理したポリアミド系繊維は鮮明な中濃色に染色することが容易になり染色性が向上し、染色後に行うソーピング処理時の汚染の心配がなく、堅牢性が向上する。
処理方法は、浸漬法、パッド法、或いは、パッドスチーム法を用いることができる。処理温度は30〜130℃の溶液中で所定時間処理することが好ましい。温度が30℃未満であるとビスフェノール誘導体がポリアミド系繊維に吸着されにくく、また温度が130℃を超えるとポリアミド系繊維自体の軟化又は、強度劣化が生じる。
処理時間は適宜設定すれば良い。一般的には温度が低いほど長時間の処理が必要で、温度が高いほど短時間の処理で済む。具体的には1分〜60分の範囲で適宜設定される。
染色方法としては、スクリーン、ロータリー及びインクジェット等のプリント染色が挙げられるが、精細な表現と多色効果が得られ本発明のメリットを最大限に生かせる点でインクジェット法が好ましい。
インク保持剤としては、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ソーダ、グアーガム、ローカストビーンガム、アラビアガム、クリスタルビアガム、メチルセルロース、ポリアクリルアミド、デンプン、ポリアクリル酸ソーダ、ポリスチレンスルホン酸ソーダ、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルアルコール等の水溶性高分子が挙げられるが、高濃度、高堅牢度、鮮明性の点からカルボキシメチルセルロース、アルギン酸ソーダもしくはこれらの混合物が特に好ましい。
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール、ベンゾフェノン等が挙げられる。
還元防止剤としては、ニトロベンゼンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸誘導体等が挙げられる。
酸化防止剤としては、ヒンダードアミン、ヒンダードフェノール等が挙げられる。
pH調整剤としては、リンゴ酸、クエン酸、酢酸、硫酸アンモニウム、クエン酸アンモニウム等の酸性調整剤や、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム等のアルカリ性調整剤が挙げられる。
ヒドロトロープ剤としては、尿素、ポリエチレングリコール、チオ尿素等が挙げられる。
消泡剤としては、イソプロパノール、エタノール、n―ブタノール等の低級アルコール、オレイン酸、ポリプロピレングリコール等の有機極性化合物、及びシリコーン樹脂が挙げられる。
浸透剤としては、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸エステルナトリウム、オレイン酸ブチルエステル等のアニオン性界面活性剤、及びノニルフェノールEO、ラウリルアルコールEO等のノニオン性界面活性剤が挙げられる。
ミクロポーラス形成剤としては、水不溶性または難溶性で沸点が105〜200℃の低沸点液体を微粒子状態で均一に水中に乳化分散させたものが好ましく用いられる。低沸点液体としては、炭化水素系のトルエン、キシレン、ハロゲン化炭化水素系のパークロルエチレン、モノクロルベンゼン、ジクロルペンタン、酢酸ブチル、アクリル酸ブチル等が挙げられる。
上記処理液を布帛に付与する方法としては、パッド法、スプレー法、浸漬法、コーティング法、ラミネート法、グラビア法、インクジェット法などいずれの方法でも可能である。
また、上記範囲のpHに調整された液に界面活性剤等を適宜添加することが洗浄効果を向上させるため好ましい。界面活性剤としては特に限定されず、ノニオン、アニオン、カチオン性界面活性剤、またはその配合品などを用いることができる。
評価方法
(1)濃度
レッドの色材を無地プリントした部分を分光光度計(Color Eye−3000:グレタグマクベス社製)を用いて表面濃度を測定した。数値が高いほど濃色に染色されていることを示す。
(2)汚染
得られた捺染物の汚染の度合いを目視で評価した。
○ : 汚染は認められない。
△ : 捺染物の一部に若干汚染が認められる。
× : 捺染物全体に汚染が認められる。
(3)堅牢度
(3)−1 洗濯試験
洗濯に対する染色堅牢度試験JIS L 0844 A−2法に基づいて行った。
添付白布の汚染度合いを汚染用グレースケールで判定した。
(3)−2 汗試験
汗に対する染色堅牢度試験JIS L 0848 アルカリ性人工汗試験法に基づいて行った。
添付白布の汚染度合いを汚染用グレースケールで判定した。
(3)−3 汗試験洗濯耐久性
JIS L 0217の別表(1)洗い方番号103に規定の試験方法に基づいて40℃10分間の洗濯を25回行い風乾した。次いで評価法(3)−2と同様にして汗試験を行った。
[実施例1]
処理液A
サンライフTN−8 3%owf
(日華化学株式会社製ビスフェノール誘導体 式(1)相当品
平均分子量20000〜30000)
硫安 3g/l
酢酸 0.5g/l
処理条件 90℃ 30分
以上の条件で処理後、水で洗浄し130℃で2分間の乾燥を行い、水分を蒸発除去した。
ビスフェノール誘導体の付与量は1.5重量%であった。次に、捺染糊1をスクリーン捺 染機で印捺した。
捺染糊1
元糊(15%炊き) : メイプガムNP
(MAYHALL CHEMICAL AG社製;グアーガム系) 50部
硫安 5部
染料 : C.I. Acid Red 289 2部
水 43部
次いで130℃で2分間の乾燥を行った後、105℃の湿熱蒸気で湿熱処理を行った。その後、水洗し、エスクードNS(カチオン系界面活性剤 日華化学株式会社製)1g/l、ソーダ灰1g/lよりなるソーピング液(液pH11)にて60℃10分のソーピング後、再度水洗し、ナイロンフィックス501(ビスフェノール誘導体 式(1)相当品 センカ株式会社製)2%owf、酢酸0.3g/lの処理液で60℃で5分の固着処理を行い、その後150℃で2分間の乾燥をして染色物を得た。この結果を表1に示す。
[実施例2]
処理液B
インク保持剤 : セロゲンPR 2部
(第一工業製薬株式会社製 : カルボキシメチルセルロース系)
硫安 10部
水 88部
次に、130℃で2分間の乾燥を行った後、以下の処方のインクを使用してオン・デマンド方式シリアル走査型インクジェット印刷装置にて以下の印写条件でベタ柄をプリントした。
インク処方
反応染料:C.I.Reactive Red 24 10部
イオン交換水 90部
印写条件
ノズル径 ; 40μm
駆動電圧 ; 100V
周波数 ; 5KHz
解像度 ; 360dpi
次いで、105℃の湿熱蒸気で20分間の湿熱処理を行った。その後、洗浄を行い、ナイロンフィックス501(センカ株式会社製)2%owf、酢酸0.3g/lの処理液で60℃ 5分の固着処理を行い、150℃で2分間の乾燥をして染色物を得た。この結果を表1に示す。
[実施例3]
処理液B
ハイフィックスGM 3%owf
(大日本製薬株式会社製ビスフェノール誘導体 式(2)相当品 平均分子量20000〜30000)
酢酸 0.5g/l
処理条件 90℃ 30分
以上の条件で処理後、水で洗浄し、130℃で2分間の乾燥を行い、水分を蒸発除去した。ビスフェノール誘導体の付与量は1.5重量%であった。次いで、実施例1と同様にスクリーンプリントを施し、洗浄、固着処理を行い、乾燥をして染色物を得た。この結果を表1に示す。
[実施例4]
次いで実施例3と同様にインクジェットプリントを施し、洗浄、固着処理を行い、乾燥をして染色物を得た。この結果を表1に示す。
[比較例1]
[比較例2]
[比較例3]
[比較例4]
Claims (4)
- 染色前のポリアミド系繊維構造物にビスフェノール誘導体を付与後、染色することを特徴とするポリアミド系繊維構造物の染色加工方法であって、該ビスフェノール誘導体が、平均分子量が8000乃至80000のジヒドロキシジフェニルスルホンとフェノールスルホン酸塩とのホルムアルデヒド縮合物、または、ジヒドロキシジフェニルスルホンとそのスルホン化合物とのホルムアルデヒド縮合物であり、該ビスフェノール誘導体付与後に、100〜130℃で乾燥する工程を有する染色加工方法。
- ビスフェノール誘導体の平均分子量が20000乃至30000であることを特徴とする請求項1記載の染色加工方法。
- 付与されるビスフェノール誘導体の量が処理するポリアミド系繊維構造物の総重量に対して0.1乃至10重量%であることを特徴とする請求項1乃至2記載の染色加工方法。
- 染色方法がスクリーン捺染、ロータリー捺染及びインクジェット捺染のいずれかであることを特徴とする請求項1乃至3記載のポリアミド系繊維構造物の染色加工方法。
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