JP4639014B2 - 複数のレンズ等のワークを同時切削加工するnc加工機 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は,ワークに対して回転対面加工,回転側面加工等の切削加工を行うため,主軸の回転軸方向と同方向のY軸方向に往復移動するスライダにY軸バイトを設け,Y軸バイトを主軸に同期させて高速高加速度で往復運動させてワークを切削加工する複数のレンズ等のワークを同時加工するNC加工機に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来,光学デバイスや情報機器デバイス等には,種々の種類の光学レンズが組み込まれている。光学レンズは一般に軸対称非球面をしており,ガラスの表面を成形又は加工し,仕上げとして研磨装置で研磨して製作される。また,非軸対称非球面を研磨して製作する方法としては,特開平8−192348号公報に開示された研削研磨方法が知られている。
【0003】
また,特開平8−242903号公報に開示された軸偏心レンズの研磨装置は,複数個の軸偏心レンズの研磨加工を同時に行うものであり,球面形状の保持面を持つリセス式レンズホルダーは研磨加工時の回転軸となるホルダー軸を有している。ホルダーの保持面には,加工される軸偏心レンズの光軸をホルダー軸と一致する位置から保持面の外周側へずらし,光軸ずらしに応じて被加工物の配置位置を保持面の外周側位置へ移動させ,被加工物が保持できるようにする。
【0004】
更に,特開平11−198014号公報に開示されたプラスチックレンズの製造方法は,ブロッキング工程で多数必要なプリズムリングを廃止し,自動化できると共に,切削工程や研磨工程で必要な加工精度や品質が得られるものであり,ブロック材として従来の低融点金属の代わりに熱可塑性樹脂を用いて加工ワークの凸面全体をブロック治具に固定したものである。
【0005】
また,特開平8−243901号公報に開示されたレンズ加工方法は,軸偏心レンズの加工ができ,複数個のレンズの研削や研磨が同時に行えるものであり,一枚のガラス被加工物を所定の曲率の球面状に研削加工し,このガラス被加工物を切断して2枚の軸偏心レンズを形成し,軸偏心した形状を考慮せずに研削を行い,複数個の加工を同時に行うことを可能にしたものである。
【0006】
また,特開2000−334647号公報に開示されたレンズ加工用治具は,複数のレンズを貼り付けるための平坦面又は湾曲面からなるレンズ貼付面と,該レンズ貼付面から突出して前記レンズを位置決めするリブ状又はピン状の突出部を有するものである。
【0007】
また,慣性力を小さくして高速往復運動を可能にしたNC加工機として,特開平11−309602号公報に開示されたNC加工機が知られている。該公報に開示されたNC加工機は,図16及び図17に示すように,主軸(C軸)の長手方向であるZ軸方向に移動可能なZ軸テーブル3と,Z軸方向に直交するX軸方向に移動可能なX軸テーブル4とが加工機ベース2に載置されている。加工機ベース2上のZ軸テーブル3には,主軸台5が載置されている。Z軸テーブル3は,ベース2に取り付けられたサーボモータ6によって駆動され,Z軸方向に往復運動することができる。また,主軸台5には,主軸Cを回転させるスピンドルモータ7が組み込まれている。主軸Cの先端にはチャック装置8が設けられ,チャック装置8にはワーク9が保持されている。
【0008】
また,X軸テーブル4は,ワーク9と対向する位置に設置され,サーボモータ19によって駆動され,X軸方向に移動可能である。また,X軸テーブル4には,各種のバイト24が取り付けられる刃物台23,及びターナ11が載置されている。ターナ11は,Z軸方向に往復運動し得るスライダ12と,スライダ12を駆動する駆動装置とから構成されている。スライダ12は,先端部にバイトホルダ26を有しており,バイトホルダ26にはY軸バイト15が取り付けられる。また,駆動装置はX軸テーブル4に取り付けられたスライドベース13上に載置されたサーボモータ14と,スライダ12をZ軸方向に移動可能に支持する軸受を備えている。スライダ12は,サーボモータ14の駆動軸と一体構造の回転軸に形成した雄ねじに螺合するナット部材に固定されており,回転軸の回転運動に応じて往復運動することができる。
【0009】
NC加工機でワーク9を切削加工する際には,主軸台5を載置したZ軸テーブル3は動かないように固定される。ワーク9は,主軸台5の主軸Cの先端に設けられたチャック装置8によって保持され,スピンドルモータ7によって主軸Cによって,例えば,500rpmの回転速度で回転する。ワーク9は,金属の他に,プラスチック材,非金属等の素材で作製されている。スライダ12の先端に取り付けられたバイト15は,スライダ12の往復運動に伴ってZ軸方向に往復運動すると共に,X軸テーブル4と一緒にX軸方向にも往復運動する。NC加工機は,スライダ12の重量やターナ11を載置したX軸テーブル4の重量がかなり小さいので,慣性力も小さくなり,高速高加速度の往復運動ができる。
【0010】
NC加工機によるワーク9に対する切削加工は,予め決定されたデータに基づいて主軸駆動用のサーボモータ6及びスライダ12を駆動するサーボモータ14を制御することにより行われるが,刻々変化する主軸Cの回転角は高分解能のロータリエンコーダによって連続的に検出され,スライダ12の往復運動によるバイト15の刻々変わる実際の移動量はサーボモータ14に設けられたパルスコーダにより連続的に検出され,該検出値はNC制御装置の記憶情報と比較され,比較情報に基づいてサーボモータ6,14は制御される。また,X軸テーブル4の位置もパルスコーダによって検出され,X軸テーブル4駆動用のサーボモータ19がNC制御される。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら,上記公報に開示された研削研磨方法及び非球面研削機を使用した研削方法は,いずれにしても,研磨による方法であるから,ワークに対する加工速度が遅く,加工に長時間を要するという問題がある。また,通常のNC加工機では,テーブルの慣性力が大きいためにテーブルが高速で往復移動に追従できないという理由から,加工物の回転速度も遅くなり,バイトで切削して非軸対称非球面を製作することは困難であると考えられてきた。しかしながら,研磨による方法は,加工に長時間を要するという問題があることから,非軸対称非球面を短時間で製作することが要望されていた。また,従来のNC加工機は,ボールねじによるモータ回転をエンコーダによって検出した位置データをフィードバックし,セミクロス制御をしていたが,高精度の制御や高速高加速度の加工が期待できなかった。
【0012】
【課題を解決するための手段】
この発明の目的は,上記課題を解決することであり,NC加工機のY軸バイトを取り付けたスライダが有する慣性力の小さい高速往復運動性能に着目し,ワークに対して非軸対称非球面等を高速高加速度で高精度に切削加工させると共に,複数のレンズ等のワークを回転中心から隔置した位置にチャック爪,接着剤等で固着し,複数のワークを同時に切削加工し,スライダに設けたY軸バイトの往復移動を主軸の回転に同期させてワーク毎に加工形状に応じたプログラムに従ってワークに対する面加工を行い,複数のワークを同時に切削加工することによってワークの切削加工のサイクルタイムを短縮して短時間で切削加工ができる複数のレンズ等のワークを同時切削加工するNC加工機を提供することである。
【0013】
この発明は,主軸台に回転可能に配置された主軸,前記主軸の回転中心に回転中心を位置させてブロック治具を把持するチャック装置,前記ブロック治具の前記回転中心から隔置した周方向の複数箇所にそれぞれ固定されたワーク,前記主軸台が載置され且つ前記主軸の軸方向であるZ軸方向に移動可能なZ軸テーブル,前記Z軸方向に直交するX軸方向に移動可能なX軸テーブル,前記主軸に対向して前記X軸テーブルに固定されたスライドベースと各種のX軸バイトが取り付けられた刃物台,前記スライドベースに固定されたスライドブロック,前記スライドブロック上で前記X軸方向に直交し且つ前記Z軸方向と同一方向であるY軸方向に往復移動するY軸バイトを取り付けたスライダ,及び前記主軸の回転に同期して前記スライダを往復移動させる駆動装置を有し,前記ブロック治具にセットされた前記ワークの予め決められたそれぞれの加工形状に基づいて前記主軸の回転に同期して前記スライダをY軸方向に往復移動させて前記Y軸バイトによって前記ワークの前記加工形状を順次に切削加工させることから成る複数のレンズ等のワークを同時切削加工するNC加工機に関する。
【0014】
前記ワークはそれぞれの加工形状に応じて前記主軸の回転と前記Y軸方向の前記Y軸バイトの刃先のデータによって決められたプログラムによってそれぞれ順次に同時に切削加工され,前記ワークはそれぞれのプログラムに従って同一又は異なった加工形状にそれぞれ切削加工される。
【0015】
前記ワークはレンズ保持体にそれぞれ固着されたレンズであり,前記レンズ保持体は前記主軸の回転中心から隔置した周方向の複数箇所に等間隔に回転バランスして前記ブロック治具にチャック爪又は接着剤でそれぞれ固着されている。
【0016】
また,前記レンズ保持体を前記ブロック治具に固着する前記チャック爪は,前記ブロック治具の回転中心から隔置した周方向に等間隔に複数箇所にそれぞれ固定された固定チャック爪と,前記ブロック治具の回転中心から隔置した周方向に前記固定チャック爪に対向してそれぞれ設けられた移動可能な可動チャック爪とから構成されている。
【0017】
更に,前記レンズ保持体は,前記レンズを保持するレンズ保持部と前記レンズ保持部と一体で且つ前記チャック爪によって挟持される挟持部とから構成されている。
【0018】
或いは,前記ワークは前記ブロック治具にそれぞれ固着されたレンズであり,前記ブロック治具に形成された前記レンズを固着する保持凹部は前記ブロック治具の回転中心から隔置した周方向の複数箇所に回転バランスして等間隔にそれぞれ設けられている。
【0019】
前記ワークは,前記X軸バイトによって荒切削加工され,次いで,前記Y軸バイトによって仕上げ切削加工され,それによって,前記ワークの加工速度をアップさせることができる。
【0020】
前記スライドブロックには前記スライダを往復摺動させるため前記Y軸方向に延びる軌道レールが設けられ,前記スライダは前記軌道レールに沿って前記スライドブロック上を前記Y軸方向に高速高加速度で摺動可能である。
【0021】
前記スライダは,リニアモータによって往復駆動され,前記リニアモータを構成する電磁コイルと該電磁コイルに対して相対移動する界磁マグネットから構成され,前記電磁コイルと前記界磁マグネットとの何れか一方が前記スライダに組み込まれ,他方が前記スライドブロックに組み込まれている。前記リニアモータは,例えば,本出願人に係る特願2000−322239号公報に開示されたものが適用できる。
【0022】
このNC加工機は,上記のように構成されているので,従来のボールねじによるモータ回転をエンコーダによって検出した位置データをフィードバック制御したNC加工機に比較して,スライダが高速高加速度の往復移動に追従でき,主軸の回転速度をアップして複数のワークを高速高加速度に同時に切削加工してサイクルタイムを短縮することができる。また,スライダの往復移動にリニアモータ又はサーボモータを利用することができ,例えば,特願2000−322239号公報に開示されたリニアモータでスライダを往復移動させる場合には,往復移動するスライダそのものを極めて軽量に構成でき,スライダに発生する慣性力を小さく抑えることができ,主軸の回転速度を上昇させても,主軸の高速度に追従してスライダの動きを高速高加速度に高精度に制御することができる。
【0023】
また,このNC加工機では,特に,主軸に対して回転中心から隔置した位置に複数のレンズ等のワークが固着されるので,ワークに対するY軸バイトの速度零を無くしてワークの切削加工面に突起の発生を避け,個々のワークの加工軌跡はワークの全面にわたって円弧状になり,個々のワークに対するプログラミングによってワークには同一又は異なった加工形状を同時に切削加工することができる。また,このNC加工機では,ワークの加工面が均一な円弧状切削加工面となり,加工面の面粗さが均一であるので,引き続いて行われるワークの切削加工面の仕上げのための研磨を容易に且つ良好に行うことができる。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下,図面を参照して,この発明による複数のレンズ等のワークを同時切削加工するNC加工機の実施例を説明する。図1はこの発明によるNC加工機を説明する概略平面図,及び図2〜図15はこのNC加工機における主軸にワークを取り付けるブロック治具の種々の実施例を示す概略説明図である。また,この発明によるNC加工機は,図16及び図17に示すNC加工機と比較して主軸,Z軸方向に移動可能なZ軸テーブル及びX軸方向に移動可能なX軸テーブルは対応しているので,それらの部品には同一の符号を付して説明する。また,この発明によるNC加工機におけるスライドベース1は,図16及び図17に示すNC加工機におけるスライドベース13に対応している。
【0025】
このNC加工機は,例えば,複数のプラスチック製レンズ9L等のワーク9を同時切削加工するものであり,ワーク9に対して切削加工を行うX軸バイト24(ここではX軸方向に往復移動するバイトをいう)と,Y軸バイト20(ここでは,X軸方向とY軸方向へ往復移動するバイトをいう)を設けたものであり,X軸バイト24は一般的な高速の切削加工を行うためX軸テーブル4に取り付けられ,また,Y軸バイト20は高速高加速度でY軸方向に往復移動できるスライダ18に取り付けられている。スライダ18は,コントローラによって,主軸10の回転運動に同期させてY軸方向に往復移動させられると共に,外部データ入力等に追従して制御されて高速高加速度で往復移動可能であり,Y軸バイト20でワーク9の対面を高速高加速度で切削加工することを可能にする。
【0026】
このNC加工機は,特に,以下で説明する各実施例では,ワーク9がブロック治具17に固着された複数個(2〜4個)のレンズ9Lであり,これらのレンズ9Lの対面を,所定の加工形状,即ち,レンズ面等の凸面,凹面,円弧面等の非軸対称非球面形状に高速高速度で短時間で同時に切削加工することを可能にしたものである。即ち,このNC加工機は,特に,Y軸バイト20のみを設定して軽量に構成できるスライダ18に高速で且つ高加速度で往復移動させ,それによって,ブロック治具17にセットされたワーク9の予め決められたそれぞれの加工形状に基づいて,主軸10の回転に同期してスライダ18をY軸方向に往復移動させ,Y軸バイト20によってワーク9の対面を順次に切削加工させ,それぞれのワーク9に予め決められた同一又は異なった加工形状をそれぞれ同時に切削加工させることができることを特徴としている。
【0027】
このNC加工機は,主軸10の長手方向であるZ軸方向に移動可能なZ軸テーブル3と,Z軸テーブル3とは独立してZ軸方向に直交するX軸方向に移動可能なX軸テーブル4とが加工機ベース2に載置されている。Z軸テーブル3には主軸台5が載置されている。Z軸テーブル3は,加工機ベース2に取り付けられたサーボモータ6によって駆動され,Z軸方向に往復運動するように構成されている。また,主軸台5には,主軸10を回転させるスピンドルモータ7が組み込まれている。主軸10の先端にはチャック装置8が設けられており,チャック装置8にはブロック治具17を介してワーク9が保持され,ワーク9は回転駆動される。主軸台5は,主軸10の長手方向であるZ軸方向に移動可能なZ軸テーブル3上に載置されている。
【0028】
また,Z軸テーブル3のZ軸方向に直交するX軸方向に移動可能なX軸テーブル4は,主軸10のチャック装置8に取り付けられたワーク9と対向する位置の加工機ベース2上に配置されている。X軸テーブル4には,直接或いは刃物台テーブルを介在してスライドベース1が固定されると共に,主軸10に対向して各種のX軸バイト24が取り付けられる刃物台23が固定されている。スライドベース1には,長手方向に延びる凹部をそれぞれ備えた一対のスライドブロック部材から成るスライドブロック16が取り付けられている。スライドブロック16は,図示していないが,例えば,スライドベース1上にスライドブロック部材の凹部を互いに対向状態に配置し,一方のスライドブロック部材をスライドベース1に形成された係止段部に当接させ,スライドブロック部材の対向面に他方のスライドブロック部材の対向面を当接させてスライドベース1に設けた幅決めブロックで固定することによって組み立ててスライドベース1に固定されている。
【0029】
このNC加工機は,特に,複数のレンズ9L等のワーク9を主軸10の回転に従って同時に切削加工することを特徴とし,主として,加工機ベース2上に設置された主軸台5,主軸台5に回転可能に設けられた主軸10,主軸10に設けられたワーク9を取り付けたブロック治具17を把持するチャック装置8,主軸台5が載置され且つ主軸10の軸方向であるZ軸方向に移動可能なZ軸テーブル3,Z軸方向に直交するX軸方向に移動可能なX軸テーブル4,主軸10に対向してX軸テーブル4に固定されたスライドベース1と各種のX軸バイト24が取り付けられた刃物台23,スライドベース1上に固定されたX軸方向に直交するY軸方向(即ち,Z軸方向と同一方向)に延びるスライドブロック16,スライドブロック16上で往復移動するY軸バイト20が取り付けられたスライダ18,及び主軸10の回転に同期してスライダ18を往復移動させる駆動装置(図示せず)を有している。
【0030】
このNC加工機において,ワーク9であるレンズ9Lは,例えば,図2,図3,図7,図9,図14及び図15に示すように,チャック装置8によって主軸10の回転中心Oから隔置した周方向の複数箇所にそれぞれ固定され,それぞれのレンズ9Lは少なくともY軸バイト20によって主軸10の回転に同期してスライダ18がY軸方向に往復移動して順次に同時に切削加工されることを特徴としている。即ち,レンズ9Lは,図2〜図13に示すように,アルミニウム製等のレンズ保持体30を介してブロック治具17に固着されるか,又は図14と図15に示すように,ブロック治具17に直接固着されている。また,レンズ9Lをレンズ保持体30に固着する場合には,レンズ9Lは,レンズ保持体30に接着剤等で保護シートを介して固着され,或いは半田付け等で固着部31で固着されている。スライダ18は,主軸10の回転に同期してY軸方向に往復摺動し,レンズ9Lの加工形状は,主軸10の回転とY軸方向のY軸バイト20の刃先のデータによって決められたプログラムによってそれぞれ同時に切削加工され,レンズ9Lはそれぞれのプログラムに従って同一又は異なった加工形状に同時に切削加工される。
【0031】
ブロック治具17には,図2及び図3に示すように,レンズ9Lが主軸10の回転中心Oから隔置した周方向上の複数箇所(図では4箇所)に等間隔に回転バランスしてそれぞれ設けられている。又は,ブロック治具17はチャック装置8で固定されるが,ブロック治具17には,図4〜図6に示すように,主軸10の回転中心Oから隔置した周方向の複数箇所に等間隔にそれぞれ設けられたチャック爪21が設けられており,チャック爪21によってレンズ保持体30がそれぞれ位置決めされて把持される。レンズ保持体30は,レンズ9Lを固着するレンズ保持部37と,レンズ保持部37に一体でチャック爪21によって把持される挟持部33から構成されている。レンズ保持体30の位置決めは,位相出し部材28が挟持部33に形成された位相出し溝22に嵌合することによって所定の角度の姿勢に位置設定される。
【0032】
このNC加工機では,図2〜図8に示すように,ワーク9はレンズ保持体30にそれぞれ固着されたレンズ9Lであり,レンズ保持体30は主軸10の回転中心Oから隔置した周方向の複数箇所に等間隔に回転バランスしてブロック治具17にチャック爪21でそれぞれ固着されている。また,チャック爪21は,それぞれのチャック爪が可動なもので構成されている。或いは,チャック爪21は,図7及び図8に示すように,ブロック治具17の回転中心Oから隔置した周方向に等間隔に複数箇所にそれぞれ固定された固定チャック爪27と,ブロック治具17の回転中心Oから隔置した周方向に固定チャック爪27に対向してそれぞれ設けられた移動可能な可動チャック爪25とから構成されている。
【0033】
このNC加工機では,図9〜図10に示すように,ワーク9は,レンズ保持体30に接着剤又は溶接でそれぞれ固着されたレンズ9Lであり,レンズ保持体30は,主軸10の回転中心Oから隔置した周方向の複数箇所に等間隔に回転バランスしてブロック治具17に位置決め部材34で位置決めされて接着部38でそれぞれ固着されている。また,レンズ保持体30は,図4〜図6,図8又は図11〜図13に示すように,レンズ9Lを保持するレンズ保持部37と,レンズ保持部37と一体で且つチャック爪21によって挟持される挟持部33から構成されている。
【0034】
或いは,図11〜図13に示すように,レンズ保持体30は,レンズ9Lを接着部31に接着したレンズ保持部33とレンズ保持部33に一体の挟持部37とから構成されているので,ブロック治具17に設けた位置決めブロック34に,押さえ板29の押さえ面36によってレンズ保持体30の挟持部37を押し付けて位置決めし,ねじ35で押さえ板29をブロック治具17に固定することによって,レンズ保持体30をブロック治具17の所定の位置に位置決めして固着することができる。
【0035】
或いは,このNC加工機では,図14と図15に示されるように,ワーク9は,ブロック治具17にそれぞれ直接固着されたレンズ9Lであり,この場合には,ブロック治具17にレンズ9Lを固着するため,ブロック治具17には保持するレンズ9Lの数に対応するリセス即ち保持凹部32がブロック治具17の回転中心Oから隔置した周方向の複数箇所に回転バランスして等間隔にそれぞれ設けられている。レンズ9Lは,保持凹部32に嵌入してブロック治具17に接着剤で固着されおり,保持凹部32に堅固に保持されることになる。
【0036】
ワーク9は,X軸バイト23によって荒切削加工され,次いで,Y軸バイト20によって仕上げ切削加工されるので,先ず,X軸バイト23によってワーク9の素材に対する概略的な取り代を荒切削加工で極めて高速で切削加工して切り抜け,次いで,Y軸バイト20によってワーク9の所定の加工形状に仕上げ切削加工を行うので,トータルとしての切削加工時間を短時間で達成でき,しかもワーク9への加工軌跡が円弧面であるので,次に行うワーク9の加工面に対する研磨加工をスムースに行うことができる。
【0037】
また,スライダ18をY軸方向に往復移動させる駆動装置は,例えば,本出願人に係る特願2000−322239号公報に開示されたリニアモータ(図示せず)が適用でき,この場合には,リニアモータを構成する界磁マグネットと該界磁マグネットに対して相対移動する電磁コイルから構成され,界磁マグネットと電磁コイルとの何れか一方がスライダ18に組み込まれ,他方がスライドブロック16に組み込むことによって適用できる。この場合には,スライドブロック16には,スライドベース1上に固定されたX軸方向に直交するY軸方向(Z軸方向と同一方向)に延びるリニアガイドを構成する軌道レールが複数箇所に固定されている。スライダ18には,スライドガイドが固定されており,スライダ18は,スライドブロック16に設けた軌道レールに沿ってスライドガイドをY軸方向に往復移動させることによって,スライダ18は,スライドベース1上を高速高加速度で往復移動できる。
【0038】
スライダ18の移動範囲において,リニアモータコイルに沿って延びるリニアスケールとリニアスケール検出器が設けられている。従って,スライダ18のスライドブロック16に対する移動量は,リニアスケール検出器によって直ちに検出され,その移動量の情報はコントローラにフィードバックされ,次のスライダ18の移動制御に反映される。このNC加工機に設けられたコントローラは,予め決められた加工指令値に基づいてスライダ18に設けたY軸バイト20によってワーク9の切削加工を行わせ,その切削加工情報をフィードバックさせ,切削加工情報と加工指令値との差を零に近づける制御をし,ワーク9に対する次の切削加工に活かす学習機能を備えている。また,コントローラは,予め備えている切削能力を考慮してスライダ18に設けたY軸バイト20によってワーク9の切削加工を行わせる予見機能を備えている。
【0039】
スライドブロック16には,リニアモータコイルを冷却するための冷却プレートが設けられている。リニアモータコイルには,リニアモータ磁石板がスライダ18の往復移動に伴って磁力を切るが,その時に熱が発生し,高温になる。そこで,冷却プレートは,リニアモータコイルに発生した熱を冷却するため設けられている。また,スライドベース1のY軸とZ軸テーブル3のZ軸との平行度を調整するため基準ブロックがX軸テーブル4に取り付けられている。スライドベース1には調節ブロックが設けられているので,調節ブロックに設けた調整ねじによって,スライドベース1を基準ブロックに対して調整し,Y軸とZ軸との平行度が調整される。また,スライドブロック16と軌道レールの間には,スライダ18のスライドブロック16に対する移動範囲の位置決めをするLM部ライナが設けられている。スライドブロック16には,スライダ18のストロークを規制するためのストッパが設けられている。
【0040】
【発明の効果】
この発明による複数のレンズ等のワークを同時切削加工するNC加工機は,上記のように構成されているので,ワークに対して非軸対称非球面等の加工形状を高速高加速度で,高精度に切削加工せて短時間にワークの切削加工が達成され,特に,ワークがレンズである場合には,レンズが回転中心から隔置した位置にチャック爪,接着剤等で固着することによって取り付けられ,同時切削加工が可能になり,加工軌跡が円弧形状になってバイトの速度零が無くなってレンズの切削面の中心に突起が発生せず,スライダに設けたY軸バイトの往復移動を主軸の回転に同期させてワーク毎に加工形状に応じたプログラムに従ってワークに対する面加工を行い,ワークの切削加工を高精度に且つ短時間で達成できる複数のレンズ等のワークを同時切削加工できる。
【0041】
また,スライダをリニアモータで構成した場合には,スライダ自体を軽量に構成でき,スライダの慣性力を低減し,スライダを主軸の回転に対応させて追従性,応答性を向上させ,高速高加速度に対応でき,バイトによるワークの切削加工が高速高加速度で,しかも高精度に切削加工を達成することができ,短時間でワークを切削加工することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明による複数のレンズ等のワークを同時切削加工するNC加工機を説明する概略平面図である。
【図2】ワークであるレンズをレンズ保持体に複数取り付けた状態の一実施例を示す平面図である。
【図3】図2の側面図である。
【図4】レンズ保持体を位置決めしてチャック爪で固定する状態を示す断面図である。
【図5】図4のレンズ保持体の下面図である。
【図6】図4の側面図である。
【図7】ワークであるレンズをレンズ保持体に複数取り付けた状態の別の実施例を示す平面図である。
【図8】図7のレンズ保持体をチャック爪で固定した状態を示す断面図である。
【図9】ワークであるレンズをレンズ保持体に複数取り付けた状態の更に別の実施例を示す平面図である。
【図10】図9の側面図である。
【図11】レンズをレンズ保持体に固定した状態を示す断面図である。
【図12】図11のレンズ保持体をブロック治具に押さえ板で固定した例を示す断面図である。
【図13】図12の平面図である。
【図14】複数のレンズをブロック治具に直接取り付けた状態の他の実施例を示す平面図である。
【図15】図14の断面図である。
【図16】従来のNC加工機を示す概略正面図である。
【図17】図16のNC加工機の概略平面図である。
【符号の説明】
1 スライドベース
2 加工機ベース
3 Z軸テーブル
4 X軸テーブル
5 主軸台
6,14,19 サーボモータ
7 スピンドルモータ
8 チャック装置
9 ワーク
9L レンズ
10 主軸
11 ターナ
16 スライドブロック
17 ブロック治具
18 スライダ
20 Y軸バイト
21 チャック爪(3爪)
22 位相出し溝
23 X軸刃物台
24 X軸バイト
25 可動チャック爪
26 バイトホルダ
27 固定チャック爪
28 位相出し部材
29 押さえ板
30 レンズ保持体
31 固着部
32 保持凹部
33 挟持部
34 位置決めブロック
35 ねじ
36 押さえ面
37 レンズ保持部
38 接着部
O 回転中心
Claims (9)
- 主軸台に回転可能に配置された主軸,前記主軸の回転中心に回転中心を位置させてブロック治具を把持するチャック装置,前記ブロック治具の前記回転中心から隔置した周方向の複数箇所にそれぞれ固定されたワーク,前記主軸台が載置され且つ前記主軸の軸方向であるZ軸方向に移動可能なZ軸テーブル,前記Z軸方向に直交するX軸方向に移動可能なX軸テーブル,前記主軸に対向して前記X軸テーブルに固定されたスライドベースと各種のX軸バイトが取り付けられた刃物台,前記スライドベースに固定されたスライドブロック,前記スライドブロック上で前記X軸方向に直交し且つ前記Z軸方向と同一方向であるY軸方向に往復移動するY軸バイトを取り付けたスライダ,及び前記主軸の回転に同期して前記スライダを往復移動させる駆動装置を有し,前記ブロック治具にセットされた前記ワークの予め決められたそれぞれの加工形状に基づいて前記主軸の回転に同期して前記スライダをY軸方向に往復移動させて前記Y軸バイトによって前記ワークの前記加工形状を順次に切削加工させることから成る複数のレンズ等のワークを同時切削加工するNC加工機。
- 前記ワークはそれぞれの加工形状に応じて前記主軸の回転と前記Y軸方向の前記Y軸バイトの刃先のデータによって決められたプログラムによってそれぞれ順次に同時に切削加工され,前記ワークはそれぞれのプログラムに従って同一又は異なった加工形状にそれぞれ切削加工されることから成る請求項1に記載のNC加工機。
- 前記ワークはレンズ保持体にそれぞれ固着されたレンズであり,前記レンズ保持体は前記主軸の回転中心から隔置した周方向の複数箇所に等間隔に回転バランスして前記ブロック治具にチャック爪又は接着剤でそれぞれ固着されていることから成る請求項1又は2に記載のNC加工機。
- 前記レンズ保持体を前記ブロック治具に固着する前記チャック爪は,前記ブロック治具の回転中心から隔置した周方向に等間隔に複数箇所にそれぞれ固定された固定チャック爪と,前記ブロック治具の回転中心から隔置した周方向に前記固定チャック爪に対向してそれぞれ設けられた移動可能な可動チャック爪とから構成されていることから成る請求項3に記載のNC加工機。
- 前記レンズ保持体は,前記レンズを保持するレンズ保持部と前記レンズ保持部と一体で且つ前記チャック爪によって挟持される挟持部とから形成されている請求項3又は4に記載のNC加工機。
- 前記ワークは前記ブロック治具にそれぞれ固着されたレンズであり,前記ブロック治具に形成された前記レンズを固着する保持凹部は前記ブロック治具の回転中心から隔置した周方向の複数箇所に等間隔にそれぞれ設けられていることから成る請求項1又は2に記載のNC加工機。
- 前記ワークは,前記X軸バイトによって荒切削加工され,次いで,前記Y軸バイトによって仕上げ切削加工されることから成る請求項1〜6のいずれか1項に記載のNC加工機。
- 前記スライドブロックには前記スライダを往復摺動させるため前記Y軸方向に延びる軌道レールが設けられ,前記スライダは前記軌道レールに沿って前記スライドブロック上を前記Y軸方向に高速高加速度で摺動可能であることから成る請求項1〜7のいずれか1項に記載のNC加工機。
- 前記スライダはリニアモータによって往復駆動され,前記リニアモータを構成する電磁コイルと該電磁コイルに対して相対移動する界磁マグネットから構成され,前記電磁コイルと前記界磁マグネットとの何れか一方が前記スライダに組み込まれ,他方が前記スライドブロックに組み込まれていることから成る請求項1〜8のいずれか1項に記載のNC加工機。
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