JP4637869B2 - 不定形耐火物 - Google Patents
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Description
流し込み施工では、乾燥中における水分の脱水およびセメント水和物の脱水等によって生ずる水蒸気圧の上昇に伴い、流し込み施工体が爆裂する可能性があり、流し込み施工体の乾燥爆裂を防止するため、以下のような対策を講じている。
a.水および水蒸気を速やかに流し込み施工体の外に排出する。
b.乾燥温度の制御により急激な水蒸気発生を抑制する。
c.流し込み施工体の強度を高めて、水蒸気圧の上昇に耐える。
一方、ビニロン繊維は、ポリプロピレン繊維やポリエステル繊維のように溶融せずに500〜600℃まで残存するため、空隙形成効率に劣るという欠点がある。
コンクリートは養生期間として1ヶ月程度確保できるため、その間に芯部のアルカリ可溶樹脂が溶解、体積減少して複合繊維の芯部を空洞化することが可能であるが、不定形耐火物の乾燥および養生は各1〜3日程度で行われるため、芯部のアルカリ可溶樹脂が溶解して空洞化するのに必要な時間を確保できない。
しかし、溶融点が低い有機繊維は、分子構造の結晶化度が低くなるため、繊維の直線性が確保されずに丸まったり、攪拌時のせん断で繊維が切断されたりして所定の繊維形態が維持できず、性能を発揮できないという問題がある。このため、複数種の有機繊維を不定形耐火物材料に単純に混入するのではなく、複数種の素材を複合化した複合繊維として不定形耐火物材料に混入する必要がある。
ポリプロピレンより溶融点が低い有機物としては、脂肪族ポリエステルや、ポリエチレンなかでも低密度ポリエチレンが好ましい。
ここで、前記ポリプロピレンは、アイソタクチック型やアタクチック型等の立体構造による差異をとわない。また、プロピレンの単独重合体タイプ(ホモポリマー)に加えて、プロピレンとエチレン等をブロック的に共重合したタイプ(インパクトコポリマー)や、プロピレンとエチレン等をランダムに共重合したタイプ(ランダムコポリマー)等をポリプロピレンの総称として用いている。
一方、前記ポリエチレンは、エチレンの単独重合体であるポリエチレン、およびエチレンとコモノマーとの共重合体であるポリエチレンコポリマーの総称として用いている。また、低密度ポリエチレンは、JIS K6922によれば、密度が0.910〜0.929g/cm3の範囲にあるポリエチレンをいうが、本発明では、密度が0.929g/cm3以下であるポリエチレンをいう。
並列型断面または偏芯型断面とすることにより、ポリプロピレンより溶融点が低い有機物が溶融したときの空隙形成において、同断面積の芯鞘型と比べて大きな空隙幅を確保することができるだけでなく、ポリプロピレンについても同断面積の芯鞘型と同程度の空隙幅を確保することができる。
また、溶融点の低い有機物の場合、細い繊維形状を得ることは困難だが、本発明の複合繊維は、通常の紡糸で作製することが可能である。特に、並列型や芯鞘型(偏芯型を含む。)の複合繊維は、非常に簡単に複合化でき、形状設計、断面設計が容易となる。
また、図2に芯鞘型複合繊維、図3に偏芯型複合繊維の実施形態の一例をそれぞれ示す。第一成分1を芯部、第二成分2を鞘部とし、偏芯型複合繊維では、芯部の重心位置が複合繊維の重心位置から偏心している。本実施形態では、溶融点の低い第二成分2を早期に溶融させるため、芯部より温度が早く伝達される鞘部に第二成分2を配している。
エチレン酢酸ビニル共重合体は、エチレンと酢酸ビニルを共重合した熱可塑性樹脂であり、酢酸ビニルの含有量が増加するにつれて溶融点が低下する。酢酸ビニル含量の少ないものは低密度ポリエチレンに近い性質を示すが、より強靭性を示す。酢酸ビニル含量が多くなるに従って柔軟性を増し、ゴムに近い性質を示すようになる。
複合繊維量が0.01質量%未満であると、目的とする耐乾燥爆裂性が十分に得られない場合があり、1.0質量%を超えると、施工時の添加水量が増加して得られる施工体の緻密性が低下する場合がある。
繊度が1dtex未満であると、複合繊維の溶融に伴って空隙が形成されても、空隙を通過する抵抗が大きすぎるため、水蒸気が拡散しにくくなる場合がある。一方、繊度が100dtexを超えると、複合繊維の添加量が0.01〜1.0質量%の場合には、繊維の本数が少な過ぎるため、充分な数の空隙が形成されない場合がある。逆に複合繊維の添加量を増やすと施工体の緻密性が低下する場合がある。
また、繊維長が1mm未満であると、連続的な空隙を形成するために多量の添加が必要になって不経済であり、繊維長が50mmを超えると、混練水量が増加して得られる施工体の緻密性が低下するために好ましくない。
さらに、その他の添加剤として、硬化遅延剤や硬化促進剤等の硬化調整剤、アルミ系金属粉、乳酸アルミニウム、グリコール酸アルミニウム、乳酸−グリコール酸アルミニウム、可塑性を調整する目的の高分子有機材料等の不定形耐火物に通常使用されている副原料も必要に応じて添加することができる。また、一部の添加剤は、結合材としても作用する。
表1に、以下の各実施例および比較例で使用した流し込み耐火物の配合組成を示す。また、表2に、本発明の実施例1〜3とその比較例1・2の諸元および通気率を示す。ここで、表中のPPはポリプロピレン、LDPEは低密度ポリエチレン、HDPEは高密度ポリエチレン、PESはポリエチレンサクシネート、PVAはポリビニルアルコールの略称であり、比較例2に使用したPVAは、水塩基性を有する塩−PVAからなる含水−含塩のPVA繊維(ビニロン繊維)である。
通気率μ(cm2/(cmH2O・sec))は、次式により求めた。
ポリプロピレンと低密度ポリエチレンからなる並列型複合繊維の断面形状、繊維の種類、および混練条件を表3の通りとした以外、実施例1と同様にして流し込み耐火物の試験片を作成した。なお、表中、芯鞘型および偏芯型は、芯部がポリプロピレン、鞘部が低密度ポリエチレンからなる複合繊維、芯鞘中空型は、芯鞘型の中心部に約20μmの空隙を持つ複合繊維、中空型は、約20μmの空隙を持つ鞘状の繊維のことである。
ポリプロピレンと低密度ポリエチレンからなる並列型複合繊維の繊維長×繊度、および混練条件を表4の通りとした。表4に示したように、添加水分を5.5(質量%,外掛け)に固定したため、フローコーンを用いて測定したフロー値が小さくなったものに関しては、適宜振動を加えて流し込み成形を行った。それ以外は、実施例1と同様にして流し込み耐火物の試験片を作成した。
繊維の種類および混練条件を表5の通りとした以外、実施例1と同様にして流し込み耐火物の試験片を作成した。
乾燥試験に使用したサンプルは500×500×200mm形状で、下記の手順で作製し、乾燥試験を実施した。
材料は表1に示す配合割合とし、複合繊維は、実施例16が表2の実施例1、比較例5が表2の比較例2にそれぞれ対応している。混練時の水分量は、実施例16が外掛け5.5質量%、比較例5が外掛け5.4質量%とした。
流し込み成形は、内面が幅500mm、高さ540mm、厚さ200mm金型を使用し、高さが500mmになるように調整して充填した。
その後、流し込み面をビニルシートでラッピングし、20℃の恒温室で2日間養生して硬化させた。
サンプルの加熱面中央部の表面に接触させた熱電対を制御用に使用し、所定の加熱スケジュールとなるように、サンプルをバーナーで加熱して乾燥させた。
乾燥時の材料内部の温度は、乾燥時に背面側となる金枠に空けた穴から、流し込み成形時にアルミナ質保護管を埋め込み、その中に熱電対を挿入して測定した。
また、内部蒸気圧は、同様に乾燥時に背面側となる金枠に空けた穴から、流し込み成形時にシリコーンオイルを充填した銅管を埋め込み、乾燥時に圧力センサーに接続して測定した。
温度と内部蒸気圧の測定位置は、サンプルを加熱する500×500mmの面の中央部で、加熱面から背面側へ50mmと100mmの位置とした。
実施例16では、表面から50mm位置において、内部温度約125℃で内部発生蒸気圧が最大となった。また、表面から100mm位置では、143℃で内部発生蒸気圧が最大となった。
一方、比較例5では、爆裂が生じた。爆裂が生じた位置は、表面から90〜100mm付近であった。爆裂が生じた時点における内部温度は、表面から50mm位置で161℃、100mm位置では、爆裂直前から内部発生蒸気圧が急激に上昇し、爆裂した時点における内部温度は140℃であった。
この実験から、爆裂が生じる際の爆裂発生部位の温度は、50,100mm位置における爆裂時の温度から、おおよそ140〜160℃と見積もることができる。
しかし、90〜150℃の温度領域での通気率が良好であれば、発生蒸気はすみやかに内部から外部へ拡散するため、内部の発生蒸気圧が高くなりにくく、実施例16ではそのような発生蒸気圧の挙動を呈している。これは、表層が90〜150℃の温度領域の時に、実施例16では十分な通気率が確保されているため、耐火物内部で発生した水蒸気が、形成された空隙を通じて速やかに耐火物の外に拡散して飛散し、内部発生蒸気圧の上昇が抑えられ、その結果最大蒸気圧が比較例5と比べて低くなるためと考えられる。
一方、比較例5では、表面から50mm位置および100mm位置までの通気率が高くなく、そのため、耐火物内部で発生した水蒸気が耐火物の外に拡散しにくく内部にたまりやすくなり、それにより発生蒸気圧は高くなる。その結果比較例5は水蒸気圧の急激な上昇を抑えることができず、爆裂に至ったものと考えられる。
本試験では、ポリプロピレンと複合化する有機物として、低密度ポリエチレンとエチレン酢酸ビニル共重合体とが相溶してなる相溶物を用いた試験片を作成し、その通気率について調べた。表6に、本発明の実施例17〜20の諸元および通気率について、実施例1および5と対比して示す。ここで、EVAはエチレン酢酸ビニル共重合体の略称であり、示差走査熱量測定(DSC)結果によれば、試験片に含まれるエチレン酢酸ビニル共重合体の溶融点は83℃であった。また、低密度ポリエチレンの溶融点は103℃、ポリプロピレンの溶融点は155℃であった。
2 第二成分
3 中空部
Claims (10)
- ポリプロピレンと、ポリプロピレンより溶融点が低い有機物とを複合化した複合繊維を含有してなる不定形耐火物。
- 前記複合繊維が、ポリプロピレンと、ポリプロピレンより溶融点が低い有機物とが並列に配置された並列型断面とされている請求項1に記載の不定形耐火物。
- 前記複合繊維が、ポリプロピレンからなる芯部と、ポリプロピレンより溶融点が低い有機物からなる鞘部とを備える芯鞘型断面とされている請求項1に記載の不定形耐火物。
- 前記複合繊維が、ポリプロピレンからなる芯部と、ポリプロピレンより溶融点が低い有機物からなる鞘部とを備え、前記芯部の重心位置が前記複合繊維の重心位置から偏心している偏芯型断面とされている請求項1に記載の不定形耐火物。
- ポリプロピレンより溶融点が低い有機物が、ポリエチレンである請求項1乃至4のいずれかに記載の不定形耐火物。
- ポリプロピレンより溶融点が低い有機物が、ポリエチレンとエチレン酢酸ビニル共重合体とが相溶してなる相溶物である請求項1乃至4のいずれかに記載の不定形耐火物。
- 前記相溶物100質量%に占める前記エチレン酢酸ビニル共重合体の割合が、30質量%以下(但し、0質量%を除く)である請求項6に記載の不定形耐火物。
- 前記エチレン酢酸ビニル共重合体は、その溶融点が100℃以下である請求項6または7に記載の不定形耐火物。
- 前記ポリエチレンが、低密度ポリエチレンである請求項5乃至8のいずれかに記載の不定形耐火物。
- 単一素材からなる単一繊維をさらに含有してなる請求項1乃至9のいずれかに記載の不定形耐火物。
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