以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態について説明する。図1は、本発明の実施の一形態に係る4サイクル火花点火式エンジン10の概略構成を示す構成図であり、図2は図1に係るエンジン本体20の一つの気筒とそれに対して設けられた吸排気弁等の構造を示す断面略図である。
これらの図において、図示の4サイクル火花点火式エンジン10のエンジン本体20は、クランクシャフト21を回転自在に支持するシリンダブロック22と、シリンダブロック22の上部に配置されたシリンダヘッド23とを一体的に有している。
シリンダブロック22およびシリンダヘッド23には、複数の気筒24が設けられている。各気筒24には、クランクシャフト21に連結されたピストン25と、ピストン25が気筒24内に形成する燃焼室26とが公知の構成と同様に設けられている。
各燃焼室26の側部には、当該燃焼室26に直接燃料を噴射する燃料噴射弁28が設けられている。また、各燃焼室26の頂部には、点火プラグ29が装備され、そのプラグ先端が燃焼室26内に臨んでいる。点火プラグ29には、電子制御による点火タイミングのコントロールが可能な点火回路29aが接続されている。
エンジン本体20は、当該気筒24内に対して新気を供給する吸気システム30と、気筒24の燃焼室26で燃焼した既燃ガスを排気する排気システム50とを有している。
吸気システム30は、新気を気筒24内に供給するための吸気通路31と、この吸気通路31の下流側に連通するインテークマニホールド32を備え、このインテークマニホールド32はサージタンクから分岐してそれぞれ対応する気筒24に接続される分岐吸気管33を備えている。図示の実施形態において、各気筒24には、2つ一組の吸気ポート24aが形成されており(図1参照)、前記分岐吸気管33の下流端は、各気筒24の吸気ポート24aに対応して二股に形成されている。
吸気システム30の吸気通路31には、吸気流量を調節するスロットル弁35が設けられている。このスロットル弁35は、図略のアクチュエータによって開閉駆動されるように構成されている。また、このスロットル弁35の上流側の吸気通路31には、第1三方弁38が設けられている。この第1三方弁38は、電磁弁として構成され、図略のアクチュエータによって個別に所望量だけ開閉できるように構成されている。
この第1三方弁38の上流側の吸気通路31にはバイパス通路39が設けられ、このバイパス通路39の下流端が第1三方弁38に接続されている。このバイパス通路39には、ヒータ44が設けられ、バイパス通路39を流通する新気を加熱可能に構成されている。したがって、上記第1三方弁38を切り換えることにより、外気を直接インテークマニホールド32に導入したり、この外気を所望の割合でヒータ44で加熱してからインテークマニホールド32に導入したりすることができるようになっている。
さらに、この吸気通路31のバイパス通路39の分岐部分近傍には、加熱通路45が分岐接続されている。この加熱通路45の途中には、冷却水熱交換器46と、排気熱交換器47とが接続されている。
加熱通路45は、各熱交換器46,47で熱交換して昇温した新気を吸気側に還流するためのものである。加熱通路45の下流側には気筒24毎に分岐した分岐管45aが設けられ、各分岐管45aの下流端は各分岐吸気管33にそれぞれ設けられた第2三方弁48に接続されている。この第2三方弁48も電磁弁として構成され、図略のアクチュエータによって個別に所望量だけ開閉できるように構成されている。したがって、上記第2三方弁48を切り換えることにより、インテークマニホールド32から新気を分岐吸気管33に導入したり、加熱通路45を経て吸熱された新気を分岐吸気管33に導入したりすることができるようになっている。
冷却水熱交換器46は、エンジン本体20の水冷システム49に接続されて、エンジン本体20のウォータジャケット20a(図2参照)からラジエータ(図示せず)に還流する冷却水が当該エンジン本体20で吸収した熱を、当該熱交換器46の隔壁を介して間接的に、加熱通路45を流通する吸気に吸収させるためのものである。
排気熱交換器47は、エンジン本体20の排気管51に接続され、既燃ガスの熱を、当該熱交換器47の隔壁を介して間接的に、加熱通路45を流通する吸気に吸収させるためのものである。排気熱交換器47は加熱通路45において冷却水熱交換器46の下流側に配置されている。
上記した吸気通路31、バイパス通路39および加熱通路45は、いずれも配管等によって構成されている。ヒータ44および各熱交換器46,47の下流側に配置された、これらの配管、およびインテークマニホールド32は、その所定の部分が例えばグラスウール等を含む断熱帯が巻き付けられることにより形成された断熱部37によって包囲されている。したがって、この断熱部37によって、ヒータ44および各熱交換器46,47で加熱された吸気の放熱が抑制され、この吸気によって効率よく気筒24が暖められる。
当実施形態において、上記したヒータ44と、各熱交換器46,47とが吸気加熱システム70の主要部をなしている。特に、排気熱交換器47がエンジンから排出される排気の熱を利用して吸気を加熱するものとなっている。
各気筒24に設けられた各吸気ポート24aには吸気弁40が設けられ、図示の実施形態では吸気ポート24aに対応して各気筒毎に2つずつの吸気弁40が設けられている。各吸気弁40は、動弁機構41によって駆動される構成になっている。この動弁機構41は、吸気弁40の開閉タイミングを可変にする吸気弁駆動手段を有し、当実施形態では、吸気弁駆動手段として、吸気弁40の開弁タイミング(位相角度)を変更可能なVCT(Variable Camshaft Timing機構)42と、吸気弁40のリフト量(開弁量)を無段階で変更可能なVVE(Variable Valve Event)43とを備えている。
図3は、図1の実施形態に係る動弁機構41の具体的な構成を示す斜視図である。
同図に示すように、動弁機構41は、各気筒24が並ぶ方向(図1参照)に沿って延びるカムシャフト41aを備えており、このカムシャフト41aに対してVCT42とVVE43とが組み込まれている。
VCT42は、カムシャフト41aの端部に固定されるロータ(入力部材)42aと、ロータ42aの外周に同心に配置されたケーシング(出力部材)42bと、このケーシング42bに固定され、前記カムシャフト41aの外周に相対的に回動自在に配置されたスプロケット42cとを有している。スプロケット42cには、クランクシャフト21(図2参照)から駆動力を伝達するチェーン42dが巻回されている。また、ロータ42aとケーシング42bとの間には、図略の作動油室が形成されており、電磁弁42eの油圧制御によって、ロータ42aとケーシング42bは、一体的な回転動作または相対的な回転動作に切換えられるようになっている。これにより、VCT42は、クランクシャフト21に対するカムシャフト41aの位相をずらすことで吸気弁40の開弁開始時期および閉弁時期を同時に変更することが可能な作動時期可変機構を構成している。後述するように、電磁弁42eは、ECU100によって駆動制御されるようになっており、この駆動制御により、ロータ42aとケーシング42bとが連結と非連結とに切換わるようになっている。
次に、VVE43は、吸気弁40に対応して各気筒毎に一対ずつの吸気カム43a、43bを備えている。これらの吸気カム43a,43bは、その間に設けられたスリーブ状の連結部43cによって互いに連結され、カムシャフト41aに対して相対回転自在に取り付けられている。
図4は、図3のVVEの要部を示す断面図であり、(A)は大リフト制御状態においてリフト量が0のときを示し、(B)は大リフト制御状態においてリフト量が最大のときを示し、(C)は小リフト制御状態においてリフト量が0のときを示し、(D)は小リフト制御状態においてリフト量が最大のときを示している。
図3並びに図4(A)〜(D)に示すように、カムシャフト41aに対して相対回転自在に取り付けられた吸気カム43a,43bを揺動させるために、カムシャフト41aには、気筒24毎に設けられた偏心カム43dが固定されている。この偏心カム43dは、図4(A)〜(D)から明らかなように、カムシャフト41aに対して偏心している。偏心カム43dの外周には、オフセットリンク43eが回動自在に取り付けられている。オフセットリンク43eの外周部には、径方向に突出する突部43fが一体に設けられている。この突部43fには、カムシャフト41aと平行な連結ピン43gが貫通しており、この連結ピン43gによって、オフセットリンク43eの両側面には、それぞれリンクアーム43h、43iの一端部が回動自在に取り付けられている。一方のリンクアーム43hは、オフセットリンク43eと前記吸気カム43bとを連結するものであり、その他端部が、カムシャフト41aと平行なピン43jによって吸気カム43bの膨出部近傍部分に回動自在に連結されている。また、他方のリンクアーム43iは、オフセットリンク43eの位相を変更するコントロールシャフト43kにオフセットリンク43eを連結するためのものであり、このコントロールシャフト43kに固定されたコントロールアーム43mの端部に対し、リンクアーム43iの他端部がカムシャフト41aと平行なピン43nで回動自在に連結されている。
図3に示すように、コントロールシャフト43kの途中部には、扇形のウォームホイール43pが固定されており、このウォームホイール43pに噛合するウォームギヤ43qが、ステッピングモータ43rによって回転駆動されるようになっている。後述するように、ステッピングモータ43rは、ECU100によって駆動制御されるようになっており、この駆動制御により、コントロールアーム43mの位相が決定され、それによってオフセットリンク43eの位相が決定されるので、タペット61を駆動する吸気カム43bの回動軌跡が当該吸気弁40の軸方向において変化し、バルブリフト量が無段階で変更されるようになっている。
図4(B)に示すように、タペット61は、吸気弁40のバルブステム40aの端部に固定されている。他方、吸気弁40のバルブステム40aは、周知のバルブガイド40bにガイドされている。このバルブガイド40bの外周には、スプリングシート部40cが一体に形成されており、このスプリングシート部40cには、当該タペット61の内奥部に形成されたスプリングシート部61aとの間に縮設されるバルブスプリング40dが着座している。
前記吸気カム43bは、このタペット61に接合し、バルブスプリング40dの付勢力を受けている。
この状態において、ステッピングモータ43rによりコントロールシャフト43kおよびコントロールアーム43mを回動させて、図4(A)(B)に示すようにピン43nをコントロールシャフト43kの下方に位置付けると、吸気カム43bの揺動角が大きくなり、リフトピークにおけるバルブのリフト量が最も大きな大リフト制御状態になる。また、そこからコントロールアーム43mなどの回動によってピン43nを上方へ移動させると、これに応じて吸気カム43bの揺動角は小さくなり、図4(C)(D)に示すようにピン43nをカムシャフト41aの上方に位置付けると、バルブのリフト量が最も小さな小リフト制御状態になる。
図4(A)(B)に示す大リフト制御状態において、吸気カム43bは、同図(B)に示すようにカムノーズの先端側でタペット61を押圧し、該タペット61を介して吸気弁40を大きくリフトさせたリフトピークの状態(吸気カム43bがタペット61を介して吸気弁40を大きくリフトさせた状態)と、同図(A)に示すように吸気弁40(吸気弁40)のリフト量が0になる状態との間で揺動する。小リフト制御状態である図4(C)(D)の場合も同様にリフトピークの状態(カムノーズの基端側でタペット61を押圧)とリフト量0の状態との間で揺動する(同図(D)および(C)参照)。
図5は、図4(B)(D)の制御状態を模式的に表わすものであり、(A)は大リフト制御位置、(B)は小リフト制御位置に対応している。なお図5(A)(B)では、コントロールアーム43mおよびリンクアーム43h,43iについては簡略に直線で表しており、また、偏心カム43dの中心(オフセットリンク43eの外輪の中心)の回転軌跡を符号T0として示している。
まず、図5(A)を参照して吸気カム43b自体のプロファイルを説明すると、この吸気カム43bの周面には、曲率半径が所定角度範囲一定の基円面(ベースサークル区間)θ1と、該θ1に続いて曲率半径が漸次大きくなっているカム面(リフト区間)θ2とが形成されている。
図5(A)に実線で示すのは吸気弁40がリフトピーク近傍にある図4(B)の状態であり、このときには、リンクアーム43hによってピン43jが最も上方に引き上げられ、吸気カム43bは、カム面θ2のカムノーズ先端側がタペット61に当接した状態になっている。一方、仮想線で示すのはバルブリフト量Hが0の状態(図4(A))であり、このときには吸気カム43bの基円面θ1がタペット61に接していて、吸気弁40が閉じた状態になっている。
そして、カムシャフト41a(偏心カム43d)が図の時計回りに回転すると、これに伴いオフセットリンク43eの一端側(図の下端側)は、図に矢印で示すようにカムシャフト41aの軸心X周りを公転することになるが、このオフセットリンク43eの他端部の変位はそこに連結されたリンクアーム43iによって規制される。すなわち、リンクアーム43iは、コントロールシャフト43kの下方に位置付けられたピン43nを中心に図の実線の位置と仮想線の位置との間を揺動し、これに伴い、オフセットリンク43eの他端側(連結ピン43g)は、偏心カム43dが1回転する度に、ピン43nを中心として往復円弧運動をすることになる(この連結ピン43gの運動軌跡をT1として示す)。
前記連結ピン43gの往復円弧運動T1に伴い、この同じ連結ピン43gによって一端部がオフセットリンク43eに連結されているリンクアーム43hの他端部(ピン43j)は、図にT2として示す軌跡で往復円弧運動し、そのピン43jによってリンクアーム43hに連結されている吸気カム43bが図の実線の位置と仮想線の位置との間で揺動運動をする。すなわち、前記連結ピン43gが上方に移動するときには、リンクアーム43hによってピン43jが上方に引き上げられて、吸気カム43bのカムノーズがタペット61を押し下げ、これによりバルブスプリング40d(図4(B)参照)を圧縮しながら、吸気弁40をリフトさせる。
一方、連結ピン43gが下方に移動するときには、リンクアーム43hによってピン43jが下方に押し下げられて、吸気カム43bのカムノーズが上昇することになるので、前記の圧縮されたバルブスプリング40dの反力によってタペット61が押し上げられて、前記カムノーズの上昇に追従するように上方に移動し、吸気弁40が引き上げられて、吸気通路の吸気ポート24aが閉じられる。
つまり、大リフト制御状態では、吸気カム43bがその周面の基円面θ1およびカム面θ2の略全体によってタペット61を押圧するように大きく揺動し、このように大きな揺動角に対応してバルブのリフト量が大きくなるものである。
また、前記の大リフト制御状態から、コントロールアーム43mをコントロールシャフト43kの軸心回りに上方へ略水平になるまで回動させて、図4(D)や図5(B)に示すように、リンクアーム43iの回動軸であるピン43nを大リフト制御状態よりもカムシャフト41aの回転方向の手前側に位置付けると、小リフト制御状態になる。この図5(B)においても図5(A)と同様に吸気弁40がリフトピーク近傍にある状態を実線で示し、リフト量Hが0の状態を仮想線で示している。
図5(B)において、カムシャフト41a(偏心カム43d)が回転すると、前記大リフト制御状態と同様にオフセットリンク43eの連結ピン43gはリンクアーム43iによって変位が規制され、コントロールシャフト43kの側方に位置するピン43nを中心として、往復円弧運動T3をする(リンクアーム43iは図の実線位置と仮想線位置との間で往復回動する)。そして、その連結ピン43gの往復円弧運動T3に伴ってリンクアーム43hのピン43jが往復円弧運動T4をし、そのピン43jによってリンクアーム43hに連結されている吸気カム43bが、図の実線の位置と仮想線の位置との間で揺動運動をして、吸気弁40を開閉するようになる。
つまり、小リフト制御状態では、前記大リフト制御状態と比べて吸気カム43bの揺動角が小さくなり、この吸気カム43bが、その周面の基円面θ1およびこれに連続するカム面θ2の一部分のみによってタペット61を押圧するようになって、バルブのリフト量が小さくなるものである。
なお、当実施形態では、図2に示すように、4気筒のエンジンに対してVVE43を2組設け、各VVE43が2気筒ずつ個別に、排気弁のリフト量の調節を行い得るようになっている。
上述したVCT42、VVE43により、吸気弁40は、その開閉タイミング並びにバルブリフト量Hを変更可能に構成されている。
次に、排気システム50は、図1、図2に示すように、各気筒24に2つ一組で形成された排気ポート24bに接続された二股状の分岐排気管51を下流排出側で集合させたエキゾーストマニホールド52と、このエキゾーストマニホールド52の下流側集合部に接続されて、エキゾーストマニホールド52から既燃ガスを排出する排気通路53とを有している。
上記各排気ポート24bには排気弁60が設けられている。この排気弁60も、一つの気筒24に対し、2つ一組で装備されている。各排気弁60は、動弁機構62によって駆動されるようになっている。この動弁機構62は、排気弁60を排気行程での開弁動作のほかに吸気行程で再度開弁させる再開弁動作を可能にするように構成されるとともに、この再開弁動作の実行、停止を切換可能にする排気弁駆動手段として、ロストモーション機能を有する弁動作切換機構70を備えている。
すなわち、上記動弁機構62は、伝動機構64と、伝動機構64を介しクランクシャフト21の駆動力で駆動されるカムシャフト62aとを備え、一方の排気弁60に対し、異なる位相で排気弁60を駆動する二組の排気カム62b、62cがカムシャフト62aに設けられるとともに、これらの排気カム62b、62cと一方の排気弁60との間に弁動作切換機構70が設けられている。そして、この弁動作切換機構70により、排気カム62b、62cの両方の駆動を排気弁60に伝える状態と一方の排気カム62bの駆動のみを排気弁60に伝える状態とに切換可能となっている。二組の排気カム62b、62cのうちの一方は、排気行程において気筒24内の既燃ガスを排出するために排気弁60を開く第1排気カム62bであり、他方は、後述する吸気行程で排気弁60を再度開いて、筒内に排気を還流させて内部EGRを行う第2排気カム62cである。当実施形態では、第1排気カム62bは2つ一組の対をなしており、第2排気カム62cはカムシャフト62aの軸方向において第1排気カム62b、62b間に配置されている(図7参照)。なお、他方の排気弁60は、カムシャフト62aに設けられた1つの排気カムで直動式のタペットを介して駆動され、常に排気行程でのみ開かれるようになっている。
上記弁動作切換機構70の具体的構造を、図6〜図8によって説明する。
図6は弁動作切換機構70の分解斜視図、図7は弁動作切換機構70の正面断面図、図9は弁動作切換機構70の平面断面図である。
これらの図を参照して、弁動作切換機構70は、第2排気カム62cが排気弁60のステム60aを押し下げる機能をON/OFFするいわゆるロストモーションを実現するためのものであり、図示の例では、タペット型のもので具体化されている。
すなわち、この弁動作切換機構70は、矩形のハウジング71と、ハウジング71内に昇降可能に収容され、前記排気弁60のステム60aの端部に固定されるサイドタペット72と、サイドタペット72に対し、当該サイドタペット72と相対変位可能に組み付けられ、センタタペット73とを有している。そして、上記サイドタペット72に第1排気カム62bが当接し、センタタペット73に第2排気カム62cが当接している。
サイドタペット72は、略円筒形に形成されており、平面でみて前記カムシャフト62aと直交する直径方向に収容凹部72aを形成している。収容凹部72aの両側の壁部72bには、前記カムシャフト62aと平行な挿通孔72cが形成されている。各挿通孔72cには、有底のスリーブ状ホルダ75a、75bが、それぞれ開口部を対向させた姿勢で固定されている。一方のスリーブ状ホルダ75aの外側には軸受76が固定され、その軸受76に保持された転動体76aが、ハウジング71の内壁に形成された縦溝71aに転がり接触している。これにより、サイドタペット72は、周方向の回動が規制された状態で、軸方向(排気弁60を開閉する方向)沿いに移動可能になっている。サイドタペット72の下部には、バルブスプリング60dを受けるスプリングシート72dが固定されている。
他方、センタタペット73は、平面でみて前記サイドタペット72の収容凹部72aの輪郭に沿う「I」字形の構造体であり、前記収容凹部72aと、ハウジング71に設けられた係止部に規定されたストロークSにおいて、サイドタペット72に対し相対的に昇降可能に組み付けられ、前記排気カム62cに臨んでいる。
センタタペット73は、サイドタペット72の収容凹部72aの底部に配置された一対のコイルばね77によって、常時、排気カム62cの方へ付勢されている。このコイルばね77は、バルブスプリング60dよりも付勢力が充分小さくなるよう、ばね係数が設定されている。このため、自由状態において、サイドタペット72の壁部72bの上面と、センタタペット73の上面とは、図7に示すように面一になっている。センタタペット73には、上記自由状態において前記挿通孔72cと同心に連通するピン孔73aが穿設されている。このピン孔73aには、ピンユニット78が収容されている。
ピンユニット78は、一方のスリーブ状ホルダ75aの内に出没可能に設けられたロックプランジャ78aと、このロックプランジャ78aとスリーブ状ホルダ75aの間に介装されるコイルばね78bと、ロックプランジャ78aのコイルばね78bと反対側に同心に配置されたロックピン78cと、ロックピン78cを前記ロックプランジャ78a側に駆動するために他方のスリーブ状ホルダ75b内に進退可能に収容されるロック解除プランジャ78dと、ロックピン78cを支持するためにピン孔73aの両開口端に固定される一対のブッシュ78e、78fと、ロックピン78cの略中央部に一体形成されたフランジ78gと軸受76の配置されている側のブッシュ78eとの間に介装されて、フランジ78gを介し、ロックピン78cをロック解除プランジャ78d側へ付勢するコイルばね78hとを有している。自由状態において、ロックプランジャ78aおよびロックピン78cは、それぞれ壁部72bと、センタタペット73との間に介在し、センタタペット73をサイドタペット72にロックした状態になる。この状態では、サイドタペット72が第1排気カム62bに駆動されたときに排気弁60を開作動するとともに、センタタペット73が第2排気カム62cに駆動されたときもサイドタペット72を介して排気弁60を開作動することになる。
また、軸受76が設けられた側とは反対側において、壁部72bとこれに固定されたスリーブ状ホルダ75bとには、作動油路PHが形成されている。そして、後述するECU100の制御によって、この作動油路PHに作動油回路79から作動油が供給されると、ロック解除プランジャ78dが、図7、図8の左側に駆動されて、ロックピン78cを壁部72bからセンタタペット73へ押込み、これと同時にロックプランジャ78aも対応する壁部72b内に押込まれ、これらの部材によるロックが解除される。このロック解除状態において、センタタペット73が第2排気カム62cに駆動されると、センタタペット73は、サイドタペット72の収容凹部72a内で昇降し、その力は、コイルばね77に吸収されて排気弁60には伝達されなくなる。これにより、サイドタペット72が第1排気カム62bに駆動されたときにのみ排気弁60が開作動して、第2カム62cによる排気弁60の開作動(吸気行程での排気弁の再開弁動作)を停止させることが可能になる。作動油回路79には、電磁弁79aが設けられており、この電磁弁79aは、制御装置としてのECU100によって制御されるようになっている。
なお、当実施形態では、図2に示すように、作動油回路79及び電磁弁79aを2組設けることにより、2気筒ずつ個別に弁動作切換機構70を作動させることができるようになっている。
図1を参照して、このエンジン10には、その運転状態を検出するために、種々のセンサが設けられている。例えば、吸気通路31には、スロットル弁35の下流にエアフローセンサ81が設けられるとともに、第2三方弁48の下流側に吸気温センサ82が設けられる。また、この吸気通路31に設けられた第1および第2三方弁38,48のアクチュエータには、当該アクチュエータの駆動を検出して各三方弁38,48の開度を検出する開度センサ(図示せず)が設けられている。さらに、バイパス通路39に配設されたヒータ44には、温度センサ83が内蔵され、ヒータ44で加熱された吸気の温度を検出することができるようになっている。また、加熱通路45の排気熱交換器47の下流側には各熱交換器46,47によって加熱された吸気の温度を検出するための加熱吸気温センサ84が設けられている。さらに、シリンダブロック22には、クランクシャフト21の回転角(クランク角)を検出するクランク角センサ85が設けられるとともに、ウォータジャケット20aを流通する冷却水温度を検出するエンジン水温センサ86が設けられている(図2参照)。この他、エンジン負荷を検出するためのアクセル開度センサ87等が設けられている。
また、4サイクル火花点火式エンジン10には、ECU100が設けられている。
図1に示すように、このECU100には、エンジン10の運転状態を検出するために、エアフローセンサ81、吸気温センサ82、温度センサ83、加熱吸気温センサ84、クランク角センサ85、エンジン水温センサ86、アクセル開度センサ87が入力要素として接続されている。一方、ECU100には、第1および第2三方弁38,48、スロットル弁35、吸気システム30および排気システム50の動弁機構41,62、ヒータ44、燃料噴射弁28、点火回路29a等が制御要素として接続されている。
図1を参照して、、ECU100は、CPU101、メモリ102、インターフェース103並びにこれらのユニット101〜103を接続するバス104を有している。
ECU100のメモリ102には、制御マップやデータ並びにプログラムが記憶されており、CPU101がこれら制御マップやデータ並びにプログラムを実行することによって、図2に示すように、エンジン回転数およびエンジン負荷等の運転状態を判定する運転状態判定手段110と、判定された運転状態に応じてエンジンの燃焼を制御する燃焼制御手段120と、判定された運転状態に応じてスロットル弁35,第1および第2三方弁38、48を制御する弁制御手段130と、ヒータ44を作動させてバイパス通路39を流通する吸気を加熱させる制御を行うヒータ制御手段140とを機能的に有している。
上記燃焼制御手段120は、吸気システム30の動弁機構41に設けられたVCT42の電磁弁42eを制御するVCT制御手段121と、吸気システム30に設けられたVVE43のステッピングモータ43rを制御するVVE制御手段122と、電磁弁79a、を駆動制御することにより、排気弁60に対して設けられた弁動作切換機構70を切換制御する排気弁制御手段123と、点火プラグ29による点火を制御する点火制御手段124とを含んでいる。
次に、ECU100に記憶されている制御特性について説明する。図9は、上記ECU100の燃焼制御手段120による運転状態に応じた制御を行うための運転領域設定の一例を示す特性図である。
同図に示すように、ECU100に設定されている運転領域としては、いわゆる圧縮自己着火運転(図中にHCCIと表記)を行う領域Aと、火花点火運転(図中にSIと表記)を行う領域Bとが設定されている。圧縮自己着火運転の領域Aは、エンジン回転数Nが比較的低い低中回転領域において、所定のエンジン負荷以下の領域となっている。また、火花点火運転の領域Bは、圧縮自己着火運転の領域A以外の領域、つまり高回転側および高負荷側の領域である。
また、領域Aは、さらに細分化され、吸気弁40の早閉じ並びに排気弁60の再開弁動作による内部EGR、および吸気加熱によって圧縮自己着火を促進する領域A0と、吸気加熱だけによって圧縮自己着火を促進する領域A1とが設定されている。領域A0は、領域A内における所定のエンジン負荷以下の領域となっている。一方、領域A1は、圧縮自己着火が行われる領域Aのうち上記領域A1を越える高負荷側の領域である。当実施形態では、領域A0は、極低負荷側の領域として設定され、領域A1に比べて狭く設定されている。
ECU100の運転状態判定手段110は、クランク角センサ85やアクセル開度センサ87等から、エンジンの運転状態を検出し、運転状態が上記領域A0,A1,Bの何れにあるかを判定する。
燃焼制御手段120は、上記運転状態判定手段110の判定に応じてエンジンの運転モードを、エンジン10の運転モードが、圧縮自己着火による運転モード(HCCIモード)と火花点火による運転モード(SIモード)との間で切換制御を行うとともに、上記HCCIモードによる運転中においてもエンジンの運転状態に応じて、筒内に排気を還流させることにより排気を残存させて内部EGRを行うとともに吸気をヒータ44や各熱交換器46,47で加熱する吸気加熱付内部EGRモードと、この内部EGRを停止させて吸気を各熱交換器46,47で加熱する吸気加熱モードとの間で切換制御を行うように設定されている。
図10は、運転状態に応じた吸気弁40および排気弁60の開弁動作の特性を示す図である。この運転状態に応じた開弁動作の特性を説明する。
領域A0では、内部EGRモードによる制御が行われ、図10に示すように排気弁60の開弁動作EX1、吸気弁40の開弁動作INaおよび排気弁60の再開弁動作EX2が設定される。つまり、排気弁60が排気行程で開かれ(EX1)、次いで、吸気上死点付近で排気弁60が閉じられるとともに吸気弁40が開かれ(INa)、さらに吸気行程の途中で排気弁60が再開弁動作を行い(EX2)、かつ、吸気弁40が下死点より前で閉弁するように設定される。なお、再開弁動作における排気弁60のリフト量は排気行程でのリフト量に比べて小さく設定されている。そして、このような設定に従って吸気弁40および排気弁60が開閉作動するように、VCT制御手段121、VVE制御手段122および排気弁制御手段123による制御が行われる。
したがって、この領域A0では、吸気行程で吸気弁40が早閉じされ、代わりに排気弁60が再開弁されることにより排気ポート24bに排出された既燃ガスの一部が再び気筒24内に還流され、当該既燃ガスが筒内に残存されて内部EGRが行われる。
一方、領域A1および領域Bでは、図10(B)に示すように、排気弁60は排気行程における開弁動作EX1のみを行って、吸気行程での再開弁動作EX2を停止し、吸気弁40は、領域A0での開弁特性と比べて吸気弁閉弁時期が遅角(好ましくは下死点後まで遅角)され、開弁期間および開弁リフト量が大きくなるように開弁特性(INb)が設定される。そして、このような設定に従って吸気弁40および排気弁60が開閉作動するように、VCT制御手段121、VVE制御手段122および排気弁制御手段123による制御が行われる。
したがって、この領域A1では、吸気弁40の開弁特性が通常時特性に切り換えられるとともに排気弁60の再開弁動作が停止され、内部EGRが停止される。
次に、運転状態に応じた吸気の加熱特性の変化について説明する。
領域A0では、ヒータ44が作動されるように設定される。当実施形態ではヒータ44の出力がエンジン負荷に伴って漸次低減するように設定され、領域A0と領域A1との境界で0、つまりOFFとなるように、ヒータ制御手段140による制御が行われる。
また、この領域A0では、バイパス通路39の下流側の第1三方弁38が、このバイパス通路39からのみインテークマニホールド32に新気が導入されるように設定される。したがって、インテークマニホールド32には、ヒータ44によって加熱された新気が導入される。さらに、この領域A0では、分岐吸気管33に配設された第2三方弁48が、インテークマニホールド32に導入された新気と、加熱通路45を通過することにより冷却水熱交換器46および排気熱交換器47によって昇温された新気とが所定の割合で混合されるように設定される。この混合される新気の目標吸気温度および目標吸気量は、エンジンの運転状態に応じて予め定められ、ECU100のメモリ102に記憶されている。そして、筒内に導入される吸気の温度および量が上記目標吸気温度および目標吸気量となるように、エアフローセンサ81、吸気温センサ82、温度センサ83、加熱吸気温センサ84等からの出力信号に基づいてスロットル弁35、第1および第2三方弁38,48の弁制御手段130による開度制御が行われる。
一方、領域A1では、ヒータ制御手段140によってヒータ44が停止されるとともに、第1三方弁38によってバイパス通路39を閉塞して吸気通路31からインテークマニホールド32に新気が導入されるように設定される。したがって、インテークマニホールド32には、新気がそのまま導入されることになる。また、インテークマニホールド32に導入された新気と、加熱通路45を通過することにより冷却水熱交換器46および排気熱交換器47によって昇温された新気とが所定の割合で混合されるように第2三方弁48が設定され、上記領域A0における場合と同様に、エアフローセンサ81、吸気温センサ82、温度センサ83、加熱吸気温センサ84等からの出力信号に基づいてスロットル弁35、第1および第2三方弁38,48の弁制御手段130による開度制御が行われる。
また、領域Bでは、第1三方弁38によってバイパス通路39を閉塞して吸気通路31からインテークマニホールド32に新気が導入されるように設定されるとともに、第2三方弁48によって加熱通路45を閉塞してインテークマニホールド32のみから新気が筒内に導入されるように設定される。そして、このような設定および運転状態に従ってスロットル弁35、第1および第2三方弁38,48が動作するように、弁制御手段130による制御が行われる。
次に、図11を参照して、運転領域の移行に伴う弁動作の切換、および着火状態の切換について説明する。図11は、4気筒4サイクルエンジンの各気筒の行程と、領域移行時の着火状態の変化とを示している。なお、この図において、Fは燃料噴射、CIは自己着火、SIは火花点火、ASIはアシスト用火花点火をそれぞれ示している。
この図のように、各気筒では1サイクル(エンジン2回転)の間に吸入、圧縮、膨張、排気の4行程が順次行われる。そして、4気筒4サイクルエンジンでは一般に、気筒列方向一端側から順に第1〜第4気筒(#1〜#4)とすると、第2気筒(#2)、第1気筒(#1)、第3気筒(#3)、第4気筒(#4)の順にクランク角で180°ずつの位相差をもって上記各行程が行われる。
また、当実施形態では第1、第2気筒(#1,#2)を第1グループ、第3、第4気筒(#3,#4)を第2グループとして、各グループ毎に2気筒ずつ、吸気弁40および排気弁60の開弁特性が制御される。
このようにした場合に、運転状態判定手段により内部EGRおよび吸気加熱による圧縮自己着火が行われる領域A0(図9参照)から内部EGRを停止して吸気加熱のみによる圧縮自己着火が行われる領域A1(図9参照)への移行が判定されたとき、排気弁の動作中はその特性を切換えることができないため、移行判定時点t0後に、各グループ毎に、2気筒のうちで排気弁60の再開弁動作が遅い方の気筒の再開弁動作終了直後に、電磁弁79aが制御されることにより再開弁動作が停止されるように排気弁開弁特性が切換えられる。この排気弁開弁特性切換のタイミングは、図11中に一点鎖線の楕円で囲って示すように、第1グループでは第1気筒の圧縮行程(第2気筒の膨張行程)、第2グループでは第4気筒の圧縮行程(第3気筒の膨張行程)となる。
当実施形態では領域A0では、点火制御手段124によって火花点火による着火アシストを行うように設定されている。すなわち、点火制御手段124は、領域A0で圧縮自己着火を促進するため、圧縮上死点前に点火(図11中に符号ASIを付して示す)を行わせるように点火回路29aを制御する。このアシスト用の着火は、領域A1への移行に伴う排気弁60の再開弁動作が停止された後は停止される。そして、領域A1から領域Bに移行された場合に点火制御手段124による火花点火制御が行われる。
図12は、ECU100の燃焼制御手段120等による制御の一例をフローチャートで示している。このフローチャートを図9〜図11も参照しつつ説明する。
ECU100はまずステップS1で、各種センサ81〜87等からの信号に基づいて各種パラメータを読み込む。そして、ステップS3およびステップS5で、エンジン本体20の暖機が完了し、運転状態が領域Aにあるか否かを判定し、その判定がNOの場合、つまり運転状態が高負荷側領域(領域B)にある場合やエンジン冷機時には、ステップS7で、全気筒とも、エンジン回転数および負荷に応じてSI(火花点火運転)モードによる制御が行われ、通常時吸排気弁の開弁特性(図10(B)参照)および点火時期で、火花点火運転を行う。このとき、ヒータ44や各熱交換器46,47等の吸気加熱手段は停止された状態となっている。
ステップS3およびステップS5でともにYESのときは、ステップS9で、運転状態が領域A0にあるか否かを判定し、その判定がYESの場合には運転状態が極低負荷運転領域(領域A0)にあり筒内温度が低温であると判断して、ステップS11で、HCCIモードのうち吸気加熱付内部EGRモードによる運転を実行する。すなわち、ヒータ44および各熱交換器46,47による吸気加熱を実行するとともに、全気筒とも内部EGRモードのマップから求めた吸排気弁の開弁特性とし(図10(A)参照)、つまり吸気弁はその閉時期が下死点より前で小リフトの特性、排気弁は再開弁を実行する特性とし、これにより吸気を充分に加熱して筒内温度を上昇させ圧縮自己着火運転を行う。なお、この領域A0にある場合には、圧縮上死点前の所定時期に火花点火による着火アシストが行われ、圧縮自己着火の特性を生かしつつ、失火を確実に防止するようになされている。
一方、ステップS9の判定がNOの場合には、運転状態が領域Aの中でも高負荷側の領域(領域A1)にあると判断して、ステップS13で、HCCIモードのうち吸気加熱モードによる運転を実行する。すなわち、ヒータ44による吸気加熱を停止するとともに、各熱交換器46,47だけで吸気を加熱し、また、全気筒とも通常時吸排気弁の開弁特性(図10(B)参照)とし、火花点火を停止して圧縮自己着火運転を行う。
ステップS11およびステップS13でのヒータ44、各熱交換器46,47での吸気加熱は、吸気温センサ82による吸気温Tとメモリ102に記憶されている目標吸気温T0との差に応じてヒータ44,第1および第2三方弁38,48を制御することにより行われる。
以上のような当実施形態による火花点火式エンジンによると、領域A0で吸気弁40はその閉時期が下死点より前で小リフトの特性、排気弁60は再開弁を実行する特性とされることにより、吸気弁40の開弁によってヒータ44や各熱交換器46,47で加熱された吸気がまず筒内に導入され、続いて排気弁60の再開弁動作によって熱い排気を筒内に還流させて、この排気が吸気と直接かつ充分にミキシングされる。このため、筒内温度を効率的に上昇させることができ、この低負荷側の広い運転領域で失火を抑制して確実に圧縮自己着火を行わせることができる。
しかも、領域Aのうち高負荷側の運転領域A1では吸気弁40の早閉じおよび排気弁60の再開弁動作が停止されるとともにヒータ44による吸気加熱も停止され、各熱交換器46,47だけで吸気が加熱されるだけであるので、適度に加熱された、十分な量の吸気を筒内に導入させることができて領域A1における出力を充分に確保することができる。すなわち、領域A1では負荷の増大に伴って筒内温度が上昇した気筒24に各熱交換器46,47によって適度に加熱された吸気が導入されて筒内温度を適度に上昇させることができ、内部EGRを低減させても或いは内部EGRの実行を停止させても圧縮自己着火を行うことができる。このため、領域A1では内部EGRを停止させて燃焼に寄与する吸気量を多くすることで十分な出力を得ることができ、これによりHCCIモードによる運転領域を高負荷側に拡大させることができ、さらなる燃費改善効果を得ることができる。
なお、以上に説明した火花点火式エンジンは、本発明に係るエンジンの一実施形態であって、同エンジンの具体的構成等は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能であり、変形例を以下に説明する。
上記実施形態では、排気を筒内に残存させるために、排気弁60の再開弁動作を行うように構成されているが、この排気を筒内に残存させるための具体的手段は特に限定されるものではない。したがって、図13に示すように、排気行程で排気弁60を開弁するとともに(図中EX1で示す)、吸気弁40を開弁させ(図中INcで示す)、吸気ポート24aに排気を吹き返させて吸気行程での吸気弁40の開弁動作(図中INbで示す)に伴って排気を筒内に還流させることにより排気を筒内に残存させるようにしてもよい。
また、領域A0で排気弁60を排気行程の途中で閉じるとともに吸気弁40を吸気行程の途中で開く、所謂マイナスオーバーラップをさせるように構成して内部EGRを残存させるようにしてもよい。ただし、このようなマイナスオーバラップでは、そのオーバーラップ量を増大させると吸気を充分に筒内に導入させ難く、このためこの極低負荷側の領域A0でも高負荷側になると吸気量不足に基づく出力不足が懸念され、一方、オーバーラップ量を減少させると排気と吸気とのミキシング量が減少して、たとえ熱交換器46,47等で吸気を加熱したとしても失火を招き易い傾向にある。したがって、好ましくは当実施形態のように、排気弁60の再開弁動作による内部EGRを導入するのが好ましい。
また、上記実施形態では、領域A0でヒータ44および各熱交換器46,47で吸気を加熱するように構成されているが、内部EGRのみによって圧縮自己着火運転を行うものであってもよい。ただし、、筒内温度を充分に加熱させてより確実に極低負荷領域A0での失火を防止する観点から、上記実施形態のようにヒータ44および各熱交換器46,47で吸気を加熱するのが好ましい。この場合、ヒータ44の出力は運転状態に応じて適宜変更するものであっても良いが、その出力が一定に設定されているものであってもよい。
さらに、上記実施形態における冷却水熱交換器46やヒータ44は適宜省略するものであってもよいが、より広範囲かつ緻密な吸気温設定を可能とする点でこれらの吸気加熱手段が設けられているのが好ましい。