JP4629651B2 - 非水系顔料分散体の製造方法 - Google Patents
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Description
顔料の分散方法としては、微小なガラスビーズやジルコニアビーズ等のメディアを充填したメディアミル分散機を用いて、撹拌・混合によるせん断力・摩擦力、メディア同士の衝撃力等により、粒子を解砕・粉砕する方法が知られている。
しかし、顔料を微細化すればするほど、分散した粒子が再凝集し易く、それに起因する粒子径の増大や粘度の増大が起こり、分散状態を安定化させることが困難となる。
また、分散体中に存在する粗粒子、例えば、体積平均粒度分布における90%通過粒子(D90)の低減は難しく、大粒径側にテーリングした粒子径分布となる。これらの粗粒子の存在は、微細化効果を低減させる因子となるため、粗粒子をできるだけ低減することが望ましい。粗粒子を低減するために更に微細化、分散化することが考えられるが、その操作により分散体の増粘、安定性の低下、ハンドリング性の悪化が更に問題点となる。
(1)下記の第1工程、第2工程、及び第3工程を有する非水系顔料分散体の製造方法。
第1工程:少なくとも顔料、高分子分散剤、及び有機溶媒を含有する顔料組成物を混合し、予備分散する工程
第2工程:得られた予備分散体を、粒径が0.1mm以下のメディア粒子を用いるメディア式分散機により分散処理する工程
第3工程:高圧ホモジナイザーを用いて、更に分散処理する工程
(2)前記(1)の方法によって得られた非水系顔料分散体を含有するカラーフィルター用着色組成物。
〔顔料〕
顔料としては、無機顔料及び有機顔料のいずれも使用できる。また、必要に応じて、それらと体質顔料を併用することもできる。
色相は特に限定されるものではなく、赤色、黄色、青色、オレンジ、緑色、バイオレット等の有彩色顔料や白色顔料を用いることができる。
無機顔料としては、カーボンブラック、金属酸化物、金属硫化物、金属塩化物等が挙げられる。無機黒色顔料としてはカーボンブラックが好ましく、ファーネスブラック、サーマルランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等が挙げられる。
体質顔料としては、シリカ、炭酸カルシウム、タルク等が挙げられる。
赤系有機顔料としては、例えば、アゾ系顔料、ジアゾ系顔料、縮合アゾ系顔料、アゾレーキ顔料、キナクリドン顔料、ペリレン系顔料、アンスラキノン系顔料、ジケトピロロロピロール系顔料等が挙げられる。
より具体的には、Colour Index(The Society of Dyersand Colourists 出版、1997年版)でピグメント(Pigment)に分類されている化合物等が挙げられる。例えば、C.I.ピグメント イエロー12、同13、同14、同17、同20、同24、同31、同55、同74、同83、同93、同97、同109、同110、同120、同128、同137、同139、同151、同153、同154、同155、同166、同168、同173、同174、同180、C.I.ピグメント オレンジ36、同43、同51、同71、同73; C.I.ピグメント レッド9、同48、同57:1、同97、同122、同123、同146、同149、同176、同177、同180、同184、同185、同188、同202、同215、同254、同255、同264、同270、同272; C.I.ピグメント バイオレット19、同23、同29; C.I.ピグメント ブルー15、同15:1、同15:2、同15:3、同15:4、同16、同60; C.I.ピグメント グリーン7、同36; C.I.ピグメント ブラウン23、同25; C.I.ピグメント ブラック1、同7等が挙げられる。
これらの中では、本発明の効果をより有効に発現させる観点から、下記一般式(1)で表される、C.I.ピグメント レッド254、同255等のジケトピロロピロール系顔料が特に好ましい。
一般式(1)におけるX1及びX2のハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子等が挙げられる。
ジケトピロロピロール系顔料の市販品としては、チバ・スペシャルティー・ケミカルズ株式会社製、PR−254、商品名「Irgaphor Red B−CF」、「Irgaphor Red BT−CF」、「Irgazin DPP Red BO」、「Irgazin DPP Red BL」、「Cromophtal DPP Red BP」、「Cromophtal DPP Red BOC」等が挙げられる。
上記の顔料は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、顔料表面に対して有機溶媒との親和性を高め、分散安定性を高めるという観点から、樹脂や高分子、顔料誘導体等により予め表面処理を施した顔料を用いてもよく、顔料組成物中に含有させて分散処理を行ってもよい。
本発明で用いられる高分子分散剤は、顔料を有機溶媒中で安定に微細化した状態で分散させうる分散剤であればよく、公知の分散剤を使用することができる。高分子分散剤は、カラーフィルター等を形成する場合はバインダーとしての働きも有すると考えられる。
高分子分散剤としては、例えば、特開平3−277673号公報、特開平10−339949号公報、特表2003−517063号公報等に記載の主鎖にアミド系骨格を有し、側鎖がメタクリル酸エステルによるマクロモノマーからなるグラフトポリマー;特公平7−96654号公報、特開平7−207178号公報等に記載の脂肪族ヒドロキシカルボン酸残基を有するポリエステル系オリゴマー;オルガノシロキサンポリマー(信越化学工業株式会社製、KP341、KP575等);(メタ)アクリル酸系(共)重合体(共栄油脂化学工業株式会社製、ポリフローNo.75、90、95等);その他市販品として、ゼネカ社製のソルスパース3000、5000、9000、12000、13240、13940、17000、20000、24000、26000、28000等の各種ソルスパース分散剤、味の素ファインテクノ株式会社製のアジスパーPB−821、PB−822〔組成(重量比):ポリアリルアミン/ポリカプロラクトン=5/95、Mw:8,000〕、三洋化成株式会社製のイソーネットS−20等が挙げられる。
例えば、顔料としてジケトピロロピロール系顔料、有機溶媒をPGMEAとした場合、主鎖にアミド基を有し、側鎖がマクロモノマーからなるグラフトポリマーが好ましく、より具体的には、主鎖にアミド基を有するモノマー由来の構成単位を有し、側鎖にメタクリル酸エステルのマクロマー由来の構成単位を有するグラフトポリマー(x)や、主鎖にメタクリル酸エステルマクロマー由来の構成単位を有し、側鎖にポリオキサゾリン由来の構成単位を有するグラフトポリマー(y)等が好ましい。
これらの中では、前記のグラフトポリマー(x)がより好ましい。
グラフトポリマー(x)は、下記の主鎖と側鎖とを有するものが特に好ましい。
主鎖:N−ビニル−2−ピロリドン由来の構成単位(a)と、水酸基含有モノマー由来の構成単位(b)とを含有し、グラフトポリマー(x)中の該構成単位(a)の含有量が2〜30重量%、該構成単位(b)の含有量が5〜30重量%である。
側鎖:数平均分子量が800〜4,000であるアルキル(メタ)アクリレート系マクロマー由来の構成単位(c)を含有し、グラフトポリマー(x)中の該構成単位(c)の含有量が65〜92重量%である。
グラフトポリマー(x)中の構成単位(a)、(b)及び(c)の含有量は、グラフトポリマー(x)を製造する際の構成単位(a)、(b)及び(c)それぞれに相当するモノマーの仕込み量に相当する。
CH2=C(R4)COO(R5O)nH (3)
(式中、R4は水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基、R5はヘテロ原子を有していてもよい炭素数1〜30の2価の炭化水素基、nは平均付加モル数を示し、1〜60の数である。)
式(3)において、R4の好適例としては、メチル基、エチル基、(イソ)プロピル基等が挙げられ、R5のヘテロ原子としては、例えば、窒素原子、酸素原子、ハロゲン原子及び硫黄原子が挙げられる。nは好ましくは1〜30の数である。
R5O基の好適例としては、オキシエチレン基、オキシトリメチレン墓、オキシプロパン−1,2−ジイル基、オキシテトラメチレン基、オキシヘプタメチレン基、オキシヘキサメチレン基及びこれらの2種以上の組合せからなる炭素数2〜7のオキシアルカンジイル基(オキシアルキレン基)が挙げられる。
その具体例としては、片末端に重合性官能基を有する、アルキル(メタ)アクリレートの単独重合体、又は片末端に重合性官能基を有する、アルキル(メタ)アクリレートと他のモノマーとの共重合体が挙げられる。
なお、本明細書にいう「(イソ又はターシャリー)」及び「(イソ)」は、これらの基が存在している場合とそうでない場合の双方を意味し、これらの基が存在していない場合には、ノルマルであることを示す。また、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートとメタクリレートの双方を意味する。
アルキル(メタ)アクリレートと共重合する他のモノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等のスチレン系モノマーや、ベンジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。アルキル(メタ)アクリレート系マクロマー中、アルキル(メタ)アクリレート由来の構成単位の含有量は、80重量%以上が好ましく、90重量%以上が更に好ましく、実質的に100重量%が特に好ましい。「実質的に」とは、不純物程度の量の他のモノマー由来の構成単位を含有してもよいことを意味する。
なお、アルキル(メタ)アクリレート系マクロマーの数平均分子量は、溶媒として1mmol/Lのラウリルジメチルアミンを含有するクロロホルムを用いたゲルクロマトグラフィー(GPC)法により、標準物質としてポリスチレンを用いて測定することができる。
グラフトポリマー(x)は、N−ビニル−2−ピロリドン、水酸基含有モノマー、及びアルキル(メタ)アクリレート系マクロマーを含有するモノマー混合物(以下、「モノマー混合物」という)を共重合して得ることが好ましい。モノマー混合物には、本発明を損なわない範囲内で、更にアルキル(メタ)アクリレート等を含有していてもよい。
モノマー混合物中におけるN−ビニル−2−ピロリドンの含有量は、顔料分散体中の(A)有機顔料の分散安定性の観点から、2〜30重量%であり、好ましくは5〜25重量%であり、より好ましくは10〜20重量%である。
モノマー混合物中における水酸基含有モノマーの含有量は、顔料分散体中の(A)有機顔料の分散安定性の観点から、5〜30重量%であり、好ましくは5〜25重量%であり、より好ましくは10〜20重量%である。
モノマー混合物中におけるアルキル(メタ)アクリレート系マクロマーの含有量は、顔料分散体中の(A)有機顔料の分散安定性を向上させる観点から、65〜92重量%であり、好ましくは65〜85重量%であり、より好ましくは65〜80重量%である。
溶液重合法で用いる有機溶媒としては、グラフトポリマーと親和性の高い有機溶媒が好ましく、前記の有機溶媒を用いることができる。
重合の際には、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物や、tert−ブチルペルオキシオクトエート、ジベンゾイルペルオキシド等の有機過酸化物等の公知のラジカル重合開始剤を用いることができる。
ラジカル重合開始剤の量は、モノマー混合物1モル当たり、好ましくは0.001〜5モル、より好ましくは0.01〜2モルである。
重合の際には、さらに、オクチルメルカプタン、2−メルカプトエタノール等のメルカプタン類、チウラムジスルフィド類等の公知の重合連鎖移動剤を添加することができる。
モノマー混合物の重合条件は、使用する重合開始剤、モノマー、有機溶媒の種類等によって異なるが、重合温度は、通常30〜100℃、好ましくは50〜80℃であり、重合時間は、重合温度等の条件により異なり一概に決めることはできないが、通常1〜20時間程度である。また、重合雰囲気は、窒素ガスやアルゴン等の不活性ガス雰囲気であることが好ましい。
重合反応の終了後、反応溶液から再沈澱、溶媒留去等の公知の方法により、生成したポリマーを単離することができる。また、得られたポリマーは、再沈澱を繰り返したり、膜分離法、クロマトグラフ法、抽出法等により、未反応のモノマー等を除去して精製することができる。
有機溶媒は特に限定されず、分散処理を行う条件下で液状の有機溶媒であればよい。
有機溶媒の好適例としては、顔料と高分子分散剤との分散性の観点から、例えば、エタノール、イソプロピルアルコール等の炭素数1〜4の低級アルコール;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素;プロピレングリコール等の多価アルコール;エチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル等の他、酢酸エチル、シリコーンオイル、高級アルコール、油脂等及び下記一般式(2)で表される化合物等が挙げられる。
一般式(2)において、R1及びR2の炭素数1〜4の直鎖又は分岐鎖のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、及びtert−ブチル基が挙げられる。これらの中では、メチル基及びエチル基が好ましい。
カラーフィルター用途等においては、ジケトピロロピロール系顔料等の顔料の分散性と、高分子分散剤の溶解性又は分散性の観点から、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、及びプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートからなる群から選ばれる1種以上が特に好ましい。
上記の有機溶媒は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
分散体中の高分子分散剤の量は、分散処理過程で不足する事のない添加量とする事が分散安定性を向上させる観点から好ましい。具体的には、顔料重量に対して、5重量%以上、好ましくは7重量%以上、より好ましくは10重量%以上である。また、分散体の適度な粘度が得る観点から、顔料重量に対して、200重量%以下、好ましくは100重量%以下、より好ましくは80重量%以下である。
分散体中の溶媒の量は、顔料濃度や高分子分散剤、その他添加剤を除いた量であり、分散処理時の操作性を向上させる観点から30重量%以上、好ましくは50重量%以上、更に好ましくは70重量%以上である。
本発明の非水系顔料分散体の製造方法においては、下記の第1工程、第2工程、第3工程を施す。
第1工程:少なくとも顔料、高分子分散剤、及び有機溶媒を含有する顔料組成物を混合し、予備分散する工程
第2工程:得られた予備分散体を、粒径が0.1mm以下のメディア粒子を用いるメディア式分散機により分散処理する工程
第3工程:ホモジナイザーを用いて、更に分散処理する工程
第1工程においては、少なくとも顔料、高分子分散剤、及び有機溶媒を含有する顔料組成物を混合することにより得られる混合物(以下、単に「混合物」という)を予備分散する。予備分散は、第2工程以降の分散処理において顔料の微粒化を効率的に行う観点から、顔料を混合物中に予め均一に分散させることを主目的とした工程である。
予備分散の結果、第1工程終了後における顔料の平均粒径(体積平均粒度分布における50%通過粒子径:D50)は、0.2μm以下、好ましくは0.15μm以下に調整される。
また粗大粒子の含有量を低減させる観点から、第1工程終了後におけるD90(体積平均粒度分布における90%通過粒子径)を1μm以下にすることが好ましく、0.6μm以下にすることが更に好ましく、0.4μm以下にすることが特に好ましい。なお、平均粒径(D50)、及びD90は、上記粒径範囲が測定可能な動的光散乱式粒度分布計やレーザードップラー式粒度分布計等によって測定することができる。
各成分の混合順序に特に制限はないが、顔料のかさ比重を考慮して生産性を高める観点、及び顔料と有機溶媒との混合のさせ易さという観点から、有機溶媒に顔料を添加することが好ましい。高分子分散剤は、顔料を添加する前後に添加することが好ましい。
また、混合物を分散させる際に、第1工程後の粗大粒子の含有量を低減させる観点から、2回以上の予備分散処理や、異なる予備分散処理を組み合わせてもよい。予備分散処理回数は、煩雑性や生産性の観点から、好ましくは10回以下、より好ましくは5回以下である。
なお、混合物を第1工程で予備分散させた後、得られた予備分散体に粗大粒子が多い場合には、必要に応じて撹拌力よりも強力な剪断力を加えて所望の粒径となるまで微粒化を行ったり、遠心分離機で粗大粒子を除去することもできる。
製造プロセス上では第1工程から第2工程への移送中に分散処理、遠心分離処理を連続的に行う方法、微粒化効果が高いメディア粒子、例えば0.1mm以上のメディア粒子、好ましくは0.2mm以上のメディア粒子を用いたメディアミル、高圧ホモジナイザー等によって1パス以上の連続分散処理を加えながら、第2工程へ移送する方法等が例示される。微粒化効果が高いメディア粒子を用いた市販のメディアミルとしては、ダイノーミル(シンマルエンタープライゼス製、0.6L−ECM)等が挙げられる。
第2工程は、第1工程で得られた予備分散体を、粒径が0.1mm以下のメディア粒子を用いるメディア式分散機により、好ましくは連続的に分散処理して、顔料を更に微粒化することを目的とした工程である。第2工程で得られた分散処理物とメディア粒子は、その後分離する。
第2工程において用いるメディア式分散機は、0.1mm以下の微細なメディア粒子を使用するもので、顔料の1次粒子近くの大きさまで分散、微粒化ができる剪断力、衝突力、粉砕力を与えることができるので好適である。
メディア式分散機としては、連続処理が可能なものが、生産性向上の観点から好適である。このようなメディア式分散機は、分散室(ミル)内にメディア粒子を滞留させ、そこを流通する予備分散体にメディア粒子による粉砕、剪断、衝突という分散エネルギーを与えながら分散を行い、同時にメディア粒子と分散処理物とを遠心分離等により分離し、分散処理物のみを分散室外に流出させる。
0.1mm以下の微小メディア粒子が使用でき、連続処理可能なメディア式分散機としては、例えば、スターミル(アシザワ・ファインテック株式会社、商品名)、ウルトラ・アペックス・ミル(寿工業株式会社、商品名)、ピコミル(浅田鉄工株式会社、商品名)、DCPスーパーフロー、コスモ(日本アイリッヒ株式会社、商品名)、MSCミル(三井鉱山株式会社、商品名)等の公知の分散機が挙げられる。
前記混合液をメディア粒子から分離する方式としては、遠心分離方式、又はスクリーン方式と遠心分離方式とを組み合わせた方式等を採用することができる。
このように分散過程と分離過程とを同時にかつ連続的に行う運転方式としては循環方式と連続方式がある。循環方式としては、例えば1槽のタンクとメディア式分散機を設置し、配管により循環系を形成して循環パスさせる方法(1槽循環方式、図1参照)がある。また、連続方式としては、2槽のタンクとメディア式分散機を設置し、キャッチボール方式でパスさせる方法、1パスさせた分散液を再度元のタンクに戻し、同様のパス操作を繰り返す方法(2槽による液戻し方式、図2参照)、メディア式分散機を必要な台数直列に配列して1パスさせる方法等が挙げられる。これらの中では、分散液がメディア式分散機へ流通パスする際のパス回数分布が生じにくい、連続方式が好ましい。なお、メディア式分散機を直列配列する場合には、分散処理後の液温が上昇することから、分散機出口には冷却器を設置することが好ましい。
顔料を微粒化するための剪断力や衝突力、粉砕力の大きさは、メディア粒子の比重が大きくなるのに伴い大きくなることから、これらの中では比較的比重が大きなセラミックメディア粒子が好ましく、耐摩耗性の点からジルコニア、チタニア等がより好ましい。また、メディア粒子としては、メディア粒子から発生するコンタミをより低減する観点からは、高周波誘導熱プラズマ法により製造されたメディア粒子を用いてもよい。一方、化粧品用途としては、ジルコニア等の微量金属の混入を防止する観点から、ガラスが好ましい。
前記メディア式分散機に用いるメディア粒子の粒径(直径)としては、所望のサイズを用いることができるが、メディア粒子の粒径が小さいほど、メディアからのコンタミ発生が少なくなり、さらに顔料の微粒化時間が短縮できることから、メディア粒子の粒径は0.1mm以下が好ましく、0.07mm以下がより好ましく、0.05mm以下が特に好ましく、メディア粒子と顔料分散体とを分離する観点から0.003mm以上が好ましく、0.005mm以上が好ましく、0.01mm以上が特に好ましい。
連続式のメディア式分散機における分散室内のメディア粒子の見かけの充填率は、分散室内の空間を基準にして、50〜90体積%の範囲にあることが好ましい。50体積%以上でメディアによる粉砕、剪断、衝突といった効果が向上し、顔料の分散効果が大きい。
また、分散エネルギーの与え方にも注意を払う必要があり、処理流量を適切な範囲にし、また発熱による顔料分散体の粒径や粘度変化を防止する観点から、分散室内における1パスあたりの平均滞留時間としては、20秒〜10分の範囲が好ましい。また、平均滞留時間にパス回数をかけた総平均滞留時間としては、分散機の容量、大きさにもよるが5分〜100分の範囲が好ましい。ここでいう平均滞留時間とは分散室内においてメディア粒子の容積を除いた空間容積[L]を処理流量[L/h]で除した値を意味する。
分散処理時の温度は特に限定されないが、5〜60℃が好ましい。
第3工程は、ホモジナイザーを用いて、更に分散処理し、顔料の凝集体を解砕・安定化することを目的とした工程である。第2工程においてメディア式分散機により所望の粒径まで微粒化を行うことができるが、顔料の微粒化に伴って顔料の表面積、表面エネルギーが増加する。この表面エネルギーを低下させようとして顔料は再凝集を始めることから、第2工程のみで分散を終了すると、これら顔料の再凝集体を多く含み、顔料混合物中の粗大粒子の含有量が多くなるため、この顔料凝集体を更に解砕し、顔料粒子を安定化するための分散処理が必要となる。
ホモジナイザーは、その高衝撃力と瞬間的な高圧を伴うキャビテーション現象を発現することで、顔料凝集体を解砕し、再凝集を抑制することにより、粗粒(顔料凝集体)を低減し、顔料粒子を安定化させることができると考えられる。
ホモジナイザーとしては、超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー等が挙げられる。超音波ホモジナイザーを使用する場合は、真空引き、脱泡、脱気を行ってから分散処理することが望ましい。また、投入する分散エネルギーの使用効率の観点からは、高圧ホモジナイザーがより好ましい。
顔料粒子の再凝集を抑制し分散安定化を図る観点からは分散圧力は20MPa以上であることが好ましく、50MPa以上がより好ましい。また、同様の観点から、処理パス数は少なくとも1パス以上、好ましくは3パス以上、より好ましくは5パス以上である。パスさせる運転方式としては、第2工程におけるメディア式分散機同様に、循環方式、連続方式があり、パス回数分布が生じにくい観点から連続方式がより好ましい。
分散処理時の温度は特に限定されないが、5〜80℃が好ましい。
前記第1工程〜第3工程を施すことにより、分散体中の顔料粒子が微細で、粗粒子量が極めて少なく、かつ低粘度で保存安定性に優れる非水系顔料分散体を得ることができる。
得られた非水系顔料分散体はカラーフィルター用着色組成物として有用であり、これに各種の樹脂、多官能モノマー、光重合開始剤、溶剤、添加剤等を添加することにより、カラーレジスト色材として用いることができる。
製造例1(高分子分散剤の製造)
窒素導入管を備え付けた反応容器に、メタクリル酸メチル50部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下、「PGMEA」という。有機溶媒)25部、3−メルカプトプロピオン酸(連鎖移動剤)5部を量り込み、窒素シールをしながら75℃まで昇温した。次に、メタクリル酸メチル200部、PGMEA100部、前記連鎖移動剤16.7部、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(重合開始剤)2部の混合物を3時間で滴下した。その後、PGMEA125部、前記連鎖移動剤0.9部、前記重合開始剤2部の混合物を1時間かけて滴下し、更に2時間熟成し、数平均分子量2,080、重量平均分子量3,350のメタクリル酸メチルマクロマー前駆体を合成した。
次いで、窒素導入管を空気導入管に切替え、得られたマクロマー前駆体に気体ポンプで空気を吹き込み、グリシジルメタクリレート23.3部、テトラブチルアンモニウムブロミド7.9部、p−メトキシフェノール0.8部、PGMEA17部を添加し、90℃で10時間反応し、数平均分子量2,200、重量平均分子量3,500、固形分(有効分)含有量60%のメタクリル酸メチルマクロマーを得た。
得られたポリマーのゲルクロマトグラフィー(GPC)法によりポリスチレンを標準物質として測定した結果、数平均分子量(Mn)5,200、重量平均分子量(Mw)28,000であった。
PGMEA84部、製造例1で得られた高分子分散剤6部を混合したものに、ホモミキサー(IKAジャパン株式会社製、ウルトラタラックス)17,000rpmで撹拌下、顔料としてジケトピロロピロール系顔料10部(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ株式会社製、PR254:商品名「IRGAPHOR BT−CF」)を投入し、30分間撹拌混合して一次予備分散体を得た。
得られた混合物を、0.2mmφのジルコニアビーズを充填(充填率60vol%)したダイノーミル(シンマルエンタープライゼス製、0.6L−ECM)を撹拌周速8m/s、滞留時間5分の条件で、連続方式により3パス処理し、数μmの粗大粒子を分散し、二次予備分散体を得た(第1工程)。二次予備分散体のD50は0.095μm、D90は0.198μmであった。
次に、0.05mmφのジルコニアビーズを充填(充填率64vol%)したウルトラアペックスミル(内容積0.17L、寿工業株式会社製、商品名)を撹拌周速6m/s、滞留時間0.6分の条件で、連続方式により10パス、20パス、50パス処理した(第2工程)(2槽による液戻し方式、図2参照)。
第2工程で得られた各パス処理品を、それぞれマイクロフルイダイザー(Microfluidics社製、MF−110H)により150MPaの圧力で、連続方式により6パス処理した(第3工程)。
(粒度分布)
各工程で得られた分散体をPGMEAで300倍に希釈し、日機装株式会社製のレーザードップラー式粒度分布計「マイクロトラック UPA150」を用いて体積基準の粒度分布を測定した。
(保存安定性)
顔料分散体の分散直後(保存前)の粘度を、E型粘度計〔測定温度20℃、測定時間1分、回転数20rpm、標準ローター(1°34′×R24)〕を用いて測定した。同様にして、顔料分散体を40℃で1週間保存した後の粘度を測定し、保存前後の粘度を対比することにより保存安定性を評価した。
実施例1〜3の第2工程までを行い、同様に評価した。結果を表1に示す。
実施例4及び5
第1工程の高分子分散剤として、味の素ファインテクノ株式会社製、アジスパーPB−822〔組成(重量比):ポリアリルアミン/ポリカプロラクトン=5/95、Mw:8,000〕を用い、前記ダイノーミルの処理周速を6.5m/sとした以外は、実施例2及び3と同様の処理を行い、同様に評価した。なお二次予備分散体のD50は0.122μm、D90は0.333μmであった。結果を表1に示す。
通常、D90を低減しようとすると、更に分散を進め、D50まで小さくする必要がある。例えば表1の実施例2のD90と比較例3のD90は110nm前後で同等であるが、比較例3のD50は実施例2のD50に比べて10nm程度小さくする必要があり、粘度も高くなる。
比較例4及び5
実施例4及び5の第2工程までを行い、同様に評価した。結果を表1に示す。
Claims (6)
- 下記の第1工程、第2工程、及び第3工程を有する非水系顔料分散体の製造方法。
第1工程:少なくとも顔料、高分子分散剤、及び有機溶媒を含有する顔料組成物を混合し、予備分散する工程
第2工程:得られた予備分散体を、粒径が0.1mm以下のメディア粒子を用いるメディア式分散機により分散処理する工程
第3工程:高圧ホモジナイザーを用いて、更に分散処理する工程 - 第3工程において用いる高圧ホモジナイザーの分散圧力が20MPa以上である、請求項1に記載の非水系顔料分散体の製造方法。
- 第2工程において、第1工程で得られた予備分散体を、連続的に分散し、かつ得られた分散処理物とメディア粒子とを連続的に分離する、請求項1又は2に記載の非水系顔料分散体の製造方法。
- 第2工程において用いるメディア粒子の粒径が0.003〜0.07mmである、請求項1〜3のいずれかに記載の非水系顔料分散体の製造方法。
- 高分子分散剤が、主鎖にアミド基を有するモノマー由来の構成単位を有し、側鎖にメタクリル酸エステルマクロマー由来の構成単位を有するグラフトポリマーである、請求項1〜4のいずれかに記載の非水系顔料分散体の製造方法。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の方法によって得られた非水系顔料分散体を含有するカラーフィルター用着色組成物。
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