JP4629278B2 - 蓄圧式燃料噴射装置の運転制御方法 - Google Patents

蓄圧式燃料噴射装置の運転制御方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、蓄圧式燃料噴射装置の運転制御方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、エンジンへ燃料を噴射供給する燃料噴射装置の一つとして、高圧ポンプから圧送された燃料をコモンレール内に一旦蓄積しておき、電気的に演算され、設定された噴射タイミングでコモンレール内に蓄積された高圧燃料を燃料噴射弁からエンジンの気筒内に噴射するように構成された蓄圧式の内燃機関用燃料噴射装置が広く採用されるに到っている。従来の蓄圧式燃料噴射装置においては、コモンレール内に高圧燃料を供給する高圧ポンプをエンジン回転数及びアクセル操作量に応じて制御し、コモンレール内の高圧燃料の圧力、すなわちレール圧、がそのときの車両の運転状態に見合った値となるようにするため、エンジン回転数及びアクセル操作量に従ってそのときのドライバーの要求噴射量を演算し、この演算結果に応じてコモンレールの目標レール圧を決定し、レール圧がこの目標レール圧となるようにフィードバック制御が行われる構成となっている。
【0003】
したがって、この種の蓄圧式燃料噴射装置においては、レール圧を如何に安定、且つ確実に目標圧力とするかが噴射特性の良否に大きく影響する。従来においては、このレール圧を所要の値に維持するため、高圧ポンプの上流側に低圧制御電磁弁を設けて開閉制御を行うことによりレール圧を制御する方法、及び高圧ポンプの下流側に高圧制御電磁弁を設けて開閉制御を行うことによりレール圧を制御する方法が公知である。これらの方法は、それぞれ長所、短所があり、従来からそれぞれの長所、短所を考慮した運転制御方法が種々提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、いずれにしても、レール圧制御用の制御電磁弁が固着、ソレノイドコイルの断線又はその他の理由で故障した場合にはレール圧制御が不可能となってしまい、エンジンの運転が停止してしまうことになり、種々の不具合を生じさせる虞があった。このため、レール圧制御の信頼性を改善することが望まれている。
【0005】
本発明の目的は、したがって、レール圧制御の信頼性を改善することができる蓄圧式燃料噴射装置の運転制御方法を提供することにある。
【0006】
本発明の他の目的は、レール圧調整のためのレール圧調整器に故障が生じた場合これを速やかに検出することができるようにした蓄圧式燃料噴射装置の運転制御方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、請求項1の発明によれば、燃料タンク内の燃料を高圧ポンプで加圧してコモンレール内に蓄えておき、該コモンレール内の高圧燃料を燃料噴射弁を介してエンジンの燃焼室内に噴射供給するように構成された蓄圧式燃料噴射装置の運転制御方法であって、前記高圧ポンプの下流側に高圧制御電磁弁を設けると共に前記高圧ポンプの上流側に低圧制御電磁弁を設け、運転開始後前記高圧制御電磁弁を閉ループ制御で運転すると共に前記低圧制御電磁弁を開ループ制御で運転する第1運転モードで前記コモンレールのレール圧を上昇させた後、前記低圧制御電磁弁を閉ループ制御で運転すると共に前記高圧制御電磁弁を開ループ制御で運転する第2運転モードに切り換えてレール圧の制御を行うようにし、前記低圧制御電磁弁の閉ループ制御動作に異常が生じた場合には前記レール圧の制御を前記第1運転モードで行うようにしたことを特徴とする蓄圧式燃料噴射装置の運転制御方法が提案される。
【0008】
請求項2の発明によれば、請求項1の発明において、前記第2運転モードにおける目標レール圧値と実レール圧値とに基づいて前記低圧制御電磁弁の閉ループ制御動作が異常であるか否かを判別するようにした蓄圧式燃料噴射装置の運転制御方法が提案される。
【0009】
請求項3の発明によれば、請求項2の発明において、前記第1運転モードから前記第2運転モードへ切り換えてから、所定の期間経過後に前記低圧制御電磁弁の閉ループ制御動作が異常であるか否かの判別を行うようにした蓄圧式燃料噴射装置の運転制御方法が提案される。
【0010】
請求項4の発明によれば、請求項2の発明において、前記目標レール圧と前記実レール圧との差が所定値以上の状態が所定時間以上継続した場合に前記低圧制御電磁弁の閉ループ制御動作が異常であると判別するようにした蓄圧式燃料噴射装置の運転制御方法が提案される。
【0016】
請求項の発明によれば、請求項の発明において、前記所定の期間が経過したか否かを前記高圧ポンプの圧送回数が前記閉ループ制御開始後所定値に達したか否かによって判別するようにした蓄圧式燃料噴射装置の運転制御方法が提案される。
【0017】
コモンレールのレール圧を高圧ポンプの下流側及び上流側で制御することにより、各制御の特長を生かしたレール圧制御が可能となり、且つ高圧又は低圧制御電磁弁による閉ループ制御動作のいずれか一方が異常となった場合には、他方の制御電磁弁を用いてレール圧の閉ループ制御が行われる。このバックアップ制御により、レール圧制御の信頼性を著しく改善することができる。
【0018】
また、制御電磁弁の動作に異常が生じたか否かのための動作監視は、当該制御電磁弁が閉ループ制御動作に入ってから所定期間経過後に開始するようにしたので、レール圧が安定してからその監視を行うことが可能であり、所要の異常判別を確実に行うことができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態の一例につき詳細に説明する。
【0020】
図1は、本発明の方法によって運転が制御される蓄圧式燃料噴射装置の実施の形態の一例を示す構成図である。図1に示した蓄圧式燃料噴射装置Aは、概略的にその構成を述べれば、燃料タンク1に蓄積された燃料が高圧ポンプ2を介して複数の噴射ノズル3が接続されたコモンレール4へ圧送され、噴射ノズル3に内蔵された電磁弁(図示せず)の動作が制御ユニット5により制御されることにより、噴射ノズル3からの燃料噴射が制御される構成となっている。本実施の形態では、噴射ノズル3は、車両を駆動するための多気筒エンジンの各気筒(図示せず)に取り付けられており、蓄圧式燃料噴射装置Aによってこの車両用エンジンの各気筒の燃焼室内に燃料を噴射供給する構成となっている。
【0021】
以下、蓄圧式燃料噴射装置Aの構成について、より具体的に説明する。燃料タンク1と高圧ポンプ2の低圧側との間には燃料パイプ8が配設されており、この燃料パイプ8の途中には、燃料タンク1側から順に、燃料中のごみ等を除去するためのフィルタ6及び低圧制御電磁弁7が設けられている。そして、フィルタ6と低圧制御電磁弁7との間の燃料パイプ8上の適宜の部位には、燃温センサ9が設けられており、燃温センサ9からは燃料パイプ8内を通る燃料の温度を示す燃温信号SAが出力され、燃温信号SAは、後述する制御ユニット5へ入力されるようになっている。また、フィルタ6と低圧制御電磁弁7との間の燃料パイプ8の適宜な部位には、機械式低圧制御弁10が設けられており、燃料パイプ8内の燃料圧力が所定の開弁圧となると機械式低圧制御弁10が開弁状態となり、低圧制御電磁弁7とフィルタ6との間の燃料パイプ8内の燃料が燃料タンク1内へ放出されるようになっている。
【0022】
高圧ポンプ2の高圧側は、燃料パイプ13によりコモンレール4の入力端4Aに直接連結されている。そして、コモンレール4の出口端4Bは、途中に高圧制御電磁弁11が設けられている燃料パイプ14により燃料タンク1に接続されたものとなっている。また、コモンレール4には、レール圧を検出するための高圧力センサ12が適宜の部位に設けられており、高圧力センサ12から出力されレール圧を示すレール圧信号SBは、制御ユニット5へ入力されるようになっている。
【0023】
制御ユニット5は、後述するソフトウェアを実行して、先の低圧制御電磁弁7、高圧制御電磁弁11及び噴射ノズル3の図示されない電磁弁の動作を制御するもので、具体的には、例えば、いわゆるマイクロコントローラ及び各種のインターフェイス回路等から構成されてなるものである。この制御ユニット5には、先に述べたように燃温センサ9及び高圧力センサ12からの燃温信号SA、レール圧信号SBが入力される他、蓄圧式燃料噴射装置Aによって燃料が噴射供給されるエンジン(図示せず)の回転数Ne、アクセルペダル(図示せず)の踏み込み量Acc及び車両始動の際に用いられるいわゆるイグニッションエンジンキー(図示せず)の位置情報Keyが入力されるものとなっている。
【0024】
低圧制御電磁弁7及び高圧制御電磁弁11は、コモンレール4のレール圧を所要の値とするために設けられたもので、いずれも制御ユニット5によって制御される。制御ユニット5によるレール圧調整のための各制御電磁弁の制御態様は、(1)制御ユニット5から制御電磁弁に対して駆動電流を出力するだけで、その結果と目標とする駆動状態との差をフィードバックすることのない制御(開ループ制御)。
(2)制御ユニット5から制御電磁弁に対して駆動電流を出力し、その結果と目標とする駆動状態との差をフィードバックするようにしてレール圧が所望の圧力となるように、制御ユニット5による制御電磁弁の駆動電流を、高圧力センサ12のレール圧信号SBに基づいて調整する制御(閉ループ制御)。
のいずれかによって行うことができる構成となっている。
【0025】
図2〜図4は、図1に示した構成の蓄圧式燃料噴射装置Aを本発明の方法に従って運転制御するための運転制御プログラム20を示すフローチャートである。
図2〜図4を参照して本発明による動作制御例につき説明する。
【0026】
エンジン始動後に運転制御プログラム20の実行が開始されると、先ず、ステップS21で、高圧制御電磁弁11を全閉とし且つ低圧制御電磁弁7を全開とする制御電磁弁の制御を制御ユニット5により開ループ制御で実行する。この結果、高圧ポンプ2からの高圧燃料がコモンレール4から排出しない状態で、高圧ポンプ2からの高圧燃料の送出量が最大となって高圧燃料がコモンレール4に送り込まれ、コモンレール4内の燃料圧力が素早く上昇する。ステップS22ではレール圧信号SBに基づいてレール圧が高圧制御電磁弁11によるレール圧制御を行うべき所定圧力P0 に達したか否かが判別される。レール圧が所定圧力P0 に達していない場合にはステップS22の判別結果はNOとなり、ステップS21に戻る。一方、レール圧が所定圧力P0 に達したと判別されると、ステップS22の判別結果はYESとなり、ステップS23に進む。
【0027】
ステップS23では、高圧ポンプ2による燃料の圧送回数をカウントするため制御ユニット5内にソフトウェア的に形成された圧送回数カウンタをリセットする。ここで、圧送回数はポンプのカムシャフトが1回転する毎にカウント値を1つだけ大きくすることによりカウントされる。
【0028】
次のステップS24で高圧制御電磁弁11を閉ループ制御モードによる圧力調整動作に切り換えると共に低圧制御電磁弁7を開ループ制御モードによる圧力調整動作に切り換え、これにより第1運転モードとなる。この第1運転モードにおいては、高圧制御電磁弁11による閉ループ制御に対しては、蓄圧式燃料噴射装置Aの通常運転において要求されるレール圧の上限値が第1目標レール圧として与えられ、低圧制御電磁弁7によるレール圧の開ループ制御に対しても同様に同一の第1目標レール圧が与えられる。
【0029】
次のステップS25では、圧送回数カウンタのカウント値Mが値MAより大きくなったか否かが判別される。この値MAは、ステップS24による制御が開始された後、実レール圧が目標レール圧に略収束するまでに必要とされる燃料圧送回数に設定されており、MAの値は予め実験等により得られたそのポンプ個有の値を制御ユニット5にセットしておくことができる。
【0030】
圧送回数カウンタのカウント値MがMAより小さい場合にはステップS25の判別結果はNOとなり、ステップS24の制御状態が維持される。このようにして、カウント値Mが、実レール圧が目標レール圧に略収束するまでに必要とされる燃料圧送回数である値MAより大きくなると、ステップS25の判別結果はYESとなり、ステップS26に進む。上記説明から判るように、ステップS25の判別結果がYESとなったときには、実レール圧はほぼ目標レール圧に収束した状態、すなわち、コモンレール4内の高圧燃料の圧力が略安定した状態となっている。
【0031】
ステップS26では、高圧制御電磁弁11による閉ループ制御において目標レール圧と実レール圧とが略等しくなったレール圧制御の安定状態が得られたことにより、高圧制御電磁弁11によるレール圧制御の監視が開始される。このレール圧制御の監視は、実レール圧と目標レール圧との差が所定値以上となった状態が所定時間以上継続したか否かをチェックすることにより行われる。
【0032】
このように、高圧ポンプ2による燃料圧送回数Mが所定の値MAより大きくなったことを確認してから、すなわち、コモンレール4内の高圧燃料の圧力が略安定した状態となっていると推定される状態に入ってから、高圧制御電磁弁11によるレール圧制御の監視が開始されるので、その監視を正しく行うことができ、誤判断を少なくすることができる。
【0033】
なお、ステップS24での制御の切り換えが実行されてから監視を開始するまでの所定の期間の設定の仕方は、本実施の形態に示した高圧ポンプ2の燃料圧送回数のカウント値による方法に限定されるものではなく、この他の方法であってもよい。例えば、実レール圧の変動幅が所定値より小さくなった場合、ステップS24での制御の切り換えから所定時間が経過した場合、又はエンジンの回転数の変動幅が所定値より小さくなった場合にコモンレール4内の高圧燃料の圧力が略安定した状態となったと推定する方法であってもよい。あるいは、これらの方法を適宜に選択的に組み合わせることにより上記推定を行ってもよい。このようにいくつかの方法を組み合わせることにより誤検出を避けることができるのは勿論のこと、監視を開始すべきタイミングを正確に判定できるようになり、監視開始のために必要且つ充分な待ち時間で時間の損失なしに監視を開始できる。
【0034】
以上のようにしてレール圧制御の監視が開始されると、ステップS27に進み、ここで高圧制御電磁弁11から低圧制御電磁弁7への強制切り換えチェックが行われる。ここでのチェックは、ステップS26において開始されたレール圧制御の監視結果及びこれ以外のチェック結果を考慮し、レール圧制御を高圧制御電磁弁11による閉ループ制御動作から低圧制御電磁弁7による閉ループ制御動作に強制的に切り換えるべきか否かをチェックするものである。
【0035】
図5は、この強制切り換えチェックのためのサブルーチンプログラムを示すフローチャートである。図5を参照して強制切り換えチェックにつき説明する。
【0036】
ステップS41では、レール圧信号SBに基づきコモンレール4内のレール圧が所定値以上となったか否かが判別される。レール圧が所定値以上となっている場合には、ステップS41の判別結果はYESとなり、ステップS42に入る。レール圧が所定値より小さく所定値以上となっていない場合には、ステップS41の判別結果はNOとなりステップS43に入り、ここでは、高圧制御電磁弁11が固着しているか否かが判別される。
【0037】
ステップS43において高圧制御電磁弁11が固着していると判別された場合には、ステップS43の判別結果はYESとなり、ステップS42に入る。高圧制御電磁弁11が固着していないと判別された場合にはステップS43の判別結果はNOとなり、ステップS44に入り、ここで、高圧制御電磁弁11が故障しているか否かが判別される。高圧制御電磁弁11が故障していないと判別された場合にはステップS44の判別結果はNOとなり、ステップS45に入る。高圧制御電磁弁11が故障していると判別された場合には、ステップS44の判別結果はYESとなり、ステップS42に入る。
【0038】
ステップS42では、低圧制御電磁弁7が故障しているか否かが判別される。
この故障判別は、ステップS26で実行されるレール圧制御の監視結果に基づいて行われる。すなわち、実レール圧と目標レール圧との差が所定値以上となった状態が所定時間以上継続したか否かをチェックすることにより行われたものである。低圧制御電磁弁7が故障していると判別された場合には、ステップS42の判別結果はYESとなり、ステップS45に入る。低圧制御電磁弁7が故障していないと判別された場合には、ステップS42の判別結果はNOとなり、ステップS46に入る。
【0039】
ステップS46ではレール圧信号SBに基づきレール圧が異常な状態となっているか否かが判別される。レール圧が異常な状態となっている場合には、ステップS46の判別結果はYESとなり、ステップS45に入る。ステップS45では、高圧制御電磁弁11から低圧制御電磁弁7への制御動作の切り換えを行うための条件が成立しなかったことが決定され、ステップS27の実行が終了し、次のステップS28に入る。
【0040】
一方、ステップS46において、レール圧が異常な状態となっていない場合には、ステップS46の判別結果はNOとなり、ステップS47に入り、ここでは、高圧制御電磁弁11から低圧制御電磁弁7への制御動作の切り換えを行うための条件が成立したことが決定され、ステップS27の実行が終了し、次のステップS28に進む。
【0041】
すなわち、高圧制御電磁弁11が故障していない場合にはステップS41、S43、S44の各判別結果はいずれもNOとなり、ステップS45で切換条件不成立が決定される。一方、高圧制御電磁弁11が故障又は故障に近い状態の場合にはステップS41、S43、S44の各判別結果の少なくとも1つがYESとなり、ステップS42で低圧制御電磁弁7の故障か否かの判別により低圧制御電磁弁7も故障であれば、ステップS45で切換条件不成立が決定される。低圧制御電磁弁7が故障していない場合にはステップS46でレール圧が異常となっているか否かが判別され、レール圧が異常でない場合にのみステップS47で切換条件成立が決定される。
【0042】
ステップS28では、ステップS27における切り換えチェックによって切換条件が成立しているか否かが判別される。切換条件が成立していないと判別されるとステップS28の判別結果はNOとなり、ステップS29に入る。
【0043】
ステップS29では、燃温信号SAに基づき燃料温度Tfが所定値T0 以上となったか否かが判別され、Tf<T0 の場合にはステップS29の判別結果はNOとなり、ステップS26に戻る。
【0044】
このようにして高圧制御電磁弁11による閉ループ制御によりレール圧の制御が行われると、燃料の温度が比較的速く上昇し、Tf≧T0 となったときにステップS29の判別結果がYESとなり、ステップS30に進む。
【0045】
ステップS24で高圧制御電磁弁11の閉ループ制御動作が開始されてコモンレール4内の燃料圧の制御が行われると、レール圧の制御が応答性よく実行されると共に燃料の温度の上昇が促進されることになる。このように、エンジン始動直後に燃料の温度を速やかに上昇させることができるため、始動時におけるエンジンの運転を迅速に安定化できるようになるという利点が得られる。これは、特に、外気温が低い冬期等においてその効果は大きいものである。
【0046】
このようにして燃料温度が所定値T0 以上となったことが判別されると、ステップS30において、高圧制御電磁弁11によるレール圧制御のための閉ループ制御動作を行うための第1目標レール圧をより低い別の第2目標レール圧とする目標レール圧の変更が行われる。
【0047】
ステップS31で、ステップS30における目標レール圧の変更が行われてから所定時間が経過したか否かが判別される。ここで、所定時間が経過していないと判別された場合にはステップS31の判別結果はNOとなり、ステップS30に戻る。このようにして第2目標レール圧による閉ループ制御が所定時間行われると、目標レール圧変更後の制御によりレール圧の実際値が第2目標レール圧に略収束したと判別されて、ステップS31の判別結果はYESとなり、ステップS32に進む。
【0048】
ステップS32では圧送回数カウンタをリセットし、次のステップS33で低圧制御電磁弁7を閉ループ制御モードにしてこれによりコモンレール4のレール圧をそのときの運転条件に見合った目標レール圧に維持するための圧力調整動作に切り換えると共に、高圧制御電磁弁11を全閉状態とする開ループ制御モードに切り換え第2運転モードとされる。そして、以後は第2運転モードによるレール圧制御となり、低圧制御電磁弁7の閉ループ制御によって、コモンレール4内のレール圧がその時の運転条件に従う目標レール圧に維持されるようにレール圧制御が行われる。この運転条件に従う目標レール圧は、エンジン回転数、目標噴射量、レール圧、エンジンの冷却水の温度(水温)、燃料の温度(燃温)等のパラメータに基づいて算出することができ、このようなパラメータを考慮することによって得られた目標レール圧を用いて低圧制御電磁弁7による閉ループ制御モードでレール圧の制御を行うことによりレール圧の値を最適な値とすることができる。
【0049】
このように、エンジンの始動後には、高圧制御電磁弁11を全閉で低圧制御電磁弁7を全開にしてコモンレール4内の燃料圧力を所定値P0 まで素早く高め、その後、高圧制御電磁弁11を閉ループ制御モードで動作させて燃料温度を早めに上昇させつつレール圧を応答性よく第1目標レール圧に収束させ、燃料温度がエンジンの安定的な運転に必要な所定値T0 に達したならば、燃料温度の大きな上昇を伴わない低圧制御電磁弁7の閉ループ制御によるレール圧制御に移行させる構成となっている。この結果、エンジンの始動時に燃料温度を上昇させつつレール圧を素早くその安定運転を図ることができる圧力とすることができる。そして、高圧制御電磁弁11による閉ループ制御動作から低圧制御電磁弁7の閉ループ制御動作への切り換えは、一旦目標レール圧を低くした状態で所定時間だけ高圧制御電磁弁11による閉ループ制御運転を行ってから行うようにしたので、上記制御動作の切り換えをレール圧のオーバーシュートを発生させることなしに極めて円滑に行うことができ、切り換えによりレール圧に大きな変動を生じさせることがない。したがって、エンジンの運転は、上記制御動作の切り換えに拘らず一定レール圧の下で安定に行われ、良好な運転特性を確保できる。また、この制御は部品の追加を必要としないのでコストを上昇させることがない。
【0050】
ステップS34では、圧送回数カウンタのカウント値Mが値MBより大きくなったか否かが判別される。この値MBは、ステップS33による第2運転モードでの制御が開始された後、コモンレール4の実レール圧がその時の運転条件に従う目標レール圧に略収束するまでに必要とされる燃料圧送回数に設定されており、MBの値は予め実験等により得られたそのポンプ個有の値を制御ユニット5にセットしておくことができる。
【0051】
圧送回数カウンタのカウント値MがMBより小さい場合にはステップS34の判別結果はNOとなり、ステップS33の制御状態が保持される。このようにして、カウント値Mが増大し、実レール圧がその時の運転条件に従う目標レール圧に略収束するまでに必要とされる燃料圧送回数MBより大きくなると、ステップS34の判別結果はYESとなり、ステップS35に進む。上述の説明から判るように、ステップS34の判別結果がYESとなったときには、実レール圧はほぼその時の運転条件に従う目標レール圧に収束した状態、すなわち、コモンレール4内の高圧燃料の圧力が略安定した状態となっている。
【0052】
ステップS35では、低圧制御電磁弁7による閉ループ制御においてその時の運転条件に従う目標レール圧と実レール圧とが略等しくなったレール圧制御の安定状態が得られたことにより、低圧制御電磁弁7によるレール圧制御の監視が開始される。
【0053】
以上のようにしてレール圧制御の監視が開始されると、ステップS36に進み、ここで低圧制御電磁弁7から高圧制御電磁弁11への強制切り換えチェックが行われる。ここでのチェックは、ステップS35において開始されたレール圧制御の監視結果及びこれ以外のチェック結果を考慮し、レール圧制御を強制的に低圧制御電磁弁7による閉ループ制御動作から高圧制御電磁弁11による閉ループ制御動作に切り換えるべきか否かをチェックするものである。
【0054】
図6は、この強制切り換えチェックのためのサブルーチンプログラムを示すフローチャートである。図6を参照して強制切り換えチェックにつき説明する。
【0055】
ステップS51では、レール圧信号SBに基づきコモンレール4内のレール圧が所定値以上となったか否かが判別される。レール圧が所定値以上となっている場合には、ステップS51の判別結果はYESとなり、ステップS52に入る。レール圧が所定値より小さく所定値以上となっていない場合には、ステップS51の判別結果はNOとなりステップS53に入り、ここでは、低圧制御電磁弁7が固着しているか否かが判別される。
【0056】
ステップS53において低圧制御電磁弁7が固着していると判別された場合には、ステップS53の判別結果はYESとなり、ステップS52に入る。低圧制御電磁弁7が固着していないと判別された場合にはステップS53の判別結果はNOとなり、ステップS54に入り、ここで、低圧制御電磁弁7が故障しているか否かが判別される。低圧制御電磁弁7が故障していないと判別された場合にはステップS54の判別結果はNOとなり、ステップS55に入る。低圧制御電磁弁7が故障していると判別された場合にはステップS54の判別結果はYESとなり、ステップS52に入る。
【0057】
ステップS52では、高圧制御電磁弁11が故障しているか否かが判別される。この故障判別は、ステップS35で実行されるレール圧制御の監視結果に基づいて行われる。すなわち、実レール圧と目標レール圧との差が所定値以上となった状態が所定時間以上継続したか否かをチェックすることにより行われたものである。高圧制御電磁弁11が故障していると判別された場合には、ステップS52の判別結果はYESとなり、ステップS55に入る。高圧制御電磁弁11が故障していないと判別された場合には、ステップS52の判別結果はNOとなり、ステップS56に入る。
【0058】
ステップS56ではレール圧信号SBに基づきレール圧が異常な状態となっているか否かが判別される。レール圧が異常な状態となっている場合には、ステップS56の判別結果はYESとなり、ステップS55に入る。ステップS55では、低圧制御電磁弁7から高圧制御電磁弁11への制御動作の切り換えを行うための条件が成立しなかったことが決定され、ステップS36の実行が終了し、次のステップS37に入る。
【0059】
一方、ステップS56において、レール圧が異常な状態となっていない場合には、ステップS56の判別結果はNOとなり、ステップS57に入る。ステップS57では、低圧制御電磁弁7から高圧制御電磁弁11への制御動作の切り換えを行うための条件が成立したことが決定され、ステップS36の実行が終了し、次のステップS37に進む。
【0060】
すなわち、低圧制御電磁弁7が故障していない場合にはステップS51、S53、S54の各判別結果はいずれもNOとなり、ステップS55で切換条件不成立が決定される。一方、低圧制御電磁弁7が故障又は故障に近い状態の場合にはステップS51、S53、S54の各判別結果の少なくとも1つがYESとなり、ステップS52で高圧制御電磁弁11の故障か否かの判別により高圧制御電磁弁11も故障であれば、ステップS55で切換条件不成立が決定される。高圧制御電磁弁11が故障していない場合にはステップS56でレール圧が異常となっているか否かが判別され、レール圧が異常でない場合にのみステップS57で切換条件成立が決定される。
【0061】
ステップS37では、ステップS36における切り換えチェックによって切換条件が成立しているか否かが判別される。切換条件が成立していないと判別されるとステップS37の判別結果はNOとなり、ステップS35に戻る。
【0062】
一方、ステップS37で、ステップS36における切り換えチェックによって切換条件が成立していると判別されるとステップS37の判別結果はYESとなり、ステップS23に戻る。
【0063】
同様に、ステップS28で切換条件が成立したと判別された場合には、その判別結果はYESとなり、ステップS32に入り、ここで圧送回数カウンタをリセットする。そして、ステップS33に入り、低圧制御電磁弁7を閉ループ制御モードに切り換え、これによりコモンレール4のレール圧を所要の目標レール圧に維持するバックアップ制御が実行される。
【0064】
このように、蓄圧式燃料噴射装置Aは、始動後第1運転モードにてコモンレール4のレール圧が制御され、その後所定のタイミングで第2運転モードに切り換えられ、第2運転モードによってコモンレール4のレール圧が制御される。これらのレール圧制御において所要の制御電磁弁が閉ループ制御動作を予定通り正常に行っているか否かがステップS27及びS36においてチェックされる。
【0065】
この結果、第1運転モードにおいて高圧制御電磁弁11の動作が正常に行われていないと判別され、且つ低圧制御電磁弁7が正常である場合には切換条件の成立が決定され、第2運転モードによるレール圧制御に切り換えられて、これによるバックアップ制御が開始される。
【0066】
一方、第2運転モードにおいて低圧制御電磁弁7の動作が正常に行われていないと判別され、且つ高圧制御電磁弁11が正常である場合には切換条件の成立が決定され、第1運転モードによるレール圧制御に切り換えられて、これによるバックアップ制御が開始される。
【0067】
このように、制御電磁弁を高圧ポンプ2の上流側と下流側とにそれぞれ設けた構成として、これらを切り換えてレール圧の制御を行う構成において、一方の制御電磁弁が正常に動作しない場合には他方の制御電磁弁を用いてバックアップ動作を行う構成としたので、エンジンの燃料供給が不可能になるという状態の発生確立を極めて低く抑え、これにより、レール圧の制御を信頼性よく行うことができる。
【0068】
また、各制御電磁弁の監視は、高圧ポンプ2による燃料圧送回数Mが所定の値MAより大きくなったことを確認してから、すなわち、コモンレール4内の高圧燃料の圧力が略安定した状態となっていると推定される状態に入ってから、高圧制御電磁弁11によるレール圧制御の監視が開始されるので、その監視を正しく行うことができ、誤判断を少なくすることができる。
【0069】
【発明の効果】
本発明によれば、上述の如く、高圧ポンプの下流側に高圧制御電磁弁を設けると共に高圧ポンプの上流側に低圧制御電磁弁を設け、高圧制御電磁弁の閉ループ制御動作でコモンレールのレール圧を上昇させた後、低圧制御電磁弁の閉ループ制御動作でレール圧の制御を行うようにし、一方の制御電磁弁の動作に不具合が生じた場合には他方の制御電磁弁によりレール圧のバックアップ制御を行うようにしたので、エンジンの燃料供給が不可能になるという状態の発生確立を極めて低く抑え、これにより、レール圧の制御を信頼性よく行うことができる。
【0070】
また、各制御電磁弁の監視を、閉ループ制御動作に入ってから所定期間経過後に開始するようにしたので、コモンレール内の高圧燃料の圧力が略安定した状態で制御電磁弁によるレール圧制御の監視が開始されることとなる。したがって、その監視を正しく行うことができ、誤判断を少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の方法によって運転が制御される蓄圧式燃料噴射装置の実施の形態の一例を示す構成図。
【図2】図1に示した構成の蓄圧式燃料噴射装置を本発明の方法に従って運転制御するための運転制御プログラムを示す一部フローチャート。
【図3】図1に示した構成の蓄圧式燃料噴射装置を本発明の方法に従って運転制御するための運転制御プログラムを示す一部フローチャート。
【図4】図1に示した構成の蓄圧式燃料噴射装置を本発明の方法に従って運転制御するための運転制御プログラムを示す一部フローチャート。
【図5】図3に示す強制切り換えチェックステップのサブルーチンプログラムを示すフローチャート。
【図6】図4に示す強制切り換えチェックステップのサブルーチンプログラムを示すフローチャート。
【符号の説明】
1 燃料タンク
2 高圧ポンプ
3 噴射ノズル
4 コモンレール
5 制御ユニット
6 フィルタ
7 低圧制御電磁弁
8、13、14 燃料パイプ
9 燃温センサ
10 機械式低圧制御弁
11 高圧制御電磁弁
12 高圧力センサ
20 運転制御プログラム
A 蓄圧式燃料噴射装置
Acc 踏み込み量
Ne 回転数
Key 位置情報
SA 燃温信号
SB レール圧信号

Claims (5)

  1. 燃料タンク内の燃料を高圧ポンプで加圧してコモンレール内に蓄えておき、該コモンレール内の高圧燃料を燃料噴射弁を介してエンジンの燃焼室内に噴射供給するように構成された蓄圧式燃料噴射装置の運転制御方法であって、
    前記高圧ポンプの下流側に高圧制御電磁弁を設けると共に前記高圧ポンプの上流側に低圧制御電磁弁を設け、運転開始後前記高圧制御電磁弁を閉ループ制御で運転すると共に前記低圧制御電磁弁を開ループ制御で運転する第1運転モードで前記コモンレールのレール圧を上昇させた後、前記低圧制御電磁弁を閉ループ制御で運転すると共に前記高圧制御電磁弁を開ループ制御で運転する第2運転モードに切り換えてレール圧の制御を行うようにし、前記低圧制御電磁弁の閉ループ制御動作に異常が生じた場合には前記レール圧の制御を前記第1運転モードで行うようにしたことを特徴とする蓄圧式燃料噴射装置の運転制御方法。
  2. 前記第2運転モードにおける目標レール圧値と実レール圧値とに基づいて前記低圧制御電磁弁の閉ループ制御動作が異常であるか否かを判別するようにした請求項1記載の蓄圧式燃料噴射装置の運転制御方法。
  3. 前記第1運転モードから前記第2運転モードへ切り換えてから、所定の期間経過後に前記低圧制御電磁弁の閉ループ制御動作が異常であるか否かの判別を行うようにした請求項2記載の蓄圧式燃料噴射装置の運転制御方法。
  4. 前記目標レール圧と前記実レール圧との差が所定値以上の状態が所定時間以上継続した場合に前記低圧制御電磁弁の閉ループ制御動作が異常であると判別するようにした請求項2記載の蓄圧式燃料噴射装置の運転制御方法。
  5. 前記所定の期間が経過したか否かを前記高圧ポンプの圧送回数が前記閉ループ制御開始後所定値に達したか否かによって判別するようにした請求項3記載の蓄圧式燃料噴射装置の運転制御方法。
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