JP4628013B2 - フッ素含有水の処理装置および処理方法 - Google Patents
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Description
このフッ素含有廃水からフッ素成分を除去する方法としては、消石灰を用いる方法や炭酸カルシウムを用いる方法が知られている。
しかしながら、この消石灰を用いる方法においては、フッ素含有廃水のフッ素濃度の変動に対応可能となるように、反応当量以上の消石灰を添加する必要がある。したがって、フッ素との反応生成物であるフッ化カルシウムばかりでなく、未反応の消石灰が排出されるので、大量の汚泥が生じる。
この炭酸カルシウムを用いる方法は、フッ素濃度が変動しても未反応の汚泥等が発生することがない点や、処理後の処理水のフッ素成分残留濃度を低くできる点や、処理薬剤費が安価で済む点で、消石灰を用いる方法に比較して有利である。
係るフッ素含有水の処理装置の概略図を図3に示す。図3に示すフッ素含有水の処理装置Bにおいては、炭酸カルシウムを主成分とする粒状物から成る充填剤75を充填した充填塔70内に、原水ポンプ40を駆動してフッ素含有水を通水することにより、粒状物の表面にフッ化カルシウム皮膜が形成されて、フッ素含有水中のフッ素成分が除去される。そして、フッ化カルシウム皮膜が形成されてフッ素除去能力が低下した粒状物の再生処理の際に、フッ化カルシウム皮膜を粉砕して除去できるように、逆洗水ポンプ41を駆動して充填塔70内に逆洗水中で粒状物を強制的に撹拌しうる撹拌子81aが充填塔70内に設けられているものである。
特に、高濃度のフッ素成分を含有するフッ素含有水を処理する際には、短時間で粒状物の表面にフッ化カルシウムの皮膜が形成されやすい。このため、粒状物の再生処理の頻度を高くする必要が生じ、処理効率が更に低下する。
そこで、本発明の解決しようとする課題は、炭酸カルシウムを主成分とする粒状物の再生処理の際にも、フッ素含有水の処理を中断することなく継続し得るフッ素含有水の処理装置および処理方法を提供することにある。
本発明に係るフッ素含有水の処理装置は、上記課題を解決するために、以下の構成を備える。すなわち、炭酸カルシウムを主成分とする粒状物から成る充填層が形成された反応処理槽内にフッ素含有水を通水し、フッ素含有水中のフッ素成分と粒状物の炭酸カルシウムとの反応により非水溶性のフッ化カルシウムから成る皮膜を粒状物の表面に形成させて、フッ素含有水からフッ素成分を除去するフッ素含有水の処理装置において、前記反応処理槽内上部にフッ素含有水を供給してフッ素含有水を前記充填槽中を下方に向けて通過させる原水供給管と、前記反応処理槽内の下部から上方に延びる筒体であって、前記充填層の下部に位置する部位の側面に開口された第一開口部と、充填層の上面よりも上方に位置する部位に開口された第二開口部とが形成された移送管と、該移送管内に上方向へ向かう流体の流れを発生させて、前記第一開口部から移送管内に吸い込まれた前記充填層の下部の粒状物およびフッ素成分が除去された処理水を、移送管内の上部方向へ移送し、該粒状物の表面に形成されたフッ化カルシウムの皮膜を、該粒状物同士および移送管の内壁への衝突によって砕いて取り除き、該粒状物、該粒状物の表面から取り除かれたフッ化カルシウム片、および該処理水を前記第二開口部から排出するように、移送管内に流体を供給する流体供給手段と、内部に前記移送管の前記第二開口部が位置する筒体であって、底面が前記充填層の上面に接するよう配設され、該底面に、第二開口部から排出され、前記フッ化カルシウム片と分離されて溜まった粒状物を充填層に戻すための通過口が形成された分離槽と、該分離槽内に溜まった粒状物の量を検出するレベルセンサと、前記分離槽内に粒状物を供給する粒状物供給装置と、前記レベルセンサにより検出される粒状物の量が所定量より少なくなった際に、前記粒状物供給装置を駆動して分離層内に粒状物を供給する制御部と、前記第二開口部から排出され、前記粒状物と分離された前記フッ化カルシウム片および前記処理水を、前記分離槽から排出する排水路とを有することを特徴とする。
これによれば、粒状物を衝突壁に衝突させて、フッ化カルシウムの皮膜を、より有効に取り除くことができる。
これによれば、簡単な構成で、粒状物および処理水を移送するための流体の流れを発生させることができる。
係る粒状物のフッ素処理能力を再生する間においても、移送管の外部に充填されたフッ素処理能力を有する粒状物は、充填層の上方から下方に向けて移動しつつ、フッ素含有水中のフッ素成分と反応してフッ化カルシウム皮膜を形成して、フッ素成分を除去できる。
このように、粒状物の表面に形成されたフッ化カルシウムの皮膜の除去とフッ素含有水の処理とを同時に行うことができる結果、高濃度のフッ素成分を含有するフッ素含有水であっても、処理を中断することなく連続して行うことができ、その処理効率を著しく向上できる。
また、粒状物供給装置を設け、制御部が、レベルセンサの検出状態により分離槽内の粒状物が所定の量よりも少なくなったことを検出した際には、粒状物供給装置を駆動して、分離槽内に粒状物を供給するようにしたので、分離槽内に常に所定量以上の粒状物が維持されるため、充填層の減少を防ぐことができ、充填層の上面と分離槽の通過口との間が粒状物で埋められて、フッ素含有水が未処理まま排出されてしまうことを防ぐことができる。
図1は、本実施の形態に係るフッ素含有水の処理装置Aの構成を示す側面説明図であり、図2は、フッ素含有水の処理装置Aの平面説明図である。
原水供給管6は、反応処理槽2の上部にフッ素含有廃水を供給する輸送ポンプ(図示せず)に連通される。
係る移送管8の第一開口部8aのやや上方の外周壁には、頂部が上側に向けられたコーン状の傘部材12が取り付けられている。
更に、フッ素含有水の処理装置Aは、移送管8の下部から流体としてのエアーを供給して、移送管8内に上方向へ向かうエアー噴流(流体の流れ)を発生させる流体供給手段としてのエアー供給手段10を備える。エアー供給手段10は、エアー噴流を発生させるエアー供給装置10aと、エアー供給装置10aに連通し、発生されたエアー噴流を移送管8内に導くパイプ10bと、パイプ10bの中途部に設けられたバルブ10cとから成る。バルブ10cは、パイプ10b内の流路を閉塞して設けられ、このバルブ10cにより、エアー供給装置10aから移送管8内へのエアーの供給を断続したり、エアーの供給量を調節したりすることができる。
なお、エアー供給装置10aに、発生させるエアー噴流の流量を適宜調節する制御が可能な出力制御手段を設ければさらに好適である。
移送管8の上端側には、分離槽14が設けられる。分離槽14は、円筒状に形成され、移送管8の第二開口部8bが内部に位置するように、移送管8の上端部を取り囲んで配設される。
また、分離槽14は、その底面が、充填層4の上面に接するよう配設される。言い換えると、充填層4は、その上面が分離槽14の底面に接するように前記粒状物の量が調節されて、反応処理槽2内に形成されている。
集水樋部20は、分離槽14の壁部と気液分離壁16との間に、両者に所定の間隔を開けて同軸に設けられる。また、集水樋部20の上端は、気液分離壁16の下端よりも上方へ延びて設けられる。
また、分離槽14内には、分離槽14内に溜まった粒状物22の量を検出する検出手段としてのレベルセンサ24が設けられる。レベルセンサ24により分離槽14内の粒状物22が所定量より少なくなったことを検出した際には、レベルセンサ24に連繋された制御部(図示せず)が、粒状物供給装置(図示せず)を駆動して、分離槽14内に向けて設けられた粒状物供給口26から粒状物を放出させて、分離槽14内に粒状物を供給する。
レベルセンサ24としては、接触式のセンサや、赤外線センサ等を採用できる。
ここで、パイプ10bの、エアーが放出される端部10dは、第一開口部8aよりも上方に位置するよう配設されているため、移送管8の下端部の内部には負圧が生じる。この負圧により、第一開口部8aから、充填層4の下部の粒状物およびフッ素成分が除去された前記処理水が吸い込まれ、エアー噴流に乗って移送管8内を上方向に高速で移送される。そして、この粒状物および処理水は、移送管8の上端部を閉塞している衝突壁8cに衝突し、第二開口部8bから分離槽14内に噴出される。
なお、衝突壁8c内面や移送管8の内周壁に、下ろし金状の凹凸を形成しておくと、衝突した粒状物の皮膜がより砕かれやすくなるため好適である。
通常は、気液分離壁16および集水樋部20の形状および配置を、処理水内の概ね直径0.5mm以下のフッ化カルシウム片が排出されるよう設定すると好適である。これにより、粒状物から剥離したフッ化カルシウムの皮膜や小さくなりすぎた粒状物はほとんど排出されるとともに、充填層4を構成するに好適な大きさを保った粒状物は分離槽14内に溜めて充填層4へ再循環させることができる。
このままでは、充填層4の体積が減少してフッ素成分の除去が十分に行われなくなるといった問題や、分離槽14内に滞留する粒状物22の量が少なくなって、充填層4の上面と分離槽14の通過口14bとの間に隙間ができ、反応処理槽2内に、原水供給管6から供給されたフッ素含有水が、通過口14bから分離槽14内に入り込んで、未処理のまま排水路18から排水されてしまうといった問題が生じる。
粒状物供給手段により、分離槽14内に常に所定量以上の粒状物が維持されるため、充填層4の減少を防ぐことができ、また、充填層4の上面と分離槽14の通過口14bとの間が粒状物で埋められて、フッ素含有水が未処理まま排出されてしまうことを防ぐことができる。
なお、分離槽14内に滞留される粒状物の量は、充填層4の粒状物の量の10%程度が好適である。
この処理水(上澄み液)のフッ素濃度を分析したところ、5.8mg/Lであった。
一方、沈降したスラリーを引き抜き、濾紙上で加圧脱水したところ、汚泥の含水率は42%となった。この汚泥を110℃で2時間乾燥した後、組成を分析したところ、
Ca分: 510,000mg/kg-dry
F 分: 420,000mg/kg-dry
の値が得られた。これより、汚泥中にはCaF2が86%含まれていると見積もられた。
F 残留分: 1,500mg/kg-dry
の値が得られた(なお、採取した炭酸カルシウム粒子に、粒状物供給手段によって新たに供給された炭酸カルシウム粒子が混ざらないよう、採取前には粒状物供給装置を停止した)。これより、フッ化カルシウム皮膜の除去後の炭酸カルシウム粒子にはCaF2として3,100mg/kg-dry(0.3%)残留していると見積もられた。
この処理水(上澄み液)のフッ素濃度を分析したところ、5.9mg/Lであった。
一方、沈降したスラリーを引き抜き、濾紙上で加圧脱水した所、汚泥の含水率は36%となった。
F 残留分: 12,000mg/kg-dry
の値が得られた。これより、フッ化カルシウム皮膜の除去後の炭酸カルシウム粒子にはCaF2として25,000mg/kg-dry(2.5%)残留していると見積もられた。
特許文献1に開示された構造を有する、有効充填体積20Lの、間欠再生型の充填塔を用いて比較実験を行った。
フッ化水素酸濃厚液と水道水を混合して、フッ素濃度1,000mg/Lに調整したフッ素含有水を、空間速度5/h(すなわち本例においては、100L/h)で充填塔に供給し、下向流で通水した。
充填剤表面に残留したフッ素の量を分析したところ、
F 残留分: 15,000mg/kg-dry
の値が得られた。これより、撹拌翼の回転とともに表面が研磨された後の炭酸カルシウム粒子にはCaF2として31,000mg/kg-dry(3%)残留していると見積もられた。
これらの結果より、比較的高濃度のフッ素含有水を処理する場合には、間欠再生処理法では、原水供給の停止と再生処理が頻繁(2回目以降、少なくとも2時間以内毎)に必要であることが判明した。
実施例1で使用した同じフッ素含有水を、消石灰をもちいた処理方法により処理して、比較実験を実施した。
フッ素含有水(1,000mg/L)に消石灰スラリーを添加してpH10に調整し、60分間撹拌して反応させた。反応後、PACを600mg/L濃度で添加して掻き混ぜたのち、硫酸を添加してpH7に調整した。更に高分子凝集剤を2mg-高分子/L添加してフッ化カルシウムを粗大化して沈降分離した。
処理水(上澄み液)のフッ素濃度を分析したところ、12mg/Lであった。
一方、沈降したスラリーを濾紙上で加圧脱水した所、汚泥の含水率は74%となった。この汚泥を110℃で2時間乾燥した後、組成を分析したところ、
Ca分: 520,000mg/kg-dry
F 分: 380,000mg/kg-dry
の値が得られた。これより、汚泥中にはCaF2が78%含まれていると見積もられた。
この実験結果から、従来の消石灰スラリーを用いたフッ素含有水の処理方法は、本炭酸カルシウム充填塔法に比べて、処理水のフッ素濃度が高く、かつ汚泥の含水率が高くなるため、その排出量が多くなってしまうことが判明した。
2 反応処理槽
4 充填層
6 原水供給管
8 移送管
8a 第一開口部
8b 第二開口部
8c 衝突壁
10 エアー供給手段(流体供給手段)
10a エアー供給装置
10b パイプ
12 傘部材
14 分離槽
14a 開口部
14b 通過口
16 気液分離壁
18 排水路
20 集水樋部
22 粒状物(炭酸カルシウム粒子)
24 レベルセンサ
26 粒状物供給口
Claims (4)
- 炭酸カルシウムを主成分とする粒状物から成る充填層が形成された反応処理槽内にフッ素含有水を通水し、フッ素含有水中のフッ素成分と粒状物の炭酸カルシウムとの反応により非水溶性のフッ化カルシウムから成る皮膜を粒状物の表面に形成させて、フッ素含有水からフッ素成分を除去するフッ素含有水の処理装置において、
前記反応処理槽内上部にフッ素含有水を供給してフッ素含有水を前記充填槽中を下方に向けて通過させる原水供給管と、
前記反応処理槽内の下部から上方に延びる筒体であって、前記充填層の下部に位置する部位の側面に開口された第一開口部と、充填層の上面よりも上方に位置する部位に開口された第二開口部とが形成された移送管と、
該移送管内に上方向へ向かう流体の流れを発生させて、前記第一開口部から移送管内に吸い込まれた前記充填層の下部の粒状物およびフッ素成分が除去された処理水を、移送管内の上部方向へ移送し、該粒状物の表面に形成されたフッ化カルシウムの皮膜を、該粒状物同士および移送管の内壁への衝突によって砕いて取り除き、該粒状物、該粒状物の表面から取り除かれたフッ化カルシウム片、および該処理水を前記第二開口部から排出するように、移送管内に流体を供給する流体供給手段と、
内部に前記移送管の前記第二開口部が位置する筒体であって、底面が前記充填層の上面に接するよう配設され、該底面に、第二開口部から排出され、前記フッ化カルシウム片と分離されて溜まった粒状物を充填層に戻すための通過口が形成された分離槽と、
該分離槽内に溜まった粒状物の量を検出するレベルセンサと、
前記分離槽内に粒状物を供給する粒状物供給装置と、
前記レベルセンサにより検出される粒状物の量が所定量より少なくなった際に、前記粒状物供給装置を駆動して分離層内に粒状物を供給する制御部と、
前記第二開口部から排出され、前記粒状物と分離された前記フッ化カルシウム片および前記処理水を、前記分離槽から排出する排水路とを有することを特徴とするフッ素含有水の処理装置。 - 前記移送管の上端を閉塞して設けられ、移送管内を移送される前記粒状物が衝突することによって、該粒状物の表面に形成された前記フッ化カルシウムの皮膜を砕いて取り除くための衝突壁を備え、
前記第二開口部は、前記移送管の側面に形成されていることを特徴とする請求項1記載のフッ素含有水の処理装置。 - 前記流体供給手段は、前記第一開口部よりも上方位置から、前記移送管内に前記流体を上方向に向けて供給することで、移送管の下部の内部に負圧を発生させて、第一開口部から移送管内に前記粒状物および前記処理水を吸い込ませることを特徴とする請求項1または2記載のフッ素含有水の処理装置。
- 請求項1〜3のうちのいずれか一項記載のフッ素含有水の処理装置を用い、フッ素含有水中のフッ素成分を除去することを特徴とするフッ素含有水の処理方法。
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