JP4626100B2 - インクジェット記録方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はインクジェット記録方法に関し、詳しくは副走査方向のスジムラを視認できなくすることができるインクジェット記録方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェットヘッドは、一般にプリント速度の向上等を目的として、一種類のインクに対して複数の吐出口をもつ、いわゆるマルチノズルタイプのものが用いられているが、個々の吐出口形成や、その相対位置に多少のバラツキを生じることがある。かかるヘッドでは、吐出方向の偏向や吐出量の違いなどから、インクの着弾位置が本来の場所からわずかにずれる、ドット径にバラツキが生じる、などの現象が発生する。また、記録においては用紙送り機構の偏芯など工作精度上の理由から、用紙搬送量にも誤差が生じる。
【0003】
これらの理由から、インクジェットヘッドを用いて、記録走査を行うと共に相対的に順次用紙搬送を行うインクジェット記録装置では、ヘッド、用紙搬送それぞれに起因するバラツキにより、ドットの埋まり方にバラツキが生ずる。
【0004】
例えば、ノズル間隔を282μm(90dpi)、記録密度を720dpiとしたとき、ノズル間を8走査(=720/90)で埋めることができる。ここでマイクロウィーブ印字法を使用した場合、ノズルの着弾に誤差がなくとも、8走査の内、搬送誤差が顕著な走査の前後で、インクドットの間の隙間、すなわち記録紙面が露出している部分が目立つことになり、プリント画像においてスジ状の模様(以下、バンディングとも言う)が観察されることになる。図3には、1スキャンで主走査方向の全ての画素を埋める方法が示されているが、i+1走査とi+2走査の間に、バンディングが現れている。
【0005】
かかるバンディングを解消すべく、特開平9−272198号公報には、用いるインクによらず形成されるインクドットの径を一定にし、x×xの面積の画素に対し、√2x+α(α=0.1x程度)のドットを形成することで、隙間を原因とするスジムラを抑制するインクジェットプリント装置が提案されている。しかし、かかるインクジェットプリント装置においては、スジムラを抑制するための条件に関しては明確な規定はない。
【0006】
一方、バンディングを解消する手法として、インターリーブ(分割記録)方式が知られている。
【0007】
インターリーブの実現方法は多数考えられる。記録密度に比し、ノズル密度の低い図3の例も副走査に関する一つのインターリーブ方法であるが、以下では主走査に関するインターリーブについて説明する。これは、原理的には図4の模式図のように、一つの主走査ラインを複数の記録走査でラインを完成する。同図においては1画素おきの2走査で1ラインを記録している。また、主走査方向は矢符方向(図面上左右方向)である。インターリーブはその分割記録の回数nに応じてn倍インターリーブと呼ぶことがある。
【0008】
先述のように、インターリーブを行う際、記録密度に対し、ノズル密度が相対的に低い場合には、一般的に等間隔の送りで副走査方向に分割記録されるが、1回の主走査で1ヘッド、あるいは1色あたり主走査方向にどのように分割記録(インターリーブ)するかは、種々のバリエーションがある。図5にはそのインターリーブのバリエーションが例示されている。図5の(A)は4倍インターリーブの例で、1つの主走査ラインを4回の走査で記録する方式であり、同図の(B)は2倍インターリーブ1on/1offの例で、主走査方向に1回ずつ交互に記録と非記録を繰り返す記録方式であり、同図の(C)は2倍インターリーブ2on/2offの例で、2回連続して記録した後に、2回非記録とすることを繰り返す記録方式である。非記録部分は、後の走査で相補的に別のノズルにて記録される。
【0009】
インターリーブを採用することにより、異なるノズルにて隣接画素の記録が行われることで、前記バラツキが拡散される。さらに、インクの主走査、副走査方向への連結も回避することができ、結果としてスジ状の模様、即ちバンディングが緩和され、視認できなくなる。
【0010】
以上はバンディングの生ずるメカニズムとインターリーブの効果について述べたものであるが、これらの影響、効果はドット径と記録密度との関係において議論されるものである。例えば、ドット径を大きくするか、記録密度を高くすれば、ドットの着弾位置の目標位置からのズレに対し、隙間が空きにくくなり、結果としてバンディングが回避されやすい。但し、インクの滲み、あふれ等、別の画質上の問題を引き起こすことがある。この問題は、カラー画像記録、濃淡インクを使用することで、より厳しくなり、一般に染料インクに比べ同じドット径を実現するのにより多くのインク量を要する顔料インクを使用することによりさらに厳しくなる。また、記録密度を上げることは、データ処理量を増加させ、記録速度低下や、コストアップの要因となる。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
かかる事情を鑑み、本発明者は、ヘッドの着弾バラツキと用紙搬送精度に対し、インターリーブの仕方、ドット径、記録密度を適切に設定すれば、副走査方向のスジムラを視認できなくすることができることを見出し、本発明に至った。
【0012】
本発明の課題は、副走査方向のスジムラを視認できなくすることが可能なインクジェット記録方法を提供することにある。
【0013】
また、本発明の他の課題は、本明細書の以下の記載によって明らかとなる。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するための請求項1に記載の発明は、インクを吐出する複数のインク吐出口を配列した少なくとも1つのヘッドからなる記録ヘッドを用い、該記録ヘッドを走査して相対的に搬送される記録媒体に前記インク吐出口からインクを噴射して画像記録するインクジェット記録方法において、各色ドット径Dcが下記式(1)を満たすことを特徴とするインクジェット記録方法である。
【式2】
Figure 0004626100
〔上記式中、各色ドット径Dcは同一色内の複数のインク吐出口から射出されるドットの直径を測定し、その平均値を算出した値である(添え字cは複数色のある1色を示す。以下、同じ。)。hは主走査方向の画素ピッチである。vは副走査方向の画素ピッチである。ycは副走査方向のドット着弾誤差であり、AとBの2乗和の平方根で表される(ただし、Aは副走査方向のノズル出射角度誤差であり、Bは用紙搬送誤差である。)。iはインターリーブ数を表す(但し、i≧1の整数である)。〕
【0015】
上記課題を解決するための請求項2に記載の発明は、記録ヘッドが▲1▼単色同濃度インクを吐出する複数のインク吐出口を有する単一の記録ヘッド、▲2▼Y、M、C、Kインクを吐出する複数のインク吐出口を配列してなる複数のヘッド、の何れかから選ばれることを特徴とする請求項1記載のインクジェット記録方法である。
【0016】
上記課題を解決するための請求項3に記載の発明は、濃度の異なるインクを用いて記録を行うインクジェット記録方法において、少なくとも濃色のドットに関しては、式(1)を満たすことを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録方法である。
【0017】
上記課題を解決するための請求項4に記載の発明は、記録ヘッドが、(i)単色濃色インクを吐出する複数のインク吐出口を配列してなるヘッドと単色淡色インクを吐出する複数のインク吐出口を有するヘッドからなる記録ヘッド、又は(ii)Y,M,C,K濃色インクを吐出する複数のインク吐出口を配列してなる複数のヘッドとY,M,C,Kの少なくとも2色を含む淡色インクを吐出する複数のインク吐出口を有する複数のヘッドからなる記録ヘッド、の何れかから選ばれることを特徴とする請求項1又は3記載のインクジェット記録方法である。
【0018】
上記課題を解決するための請求項5に記載の発明は、最大ドット径Dを各色ドット径Dcのうちの最大値とした場合、
D<h×iを満たす時は、各記録走査で走査方向にはドットが連結しないようにインターリーブ記録を行うことを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載のインクジェット記録方法である。
【0019】
上記課題を解決するための請求項6に記載の発明は、最大ドット径Dを各色ドット径Dcのうちの最大値とした場合、D<h×iを満たさない時は、最大ドット径D<h×nを満たす回数nで、各記録走査で走査方向に同一記録ヘッドで最大nドットを連続記録するようにインターリーブ記録を行うことを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載のインクジェット記録方法である。
【0020】
上記課題を解決するための請求項7に記載の発明は、インクとして顔料インクを使用し、記録媒体として熱可塑性樹脂粒子を含有する層を有する記録媒体を用い、記録を行うことを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載のインクジェット記録方法である。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0022】
まず、本発明のインクジェット記録方法に用いることができるインクジェット記録装置の概略構成について説明する。
【0023】
図1はインクジェット記録装置の一例を示す概略構成図であり、1はロール状の記録媒体であり、2aは該記録媒体1を矢符X方向に搬送するための記録媒体搬送ローラで、該搬送ローラ2aは駆動機構3によって駆動可能に構成されている。駆動機構3は、図示のように、搬送モータ30と、該搬送モータ30と駆動軸31を介して連結された駆動プーリ32と、該駆動プーリ32の駆動力をベルト33を介して伝送される従動プーリ34とを有しており、従動プーリ34と搬送ローラ2aは回転軸4によって連結されている。2bは記録媒体1を搬送ローラ2aに押圧する従動ローラである。
【0024】
5は記録媒体1に記録を行う記録ヘッドである。本発明に用いられる好ましい記録ヘッドは、▲1▼単色同濃度インクを吐出する複数のインク吐出口を有する単一の記録ヘッド、▲2▼Y、M、C、Kインクを吐出する複数のインク吐出口を配列してなる複数のヘッドの何れかから選ぶことができる。より好ましい記録ヘッドは、(i)単色濃色インクを吐出する複数のインク吐出口を配列してなるヘッドと単色淡色インクを吐出する複数のインク吐出口を有するヘッドからなる記録ヘッド、又は(ii)Y,M,C,K濃色インクを吐出する複数のインク吐出口を配列してなる複数のヘッドとY,M,C,Kの少なくとも2色を含む淡色インクを吐出する複数のインク吐出口を有する複数のヘッドからなる記録ヘッドの何れかから選ぶことができる。
【0025】
図2には、上記(ii)の態様が示されており、同図に示す記録ヘッド5は、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)の各インク毎に各々濃淡を有する計8個のヘッドによって構成された例である。即ち、図面左側から、LYは淡イエロー、LMは淡マゼンタ、LCは淡シアン、LKブは淡ラック、DYは濃イエロー、DMは濃マゼンタ、DCは濃シアン、DKは濃ブラックの各色のインクを吐出可能なヘッドである。記録ヘッド5において、インク吐出ノズル(吐出口)の配列方向は図示のように上下方向であり、インクの吐出方向は矢符で示すように図面上奥側であり、また記録ヘッドの主走査方向は矢符で示すように図面上左右方向(記録媒体の搬送方向と略直交する方向)である。上記(ii)の態様で濃色カラーヘッドのインク吐出口が、更に濃色のグレードによって細分化されていてもよく、同様に淡色カラーヘッドのインク吐出口が、更に淡色のグレードによって細分化されていてもよい。
【0026】
即ち、上記の態様では、記録ヘッドを構成する各ヘッドから吐出されるインクは、基本的には、同色であり、濃度も実質的に同一である例が示されているが、これに限定されず、各ヘッドのインクを同色で濃度変化を設ける態様、各ヘッドのインクを異色で同一濃度にする態様などを排除するものでない。この場合、各ヘッドを更に細分化して複数の小ヘッドとし、その小ヘッドの集合体をヘッドとし、そのヘッドの集合体を記録ヘッドにすることができる。
【0027】
なお、上記▲1▼の単色のインクを単一濃度で吐出する複数のインク吐出口を有する記録ヘッドの場合は、一つのヘッドだけで記録ヘッド5を構成することができる。
【0028】
上記(i)の単色濃色インクを吐出する複数のインク吐出口を配列してなるヘッドと単色淡色インクを吐出する複数のインク吐出口を有するヘッドからなる記録ヘッドの場合は、2つのヘッドだけで記録ヘッド5を構成することができる。例えばLYとDYの2つ、LMとDMの2つ、LCとDCの2つ、LKとDKの2つである。
【0029】
記録ヘッドの各色ヘッドは、例えばインク吐出口(ノズル孔ともいう)の配列方向に、例えば282μm(90dpi)間隔で128個のノズル孔が配列されている。このヘッドに駆動波形を与えることで、各ノズルはピエゾ素子の変形にて独立に駆動が可能なように構成されることが好ましい
上記の記録ヘッド5は、キャリッジ6に搭載され、該キャリッジ6は駆動モータ7の駆動力によって主走査方向に走査可能なように構成されている。具体的には、キャリッジ6の底面は走査ベルト8に固定され、走査ベルト8は駆動プーリ9と従動プーリ10に掛架されており、駆動プーリ9は駆動モータ7の駆動軸11に連結されている。従って、駆動モータ7が駆動すると、走査ベルト8が動き、キャリッジ6は主走査方向に移動することができる。
【0030】
なお、キャリッジの移動量を検出するために、図示しないリニアエンコーダが主走査方向に設けられ、キャリッジの移動に応じてキャリッジ上に設けられたセンサでリニアエンコーダ信号を読み取る構成を有することが好ましい。
【0031】
12はキャリッジ6の主走査方向の移動を規制する走査ガイドであり、通常は2本の規制棒が用いられる。
【0032】
以上の構成を有する装置を用いて記録を行うには、ロール状に巻回された長尺状の用紙からなる記録媒体1を記録媒体搬送ローラ2aによって下流側(図示下方向)に搬送する。記録媒体1は、順次相対的に搬送される。ここで「相対的」とは媒体を搬送しても良いし、ヘッドを副走査方向に移動しても良いことを意味する。
【0033】
記録ヘッド5は走査ガイド12に規制されつつ主走査方向に走査する。このとき、記録ヘッド5はインクを射出しながら移動するので記録媒体1に主走査方向の記録を行うことができ、更に副走査方向に画素ピッチに応じて所定量送られて所定の画像を得る。
【0034】
次に、本発明のインクジェット記録方法について詳説する。
【0035】
本発明のインクジェット記録方法は、各色ドット径Dcが上記式(1)を満たすことを特徴とするものであり、即ち、各色ドット径Dc、主走査方向の画素ピッチh、副走査方向の画素ピッチv、副走査方向のドット着弾誤差ycを調整することにより、副走査方向のスジムラ(バンディング)を視認できなくする効果を発揮する。
【0036】
以下に、式(1)について説明する。
【0037】
各色ドット径Dc
本発明において、各色ドット径Dcとは、同一色内の複数のインク吐出口から射出されるドットの直径を測定し、その平均値を算出した値である。ドットの形状が真円の場合は、その直径を通常の方法で測定し、真円以外の場合は円形換算した径を表す。
【0038】
同一色内の複数のインク吐出口から射出されるドットという場合、記録ヘッドのタイプによって以下の意味を有する。上記の記録ヘッドの説明で採用される▲1▼の単色のインクを単一濃度で吐出する複数のインク吐出口を有する記録ヘッドの場合には、記録ヘッド自体は1つであり、その1つの記録ヘッドの中に存在する複数の吐出口から噴射される複数のインクドットを指称する。また上記(i)の単色のインクを濃色又は淡色濃度で吐出する複数のインク吐出口を有する記録ヘッドの場合には、記録ヘッドは例えばLKとDKの2つであり、LKとDKのように濃度を異にする場合には、同一色ではないので、LKヘッドの中の複数のドットの平均値と、DKヘッドの中の複数のドットの平均値を、各々ドット径Dcとする。なお、ドット径Dcにおける添え字cは複数色のある1色を示すものである。
【0039】
主走査方向の画素ピッチh及び副走査方向の画素ピッチv
画素ピッチとは、隣接する画素位置間の距離である。
【0040】
副走査方向のドット着弾誤差yc
ycはAとBの2乗和の平方根で表される。ここで、Aは副走査方向のノズル出射角度誤差であり、Bは用紙搬送誤差である。
【0041】
(副走査方向のノズル出射角度誤差Aの算出)
ノズル出射角度誤差は、均等な間隔で記録されるべきドットのバラツキ度合いを示している。ノズル出射角度誤差Aは以下のようにして定義できる。
【0042】
最初に全ノズルを一度に出射して記録したドット、もしくはヘッドを固定した状態で(分割して)記録したドットの各重心位置を求め、この位置を各ノズルの位置とする。次に先端ノズルと後端ノズルで記録されたドットを線で結び、この距離を測定し、(ノズル数―1)で均等に分割した位置を目標記録位置とし、個々のインク吐出口から記録されるドットの目標とする副走査方向の目標記録位置からのズレを求める。副走査方向の目標記録位置からのズレは、各ノズルの重心位置が上記のようにして求めた目標記録位置から、先端ノズルと後端ノズルを結んだ直線方向にどの程度ズレているかを算出する。
【0043】
ここで、両端のノズルに関しての副走査方向の記録位置からのズレを算出できないが、その誤差の影響は1/(ノズル数)に分散されるため、実用上多ノズルヘッド(例えば128ノズル)においては問題がない。
【0044】
また、ノズルの加工精度が良く、出射で曲がりが大きい場合は、別の方法で測定することもできる。例えば、ノズルから出射しているインクをノズル配列方向と直交する方向からカメラで撮影し、飛翔の軌跡を測定し、該飛翔の曲がりの軌跡より、紙面上での着弾位置を算出することが出来る。
【0045】
このようにして測定することによって算出した副走査方向の記録位置からのズレの標準偏差がσNである時、副走査方向のノズル出射角度誤差を4σNと定義する。
【0046】
(用紙搬送誤差Bの算出)
所定のノズルを駆動してラインを記録する。その後、用紙を副走査方向に所定の搬送量送る。再度、同じノズルでラインを記録する。以上を繰り返して、一定間隔のラインを複数本記録する。次いで記録したラインの間隔を顕微鏡等で測定する。測定したラインの間隔から搬送量のバラツキを算出する。
【0047】
搬送量のバラツキは、搬送距離により異なると考えられるため、計測するライン間隔(用紙の送り量に相当する)は、画像を記録する際の用紙搬送量とする。用紙搬送量が複数通りある場合は、大きい方の搬送量、若しくはその付近の値とする(例えば4〜5mm)。測定するラインの本数は、紙送り系での偏芯等の影響により比較的低周波の送りムラが発生することもあるため、その周期の2倍程度の長さを取っている(例えば、実施例として確認したところによると、搬送プーリ(駆動プーリ)の偏芯周期が40mmである紙送り系を用いるときは、かかる搬送プーリの偏芯周期である40mmの2倍以上の長さをとることとして、80mmの長さを記録している)。
【0048】
このようにして算出した搬送量のバラツキの標準偏差がσSである時、用紙搬送誤差を4σSと定義する。
【0049】
(ドット着弾誤差ycの算出)
以上のようにして算出したノズル出射角度誤差と用紙搬送誤差の2乗和の平方根をとることによりドット着弾誤差が算出できる。
【0050】
(インターリーブ数iの説明)
インターリーブ数iは1以上の整数であればよく、例えば1、2、3、4等のいずれでもよい。インターリーブ数iが1のときのドット着弾誤差をycとすると、インターリーブ数がiのときのドット着弾誤差は、1/√iに低減されると考えられるため、(1/√i)ycとなるので、インターリーブ記録をする際は式(1)を満たすように記録すれば副走査方向にムラがあっても、図8のように白ヌケが発生しない。即ち、濃色のドット径Dcが、副走査方向のムラを意味する(1/√i)ycと副走査方向の画素ピッチvの和と、主走査方向の画素ピッチhとにより形成される四角形の長い方の対角線の長さ以上であれば、白ヌケが発生しない。
【0051】
すなわち、得られたドット着弾誤差を用いて、主走査方向又は副走査方向の画素ピッチを設定するか、各色ドット径を設定して、式(1)を満たすようにすれば、副走査方向のスジムラを視認できなくすることが可能になる。また、濃度の異なるインクにより記録をした場合は、少なくとも濃色については式(1)を満たすように設定する。
【0052】
本発明において、インターリーブによる記録を行う場合、最大ドット径Dを各色ドット径Dcでの最大値とした場合、D<h×iを満たす時は、各記録走査で走査方向には同一記録ヘッドで記録されるドットが連結しないようにインターリーブ記録を行うことは好ましい態様である。このことにより、同一ヘッドで記録されるドットの吸収時間に余裕を持たせられるので、インクの合一を回避でき、画像の粒状性悪化の防止ができる。
【0053】
また本発明において、最大ドット径Dを各色ドット径Dcでの最大値とした場合、D<h×iを満たさない時は、D<h×nを満たす回数nで、各記録走査で走査方向に同一記録ヘッドで最大nドットを連続記録するようインターリーブ記録を行うことも好ましい態様である。D<h×iを満たさない場合、つまり、インターリーブ数が少ない場合は、このことにより、ドットを意図的に連結させる部分と、離す部分を作り、連結するドット同士は近づけることで、画像の粒状性悪化を抑制することができる。
【0054】
さらに、本発明においては、インクとして顔料インクを使用し、記録媒体として熱可塑性樹脂粒子を含有する層を有する記録媒体を用い、記録を行うことが好ましい態様である。使用するインクを顔料インクとすることにより適切なドット径を選択でき、使用する記録媒体が熱可塑性樹脂微粒子を含有していると、顔料インクに対して平滑性が向上し、ひいては光沢を上げることができる。
【0055】
次に、本発明に用いることができる記録媒体について説明する。
【0056】
本発明に用いる記録媒体は、支持体上にインク吸収層を有する、インクジェット専用のものが好ましい。記録媒体として特に好ましいのは光沢系の専用紙である。
【0057】
光沢系専用紙として好ましく用いることができるのは、膨潤型と空隙型であり、例えば、エレクトロニクス・材料シリーズ「インクジェットプリンタ技術と材料」(シーエムシー発行)に記載されている技術を利用した記録媒体から選択することができる。
【0058】
記録媒体の支持体としては、従来からインクジェット記録媒体に用いられている支持体、例えば、普通紙、アート紙、コート紙およびキャストコート紙などの紙支持体、プラスティック支持体、両面をポリオレフィンで被覆した紙支持体、これらを張り合わせた複合支持体を用いることができる。
【0059】
支持体とインク吸収層の接着強度を大きくする等の目的で、インク吸収層の塗布に先立って、支持体にコロナ放電処理や下引処理等を行うことが好ましい。
【0060】
さらに、本発明の記録用紙(支持体)は必ずしも無色である必要はなく、着色された記録用紙であってもよい。
【0061】
原紙支持体の両面をポリエチレンでラミネートした紙支持体を用いることが、記録画像が写真画質に近く、しかも低コストで高品質の画像が得られるために特に好ましい。そのようなポリエチレンでラミネートした紙支持体について以下に説明する。
【0062】
紙支持体に用いられる原紙は木材パルプを主原料とし、必要に応じて木材パルプに加えてポリプロピレンなどの合成パルプあるいはナイロンやポリエステルなどの合成繊維を用いて抄紙される。木材パルプとしてはLBKP、LBSP、NBKP、NBSP、LDP、NDP、LUKP、NUKPのいずれも用いることが出来るが短繊維分の多いLBKP、NBSP、LBSP、NDP、LDPをより多く用いることが好ましい。但し、LBSPおよびまたはLDPの比率は10質量%以上、70質量%以下が好ましい。
【0063】
上記パルプには不純物の少ない化学パルプ(硫酸塩パルプや亜硫酸塩パルプ)が好ましく用いられ、又、漂白処理を行って白色度を向上させたパルプも有用である。
【0064】
原紙中には、高級脂肪酸、アルキルケテンダイマー等のサイズ剤、炭酸カルシウム、タルク、酸化チタンなどの白色顔料、スターチ、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール等の紙力増強剤、蛍光増白剤、ポリエチレングリコール類等の水分保持剤、分散剤、四級アンモニウム等の柔軟化剤などを適宜添加することが出来る。
【0065】
抄紙に使用するパルプの濾水度は、CSFの規定で200〜500mlが好ましく、また、叩解後の繊維長がJIS−P−8207に規定される24メッシュ残分の質量%と42メッシュ残分の質量%との和が30乃至70%が好ましい。なお、4メッシュ残分の質量%は20質量%以下であることが好ましい。
【0066】
原紙の坪量は、30乃至250gが好ましく、特に50乃至200gが好ましい。原紙の厚さは40乃至250μmが好ましい。
【0067】
原紙は抄紙段階または抄紙後にカレンダー処理して高平滑性を与えることも出来る。原紙密度は0.7乃至1.2g/m2(JIS−P−8118)が一般的である。更に原紙剛度はJIS−P−8143に規定される条件で20乃至200gが好ましい。
【0068】
原紙表面には表面サイズ剤を塗布しても良く、表面サイズ剤としては前記原紙中に添加できるサイズ剤と同様のサイズ剤を使用できる。
【0069】
原紙のpHは、JIS−P−8113で規定された熱水抽出法により測定された場合、5〜9であることが好ましい。
【0070】
原紙表面および裏面を被覆するポリエチレンは、主として低密度のポリエチレン(LDPE)および/または高密度のポリエチレン(HDPE)であるが他のLLDPEやポリプロピレン等も一部使用することが出来る。
【0071】
特に、インク吸収層側のポリエチレン層は写真用印画紙で広く行われているようにルチルまたはアナターゼ型の酸化チタンをポリエチレン中に添加し、不透明度および白色度を改良したものが好ましい。酸化チタン含有量は、ポリエチレンに対して通常3〜20質量%、好ましくは4〜13質量%である。
【0072】
ポリエチレン被覆紙は光沢紙として用いることも、また、ポリエチレンを原紙表面上に溶融押し出してコーティングする際にいわゆる型付け処理を行って通常の写真印画紙で得られるようなマット面や絹目面を形成したものも本発明で使用できる。
【0073】
原紙の表裏に用いられるポリエチレンの使用量は、空隙層やバック層を設けた後で低湿および高湿下でのカールを最適化するように選択されるが、通常空隙層側のポリエチレン層が20〜40μm、バック層側が10〜30μmの範囲であ
る。
【0074】
更に上記ポリエチレンで被覆紙支持体は以下の特性を有していることが好ましい。
【0075】
1.引っ張り強さ:JIS−P−8113で規定される強度で縦方向が2〜30kg、横方向が1乃至20kgであることが好ましい
2.引き裂き強度はJIS−P−8116による規定方法で縦方向が10〜200g、横方向が20乃至200gが好ましい
3.圧縮弾性率≧98.1MPa
4.表面ベック平滑度:JIS−P−8119に規定される条件で20秒以上が光沢面としては好ましいが、いわゆる型付け品ではこれ以下であっても良い
5.表面粗さ:JIS−B−0601に規定された表面粗さが、基準長さ2.5mm当たり最大高さは10μm以下であることが好ましい
6.不透明度:JIS−P−8138に規定された方法で測定したときに80%以上、特に85〜98%が好ましい
7.白さ:JIS−Z−8729で規定されるL*、a*、b*がL*=80〜95、a*=−3〜+5、b*=−6〜+2であることが好ましい
8.表面光沢度:JIS−Z−8741に規定される60度鏡面光沢度が10〜95%であることが好ましい
9.クラーク剛直度:記録用紙の搬送方向のクラーク剛直度が50〜300 cm3/100である支持体が好ましい
10.中紙の含水率:中紙に対して通常2〜100質量%、好ましくは2〜6質量%
【0076】
次に記録媒体のインク吸収層について説明する。インク吸収層としては、大きく別けて、膨潤型と空隙型がある。
【0077】
膨潤型としては、親水性バインダーとして、ゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド等を単独もしくは併用して塗布し、これをインク吸収層としたものである。
【0078】
空隙型としては、微粒子及び、親水性バインダーを混合して塗布したもので、特に光沢性のあるものが好ましい。微粒子としては、アルミナもしくはシリカが好ましく、特に粒径0.1μm以下のシリカを用いたものが好ましい。親水性バインダーとしては、ゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド等を単独もしくは併用したものが好ましい。
【0079】
連続、高速プリントに適応するには、記録媒体のインク吸収速度が速い方が適しており、この点から、空隙型を特に好ましく用いることができる。
【0080】
以下に、空隙型インク吸収層について詳しく説明する。
【0081】
空隙層は、主に親水性バインダーと無機微粒子の軟凝集により形成されるものである。
【0082】
従来より、皮膜中に空隙を形成する方法は種々知られており、例えば、二種以上のポリマーを含有する均一な塗布液を支持体上に塗布し、乾燥過程でこれらのポリマーを互いに相分離させて空隙を形成する方法、固体微粒子および親水性または疎水性バインダーを含有する塗布液を支持体上に塗布し、乾燥後に、インクジェット記録用紙を水或いは適当な有機溶媒を含有する液に浸漬して固体微粒子を溶解させて空隙を作製する方法、皮膜形成時に発泡する性質を有する化合物を含有する塗布液を塗布後、乾燥過程でこの化合物を発泡させて皮膜中に空隙を形成する方法、多孔質固体微粒子と親水性バインダーを含有する塗布液を支持体上に塗布し、多孔質微粒子中や微粒子間に空隙を形成する方法、親水性バインダーに対して概ね等量以上(好ましくは1.0倍以上)の容積を有する固体微粒子及びまたは微粒子油滴と親水性バインダーを含有する塗布液を支持体上に塗布して固体微粒子の間に空隙を作製する方法等が知られている。本発明においては、空隙層に、平均粒径が100nm以下の各種無機(固体)微粒子を含有させることによって形成されることが特に好ましい。
【0083】
上記の目的で使用される無機微粒子としては、例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、クレー、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、ハイドロタルサイト、珪酸アルミニウム、ケイソウ土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、コロイダルアルミナ、擬ベーマイト、水酸化アルミニウム、リトポン、ゼオライト、水酸化マグネシウム等の白色無機顔料等を挙げることができる。
【0084】
無機微粒子の平均粒径は、粒子そのものあるいは空隙層の断面や表面に現れた粒子を電子顕微鏡で観察し、1,000個の任意の粒子の粒径を求めてその単純平均値(個数平均)として求められる。ここで個々の粒子の粒径は、その投影面積に等しい円を仮定したときの直径で表したものである。
【0085】
無機微粒子としてはシリカ及びアルミナまたはアルミナ水和物から選ばれた固体微粒子を用いることが好ましく、シリカがより好ましい。
【0086】
シリカとしては、通常の湿式法で合成されたシリカ、コロイダルシリカ或いは気相法で合成されたシリカ等が好ましく用いられるが、本発明において特に好ましく用いられる微粒子シリカとしては、コロイダルシリカまたは気相法で合成された微粒子シリカが好ましく、中でも気相法により合成された微粒子シリカは高い空隙率が得られるだけでなく、染料を固定化する目的で用いられるカチオン性ポリマーに添加したときに粗大凝集体が形成されにくいので好ましい。また、アルミナまたはアルミナ水和物は、結晶性であっても非晶質であってもよく、また不定形粒子、球状粒子、針状粒子など任意の形状のものを使用することができる。
【0087】
微粒子は、カチオン性ポリマーと混合する前の微粒子分散液が一次粒子まで分散された状態であるのが好ましい。
【0088】
無機微粒子は、その粒径が100nm以下であることが好ましい。例えば、上記気相法微粒子シリカの場合、一次粒子の状態で分散された無機微粒子の一次粒子の平均粒径(塗設前の分散液状態での粒径)は、100nm以下のものが好ましく、より好ましくは4〜50nm、最も好ましくは4〜20nmである。
【0089】
最も好ましく用いられる、一次粒子の平均粒径が4〜20nmである気相法により合成されたシリカとしては、例えば、日本アエロジル社のアエロジルが市販されている。この気相法微粒子シリカは、水中に例えば、三田村理研工業株式会社製のジェットストリームインダクターミキサーなどにより容易に吸引分散することで比較的容易に一次粒子まで分散することが出来る。
【0090】
親水性バインダーとしては、例えばポリビニルアルコール、ゼラチン、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリウレタン、デキストラン、デキストリン、カラーギーナン(κ、ι、λ等)、寒天、プルラン、水溶性ポリビニルブチラール、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等の水溶性樹脂が挙げられる。
【0091】
これらの水溶性樹脂は二種以上併用することも可能である。
【0092】
本発明で好ましく用いられる水溶性樹脂はポリビニルアルコールである。
【0093】
本発明で好ましく用いられるポリビニルアルコールには、ポリ酢酸ビニルを加水分解して得られる通常のポリビニルアルコールの他に、末端をカチオン変性したポリビニルアルコールやアニオン性基を有するアニオン変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコール、あるいは後述するノニオン変性ポリビニルアルコールも含まれる。
【0094】
酢酸ビニルを加水分解して得られるポリビニルアルコールは平均重合度が1,000以上のものが好ましく用いられ、特に平均重合度が1,500〜5,000のものが好ましく用いられる。
【0095】
ケン化度は70〜100%のものが好ましく、80〜99.5%のものが特に好ましい。
【0096】
カチオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば特開昭61−10483号公報に記載されているような、第一〜三級アミノ基や第四級アンモニウム基を上記ポリビニルアルコールの主鎖または側鎖中に有するポリビニルアルコールであり、カチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体と酢酸ビニルとの共重合体をケン化することにより得られる。
【0097】
カチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体としては、例えばトリメチル−(2−アクリルアミド−2,2−ジメチルエチル)アンモニウムクローライド、トリメチル−(3−アクリルアミド−3,3−ジメチルプロピル)アンモニウムクローライド、N−ビニルイミダゾール、N−ビニル−2−メチルイミダゾール、N−(3−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド、ヒドロキシルエチルトリメチルアンモニウムクローライド、トリメチル−(2−メタクリルアミドプロピル)アンモニウムクローライド、N−(1,1−ジメチル−3−ジメチルアミノプロピル)アクリルアミド等が挙げられる。
【0098】
カチオン変性ポリビニルアルコールのカチオン変性基含有単量体の比率は、酢酸ビニルに対して0.1〜10モル%、好ましくは0.2〜5モル%である。
【0099】
アニオン変性ポリビニルアルコールは例えば、特開平1−206088号公報に記載されているようなアニオン性基を有するポリビニルアルコール、特開昭61−237681号公報、および同63−3079799号公報に記載されているような、ビニルアルコールと水溶性基を有するビニル化合物との共重合体及び特開平7−285265号公報に記載されているような水溶性基を有する変性ポリビニルアルコールが挙げられる。
【0100】
また、ノニオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、特開平7−9758号公報に記載されているようなポリアルキレンオキサイド基をビニルアルコールの一部に付加したポリビニルアルコール誘導体、特開平8−25795号公報に記載された疎水性基を有するビニル化合物とビニルアルコールとのブロック共重合体等が挙げられる。
【0101】
ポリビニルアルコールは重合度や変性の種類の異なったものなどを二種類以上併用することもできる。
【0102】
インク吸収層に用いられる無機微粒子の添加量は、要求されるインク吸収容量、空隙層の空隙率、無機微粒子の種類、水溶性樹脂の種類に大きく依存するが、一般には記録用紙1m2当たり、通常5〜30g、好ましくは10〜25gである。
【0103】
また、インク吸収層に用いられる無機微粒子と水溶性樹脂の比率は質量比で通常2:1〜20:1であり、特に3:1〜10:1であることが好ましい。
【0104】
分子内に第四級アンモニウム塩基を有するカチオン性の水溶性ポリマーを含有しても良く、インクジェット記録用紙1m2当たり通常0.1〜10g、好ましくは0.2〜5gの範囲で用いられる。
【0105】
空隙層において、空隙の総量(空隙容量)は記録用紙1m2当り20ml以上であることが好ましい。空隙容量が20ml/m2未満の場合、印字時のインク量が少ない場合には、インク吸収性は良好であるものの、インク量が多くなるとインクが完全に吸収されず、画質を低下させたり、乾燥性の遅れを生じるなどの問題が生じやすい。
【0106】
インク保持能を有する空隙層において、固形分容量に対する空隙容量を空隙率という。本発明において、空隙率を50%以上にすることが、不必要に膜厚を厚くさせないで空隙を効率的に形成できるので好ましい。
【0107】
空隙型の他のタイプとして無機微粒子を用いてインク(溶媒)吸収層を形成させる以外に、ポリウレタン樹脂エマルジョン、これに水溶性エポキシ化合物及び/又はアセトアセチル化ポリビニルアルコールを併用し、更にエピクロルヒドリンポリアミド樹脂を併用させた塗工液を用いてインク(溶媒)吸収層を形成させてもよい。
【0108】
この場合のポリウレタン樹脂エマルジョンはポリカーボネート鎖、ポリカーボネート鎖及びポリエステル鎖を有する粒子径が3.0μmであるポリウレタン樹脂エマルジョンが好ましく、ポリウレタン樹脂エマルジョンのポリウレタン樹脂がポリカーボネートポリオール、ポリカーボネートポリオール及びポリエステルポリオール有するポリオールと脂肪族系イソシアネート化合物とを反応させて得られたポリウレタン樹脂が、分子内にスルホン酸基を有し、さらにエピクロルヒドリンポリアミド樹脂及び水溶性エポキシ化合物及び/又はアセトアセチル化ビニルアルコールを有することが更に好ましい。
【0109】
上記ポリウレタン樹脂を用いたインク溶媒吸収層はカチオンとアニオンの弱い凝集が形成され、これに伴い、インク溶媒吸収能を有する空隙が形成されて、画像形成できると推定される。
【0110】
インク吸収層の最外層に画質向上のための機能層を有することは好ましい。特に熱可塑性樹脂粒子を含有する層を設けることは、画質向上と画像保存性向上の観点から好ましい。これは、インク記録後、最外層の熱可塑性樹脂粒子を加熱及び加圧を同時に行うことによりインク吸収層を透明化し、画像保護層を形成することによると考えられる。例えば、染料インクの場合、耐光性、耐水性を向上することができる。また、顔料インクの場合、光沢向上や、質感向上を得ることができる。
【0111】
以下に、熱可塑性樹脂粒子を含有する層について説明する。
【0112】
本発明に用いられる熱可塑性樹脂粒子としては、例えば、ポリカーボネート、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、ポリアクリル酸、ポリメタアクリル酸、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリエステル、ポリアミド、ポリエーテル、これらの共重合体及びこれらの塩が挙げられる。熱可塑性樹脂粒子を選択するにあたりインク受容性、加熱及び加圧による定着後の画像の光沢性、画像堅牢性及び離型性を考慮すべきである。
【0113】
インク受容性については、熱可塑性樹脂粒子の粒径が0.05μm未満の場合は、顔料インク中の顔料粒子とインク溶媒の分離が遅くなり、インク吸収速度の低下を招くことになる。また10μmを越えると、支持体上に塗設する際にインク受容層に隣接する溶媒吸収層との接着性や、塗設乾燥後のインクジェット記録媒体の被膜強度の点から好ましくない。このために好ましい熱可塑性樹脂粒子径としては好ましくは0.05〜10μm、より好ましくは0.1〜5μmである。
【0114】
最外層を形成する熱可塑性樹脂粒子は、塗布乾燥前は水などの溶媒中に分散状態で存在している。分散粒径にバラツキのない、単一の熱可塑性樹脂粒子の場合は、塗布後の乾燥で粒子は最密六方充填されて、単一粒子層を形成し、その際の空隙率は約26%である。しかし通常熱可塑性樹脂粒子は多分散性であり、その空隙率は熱可塑性樹脂粒子同士の凝集状態で変化する。また、形成される空隙径は熱可塑性樹脂粒子の粒径に依存する。
【0115】
また、支持体上の塗設膜厚としては、0.1〜10μmが好ましく、より好ましくは0.5〜7μmである。
【0116】
また、熱可塑性樹脂粒子の選択の基準としてはガラス転移点(Tg)が挙げられる。
【0117】
Tgが塗布乾燥温度より低い場合は、例えば記録媒体製造時の塗布乾燥温度が既にTgより高く、インク溶媒が透過するための熱可塑性微粒子による空隙が消失してしまう。またTgが、支持体の熱による変性を起こす温度以上の場合は、顔料インクによるインクジェット記録後溶融成膜するために高温での定着操作が必要となり、装置上の負荷及び支持体の熱安定性等が問題となる。
【0118】
以上の点を考慮すると、熱可塑性樹脂粒子の好ましいTgは50〜150℃である。
【0119】
また、画像形成後、記録画像はその経時保存による画質劣化をできるだけ抑制する必要がある。顔料インクを用いた場合は、染料インクの様な比較的短期間での濃度低下、変色を気にする必要はないが、未印字部がUV光により黄変(分解)することを抑制する観点から熱可塑性樹脂粒子を選択する必要がある。
【0120】
記録媒体の製造方法としては、単層もしくは2層以上のインク吸収層および、単層もしくは2層以上の熱可塑性微粒子含有層を各々もしくは同時に公知の方法から適宜選択して支持体上に塗布、乾燥して製造することができる。製造コストの観点からは、全層を一回の塗布で済ます同時塗布が好ましい。
【0121】
塗布方式としては、ロールコーティング法、ロッドバーコーティング法、エアナイフコーティング法、スプレーコーティング法、カーテン塗布方法あるいは米国特許第2,681,294号公報記載のホッパーを使用するエクストルージョンコート法が好ましく用いられる。
【0122】
本発明は記録媒体が硬膜剤にて硬膜されていることを特徴としている。硬膜剤はインク吸収層中の水溶性樹脂間、もしくは水溶性樹脂とインク吸収層中の微粒子と反応し、架橋するものである。
【0123】
硬膜剤は、水溶性樹脂及び、微粒子の種類に応じて適宜選択して用いられる。
【0124】
硬膜剤の具体例としては、例えば、エポキシ系硬膜剤(ジグリシジルエチルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ジグリシジルシクロヘキサン、N,N−ジグリシジル−4−グリシジルオキシアニリン、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル等)、アルデヒド系硬膜剤(ホルムアルデヒド、グリオキザール等)、活性ハロゲン系硬膜剤(2,4−ジクロロ−4−ヒドロキシ−1,3,5−s−トリアジン等)、活性ビニル系化合物(1,3,5−トリスアクリロイル−ヘキサヒドロ−s−トリアジン、ビスビニルスルホニルメチルエーテル等)、ほう酸およびその塩、ほう砂、アルミ明礬等が挙げられる。
【0125】
特に好ましい水溶性樹脂としてポリビニルアルコールおよびまたはカチオン変性ポリビニルアルコールを使用する場合には、ほう酸およびその塩又はエポキシ系硬膜剤から選ばれる硬膜剤を使用するのが好ましい。
【0126】
最も好ましいのは、ほう酸およびその塩から選ばれる硬膜剤である。
【0127】
ほう酸またはその塩としては、ほう素原子を中心原子とする酸素酸およびその塩のことを示し、具体的にはオルトほう酸、二ほう酸、メタほう酸、四ほう酸、五ほう酸、八ほう酸およびそれらの塩が含まれる。
【0128】
上記硬膜剤の使用量は水溶性樹脂の種類、硬膜剤の種類、無機微粒子の種類や水溶性樹脂に対する比率等により変化するが、通常水溶性樹脂1g当たり5〜500mg、好ましくは10〜300mgである。
【0129】
上記硬膜剤は、本発明の水インク吸収層形成用水溶性塗布液を塗布する際に、該塗布液中に添加してもよく、あるいは予め硬膜剤を含有する塗布液を塗布してある支持体上に、本発明のインク吸収層形成用水溶性塗布液を塗布しても良い。
【0130】
また、本発明のインク吸収層形成用水溶性塗布液(硬膜剤非含有)を塗布・乾燥した後で硬膜剤溶液をオーバーコートするなどして供給することができるが、これらの中で、好ましくは製造効率の観点から、本発明のインク吸収層形成用水溶性塗布液中に硬膜剤を添加して塗布する方法が好ましい。
【0131】
本発明において、ロール状の記録媒体は、通常巻き芯に長尺状の記録媒体を巻いたものである。巻き芯の径は制限は特に無いが、直径(外径)50mm〜100mmが好ましい。記録媒体のロール幅の制限は特に無いが、100mm〜400mmの範囲で選択できる。記録媒体の全長に制限は無いが、20m〜200mが好ましい。
【0132】
また本発明において、インクは、水系インク組成物、油系インク組成物、固体(相変化)インク組成物等を用いることができるが、水系インク組成物(例えばインク総重量あたり10重量%以上の水を含有する水系インクジェット記録液等)を特に好ましく用いることができる。
【0133】
着色剤としては、水溶性染料、例えば、酸性染料、直接染料、反応性染料、あるいは、分散染料、顔料を用いることができる。
【0134】
着色剤としては、画像保存性の観点から、顔料を特に好ましく用いることができる。顔料としては、不溶性顔料、レーキ顔料等の有機顔料および、カーボンブラックを好ましく用いることができる。
【0135】
不溶性顔料としては、特に限定するものではないが、例えばアゾ、アゾメチン、メチン、ジフェニルメタン、トリフェニルメタン、キナクリドン、アントラキノン、ペリレン、インジゴ、キノフタロン、イソインドリノン、イソインドリン、アジン、オキサジン、チアジン、ジオキサジン、チアゾール、フタロシアニン、ジケトピロロピロール等が好ましい。
【0136】
好ましく用いることのできる具体的顔料としては、以下の顔料が挙げられる。
【0137】
マゼンタまたはレッド用の顔料としては、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド139、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド222等が挙げられる。
【0138】
オレンジまたはイエロー用の顔料としては、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー138等が挙げられる。
【0139】
グリーンまたはシアン用の顔料としては、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントグリーン7等が挙げられる。
【0140】
これらの顔料は必要に応じて顔料分散剤を使用してもよく、使用できる顔料分散剤としては、例えば高級脂肪酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルエステル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、スルホコハク酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、グリセリンエステル、ソルビタンエステル、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、アミンオキシド等の活性剤、あるいはスチレン、スチレン誘導体、ビニルナフタレン誘導体、アクリル酸、アクリル酸誘導体、マレイン酸、マレイン酸誘導体、イタコン酸、イタコン酸誘導体、フマル酸、フマル酸誘導体から選ばれた1種の単量体からなる重合体、あるいは2種以上の単量体からなる共重合体もしくはブロック共重合体、ランダム共重合体およびこれらの塩を挙げることができる。
【0141】
顔料の分散方法としては、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル、ペイントシェーカー等各種を用いることができる。
【0142】
本発明の顔料分散体の粗粒分を除去する目的で遠心分離装置を使用すること、フィルターを使用することも好ましく用いられる。
【0143】
好ましい形態である水系インク組成物は、水溶性有機溶媒を併用することが好ましい。
【0144】
水溶性有機溶媒の例としては、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、セカンダリーブタノール、ターシャリーブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール等)、多価アルコール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール等)、多価アルコールエーテル類(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル等)、アミン類(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モルホリン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ポリエチレンイミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、テトラメチルプロピレンジアミン等)、アミド類(例えば、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等)、複素環類(例えば、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、シクロヘキシルピロリドン、2−オキサゾリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等)、スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシド等)、スルホン類(例えば、スルホラン等)、尿素、アセトニトリル、アセトン等が挙げられる。好ましい水溶性有機溶媒としては、多価アルコール類が挙げられる。さらに、多価アルコールと多価アルコールエーテルを併用することが特に好ましい。
【0145】
水溶性有機溶媒は単独もしくは複数を併用しても良い。水溶性有機溶媒のインク中の添加量としては、総量で5〜60重量%であり、好ましくは10〜35重量%である。
【0146】
本発明に用いるインク(組成物)には必要に応じて吐出安定性、プリントヘッドやインクカートリッジ適合性、保存安定性、画像保存性、その他の諸性能向上の目的に応じて、粘度調整剤、表面張力調整剤、比抵抗調整剤、皮膜形成剤、分散剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、退色防止剤、防ばい剤、防錆剤等を添加することもできる。
【0147】
本発明に用いるインク(組成物)は、その飛翔時の粘度として40cps以下が好ましく、30cps以下であることがより好ましい。
【0148】
またインク(組成物)は、その飛翔時の表面張力として20mN/m以上が好ましく、40〜60mN/mであることが、より好ましい。
【0149】
本発明のインクジェット記録方法は上記の記録媒体に、好ましくは顔料インクを用いて記録を行うものであり、本発明のインクジェット記録方法で使用するインクジェットヘッドはオンデマンド方式でもコンティニュアス方式でも構わない。また吐出方式としては、電気−機械変換方式(例えば、シングルキャビティー型、ダブルキャビティー型、ベンダー型、ピストン型、シェアーモード型、シェアードウォール型等)、電気−熱変換方式(例えば、サーマルインクジェット型、バブルジェット型等)、静電吸引方式(例えば、電界制御型、スリットジェット型等)及び放電方式(例えば、スパークジェット型等)などを具体的な例として挙げることができるが、いずれの吐出方式を用いても構わない。
【0150】
【実施例】
以下に本発明の実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0151】
<顔料インクの調製>
【0152】
1.顔料分散液の作製
Figure 0004626100
を混合し、0.3mmのジルコニアビーズを体積率で60%充填した横型ビーズミル(アシザワ(株)製システムゼータミニ)を用いて分散し、イエロー顔料分散体1を得た。得られたイエロー顔料の平均粒径は112nmであった。
【0153】
Figure 0004626100
を混合し、0.3mmのジルコニアビーズを体積率で60%充填した横型ビーズミル(アシザワ(株)製システムゼータミニ)を用いて分散し、マゼンタ顔料分散体1を得た。得られたマゼンタ顔料の平均粒径は105nmであった。
【0154】
Figure 0004626100
を混合し、0.3mmのジルコニアビーズを体積率で60%充填した横型ビーズミル(アシザワ(株)製システムゼータミニ)を用いて分散し、シアン顔料分散体1を得た。得られたシアン顔料の平均粒径は87nmであった。
【0155】
Figure 0004626100
を混合し、0.3mmのジルコニアビーズを体積率で60%充填した横型ビーズミル(アシザワ(株)製システムゼータミニ)を用いて分散し、ブラック顔料分散体1を得た。得られたブラック顔料の平均粒径は75nmであった。
【0156】
2.顔料インクの調製
(1)イエロー濃インク1
イエロー顔料分散体1 15質量%
アクリルエマルジョン 10質量%
(ヨドゾールAD53 Tg80℃ 平均粒径80nm 日本NCS社)
エチレングリコール 20質量%
ジエチレングリコール 10質量%
マルチトール 5質量%
界面活性剤(サーフィノール465 日信化学工業社) 0.1質量%
イオン交換水 残量
【0157】
以上の組成を混合攪拌し、1μmフィルターでろ過し、本発明の水性顔料インクを作製した。インク中の顔料の平均粒径は120nmであり、表面張力γaは36mN/mであった。
【0158】
(2)イエロー淡インク1
イエロー顔料分散体1 3質量%
アクリルエマルジョン 10質量%
(ヨドゾールAD53 Tg80℃ 平均粒径80nm 日本NCS社)
エチレングリコール 25質量%
ジエチレングリコール 10質量%
マルチトール 10質量%
界面活性剤(サーフィノール465 日信化学工業社) 0.1質量%
イオン交換水 残量
【0159】
以上の組成を混合攪拌し、1μmフィルターでろ過し、本発明の水性顔料インクを作製した。
【0160】
インク中の顔料の平均粒径は118nmであり、表面張力γbは37mN/mであった。
【0161】
(3)マゼンタ濃インク1
マゼンタ顔料分散体1 15質量%
スチレン−アクリルエマルジョン 10質量%
(マイクロジェルE−1002 Tg約60℃ 平均粒径100nm 日本ペイント社)
エチレングリコール 20質量%
ジエチレングリコール 10質量%
マルチトール 5質量%
界面活性剤(サーフィノール465 日信化学工業社) 0.1質量%
イオン交換水 残量
【0162】
以上の組成を混合攪拌し、1μmフィルターでろ過し、本発明の水性顔料インクを作製した。
【0163】
インク中の顔料の平均粒径は113nmであり、表面張力γaは35mN/mであった。
【0164】
(4)マゼンタ淡インク1
マゼンタ顔料分散体1 3質量%
アクリルエマルジョン 8質量%
(マイクロジェルE−1002 Tg約60℃ 平均粒径100nm 日本ペイント社)
エチレングリコール 25質量%
ジエチレングリコール 10質量%
マルチトール 10質量%
界面活性剤(サーフィノール465 日信化学工業社) 0.1質量%
イオン交換水 残量
【0165】
以上の組成を混合攪拌し、1μmフィルターでろ過し、本発明の水性顔料インクを作製した。
【0166】
インク中の顔料の平均粒径は110nmであり、表面張力γbは37mN/mであった。
【0167】
(5)シアン濃インク1
シアン顔料分散体1 10質量%
スチレン−アクリルエマルジョン 10質量%
(ヨドゾールGD86B Tg60℃ 平均粒径90nm 日本NCS社)
エチレングリコール 20質量%
ジエチレングリコール 10質量%
マルチトール 5質量%
界面活性剤(サーフィノール465 日信化学工業社) 0.1質量%
イオン交換水 残量
【0168】
以上の組成を混合攪拌し、1μmフィルターでろ過し、本発明の水性顔料インクを作製した。
【0169】
インク中の顔料の平均粒径は95nmであり、表面張力γaは36mN/mであった。
【0170】
(6)シアン淡インク1
シアン顔料分散体1 2質量%
アクリルエマルジョン 10質量%
(ヨドゾールGD86B Tg60℃ 平均粒径90nm 日本NCS社)
エチレングリコール 25質量%
ジエチレングリコール 10質量%
マルチトール 10質量%
界面活性剤(サーフィノール465 日信化学工業社) 0.2質量%
イオン交換水 残量
【0171】
以上の組成を混合攪拌し、1μmフィルターでろ過し、本発明の水性顔料インクを作製した。
【0172】
インク中の顔料の平均粒径は92nmであり、表面張力γbは33mN/mであった。
【0173】
(7)ブラック濃インク1
ブラック顔料分散体1 10質量%
アクリルエマルジョン 8質量%
(ヨドゾールGD86B Tg60℃ 平均粒径90nm 日本NCS社)
エチレングリコール 20質量%
ジエチレングリコール 10質量%
マルチトール 5質量%
界面活性剤(サーフィノール465 日信化学工業社) 0.1質量%
イオン交換水 残量
【0174】
以上の組成を混合攪拌し、1μmフィルターでろ過し、本発明の水性顔料インクを作製した。
【0175】
インク中の顔料の平均粒径は85nmであり、表面張力γaは35mN/mであった。
【0176】
(8)ブラック淡インク1
ブラック顔料分散体1 2質量%
アクリルエマルジョン 8質量%
(ヨドゾールGD86B Tg60℃ 平均粒径90nm 日本NCS社)
エチレングリコール 25質量%
ジエチレングリコール 10質量%
マルチトール 10質量%
界面活性剤(サーフィノール465 日信化学工業社) 0.1質量%
イオン交換水 残量
【0177】
以上の組成を混合攪拌し、1μmフィルターでろ過し、本発明の水性顔料インクを作製した。
インク中の顔料の平均粒径は89nmであり、表面張力γaは36mN/mであった。
【0178】
<記録媒体の作成>
【0179】
記録媒体1の作成
〈酸化チタン分散液−1の調製〉
平均粒径が0.25μmの酸化チタン20kg(石原産業:W−10)をpH7.5のトリポリリン酸ナトリウムを150g、ポリビニルアルコール(クラレ株式会社:PVA235、平均重合度3500)500g、カチオン性ポリマー(P−1)の150g及びサンノブコ株式会社消泡剤SN381を10g含有する水溶液90リットルに添加し、高圧ホモジナイザー(三和工業株式会社製)で分散した後全量を100リットルに仕上げて均一な酸化チタン分散液−1を得た。
【0180】
【化1】
Figure 0004626100
【0181】
〈シリカ分散液−1の調製〉
1次粒子の平均粒径が0.007μmの気相法シリカ(日本アエロジル工業株式会社:A300)125kgを三田村理研工業株式会社製のジェットストリーム・インダクターミキサーTDSを用いて、硝酸でpH=2.5に調整した620リットルの純水中に室温で吸引分散した後に、全量を694リットルに純水で仕上げた。この分散液を希釈した粒子の電子顕微鏡写真を撮影したところ、ほとんどの粒子が0.01μm以下の平均粒径であり1次粒子まで分散されていることを確認した(ほとんどの粒子とは85〜90%の粒子のことをいう)。
【0182】
〈シリカ分散液−2の調製〉
カチオン性ポリマー(P−2)を1.41kg、エタノール4.2リットルを含有する溶液(pH=2.3)18リットルに25〜30℃の温度範囲で、シリカ分散液−1の69.4リットルを攪拌しながら20分かけ添加し、ついでホウ酸260gとホウ砂230gを含有する水溶液(pH=7.3)7.0リットルを約10分かけて添加し、前記の消泡剤SN381を1g添加した。この混合液を三和工業株式会社製高圧ホモジナイザーで24.5MPaの圧力で2回分散し、全量を純水で97リットルに仕上げてほぼ透明なシリカ分散液−2を調製した。
【0183】
【化2】
Figure 0004626100
【0184】
〈蛍光増白剤分散液−1の調製〉
チバガイギー株式会社製の油溶性蛍光増白剤UIVITEX−OB、400gをジイソデシルフタレート9000g及び酢酸エチル12リットルに加熱溶解し、これを酸処理ゼラチン3500g、カチオン性ポリマー(P−2)、サポニン50%水溶液6000mlを含有する水溶液65リットルに添加混合して三和工業株式会社製の高圧ホモジナイザーで24.5Mpa(250kgf/cm)の圧力で3回乳化分散し、減圧で酢酸エチルを除去した後全量を100リットルに仕上げた。この分散液のpHは約5.3であった。
【0185】
〈塗布液の調製〉
第1層、第2層、第3層の塗布液を以下の手順で調製した。
【0186】
第1層用塗布液
シリカ分散液−1の600mlに40℃で攪拌しながら、以下の添加剤を順次混合した。
Figure 0004626100
純水で全量を1000mlに仕上げる。塗布液pHは4.4であった。
【0187】
第2層用塗布液
シリカ分散液−2の650mlに40℃で攪拌しながら、以下の添加剤を順次混合した。
Figure 0004626100
純水で全量を1000mlに仕上げる。塗布液pHは4.4であった。
【0188】
第3層塗布液
シリカ分散液−2の650mlに40℃で攪拌しながら、以下の添加剤を順次混合した。
Figure 0004626100
純水で全量を1000mlに仕上げる。塗布液のpHは4.5であった。
【0189】
上記のように得られた塗布液を下記のフィルターで濾過した。
第1層と第2層:東洋濾紙株式会社製TCP10で2段濾過
第3層:東洋濾紙株式会社製TCP30で2段濾過
【0190】
次いで、両面をポリエチレンで被覆した紙支持体(厚みが220μmでインク吸収層面のポリエチレン中にはポリエチレンに対して13質量%のアナターゼ型酸化チタン含有)に第1層(50μm)、第2層(100μm)、第3層(50μm)の順になるように各層を塗布した。括弧内はそれぞれ湿潤膜厚を示し、第1層〜第3層は同時塗布した。
【0191】
塗布はそれぞれの塗布液を40℃で3層式スライドホッパーで塗布を行い、塗布直後に0℃に保たれた冷却ゾーンで20秒冷却した後、25℃の風(相対湿度15%)で60秒間、45℃の風(相対湿度が25%)で60秒間、50℃の風(相対湿度が25%)で60秒間順次乾燥し、20〜25℃、相対湿度が40〜60℃の雰囲気下で2分間調湿して記録媒体1を得た。
【0192】
記録媒体2の作成
次に以下の処方により熱可塑性樹脂層用の塗工液を調製した。
Figure 0004626100
【0193】
記録媒体1に乾燥膜厚が5μmとなるようにワイヤーバーを用いて熱可塑性樹脂層用の塗工液を塗布し、50℃にて30分乾燥し、記録媒体2を作製した。
【0194】
実施例1、2及び比較例1〜11
上記の顔料インク及び記録媒体2を用いて、図1に示す装置よりインクジェット記録を行った。図2のヘッドを使用し、YMCK濃淡8色インクを用いた。
【0195】
濃色のドット径の平均値を測定したところ48μmであり、淡色のドット径の平均値を測定したところ42μmであるとき、表1に示す各条件(下記1〜12)の下でインクジェット記録を行った。
【0196】
1)副走査着弾誤差σN(μm):副走査方向の記録位置からのズレの標準偏差
2)副走査方向のノズル出射角度誤差4σN(μm)
3)搬送量のバラツキ(標準偏差)σS(μm)
4)用紙搬送誤差4σS(μm)
5)副走査方向のドット着弾誤差yc(μm)(合計誤差)
:ノズル出射角度誤差と用紙搬送誤差の2乗和の平方根
6)インターリーブ数i
7)インターリーブ考慮後のドット位置誤差(μm)
8)主走査解像度(dpi)
9)副走査解像度(dpi)
10)主走査方向の画素ピッチh(μm)
11)副走査方向の画素ピッチv(μm)
12)各色ドット径Dc(μm):式(1)で計算される値。
【0197】
【表1】
Figure 0004626100
【0198】
表1において、比較例1〜10は実測のドット径が式(1)を満たしておらず、実施例1及び実施例2は式(1)を満たしている。
【0199】
以上の条件でインクジェット記録を行った場合に、比較例1〜10までの条件で行った記録媒体を観察するとバンディングが目立った。実際のドット径が式(1)で示されるドット径からかい離する程顕著になる。一方、実施例1及び2の条件で行った記録媒体を観察すると、バンディングは視認できなかった。
【0200】
実施例3及び比較例11
主、副走査方向の画素ピッチを23.5μm(1080dpi)とし、4倍インターリーブで記録した。
【0201】
4倍インターリーブ記録を行う際は、記録信号を4相に分割する。この際、4相への分割を図6に示す方法1(比較例11)と方法2(実施例3)の2通りで行い、プリント画質を比較した。
【0202】
いずれの方法も、記録信号は180dpi(141μm)間隔で得られるリニアエンコーダからのA相信号周期を電気的に6分割して生成している。
【0203】
方法1では図示のようにリニアエンコーダの基準信号から、各相での記録パルスを決めて記録を行った。一方、方法2では直前に記録した画素との間隔が等しくなるよう記録した。
【0204】
ドット径は48μmとした。方法1ではインターリーブしているものの、1ドットあけて同じ相で記録するドット同士が結合する部分が発生する。即ち、相1と相2の一部で、1ドットしか離れていない部分では、48>23.5×2(ドット同士の距離)であるから、ドットが結合する。
【0205】
方法2では、48<23.5×4であるから、D<h×iなる式を満たす。即ち、同じ相で同じ色のドットは結合せず、離れている。
【0206】
プリント画質を比較した結果、方法1では周期的に縦スジが強調されているのに対し、方法2ではドット結合する部分がなく、縦スジが目立たなかった。
【0207】
実施例4及び比較例12
主、副走査方向の画素ピッチを23.5μm(1080dpi)とし、2倍インターリーブで記録した。
【0208】
2倍インターリーブ記録を行う際は、記録信号を2相に分割する。この際、2相への分割を図7に示す方法1(比較例12)と方法2(実施例4)の2通りで行い、プリント画質を比較した。
【0209】
いずれの方法も、記録信号は180dpi(141μm)間隔で得られるリニアエンコーダからのA相信号周期を電気的に6分割して生成している。
【0210】
方法1では、各色1画素おきに記録を(1on/1off)を繰り返し記録を行った。方法2では、2画素記録・非記録(2on/2off)を繰り返し記録を行った。
【0211】
ドット径は48μmとした。方法1ではインターリーブしているものの、48>23.5×2(ドット同士の距離)であるため、同じ相内で、各色ドットが結合してしまう。
【0212】
一方、方法2では、各色、各相は3ドット離れるため、結合するのは隣接ドットのみである。
【0213】
両者のプリントを比較すると、方法1(比較例12)に比べ、方法2(実施例4)の方がザラツキ度合いが改善する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るインクジェット記録装置の概要を示す概略構成図
【図2】記録ヘッドの一例を示す図
【図3】バンディングの発生を説明するための図
【図4】インターリーブを説明するための図
【図5】4倍インターリーブ及び2倍インターリーブを示す図
【図6】実施例3及び実施例11の記録パルスを示す図
【図7】実施例4及び実施例12の記録パルスを示す図
【図8】Dcと、(1/√i)ycとvの和及びhとの関係を示す図
【符号の説明】
1:記録媒体
2a:搬送ローラ
2b:従動ローラ
3:駆動機構
30:搬送モータ
31:駆動軸
32:駆動プーリ
33:ベルト
34:従動プーリ
4:回転軸
5:記録ヘッド
6:キャリッジ
7:駆動モータ
8:走査ベルト
9:駆動プーリ
10:従動プーリ
11:駆動軸
12:走査ガイド

Claims (7)

  1. インクを吐出する複数のインク吐出口を配列した少なくとも1つのヘッドからなる記録ヘッドを用い、該記録ヘッドを走査して相対的に搬送される記録媒体に前記インク吐出口からインクを噴射して画像記録するインクジェット記録方法において、各色ドット径Dcが下記式(1)を満たすことを特徴とするインクジェット記録方法。
    【式1】
    Figure 0004626100
    〔上記式中、各色ドット径Dcは同一色内の複数のインク吐出口から射出されるドットの直径を測定し、その平均値を算出した値である(添え字cは複数色のある1色を示す。以下、同じ。)。hは主走査方向の画素ピッチである。vは副走査方向の画素ピッチである。ycは副走査方向のドット着弾誤差であり、AとBの2乗和の平方根で表される(ただし、Aは副走査方向のノズル出射角度誤差であり、Bは用紙搬送誤差である。)。iはインターリーブ数を表す(但し、i≧1の整数である)。〕
  2. 記録ヘッドが▲1▼単色同濃度インクを吐出する複数のインク吐出口を有する単一の記録ヘッド、▲2▼Y、M、C、Kインクを吐出する複数のインク吐出口を配列してなる複数のヘッド、の何れかから選ばれることを特徴とする請求項1記載のインクジェット記録方法。
  3. 濃度の異なるインクを用いて記録を行うインクジェット記録方法において、少なくとも濃色のドットに関しては、式(1)を満たすことを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録方法。
  4. 記録ヘッドが、(i)単色濃色インクを吐出する複数のインク吐出口を配列してなるヘッドと単色淡色インクを吐出する複数のインク吐出口を有するヘッドからなる記録ヘッド、又は(ii)Y,M,C,K濃色インクを吐出する複数のインク吐出口を配列してなる複数のヘッドとY,M,C,Kの少なくとも2色を含む淡色インクを吐出する複数のインク吐出口を有する複数のヘッドからなる記録ヘッド、の何れかから選ばれることを特徴とする請求項1又は3記載のインクジェット記録方法。
  5. 最大ドット径Dを各色ドット径Dcのうちの最大値とした場合、D<h×iを満たす時は、各記録走査で走査方向にはドットが連結しないようにインターリーブ記録を行うことを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載のインクジェット記録方法。
  6. 最大ドット径Dを各色ドット径Dcのうちの最大値とした場合、D<h×iを満たさない時は、最大ドット径D<h×nを満たす回数nで、各記録走査で走査方向に同一記録ヘッドで最大nドットを連続記録するようにインターリーブ記録を行うことを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載のインクジェット記録方法。
  7. インクとして顔料インクを使用し、記録媒体として熱可塑性樹脂粒子を含有する層を有する記録媒体を用い、記録を行うことを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載のインクジェット記録方法。
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