JP2006056235A - インクジェット記録方法及びインクジェット記録装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 ブロンジング耐性、光沢及び耐擦過性が改良され、色濁りのない高精細な画像が得られるインクジェット記録方法及びインクジェット記録装置を提供する。
【解決手段】 顔料、高沸点有機溶剤及び水を含有し、少なくともC、M、Y及びブラックの各色インクと1色以上の特色インクとから構成される着色インクを吐出し、ノズルピッチが10〜50μmの記録ヘッドを同一記録領域に複数回走査させ、規則性のない間引きパターンに従うドット径が記録媒体上で10〜50μmの画像を形成し、記録媒体はブリストウ法による吸収時間0.04秒での転移量が10ml/m2以上で、平均粒径15〜100nmの無機微粒子及び親水性バインダーを含有する空隙層を有し、記録媒体における単位面積当たりの着色インクの付着量に応じて、水、高沸点有機溶剤及び樹脂微粒子を含有する透明インクを吐出することを特徴とするインクジェット記録方法及び装置。
【選択図】図1

Description

本発明は、新規のインクジェット記録方法及びインクジェット記録装置に関し、詳しくは、ブロンジング耐性、光沢及び耐擦過性が改良され、色濁りのない高精細な画像が得られるインクジェット記録方法及びインクジェット記録装置に関する。
インクジェット記録方式は、微小なインク液滴を種々の作動原理により飛翔させて紙などの記録媒体に付着させ、画像・文字などの記録を行うものであるが、比較的高速、低騒音、多色化が容易である等の利点を有している。上記インクジェット記録方式では、インク、インクジェット記録媒体及びインクジェット記録装置の各分野で様々な改良が進み、現在では各種プリンター、ファクシミリ、コンピューター端末等、様々な分野に急速に普及している。特に、最近ではプリンターの高画質化が進み写真画質に到達している。
インクジェット記録方式で用いられるインクジェット記録装置としては、印字速度向上のため、複数の記録素子を集積配列した記録ヘッド(以下、マルチヘッドともいう)として、インク吐出口(ノズル部)及びインク液路を複数集積したものが用いられている。更に、カラー対応として、複数個の上記構成からなる記録ヘッドを備えたものも多く用いられている。その場合、各色のインクを射出するヘッドが、主走査方向に並列に配置されるのが一般的である。
このように、カラーイメージ画像を印字するに当たっては、モノクロプリンタとしてキャラクタのみ印字するものと異なり、発色性、階調性、一様性など様々な要素が高画質な画像を得る上で重要となる。特に一様性に関しては、マルチヘッド制作工程差に生じるわずかなノズル単位のばらつきが、印字したときに、各ノズルのインクの吐出量や吐出方向の向きに影響を及ぼし、最終的には印字画像の濃度のムラとして画像品位を劣化させる原因となる。また、ヘッドを搭載したキャリッジの主走査時の速度変動や、媒体の副走査紙送り量の変動、媒体表面とノズル面との距離の媒体上での変動なども画像の劣化を引き起こす。
上記課題に対しては、複数のノズル部を有する記録ヘッドをインクジェット記録媒体の同一記録領域に対し複数回走査させ、各走査において、相補的な間引きパターンに従って画像を形成することにより、各ノズルのばらつきや各種変動による画像劣化を軽減する、いわゆるマルチパス記録法が提案されている。この際に用いるマスクとしては、特開昭60−107975号公報に記載されているように、ある規則に従って一定の間引き率を持った相補的なパターンを使う方法が最も一般的である。
しかし、後述するように、このような規則的なマスクでは、色むらや筋状のムラ、白抜けなどが逆に顕著に現れる場合があり、この改善策として非規則的なマスクパターンを用いた方法が提案されている。この規則性のない間引きパターンに従って間引き画像を形成することにより、画像の規則性とマスクの規則性の相乗作用によって発生する濃度ムラや色ムラを防止して、ある程度高画質及び高速印字を実現することができる。(例えば、特許文献1〜3参照。)。
ところが、特定のインクと記録媒体を用いた場合、特に銀塩写真並みの高画質印字を求められる場合には、これら提案されている間引き印字方法のみでは十分な画質が得られないことが本出願人により見出された。以下これについて説明する。
インクジェット記録方式で用いられるインクとしては、色材が溶媒に溶解している染料インクと、色材、主には顔料が溶媒に分散されている分散インクとに大別される。染料は溶媒に可溶であり、色素分子は分子状態もしくはクラスター状態で着色しており、その吸収スペクトルはシャープであり高純度で鮮明な発色を呈する。更に、粒子に起因する粒状パターンがなく、また、散乱光や反射光が発生しないため、透明感が高く色相も鮮明なインクジェット画像を得ることができ、また色材粒子が存在しないため耐擦過性に優れた特性を有している。しかしその一方で、光化学反応等により分子が破壊された場合には、分子数の減少がそのまま着色濃度に反映するために、耐光性、褪色性が悪いという欠点を有している。染料インクを用いたインクジェット記録画像は、高画質であるが、経時保存による画像品質の低下が大きく、画像保存性の観点で銀塩写真を凌駕する技術が未だ現れていないのが現状である。
この問題を解決する方法として、光による退色に強い画像を必要とする用途向けに、耐光性が良好である顔料を着色剤として用いる顔料インクが使用されるようになってきている。
このような顔料インクを用いた場合には、インク付着量が多くなると、インク中の顔料の凝集が発生し、高品位で高精細なカラー画像を得ることができないという問題が生じる。このような問題を解決するために、イエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックのインクにレッド、バイオレットのような特色を加えたインクセットを用いてカラー画像を形成する方法が適用できる(例えば、特許文献4参照。)。
しかしながら、顔料インクを使用して規則性のない間引きパターンに従うインクジェット画像記録を行うと、各走査において形成されるドット位置に規則性を持たないため、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック等のインク液滴が、同一の走査でインクジェット記録媒体上に隣接して印字されるケースが多くなる。その結果、各インク液滴同士が混じり合い顔料粒子等の凝集を引き起こし、染料インクではほとんど起こらなかったブロンジングと呼ばれる現象が発生し、カラー画像が正確に再現できないといった問題が発生する。
特に、銀塩写真の様な高精細の画像を形成するために、平均粒子径が100nm以下の無機微粒子を含有する空隙層を有するインクジェット記録媒体を用いた場合には、インク吸収速度が速く、記録媒体上に存在する顔料粒子の凝集がより発生し易くなる。また、非規則的なマスクパターンを用いるために、異なる色のドット同士が隣接して印字される確率が高くなり、異なる色調を有する顔料粒子が記録媒体上で混じり合うことにより、高精細な画像の形成が困難となることが分かった。
これは、規則的な間引きパターンを使用する場合は、1走査で媒体上に形成される各インクの位置を細かく制御する事ができ、このようなドットの混じりを効果的に抑制することができるが、非規則的な場合はこのような制御がしにくいためである。
特開平7−52390号公報 特開2002−96461号公報 特開2002−144552号公報 特開2003−266913号公報
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、不規則な間引きパターンに従って顔料インクを記録媒体に印字してカラー画像を形成する場合でも、ブロンジング耐性、光沢及び耐擦過性が改良され、色濁りのない高精細な画像が得られるインクジェット記録方法及びインクジェット記録装置の提供である。
本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
(請求項1)
着色インクを吐出する複数のノズル部を有する記録ヘッドを、記録媒体の同一記録領域に対し複数回走査させ、各走査で規則性のない間引きパターンに従う間引き画像を形成し、着色インクを該記録媒体に印字して、カラー画像を形成するインクジェット記録方法であって、
該記録ヘッドのノズルピッチが10〜50μmであり、
該着色インクは、シアン、マゼンタ、イエロー及びブラックの各色インクと、少なくとも1色の特色インクとから構成され、
該着色インクは、顔料、高沸点有機溶剤及び水を含有し、該記録ヘッドから吐出されて形成されるドット径が、記録媒体上で10〜50μmであり、
該記録媒体は、ブリストウ法による吸収時間0.04秒における転移量が10ml/m2以上であって、かつ平均粒子径が15〜100nmの無機微粒子及び親水性バインダーを含有する空隙層を有することを特徴とするインクジェット記録方法。
(請求項2)
前記特色インクが、レッドインク、オレンジインク、ブルーインク、バイオレットインク及びグリーンインクから選ばれる少なくとも1つのインクであることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録方法。
(請求項3)
前記間引きパターンによる印字許容率が、15〜35%であることを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェット記録方法。
(請求項4)
前記着色インクの表面張力が、30〜50mN/mであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
(請求項5)
前記着色インクの顔料は、高分子分散剤により分散されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
(請求項6)
前記記録媒体が、吸水性支持体上に前記空隙層を設けたものであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
(請求項7)
前記親水性バインダーが、ポリビニルアルコールまたはその誘導体であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
(請求項8)
前記親水性バインダーが、硬膜されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
(請求項9)
前記空隙層の空隙率が、30〜70%であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
(請求項10)
前記無機微粒子が、シリカまたはアルミナであることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
(請求項11)
前記無機微粒子の平均粒子径が、20〜80nmであることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
(請求項12)
前記着色インクが、尿素または尿素誘導体を含有することを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
(請求項13)
着色インクを記録媒体に吐出してカラー画像を形成するインクジェット記録装置であって、
該着色インクを吐出するための複数のノズル部が10〜50μmのピッチで配列された記録ヘッドと、
記録媒体の同一記録領域に対して、記録ヘッドを複数回走査させるための走査手段と、
該記録ヘッドから吐出される着色インクにより形成されるドット径が、記録媒体上で10〜50μmであり、各走査で規則性のない間引きパターンに従う間引き画像が前記記録媒体上に形成されるように、複数のノズル部から着色インクを吐出させる制御手段とを有し、
該着色インクは、シアン、マゼンタ、イエロー及びブラックの各色インクと、少なくとも1色の特色インクとから構成され、
該着色インクは、顔料、高沸点有機溶剤及び水を含有し、
該記録媒体は、ブリストウ法による吸収時間0.04秒における転移量が10ml/m2以上であり、かつ平均粒子径が15〜100nmの無機微粒子及び親水性バインダーを含有する空隙層を有することを特徴とするインクジェット記録装置。
(請求項14)
前記特色インクが、レッドインク、オレンジインク、ブルーインク、バイオレットインク及びグリーンインクから選ばれる少なくとも1つのインクであることを特徴とする請求項13に記載のインクジェット記録装置。
(請求項15)
前記間引きパターンによる印字許容率が、15〜35%であることを特徴とする請求項13または14に記載のインクジェット記録装置。
(請求項16)
前記着色インクの表面張力が、30〜50mN/mであることを特徴とする請求項13〜15のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
(請求項17)
前記着色インクの顔料は、高分子分散剤により分散されていることを特徴とする請求項13〜16のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
(請求項18)
前記記録媒体が、吸水性支持体上に前記空隙層を設けたものであることを特徴とする請求項13〜17のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
(請求項19)
前記親水性バインダーが、ポリビニルアルコールまたはその誘導体であることを特徴とする請求項13〜18のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
(請求項20)
前記親水性バインダーが、硬膜されていることを特徴とする請求項13〜19のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
(請求項21)
前記空隙層の空隙率が、30〜70%であることを特徴とする請求項13〜20のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
(請求項22)
前記無機微粒子が、シリカまたはアルミナであることを特徴とする請求項13〜21のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
(請求項23)
前記無機微粒子の平均粒子径が、20〜80nmであることを特徴とする請求項13〜22のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
(請求項24)
前記着色インクが、尿素または尿素誘導体を含有することを特徴とする請求項13〜23のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
本発明によれば、不規則な間引きパターンに従って顔料インクをインクジェット記録媒体に印字してカラー画像を形成する場合でも、ブロンジング耐性、光沢及び耐擦過性が改良され、色濁りのない高精細な画像が得られるインクジェット記録方法及びインクジェット記録装置を提供することができる。
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、1)インクを吐出する複数のノズル部を有する記録ヘッドを、記録媒体の同一記録領域に対し複数回走査させ、各走査で規則性のない間引きパターンに従う間引き画像を形成する印字方法と、2)ノズルピッチが10〜50μmの記録ヘッドと、3)シアン、マゼンタ、イエロー及びブラックの各色インクと、少なくとも1色の特色インクとから構成され、少なくとも顔料、高沸点有機溶剤及び水を含有し、記録ヘッドから吐出されて形成されるドット径が、記録媒体上で10〜50μmである着色インク(以下、単にインクともいう)と、4)吸収時間0.04秒における転移量が10ml/m2以上であって、かつ平均粒子径が15〜100nmの無機微粒子及び親水性バインダーを含有する空隙層を有する記録媒体とを組み合わせることにより、ブロンジング耐性、光沢及び耐擦過性が改良され、色濁りのない高精細な画像を得ることができるインクジェット記録方法およびインクジェット記録装置を実現できることを見出した。
以下、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
はじめに、本発明のインクジェット記録方法を適用できるインクジェットプリンタについて、図1を参照にして説明する。
図1は、インクジェットプリンタの主要構成部を表す斜視図である。
インクジェットプリンタ1には、図示するように、記録媒体にインクを吐出し画像を形成する画像形成部2が設けられている。この画像形成部2には、上面で所定範囲の記録媒体Pの裏面(記録面の側と反対側となる面)を支持するプラテン21が略水平に配設されている。また、画像形成部2には、プラテン21の上方で、走査方向Xに沿って延在し、走査方向Xに走査するキャリッジ23を移動させるための案内部材25が設けられている。
キャリッジ23には、記録媒体にインクを吐出する記録ヘッド22と、走査方向Xに沿って延在し、その長手方向に300dpi周期で光学パターンが配設されたリニアスケール26の光学パターンを読み取ってクロック信号として出力するリニアエンコーダセンサ27とが搭載されている。なお、本発明でいうdpiとは、2.54cmあたりのドット数を表す。印字動作は、このエンコーダー信号を分周することにより、例えば、1200dpiの印字密度で行う。キャリッジ23の移動方向は、キャリッジ用駆動モータ231の回転方向にしたがって変更され、これによりキャリッジ23は走査方向Xに往復移動する。また、画像形成時において、キャリッジ23は、記録媒体が停止している際に走査方向Xに往動、復動又は往復移動する。このときの移動速度は、例えば、最速時において705mm/secとなっている。
次に、記録ヘッド22について図2及び図3を参照して説明する。図2は、キャリッジ23を拡大した斜視図であり、図3は記録ヘッド22の下面図である。
記録ヘッド22は、ピエゾ方式、サーマル方式のいずれでもよいが、ノズルを高密度で配置する観点からはサーマル方式が好ましく、本実施形態ではサーマル方式の記録ヘッドを用いている。この記録ヘッド22は、画像記録時において、プラテン21上を搬送される記録媒体Pの記録面と、記録ヘッド22のノズル221が形成されたノズル面222とが対向するように配設されている。
記録ヘッド22のノズル面222には、図2に示すように、ノズル221が記録媒体搬送方向に42.3μm(600dpi)のピッチで128個ずつ2列、計256個形成されており、このノズル列は21.2μmずれて配設されている。これは、1200dpiにおいて1画素に相当する。また2列間の距離は約500ミクロンである。各ノズル221は、その内部にサーマルインクジェット素子が設けられており、吐出手段の作動によりインクを滴として別個に吐出する。
各記録ヘッド22には、図示しない記録インク用カートリッジから、配管用のチューブを通ってインクが供給される。記録ヘッド22は走査方向に沿って8個並んで配置されており、それぞれシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)及びブラック(K)の4色のインク用と3色の特色インク用に使用される。本実施例では、記録インクとしてC、M、Y、K、の4種類のインクと3色の特色インクを用いているが、淡色を用いて、濃淡C、M、Y、Kの8色と3色の特色インクで記録するインクジェットプリンタでも、本発明の効果は同様である。なお、図1では8色分のヘッドを搭載しているが、本実施例ではそのうちの7個を用いて印字を行う。
次に、インクジェットプリンタ1の制御部について、図4を参照にして説明する。図4は、インクジェットプリンタ1の制御部を表すブロック図である。
制御部100は、図4に示すように、記録媒体を搬送させるための搬送モータ101、CPU103、インタフェイス104、キャリッジ用駆動モータ231、メモリライトコントローラ105、画像メモリ106、メモリリードコントローラ107、マスク処理回路108が、バス110を介して接続されて構成されている。マスク処理回路108の詳細な構成については後述する。なお、制御部100には、これら以外にもインクジェットプリンタ1の記録ヘッド22及び各駆動部などが接続されている。
制御部100は、記録媒体の搬送、キャリッジ23走査動作と、記録ヘッド22のインク吐出等を制御する。制御部100には、図4及び図5に示すように、コンピュータ等の画像形成装置200が接続されている。画像形成装置200は、入力された信号に基づいて、多色の画像を形成する。この例では、画像形成装置200内部で動作しているアプリケーションプログラム201が、画像の処理を行いつつビデオドライバ202を介してモニタ300に画像を表示している。このアプリケーションプログラム201が、画像形成指示を発動すると、画像形成装置200用のプリンタドライバ203が、画像形成用の画像データをアプリケーションプログラム201から受け取って、インクジェットプリンタ1で画像形成可能な信号に変換する。
プリンタドライバ203には、アプリケーションプログラム201が扱っている画像データを、ドット単位の色情報に変換するラスタライザ204、ドット単位の色情報に変換された画像階調データに対して、インクジェットプリンタ1の発色特性と階調特性に応じた補正を行う色階調補正モジュール205、色補正された後の画像データからドット単位での記録インクの有無により、ある面積での濃度を表現するいわゆるハーフトーンの画像データを生成するハーフトーンモジュール206が備えられている。間引きマスク処理を行うモジュール207を、このプリンタドライバに組み込んでおくこともでき、その場合は、例えば、印字に使用する媒体種類に応じたマスク設定を変更するなど、プリンター内部で処理を行う場合よりも柔軟な制御が可能である。プリンター内のマスク処理回路108を使う場合には207での処理は行わない。逆に207でマスク処理を行った場合は、108の回路での処理は行わないことになる。また、印字データなどとともに、画像処理装置200から印刷ごとにマスクパターンをダウンロードすることも可能である。
次に、マルチパスインクジェット記録方法について説明する。前述のように、インクジェット画像記録において、特に、カラーイメージ画像を形成する際には、発色性、階調性、一様性など様々な要素が必要となる。特に一様性、すなわち形成される画像の均一性に関しては、マルチヘッド制作工程差に生じるわずかなノズル単位のばらつきが、印字したときに、各ノズルのインクの吐出量や吐出方向の向きに影響を及ぼしたり、あるいは記録媒体の移動の機械的精度に起因する帯状のムラが発生し、最終的には印字画像の濃度のムラとして画像品位を劣化させる原因となる。そこで、本実施形態においては、このような問題を解決するために、ヘッドを、インクジェット記録媒体の同一記録領域に対し複数回走査させるマルチパスインクジェット記録方法を用いてカラー画像を形成する。
マルチパス印字ジェット記録方法としては、例えば、特開昭60−107975号公報のような方法を用いることができる。図6及び図7によりその方法を説明する。
この方法によると図8及び図9で示した印字領域を完成させるのに、マルチヘッド1101を3回スキャンしているが、その半分4画素単位の領域は2パスで完成している。この場合マルチヘッドの8ノズルは、上4ノズルと、下4ノズルのグループに分けられ、1ノズルが1回のスキャンで印字するドットは、規定の画像データを、ある所定の画像データ配列に従い、約半分に間引いたものである。そして2回目のスキャン時に残りの半分の画像データへドットを埋め込み、4画素単位領域の印字を完成させる。
この様な記録方法を用いると、図9で示したマルチヘッドと等しいものを使用しても、各ノズル固有の印字画像への影響が半減されるので、印字された画像は図6−bの様になり、図9−bに見るような黒筋や白筋が余り目立たなくなる。従って濃度ムラも図6−cに示す様に図9−cの場合と比べ、かなり緩和される。
この様な記録を行う際、1スキャン目と2スキャン目では、画像データをある配列に従い互いに埋め合わせる形で分割するが、通常この画像データ配列(間引きパターン)とは図7に示すように、縦横1画素毎に、ちょうど千鳥格子になるようなものを用いるのが最も一般的である。
従って、単位印字領域(ここでは4画素単位)においては千鳥格子を印字する1スキャン目と、逆千鳥格子を印字する2スキャン目によって印字が完成されるものである。
図7の7−a、7−b、7−cはそれぞれこの千鳥、逆千鳥パターンを用いたときに一定領域の記録がどのように完成されて行くかを図6と同様、8ノズルを持ったマルチヘッドを用いて説明したものである。まず1スキャン目では、下4ノズルを用いて千鳥パターン(斜線丸印)の記録を行う(7−a)。次に2スキャン目には紙送りを4画素(ヘッド長の1/2)だけ行い、逆千鳥パターン(白丸印)の記録を行う(7−b)。更に3スキャン目には再び4画素(ヘッド長の1/2)だけの紙送りを行い、再び千鳥パターンの記録を行う(7−c)。
この様にして順次4画素単位の紙送りと、千鳥、逆千鳥パターンの記録を交互に行うことにより、4画素単位の記録領域を1スキャン毎に完成させていく。以上説明したように、同じ領域内に異なる2種類のノズルにより印字が完成されていくことにより、濃度ムラの無い高画質な画像を得ることが可能である。
しかし、この様なマルチパス記録を行った場合でも、デューティーによっては全く上記濃度ムラが解消されていなかったり、また特に中間調では新たな濃度ムラが確認されていたりする。以下にその現象を説明する。
通常、プリンタが受けるある領域の記録するべき画像データとは、既に規則的に配列化されているものである。記録装置側ではそれらデータを一定量バッファにストックし、既に説明したような千鳥、或いは逆千鳥という新たなマスク(画像配列パターン)をかけ、双方がON状態になったとき初めてその画素の印字が行われる様になっている。
図10〜12はこの様子を説明したものである。図10において、1710はバッファにためられた既に配列化されたデータ、1720は1パス目に印字を許す画素を示す千鳥パターンのマスク、1730は2パス目に印字を許す画素を示した逆千鳥パターンのマスク、1740、及び1750はそれぞれ1パス目及び2パス目に印字される画素を表している。
図10において、ある領域に25%の印字を行う場合の既に配列化されたデータが、バッファにストックされている。このデータは、指定された一定領域において一様に濃度を保つため、印字データがなるべくばらついた状態に配置されているのが一般的である。これらがどの様な画像配列になっているかは、プリンタ本体に転送される以前の画像処理時にどの様な面積階調法が行われているかに依るものである。1710に示したものは、25%データに対するある画像配列の一例であるが、この様なデータに対し、それぞれ1720、1730のマスクをかけて印字を行えば1パス目及び2パス目には、1740、1750に示すようにちょうどデータを等分した状態で配分記録される。
しかし、図11に示したように丁度50%のデータが来たときには、最もばらついた状態に画像配列したデータ1810と、千鳥パターンマスク(1802)或いは逆千鳥パターンマスク(1830)のどちらか一方が、全く一致した配列状態になることは容易に想像できる。
この様なことが起こると1パス目(1840)で全ての画像データの印字が終了してしまい、2パス目(1850)では全く記録を行わないことになってしまう。つまり、全ての印字データ(1810)を同一ノズルで印字してしまう。従って、ノズルのバラツキの影響をそのまま濃度ムラに反映してしまうこととなり、上記分割記録法の本来の目的が達成されない。
図12は図10、11より更にデューティーを上げた状態の配列画像データが入力されたときの印字状態を示したものであるが、これにおいても1パス目と2パス目で、印字数にかなりの差が出ていることがわかる。この様に100%近くの高デューティーでは改善されていた濃度ムラも、低デューティーから50%付近のデータでは再び現れてしまうという弊害があった。
また、ある特定のマスクパターンを用いて間引き印字を行う場合、印字データとマスクパターンが同じ周期を持ってしまうことがある。マスクパターンによる印字画素、非印字画素の配置からくる濃度の振幅と印字データの振幅が重なり合って、共振してしまう。これにより形成された画像のドット配列はある特定の方向性のある模様を持ってしまう。通常、この現象をモアレと呼んでいる。これは同じマスクパターンを使用した画像が複数行ある場合に目立ち易く、ユーザーにも認識され易い。このモアレはマスクパターンの周期性に依存するところが大きい。
上記問題に加えて、双方向印字を行う場合には更に次のような問題が生じる。
図13(a)は、ヘッドが往路或いは復路方向に一定速度Vで移動しながら、平滑な紙面に対しインクドロップを一定速度vで吐出している状態を示している。紙面が図のように平滑であって、紙面とヘッドフェース面との距離dが所定の値に一定に保たれていれば、往路と復路とで吐出タイミングを一義的に調整することで、紙面上には下図のように往路で印字したドットと復路で印字したドットが等しい位置に着弾される。しかし、紙面自体が何らかの原因で図13(b)の様に実際の位置より浮き上がっていた場合、ヘッドフェース面と紙面との距離はd′に縮まり、ヘッドが吐出してからインクドロップが紙面に到着するまでの時間が往路復路ともに短縮されるために、印字ドットは下図のようにそれぞれが目的の位置よりズレた異なった位置に着弾されてしまう。同様に、同一画像領域に対する往路印字の時点での紙面とヘッドフェース面との距離dと復路印字の時点での距離dとが局所的な紙の浮きなどで変化した場合はさらに大きな着弾位置ずれが生ずる場合がある。
この様な状態で千鳥状の間引きマスクを用い、100%デューティー画像を両方向印字すると、ドット着弾状態は図14の様になる。ここでは各ドットが正規の位置より1/4画素づつズレた状態を示してあり、隣接ドットが必要以上に重なり合う部分、隣接ドット間に隙間が開いてしまっている部分が間引きマスクに応じて異なる配置に現れている。図14は全ドットが隣接ドットと逆方向に印字されるので、1ドット毎に1ドット分の隙間が生じてしまい、全体的に濃度の薄い状態となる。
この様な両方向印字時の着弾位置ズレは、図13で示した紙面の部分的な浮き沈みによってのみではなく、記録ヘッドの吐出スピードムラ、キャリッジ移動スピードのムラ等、様々な原因により起こるものである。これら要因は常にその値がキャリッジの進行方向に対し、一定ではないので、両方向印字時の吐出タイミングを制御することは難しい。また、記録装置におけるヘッドと紙面上との距離は装置個々にばらつきが大きい場合もあるので、吐出タイミングの調整による往復着弾位置制御には限界がある。
以上説明してきたような弊害により、ノズルのバラツキ等を補正するために行われていた従来の規則的間引きパターンを用いたマルチパス印字では、濃度ムラに関して常に十分な画質が得られるとは限らない。これらの濃度ムラの弊害はある幅の印字領域で交互に現れる周期性を持っていために、濃度ムラとして認識する人間の視覚を促進してしまう。
本発明者らは、上記のような問題点が規則性のあるマスクパターンを用いた場合に生じることを見出した。そこで、本実施形態においては、規則性のあるマスクパターンを使用する代わりに、規則性のない間引きパターンを用いてマルチパス記録を行うことにより、上記のような問題を解決する。規則性のない間引きパターンとしては、例えば、乱数を用いて作成した所定サイズのランダムなパターンを用いることができ、具体的には、例えば、特許第3176182号に記載されているように、非記録画素と記録画素とが乱数的に配列された所定サイズのランダムマスクパターンを複数発生させ、発生されたランダムマスクパターンを、各記録領域に対する間引きパターンとして記録データを間引くマスクとして用いることができる。
このようなランダムなマスクパターンに従った印字画素で画像を形成することにより、間引き配列のパターン周期を持つことはなくなり、従来の規則的なマスクを用いたマルチパス記録法で発生する濃度ムラ弊害を、濃度ムラの周期性を無くすことで克服することができる。
また、このような乱数を用いたランダムマスクの代わりに、いわゆるブルーノイズ特性をもったドット配置パターンを規則性のない間引きパターンとして用いてもよい。このパターンは、ハーフトーンの量子化処理用として開発されたものであり、このパターンを用いてディザ処理を行うと、発生するドットは低周波成分が少なく、粒状感が低減された画像が得られる特徴がある。
本発明の規則性のない間引きパターンに従う画像形成を行うためには、乱数を用いたランダムマスクやブルーノイズ特性を持ったドット配置パターンを用いる方法に限定されず、規則性のない間引きパターンに従う間引き画像を形成するための他の同様なパターンを用いることができる。
次に、上述のような規則性のないマスクを用いてマルチパス記録を行う方法について、ブルーノイズ特性をもったドット配置パターンをマスクとして用い、4パス印字する場合を、図15、16を参照して、以下に説明する。
記録に用いるヘッドの実際のノズル形態は、図3示したように600dpiピッチで配設された128ノズルのノズル列が、主走査方向に500ミクロン離れて配置されている。
以下、マルチパス記録の説明を簡略化するため、1色当たり16ノズルとし、これを4分割して1分割領域あたりのノズル数を4、それに対応するマスクサイズを4×16とした。これに対応する分割領域が501〜504として図17に示されている。4パス印字は、各分割領域501〜504を別々に運用することにより実現される。
各パスにおいて、約25%デューティの間引きマスクパターン、つまり印字許容率が約25%のマスクパターンを分割領域毎の印字データに設定し、4回の走査で100%の画像を作成する。これに用いる4×16のマスクパターンの例であるA1〜A4を、図15に示す。各マスクパターンA1〜A4のそれぞれは、図中網模様で示されるマス目上の位置にマスクデータが存在し、各マスクパターンA1〜A4を重ね合わせると、4×16のマス目が全てマスクデータで埋まるように構成されている。
図15のプリントデータ800(ハッチング部分が印字データが有ることを示す)に対して、上記のマスクパターンA1〜A4を設定する。ここで、プリントデータ800については印字データが有る場合を1とし、無い場合を0とし、また、マスクパターンA1〜A4についてはマスクデータが有る場合を1とし、無い場合を0としてプリントデータ800と各マスクパターンA1〜A4の同じ位置における論理和が取られ、記録ヘッドの吐出データ801〜804がそれぞれ生成される。4つの吐出データ801〜804を重ね合せると、元のプリントデータ800と同じ印字画像805が形成されることとなる。
図16はマルチパス印字を説明するための図である。A1〜A4のグループ、B1〜B4のグループ、C1〜C4のグループ、D1〜D4のグループの、4種類のマスクデータ群が4パスを1周期として使用される。各グループ内のパターンは、いずれも、4つを重ね合せたときに100%の画像が完成するようなパターンとなっている。マルチパス印字では、このようなマスクデータの設定を、各印字走査において、印字ヘッド500の各分割領域501〜504毎に行う。
印刷は、以下のように行われる。
プリント画像上の第1印字領域は、1回目の記録走査では、記録ヘッドの分割領域504にてマスクパターンA1が設定され、記録が行われる。続いて、第2記録走査では、第1印字領域は、記録ヘッドの分割領域503にてマスクパターンA2が用いられ、第2印字領域では、記録ヘッドの分割領域504にて第1印字領域とはグループの異なるマスクパターンB1を使っての印刷が行われる。
さらに、第3記録走査では、記録ヘッドの分割領域502にて第1印字領域はマスクパターンA3を、第2印字領域では、記録ヘッドの分割領域503にてマスクパターンB2を、第3印字領域では、記録ヘッドの分割領域504にて、これらとはグループの異なるマスクパターンC1を用いての印刷が行われる。
そして、第4記録走査では、第1印字領域では、記録ヘッドの分割領域501にてマスクパターンA4を、第2印字領域では、記録ヘッドの分割領域502にてマスクパターンB3を、第3印字領域では、記録ヘッドの分割領域503にてマスクパターンC2を、第4印字領域では、記録ヘッドの分割領域504にて、また、グループの異なるマスクパターンD1を用いての印刷が行われる。このとき、第1印字領域は、4つのマスクパターン、A1、A2、A3、A4を用いて、合計4回の印字走査が行われ、この領域についての画像印刷は完成となる。
同様の手順で、第2印字領域は、B1、B2、B3、B4を用いて、第3印字領域はC1、C2、C3、C4を用いて、第4印字領域はD1、D2、D3、D4を用いての画像形成がなされる。また、このあと、第5印字領域は、再び、A1、A2、A3、A4を用いて、第6印字領域はB1、B2、B3、B4を用いての印字と、この4グループのパターンを繰り返し運用して印字が続けられていく。
また、これらのパターンは、図18に示すように、A4B3C2D1、B4C3D2A1、C4D3A2B1、D4A3B2C1の順に上から並べて16×16のマスクを4つ構成すると、それぞれがブルーノイズ特性を持つマスクパターンとなっている。これら4つの16×16のマスクは、0−255を16×16の升目にブルーノイズ特性を持つように配置し、そのマスクの0−63、64−127、128−191、191−255の値に対応する部分を記録許容画素として用いたものである。これらの4つのマスクを、それぞれ4×16の4つに分割したものが、A1〜A4、B1〜B4、C1〜C4、D1〜D4に対応する。このようなパターンの作り方については、例えば、特許第2622429号公報に記載されている。
このように、1走査で形成するドットパターン自体に、ブルーノイズ特性を持たせると、乱数で発生させたパターンを用いる場合に比べて繰り返しパターンの発生や粒状性の悪化を低減する効果がある。これについては、例えば、特開2002−96461号公報等に記載がある。
また、マスクの許容印字率を変更する場合は、この0−255の値を印字率に応じて変化させることで容易に得ることができる。例えば、40%と10%のマスク二組を作りたい場合は、0−102、103−127、128−230、231−255に対応する画素をそれぞれ印字許容画素とするマスクを作成すればよい。このようなマスクの例を、図19〜図21に示す。
図22は本発明を実施する際に用いるマスク処理回路の構成を示すブロック図であり、図4のマスク処理回路108を詳細に説明するものである。
図22において、301はメモリデータバスに接続され、メモリ中の画像メモリ106に蓄えられているプリントデータを読み出して一時的に格納するためのデータレジスタ、302はデータレジスタ301に格納されたデータをシリアルデータに変換するためのパラレル−シリアル変換器、303はシリアルデータにマスクをかけるためのANDゲート、304はデータ転送数を管理するためのカウンタである。
305はCPUデータバスを介してCPU103に接続され、マスクパターンを格納するためのレジスタ、306はマスクパターンの桁位置を選択するためのセレクタ、307はマスクパターンの行位置を選択するためのセレクタである。311は桁位置を管理するためのカウンタである。
図22に示すデータ転送回路は、CPU103から送られる印字指令信号により、プリントヘッドにプリントデータをシリアル転送する。メモリ中の画像メモリ106に蓄えられていたプリントデータはデータレジスタ301に一時的に格納され、パラレル−シリアル変換器302によってシリアルデータに変換される。変換されたシリアルデータはANDゲート303によってマスクをかけられた後、プリントヘッドに転送される。転送カウンタ304は転送ビット数をカウントして16ノズル分のデータを転送する。
マスクレジスタ305は4本のマスクレジスタA、B、C、Dより構成され、CPU103によって書き込まれたマスクパターンを格納する。各レジスタは縦16ビット×横16ビットのマスクパターンを格納する。セレクタ306はカラムカウンタ311の値を選択信号とすることによって、桁位置に対応したマスクパターンデータを選択する。またセレクタ307は転送カウンタ304の値を選択信号とすることによって行位置に対応したマスクパターンデータを選択する。セレクタ306、307によって選択されたマスクパターンデータにより、ANDゲート303を用いて転送データにマスクがかけられる。
このデータを各ノズルの出射制御に使用し、キャリッジの主走査中に、エンコーダー信号から発生させたタイミング信号に同期して射出を行う。以下この動作を媒体の幅方向に渡って印字解像度に合わせて行ってゆく。この実施例ではマスクサイズは横方向に16であるので、16画素ごとに同じマスクパターンが繰り返し使われることになるが、マスクの横方向にサイズを媒体の幅と同じ大きさにすることもできる。本実施形態のように、同じマスクパターンを繰り返し用いることにより、マスクを記憶するレジスタの容量を小さくすることができる。
本発明のインクジェット記録方法及びインクジェット記録装置においては、第1の記録ヘッドのノズルピッチが10〜50μmであることが特徴の1つである。ノズルピッチが50μm以下の場合には、吐出した着色インク液滴同士が隣り合わせで印字された場合に、ドット間距離が短いために隣接するドット同士によるブロンジング等の問題が生じやすく、本発明を適用する効果が大きい。これは、記録媒体上でのドット径は、通常吐出に用いるノズル径の2倍程度に拡大すること、及びノズルからの吐出角度ムラにより、媒体上でのドット着弾位置が、本来着弾する位置からずれるためである。
また、ノズルピッチが50μm以下と短くすることにより、1ヘッドあたり500ノズルを超えるような多ノズルを作製した場合でも、全体のヘッド長さを短く保つことができる。これにより、記録媒体表面と記録ヘッド面との傾きによる、ヘッド長さ方向におけるノズルからの着色インク液滴の飛翔距離の変化に起因する媒体上での着弾位置ずれを抑制でき、高い印字精度を保つことができる。また、ノズルピッチを10μm以上とすることにより、製造適性上の障害を抑制でき、その結果、着弾位置ズレを抑制でき、ノズル長さ方向のドット間隔が短くなることによるドットの重なりを生じにくくでき、ブロンジング等の問題を抑制することができる。
ここでいうノズルピッチとは、略一列に配設されたノズル群のノズル相互の離間距離のことである。図3のように、2列のノズル群を半ピッチずらして配設する場合、A列とB列で媒体上の副走査方向に隣接したドットを形成する際には一定の時間差が生じる。A列とB列の距離が比較的長い場合は、先に付着したドットが媒体に吸収されてから次のドットが付着するため、インクの凝集によるブロンジングは起きにくい。このようにA列とB列の距離が比較的長い場合には、ノズルピッチは、A列、B列それぞれのピッチとする。一方、距離が短い場合は、ノズルピッチは、A列とB列の隣接するノズル間の距離とし、通常はA列、B列各々のピッチの半分となる。
そこで、本発明においては、複数列(N1,N2,・・・Nnのn列)のノズル群の最も離間しているノズル列の距離(N1とNnとの距離、すなわち、3列なら、1列目と3列目との距離)が、列間距離4mm以下の場合には、凝集に関する影響を考慮することが好ましいため、ノズルピッチを、各列のピッチの1/nとし、ノズル列の距離が4mmより大きい場合には、ノズルピッチを各列ぞれぞれのピッチとする。
本発明のインクジェット記録方法においては、間引きパターンによる印字許容率が15〜35%であることが好ましい。ここで、本発明において、印字許容率とは、間引きパターンを用いる場合には、パターン内の全ドット数に対する1回の主走査でインクの吐出が許容されるドット数の割合である。
なお、一画像内で印字許容率の異なる複数の間引きパターンを用いて印字する場合には、印字後の画像の画質は、最も印字許容率の高い間引きパターンに起因する割合が高い。そのため、本発明においては、一画像内で印字許容率の異なる複数の間引きパターンを用いる場合には、一画像内で使用する間引きパターンのうち、最も許容率の高い間引きパターンの許容率を印字許容率とする。
間引きパターンによる印字許容率を15%以上とすることにより、吐出したインク液滴同士が隣り合わせで印字される確率が高くなるので、本発明のようなインク,及び媒体の特性や記録方法を適用する効果が大きく、本発明を適用することにより、ブロンジング等の少ない高画質な画像を得ることができる。一方35%以下とすることにより、レッドやブルー、暗いグレーなど、付着させる液量が多い部分で高画質な画像を得ることができる。
また、本発明のインクジェット記録方法においては、記録ヘッドから吐出される着色インクにより形成されるドット径が、媒体上で10〜50μmである。着色インクにより形成されるドット径を10μm以上とすることにより、一定以上の印字効率を維持することができ、かつインク液滴サイズを正確に制御することができる。また、50μm以下とすることにより、隣り合わせで印字されたインク液滴同士によるブロンジングを抑制でき、高精細の画像を得ることができる。
本発明においては、イエロー、マゼンタ、シアン及びブラックの各色インクと共に、少なくとも1色の特色インクを併せて用いる。ここで、特色インクとは、基本色(シアン、マゼンタおよびイエロー)のうちの1色と該基本色のうちの他の1色との間の色相を有するインクであり、例えば、レッド、グリーン、バイオレット、オレンジ、ブルー等のインクを意味する。イエロー、マゼンタ、シアン及びブラックの各色インクと共に特色インクを用いることにより、吐出するインク量を低減することができ、その結果、着弾したインク液滴中での顔料粒子の凝集を防止でき、光沢度の低下やブロンジングあるいは色濁りが抑制された、高品位で高精細なカラー画像を実現することができる。
なお、このような特色を用いる場合は、通常のCMYKインクによる印刷に比べてインク種類が増えるため、入力画像データ(RGBやCMYKなど)を各インク色に分解する方法は、一般論としては確立されておらず、用いるインクに応じたノウハウが必要とされる。これに関しては、本出願人による特開2000−32284号公報に開示されている技術等を用いれば、使用する特色に合わせた色分解を行うことができる。この方法によれば、特色インクによる拡大された色域を最大限有効に用いることができ、色の連続性も測色的に確保できる。
これ以外にも、特許2711081号記載のような方法でも特色版データを生成することができる。この方法によれば、シアンとマゼンタのデータ値からブルーインク用のデータを生成し、これに応じてシアン、マゼンタデータを削減して総インク量を減らしたり、ハイライト部分では特色を使わず淡色のシアンとマゼンタを使ってざらつきを低減するなど、インク量制御が容易に行える。
次いで、本発明に係る着色インクについて説明する。
本発明に係る着色インクは、顔料、高沸点有機溶剤及び水を含有することを1つの特徴とし、更に、表面張力が30〜50mN/mであること、顔料が高分子分散剤により分散されていることが好ましい。
本発明で用いることのできる顔料として、公知の有色有機あるいは有色無機顔料を用いることができる。例えば、アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料等のアゾ顔料や、フタロシアニン顔料、ペリレン及びペリレン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサンジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料等の多環式顔料や、塩基性染料型レーキ、酸性染料型レーキ等の染料レーキや、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、昼光蛍光顔料等の有機顔料、カーボンブラック等の無機顔料が挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
具体的な有機顔料を以下に例示する。
マゼンタ用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド139、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド202,C.I.ピグメントレッド222、C.I.ピグメントバイオレット19等が挙げられる。
レッド用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド17,C.I.ピグメントレッド49:2、C.I.ピグメントレッド112、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド188、C.I.ピグメントレッド255、C.I.ピグメントレッド264等が挙げられる。
イエロー用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントイエロー138等が挙げられる。
オレンジ用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントオレンジ36,C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントオレンジ61等が挙げられる。
シアン用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー16等が挙げられる。
グリーン用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントグリーン7、C.I.ピグメントグリーン36等が挙げられる。
ブルー用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントバイオレット23等が挙げられる。
また、ブラック用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブラック1、C.I.ピグメントブラック6、C.I.ピグメントブラック7等が挙げられる。
顔料の分散方法としては、例えば、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル、ペイントシェーカー等の各種分散機を用いることができる。また、顔料分散体の粗粒分を除去する目的で、遠心分離装置を使用すること、フィルターを使用することも好ましい。
本発明に係るインクにおいては、顔料の分散に高分子分散剤を用いることが好ましい。本発明に用いることができる高分子分散剤としては、特に制限はなく、水溶性樹脂または非水溶性樹脂が用いられる。これらの高分子としては、例えば、スチレン、スチレン誘導体、ビニルナフタレン誘導体、アクリル酸、アクリル酸誘導体、メタクリル酸、メタクリル酸誘導体、マレイン酸、マレイン酸誘導体、イタコン酸、イタコン酸誘導体、フマル酸、フマル酸誘導体から選ばれた単一の単量体からなる重合体、あるいは2種以上の単量体からなる共重合体及びこれらの塩を挙げることができる。またポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、セルロース誘導体、ゼラチン、ポリエチレングリコールなどの水溶性高分子も用いることができる。
これら重合体としては、親水性部分と疎水性部分とを併せ持つことが好ましい。親水性部分はインクの主成分である水中で分散を安定化させる働きを有し、疎水性部分は顔料表面への吸着を強める働きを有する。中でも分子構造設計の容易性、分散剤としての性能を得やすい等の特徴から、アクリル系高分子分散剤が好ましく用いられる。アクリル系高分子分散剤とは、少なくともアクリル系単量体を30モル%以上含有する高分子分散剤を言う。
そのようなアクリル系高分子分散剤としては、以下に示す疎水性単量体及び親水性単量体からなる重合体、あるいは2種以上の単量体からなる共重合体及びこれらの塩が好ましい。疎水性単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、メチルメタクリレート(MMA)、エチルメタクリレート(EMA)、プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート(BMAまたはNBMA)、ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート(EHMA)、オクチルメタクリレート、ラウリルメタクリレート(LMA)、ステアリルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ヒドロキシルエチルメタクリレート(HEMA)、ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−エトキシエチルメタクリレート、メタクリロニトリル、2−トリメチルシロキシエチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート(GMA)、p−トリルメタクリレート、ソルビルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、フェニルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、アクリロニトリル、2−トリメチルシロキシエチルアクリレート、グリシジルアクリレート、p−トリルアクリレート、ソルビルアクリレート、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート、2−フェニルエチルメタクリレート等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
疎水性単量体としては、スチレン、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、2−フェニルエチルメタクリレートまたはベンジルアクリレートが特に好ましい。
また、親水性単量体としては、例えば、メタクリル酸(MAA)、アクリル酸、マレイン酸、ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)、ジエチルアミノエチルメタクリレート、第3−ブチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、メタクリルアミド、アクリルアミド、ジメチルアクリルアミド等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
親水性単量体としては、好ましくはメタクリル酸、アクリル酸またはジメチルアミノエチルメタクリレートが好ましい。
酸を含有する高分子は、不飽和酸を直接製造されるか、または、重合後除去できるブロッキング基を有するブロックされた単量体から製造される。ブロッキング基の除去後にアクリル酸またはメタクリル酸を生ずるブロックされた単量体の例としては、トリメチルシリルメタクリレート(TMS−MAA)、トリメチルシリルアクリレート、1−ブトキシエチルメタクリレート、1−エトキシエチルメタクリレート、1−ブトキシエチルアクリレート、1−エトキシエチルアクリレート、2−テトラヒドロピラニルアクリレート、2−テトラヒドロピラニルメタクリレート等が挙げられる。
これら重合体の構造としては、ランダム重合体あるいはランダム共重合体、ブロック共重合体、枝分かれした重合体あるいは共重合体、グラフト重合体あるいは共重合体が挙げられる。中でもブロック共重合体や、枝分かれした共重合体は親水性部分と疎水性部分の設計・制御が容易であることから、本発明の目的に対しては好ましい。
ブロック重合体は、AB、BAB及びABC型構造等(ここで、A、B、Cは互いに構造の異なる高分子ブロックを模式的に示しているものである)が挙げられるが、ブロック部が存在していれば別に構造の制約はない。特に、疎水性のブロックと親水性のブロックとを有し、また、分散安定性に貢献する均衡のとれたブロックサイズを有するブロック重合体が好ましい。官能基を疎水性ブロック(着色剤が結合するブロック)に組み込むことができ、それによって分散安定性を改善するために分散剤と着色剤との間の特異的相互作用をより強化される。
これらの重合体は従来公知の方法で合成することができ、例えば、米国特許5,085,698号、同5,221,334号、同5,272,201号、同5,519,085号、同6,117,921号の各明細書、特開平10−279873号、同11−269418号、特開2001−115065号、同2001−139849号、同2001−247796号、同2003−260348号の各公報、特に実施例において開示されている方法により合成することができる。
ブロック共重合体に用いることができる疎水性単量体としては、例えば、前記アクリル系高分子分散剤に用いることのできる疎水性単量体と同様の単量体を挙げることができる。
疎水性モノマー単量体としては、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、2−フェニルエチルメタクリレートまたはベンジルアクリレートが特に好ましい。疎水性高分子ブロックとしては上記単一の単量体からなる重合体、あるいは2種以上の単量体からなる共重合体ブロックが好ましい。
また、ブロック共重合体に用いることができる親水性モノマー単量体としては、例えば、前記アクリル系高分子分散剤に用いることのできる親水性単量体と同様の単量体を挙げることができる。
親水性モノマー単量体としては、好ましくはメタクリル酸、アクリル酸またはジメチルアミノエチルメタクリレートであり、親水性ポリマー高分子ブロックとしては上記単量体の単一の単量体からなる重合体、あるいは2種以上の単量体からなる共重合体ホモポリマー及びコポリマーが好ましい。
酸を含有する高分子は、不飽和酸を直接製造されるか、または、重合後除去できるブロッキング基を有するブロックされた単量体から製造される。ブロッキング基の除去後にアクリル酸またはメタクリル酸を生ずるブロックされた単量体の例としては、トリメチルシリルメタクリレート(TMS−MAA)、トリメチルシリルアクリレート、1−ブトキシエチルメタクリレート、1−エトキシエチルメタクリレート、1−ブトキシエチルアクリレート、1−エトキシエチルアクリレート、2−テトラヒドロピラニルアクリレート、2−テトラヒドロピラニルメタクリレート等が挙げられる。
枝分かれした重合体あるいは共重合体、及びグラフト重合体あるいは共重合体に用いることのできる単量体としては、上記ブロック共重合体に用いることのできる単量体として挙げられたものを用いることができる。また片末端に重合性官能基を有するマクロマー、例えば、シリコーンマクロマー、スチレン系マクロマー、ポリエステル系マクロマー、ポリウレタン系マクロマー、ポリアルキルエーテルマクロマーを用いることで容易に枝分かれした重合体あるいは共重合体、及びグラフト重合体あるいは共重合体を合成することができる。上記マクロマーの例としては、例えば東亞合成製のスチレンマクロマーAS−6及びAN−6、チッソ製シリコーンマクロマーFM−0711及びFM−0721、ポリエチレングリコールアクリレート及びポリエチレングリコールメタクリレート等が挙げられる。
これらの高分子は重量平均分子量が1,000〜30,000の範囲のものが好ましく、1,500〜15,000の範囲のものがさらに好ましい。また酸価としては10〜500の範囲のものが好ましく、50〜250の範囲のものがさらに好ましい。
本発明に係るインクにおいては、上記高分子分散剤と共に、公知の顔料分散剤、例えば、高級脂肪酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルエステル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、スルホコハク酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、グリセリンエステル、ソルビタンエステル、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、アミンオキシド等の活性剤等の併用を妨げるものではない。
本発明に係る水性インクにおいては、顔料分散体の体積平均粒径としては、20〜200nmであることが、好ましい色調、高い濃度あるいは良好な光沢が得られる観点から好ましく、更に40〜140nmであることが、加えて耐光性が向上する観点から好ましい。
本発明において、顔料分散体の体積平均粒径は、光散乱法、電気泳動法、レーザードップラー法等を用いた市販の粒径測定機器により求めることができ、具体的粒径測定装置としては、例えば、マルバーン製ゼータサイザー1000HSを挙げることができる。
本発明で用いることのできる水溶性有機溶媒としては、具体的にはアルコール類(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、セカンダリーブタノール、ターシャリーブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール等)、多価アルコール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール等)、多価アルコールエーテル類(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル等)、アミン類(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モルホリン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ポリエチレンイミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、テトラメチルプロピレンジアミン等)、アミド類(例えば、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等)、複素環類(例えば、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−シクロヘキシル−2−ピロリドン、2−オキサゾリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等)、スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシド等)、スルホン類(例えば、スルホラン等)、スルホン酸塩類(例えば1−ブタンスルホン酸ナトリウム塩等)、アセトニトリル、アセトン等が挙げられる。
また、本発明に係るインクには、尿素または尿素誘導体を含有することが好ましい。本発明に係るインクに尿素または尿素誘導体を含有させることにより、記録媒体上に着弾したインク液滴における顔料粒子の凝集を防止することができ、その結果、光沢度や質感を改良することができ好ましい。この尿素または尿素誘導体は、水素結合などの相互作用により目的とする効果を発現するため、その相互作用が適度な強さであることが好ましい。そのような化合物としては、尿素、チオ尿素、および低級アルキル基が置換した尿素誘導体(例えば、メチル尿素、ジメチル尿素、ブチル尿素、エチレン尿素、フェニル尿素、等)が好ましく、尿素およびエチレン尿素が特に好ましい。
本発明に係る着色インクにおいて、尿素または尿素誘導体の含有量は1〜20質量%であることが、出射安定性が良好で、かつ高濃度で好ましい光沢を有する画像を得ることができる観点から好ましい。
本発明に係るインクのpHは、7.0以上であることが好ましく、より好ましくは8.0〜10.0であり、上記のpHとすることにより、出射安定性が良好で、かつ高濃度で好ましい光沢を有する画像を得ることができる観点から好ましい。本発明に係るインクで用いられるpH調整剤としては、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の各種有機アミン、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸物等の無機アルカリ剤、有機酸や、鉱酸が挙げられる。
また、本発明に係るインクの表面張力は、30〜50mN/mであることが好ましく、インクの表面張力を30mN/m以上とすることにより、顔料粒子同士による凝集をを抑制できるので、ブロンジングの発生を抑制でき、光沢および耐擦過性を向上することができる。また、インクの表面張力を50mN/m以下とすることにより、記録媒体上に着弾したインク液滴が長い間留まることによる色濁りを抑制し、高精細な画像を得ることができる。
本発明で規定する表面張力は、例えば、前述の各種水溶性有機溶媒及び後述の各種界面活性剤を用いて、種類及び添加量を適宜調整することにより、所望の表面張力に調整することができる
また、表面張力の測定方法については、一般的な界面化学、コロイド化学の参考書等において述べられているが、例えば、新実験化学講座第18巻(界面とコロイド)、日本化学会編、丸善株式会社発行:P.68〜117を参照することができ、具体的には、輪環法(デュヌーイ法)、垂直板法(ウィルヘルミー法)を用いて求めることができる。
上記表面張力を達成する手段の1つとして、各種の界面活性剤を用いることができる。本発明で用いることのできる各界面活性剤として、特に制限はないが、例えば、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、脂肪酸塩類等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、アセチレングリコール類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロック共重合体類等のノニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩類、第四級アンモニウム塩類等のカチオン性界面活性剤が挙げられる。特にアニオン性界面活性剤及びノニオン性界面活性剤を好ましく用いることができる。
本発明においては、界面活性剤として、アセチレン系界面活性剤を用いることが、出射安定性が良好で、かつ高濃度で好ましい光沢を有し、均一性にすぐれた画像を得ることができる観点から好ましい。
アセチレン系界面活性剤であれば特に制限はないが、例えば、アセチレングリコール類、アセチレンアルコール類等が挙げられ、さらに好ましくは、アセチレン基とアルキレンオキシド鎖とを有する界面活性剤であり、例えば、サーフィノール465(日信化学工業社製)を挙げることができる。
本発明に係るインクでは、上記説明した以外に、必要に応じて、出射安定性、プリントヘッドやインクカートリッジ適合性、保存安定性、画像保存性、その他の諸性能向上の目的に応じて、公知の各種添加剤、例えば、粘度調整剤、比抵抗調整剤、皮膜形成剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、退色防止剤、防ばい剤、防錆剤等を適宜選択して用いることができ、例えば、流動パラフィン、ジオクチルフタレート、トリクレジルホスフェート、シリコンオイル等の油滴微粒子、特開昭57−74193号、同57−87988号及び同62−261476号に記載の紫外線吸収剤、特開昭57−74192号、同57−87989号、同60−72785号、同61−146591号、特開平1−95091号及び同3−13376号等に記載されている退色防止剤、特開昭59−42993号、同59−52689号、同62−280069号、同61−242871号及び特開平4−219266号等に記載されている蛍光増白剤等を挙げることができる。
次いで、本発明に係る記録媒体について説明する。
一般に、インク吸収層としては、大きく別けて膨潤型と空隙型がある。膨潤型としては、水溶性バインダー、例えば、ゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド等を単独もしくは併用して塗布し、これをインク吸収層としたものであるが、本発明においては、連続高速プリントに適応するため、記録媒体のインク吸収速度が速い方が適しており、この点から、空隙型のインク吸収層を有するインクジェット記録媒体を用いる。
本発明に係る空隙型のインク吸収層(空隙層ともいう)を有する記録媒体においては、ブリストウ法による吸収時間0.04秒における転移量が10ml/m2以上であることが特徴の1つであり、好ましくは10ml/m2以上、25ml/m2以下である。転移量が10ml/m2未満であると、記録媒体のインク吸収速度が低下し、吐出したインク液滴同士が隣り合わせで印字した際に色濁りを引き起こし、高精細な画像を得ることができなくなる。
本発明に係る記録媒体において、上記で規定した転移量を達成させる方法として、特に制限はなく、空隙層の膜厚、空隙層を構成する無機微粒子(F)の平均粒子径、親水性バインダー(B)の種類、無機微粒子(F)と親水性バインダー(B)との比率(F/B)、用いる支持体の種類等を適宜調整することにより達成することができる。
本発明でいうブリストウ法とは、短時間での紙及び板紙の液体吸収挙動を測定する方法であり、詳しくは、J.TAPPI紙パルプ試験方法No.51−87紙又は板紙の液体吸収性試験方法(ブリストウ法)に準じて測定し、吸収時間0.04秒における転移量(ml/m2)で表される。なお、上記の測定方法では、測定に純水(イオン交換水)が使用されているが、測定面積の判別を容易にするために、本発明においては、C.I.アシッドレッド52の2%水溶性を用いて測定する。
具体的な測定方法の一例を、以下に説明する。
転移量の測定法としては、記録媒体を25℃、50%RHの雰囲気下で12時間以上放置した後、例えば、熊谷理機工業株式会社製の液体動的吸収性試験機であるBristow試験機II型(加圧式)を用いて測定する。測定には測定精度を高めるため上述の通りC.I.アシッドレッド52の2%水溶性を用い、規定の接触時間後に記録媒体上の染色された部分の面積を測定することにより、転移量を求めることができる。
以下、本発明に係るインクジェット記録媒体の各構成要素の詳細について説明する。
従来より、皮膜中に空隙を形成する方法は種々知られており、例えば、二種以上の高分子を含有する均一な塗布液を支持体上に塗布し、乾燥過程でこれらの高分子を互いに相分離させて空隙を形成する方法、固体微粒子及び親水性または疎水性樹脂を含有する塗布液を支持体上に塗布し、乾燥後に、インクジェット記録媒体を水或いは適当な有機溶媒を含有する液に浸漬し、固体微粒子を溶解させて空隙を作製する方法、皮膜形成時に発泡する性質を有する化合物を含有する塗布液を塗布後、乾燥過程でこの化合物を発泡させて皮膜中に空隙を形成する方法、多孔質固体微粒子と親水性バインダーを含有する塗布液を支持体上に塗布し、多孔質微粒子中や微粒子間に空隙を形成する方法、親水性バインダーに対して、概ね等量以上の容積を有する固体微粒子及びまたは微粒子油滴と親水性バインダーを含有する塗布液を支持体上に塗布し、固体微粒子の間に空隙を形成する方法等が知られている。
本発明に係る空隙層とは、主に無機微粒子と少量の親水性バインダーとから形成される空隙率が25〜75%のインク受容層を指す。
本発明においては、空隙層に、平均粒子径が15〜100nmの無機微粒子を含有させることによって形成されることが特徴であり、好ましくは平均粒子径が20〜80nmである。平均粒子径を100nmを超えると、塗膜の表面光沢の劣化を生じる。また、平均粒子径が15nm未満では、インク吸収速度を十分に大きくすることが困難となる。
上記の目的で使用される無機微粒子としては、例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、クレー、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、ハイドロタルサイト、珪酸アルミニウム、ケイソウ土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、コロイダルアルミナ、擬ベーマイト、水酸化アルミニウム、リトポン、ゼオライト、水酸化マグネシウム等の白色無機顔料等を挙げることができる。
本発明における無機微粒子の平均粒子径は、記録媒体の空隙層の断面や表面を電子顕微鏡で観察し、1,000個の任意の粒子の粒径を測定し、その単純平均値(個数平均)として求められる。ここで個々の粒子の粒径は、その投影面積に等しい円を仮定したときの直径で表したものである。無機微粒子としては、シリカまたはアルミナを用いることが好ましい。
本発明で用いることのできるシリカとしては、通常の湿式法で合成されたシリカ、コロイダルシリカ或いは気相法で合成されたシリカ等が好ましく用いられるが、本発明において特に好ましく用いられる微粒子シリカとしては、コロイダルシリカまたは気相法で合成された微粒子シリカが好ましく、中でも気相法により合成された微粒子シリカは、親水性バインダーと共存させることでいわゆる軟凝集構造を形成し、高い空隙率を与える特徴を有する。さらに色材を固定化する目的で用いられるカチオン性高分子に添加したときに、粗大凝集体が形成されにくいので好ましい。
本発明に用いることのできるアルミナまたはアルミナ水和物は、結晶性であっても非晶質であってもよく、また不定形粒子、球状粒子、針状粒子など任意の形状のものを使用することができる。中でも特に平均アスペクト比が1〜4の板状の形状を有するアルミナ水和物が好ましい。アルミナ水和物には繊維状の形状を有するものと板状の形状を有するものがあるが、繊維状のアルミナ水和物を用いた場合、塗布時に基材表面に対して平行に配向する傾向があるため、形成される細孔が小さくなってしまう。これに対して板状のアルミナ水和物の場合、塗布によりある方向に配向する傾向は小さく、比較的大きな空隙率を得ることができる。
本発明に係る空隙層で用いることのできる親水性バインダーとしては、例えば、ポリビニルアルコール、ゼラチン、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリウレタン、デキストラン、デキストリン、カラーギーナン(κ、ι、λ等)、寒天、プルラン、水溶性ポリビニルブチラール、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。これらの水溶性バインダーは、二種以上併用することも可能であるが、バインダーの吸湿特性が比較的小さく、記録媒体のカールがより小さい観点、及び少量の使用で無機微粒子のバインダー能力が高くひび割れや膜付き性が優れている観点から、ポリビニルアルコールまたはその誘導体であることが特に好ましい。
本発明に好ましく用いられるポリビニルアルコールとしては、ポリ酢酸ビニルを加水分解して得られる通常のポリビニルアルコールの他に、末端をカチオン変性したポリビニルアルコールやアニオン性基を有するアニオン変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコールも含まれる。
酢酸ビニルを加水分解して得られるポリビニルアルコールは、平均重合度が300以上のものが好ましく用いられ、特に平均重合度が1,000〜5,000のものが好ましく用いられ、ケン化度は70〜100%のものが好ましく、80〜99.8%のものが特に好ましい。
カチオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、特開昭61−10483号公報に記載されるような、第1〜3級アミノ基や第4級アミノ基を上記ポリビニルアルコールの主鎖または側鎖中に有するポリビニルアルコールであり、これらはカチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体と酢酸ビニルとの共重合体をケン化することにより得られる。
カチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体としては、例えば、トリメチル−(2−アクリルアミド−2,2−ジメチルエチル)アンモニウムクロライド、トリメチル−(3−アクリルアミド−3,3−ジメチルプロピル)アンモニウムクロライド、N−ビニルイミダゾール、N−メチルビニルイミダゾール、N−(3−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド、ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、トリメチル−(3−メタクリルアミドプロピル)アンモニウムクロライド等が挙げられる。
カチオン変性ポリビニルアルコールのカチオン変性基含有単量体の比率は、酢酸ビニルに対して0.1〜10モル%、好ましくは0.2〜5モル%である。
アニオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、特開平1−206088号公報に記載されているアニオン性基を有するポリビニルアルコール、特開昭61−237681号公報及び同63−307979号公報に記載されているビニルアルコールと水溶性基を有するビニル化合物との共重合体、及び特開平7−285265号公報に記載されている水溶性基を有する変性ポリビニルアルコールが挙げられる。
また、ノニオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、特開平7−9758号公報に記載されているポリアルキレンオキサイド基をビニルアルコールの一部に付加したポリビニルアルコール誘導体、特開平8−25795号公報に記載されている疎水性基を有するビニル化合物とビニルアルコールとのブロック共重合体等が挙げられる。
ポリビニルアルコールは、重合度や変性の種類の違いなど、2種類以上を併用することもできる。特に、重合度が2,000以上のポリビニルアルコールを使用する場合には、予め無機微粒子に対して0.05〜10質量%、好ましくは0.1〜5質量%添加してから、重合度が2,000以上のポリビニルアルコールを添加すると、著しい増粘が無く好ましい。
空隙層の親水性バインダーに対する無機微粒子の比率は、質量比で2〜20であることが好ましい。質量比が2倍以上であれば、充分な空隙率の多孔質膜が得られ、充分な空隙容量を得やすくなり、維持できる親水性バインダーによるインクジェット記録時の膨潤によって空隙を塞ぐ状況を招かず、高インク吸収速度を維持できる要因となる。一方、この比率が20倍以下であれば、空隙層を厚膜で塗布した際、ひび割れが生じにくくなる。特に好ましい親水性バインダーに対する無機微粒子の比率は2.5〜12倍、最も好ましくは3〜10倍である。
空隙層において、空隙の総量(空隙容量)は、記録媒体1m2当り16ml以上であることが好ましい。空隙容量を16ml/m2以上とすることにより、インク量が多くなってもインク吸収性を良好とすることができるので、画質を向上させ、乾燥性の低下を抑制することができる。
一方、空隙容量の上限は、25ml/m2以下とすることが好ましい。空隙が多いほど吸収速度、吸収容量は増大するが、反面、外部からの圧力に対し脆くなる。そのため、膜厚を大きくしようとすると、製造時にひび割れを生じやすくなってしまう難点を有する。膜厚はそのままでも空隙率を大きくすることで、吸収速度、吸収容量を増大することも可能ではあるが、同様にひび割れに対し脆弱となってしまう。それらの難点を克服するための様々な研究がなされているが、現状では単位面積当たりの吸収容量が25ml/m2を超える様な膜厚あるいは空隙率にすると、製造時に微小なひび割れの発生が激しく、結果的に高品位な画像を形成することができなくなってしまう。そのため、空隙層を有する記録媒体においては、単位面積当たりの吸収容量を25ml/m2を超える様な膜厚あるいは空隙率となるように設計及び製造することが好ましい。
本発明において空隙容量は、ブリストウ法によって求められる飽和吸水量を指す。ブリストウ法により求められた転移量を、吸収時間の平方根に対してプロットすると、ある一定の傾きを持つ線が得られる。これは記録媒体の吸収時間に対する吸収量変化を示すものであり、空隙容量一杯にインク(ここではC.I.アシッドレッド52の2%水溶液を言う)を吸収すると余地が無くなるため、傾きは0となる。この時の吸水量を飽和吸水量とし、空隙容量を表す値と考える。本発明で好ましく用いられる吸水性の支持体を有する記録媒体の場合、インク吸収層によるインク吸収に加え支持体の吸収を示す場合もある。本発明で用いられる記録媒体においてはインク吸収層のインク吸収速度は支持体のそれより圧倒的に速いため、例え支持体の吸収が測定されたとしても二段の傾きを有する曲線となり、両者の判別は容易である。
本発明において、空隙層とは、空隙率が25〜75%である層をいい、空隙率としては30〜70%であることが好ましい。空隙率が25%以上であれば、不必要に膜厚を厚くさせることなく所望のインク吸収速度を達成することができ、また75%以下であれば、過度に速いインク吸収速度とはならず、加えて塗布、乾燥工程での故障(ひび)を防止でき、高精細の画像を安定して得ることができる。
本発明でいう空隙率とは、空隙層の体積における空隙の総体積の比率を指す。空隙の総体積は上述のブリストウ法により求めた空隙容量をそのまま用いることができる。また空隙層の体積は、乾燥膜厚を測定することで、記録媒体1m2当りの体積として求めることができる。目的とする空隙率は、両者の体積の比として計算で求めることができる。また、空隙の総体積は、ブリストウ測定による飽和転移量、吸水量測定などによって簡易に求められる。
上記空隙層には、無機微粒子やバインダーのほかに種々の添加剤用いることができるが中でも、カチオン性高分子、硬化剤、尿素またはその誘導体は、滲み耐性あるいはブロンジング耐性、耐擦過性を改良する点で重要な役割を果たす。
カチオン性高分子の例としては、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ジシアンジアミドポリアルキレンポリアミン縮合物、ポリアルキレンポリアミンジシアンジアミドアンモニウム塩縮合物、ジシアンジアミドホルマリン縮合物、エピクロルヒドリン・ジアルキルアミン付加重合物、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド重合物、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド・SO2共重合物、ポリビニルイミダゾール、ビニルピロリドン・ビニルイミダゾール共重合物、ポリビニルピリジン、ポリアミジン、キトサン、カチオン化澱粉、ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド重合物、(2−メタクロイルオキシエチル)トリメチルアンモニウムクロライド重合物、ジメチルアミノエチルメタクリレート重合物などが挙げられる。
また、化学工業時報平成10年8月15,25日に述べられるカチオン性高分子、三洋化成工業株式会社発行「高分子薬剤入門」に述べられる高分子染料固着剤が例として挙げられる。
本発明に係る記録媒体は、空隙層を形成する水溶性バインダーの硬化剤を添加することが好ましい。
本発明で空隙層を形成する水溶性バインダーの硬膜のために用いることのできる硬化剤としては、水溶性バインダーと硬化反応を起こすものであれば特に制限はないが、ホウ酸及びその塩が好ましいが、その他にも公知のものが使用でき、一般的には水溶性バインダーと反応し得る基を有する化合物あるいは水溶性バインダーが有する異なる基同士の反応を促進するような化合物であり、水溶性バインダーの種類に応じて適宜選択して用いられる。硬化剤の具体例としては、例えば、エポキシ系硬化剤(ジグリシジルエチルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ジグリシジルシクロヘキサン、N,N−ジグリシジル−4−グリシジルオキシアニリン、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル等)、アルデヒド系硬化剤(ホルムアルデヒド、グリオキザール等)、活性ハロゲン系硬化剤(2,4−ジクロロ−4−ヒドロキシ−1,3,5−s−トリアジン等)、活性ビニル系化合物(1,3,5−トリスアクリロイル−ヘキサヒドロ−s−トリアジン、ビスビニルスルホニルメチルエーテル等)、アルミニウム明礬等が挙げられる。
ホウ酸またはその塩とは、硼素原子を中心原子とする酸素酸及びその塩のことをいい、具体的には、オルトホウ酸、二ホウ酸、メタホウ酸、四ホウ酸、五ホウ酸及び八ホウ酸及びそれらの塩が挙げられる。
硬化剤としてのホウ素原子を有するホウ酸及びその塩は、単独の水溶液でも、また、2種以上を混合して使用しても良い。特に好ましいのはホウ酸とホウ砂の混合水溶液である。ホウ酸とホウ砂の水溶液は、それぞれ比較的希薄水溶液でしか添加することが出来ないが両者を混合することで濃厚な水溶液にすることが出来、塗布液を濃縮化する事ができる。また、添加する水溶液のpHを比較的自由にコントロールすることができる利点がある。上記硬化剤の総使用量は、上記水溶性バインダー1g当たり1〜600mgが好ましい。
本発明に係る記録媒体には、多価金属イオンを含有させることができる。多価金属イオンは2価以上の金属イオンであれば特に限定されるものでは無いが、好ましい多価金属イオンとしては、アルミニウムイオン、ジルコニウムイオン、チタニウムイオン等が挙げられる。これらの多価金属イオンは、水溶性または非水溶性の塩の形態で空隙層に含有させることができる。
これらの多価金属イオンは、単独で用いても良いし、異なる2種以上を併用してもよい。多価金属イオンを含む化合物は、空隙層を形成する塗布液に添加してもよいし、あるいは空隙層を一旦塗布した後、特に空隙層を一旦塗布乾燥した後に、空隙層にオーバーコート法により供給してもよい。前者のように多価金属イオンを含む化合物をインク吸収層を形成する塗布液に添加する場合、水や有機溶媒あるいはこれらの混合溶媒に均一に溶解して添加する方法、あるいはサンドミルなどの湿式粉砕法や乳化分散などの方法により微細な粒子に分散して添加する方法を用いることができる。空隙層が複数の層から構成される場合には、1層のみ添加してもよく、また2層以上の層、あるいは全ての構成層の塗布液に添加することもできる。また、後者のように空隙層を一旦形成した後、オーバーコート法で添加する場合には、多価金属イオンを含む化合物を溶媒に均一に溶解した後、空隙層に供給するのが好ましい。
これらの多価金属イオンは、記録媒体1m2当り、概ね0.05〜20ミリモル、好ましくは0.1〜10ミリモルの範囲で用いられる。
本発明に係る空隙層中には、上記以外の各種の添加剤を添加することができる。例えば、ポリスチレン、ポリアクリル酸エステル類、ポリメタクリル酸エステル類、ポリアクリルアミド類、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、またはこれらの共重合体、尿素樹脂、またはメラミン樹脂等の有機ラテックス微粒子、カチオンまたはノニオンの各種界面活性剤、特開昭57−74193号、同57−87988号及び同62−261476号に記載の紫外線吸収剤、特開昭57−74192号、同57−87989号、同60−72785号、同61−146591号、特開平1−95091号及び同3−13376号等に記載されている退色防止剤、特開昭59−42993号、同59−52689号、同62−280069号、同61−242871号及び特開平4−219266号等に記載されている蛍光増白剤、硫酸、リン酸、クエン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム等のpH調整剤、消泡剤、防腐剤、増粘剤、帯電防止剤、マット剤等の公知の各種添加剤を含有させることもできる。
本発明に係る記録媒体の支持体としては、吸収性支持体あるいは非吸収性支持体のいずれも用いることができるが、本発明の目的効果をいかんなく発揮させる観点から、例えば、普通紙、バライタ紙、アート紙、コート紙及びキャストコート紙などの紙支持体である吸収性支持体を用いることが好ましい。
本発明の吸水性支持体としては、例えば、一般の紙、合成紙、布、木材等を有するシートや板等を挙げることができるが、特に紙は基材自身の吸水性に優れかつコスト的にも優れるために最も好ましい。以下に紙支持体について説明する。
紙支持体の原料としては、LBKP、NBKP等の化学パルプ、GP、CGP、RMP、TMP、CTMP、CMP、PGW等の機械パルプ、DIP等の古紙パルプ、等の木材パルプを主原料としたものが使用可能であるが、広葉樹パルプを使用するのが好ましい。広葉樹パルプとしてはクラフトパルプ、サルファイトパルプ、ケミサーモメカニカルパルプ、ケミメカニカルパルプ等を単独あるいは数種類併用しても良い。また、必要に応じて
木材パルプに加えてポリプロピレンなどの合成パルプあるいはナイロンやポリエステルなどの合成繊維を用いて抄紙される。
また、白色度の向上の点から、原料であるパルプに過酸化物等による漂白処理が施されるのが好ましい。漂白処理は、パルプを蒸解後、塩素処理、アルカリ処理もしくは抽出あるいは精製、次亜塩素酸塩漂白、二酸化塩素漂白、及びそれらの組み合わせ多段漂白処理、さらに必要に応じてハイドロサルファイト、水素化ホウ素ナトリウムなどによる還元漂白の後に、施されるのが好ましい。更に好ましくは、アルカリ性での過酸化物漂白処理は、パルプを蒸解後、従来公知のパルプ漂白処理後に最後のパルプ漂白処理として施されるのがよいが、アルカリ処理もしくは抽出あるいは精製を更に施してもよい。
紙支持体中には必要に応じて、サイズ剤、顔料、紙力増強剤、定着剤等、蛍光増白剤、湿潤紙力剤、カチオン化剤等の従来公知の各種添加剤を添加することができる。サイズ剤としては必要に応じて高級脂肪酸、アルキルケテンダイマー、ロジン、パラフィンワックス、アルケニルコハク酸、石油樹脂エマルジョン等のサイズ剤を添加することができる。顔料としては炭酸カルシウム、タルク、酸化チタン、尿素樹脂微粒子等が、紙力増強剤としてはスターチ、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール等が、定着剤としては硫酸バンド、カチオン性高分子電解質等が挙げられるがこれに限定されるものではない。
紙支持体は前記の木材パルプなどの繊維物質と各種添加剤を混合し、長網抄紙機、円網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機等の各種抄紙機で製造することができる。また、必要に応じて抄紙段階または抄紙後にスターチ、ポリビニルアルコール等でサイズプレス処理をしたり、各種コート処理をしたり、カレンダー処理したりすることも出来る。
紙密度は0.7〜1.2g/cm3(JIS−P−8118)が一般的である。更に原紙剛度はJIS−P−8143に規定される条件で20〜200gが好ましい。
紙のpHはJIS−P−8113で規定された熱水抽出法により測定された場合、5〜9であることが好ましい。
本発明においては、支持体とインク受容層の接着強度を大きくする等の目的で、インク受容層の塗布に先立って、支持体にコロナ放電処理や下引処理、中間層の塗設等を行うことができる。
次に、本発明のインクジェット記録媒体の製造方法について説明する。
本発明のインクジェット記録媒体の製造方法としては、インク吸収層を含む各構成層を、各々単独にあるいは同時に、公知の塗布方式から適宜選択して、支持体上に塗布、乾燥して製造することができる。塗布方式としては、例えば、ロールコーティング法、ロッドバーコーティング法、エアナイフコーティング法、スプレーコーティング法、カーテン塗布方法、あるいは米国特許第2,761,419号、同第2,761,791号に記載のホッパーを使用するスライドビード塗布方法、エクストルージョンコート法等が好ましく用いられる。
同時重層塗布を行う際の各塗布液の粘度としては、スライドビード塗布方式を用いる場合には、5〜100mPa・sの範囲が好ましく、さらに好ましくは10〜70mPa・sの範囲である。また、カーテン塗布方式を用いる場合には、5〜1200mPa・sの範囲が好ましく、さらに好ましくは25〜500mPa・sの範囲である。
また、塗布液の15℃における粘度としては、100mPa・s以上が好ましく、100〜30,000mPa・sがより好ましく、さらに好ましくは3,000〜30,000mPa・sであり、最も好ましいのは10,000〜30,000mPa・sである。
塗布及び乾燥方法としては、塗布液を30℃以上に加温して、同時重層塗布を行った後、形成した塗膜の温度を1〜15℃に一旦冷却し、10℃以上で乾燥することが好ましい。より好ましくは、乾燥条件として、湿球温度5〜50℃、膜面温度10〜50℃の範囲の条件で行うことである。また、塗布直後の冷却方式としては、形成された塗膜均一性の観点から、水平セット方式で行うことが好ましい。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1
《記録媒体の作製》
[記録媒体1の作製]
〔支持体の作製〕
木材パルプ(LBKP/NBSP=50/50)100部に対して、ポリアクリルアミドを1部、灰分(タルク)を4部、カチオン化澱粉を2部、ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂を0.5部及び種々の添加量のアルキルケテンダイマー(サイズ剤)を含有するスラリー液を調製し、長網抄紙機で坪量が170g/m2になるようにして基紙を抄造した。この基紙をカレンダー処理して、吸水性支持体である支持体1作製した。
この支持体1にコロナ放電を行った後、硬化剤を含有するゼラチン下引き層を固形分量として0.04g/m2、裏面には、平均粒径約1μmのシリカ微粒子(マット剤)と少量のカチオン性高分子(導電剤)を含有するスチレン/アクリル系エマルジョンを乾燥膜厚が約0.5μmになるように塗布した。
〔インク吸収層用塗布液の調製〕
下記の手順に従って、インク吸収層(空隙層)用塗布液を調製した。
(酸化チタン分散液の調製)
平均粒径が約0.25μmの酸化チタン20kg(石原産業製:W−10)を、pH=7.5のトリポリリン酸ナトリウムの150g、ポリビニルアルコール(クラレ株式会社製:PVA235)の500g、カチオン性ポリマー(P−1)の150g及びサンノブコ株式会社製の消泡剤SN381の10gを含有する水溶液90Lに添加し、高圧ホモジナイザー(三和工業株式会社製)で分散した後、全量を100Lに仕上げて、均一な酸化チタン分散液を得た。
Figure 2006056235
(シリカ分散液1の調製)
水 71L
ホウ酸 0.27kg
ほう砂 0.24kg
エタノール 2.2L
カチオン性高分子P−1の25%水溶液 17L
退色防止剤(AF1 *1)10%水溶液 8.5L
蛍光増白剤(*2)水溶液 0.1L
全量を純水で100Lに仕上げた。
無機微粒子として、シリカ微粒子(平均一次粒子径 約35nm)を50kg用意し、これに上記添加剤を添加した後、特開2002−47454号公報の実施例5に記載された分散方法により分散してシリカ分散液1を得た。
*1:退色防止剤(AF−1) HO−N(C24SO3Na)2
*2:チバ・スペシャリティーケミカルズ社製、UVITEX NFW LIQUID
(シリカ分散液2の調製)
上記シリカ分散液1の調製において、カチオン性ポリマー(P−1)を、カチオン性ポリマー(P−2)に変更した以外は同様にして、シリカ分散液2を調製した。
Figure 2006056235
(塗布液の調製)
第1層、第2層、第3層及び第4層の各塗布液を、以下の手順で調製した。
〈第1層用塗布液〉
シリカ分散液1の610mlに、40℃で攪拌しながら以下の添加剤を順次混合した。
ポリビニルアルコール(クラレ工業株式会社製:PVA235)の5%水溶液
220ml
ポリビニルアルコール(クラレ工業株式会社製:PVA245)の5%水溶液
80ml
酸化チタン分散液 30ml
ポリブタジエン分散液(平均粒径約0.5μm、固形分濃度40%) 15ml
界面活性剤(SF1)5%水溶液 1.5ml
純水で全量を1000mlに仕上げた。
〈第2層用塗布液〉
シリカ分散液1の630mlに、40℃で攪拌しながら以下の添加剤を順次混合した。
ポリビニルアルコール(クラレ工業株式会社製:PVA235)の5%水溶液
180ml
ポリビニルアルコール(クラレ工業株式会社製:PVA245)の5%水溶液
80ml
ポリブタジエン分散液(平均粒径約0.5μm、固形分濃度40%) 15ml
純水で全量を1000mlに仕上げた。
〈第3層用塗布液〉
シリカ分散液2の650mlに、40℃で攪拌しながら以下の添加剤を順次混合した。
ポリビニルアルコール(クラレ工業株式会社製:PVA235)の5%水溶液
180ml
ポリビニルアルコール(クラレ工業株式会社製:PVA245)の5%水溶液
80ml
純水で全量を1000mlに仕上げた。
〈第4層用塗布液〉
シリカ分散液2の650mlに、40℃で攪拌しながら以下の添加剤を順次混合した。
ポリビニルアルコール(クラレ工業株式会社製:PVA235)の5%水溶液
180ml
ポリビニルアルコール(クラレ工業株式会社製:PVA245)の5%水溶液
80ml
サポニン50%水溶液 4ml
界面活性剤(SF1)5%水溶液 6ml
純水で全量を1000mlに仕上げた。
Figure 2006056235
上記のようにして調製した各塗布液を、20μmの捕集可能なフィルターで2段ろ過した。
上記各塗布液は、いずれも40℃において30〜80mPa・s、15℃において30000〜100000mPa.sの粘度特性を示した。
(塗布)
このようにして得られた各塗布液を、上記作製した上記支持体1の表側に、第1層(35μm)、第2層(45μm)、第3層(45μm)、第4層(40μm)の順になるように各層を同時塗布した。なお、各層のかっこ内の数値は、それぞれの湿潤膜厚を示す。塗布は、各塗布液を40℃で4層式カーテンコーターを用い、塗布幅:約1.5m、塗布速度:100m/分で同時塗布を行った。
塗布直後に8℃に保持した冷却ゾーンで20秒間冷却した後、20〜30℃、相対湿度20%以下で30秒間、60℃、相対湿度20%以下で120秒間、55℃、相対湿度20%以下で60秒間、各々の乾燥風を吹き付けて乾燥した。恒率乾燥域における皮膜温度は8〜30℃であり、減率乾燥域で皮膜温度が徐々に上昇した後、23℃、相対湿度40〜60%の調湿ゾーンで調湿してロール状に巻き取って記録媒体1を得た。得られた記録媒体1は、次いでロール状のまま40℃で5日間加温保管した後、所定のサイズに断裁した。記録媒体1の空隙率は、後述の方法で測定した結果、55%であった。また、ブリストウ法による吸収時間0.04秒における転移量を後述の方法に従って求めた結果、20ml/m2であった。
[記録媒体2の作製]
上記記録媒体1の作製において、支持体1を、下記支持体2に変更し、かつ各インク吸収層のシリカ微粒子(F)とポリビニルアルコール(B)の構成比率(F/B)を適宜変更して、ブリストウ法による吸収時間0.04秒における転移量が8ml/m2である記録媒体2を作製した。
(支持体2の作製)
木材パルプ(LBKP/NBSP=50/50)100部に対して、ポリアクリルアミドを1部、灰分(タルク)を4部、カチオン化澱粉を2部、ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂を0.5部及び種々の添加量のアルキルケテンダイマー(サイズ剤)を含有するスラリー液を調製し、長網抄紙機で坪量が170g/m2になるようにして基紙を抄造した。この基紙をカレンダー処理した後、7%のアナターゼ型酸化チタン及び少量の色調調整剤を含有する密度0.92の低密度ポリエチレン樹脂を、320℃で厚さ28μmになるように溶融押し出しコーティング法で基紙の片面を被覆した。溶融押し出し塗工直後に、表面に種々の規則的な凹凸の高さを有するクーリングロールを圧着冷却させて、ポリエチレン表面に種々の微粒面型付け処理を行った。型付けの違いは、密度及び凹凸の高さを調整することで行った。
次いで、反対側の面を密度0.96の高密度ポリエチレン/密度0.92の低密度ポリエチレン=70/30の混合した溶融物を同様に溶融押し出しコーティング法で、厚さが32μmになるように被覆して、非吸水性支持体である支持体2を作製した。
この支持体2の酸化チタン含有層面側にコロナ放電を行った後、硬化剤を含有するゼラチン下引き層を固形分量として0.04g/m2、裏面には、平均粒径約1μmのシリカ微粒子(マット剤)と少量のカチオン性高分子(導電剤)を含有するスチレン/アクリル系エマルジョンを乾燥膜厚が約0.5μmになるように塗布した。
[記録媒体3の作製]
上記記録媒体2の作製において、各インク吸収層のシリカ微粒子とポリビニルアルコールの構成比率(F/B)を適宜変更して、ブリストウ法による吸収時間0.04秒における転移量が20ml/m2である記録媒体3を作製した。
[記録媒体4の作製]
上記記録媒体1の作製において、各インク吸収層のシリカ微粒子とポリビニルアルコールの構成比率(F/B)を適宜変更して、ブリストウ法による吸収時間0.04秒における転移量が11ml/m2である記録媒体4を作製した。また後述の方法により空隙率を測定したところ、35%であった。
[記録媒体5の作製]
(塗布液の調製)
アルミナ水和物(サソール製:Disperal HP18) 0.50kg
純水 10L
上記分散液に1モル/Lの塩酸を加え、pHを4に調整し、これを95℃で2時間攪拌した。次いで1モル/Lの水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを10に調整し、さらに8時間攪拌した。攪拌後、室温まで冷却し、pHを7〜8に調整し、脱塩処理を行い、さらに酢酸を添加して解膠処理した。固形分が17%となるまで濃縮した後、ポリビニルアルコール(クラレ工業株式会社製:PVA117)の9%水溶液を、アルミナとポリビニルアルコールの固形分比率が質量比で10:1となるように混合・攪拌し、塗布液を得た。
上記のようにして調製した塗布液を、20μmの捕集可能なフィルターで濾過した。この塗布液を、バライタ層を有する基材(ベック平滑度420秒、白色度89%)のバライタ層上にダイコーターにより乾燥膜厚が30g/m2となるように塗布した。このときの塗布速度は50m/分であり、150℃の温度で乾燥して、記録媒体5を作製した。
この記録媒体5におけるアルミナ粒子の平均粒子径は30nmであった。また、ブリストウ法による吸収時間0.04秒における転移量は20ml/m2であり、空隙率は55%であった。
[記録媒体6〜8の作製]
上記記録媒体1の作製において、各インク吸収層塗布液の調製に用いたシリカ微粒子(平均一次粒子径が約35nm)を、表1、表2に記載の平均粒子径からなるシリカ微粒子に変更した以外は同様にして、記録媒体6〜8を作製した。これら各記録媒体の転移量と空隙率は表1、表2に示す通りであった。
[記録媒体9の作製]
上記記録媒体1の作製において、各インク吸収層塗布液の調製に用いたホウ酸及びほう砂を除いた以外は同様にして、記録媒体9を作製した。
[記録媒体10、11の作製]
上記記録媒体1の作製において、各インク吸収層のシリカ微粒子とポリビニルアルコールの構成比率(F/B)を適宜変更して、インク吸収層の空隙率がそれぞれ25%、75%とした以外は同様にして、記録媒体10、11を作製した。これら各記録媒体の転移量は表1、表2に示す通りであった。
《インクの調製》
〔着色インクセット1の調製〕
(顔料分散液の調製)
(顔料分散液の調製)
〈イエロー顔料分散体1の調製〉
6モル/Lの塩酸溶液10gにアントラニル酸1.5gを加えた後、5℃に冷却し、亜硝酸ナトリウム1.8gを加え、攪拌した。そこに、C.I.ピグメントイエロー74の粉末を5g加え、攪拌しながら液温を80℃まで昇温し、窒素ガスの発生が無くなるまで加温を続けた後、冷却した。次いで、アセトンを加えて、顔料粒子を濾過、イオン交換水にて洗浄した後、イオン交換水を加えイオン交換、限外濾過、遠心分離の各操作を行い、イオン交換水で顔料含有量が20質量%となるように調製し、イエロー顔料分散体1を得た。
〈マゼンタ顔料分散体1の調製〉
6モル/Lの塩酸溶液10gにアントラニル酸1.5gを加えた後、5℃に冷却し、亜硝酸ナトリウム1.8gを加え、攪拌した。そこに、C.I.ピグメントレッド122の粉末を5g加え、攪拌しながら液温を80℃まで昇温し、窒素ガスの発生が無くなるまで加温を続けた後、冷却した。次いで、アセトンを加えて、顔料粒子を濾過、イオン交換水にて洗浄した後、イオン交換水を加えイオン交換、限外濾過、遠心分離の各操作を行い、イオン交換水で顔料含有量が25質量%となるように調製し、マゼンタ顔料分散体1を得た。
〈シアン顔料分散体1の調製〉
6モル/Lの塩酸溶液10gにアントラニル酸1.5gを加えた後、5℃に冷却し、亜硝酸ナトリウム1.8gを加え、攪拌した。そこに、C.I.ピグメントブルー15:3の粉末を5g加え、攪拌しながら液温を80℃まで昇温し、窒素ガスの発生が無くなるまで加温を続けた後、冷却した。次いで、アセトンを加えて、顔料粒子を濾過、イオン交換水にて洗浄した後、イオン交換水を加えイオン交換、限外濾過、遠心分離の各操作を行い、イオン交換水で顔料含有量が25質量%となるように調製し、シアン顔料分散体1を得た。
〈ブラック顔料分散体1の調製〉
6モル/Lの塩酸溶液10gにアントラニル酸1.5gを加えた後、5℃に冷却し、亜硝酸ナトリウム1.8gを加え、攪拌した。そこに、カーボンブラックの粉末を5g加え、攪拌しながら液温を80℃まで昇温し、窒素ガスの発生が無くなるまで加温を続けた後、冷却した。次いで、アセトンを加えて、顔料粒子を濾過、イオン交換水にて洗浄した後、イオン交換水を加えイオン交換、限外濾過、遠心分離の各操作を行い、イオン交換水で顔料含有量が20質量%となるように調製し、ブラック顔料分散体1を得た。
〈ブルー顔料分散体1の調製〉
6モル/Lの塩酸溶液10gにアントラニル酸1.5gを加えた後、5℃に冷却し、亜硝酸ナトリウム1.8gを加え、攪拌した。そこに、C.I.ピグメントバイオレット23の粉末を5g加え、攪拌しながら液温を80℃まで昇温し、窒素ガスの発生が無くなるまで加温を続けた後、冷却した。次いで、アセトンを加えて、顔料粒子を濾過、イオン交換水にて洗浄した後、イオン交換水を加えイオン交換、限外濾過、遠心分離の各操作を行い、イオン交換水で顔料含有量が25質量%となるように調製し、ブルー顔料分散体1を得た。
〈レッド顔料分散体1の調製〉
6モル/Lの塩酸溶液10gにアントラニル酸1.5gを加えた後、5℃に冷却し、亜硝酸ナトリウム1.8gを加え、攪拌した。そこに、C.I.ピグメントレッド177の粉末を5g加え、攪拌しながら液温を80℃まで昇温し、窒素ガスの発生が無くなるまで加温を続けた後、冷却した。次いで、アセトンを加えて、顔料粒子を濾過、イオン交換水にて洗浄した後、イオン交換水を加えイオン交換、限外濾過、遠心分離の各操作を行い、イオン交換水で顔料含有量が20質量%となるように調製し、レッド顔料分散体1を得た。
(着色インクセットの調製)
上記調製した各顔料分散体を用いて、下記の手順に従って、イエローインク1、マゼンタインク1、シアンインク1、ブラックインク1、ブルーインク1及びレッドインク1から構成される着色インクセット1を調製した。
〈イエローインク1の調製〉
イエロー顔料分散体1 15質量%
エチレングリコール 4質量%
グリセリン 3.75質量%
2−ピロリドン 5質量%
界面活性剤(サーフィノール465 日信化学工業社製) 下記必要量
イオン交換水 残分
表面張力が38mN/mとなるように界面活性剤を加え、イオン交換水で全体が100質量%となるように調製した。以上の各組成物を混合、攪拌し、1μmフィルターでろ過して、顔料インクであるイエローインク1を調製した。該インク中の顔料の平均粒径は131nmであった。
〈マゼンタインク1の調製〉
マゼンタ顔料分散体1 15質量%
グリセリン 8質量%
ジエチレングリコール 1.75質量%
2−ピロリドン 3質量%
界面活性剤(サーフィノール465 日信化学工業社製) 下記必要量
イオン交換水 残分
表面張力が38mN/mとなるように界面活性剤を加え、イオン交換水で全体が100質量%となるように調製した。以上の各組成物を混合、攪拌し、1μmフィルターでろ過して、顔料インクであるマゼンタインク1を調製した。該インク中の顔料の平均粒径は129nmであった。
〈シアンインク1の調製〉
シアン顔料分散体1 10質量%
エチレングリコール 8質量%
ジエチレングリコール 4質量%
グリセリン 5質量%
2−ピロリドン 2質量%
界面活性剤(サーフィノール465 日信化学工業社製) 下記必要量
イオン交換水 残分
表面張力が38mN/mとなるように界面活性剤を加え、イオン交換水で全体が100質量%となるように調製した。以上の各組成物を混合、攪拌し、1μmフィルターでろ過して、顔料インクであるシアンインク1を調製した。該インク中の顔料の平均粒径は104nmであった。
〈ブラックインク1の調製〉
ブラック顔料分散体1 10質量%
グリセリン 5質量%
ジエチレングリコール 7質量%
2−ピロリドン 2質量%
界面活性剤(サーフィノール465 日信化学工業社製) 下記必要量
イオン交換水 残分
表面張力が38mN/mとなるように界面活性剤を加え、イオン交換水で全体が100質量%となるように調製した。以上の各組成物を混合、攪拌し、1μmフィルターでろ過して、顔料インクであるブラックインク1を調製した。該インク中の顔料の平均粒径は98nmであった。
〈ブルーインク1の調製〉
ブルー顔料分散体1 15質量%
グリセリン 8質量%
ジエチレングリコール 1.75質量%
2−ピロリドン 3質量%
界面活性剤(サーフィノール465 日信化学工業社製) 下記必要量
イオン交換水 残分
表面張力が38mN/mとなるように界面活性剤を加え、イオン交換水で全体が100質量%となるように調製した。以上の各組成物を混合、攪拌し、1μmフィルターでろ過して、顔料インクであるブルーインク1を調製した。該インク中の顔料の平均粒径は129nmであった。
〈レッドインク1の調製〉
レッド顔料分散体1 15質量%
グリセリン 8質量%
ジエチレングリコール 1.75質量%
2−ピロリドン 3質量%
界面活性剤(サーフィノール465 日信化学工業社製) 下記必要量
イオン交換水 残分
表面張力が38mN/mとなるように界面活性剤を加え、イオン交換水で全体が100質量%となるように調製した。以上の各組成物を混合、攪拌し、1μmフィルターでろ過して、顔料インクであるレッドインク1を調製した。該インク中の顔料の平均粒径は123nmであった。
〔着色インクセット2の調製〕
上記着色インクセット1の調製において、特色インクであるブルーインク1及びレッドインク1を除いて、基本インク(イエローインク1、マゼンタインク1、シアンインク1及びブラックインク1)のみで構成し、これを着色インクセット2とした。
〔着色インクセット3の調製〕
(顔料分散液の調製)
〈グリーン顔料分散液1の調製〉
6モル/Lの塩酸溶液10gにアントラニル酸1.5gを加えた後、5℃に冷却し、亜硝酸ナトリウム1.8gを加え、攪拌した。そこに、C.I.ピグメントグリーン7の粉末を5g加え、攪拌しながら液温を80℃まで昇温し、窒素ガスの発生が無くなるまで加温を続けた後、冷却した。次いで、アセトンを加えて、顔料粒子を濾過、イオン交換水にて洗浄した後、イオン交換水を加えイオン交換、限外濾過、遠心分離の各操作を行い、イオン交換水で顔料含有量が25質量%となるように調製し、グリーン顔料分散体1を得た。
〈グリーンインク1の調製〉
グリーン顔料分散体1 15質量%
グリセリン 8質量%
ジエチレングリコール 1.75質量%
2−ピロリドン 3質量%
界面活性剤(サーフィノール465 日信化学工業社製) 下記必要量
イオン交換水 残分
表面張力が38mN/mとなるように界面活性剤を加え、イオン交換水で全体が100質量%となるように調製した。以上の各組成物を混合、攪拌し、1μmフィルターでろ過して、顔料インクであるグリーンインク1を調製した。該インク中の顔料の平均粒径は104nmであった。
(着色インクセットの調製)
上記着色インクセット1の調製において、特色インクであるレッドインク1およびブルーインク1の代わりにグリーンインク1を用いて構成し、これを着色インクセット3とした。
〔インクセット4の調製〕
(顔料分散液の調製)
〈イエロー顔料分散体2の調製〉
C.I.ピグメントイエロー74 20質量%
高分子分散剤SA−1 10質量%(固形分として)
グリセリン 15質量%
イオン交換水 55質量%
上記各添加剤を混合し、0.3mmのジルコニアビーズを体積率で60%充填した横型ビーズミル(アシザワ社製 システムゼータミニ)を用いて分散し、イエロー顔料分散体2を得た。得られたイエロー顔料の平均粒径は112nmであった。
〈マゼンタ顔料分散体2の調製〉
C.I.ピグメントレッド122 25質量%
高分子分散剤SA−2 16質量%(固形分として)
グリセリン 15質量%
イオン交換水 44質量%
上記各添加剤を混合し、0.3mmのジルコニアビーズを体積率で60%充填した横型ビーズミル(アシザワ社製 システムゼータミニ)を用いて分散し、マゼンタ顔料分散体2を得た。得られたマゼンタ顔料の平均粒径は105nmであった。
〈シアン顔料分散体2の調製〉
C.I.ピグメントブルー15:3 25質量%
高分子分散剤SA−1 13質量%(固形分として)
ジエチレングリコール 10質量%
イオン交換水 52質量%
上記各添加剤を混合し、0.3mmのジルコニアビーズを体積率で60%充填した横型ビーズミル(アシザワ社製 システムゼータミニ)を用いて分散し、シアン顔料分散体2を得た。得られたシアン顔料の平均粒径は87nmであった。
〈ブラック顔料分散体2の調製〉
カーボンブラック 20質量%
高分子分散剤SA−2 9質量%(固形分として)
グリセリン 10質量%
イオン交換水 61質量%
上記各添加剤を混合し、0.3mmのジルコニアビーズを体積率で60%充填した横型ビーズミル(アシザワ社製 システムゼータミニ)を用いて分散し、ブラック顔料分散体2を得た。得られたブラック顔料の平均粒径は75nmであった。
〈ブルー顔料分散体2の調製〉
C.I.ピグメントバイオレット23 25質量%
高分子分散剤SA−1 13質量%(固形分として)
エチレングリコール 10質量%
イオン交換水 52質量%
上記各添加剤を混合し、0.3mmのジルコニアビーズを体積率で60%充填した横型ビーズミル(アシザワ社製 システムゼータミニ)を用いて分散し、ブルー顔料分散体2を得た。得られたブルー顔料の平均粒径は107nmであった。
〈レッド顔料分散体2の調製〉
C.I.ピグメントレッド177 20質量%
高分子分散剤SA−2 16質量%(固形分として)
グリセリン 15質量%
イオン交換水 49質量%
上記各添加剤を混合し、0.3mmのジルコニアビーズを体積率で60%充填した横型ビーズミル(アシザワ社製 システムゼータミニ)を用いて分散し、レッド顔料分散体2を得た。得られたレッド顔料の平均粒径は98nmであった。
なお、上記各顔料分散体の調製に用いた各高分子分散剤は、下記の方法に従って調製した。
〔高分子分散剤の調製〕
〈高分子分散剤SA−1の調製〉
3Lの四頭フラスコにスリーワンモーター、温度計、窒素導入管、及び乾燥管をつけた滴下漏斗を装着した。これに乾燥窒素ガスを流しながら、テトラヒドロフラン(780.0g)とp−キシレン(3.6g)を導入した。攪拌しながらこれにテトラブチルアンモニウム m−ベンゾエート(1モル/L溶液:3.2ml)を加え、さらに1,1−ビス(トリメチルシロキシ)−2−メチルプロペン(144.0g)を加えた。
次に、テトラブチルアンモニウム−m−ベンゾエート(1モル/L溶液:3.2ml)を滴下漏斗より、130分間に渡って攪拌しながら滴下した。滴下後、ベンジルメタクリレート(272.6g)とトリメチルシリルメタクリレート(489.8g)の混合物を、攪拌しながら40分間に渡って滴下漏斗より滴下した。30分攪拌後、ベンジルメタクリレート(545.4g)を、攪拌しながら30分間に渡って滴下漏斗より滴下した。
そのまま240分攪拌した後、無水メタノール(216g)を加え攪拌した。滴下漏斗をリービッヒ冷却管に付け替え、容器全体を加熱し、蒸発してくる沸点55℃以下の留分(210g)を除去した。さらに上流を続け、沸点が76℃になった時点で2−プロパノール(900g)を加え、加熱・蒸留を続けた。全量で1440gの溶媒が流出するまで加熱を続け、目的とするブロック共重合体(BzMA//BzMA/MAA=5//2.5/5)の溶液1を得た。一部を乾燥し分子量と酸価を測定したところ、それぞれ1,500及び70であった。
この溶液1にN,N−ジメチルエタノールアミンを加え中和し、目的とする高分子分散剤SA−1溶液を得た。
〈高分子分散剤SA−2の調製〉
上記高分子分散剤SA−1の調製において、N,N−ジメチルエタノールアミンの代わりに、水酸化カリウムを用いて中和した以外は同様にして高分子分散剤SA−2を調製した。
(顔料インクセット4の調製)
上記着色インクセット1の調製において、イエロー顔料分散体1、マゼンタ顔料分散体1、シアン顔料分散体1、ブラック顔料分散体1、ブルー顔料分散体1、レッド顔料分散体1に代えて、上記調製したイエロー顔料分散体2、マゼンタ顔料分散体2、シアン顔料分散体2、ブラック顔料分散体2、ブルー顔料分散体2、レッド顔料分散体2を用いた以外は同様にして、着色インクセット4を調製した。
〔インクセット5の調製〕
上記インクセット4の調製において、シアンインク2を下記の手順に従って調製されるシアンインク3に変更した以外は同様にして、インクセット5を調製した。
(顔料分散液の調製)
〈シアン顔料分散体3の調製〉
C.I.ピグメントブルー15:3 26g
SA−3溶液 28g
1モル/L水酸化カリウム水溶液 13.6g
メチルエチルケトン 20g
イオン交換水 30g
上記各添加剤を混合し、三本ロールミルを用いて20回混練した。得られたペーストをイオン交換水(200g)中に添加し、十分に攪拌した後、ロータリーエバポレーターを用いて固形分量が20%となるようにメチルエチルケトン及び水を留去し、シアン顔料分散体3を得た。
なお、上記シアン顔料分散体3の調製に用いた高分子分散剤SA−3は、下記の方法に従って調製した。
〈高分子分散剤SA−3の調製〉
1Lの四頭フラスコに、スリーワンモーター、温度計、窒素導入管をつけた還流管、及び滴下漏斗を装着した。これに乾燥窒素ガスを流しながら、下記単量体混合物1を導入し、65℃に昇温した。
次に下記単量体混合物2を攪拌しながら、2.5時間かけて滴下した。さらにアゾビスジメチルバレロニトリル(0.8g)及びメチルエチルケトン(22ml)の混合溶液を0,5時間かけて滴下した。アゾビスジメチルバレロニトリル(0.8g)を添加し、さらに1時間加熱攪拌した。
反応終了後、メチルエチルケトン(450ml)を加え、固形分50%の高分子分散剤SA−4の溶液を得た。一部を乾燥し分子量と酸価を測定したところ、それぞれ15,000及び55であった。
(単量体混合物1)
スチレン 11.2g
ラウリルメタクリレート 12.0g
ポリエチレングリコールメタクリレート(共栄社化学製:ライトエステル130MA) 4.0g
スチレンマクロマー(東亞合成製:マクロモノマーAS−6) 4.0g
アクリル酸 2.8g
メルカプトエタノール 0.4g
(単量体混合物2)
スチレン 100.8g
ラウリルメタクリレート 108.0g
ヒドロキシエチルメタクリレート 60.0g
ポリエチレングリコールメタクリレート(共栄社化学製:ライトエステル130MA) 36.0g
スチレンマクロマー(東亞合成製:AS−6) 36.0g
アクリル酸 25.2g
メルカプトエタノール 3.6g
アゾビスジメチルバレロニトリル 2.4g
メチルエチルケトン 22ml
〈シアンインク3の調製〉
シアン顔料分散体3 10質量%
エチレングリコール 8質量%
ジエチレングリコール 6質量%
グリセリン 4質量%
2−ピロリドン 3質量%
界面活性剤(サーフィノール465 日信化学工業社製) 下記必要量
イオン交換水 残分
表面張力が38mN/mとなるように界面活性剤を加え、イオン交換水で全体が100質量%となるように調製した。以上の各組成物を混合、攪拌し、1μmフィルターでろ過して、顔料インクであるシアンインク3を調製した。該インク中の顔料の平均粒径は98nmであった。
〔インクセット6の調製〕
(顔料分散液の調整)
前記イエロー顔料分散体2、マゼンタ顔料分散体2、シアン顔料分散体2、ブラック顔料分散体2、ブルー顔料分散体2、およびレッド顔料分散体2の調製において、高分子分散剤SA−1およびSA−2に換えてナフタレンスルホン酸ナトリウムを用いた以外は同様にして、イエロー顔料分散体3、マゼンタ顔料分散体3、シアン顔料分散体4、ブラック顔料分散体3、ブルー顔料分散体3、およびレッド顔料分散体3を調製した。
(着色インクセット6の調製)
前記着色インクセット1の調製において、イエロー顔料分散体1、マゼンタ顔料分散体1、シアン顔料分散体1、ブラック顔料分散体1、ブルー顔料分散体1、レッド顔料分散体1に代えて、上記調製したイエロー顔料分散体3、マゼンタ顔料分散体3、シアン顔料分散体4、ブラック顔料分散体3、ブルー顔料分散体3、レッド顔料分散体3を用いた以外は同様にして、着色インクセット6を調製した。
〔インクセット7〜9の調製〕
上記インクセット1の調製において、インクの調製に用いた界面活性剤の添加量を適宜調整して、各色インクの表面張力がそれぞれ28mN/m、48mN/m、55mN/mとした以外は同様にして、インクセット6〜8を調製した。
〔インクセット10の調製〕
上記着色インクセット3の調製において、各色インクに5質量%のエチレン尿素を加えた以外は同様にして、着色インクセット10を調製した。
《記録媒体及びインクの各特性値の測定》
〔記録媒体:転移量の測定〕
上記作製した各記録媒体のブリストウ法による吸収時間0.04秒における転移量を、下記の方法に従って測定した。
転移量の測定法は、各記録媒体を25℃、50%RHの雰囲気下で12時間以上放置した後、熊谷理機工業株式会社製の液体動的吸収性試験機であるBristow試験機II型(加圧式)を用いて測定した。測定にはC.I.アシッドレッド52の2%水溶性を用い、0.04秒の吸収時間後に記録媒体上のマゼンタ染色された部分の面積を測定することにより、転移量を求めた。
〔空隙率の算出〕
上記作製した各記録媒体の空隙率は、ブリストウ法により求めた空隙容量と、乾燥膜厚から求めた空隙層の総体積より、計算により算出した。
〔インクセット:表面張力の測定〕
各インクセットを構成するインクの表面張力は、表面張力計(協和界面科学製:CBVP−Z)を使用し、白金プレート法により、インクの温度25℃における表面張力値(mN/m)を測定した。
《印字方法》
〔印字方法1〕
上記調製した各インクセットを、ノズル孔径15μm、駆動周波数20kHz、インク液滴量3pl、記録媒体着弾後のドット径が35μm、一列のノズル数が128でノズルピッチが42.3μmであるノズル列を1mm離間して2列配設し、2列を副走査方向に21.2μmずらして実効的に1200dpiピッチで256ドットを媒体上に形成可能としたサーマル型ヘッドを有し、最大記録密度主走査1200×副走査1200dpiのオンデマンド型のインクジェットプリンタにセットして、間引きパターンを用いないで1パス印字を行った。ここでいうdpiとは、2.54cmあたりのドット数を表す。なお、画像データは、特開2000−32284号公報の段落番号〔0038〕〜同〔0059〕に記載の方法を用いて展開した。
この場合の画像データと使用するインク量の関係を、Blue色相を例にとって図24に示した。
図24において、階調レベルが上がるに従ってシアンインクAとマゼンタインクBの付着量が増えてゆくが、階調レベル7以降で、ブルーインクCが使用されるようになり、マゼンタインクBは減少する。シアンインクAは減少はしないが、ブルーインクCを使用しない場合に比べて増加量が少なくなっている。階調レベル16でブルーインクCはベタとなり、トータルインク使用量は20.5ml/m2となる。なお、ブルーインクCがベタでも、シアンインクAと若干のマゼンタインクBが使用されるのは、視覚的に好ましい色を作り出すためである。
〔印字方法2〕
上記調製した各インクセットを、ノズル孔径15μm、駆動周波数20kHz、記録媒体着弾後のドット径が35μmとなるインク液滴量、インク液滴量3pl、記録媒体着弾後のドット径が35μm、一列のノズル数が128でノズルピッチが42.3μmであるノズル列を1mm離間して2列配設し、2列を副走査方向に21.2μmずらして実効的に1200dpiピッチで256ドットを媒体上に形成可能としたサーマル型ヘッドを有し、最大記録密度主走査1200×副走査1200dpiのオンデマンド型のインクジェットプリンタにセットして、規則性のある間引きパターンを用いて、印字許容率25%で、4パス印字による間引き画像の形成を行った。用いたマスクを図23に示す。なお、画像データの展開の方法は、印字方法1と同様とした。
〔印字方法3〕
上記調製した各インクセットを、ノズル孔径15μm、駆動周波数20kHz、インク液滴量3pl、記録媒体着弾後のドット径が35μm、一列のノズル数が128でノズルピッチが42.3μmであるノズル列を1mm離間して2列配設し、2列を副走査方向に21.2μmずらして実効的に1200dpiピッチで256ドットを媒体上に形成可能としたサーマル型ヘッドを有し、最大記録密度主走査1200×副走査1200dpiのオンデマンド型のインクジェットプリンタにセットして、規則性のない間引きパターンを用いて、印字許容率25%で、4パス印字による間引き画像の形成を行った。用いたマスクを図18に示す。
〔印字方法4〕
上記印字方法3において、インク液滴量として記録媒体着弾後のドット径が15μmとなるインク液滴量(約0.75pl)になるように、ノズル孔径を適宜変更し、一列のノズルピッチを21.2μm、2列間ずらし量を10.6μmとして実効的に2400dpiのヘッドを作成し、最大記録密度主走査2400×副走査2400dpiの印字解像度とした以外は同様にして、これを印字方法4とした。なお、画像データの展開の方法は、印字方法1と同様とした。
〔印字方法5〕
上記印字方法3において、インク液滴量として記録媒体着弾後のドット径が40μmとなるインク液滴量(約5pl)になるように、ノズル孔径を適宜変更した以外は同様にして、これを印字方法5とした。なお、媒体上でのインク付着量が印字方法3と略同一なるように予め画像データを調整した。なお、画像データの展開の方法は、印字方法1と同様とした。
〔印字方法6〕
上記印字方法3において、インク液滴量として記録媒体着弾後のドット径が60μmとなるインク液滴量(約14pl)になるように、ノズル孔径を適宜変更した以外は同様にして、これを印字方法6とした。なお、媒体上でのインク付着量が印字方法3と略同一なるように予め画像データを調整した。なお、画像データの展開の方法は、印字方法1と同様とした。
〔印字方法7〕
上記印字方法3において、ノズルピッチが15μmで一列に256ノズル配設されたヘッドに変更し、最大記録密度主走査850×副走査1690dpiにした以外は同様にして、これを印字方法7とした。なお、副走査解像度はヘッドノズルピッチに対応し、これに応じて他の印字方法と媒体上でのインク付着量が、印字方法3と略同一になるように主走査解像度を変更した。なお、画像データの展開の方法は、印字方法1と同様とした。
〔印字方法8〕
上記印字方法3において、ノズルピッチが55μmで一列に256ノズル配設されたノズル群を、2cm離間させ、27.5μm副走査方向にずらして各色2列ずつ配設し、1色当たり512ノズルのヘッドに変更し、最大記録密度主走査1570×副走査920dpiに変更した以外は同様にして、これを印字方法8とした。この場合のノズルピッチは55μmである。なお、副走査解像度は媒体上でのドットピッチに対応し、これに応じて媒体上でのインク付着量が印字方法3と略同一なるように主走査解像度を変更した。なお、画像データの展開の方法は、印字方法1と同様とした。
〔印字方法9〕
上記印字方法3において、印字許容率を40%、40%、10%、10%の4種類の繰り返し(つまり、印字許容率40%)に変更した以外は同様にして、これを印字方法9とした。なお、画像データの展開の方法は、印字方法1と同様とした。
〔印字方法10〕
上記印字方法3において、ノズルピッチが42.3μmで一列に256ノズル配設されたノズル群を、2cm離間させ、21.2μm副走査方向にずらして各色2列ずつ配設し、1色当たり512ノズルのヘッドに変更し、最大記録密度主走査1200×副走査1200dpiに変更した以外は同様にして、これを印字方法10とした。この場合のノズルピッチは42.3μmである。なお、画像データの展開の方法は、印字方法1と同様とした。
《インクジェット記録画像の形成》
上記の各印字方法と、前記作製した記録媒体及びインクセットを、表1及び表2に記載の組み合わせでイエロー、マゼンタ、シアン、ブルー、レッド、ブルー、およびブラック各色ベタ画像印字及び財団法人・日本規格協会発行の、高精細カラーディジタル標準画像データ「N4・ワインと食器」および「N5・自転車」(1995年12月発行)の印字を行い、を行い、画像1〜35を作成し、得られた画像について下記の各評価を行った。
Figure 2006056235
Figure 2006056235
《インクジェット記録画像の評価》
〔ブロンジング耐性の評価〕
上記形成した各色ベタ画像を、23℃、相対湿度80%の雰囲気下で1週間保存した後、プリント画像の状態(ブロンジングの発生具合)を目視観察し、下記の基準に従ってブロンジング耐性の評価を行った。
◎:ブロンジングの発生が認められない
○:わずかにブロンジングが認められるが問題ない
△:一部でブロンジングが認められるが実用上問題ない
×:ブロンジングが激しく認められる
〔光沢の評価〕
各色のベタ画像面を、JIS−Z−8741に規定の方法に準じて、60度鏡面光沢度を測定し、各色の平均値を求め、下記の基準に従って光沢の評価を行った。なお、測定は、日本電色工業社製の変角光沢度計VGS−10001DPを用いた。
◎:60度鏡面光沢度が、90以上
○:60度鏡面光沢度が、80以上、90未満
△:60度鏡面光沢度が、70以上、80未満
×:60度鏡面光沢度が、70未満
〔画質(高精細)の評価〕
上記(印字方法、記録媒体、インク)の組み合わせで、財団法人・日本規格協会発行の、高精細カラーデジタル標準画像データ「N5・自転車」(1995年12月発行)を印字し、得られた画像について、下記の基準に従って画質の評価を行った。
◎:色濁りの発生が全くなく、極めて高精細な画像である
○:僅かに色濁りの発生が認められるが、高精細な画像である
△:やや色濁りが認められ、鮮明度にやや欠ける画像であるが実用上問題ない
×:明らかな色濁りが認められ、鮮明度に欠ける画像である
〔耐擦過性の評価〕
上記で作成したブルーおよびレッドのベタ画像に対し、事務用消しゴム(MONO トンボ鉛筆社製)でその表面を10回の往復摩擦を行い、印刷部の汚れの発生の有無を目視で判断した。
◎:印刷部の汚れが観察されない
○:印刷部の汚れが若干観察される
△:印刷部の汚れが明確に観察されるが、実用上は許容される範囲内である
×:印刷部が明らかに濃度低下している
以上により得られた結果を、表3に示す。
Figure 2006056235
表3の結果より明らかなように、本発明で規定する記録ヘッド、インク及び記録媒体の組み合わせからなるインクジェット記録方法は、良好なプリント効率が得られ、比較例に対し、得られた画像のブロンジング耐性、光沢、耐擦過性及び画像均一性に優れ、かつ高精細な画像が得られることが分かる。
インクジェットプリンタの主要構成部を表す斜視図である。 インクジェットプリンタのキャリッジを拡大した斜視図である。 インクジェットプリンタの記録ヘッドの下面図である。 インクジェットプリンタの制御部を表すブロック図である。 画像形成装置の構成を表すブロック図である。 マルチパス印字ジェット記録方法の一例を表す模式図である。 マルチパス印字ジェット記録方法の他の一例を表す模式図である。 マルチパス印字ジェット記録方法の他の一例を表す模式図である。 マルチパス印字ジェット記録方法の他の一例を表す模式図である。 規則的に配列化されている画像配列パターンの一例を表す模式図である。 規則的に配列化されている画像配列パターンの他の一例を表す模式図である。 デューティーを上げた状態の配列画像データが入力されたときの印字状態を示す模式図である。 ヘッドが往路或いは復路方向に一定速度Vで移動しながら、平滑な紙面に対しインクドロップを一定速度vで吐出している状態を示す模式図である。 千鳥状の間引きマスクを用い、100%デューティー画像を両方向印字した時のドット着弾状態を示す模式図である。 規則性のないマスクを用いてマルチパス記録を行う方法の一例を示す模式図である。 規則性のないマスクを用いてマルチパス記録を行う方法の他の一例を示す模式図である。 マスクパターンに対応したノズル配列の一例を示す模式図である。 ブルーノイズ特性を持つマスクパターンの一例を示す模式図である。 マスクパターンの一例を示す模式図である。 マスクパターンの他の一例を示す模式図である。 マスクパターンの他の一例を示す模式図である。 マスク処理回路の一例を示すブロック図である。 比較例で用いたマスクパターンの一例を示す模式図である。 画像データと使用するインク量の関係の一例を示すグラフである。
符号の説明
1 インクジェットプリンタ
2 画像形成部
22 記録ヘッド
23 キャリッジ
200 画像形成装置
221 ノズル
222 ノズル面
501〜504 分割領域

Claims (24)

  1. 着色インクを吐出する複数のノズル部を有する記録ヘッドを、記録媒体の同一記録領域に対し複数回走査させ、各走査で規則性のない間引きパターンに従う間引き画像を形成し、着色インクを該記録媒体に印字して、カラー画像を形成するインクジェット記録方法であって、
    該記録ヘッドのノズルピッチが10〜50μmであり、
    該着色インクは、シアン、マゼンタ、イエロー及びブラックの各色インクと、少なくとも1色の特色インクとから構成され、
    該着色インクは、顔料、高沸点有機溶剤及び水を含有し、該記録ヘッドから吐出されて形成されるドット径が、記録媒体上で10〜50μmであり、
    該記録媒体は、ブリストウ法による吸収時間0.04秒における転移量が10ml/m2以上であって、かつ平均粒子径が15〜100nmの無機微粒子及び親水性バインダーを含有する空隙層を有することを特徴とするインクジェット記録方法。
  2. 前記特色インクが、レッドインク、オレンジインク、ブルーインク、バイオレットインク及びグリーンインクから選ばれる少なくとも1つのインクであることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録方法。
  3. 前記間引きパターンによる印字許容率が、15〜35%であることを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェット記録方法。
  4. 前記着色インクの表面張力が、30〜50mN/mであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  5. 前記着色インクの顔料は、高分子分散剤により分散されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  6. 前記記録媒体が、吸水性支持体上に前記空隙層を設けたものであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  7. 前記親水性バインダーが、ポリビニルアルコールまたはその誘導体であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  8. 前記親水性バインダーが、硬膜されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  9. 前記空隙層の空隙率が、30〜70%であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  10. 前記無機微粒子が、シリカまたはアルミナであることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  11. 前記無機微粒子の平均粒子径が、20〜80nmであることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  12. 前記着色インクが、尿素または尿素誘導体を含有することを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  13. 着色インクを記録媒体に吐出してカラー画像を形成するインクジェット記録装置であって、
    該着色インクを吐出するための複数のノズル部が10〜50μmのピッチで配列された記録ヘッドと、
    記録媒体の同一記録領域に対して、記録ヘッドを複数回走査させるための走査手段と、
    該記録ヘッドから吐出される着色インクにより形成されるドット径が、記録媒体上で10〜50μmであり、各走査で規則性のない間引きパターンに従う間引き画像が前記記録媒体上に形成されるように、複数のノズル部から着色インクを吐出させる制御手段とを有し、
    該着色インクは、シアン、マゼンタ、イエロー及びブラックの各色インクと、少なくとも1色の特色インクとから構成され、
    該着色インクは、顔料、高沸点有機溶剤及び水を含有し、
    該記録媒体は、ブリストウ法による吸収時間0.04秒における転移量が10ml/m2以上であり、かつ平均粒子径が15〜100nmの無機微粒子及び親水性バインダーを含有する空隙層を有することを特徴とするインクジェット記録装置。
  14. 前記特色インクが、レッドインク、オレンジインク、ブルーインク、バイオレットインク及びグリーンインクから選ばれる少なくとも1つのインクであることを特徴とする請求項13に記載のインクジェット記録装置。
  15. 前記間引きパターンによる印字許容率が、15〜35%であることを特徴とする請求項13または14に記載のインクジェット記録装置。
  16. 前記着色インクの表面張力が、30〜50mN/mであることを特徴とする請求項13〜15のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
  17. 前記着色インクの顔料は、高分子分散剤により分散されていることを特徴とする請求項13〜16のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
  18. 前記記録媒体が、吸水性支持体上に前記空隙層を設けたものであることを特徴とする請求項13〜17のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
  19. 前記親水性バインダーが、ポリビニルアルコールまたはその誘導体であることを特徴とする請求項13〜18のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
  20. 前記親水性バインダーが、硬膜されていることを特徴とする請求項13〜19のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
  21. 前記空隙層の空隙率が、30〜70%であることを特徴とする請求項13〜20のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
  22. 前記無機微粒子が、シリカまたはアルミナであることを特徴とする請求項13〜21のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
  23. 前記無機微粒子の平均粒子径が、20〜80nmであることを特徴とする請求項13〜22のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
  24. 前記着色インクが、尿素または尿素誘導体を含有することを特徴とする請求項13〜23のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
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