JP4626068B2 - エッチング方法およびエッチング装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、エッチング方法およびエッチング装置に関し、特にプリント配線基板を製造する工程において、基板上の被加工導電層をパターンエッチングして配線部をパターン形成するエッチング方法およびエッチング装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、半導体装置の高集積化および高機能化に対する要求に伴い、半導体装置の素子構造の微細化が進展している。これに対応して、半導体装置を実装するプリント配線基板のプリント配線部においても微細化に対する要求が高まり、研究開発が行われている。
【0003】
上記の微細なパターンのプリント配線部を形成するためのエッチング方法としては、コーン状あるいはフラットコーン(扇)状に広がるノズルを用いる方法が広く実施されている。
ポンプを用いて、上記のノズルを介してエッチング液を噴射し、得られたエッチング液滴を、表面に銅箔が形成された基板に吹きつける。銅箔上には予めマスク層であるレジスト膜がパターン形成されており、レジスト膜で保護されていない銅箔とエッチング液が接触することで、銅箔がパターン加工されるものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のエッチング方法においては、従来のノズルからエッチング液を噴射すると、エッチング液の吹きつけ方向と垂直な方向へのエッチング反応が生じてしまう。
このため、プリント配線部の微細化に伴って、銅箔などの被エッチング層の厚さがパターン幅に比べて厚くなってくると、エッチング液の吹きつけ方向へエッチングされる分に比べて、エッチング液の吹きつけ方向と垂直な方向へエッチングされる分が相対的に大きくなり、場合によっては被エッチング層が全てエッチングされてしまい、配線パターンが残らなくなってしまうことがある。
上記の問題は、ノズルにエッチング液を注入する圧力を高めるなどの調整を行っても同様の傾向となってしまう。
【0005】
また、従来のノズルでは、エッチング液を噴射して得られたエッチング液滴の粒径が大きいため、エッチング液滴が被エッチング層に吹きつけられたときに被エッチング層の表面に層をなした形で滞在し、例えばパターンルールが100μm以下である微細化された配線パターンの加工においては、エッチング液滴が被エッチング層上のレジスト膜のパターン内に入り込むことができず、エッチング液滴が効果的に被エッチング層の表面に作用することが困難となってくる。
即ち、被エッチング層の表面近傍にはエッチング液の疲労液成分が滞留し、エッチング液の新液成分は拡散によってのみ被エッチング層の表面に到達することになる。
従って、エッチング速度が遅くなり、また、エッチング液の吹きつけ方向へのエッチング速度と、エッチング液の吹きつけ方向と垂直な方向へのエッチング速度が同等となってしまい、配線パターンのサイドエッチングが進んで配線パターンの形成が困難となってしまう。
【0006】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、例えば100μm以下に微細化されたパターンのエッチングにおいても、サイドエッチングの進行を抑制して、高精細なパターンをエッチング形成することが可能であり、エッチング効率を高めることができるエッチング方法、および、この方法を実現するエッチング装置を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明のエッチング方法は、エッチング液と気体を混合して2流体ノズルより噴射することでエッチング液の微小液滴を発生させる工程と、エッチング対象物と上記2流体ノズルの離間距離を50〜500mmとして、上記エッチング対象物に上記エッチング液の微小液滴を吹きつけ、上記エッチング対象物をエッチングする工程とを有する。
【0008】
上記本発明のエッチング方法は、好適には、上記エッチング対象物に衝突するときの上記エッチング液の微小液滴の速度を30〜300m/秒とする。
【0009】
上記本発明のエッチング方法は、好適には、上記エッチング液の微小液滴の粒径を15〜100μmとする。
【0010】
上記本発明のエッチング方法は、好適には、上記エッチング対象物が、表面に導電層およびマスク層が形成された基板であり、上記導電層を上記マスク層のパターンに沿ってエッチングすることで配線部をパターン形成する。
【0011】
上記本発明のエッチング方法は、好適には、上記エッチング対象物をエッチングする工程の後に、連続して洗浄する工程をさらに有する。
【0012】
上記本発明のエッチング方法は、好適には、前記2流体ノズルからの噴射時に、当該2流体ノズルの噴射口近傍に、当該噴射口から斜めに進行する成分を遮蔽する遮蔽板を配置する。
【0013】
上記本発明のエッチング方法は、好適には、複数個の前記2流体ノズルを用い、前記2流体ノズルからの噴射時に、前記各2流体ノズルから噴射された微小液滴が広がる扇状の範囲の端部同士が重なり合うように、前記各2流体ノズルを配置する。
【0014】
上記本発明のエッチング方法は、エッチング液と気体を混合して2流体ノズルより噴射することで、上記エッチング対象物に衝突するときの上記エッチング液の微小液滴の速度を30〜300m/秒として、粒径が15〜100μmであるエッチング液の微小液滴を発生させ、次に、表面に導電層およびマスク層が形成された基板などのエッチング対象物と2流体ノズルの離間距離を50〜500mmとして、エッチング対象物にエッチング液の微小液滴を吹きつけ、導電層をマスク層のパターンに沿ってエッチングすることで配線部をパターン形成するなど、エッチング対象物をエッチングする。
エッチングした後には、連続して洗浄を行うことができる。
【0015】
上記本発明のエッチング方法によれば、エッチング液と気体を混合して2流体ノズルより噴射することで、例えば粒径が15〜100μmであるエッチング液の微小液滴を発生させることができる。これにより、例えば100μm以下に微細化されたパターンのエッチングにおいても、エッチング液の微小液滴がパターン内に入り込むことを可能にする。
さらに、エッチング対象物と2流体ノズルの離間距離を50〜500mmとすることで、エッチング液の微小液滴が所定以上の運動エネルギーを持ってエッチング対象物に吹きつけられ、既に付着した液滴を押し退けながら、エッチング対象物の表面に到達することができ、これにより、効果的にエッチング反応を生じせしめることができる。
以上により、サイドエッチングの進行を抑制して、高精細なパターンをエッチング形成することが可能であり、エッチング効率を高めることができる。
【0016】
上記の目的を達成するため、本発明のエッチング装置は、エッチング処理室と、エッチング液供給源と、気体供給源と、上記エッチング処理室内に配置され、上記エッチング液供給源および上記気体供給源に配管で接続された2流体ノズルと、エッチング対象物と上記2流体ノズルの離間距離が50〜500mmの範囲となるように、上記エッチング対象物を保持する保持部とを有し、上記2流体ノズルにより上記エッチング液と上記気体を混合してエッチング液の微小液滴を発生させ、上記エッチング対象物に上記エッチング液の微小液滴を吹きつけ、上記エッチング対象物をエッチングする。
【0017】
上記本発明のエッチング装置は、好適には、上記エッチング対象物に衝突するときの上記エッチング液の微小液滴の速度が30〜300m/秒である。
【0018】
上記本発明のエッチング装置は、好適には、上記エッチング液の微小液滴の粒径が15〜100μmである。
【0019】
上記本発明のエッチング装置は、好適には、表面に導電層およびマスク層が形成された基板を上記エッチング対象物として、上記導電層を上記マスク層のパターンに沿ってエッチングすることで配線部をパターン形成する。
【0020】
上記本発明のエッチング装置は、好適には、上記エッチング処理室に隣接する洗浄室と、上記エッチング対象物を上記エッチング処理室から上記洗浄室へ搬送する搬送手段とをさらに有し、上記エッチング対象物のエッチングと洗浄を連続して行う。
【0021】
上記本発明のエッチング装置は、好適には、前記2流体ノズルの噴射口近傍に、当該噴射口から斜めに進行する成分を遮蔽する遮蔽板が配置されている。
【0022】
上記本発明のエッチング装置は、好適には、複数個の前記2流体ノズルを有し、前記各2流体ノズルから噴射された微小液滴が広がる扇状の範囲の端部同士が重なり合うように、前記各2流体ノズルが配置されている。
【0023】
上記本発明のエッチング装置によれば、エッチング液と気体を混合して2流体ノズルより噴射することで、例えば粒径が15〜100μmであるエッチング液の微小液滴を発生させることができる。これにより、例えば100μm以下に微細化されたパターンのエッチングにおいても、エッチング液の微小液滴がパターン内に入り込むことを可能にする。
さらに、エッチング対象物と2流体ノズルの離間距離を50〜500mmとすることで、エッチング液の微小液滴が所定以上の運動エネルギーを持ってエッチング対象物に吹きつけられ、既に付着した液滴を押し退けながら、エッチング対象物の表面に到達することができ、これにより、効果的にエッチング反応を生じせしめることができる。
以上により、サイドエッチングの進行を抑制して、高精細なパターンをエッチング形成することが可能であり、エッチング効率を高めることができる。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下に、本実施形態のエッチング方法およびエッチング装置の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0025】
まず、本実施形態のエッチング方法およびエッチング装置を適用するプリント配線基板の製造方法について、図1の断面図を参照して説明する。
まず、図1(a)に示すように、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂やその他の樹脂などからなる絶縁性の基板10の両面に、例えば銅箔などの導電層20を数〜数10μmの膜厚で形成する。
導電層20を形成する方法は、張り付け、メッキ、気相成長など、どのような方法でも可能である。
【0026】
次に、図1(b)に示すように、フォトリソグラフィー工程により、即ち、ドライフィルムレジストまたはスピン塗布などにより導電層20の上層にレジスト膜を成膜し、パターン露光し、さらに現像処理を行うことで、導電層20の上層にレジスト膜30をパターン形成する。
上記の工程を基板の両面に対して行い、基板10の両面上の導電層20の上層にレジスト膜30を形成する。
【0027】
次に、図1(c)に示すように、基板10の両面上の導電層20に対してレジスト膜30をマスクとしたエッチング処理を施す。即ち、導電層20をレジスト膜30のパターンに沿ってエッチングし、配線部20aをパターン形成する。
上記のエッチング処理は両面を同時に行っても、片面ずつ行ってもよい。
次に、例えば、強アルカリ溶液または有機溶剤処理などによりレジスト膜を剥離して、所望のプリント配線基板とする。
【0028】
上記のレジスト膜30をマスクとした導電層20に対するエッチング処理は、本実施形態に係るエッチング装置および方法を用いて行う。
図2は、本実施形態に係るエッチング装置の模式構成図である。
本実施形態に係るエッチング装置のエッチング処理室ER内には、複数個の2流体ノズルNが配列して設けられている。
各ノズルNは、エッチング液タンクETおよびコンプレッサーや空気ボンベなどのガスボンベGBにそれぞれ配管で接続されている。
エッチング液タンクETに接続する配管には、ポンプPおよびフィルタFが設けられている。
さらに、エッチング液タンクETに接続する配管には、水供給部WSが接続されており、必要に応じてエッチング液タンクET内のエッチング液ELと水とが所定割合で混合されてノズルNに供給される。
【0029】
上記の表面に導電層20およびマスク層30が形成された基板10などのエッチング対象物EOは不図示の保持具で保持されており、上記のノズルNからエッチング液のスプレーESが噴射され、エッチング対象物EOに対してエッチング液のスプレーESが吹きつけられる。
上記のノズルNは、例えば2列の互いに向き合うように配列されており、上記の表面に導電層20およびマスク層30が形成された基板10など、平板状のエッチング対象物EOに対しては、両面からエッチング液のスプレーESを吹きつけることができるように構成されている。
【0030】
エッチング処理に使用された疲労液は、疲労液貯蔵タンクSTに一時貯蔵され、再生タンクRTにて再生処理を施され、再生液としてエッチング液タンクETに供給される。また、新規に調合された新液を供給することもできる。疲労液は、再生せずに廃液として処分してもよい。
また、例えばエッチング液タンクETにてオーバーフローした分は、廃液LWとして処分される。
【0031】
エッチング処理室ERに隣接して設けられている洗浄室WRにおいても、複数個の2流体ノズルNが配列して設けられており、それぞれに、温水供給源HWおよびガスボンベGBにそれぞれ配管で接続されている。
【0032】
洗浄室WRのノズルN’からは、水または温水スプレーが噴射され、不図示の保持具で保持されたエッチング対象物EOに吹きつけられて、洗浄処理が行われる。ノズルN’は2流体ノズルでなくてもよい。
洗浄処理に使用された温水は廃液LWとして処分される。
【0033】
エッチング処理室ERと洗浄室WRは一部連通しており、不図示の搬送機構によりエッチング対象物EOが搬送されて、エッチング処理と洗浄処理が連続的に行われる。
【0034】
図3は、エッチング処理室ER内の要部であるノズル部の拡大図である。
エッチング処理室ER内に配列して設けられている2流体ノズルNは、例えばフラットコーン型の2流体ノズルであり、エッチング液ELが供給される配管と空気などのガスGSが供給される配管が接続されている。
エッチング液ELおよびガスGSを所定の圧力で供給することで、ノズルN内でエッチング液ELとガスGSが混合され、2流体ノズル噴出口より噴射してエッチング液の微小液滴が発生し、フラットコーン状に広がるエッチング液スプレーESとなって、エッチング対象物EOの表面に吹きつけられる。
【0035】
本実施形態に係るエッチング装置においては、エッチング対象物EOと2流体ノズルNの離間距離dを50〜500mmに設定する。
離間距離dを50mmより小さくすると、この場合でも液滴の平均速度が300m/秒以下であれば問題はないが、ノズルに近いために、所望のエッチング領域全域での均一なエッチングが困難となる。
離間距離dを500mmより大きくすると、ガス圧によるエッチング液の推進力が失われ、エッチング力が不十分となる。このため、所定量をエッチングするためのエッチング時間が長くなってしまう。さらに、エッチング液の噴射領域が広範囲となるため、所望の領域全域での均一なエッチングが困難となり、エッチングの面内均一性が失われる。
【0036】
また、エッチング液ELおよびガスGSの供給圧力などを調整することで、エッチング対象物EOに衝突するときのエッチング液の微小液滴の速度を調整可能であり、好ましくは、30〜300m/秒となるように噴射する。
エッチング対象物EOに衝突するときの微小液滴の速度が30m/秒より遅いと、ガス圧による垂直方向へのエッチング力や、噴射された微小液滴が既に付着した液滴を押し退けてエッチング対象物に到達することが困難となり、サイドエッチングの進行やエッチング効率の低下を招いてしまう。
また、エッチング対象物EOに衝突するときの微小液滴の速度が300m/秒より速いと、エッチング液の噴射領域内でのエッチング速度分布の均一性が得られなくなり、エッチング液噴射領域内外でのエッチング力の差が非常に大きくなり、所望のエッチング領域全域での均一なエッチングが困難となる。また、エネルギーが大きすぎるため、レジストが欠けたり、剥離してしまう。
【0037】
また、エッチング液ELおよびガスGSの供給圧力などを変更することで、2流体ノズルよりエッチング液の微小液滴の粒径を調整可能であり、好ましくは、15〜100μmとなるように噴射する。
噴射された微小液滴の粒径が15μmより小さいと、既に付着した液滴を押し退けてエッチング対象物に到達するのに必要な垂直方向の運動エネルギーが不足し、サイドエッチングの発生やエッチング時間の長大化を招いてしまう。
また、噴射された微小液滴の粒径が100μmより大きいと、例えば100μm以下の微細なレジスト膜パターン開口部内にエッチング液滴が入り込むことが困難となり、被エッチング層表面上でのエッチング液の滞留を発生し、高精細なパターンのエッチング加工が困難となり、サイドエッチングの発生やエッチング時間の長大化の要因ともなる。
【0038】
また、エッチング液ELおよびガスGSの供給圧力などを変更することで、2流体ノズルより噴射される噴射圧力を調整可能であり、例えば、0.15〜0.3MPaとなるように噴射する。
【0039】
被エッチング層である導電層が例えば銅箔である場合、上記のエッチングに用いるエッチング液は、塩化第2鉄液(40°ボーメ)と塩酸(0.3mol/l)の混合溶液に、溶解銅濃度を45g/lとし、さらに必要に応じて所定の添加物を添加した組成とする。
【0040】
上記の本実施形態のエッチング装置と、これを用いたエッチング方法によれば、エッチング液と気体を混合して2流体ノズルより噴射することで、例えば粒径が15〜100μmであるエッチング液の微小液滴を発生させることができる。これにより、例えば100μm以下に微細化されたパターンのエッチングにおいても、エッチング液の微小液滴がパターン内に入り込むことを可能にする。
さらに、エッチング対象物と2流体ノズルの離間距離を50〜500mmとすることで、エッチング液の微小液滴が所定以上の運動エネルギーを持ってエッチング対象物に吹きつけられ、既に付着した液滴を押し退けながら、エッチング対象物の表面に到達することができ、これにより、効果的にエッチング反応を生じせしめることができる。
以上により、サイドエッチングの進行を抑制して、高精細なパターンをエッチング形成することが可能であり、エッチング効率を高めることができる。
【0041】
また、エッチング液を効率よく使用できるので、エッチング液の循環を減じることが可能となり、総液量を減らせるため、タンク容量などの設備を小さくすることができる。
また、従来は戻りのエッチング液の反応効率が低いため、エッチング液の再生において、反応効率が高いときよりも多めに酸化剤を投入しないと元の状態に再生することができなかったが、本実施形態においては、使用した分だけ効果的に酸化再生を行うことが可能で、薬品の使用料を減少させることが可能となる。
【0042】
(変形例1)
図4は、エッチング処理室ER内の要部であるノズル部の変形例の拡大図である。実質的に図3に示すノズル部と同様であるがノズルNの噴射口近傍に遮蔽板SDが設けられていることが異なる。
遮蔽板SDにより、ノズルNの噴射口から斜めに進行する、吹きつけ方向に垂直な液滴成分を遮蔽することが可能になっている。
これにより、サイドエッチングの進行をさらに抑制することができ、被エッチング層表面上でのエッチング液の滞留を抑制し、エッチング効率が向上する。
また、ガスとの混合により微小液滴を発生させることができ、100μm以下の微細なパターンのエッチング加工を行うことができる。
【0043】
(変形例2)
図5は、エッチング処理室ER内の要部であるノズル部の変形例の拡大図である。図3に示すフラットコーン型の複数個の2流体ノズルが、各ノズルから噴射された扇状に広がるエッチング液のスプレーESの端部同士が重なり合うように、各ノズルが配置されている。
エッチング液のスプレーESの端部は、ノズルNの噴射口から斜めに進行する、吹きつけ方向に垂直な液滴成分であり、この成分が隣接ノズルから噴射された成分と衝突して、吹きつけ方向に垂直な液滴成分を相殺することができる。
これにより、サイドエッチングの進行をさらに抑制することができる。
【0044】
エッチング試験(試験番号1)
基板上に18μmの膜厚の銅箔を形成し、その上層に図6(a)に平面図に示すL/S=25/25μmの渦巻状のテストパターンのレジスト膜をパターン形成し、下記の各条件でエッチング処理を行うエッチング試験を行った。渦巻状パターンは複数個形成し、渦巻状パターン間にはパターンを形成しない領域Bを設けた。
【0045】
番号1〜4の試料に対して、ノズル種類(Aは図3に示す2流体ノズル、Bは図7に示す1流体ノズル、Cは図4に示す遮蔽板付きの2流体ノズル)、エッチング対象物とノズルの離間距離d(mm)、エッチング液圧(MPa)、エア圧(MPa)、流量(ml/分)を値を下記の表1に示すように変更した。
ここで、図7に示す1流体ノズルNaは、例えばコーン型の1流体ノズルであり、エッチング液ELが供給される配管が接続されている。エッチング液ELを所定の圧力で供給することで、ノズル噴出口からコーン状に広がるエッチング液スプレーESとなって、エッチング対象物EOの表面に吹きつけられる。
【0046】
図6(b)は、基板10上の銅箔が渦巻状パターンに理想的にエッチングされた場合の断面図であり、銅箔パターンの底部幅と頂部幅はレジスト膜の幅(25μm)に等しくなる。
エッチング試験の評価は、渦巻状パターンの最外周の銅箔パターンWout の底部幅と頂部幅、内周部の銅箔パターンWinの底部幅と頂部幅、および、レジスト膜が形成されていない領域での基板が露出するまでのエッチング時間により行った。評価結果を下記の表1に示す。
【0047】
ここで、最外周の銅箔パターンWout は、パターンを形成しない領域Bに面しているため、内周部の銅箔パターンWinよりもサイドエッチングが発生しやすくなっている。逆に、最外周の銅箔パターンWout でサイドエッチングが発生しないようにエッチング時間を短くとると、内周部の銅箔パターンWin領域でのエッチングが不十分となって、銅箔パターンWin間に銅箔のエッチング残りが発生してしまうことがある。従って、最外周と内周部の両パターンを高精細に加工できることが好ましい。
【0048】
【表1】
Figure 0004626068
【0049】
表1から、試料番号3の1流体ノズルを用いた場合は、最外周パターンはサイドエッチングにより消失してしまい、内周側でもサイドエッチングが進行し、高精細にパターン加工することはできないことがわかる。
また、試料番号1、2および4のように2流体ノズルを用いることで、1流体ノズルの場合よりも改善される。
特にエッチング対象物と2流体ノズルの離間距離dは試料番号2の500mmよりも試料番号1の100mmの方がより高精細にパターン加工が行え、エッチング時間も短い。
試料番号4のように遮蔽板を用いることで、さらにパターンを高精細化することができる。
【0050】
エッチング試験(試験番号2および3)
ノズル種類(Aは図3に示す2流体ノズル、Bは図7に示す1流体ノズル)、エッチング対象物とノズルの離間距離d(mm)、エア圧(MPa)の値を下記の表2に示すように変更し、平均粒径(μm)およびエッチング対象物に衝突するときの平均液滴速度(m/秒)を表2に示すように調節して、エッチング時間試験および解像性試験を行った。
【0051】
エッチング時間試験は、基板上に35μmの膜厚の銅箔を形成し、全面をベタにエッチングして、基板が露出するまでの時間として計測した。
【0052】
また、解像性試験は、基板上に18μmの膜厚の銅箔を形成し、図6(a)の平面図に示すL/S=30/30μmの渦巻状のテストパターンのレジスト膜をパターン形成し、エッチング処理を行ったときの解像性により判定した。
表中、◎は「非常に良い」、○は「良い」、×は「悪い」ことを示す。
【0053】
【表2】
Figure 0004626068
【0054】
試験番号2から、エッチング対象物とノズルの離間距離dを変化させることで、基板に衝突するときの液滴の平均液滴速度が変化することがわかる。
この液滴速度が300m/秒を越えると、レジスト膜を剥離してしまい、所望の銅箔パターンが得られなかった。
また、30m/秒より遅いと、エッチング時間が長くなり、即ち、基板を露出するまでの時間が長くなるので、サイドエッチングが進行してしまう。これは、基板に対して垂直な方向へのエッチング力が弱まり、エッチングが等方的に進行するためである。従って、解像度は低下してしまう。
【0055】
また、エッチング対象物とノズルの離間距離dが50mm以下であっても、液滴の平均速度が300m/秒以下であれば問題はないが、ノズルに近いために、所望のエッチング領域全域での均一なエッチングが困難となる。
また、エッチング対象物とノズルの離間距離dが500mmを越える場合、エッチング液の噴射領域が非常に広範囲となる。従って、単位面積あたりの液滴の数、即ち、単位面積あたりのエッチング液の量が少なくなり、平均速度が小さくなることと合わせて、エッチング力が不足してしまうことになる。
【0056】
試験番号3から、2流体ノズル(A)においてエア圧を変化させると、平均粒径が変化することがわかる。
粒径が小さい場合、平均速度が30m/秒以上であっても、エッチング時間が長くなってしまい、サイドエッチングが生じるために解像性が低下することになってしまう。
また、1流体ノズル(B)の場合は、平均速度は30m/秒近くあったが、粒径が100μm以上であるので、100μm以下のレジスト膜開口部内へのエッチング液の進入が阻害され、被エッチング層の表面上でのエッチング液の滞留が発生し、微細なパターンにおける基板に垂直な方向へのエッチングが進行しないで、サイドエッチングが進行してしまうことになる。
【0057】
エッチング試験(液滴速度とエッチング時間の関係)
基板に衝突するときの液滴の平均液滴速度を変えたときの、エッチング時間の関係を調べた。
エッチング時間試験は、基板上に35μmの膜厚の銅箔を形成し、全面をベタにエッチングして、基板が露出するまでの時間として計測した。
結果を図8に示す。
【0058】
平均液滴速度が30〜300m/秒の範囲では、液滴速度が速いほどエッチング時間は一定の割合で短くなるが、平均液滴速度が30m/秒を下回ると急激にエッチング時間が長くなる。このため、サイドエッチングが進行してしまって、解像度が低下することになる。
【0059】
上記の種々の実験から、2流体ノズルを用いてエッチング液を噴出する場合に、エッチング対象物とノズルの離間距離を50〜500mmの範囲とし、さらにエッチング対象物に衝突するときのエッチング液の微小液滴の速度を30〜300m/秒とし、液滴の粒径を15〜100μmとなるように噴射することが好ましいことが確認された。
【0060】
本発明は上記の実施形態に限定されない。
例えば、エッチングされる導電層は銅箔に限らず、その他の導電体層に適用できる。
さらに、2流体ノズルに導くガスは、空気に限らず、窒素ガスやその他の不活性ガスなども用いることが可能である。
その他、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更が可能である。
【0061】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のエッチング方法およびエッチング装置によれば、エッチング液と気体を混合して2流体ノズルより噴射して、エッチング対象物と2流体ノズルの離間距離を50〜500mmとした状態で、ノズルから噴射されたエッチング液の微小液滴をエッチング対象物に吹きつけることにより、例えば100μm以下の微細なパターン内に入り込むことを可能な粒径が15〜100μmであるエッチング液の微小液滴を発生させ、所定の運動エネルギーを持って、既に付着した液滴を押し退けてエッチング対象物に到達し、効果的にエッチング反応を生じせしめることができる。
この結果、エッチング速度を速めて、生産性の向上が可能となり、また、サイドエッチングの進行を抑制して、高精細なパターンをエッチング形成することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、プリント配線基板の製造方法の製造工程を示す断面図であり、(a)は導電層を形成する工程まで、(b)はレジスト膜をパターン形成する工程まで、(c)は導電層をパターン加工するエッチング工程までを示す。
【図2】図2は、実施形態に係るエッチング装置の模式図である。
【図3】図3は、エッチング処理室内の要部であるノズル部の拡大図である。
【図4】図4は、エッチング処理室内の要部であるノズル部の変形例の拡大図である。
【図5】図5は、エッチング処理室内の要部であるノズル部の変形例の拡大図である。
【図6】図6(a)は実施例において形成すう渦巻状のテストパターンの平面図であり、(b)は渦巻状パターンにおいて銅箔が理想的にエッチングされた場合の断面図である。
【図7】図7は、従来例のノズル部の拡大図である。
【図8】図8は実施例のエッチング試験における液滴速度とエッチング時間の関係を調べた結果を示す図である。
【符号の説明】
10…基板、20…導電層、20a…配線層、30…レジスト膜、EL…エッチング液、EO…エッチング対象物、ER…エッチング室、ES…エッチング液スプレー、ET…エッチング液タンク、F…フィルタ、GB…ガスボンベ、GS…ガス、HW…温水供給源、LW…廃液、N,Na…ノズル、P…ポンプ、RT…再生タンク、SD…遮蔽板、ST…疲労液貯蔵タンク、Win…内周部パターン、Wout …最外周パターン、WR…洗浄室、WS…水供給源。

Claims (9)

  1. エッチング液と気体を混合して2流体ノズルより噴射することでエッチング液の微小液滴を発生させる工程と、
    エッチング対象物と上記2流体ノズルの離間距離を50〜500mmとして、上記エッチング対象物に上記エッチング液の微小液滴を吹きつけ、上記エッチング対象物をエッチングする工程と
    を有し、
    上記2流体ノズルからの噴射時に、当該2流体ノズルの噴射口近傍に、当該噴射口から斜めに進行する成分を遮蔽する遮蔽板を配置する
    エッチング方法。
  2. 上記エッチング対象物に衝突するときの上記エッチング液の微小液滴の速度を30〜300m/秒とする
    請求項1に記載のエッチング方法。
  3. 上記エッチング液の微小液滴の粒径を15〜100μmとする
    請求項1または2に記載のエッチング方法。
  4. 上記エッチング対象物が、表面に導電層およびマスク層が形成された基板であり、
    上記導電層を上記マスク層のパターンに沿ってエッチングすることで配線部をパターン形成する
    請求項1〜3のいずれかに記載のエッチング方法。
  5. 上記エッチング対象物をエッチングする工程の後に、連続して洗浄する工程をさらに有する
    請求項1〜4のいずれかに記載のエッチング方法。
  6. 複数個の上記2流体ノズルを用い、上記2流体ノズルからの噴射時に、上記各2流体ノズルから噴射された微小液滴が広がる扇状の範囲の端部同士が重なり合うように、上記各2流体ノズルを配置する
    請求項1〜5のいずれかに記載のエッチング方法。
  7. エッチング処理室と、
    エッチング液供給源と、
    気体供給源と、
    上記エッチング処理室内に配置され、上記エッチング液供給源および上記気体供給源に配管で接続された2流体ノズルと、
    エッチング対象物と上記2流体ノズルの離間距離が50〜500mmの範囲となるように、上記エッチング対象物を保持する保持部と
    上記2流体ノズルの噴射口近傍に配置され、当該噴射口から斜めに進行する成分を遮蔽する遮蔽板と
    を有し、
    上記2流体ノズルにより上記エッチング液供給源から供給されるエッチング液と上記気体供給源から供給される気体を混合してエッチング液の微小液滴を発生させ、上記エッチング対象物に上記エッチング液の微小液滴を吹きつけ、上記エッチング対象物をエッチングする
    エッチング装置。
  8. 上記エッチング処理室に隣接する洗浄室と、
    上記エッチング対象物を上記エッチング処理室から上記洗浄室へ搬送する搬送手段と
    をさらに有し、
    上記エッチング対象物のエッチングと洗浄を連続して行う
    請求項に記載のエッチング装置。
  9. 複数個の上記2流体ノズルを有し、上記各2流体ノズルから噴射された微小液滴が広がる扇状の範囲の端部同士が重なり合うように、上記各2流体ノズルが配置されている
    請求項7または8に記載のエッチング装置。
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