JP4625205B2 - 鋼管柱基部の補強構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、道路照明用ポールや交通標識支持用ポール等として用いられる鋼管柱基部の補強構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
上記のような鋼管柱基部の補強構造としては、図6に示すように鋼管柱1の基部にベースプレート2を溶接するとともに、鋼管柱1とベースプレート2の間に複数枚の補強リブ3をT字溶接したものが一般的である。ところがこの構造は、鋼管柱1に風や交通振動などによって曲げモーメントが作用したときに補強リブ3の上端の溶接止端部4付近の鋼管柱1に大きい応力集中が発生するため、繰返し応力によりこの部分の強度が低下するおそれがあった。また補強リブ3の上端部の回し溶接部が溶接熱による引張り残留応力と熱影響部材質劣化との重複により構造欠陥となりやすく、耐力や疲労性能が低下するという問題があった。
【0003】
このような問題は鋼管柱1がストレートポールである場合にも、テーパーポールである場合にも変わりがない。なお、この問題は構造部材に補強用の補強リブをT字溶接した構造体に共通したものであり、日本鋼構造協会「鋼構造物の疲労設計指針・同解説」でもガセットをすみ肉溶接した継手が鋼部材の耐力や疲労性能を低下させるので、設計に配慮するように指摘されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記した従来の問題点を解決し、風や交通振動などによって鋼管柱が長期間にわたり繰り返し振動した場合にも耐力や疲労性能の低下を招くことのない鋼管柱基部の補強構造を提供するためになされたものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するためになされた請求項1の発明は、下広がりのテーパーを持つ鋼管柱の基部に、同様のテーパーを持つ筒状体の外周に補強リブを備えたテーパーリングをその下端がベースプレートに接するまで下向きに圧入し、更に前記鋼管柱の下端面及びテーパーリングをベースプレートに溶接して、前記テーパーリングの内周面と鋼管柱の外周面との間を摩擦結合させたことを特徴とするものである。また同一の課題を解決するためになされた請求項2の発明は、下広がりのテーパーを持つ鋼管柱の基部に、これと同様のテーパーを持つ筒状体の外周に補強リブを備えたテーパーリングを嵌め、このテーパーリングと鋼管柱の下端部との間を冷却時に膨張する低温変態溶接により結合し、更に前記テーパーリングをベースプレートに溶接して、前記テーパーリングの内周面と鋼管柱の外周面との間を摩擦結合させたことを特徴とするものである。
【0007】
何れの発明においても、下広がりのテーパーを持つ鋼管柱の基部を同様のテーパーを持つテーパーリングによって固定するため、鋼管柱が曲げモーメントを受けたときに補強リブの上端に発生する集中応力はテーパーリングの筒状体によって周方向に分散され緩和される。また鋼管柱の基部は浮き上がらないようにテーパーリングによって確実に固定ベースプレートに固定される。このため長期間にわたり使用しても耐力や疲労性能の低下がない。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下に各発明の好ましい実施形態を示す。
図1と図2は請求項1の発明の実施形態を示すもので、10は道路照明用ポールや交通標識支持用ポール等として用いられる鋼管柱であり、少なくともその基部は下広がりのゆるやかなテーパーを持たせてある。11はこの鋼管柱10の下端面が固定されるベースプレートである。この実施形態ではベースプレート11に円形の貫通孔12が形成されており、鋼管柱10の下端内周面がベースプレート11に溶接されている。
【0009】
13はこの鋼管柱10の基部に上方から嵌め込まれる鋼鉄製のテーパーリングである。テーパーリング13は筒状体14の外周に複数の補強リブ15が溶接された構造のもので、筒状体14のテーパーは鋼管柱10の基部のテーパーと等しくしておく。またその内径は、図2のようにテーパーリング13を鋼管柱10の下端まで嵌め込んだとき、筒状体14と鋼管柱10とが強く密着する寸法としておく。
【0010】
図1のようにテーパーリング13を鋼管柱10の基部に嵌め、図2のようにその下端がベースプレート11に接するまで下向きに圧入して、テーパーリング13をベースプレート11に溶接により固定する。このようにテーパーリング13をテーパーを持つ鋼管柱10の基部に圧入することにより、テーパーリング13の内周面と鋼管柱10の外周面との間は強固に摩擦結合される。
【0011】
このため、鋼管柱10を持ち上げる方向の力が作用しても、鋼管柱10はテーパーリング13によって確実に保持される。また鋼管柱10に曲げモーメントが作用したとき、補強リブ15の上端に発生する応力は筒状体14によって周方向に分散され、鋼管柱10の応力集中は大幅に緩和される。このため、風や交通振動により繰返し曲げモーメントを受けても、従来のように鋼管柱10の基部の耐力や疲労性能が低下することはない。
【0012】
なお、テーパーリング13の上端と鋼管柱10との間から雨水などが浸入することを防止するために、テーパーリング13の上端をシール材によりシールしておくことが好ましい。この点は以下に記載する全ての実施形態にも共通するものである。
【0013】
図3は請求項2の発明の実施形態を示す。この実施形態では、鋼管柱10の基部にテーパーリング13を圧入した状態で鋼管柱10の下端部をテーパーリング13の内面に溶接する。この溶接には冷却時に膨張する低温変態溶接が用いられる。溶接部が冷却される際に低温変態溶接部16が膨張して鋼管柱10の下端部に上向きの力を加え、鋼管柱10とテーパーリング13とをより強力に摩擦接合させる。その後にテーパーリング13をベースプレート11に溶接により固定すればよい。
【0014】
この図3の構造においても、鋼管柱10に曲げモーメントが作用した際に補強リブ15の上端に発生する応力は筒状体14によって周方向に分散され、鋼管柱10の応力集中は大幅に緩和される。このため、風や交通振動により繰返し曲げモーメントを受けても、従来のように鋼管柱10の基部の耐力や疲労性能が低下することはない。
【0015】
図4は参考形態を示す。この参考形態では鋼管柱10の基部にテーパーリング13を圧入した状態で両者間をボルト17によって接合する。これによって鋼管柱10の基部とテーパーリング13との上下方向への移動は確実に防止される。なお鋼管柱10の基部とテーパーリング13との間の力の伝達はテーパー面どうしの摩擦接合によって行なわれるため、ボルト17の本数は2本程度で十分である。この構造の作用効果も前記したものと同様である。
【0016】
図5はその他の参考形態を示す。この参考形態では、鋼管柱10の基部に開閉型テーパーリング18を巻きつけ、開閉型テーパーリング18の耳19、19間をボルト20で締めつけることによって開閉型テーパーリング18を鋼管柱10の基部の回りに閉じる。これによって開閉型テーパーリング18の内周面と鋼管柱10の外周面との間を摩擦結合させる。この参考形態では一体型の開閉型テーパーリング18を用いたが、2箇所に耳19を持つ2分割型のものを用いることもできる。
【0017】
なお、開閉型テーパーリング18は当然ながらベースプレート11に溶接されるが、図5のように開閉型テーパーリング18の耳19の位置に対応させてスリット21を形成し、ボルト20による締め付け効果を損なわないようにすることもできる。しかし開閉型テーパーリング18を締めつけた後にベースプレート11に溶接する場合には、スリット21は設けなくても差し支えない。
【0018】
以上に説明した何れの補強構造を用いても、鋼管柱10の基部を強固にベースプレート11に固定することができ、また風や交通振動により鋼管柱10が繰返し曲げモーメントを受けても、鋼管柱10の基部の耐力や疲労性能が低下することを防止することができる。
【0019】
上記した各発明で用いられるテーパーリングの筒状体は、直管をセンターホールジャッキ等を用いて内側からテーパー状に拡径する方法で製造したり、円弧状の平板をロール成形する方法によって製造することができる。
【0020】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明の鋼管柱基部の補強構造によれば、風や交通振動などによって鋼管柱が長期間にわたり繰り返し振動した場合にも耐力や疲労性能の低下を招くことがなく、クラック発生や折損等の事故を確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】請求項1の発明の実施形態を示す断面図であり、テーパーリングの固定前の状態を示す。
【図2】請求項1の発明の実施形態を示す断面図であり、テーパーリングの固定後の状態を示す。
【図3】請求項2の発明の実施形態を示す断面図である。
【図4】参考形態を示す断面図である。
【図5】その他の参考形態を示す斜視図である。
【図6】従来例を示す斜視図である。
Claims (2)
- 下広がりのテーパーを持つ鋼管柱の基部に、同様のテーパーを持つ筒状体の外周に補強リブを備えたテーパーリングをその下端がベースプレートに接するまで下向きに圧入し、更に前記鋼管柱の下端面及びテーパーリングをベースプレートに溶接して、前記テーパーリングの内周面と鋼管柱の外周面との間を摩擦結合させたことを特徴とする鋼管柱基部の補強構造。
- 下広がりのテーパーを持つ鋼管柱の基部に、これと同様のテーパーを持つ筒状体の外周に補強リブを備えたテーパーリングを嵌め、このテーパーリングと鋼管柱の下端部との間を冷却時に膨張する低温変態溶接により結合し、更に前記テーパーリングをベースプレートに溶接して、前記テーパーリングの内周面と鋼管柱の外周面との間を摩擦結合させたことを特徴とする鋼管柱基部の補強構造。
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