JP4625195B2 - リベットかしめ工具 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、油圧を利用してリベットのかしめ処理を行うリベットかしめ工具に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種のリベットかしめ工具は、概略化すると、図4に示す如く、オイルシリンダ51を有するハウジング50と、オイルシリンダ51にスライド可能に内挿されるオイルピストン53と、前記オイルシリンダ51内空間のうち、オイルピストン53によって区画される前方側空間のシリンダ室52にオイルを供給するオイル供給機構56(ハウジング50に内装される場合もある)とを備えた構成が一般的である。
【0003】
前記オイル供給機構56は、オイルを所望量貯留する油溜まり57と、該油溜まり57に接続される第一管路58及び第二管路59と、該第一管路58上に設けられたポンプ60と、該ポンプ60を駆動するモーター61と、第一管路58、第二管路59及びシリンダ室52に接続される第三管路63が接続される切替弁62とで構成される。
【0004】
従って、図4(イ)の定常状態から切替弁62をスイッチングすると、ポンプ60によって吸い上げられた油溜まり57内のオイルが第一管路58及び第三管路63を介してシリンダ室52内に供給される結果、バネ55の付勢力に抗してオイルピストン53が後退した図4(ロ)の状態となり、また、この状態から切替弁62を再度スイッチングすると、第一管路58が遮断されてオイルの供給が停止すると共に、第二管路59が開放されてシリンダ室52内のオイルが第三管路63及び第二管路59を介して油溜まり57に戻される結果、オイルピストン53がバネ55に押し戻されて前進した図4(イ)の状態に復帰するようになっている。
【0005】
また、この種のリベットかしめ工具では、オイルピストン53からハウジング50を貫通して外部に突出するピストンロッド54の先端54aにチャック機構(図示しない)を設け、このチャック機構にリベットのピンを把持させた状態でピストンロッド54を後退させることにより、リベットのピンの引き込み処理(かしめ処理)を行うようになっている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記リベットかしめ工具では、引き込みによりリベットからピンが破断された際、オイルピストン52にはリベットからの負荷が無くなるため、該オイルピストン52が急速に後退して、該オイルピストン52やハウジング50が破損するおそれがある。
【0007】
そのため、従来は、オイルピストン52の急速な後退に伴って生じるシリンダ室52の負圧を利用してオイルの流量を減らすように構成した流量調整弁を第三管路63に設けていた(特公昭62−52653号参照)が、該流量調整弁をハウジング50内に組み込むことにより、リベットかしめ工具の構造が複雑となるばかりでなく、製造コストが悪化するという問題があった。
【0008】
そこで、本発明は上記の如き問題点に鑑みてなされたもので、オイルピストンに対する急激な負荷低下が生じた際の、オイルピストンの急速を制動するための機構を簡潔にして、全体的な構造の簡素化及び低コスト化を図ることができるリベットかしめ工具を提供することを課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明に係るリベットかしめ工具は、オイルシリンダ7を有するハウジング1と、オイルシリンダ7の前方側から突出するピストンロッド12を有して該オイルシリンダ7内にスライド可能に内挿されるオイルピストン10と、ピストンロッド12の前端に取り付けられ、装着されたリベットのピンを把持可能なチャック機構17と、オイルシリンダ7内空間のうち、オイルピストン10によって区画される前方側のシリンダ室8に管路27,28を介してオイルを送給するオイル送給手段33とを備えたリベットかしめ工具において、前記管路27,28の一端を前方側のシリンダ室8に接続すると共に、他端を後方側のシリンダ室9に接続し、且つオイルを両シリンダ室8,9及び管路27,28に充填し、前記後方側のシリンダ室9に、前記ピストンロッド12と等しい断面積を有する部材5aを配し、前方側のシリンダ室8における油圧作用断面積と後方側のシリンダ室9における油圧作用断面積とが等しくなるようにしたことを特徴とする。
また、本発明に係るリベットかしめ工具は、オイルシリンダ7を有するハウジング1と、オイルシリンダ7の前方側から突出するピストンロッド12を有して該オイルシリンダ7内にスライド可能に内挿されるオイルピストン10と、ピストンロッド12の前端に取り付けられ、装着されたリベットのピンを把持可能なチャック機構17と、オイルシリンダ7内空間のうち、オイルピストン10によって区画される前方側のシリンダ室8に管路27,28を介してオイルを送給するオイル送給手段33とを備えたリベットかしめ工具において、前記管路27,28の一端を前方側のシリンダ室8に接続すると共に、他端を後方側のシリンダ室9に接続し、且つオイルを両シリンダ室8,9及び管路27,28に充填し、前記管路27,28に、前記オイル送給手段33を跨ぐようにしてバイパス用の管路29を接続すると共に、該管路29の開閉操作を行う弁機構30,31を設け、しかも、前記オイルピストン10に対して前方側にバネ付勢するようにしたことを特徴とする。
【0010】
上記構成からなるリベットかしめ工具によれば、オイル送給手段33の駆動によりオイルが流動して管路27,28を介して前方側のシリンダ室8に供給され、該シリンダ室8に油圧が発生する結果、オイルピストン10が後退する。リベットかしめ工具においては、オイルピストン10の後退途中においてリベットピンが破断すると、オイルピストン10に対する急激な負荷低下が生じるが、本発明によれば、後方側のシリンダ室にはオイルが充填されているため、これがクッションとなってオイルピストンの急速を制動する作用を有する。
【0012】
従来のリベットかしめ工具は、図4に示すように、油溜まり57からオイルを汲み上げてこれをシリンダ室52に供給するようにしていたが、この構成では、オイルピストン53の後退量に応じたシリンダ室52の体積変化分のオイルを油溜まり57に貯留させておく必要があり、このため、大きな容量の油溜まり57が必要になるという問題があった。
【0013】
しかし、本発明では、前方側のシリンダ室8における油圧作用断面積と後方側のシリンダ室9における油圧作用断面積とが等しくなる構成を採用することにより、前方側のシリンダ室に供給されるオイル量と、これに伴って後方側のシリンダ室から排出されるオイル量とは等しくなり、この排出分を供給分に当てることで、原則として油溜まりは不要となる。オイルの熱変化によってオイルの体積膨張が生じることを考慮しても、極めて小さな容量の油溜まりで足りる。その結果、装置の小型化を図ることができる。
【0014】
上記構成の例としては、ピストンロッド12と断面積が等しいロッドをピストンロッド12と反対側、即ちオイルシリンダ7の後方側から突出するようにオイルピストン10に設ける(オイルピストン10の前方側及び後方側を凸状にする)ことも考えられるが、別の例としては、前記オイルシリンダ7の後方側から、前記ピストンロッド12と等しい断面積を有する軸体5aをオイルシリンダ7の軸方向に沿って後方側のシリンダ室9に突出させる一方、前記オイルピストン10に、前記軸体5aが内挿される孔12eを設けてなる構成(オイルピストン10の前方側を凸状とし、後方側を凹状とする)であってもよい。かかる構成によれば、オイルピストン10のスライドに伴い、孔12eが軸体5aをスライドすることとなる。
【0015】
また、本発明に係るリベットかしめ工具は、前記管路27,28に、前記オイル送給手段33を跨ぐようにしてバイパス用の管路29を接続すると共に、該管路29の開閉操作を行う弁機構30,31を設け、しかも、前記オイルピストン10に対して前方側にバネ付勢するようにした構成を採用することができる。
【0016】
上記構成からなるリベットかしめ工具によれば、弁を閉じることにより、後方側のシリンダ室9、管路28、オイル送給手段33、管路27及び前方側のシリンダ室8が連通し、オイルがこの順に流動して、前方側のシリンダ室8に供給され、オイルピストン10が後退する。また、弁を開けることにより、バイパス用の管路29、管路28、オイル送給手段33、管路27が連通し、オイルがこの順に循環して、前方側のシリンダ室8への供給が停止するため、オイルピストン10はバネ付勢により前進する。
【0017】
さらに、本発明に係るリベットかしめ工具は、オイルピストン10の一部11を該オイルピストン10のスライド方向に変位可能にすると共に、オイルピストン10の後退に伴って前記一部11と当接する部材4を後方側のシリンダ室9に配し、しかも、前記一部11が変位した際、前方側のシリンダ室8と後方側のシリンダ室9とが連通するような構成を採用することができる。
【0018】
上記構成からなるリベットかしめ工具によれば、前方側のシリンダ室8の油圧によりオイルピストン10が後退する際、まず、一部11が部材4と当接し、後退が規制される。しかし、オイルピストン10には未だ油圧が作用しているから後退を続けようとするが、その瞬間にバイバス路が生成されて、前方側のシリンダ室8のオイルが後方側のシリンダ室9へと開放され、その結果、前方側のシリンダ室8の油圧が無くなり、オイルピストン10全体が停止することとなる。従って、この機構によれば、センサー等によってオイルピストン10の後端位置を検出するといった施策を講じる必要が無くなり、全体的な構造の簡素化及び低コスト化を図ることができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態に係るリベットかしめ工具について説明する。
【0020】
本実施形態に係るリベットかしめ工具は、図1に示す如く、オイルシリンダ7を有するハウジング1と、オイルシリンダ7にスライド可能に内挿されるオイルピストン10と、ハウジング1の前方位置に取り付けられてリベットのピンを把持可能なチャック機構17と、前記オイルシリンダ7内空間のうち、オイルピストン10によって区画される前方側空間の第一シリンダ室8にオイルを供給するオイル供給機構26とを備えた構成となっている。
【0021】
前記ハウジング1は、グリップ部Aの一端(上端)に、該グリップ部Aの長手方向に対して斜めに交差する長手方向を有する筒状の機構収容部Bが設けられ、グリップ部Aの他端(下端)に、該グリップ部Aの長手方向と平行する長手方向を有し且つグリップ部Aよりも膨径化された円筒状の油圧機構収容部(図示しない)が設けられたハウジング本体2と、該ハウジング本体2の機構収容部Bの後端に取り付けられたキャップ3とからなる。
【0022】
前記ハウジング本体2の機構収容部Bには、その長手方向に沿って多段の貫通孔が形成されており、該貫通孔は、前端から後端にかけて、第一段部2aと、該第一段部よりも小径の第二段部2bと、該第二段部2bよりも大径の第三段部2cと、該第三段部2dよりも大径の第四段部2dとからなる。
【0023】
前記キャップ3は、ハウジング本体2の貫通孔の後端側開口部2dに取り付けられる外装体4と、該外装体4に内装される内装体5とからなる。即ち、前記外装体4は、第三段部2cよりも小径の内孔4aを有して前端側を開口させた有底の筒体からなり、前記内装体5は、第二段部2bと同等の外径を有し且つ中心の長手方向に沿って貫通孔5bを有する軸体5aに対し、その後端に内孔4aと同等の外径を有する鍔部5cを設けた筒体からなり、該内装体5の鍔部5cが外装体4の底部4bと当接するようにして内装体5が外装体4の内孔4aに内装されている。
【0024】
しかも、外装体4の第四段部2dへの挿入部分の外径は、第四段部2dよりも小径で、また、内装体5の軸体5aの外径は、外装体4の内孔4aよりも小径であるため、第四段部2dと外装体4との間、及び外装体4と内装体5の軸体5aとの間には、環状空間が形成される。
【0025】
また、前記内装体5が外装体4に内装され、且つ外装体4がハウジング本体2の貫通孔2dに螺着された状態にあっては、外装体4及び内装体5の前端側端面は第三段部2cと第四段部2dとの境界近傍に位置しており、且つ外装体4の前端側端部と貫通孔(第三段部2c及び第四段部2d)とは隙間を有して離間しているため、第三段部2c内の円柱状空間と第四段部2d内の環状空間とは、連通状態にある。
【0026】
さらに、第三段部2c内の円柱状空間と外装体4内の環状空間とは、連通状態であるが、外装体4の第四段部2dへの挿入部分には、径方向の貫通孔4cが形成されているため、第四段部2d内の環状空間と外装体4内の環状空間とも、連通状態となっている。尚、外装体4の底部4bには、内装体5の貫通孔5bと連通する貫通孔4dが形成されている。
【0027】
前記オイルピストン10は、ハウジング本体2の第三段部2cと同等の外径を有し且つ中心の軸方向に沿って貫通孔11aを有する環状のピストンリング11と、ピストンリング11に内挿される筒軸状のピストンロッド12とからなる。
【0028】
前記ピストンロッド12は、前端から後端にかけて、ハウジング本体2の第二段部2bあるいは内装体5の軸体5aと同等の外径を有してハウジング本体2の第一段部2a及び第二段部2bに挿通される第一段部12aと、ピストンリング11が外挿される第二段部12bと、内装体5の軸体5aよりも僅かに大径の外径を有する第三段部12cとからなる。
【0029】
また、前記ピストンロッド12の中心には、前端から後端の長手方向に沿って、ピストンロッド12の第二段部12bまでの第一内孔12dと、該第一内孔12dよりも大径であって、内装体5の軸体5aの外径と同等の内径を有する第二内孔12eとが同軸に連通して形成されている。しかも、ピストンロッド12の第三段部12cは、第二内孔12eの形成によって筒状となっており、この第三段部12cが内装体5の軸体5aにスライド可能に外挿されている。
【0030】
前記ピストンリング11の貫通孔11aは、前端側部分が、ピストンロッド12の第一段部12aよりも大径で且つ第二段部12bよりも小径となるように縮径されており、貫通孔11a内に形成された段差面とピストンロッド12の第二段部12bの前端側端面(係止面)とが当接するようになっている。尚、ピストンロッド12の第二段部12bの前端側端面に環状の逃がし溝12fを形成することで、該第二段部12bの前端側端面の外周には、貫通孔11a内の段差面と強当たりする環状突起が形成される。
【0031】
また、ピストンロッド12には、第二段部12bと第三段部12cとの間に、外装体4の内孔4aよりも小径の鍔部12gが形成されており、該鍔部12gと内装体5の鍔部5cとの間に、コイル状のバネ15を介装することで、オイルピストン10が前方側に付勢されるようになっている。
【0032】
さらに、前記ピストンリング11は、ハウジング本体2の第三段部2cの前端側端面との当接を受けて前方側への移動ストロークが規制される一方、外装体4の前端側端面との当接を受けて後方側への移動ストロークが規制されるようになっているが、ピストンロッド12は、ピストンリング11が外装体4の前端側端面と当接した状態にあっても、その第三段部12cが内装体5の鍔部5cと当接するまで後退可能となっている。そして、ハウジング本体2の第三段部2c内の円柱状空間及び外装体4内の環状空間が、オイルピストン10のためのオイルシリンダ7を構成すると共に、オイルシリンダ7内空間のうち、オイルピストン10によって区画される前方側空間が第一シリンダ室(前方側のシリンダ室)8を、後方側空間が第二シリンダ室(後方側のシリンダ室)9を構成している。
【0033】
前記チャック機構17は、オイルピストン10(ピストンロッド12)の前端(作用部)に螺着され、雌型テーパ体19と係合する筒体18と、ピストンロッド12の前端から離間するように付勢され、筒体18内をスライド可能な内装体20と、該内装体20に取付けられ、前記雌型テーパ体19内に内装される二分割された雄型テーパ体21と、これらを収容してハウジング本体2に螺着される筒状のケーシング22と、ケーシング22の前端に螺着される貫通孔23aを備えたノーズピース23とからなる。
【0034】
そこで、オイルピストン10が後退した際には、雌型テーパ体19は、オイルピストン10と共に後退する筒体18に係止されて後退し、雄型テーパ体21と雌型テーパ体19との相対位置が変化することで、雄型テーパ体21は、雌型テーパ体19の内側テーパ面の押圧を受けて縮径し、雄型テーパ体21内に挿通されたリベットのピンが把持されるようになっている。
【0035】
前記オイル供給機構26は、オイルを所望量貯留する油溜まり(油圧機構収容部に配置)と、該油溜まりに接続される第一管路27及び第二管路28と、該第一管路27上に設けられたオイル送給手段としてのポンプ(油圧機構収容部に配置)と、該ポンプを駆動するモーター(油圧機構収容部に配置)と、第一管路27及び第二管路28とを一部で連通する第三管路29と、該第三管路29の開閉操作を行う切替弁30と、ハウジング本体2に揺動自在に取り付けられて該切替弁30の操作を行うトリガー31とで構成される。
【0036】
前記第一管路27は、油圧機構収容部からグリップ部Aを通って第一シリンダ室8に接続される一方、前記第二管路28は、油圧機構収容部からグリップ部Aを通って第二シリンダ室9に接続され、しかも、両者は、油溜まりにて相互に接続されている。従って、第一シリンダ室8と第二シリンダ室9とは、第一管路27及び第二管路28を介して相互に連通している。
【0037】
前記第三管路29は、グリップ部A及び機構収容部Bにて略平行する第一管路27及び第二管路28に直交して両者を連絡する貫通孔である。該第三管路29が閉じていない状態にあっては、第一管路27、第二管路28及び第三管路29がループ状に連通する。
【0038】
前記切替弁30は、第三管路29と略同軸にしてハウジング本体2にスライド自在に設けられた棒体であり、一端が第一管路27内に挿入され、他端がハウジング本体2から突出するように配置される。前記トリガー31は、この切替弁30のスライド操作を行うものであり、トリガー31を引き操作すれば、該トリガー31が棒体の他端を押圧して、棒体の先端が第三管路29のうちの第一管路27側開口部を覆って第三管路29を閉塞するようになっている。尚、棒体は、第三管路29から離間する方向に付勢されており、この付勢力を以てトリガー31が元位置に復帰するようになっている。
【0039】
本実施形態に係るリベットかしめ工具は、以上の構成からなり、リベットをノーズピース23内に装着した状態で、トリガー31を引き操作すれば、オイルが第一シリンダ室8に供給され、雄型テーパ体21がリベットのピンを把持しつつ、オイルピストン10が後退し、リベットのかしめ処理が行われる。
【0040】
また、ノーズピース23の貫通孔23a、雄型テーパ体21内、内装体20内、オイルピストンの貫通孔(ピストンロッド12の第一内孔12d及び第二内孔12e)、キャップ3の貫通孔(内装体5の貫通孔5b及び外装体4の貫通孔4d)は、同軸に連通しており、かしめ処理により分離されたリベットのピンは、これらを通ってキャップ3から排出されるようになっている。
【0041】
図2は、オイルピストン10の作動態様を説明するために、上記リベットかしめ工具の構成を概略化した図である。
【0042】
図2(イ)は、定常状態(かしめ処理のスタンバイ状態)を示す。この状態では、トリガー31は付勢力により元位置に戻されており、従って、図3(イ)に示す如く、切替弁30の先端が第三管路29の第一管路27側開口部から離間した状態にある。モーター34は常時回転しており、オイルポンプ33は常時オイルを第一管路27を介して第一シリンダ室8に供給されるが、第三管路29が開放されているため、オイルの一部は、第三管路29及び第二管路28を介して第二シリンダ室9にも供給される。従って、オイルピストン10に対する油圧は相殺され、バネ15の付勢力のみが作用するため、オイルピストン10は前方側にスライドした状態にある。この結果、第一シリンダ室8及び第二シリンダ室9にはオイルが流動せず、オイルは、第一管路27、第三管路29及び第二管路28を循環する。
【0043】
この状態で、トリガー31を引き操作すると、図3(ロ)に示す如く、切替弁30の先端が第三管路29の第一管路27側開口部を押さえ、第三管路29を閉塞した状態になる。さすれば、オイルは、第一シリンダ室8に流動するようになり、この結果、オイルピストン10に油圧が作用して、該オイルピストン10は後退を開始する。
【0044】
ここで、オイルピストン10のピストンロッド12の第一段部12aと、オイルピストン10に内挿されるハウジング1の軸体5aとが同径に設定されているため、第一シリンダ室8におけるオイルが接触するオイルピストン10の表面積と、第二シリンダ室9におけるオイルが接触するオイルピストン10の表面積とは等しくなり、この結果、第一シリンダ室8に供給されるオイル量は、これに伴うオイルピストン10の後退に応じて第二シリンダ室9から排出されるオイル量と等価になると言える。
【0045】
このことは、オイルが第二シリンダ室9から第二管路28及び第一管路27を介して第一シリンダ室8に流動することを意味する。従って、オイルを管路27,28,29に充填させておけば、管路27,28,29上に外部からオイルを供給する必要が無くなり、この結果、油溜まりは不要となる。しかし、オイルは熱変化によって体積膨張を起こすため、必要最小限の容量の油溜まり35を設けるのが好ましい。それでも、従来の油溜まりと比較にしてはるかに小さいものであるため、装置の小型化を実現することができる。
【0046】
オイルピストン10の後退が続くと、まず、ピストンリング11がハウジング1の段部(外装体4の前端側端面)に当接して、ピストンリング11の後退が規制される。しかし、第一シリンダ室8の油圧は、ピストンリング11の貫通孔11aとピストンロッド12の第一段部12aとの間を介してピストンロッド12の第二段部12bの前端側端面にも作用するため、ピストンロッド12のみがさらに後退しようとする。
【0047】
さすれば、ピストンリング11とピストンロッド12とが軸方向に相対変位することで、ピストンリング11の貫通孔11aとピストンロッド12の外周面との間に隙間が発生し、図2(ロ)に示す状態となる。よって、第一シリンダ室8のオイルは、この隙間を通って第二シリンダ室9に一瞬流入するが、この時、オイルピストン10に作用する油圧が相殺され、ピストンロッド12は、バネ15に押し戻されて再びピストンリング11と当接して隙間が消失する。そして、隙間が消失すると、第一シリンダ室8の油圧がピストンロッド12に再び作用し、該ピストンロッド12が後退する。このように、ピストンロッド12は、微小に往復動を繰り返してピストンリング11との当接・離間を繰り返すが、マクロ的に見れば、ピストンロッド12も後退が規制された格好となる。
【0048】
そして、この状態からトリガー31を離すと、第三管路29が開放されて第一シリンダ室8へのオイルの供給が停止すると共に、第三管路29及び第二管路28を介して第二シリンダ室9へのオイルの供給が行われる、即ち、オイルは、第一シリンダ室8から第一管路27、第三管路29及び第二管路28を介して第二シリンダ室9に流動可能となり、その結果、オイルピストン10がバネ15に押し戻されて前進した図2(イ)の状態に復帰する。
【0049】
このように、それぞれ第一シリンダ室8における油圧作用面を有する二つの部材11,12でオイルピストン10を構成し、常時は二つの部材11,12が一体となってオイルシリンダ7を第一シリンダ室8と第二シリンダ室9とに完全に隔離しているが、オイルピストン10の後退に従ってその一部11がハウジング1と当接することで、二つの部材11,12が相対変位して、オイルピストン10に第一シリンダ室8と第二シリンダ室9とを連通するパス(通過路)が断続的に生成されるため、第一シリンダ室8の一部のオイルを第二シリンダ室9に逃がしてオイルピストン10に作用する油圧を低減することにより、オイルピストン10やハウジング1の破損を防止することができる。しかも、センサー等を設けずとも、オイルピストン10の後退停止を自動的に行うことができるという利点もある。
【0050】
そして、もう一つの利点としてトリガー31の操作性が挙げられる。本実施形態の場合、第三管路29に対して、切替弁30を第二管路28側からでなく、第一管路27側から接離させる構成であり、しかも、切替弁30は、第一管路27内に出退する部分が同一径に形成されている。即ち、弁を閉じる前は、第一管路27には油圧がかかっていないため、少ない力でトリガー31の引き操作を行うことができ、弁を閉じた後は、切替弁30の軸方向(スライド方向)に第一管路27の油圧が作用することはないため、弁閉状態を維持するためのトリガー31に対する大きな力は必要としないのである。また、弁を開く際には、第一管路27の油圧が切替弁30の先端面にも作用するため、切替弁30が円滑に元位置に復帰することにもなる。
【0051】
尚、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲での種々の変更は可能である。
【0052】
例えば、ハウジング1(ハウジング本体2とキャップ3とが一体であっても別体であってもよい)、オイルピストン10(ピストンリング11とピストンロッド12とが一体であっても別体であってもよい)等の形状等は、本発明の範囲において適宜設計変更可能である。
【0053】
また、上記実施形態においては、常に一定方向でオイルを送給するポンプ33(例えばプランジャーポンプ)を採用しているため、切替弁30を設けてオイルの流路を切り替える必要があるが、例えば一端が第一シリンダ室8に、他端が第二シリンダ室9に、接続される管路上にポンプ33を配し、このポンプを停止するか、あるいは逆回転駆動するなどして、第一シリンダ室8のオイルを第一管路27を介して排出することが可能となれば、切替弁30を設ける必要はない。
【0054】
さらに、上記実施形態においては、必要最小限としての油溜まり35を設けているが、この場合、ポンプ33と第二シリンダ室9とを接続する第二管路28の一部又は全部を拡縮自在な材質で構成し、これに油溜まりの機能を持たせるようにしてもよい。
【0055】
【発明の効果】
以上の如く、本発明に係るリベットかしめ工具は、管路が前方側及び後方側のシリンダ室を連絡するように接続され、オイルが後方側のシリンダ室に充填される構成であるため、オイルピストンの後退途中においてオイルピストンに対する急激な負荷低下が生じた場合であっても、後方側のシリンダ室に充填されるオイルがオイルピストンの後退を制動し、従って、オイルピストンとハウジングとが衝突して破損するのを好適に防止することができる。
【0056】
しかも、オイルピストンの制動機構は、管路を後方側のシリンダ室に接続し、該シリンダ室にオイルを充填するという簡潔な構成であるため、全体的な構造の簡素化及び低コスト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を示すリベットかしめ工具の要部断面図を示す。
【図2】同実施形態のリベットかしめ工具の概略図であって、(イ)は、定常状態、(ロ)は、オイルピストンが後退した状態を示す。
【図3】同実施形態のリベットかしめ工具の切替弁の概略図であって、(イ)は、弁開状態(定常状態)、(ロ)は、弁閉状態(オイルピストン後退状態)を示す。
【図4】従来の油圧作動工具の概略図であって、(イ)は、定常状態、(ロ)は、オイルピストンが後退した状態を示す。
【符号の説明】
1…ハウジング、2…ハウジング本体、2a…第一段部、2b…第二段部、2c…第三段部、2d…第四段部、3…キャップ、4…外装体、4a…内孔、4b…底部、4c…貫通孔、4d…貫通孔、5…内装体、5a…軸体、5b…貫通孔、5c…鍔部、7…オイルシリンダ、8…第一シリンダ室、9…第二シリンダ室、10…オイルピストン、11…ピストンリング、11a…貫通孔、12…ピストンロッド、12a…第一段部、12b…第二段部、12c…第三段部、12d…第一内孔、12e…第二内孔、12f…逃がし溝、12g…鍔部、15…バネ、17…チャック機構、18…筒体、19…雌型テーパ体、20…内装体、21…雄型テーパ体、22…ケーシング、23…ノーズピース、23a…貫通孔、26…オイル供給機構、27…第一管路、28…第二管路、29…第三管路、30…切替弁、31…トリガー、33…ポンプ、34…モーター、35…油溜まり、A…グリップ部、B…機構収容部
Claims (5)
- オイルシリンダ(7)を有するハウジング(1)と、オイルシリンダ(7)の前方側から突出するピストンロッド(12)を有して該オイルシリンダ(7)内にスライド可能に内挿されるオイルピストン(10)と、ピストンロッド(12)の前端に取り付けられ、装着されたリベットのピンを把持可能なチャック機構(17)と、オイルシリンダ(7)内空間のうち、オイルピストン(10)によって区画される前方側のシリンダ室(8)に管路(27,28)を介してオイルを送給するオイル送給手段(33)とを備えたリベットかしめ工具において、前記管路(27,28)の一端を前方側のシリンダ室(8)に接続すると共に、他端を後方側のシリンダ室(9)に接続し、且つオイルを両シリンダ室(8,9)及び管路(27,28)に充填し、前記後方側のシリンダ室(9)に、前記ピストンロッド(12)と等しい断面積を有する部材(5a)を配し、前方側のシリンダ室(8)における油圧作用断面積と後方側のシリンダ室(9)における油圧作用断面積とが等しくなるようにしたことを特徴とするリベットかしめ工具。
- オイルシリンダ(7)を有するハウジング(1)と、オイルシリンダ(7)の前方側から突出するピストンロッド(12)を有して該オイルシリンダ(7)内にスライド可能に内挿されるオイルピストン(10)と、ピストンロッド(12)の前端に取り付けられ、装着されたリベットのピンを把持可能なチャック機構(17)と、オイルシリンダ(7)内空間のうち、オイルピストン(10)によって区画される前方側のシリンダ室(8)に管路(27,28)を介してオイルを送給するオイル送給手段(33)とを備えたリベットかしめ工具において、前記管路(27,28)の一端を前方側のシリンダ室(8)に接続すると共に、他端を後方側のシリンダ室(9)に接続し、且つオイルを両シリンダ室(8,9)及び管路(27,28)に充填し、前記管路(27,28)に、前記オイル送給手段(33)を跨ぐようにしてバイパス用の管路(29)を接続すると共に、該管路(29)の開閉操作を行う弁機構(30,31)を設け、しかも、前記オイルピストン(10)に対して前方側にバネ付勢するようにしたことを特徴とするリベットかしめ工具。
- 前記オイルシリンダ(7)の後方側から、前記ピストンロッド(12)と等しい断面積を有する軸体(5a)をオイルシリンダ(7)の軸方向に沿って後方側のシリンダ室(9)に突出させる一方、前記オイルピストン(10)に、前記軸体(5a)が内挿される孔(12e)を設けてなる請求項1記載のリベットかしめ工具。
- 前記管路(27,28)に、前記オイル送給手段(33)を跨ぐようにしてバイパス用の管路(29)を接続すると共に、該管路(29)の開閉操作を行う弁機構(30,31)を設け、しかも、前記オイルピストン(10)に対して前方側にバネ付勢するようにした請求項1又は3に記載のリベットかしめ工具。
- 前記オイルピストン(10)の一部(11)を該オイルピストン(10)のスライド方向に変位可能にすると共に、オイルピストン(10)の後退に伴って前記一部(11)と当接する部材(4)を後方側のシリンダ室(9)に配し、しかも、前記一部(11)が変位した際、前方側のシリンダ室(8)と後方側のシリンダ室(9)とが連通するよう構成されてなる請求項1乃至4の何れかに記載のリベットかしめ工具。
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