JP4580578B2 - 油圧作動工具の切替弁機構 - Google Patents

油圧作動工具の切替弁機構 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、油圧によって作動する油圧作動工具の切替弁機構に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の油圧作動工具は、オイルシリンダを有するハウジングと、オイルシリンダにスライド可能に内挿されるオイルピストンと、前記オイルシリンダ内空間のうち、オイルピストンによって区画される前方側のシリンダ室にオイルを供給して油圧を発生させるオイル供給機構とを備えた構成が一般的である。
【0003】
前記オイル供給機構は、ハウジングに穿設されてオイルシリンダの前方側のシリンダ室及び後方側のシリンダ室にそれぞれ接続される管路と、該管路内のオイルを前方側のシリンダ室側に送給するポンプと、該ポンプを跨ぐようにして管路に接続されるバイパス用の管路と、該バイパス用の管路の開閉操作を行う棒状の弁体とを備えている。
【0004】
図4に示す如く、弁体54は、ハウジング50にスライド自在に挿入されており、弁体54の先端がバイパス用の管路53の開口部に当接すると、該管路53は閉塞され、ポンプによりオイルが管路51(圧力側)を介して前方側のシリンダ室に流動し、ポンプから前方側のシリンダ室にかけて油圧が発生してオイルピストンが後退する。
【0005】
一方、弁体54の先端がバイパス用の管路53の開口部から離間すると、管路53は開放され、ポンプによって送給されるオイルが管路51、バイパス用の管路53、管路52(大気圧側)に沿って循環し、油圧が開放(リリース)されてオイルピストンがバネ付勢により前進する。
【0006】
従って、管路51,52、バイパス用の管路53及び弁体54は、オイル供給機構における切替弁として作用するものである。
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の切替弁機構は、弁体54が大気圧側(後方側のシリンダ室に接続されるリリース側)の管路52に挿入されたものであるため、次のような問題が発生する。
【0008】
即ち、図4(イ)に示す従来の切替弁機構においては、弁を閉じた状態で、油圧側(前方側のシリンダ室に接続されるポンプ側)の管路51の油圧がバイパス用の管路53を介して弁体54の先端部に作用し、弁体54は押し戻される方向に付勢される。通常、ハウジング50には、トリガーが取り付けられており、このトリガーを引き操作することで、弁体54を押し込んで弁閉状態にするようになっているが、トリガーの引き状態を維持するためには、この付勢力に打ち勝つ力をトリガーにかけ続ける必要があり、その分、作業者に負担をかけることとなる。一方、この付勢力をできるだけ小さくするために、バイパス用の管路53の管径を小さくすると、これに応じてバイパス用の管路53の流量が少なくなり、油圧のリリースに時間がかかるという問題である。
【0009】
また、図4(ロ)に示す従来の切替弁機構においては、弁を閉じた状態で、油圧側の管路51の油圧が弁体54の先端に設けられた球体55に作用し、弁体54は押し戻される方向に付勢されているため、トリガーを引き操作して弁開状態にするためには、この付勢力に打ち勝つ力をトリガーにかける必要があり、その分、作業者に負担をかけることとなる。
【0010】
そこで、本発明は上記の如き問題点に鑑みてなされたもので、切替弁機構における弁体の操作(トリガーを利用する場合は、トリガーの操作性)の向上を図ることができる油圧作動工具の切替弁機構を提供することを課題とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明に係る油圧作動工具の切替弁機構は、オイルが充填されたオイルシリンダ7を有するハウジング1と、オイルシリンダ7の前方側から突出するピストンロッド12を有して該オイルシリンダ7内にスライド可能に内挿されるオイルピストン10とを備えた油圧作動工具において、オイルシリンダ7の前方側のシリンダ室8及び後方側のシリンダ室9にそれぞれ接続される管路27,28と、該管路27,28内のオイルを前方側のシリンダ室8側に送給するオイル送給手段33と、該オイル送給手段33を跨ぐようにして前記管路27,28に接続されるバイパス用の管路29と、該バイパス用の管路29の開閉操作を行う棒状の弁体30とを備えた切替弁機構であって、前記弁体30の先端部が、前方側のシリンダ室8とオイル送給手段33との間における管路27内にスライド自在に挿入されると共に、該スライド動作に伴ってバイパス用の管路29の開口部を開閉するよう構成されてなることを特徴とする。
【0012】
上記構成からなる油圧作動工具の切替弁機構によれば、弁を閉じることにより、後方側のシリンダ室9、管路28、オイル送給手段33、管路27及び前方側のシリンダ室8が連通し、オイルがこの順に流動して、前方側のシリンダ室8に供給される。また、弁を開けることにより、バイパス用の管路29、管路28、オイル送給手段33、管路27が連通し、オイルがこの順に循環して、前方側のシリンダ室8への供給が停止する。
【0013】
そして、バイパス用の管路29に対して、弁体30を、後方側のシリンダ室9とオイル送給手段33との間における管路28側(リリース側)からでなく、前方側のシリンダ室8とオイル送給手段33との間における管路27側(ポンプ側)から接離させる構成であり、しかも、弁体30は、この管路27内に出退する部分が同一径に形成されている。即ち、弁を閉じる前は、ポンプ側の管路27には油圧がかかっていない(即ち、弁体30に油圧に基づく付勢力がかかっていない)ため、小さな力でトリガー31の引き操作を行うことができ、弁を閉じた後は、弁体30の軸方向(スライド方向)にポンプ側の管路27の油圧が作用することはないため、弁閉状態を維持するためのトリガー31に対する大きな力は必要とせず、しかも、弁を開く際には、ポンプ側の管路27の油圧が弁体30の先端面にも作用するため、弁体30が円滑に元位置に復帰する。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る油圧作動工具の一態様であるリベットかしめ工具について説明する。
【0015】
本実施形態に係るリベットかしめ工具は、図1に示す如く、オイルシリンダ7を有するハウジング1と、オイルシリンダ7にスライド可能に内挿されるオイルピストン10と、ハウジング1の前方位置に取り付けられてリベットのピンを把持可能なチャック機構17と、前記オイルシリンダ7内空間のうち、オイルピストン10によって区画される前方側空間の第一シリンダ室8にオイルを供給するオイル供給機構26とを備えた構成となっている。
【0016】
前記ハウジング1は、グリップ部Aの一端(上端)に、該グリップ部Aの長手方向に対して斜めに交差する長手方向を有する筒状の機構収容部Bが設けられ、グリップ部Aの他端(下端)に、該グリップ部Aの長手方向と平行する長手方向を有し且つグリップ部Aよりも膨径化された円筒状の油圧機構収容部(図示しない)が設けられたハウジング本体2と、該ハウジング本体2の機構収容部Bの後端に取り付けられたキャップ3とからなる。
【0017】
前記ハウジング本体2の機構収容部Bには、その長手方向に沿って多段の貫通孔が形成されており、該貫通孔は、前端から後端にかけて、第一段部2aと、該第一段部よりも小径の第二段部2bと、該第二段部2bよりも大径の第三段部2cと、該第三段部2dよりも大径の第四段部2dとからなる。
【0018】
前記キャップ3は、ハウジング本体2の貫通孔の後端側開口部2dに取り付けられる外装体4と、該外装体4に内装される内装体5とからなる。即ち、前記外装体4は、第三段部2cよりも小径の内孔4aを有して前端側を開口させた有底の筒体からなり、前記内装体5は、第二段部2bと同等の外径を有し且つ中心の長手方向に沿って貫通孔5bを有する軸体5aに対し、その後端に内孔4aと同等の外径を有する鍔部5cを設けた筒体からなり、該内装体5の鍔部5cが外装体4の底部4bと当接するようにして内装体5が外装体4の内孔4aに内装されている。
【0019】
しかも、外装体4の第四段部2dへの挿入部分の外径は、第四段部2dよりも小径で、また、内装体5の軸体5aの外径は、外装体4の内孔4aよりも小径であるため、第四段部2dと外装体4との間、及び外装体4と内装体5の軸体5aとの間には、環状空間が形成される。
【0020】
また、前記内装体5が外装体4に内装され、且つ外装体4がハウジング本体2の貫通孔2dに螺着された状態にあっては、外装体4及び内装体5の前端側端面は第三段部2cと第四段部2dとの境界近傍に位置しており、且つ外装体4の前端側端部と貫通孔(第三段部2c及び第四段部2d)とは隙間を有して離間しているため、第三段部2c内の円柱状空間と第四段部2d内の環状空間とは、連通状態にある。
【0021】
さらに、第三段部2c内の円柱状空間と外装体4内の環状空間とは、連通状態であるが、外装体4の第四段部2dへの挿入部分には、径方向の貫通孔4cが形成されているため、第四段部2d内の環状空間と外装体4内の環状空間とも、連通状態となっている。尚、外装体4の底部4bには、内装体5の貫通孔5bと連通する貫通孔4dが形成されている。
【0022】
前記オイルピストン10は、ハウジング本体2の第三段部2cと同等の外径を有し且つ中心の軸方向に沿って貫通孔11aを有する環状のピストンリング11と、ピストンリング11に内挿される筒軸状のピストンロッド12とからなる。
【0023】
前記ピストンロッド12は、前端から後端にかけて、ハウジング本体2の第二段部2bあるいは内装体5の軸体5aと同等の外径を有してハウジング本体2の第一段部2a及び第二段部2bに挿通される第一段部12aと、ピストンリング11が外挿される第二段部12bと、内装体5の軸体5aよりも僅かに大径の外径を有する第三段部12cとからなる。
【0024】
また、前記ピストンロッド12の中心には、前端から後端の長手方向に沿って、ピストンロッド12の第二段部12bまでの第一内孔12dと、該第一内孔12dよりも大径であって、内装体5の軸体5aの外径と同等の内径を有する第二内孔12eとが同軸に連通して形成されている。しかも、ピストンロッド12の第三段部12cは、第二内孔12eの形成によって筒状となっており、この第三段部12cが内装体5の軸体5aにスライド可能に外挿されている。
【0025】
前記ピストンリング11の貫通孔11aは、前端側部分が、ピストンロッド12の第一段部12aよりも大径で且つ第二段部12bよりも小径となるように縮径されており、貫通孔11a内に形成された段差面とピストンロッド12の第二段部12bの前端側端面(係止面)とが当接するようになっている。尚、ピストンロッド12の第二段部12bの前端側端面に環状の逃がし溝12fを形成することで、該第二段部12bの前端側端面の外周には、貫通孔11a内の段差面と強当たりする環状突起が形成される。
【0026】
また、ピストンロッド12には、第二段部12bと第三段部12cとの間に、外装体4の内孔4aよりも小径の鍔部12gが形成されており、該鍔部12gと内装体5の鍔部5cとの間に、コイル状のバネ15を介装することで、オイルピストン10が前方側に付勢されるようになっている。
【0027】
さらに、前記ピストンリング11は、ハウジング本体2の第三段部2cの前端側端面との当接を受けて前方側への移動ストロークが規制される一方、外装体4の前端側端面との当接を受けて後方側への移動ストロークが規制されるようになっているが、ピストンロッド12は、ピストンリング11が外装体4の前端側端面と当接した状態にあっても、その第三段部12cが内装体5の鍔部5cと当接するまで後退可能となっている。そして、ハウジング本体2の第三段部2c内の円柱状空間及び外装体4内の環状空間が、オイルピストン10のためのオイルシリンダ7を構成すると共に、オイルシリンダ7内空間のうち、オイルピストン10によって区画される前方側空間が第一シリンダ室(前方側のシリンダ室)8を、後方側空間が第二シリンダ室(後方側のシリンダ室)9を構成している。
【0028】
前記チャック機構17は、オイルピストン10(ピストンロッド12)の前端(作用部)に螺着され、雌型テーパ体19と係合する筒体18と、ピストンロッド12の前端から離間するように付勢され、筒体18内をスライド可能な内装体20と、該内装体20に取付けられ、前記雌型テーパ体19内に内装される二分割された雄型テーパ体21と、これらを収容してハウジング本体2に螺着される筒状のケーシング22と、ケーシング22の前端に螺着される貫通孔23aを備えたノーズピース23とからなる。
【0029】
そこで、オイルピストン10が後退した際には、雌型テーパ体19は、オイルピストン10と共に後退する筒体18に係止されて後退し、雄型テーパ体21と雌型テーパ体19との相対位置が変化することで、雄型テーパ体21は、雌型テーパ体19の内側テーパ面の押圧を受けて縮径し、雄型テーパ体21内に挿通されたリベットのピンが把持されるようになっている。
【0030】
前記オイル供給機構26は、オイルを所望量貯留する油溜まり(油圧機構収容部に配置)と、該油溜まりに接続される第一管路27及び第二管路28と、該第一管路27上に設けられたオイル送給手段としてのポンプ(油圧機構収容部に配置)と、該ポンプを駆動するモーター(油圧機構収容部に配置)と、第一管路27及び第二管路28とを一部で連通する第三管路29と、該第三管路29の開閉操作を行う弁体30と、ハウジング本体2に揺動自在に取り付けられて該弁体30の操作を行うトリガー31とで構成される。
【0031】
前記第一管路27は、油圧機構収容部からグリップ部Aを通って第一シリンダ室8に接続される一方、前記第二管路28は、油圧機構収容部からグリップ部Aを通って第二シリンダ室9に接続され、しかも、両者は、油溜まりにて相互に接続されている。従って、第一シリンダ室8と第二シリンダ室9とは、第一管路27及び第二管路28を介して相互に連通している。
【0032】
前記第三管路29は、グリップ部A及び機構収容部Bにて略平行する第一管路27及び第二管路28に直交して両者を連絡する貫通孔である。該第三管路29が閉じていない状態にあっては、第一管路27、第二管路28及び第三管路29がループ状に連通する。
【0033】
前記弁体30は、第三管路29と略同軸にしてハウジング本体2にスライド自在に設けられた棒状体であり、一端が第一管路27内に挿入され、他端がハウジング本体2から突出するように配置される。前記トリガー31は、この弁体30のスライド操作を行うものであり、トリガー31を引き操作すれば、該トリガー31が棒体の他端を押圧して、棒体の先端が第三管路29のうちの第一管路27側開口部を覆って第三管路29を閉塞するようになっている。尚、棒体は、第三管路29から離間する方向に付勢されており、この付勢力を以てトリガー31が元位置に復帰するようになっている。
【0034】
本実施形態に係るリベットかしめ工具は、以上の構成からなり、リベットをノーズピース23内に装着した状態で、トリガー31を引き操作すれば、オイルが第一シリンダ室8に供給され、雄型テーパ体21がリベットのピンを把持しつつ、オイルピストン10が後退し、リベットのかしめ処理が行われる。
【0035】
また、ノーズピース23の貫通孔23a、雄型テーパ体21内、内装体20内、オイルピストンの貫通孔(ピストンロッド12の第一内孔12d及び第二内孔12e)、キャップ3の貫通孔(内装体5の貫通孔5b及び外装体4の貫通孔4d)は、同軸に連通しており、かしめ処理により分離されたリベットのピンは、これらを通ってキャップ3から排出されるようになっている。
【0036】
図2は、オイルピストン10の作動態様を説明するために、上記リベットかしめ工具の構成を概略化した図である。
【0037】
図2(イ)は、定常状態(かしめ処理のスタンバイ状態)を示す。この状態では、トリガー31は付勢力により元位置に戻されており、従って、図3(イ)に示す如く、弁体30の先端が第三管路29の第一管路27側開口部から離間した状態にある。モーター34は常時回転しており、オイルポンプ33は常時オイルを第一管路27を介して第一シリンダ室8に供給されるが、第三管路29が開放されているため、オイルの一部は、第三管路29及び第二管路28を介して第二シリンダ室9にも供給される。従って、オイルピストン10に対する油圧は相殺され、バネ15の付勢力のみが作用するため、オイルピストン10は前方側にスライドした状態にある。この結果、第一シリンダ室8及び第二シリンダ室9にはオイルが流動せず、オイルは、第一管路27、第三管路29及び第二管路28を循環する。
【0038】
この状態で、トリガー31を引き操作すると、図3(ロ)に示す如く、弁体30の先端が第三管路29の第一管路27側開口部を押さえ、第三管路29を閉塞した状態になる。さすれば、オイルは、第一シリンダ室8に流動するようになり、この結果、オイルピストン10に油圧が作用して、該オイルピストン10は後退を開始する。
【0039】
ここで、オイルピストン10のピストンロッド12の第一段部12aと、オイルピストン10に内挿されるハウジング1の軸体5aとが同径に設定されているため、第一シリンダ室8におけるオイルが接触するオイルピストン10の表面積と、第二シリンダ室9におけるオイルが接触するオイルピストン10の表面積とは等しくなり、この結果、第一シリンダ室8に供給されるオイル量は、これに伴うオイルピストン10の後退に応じて第二シリンダ室9から排出されるオイル量と等価になると言える。
【0040】
このことは、オイルが第二シリンダ室9から第二管路28及び第一管路27を介して第一シリンダ室8に流動することを意味する。従って、オイルを管路27,28,29に充填させておけば、管路27,28,29上に外部からオイルを供給する必要が無くなり、この結果、油溜まりは不要となる。しかし、オイルは熱変化によって体積膨張を起こすため、必要最小限の容量の油溜まり35を設けるのが好ましい。それでも、従来の油溜まりと比較にしてはるかに小さいものであるため、装置の小型化を実現することができる。
【0041】
オイルピストン10の後退が続くと、まず、ピストンリング11がハウジング1の段部(外装体4の前端側端面)に当接して、ピストンリング11の後退が規制される。しかし、第一シリンダ室8の油圧は、ピストンリング11の貫通孔11aとピストンロッド12の第一段部12aとの間を介してピストンロッド12の第二段部12bの前端側端面にも作用するため、ピストンロッド12のみがさらに後退しようとする。
【0042】
さすれば、ピストンリング11とピストンロッド12とが軸方向に相対変位することで、ピストンリング11の貫通孔11aとピストンロッド12の外周面との間に隙間が発生し、図2(ロ)に示す状態となる。よって、第一シリンダ室8のオイルは、この隙間を通って第二シリンダ室9に一瞬流入するが、この時、オイルピストン10に作用する油圧が相殺され、ピストンロッド12は、バネ15に押し戻されて再びピストンリング11と当接して隙間が消失する。そして、隙間が消失すると、第一シリンダ室8の油圧がピストンロッド12に再び作用し、該ピストンロッド12が後退する。このように、ピストンロッド12は、微小に往復動を繰り返してピストンリング11との当接・離間を繰り返すが、マクロ的に見れば、ピストンロッド12も後退が規制された格好となる。
【0043】
そして、この状態からトリガー31を離すと、第三管路29が開放されて第一シリンダ室8へのオイルの供給が停止すると共に、第三管路29及び第二管路28を介して第二シリンダ室9へのオイルの供給が行われる、即ち、オイルは、第一シリンダ室8から第一管路27、第三管路29及び第二管路28を介して第二シリンダ室9に流動可能となり、その結果、オイルピストン10がバネ15に押し戻されて前進した図2(イ)の状態に復帰する。
【0044】
このように、それぞれ第一シリンダ室8における油圧作用面を有する二つの部材11,12でオイルピストン10を構成し、常時は二つの部材11,12が一体となってオイルシリンダ7を第一シリンダ室8と第二シリンダ室9とに完全に隔離しているが、オイルピストン10の後退に従ってその一部11がハウジング1と当接することで、二つの部材11,12が相対変位して、オイルピストン10に第一シリンダ室8と第二シリンダ室9とを連通するパス(通過路)が断続的に生成されるため、第一シリンダ室8の一部のオイルを第二シリンダ室9に逃がしてオイルピストン10に作用する油圧を低減することにより、オイルピストン10やハウジング1の破損を防止することができる。しかも、センサー等を設けずとも、オイルピストン10の後退停止を自動的に行うことができるという利点もある。
【0045】
そして、もう一つの利点としてトリガー31の操作性が挙げられる。本実施形態の場合、第三管路29に対して、弁体30を第二管路28側からでなく、第一管路27側から接離させる構成であり、しかも、弁体30は、第一管路27内に出退する部分が同一径に形成されている。即ち、弁を閉じる前は、第一管路27には油圧がかかっていないため、少ない力でトリガー31の引き操作を行うことができ、弁を閉じた後は、弁体30の軸方向(スライド方向)に第一管路27の油圧が作用することはないため、弁閉状態を維持するためのトリガー31に対する大きな力は必要としないのである。また、弁を開く際には、第一管路27の油圧が弁体30の先端面にも作用するため、弁体30が円滑に元位置に復帰することにもなる。
【0046】
尚、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲での種々の変更は可能である。
【0047】
例えば、上記実施形態においては、第三管路29よりも大径の弁体30を用い、該弁体30の先端面の外周と第三管路29の第一管側27側開口部の周縁とを当接させて弁閉状態を得るようにしているが、両者を同径とし、第三管路29内に弁体30を嵌入させるようにしてもよい。この場合、確実な弁閉状態を得ることができる。
【0048】
また、上記実施形態においては、第三管路29の第一管側27側開口部に平坦な座を設け、ここに弁体30の先端部を当接させるようにしているが、この代わりにテーパ状の座を設け、ここに弁体30の先端部を当接させるようにしてもよい。
【0049】
さらに、弁体30と第三管路29とは必ずしも同軸にする必要はなく、第三管路29に対して斜めから弁体30を接離させるようにしてもよい。この場合、弁体30の先端面は、斜めにカットしておく必要がある。
【0050】
そして、本発明は、上記リベットかしめ工具にのみ限定されるものではなく、オイル供給機構を採用する油圧作動工具全てを対象とするものである。
【0051】
【発明の効果】
以上の如く、本発明に係る油圧作動工具の切替弁機構は、弁体が油圧側(前方側のシリンダ室に接続されるポンプ側)の管路に挿入されて、バイパス用の管路の開閉を行う構成であるため、弁体のスライド方向に抗する油圧付勢力が弁体にかかることはなく、従って、弁体の操作(トリガーを利用する場合は、トリガーの操作性)の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を示すリベットかしめ工具の要部断面図を示す。
【図2】同実施形態のリベットかしめ工具の概略図であって、(イ)は、定常状態、(ロ)は、オイルピストンが後退した状態を示す。
【図3】同実施形態のリベットかしめ工具の切替弁の概略図であって、(イ)は、弁開状態(定常状態)、(ロ)は、弁閉状態(オイルピストン後退状態)を示す。
【図4】従来の切替弁の概略図であって、(イ)は、先端が尖った弁体、(ロ)は、先端の球体にバネを取り付けた弁体を示す。
【符号の説明】
1…ハウジング、2…ハウジング本体、2a…第一段部、2b…第二段部、2c…第三段部、2d…第四段部、3…キャップ、4…外装体、4a…内孔、4b…底部、4c…貫通孔、4d…貫通孔、5…内装体、5a…軸体、5b…貫通孔、5c…鍔部、7…オイルシリンダ、8…第一シリンダ室、9…第二シリンダ室、10…オイルピストン、11…ピストンリング、11a…貫通孔、12…ピストンロッド、12a…第一段部、12b…第二段部、12c…第三段部、12d…第一内孔、12e…第二内孔、12f…逃がし溝、12g…鍔部、15…バネ、17…チャック機構、18…筒体、19…雌型テーパ体、20…内装体、21…雄型テーパ体、22…ケーシング、23…ノーズピース、23a…貫通孔、26…オイル供給機構、27…第一管路、28…第二管路、29…第三管路、30…弁体、31…トリガー、33…ポンプ、34…モーター、35…油溜まり、A…グリップ部、B…機構収容部

Claims (4)

  1. オイルが充填されたオイルシリンダ(7)を有するハウジング(1)と、オイルシリンダ(7)の前方側から突出するピストンロッド(12)を有して該オイルシリンダ(7)内にスライド可能に内挿されるオイルピストン(10)とを備えた油圧作動工具において、オイルシリンダ(7)の前方側のシリンダ室(8)及び後方側のシリンダ室(9)にそれぞれ接続される管路(27,28)と、該管路(27,28)内のオイルを前方側のシリンダ室(8)側に送給するオイル送給手段(33)と、該オイル送給手段(33)を跨ぐようにして前記管路(27,28)に接続されるバイパス用の管路(29)と、該バイパス用の管路(29)の開閉操作を行う棒状の弁体(30)とを備えた切替弁機構であって、前記弁体(30)の先端部が、前方側のシリンダ室(8)とオイル送給手段(33)との間における管路(27)内にスライド自在に挿入されると共に、該スライド動作に伴ってバイパス用の管路(29)の開口部を開閉するよう構成されてなることを特徴とする油圧作動工具の切替弁機構。
  2. 前記管路(27,28)のうち、前記バイパス用の管路(29)からシリンダ室(8,9)にかけての部分及びバイパス用の管路(29)が、前記ハウジング(1)内に形成された真直な通孔からなり、且つ前記弁体(30)が、バイパス用の管路(29)と同軸にしてハウジング(1)にスライド自在に内挿されてなる請求項1記載の油圧作動工具の切替弁機構。
  3. 前記バイパス用の管路(29)が、弁体(30)の先端部よりも小径に形成されてなる請求項1又は2記載の油圧作動工具の切替弁機構。
  4. 前記バイパス用の管路(29)が、弁体(30)の先端部と同径に形成されてなる請求項1又は2記載の油圧作動工具の切替弁機構。
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