JP4623129B2 - 回転電機の固定子及び回転電機 - Google Patents

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Description

本発明は、回転電機の固定子およびその固定子を用いた回転電機に関する。
近年、電動機および発電機として使用される回転電機において、小型高出力および品質の向上が求められている。
例えば、車両に搭載される回転電機においては、車両のエンジンルームで回転電機を搭載するためのスペースが小さくなってきている一方で、車両負荷の増大による発電出力の向上が求められている。
特に、回転電機の小型高出力については、各相巻線の巻線抵抗値の低減、固定子の磁気回路内に納める電気導体の占積率の向上、さらには各相巻線のターン部の整列化および高密度化が必要であった。
この要求に対して、周方向に複数のスロットを有する固定子コアと、線材により形成されスロットに設置されている固定子巻線と、を備え、固定子巻線が、周方向の異なるスロットに設置されているスロット収容部と、スロットの外部で該スロット収容部同士を接続しているターン部と、を有する回転電機の固定子を用いた回転電機が検討されている。そして、この回転電機では、固定子コアの端面に沿ってのびる段部をターン部に形成することで、ターン部を密に配置して、固定子巻線のターン部の固定子コアからの突出高さを短くしている。
このようにターン部が密に配置された回転電機(の固定子)では、固定子をATF等の冷媒で冷却するときに、ターン部同士が当接したことで、冷媒がターン部の内部に十分に侵入しないという問題があった。冷媒が十分に侵入しなくなると、固定子巻線の冷却が十分ではなくなるおそれがある。
本発明は上記実状に鑑みてなされたものであり、冷却性に優れた回転電機の固定子及び回転電機を提供することを課題とする。
課題を解決するための手段および効果
上記課題を解決するために、本発明者は、回転電機の固定子巻線のターン部のうち、隣接するスロットに収容されたスロット収容部に接続した二つのターン部の形状を異なるものとすることで、上記課題を解決できることを見出した。
すなわち、請求項1に記載の本発明の回転電機の固定子は、周方向に複数のスロットを有する固定子コアと、スロットに設置されている固定子巻線と、を備える回転電機の固定子において、固定子巻線は、周方向の異なるスロットに設置されているスロット収容部と、スロットの外部でスロット収容部同士を接続しているターン部と、を有し、ターン部は、固定子コアの端面に平行な段部を有するとともに、固定子コアの軸方向に複数設けられた段部の数が互いに異なる第1のターン部と、第2のターン部と、を有することを特徴とする。
本発明の回転電機の固定子は、隣接する二つのターン部の段部の数が異なっている。つまり、隣接する二つのターン部が異なる形状となっている。この結果、隣接する二つのターン部がお互いの対向面が当接する場合でも、形状が異なることにより対向面の全面が当接しなくなる。つまり、隣接する二つのターン部の間に空隙が形成される。この空隙を冷媒が通過することで、固定子巻線のターン部(コイルエンド)が冷却される。このように、本発明の回転電機の固定子は、冷却性に優れたものとなっている。
請求項2に記載の本発明の回転電機の固定子は、請求項1において、第1のターン部と第2のターン部とが周方向に隣り合ったスロットから突出していることを特徴とする。このような構成となることで、周方向に隣り合うスロットから突出する第1のターン部と第2のターン部とが干渉することが防止される。
請求項3に記載の本発明の回転電機の固定子は、請求項1〜2のいずれか1項において、ターン部は、固定子コアから最も離れた位置にクランク形状に形成されたクランク部を有することを特徴とする。このような構成となることで、周方向に隣り合うスロットから突出する二つのターン部の径方向での位置がずれて、ターン部同士の干渉を抑えることができる。
請求項4に記載の本発明の回転電機の固定子は、請求項3において、クランク部は、線材の幅分だけ固定子コアの径方向にずれていることを特徴とする。このような構成によると、固定子巻線の線材を密に配設することができ、固定子巻線の径方向幅を小さくすることができる。
請求項5に記載の本発明の回転電機の固定子は、請求項1〜4のいずれか1項において、ターン部は、周方向に隣接した別のターン部と軸方向に重なるように配置されていることを特徴とする。このような構成によると、周方向に隣り合うスロットから突出する二つのターン部同士の干渉を抑えることができる。
請求項6に記載の本発明の回転電機の固定子は、請求項1〜5のいずれか1項において、線材は、断面形状が矩形状であることを特徴とする。このような構成となることで、線材を密に配置することができる。
請求項7に記載の本発明の回転電機の固定子は、請求項1〜6のいずれか1項において、線材は、固定子コアの全周にわたって連続して配設されていることを特徴とする。このような構成となることで、固定子巻線の製造コストが低減すると共に、電気的接続箇所に腐食等が発生することを低減できる。
また、請求項8に記載の本発明の回転電機は、請求項1〜7のいずれか1項に記載の回転電機の固定子と、回転電機の固定子の内周側または外周側に、周方向に交互に異なる磁極を形成している回転子と、を備えたことを特徴とする。
本発明の回転電機は、上記した回転電機の固定子を用いてなるものである。そして、上記の固定子が固定子巻線の冷却性に優れたものであることから、本発明の回転電機も、固定子巻線の過熱による特性の低下が抑えられたものとなっている。
以下に本発明の回転電機の固定子および回転電機を、実施の形態を用いてより具体的に説明する。
(実施形態例)
本実施形態の回転電機の構成を図1に示した。本実施形態の回転電機1は、略有底筒状の一対のハウジング部材100,101とが開口部同士で接合されてなるハウジング10と、ハウジング10に軸受け110,111を介して回転自在に支承される回転軸20に固定された回転子2と、ハウジング10の内部で回転子2を包囲する位置でハウジング10に固定された固定子3と、を備えている。
回転子2は、永久磁石により周方向に交互に異なる磁極を、固定子3の内周側と向き合う外周側に複数形成している。回転子2の磁極の数は、回転電機により異なるため限定されるものではない。本実施形態においては、8極(N極:4、S極:4)の回転子が用いられている。
固定子3は、図2に示したように、固定子コア30と、複数の各相巻線から形成される三相の固定子巻線4と、固定子コア30と固定子巻線4との間に配された絶縁紙5と、を備えた構成を有している。
固定子コア30は、図3に示したように、内周に複数のスロット31が形成された円環状を有している。複数のスロット31は、その深さ方向が径方向と一致するように形成されている。固定子コア30に形成されたスロット31の数は、回転子2の磁極数に対し、固定子巻線4の一相あたり2個の割合で形成されている。すなわち、8×3×2=48個のスロット31が形成されている。
固定子コア30は、図4に示した分割コア32を24個、周方向に配設して形成されている。分割コア32は、ひとつのスロット31を区画するとともに、周方向で隣接する分割コア32との間でひとつのスロットを区画する形状(径方向内方に伸びるティース部320と、ティース部320が形成されるバックコア部321)に形成されている。
固定子コア30(を構成する分割コア32)は、0.3mmの厚さの電磁鋼板410枚を積層させて形成されている。なお、積層された電磁鋼板の間には、絶縁薄膜が配置されている。なお、固定子コア30は、この電磁鋼板の積層体からだけでなく、従来公知の金属薄板および絶縁薄膜を用いて形成してもよい。
固定子巻線4は、複数の巻線(線材)40を所定の巻回方法で巻回してなる。固定子巻線4を構成する巻線40は、図5(A)に示したように、銅製の導体41と、導体41の外周を覆い導体41を絶縁する内層420及び外層421からなる絶縁皮膜42とから形成されている。内層420および外層421を合わせた絶縁皮膜42の厚みは、100μm〜200μmの間に設定されている。このように、内層420および外層421からなる絶縁皮膜42の厚みが厚いので、巻線40同士を絶縁するために巻線40同士の間に絶縁紙等を挟み込んで絶縁する必要がなくなっているが、図2に示したように、線材同士を絶縁するために絶縁紙5を配してもよい。
さらに、固定子巻線4の巻線40は、図5(B)に示したように、内層420および外層421からなる絶縁皮膜42の外周をエポキシ樹脂等からなる融着材48で被覆してもよい。これにより、回転電機に発生する熱により融着材48は絶縁皮膜42よりも早く溶融するので、同じスロット31に設置されている複数の巻線40同士が融着材48同士により熱接着する。その結果、同じスロット31に設置されている複数の巻線40が一体化し巻線40同士が鋼体化することで、スロット31の巻線40の機械的強度が向上する。
固定子巻線4は、図6に示したように、それぞれ二本の三相巻線(U1,U2,V1,V2,W1,W2)により形成されている。
固定子巻線4は、図7〜9に示したように、複数の巻線40を所定の形状に巻回してなる。固定子巻線4を構成する巻線40は、固定子コア30の内周側で周方向にそって波巻きされている。そして、固定子コア30に形成されたスロット31に収容される直線状のスロット収容部43と、隣り合ったスロット収容部43同士を接続するターン部44と、を備えている。スロット収容部43は、所定のスロット数(本実施形態では3相×2個=6個)ごとのスロット31に収容されている。ターン部44は、固定子コア30の軸方向の端面から突出して形成されている。
そして、固定子巻線4は、複数の巻線40をその端部が固定子コア30の軸方向の端面から突出した状態で、周方向に沿って波状に巻装して形成されている。固定子巻線4の1相は、周方向に沿って波状に巻装された2本の巻線40a,40bを他方の端部同士で接続されている。つまり、巻線40は、第一の巻線部40aと第二の巻線部40bとが接続された構成を有している。2本の巻線40a,40bは、同一スロット31にスロット収容部43が収容される。このとき、第一の巻線部40のスロット収容部43と、第二の巻線部のスロット収容部43は、スロット31の深さ方向で交互にスロット収容部43が位置するように設置されている。
固定子巻線4においては、この2本の巻線40a,40bを接合して形成された接合体を2個で1相をなしている。この2本の巻線40を接合して形成された接合体を6組用いて3相(U,V,W)×2個(倍スロット)の固定子巻線4を形成している。つまり、固定子巻線4は、2本の巻線40a,40b×3相(U,V,W)×2個(倍スロット)=12本の巻線40を用いて形成されている。
本実施形態においては、2本の巻線40を接合して形成された接合体は、周方向で4周巻回して固定子巻線4を形成している。すなわち、固定子巻線4は、2本の巻線40を接合して形成された接合体が径方向で4層重なった構成となっている。つまり、ひとつのスロット31内に4層×2本=8本のスロット収容部43が配置されている。2本の巻線40を接合して形成された接合体を巻回した固定子巻線4は、接合体の端部が最外周層側に位置し、二本の巻線40の接合部が最内周層側に位置するように、接合体を巻回している。
固定子巻線4のターン部44は、固定子コア30の軸方向両側にそれぞれ形成されている。
本実施形態において、固定子巻線4のターン部44は、固定子コア30の軸方向の端面に沿ってのびる段部をもつ階段状に形成されている。そして、固定子巻線4のターン部44は、軸方向に段部を3段で持つ第一のターン部44aと、軸方向に段部を2段で持つ第二のターン部44bと、から形成されている。
階段状の第一のターン部44aは、3段の階段状に形成されている。そして、3段の階段状の第一のターン部44aの一段の高さは、巻線40の略幅(高さ)分である。
階段状の第一のターン部44aは、固定子コア30から最も離れた位置に、周方向でクランク状に形成されたクランク部が形成されている。クランク部は、固定子コア30の端面に平行にのびている。
階段状の第二のターン部44bは、2段の階段状に形成されている。そして、2段の階段状の第二のターン部44bの二つの段部の間の高さは、巻線40の略幅(高さ)の二倍分である。第二のターン部44bの二つの段部の間は、巻線40が二つの段部を接続するように斜め方向にのびている。
階段状の第二のターン部44bは、第一のターン部44aと同様に、固定子コア30から最も離れた位置に、周方向でクランク状に形成されたクランク部が形成されている。クランク部は、固定子コア30の端面に平行にのびている。
巻線40のターン部44a,bのそれぞれは、クランク部を挟んで両側が対称な形状に形成されている。
本実施形態においては、第一のターン部44aと第二のターン部44bとが周方向で隣り合ったスロットから突出している。これにより、周方向に隣接するスロットから突出する巻線40同士が互いに干渉することを避けるために、固定子巻線4の固定子コア30の端面から突出した固定子巻線エンドの高さが高くなったり、あるいは固定子巻線エンドの径方向の幅が大きくなることを防止できる。その結果、固定子巻線エンドの高さが低くなる。さらに、固定子巻線エンドの径方向の幅が小さくなるので、固定子巻線4が径方向外側に張り出すことを防止できる。
また、本実施形態においては、図8〜9に示したように、第一のターン部44aと第二のターン部44bとの間には、二つのターン部44a,bの形状の違いにより、すき間が形成されている。
本実施形態の回転電機1では、ハウジング10内を冷媒が流れる。そして、ハウジング10内を流れる冷媒は、二つのターン部44a,bの間のすき間を通過し、巻線40のターン部44(コイルエンド)が冷却される。このように、本実施形態の回転電機1では、冷媒がターン部44の内部まで冷却することができる。
固定子巻線4は、スロット収容部43とターン部44とが交互に繰り返されるとともに、互いに巻装方向が異なる二つの巻線40をもつ成形体を各相(U1,U2,V1,V2,W1,W2)ごとに、6組用いて形成されている。二つの巻線のそれぞれは、中性点側の端部および相端子側の端部とは反対の端部側が、スロット収容部43を介して接続されている。各相の巻線40の結線方法は同様である。
固定子巻線4は、スロット収容部43とターン部44とが交互に繰り返されるとともに互いに巻装方向が異なる二本が接合された構成の巻線40の略帯状の成形体を形成し、この成形体を折り返し部が軸心側に位置するように所定の巻き数(たとえば、4回)に巻回して製造される。製造された固定子巻線4は、各相の巻線40のスロット収容部43が径方向に並んだ状態で形成されている。このとき、径方向に並んだスロット収容部43は、固定子巻線4の周方向で小間隔を隔てた状態で位置している。
本実施形態の回転電機1は、固定子巻線4の固定子コア30の軸方向の端面から突出するターン部44が、隣接する二つのターン部44a,bの段部の数が異なっている。つまり、隣接する二つのターン部44a,bが異なる形状となっている。この結果、隣接する二つのターン部44a,bの間に空隙が形成される。この空隙を冷媒が通過することで、固定子巻線4のターン部(コイルエンド)44が冷却される。この結果、本実施形態の回転電機1は、固定子3のターン部(コイルエンド)44が冷却性に優れたものとなっていることから、過熱による性能の低下が抑えられた回転電機となっている。
また、本実施形態の回転電機1の固定子3の固定子巻線4は、二つのターン部44a,bの段部の数を変化させただけであり、固定子コア30から突出するターン部44の突出高さを高くすることなく小型化を達成できるものとなっている。つまり、本実施形態の回転電機1は、体格の粗大化が抑えられた回転電機となっている。
実施形態の回転電機の構成を示した図である。 実施形態の回転電機の固定子の斜視図である。 実施形態の回転電機の固定子のコアを示した図である。 実施形態の回転電機の固定子のコアを構成するコア分体を示した図である。 実施形態の回転電機の固定子巻線を構成する各相巻線の構成を示す断面図である。 実施形態の回転電機の固定子巻線の結線を示した図である。 実施形態の回転電機の固定子の斜視図である。 実施形態の回転電機の固定子の部分拡大図である。 実施形態の回転電機の固定子の側面の部分拡大図である。
符号の説明
1:回転電機 10:ハウジング
110,111:軸受け
2:回転子 20:回転軸
3:固定子 30:固定子コア
31,31a〜h:スロット 32:分割コア
4:固定子巻線 40:各相巻線
41:導体 42:絶縁皮膜
43:スロット収容部 44:ターン部
48:融着材
5:絶縁紙

Claims (8)

  1. 周方向に複数のスロットを有する固定子コアと、
    該スロットに設置されている固定子巻線と、
    を備える回転電機の固定子において、
    該固定子巻線は、周方向の異なる前記スロットに設置されているスロット収容部と、該スロットの外部で該スロット収容部同士を接続しているターン部と、を有し、
    該ターン部は、該固定子コアの端面に平行な段部を有するとともに、
    該固定子コアの軸方向に複数設けられた該段部の数が互いに異なる第1のターン部と、第2のターン部と、を有することを特徴とする回転電機の固定子。
  2. 前記第1のターン部と前記第2のターン部とが周方向に隣り合った前記スロットから突出している請求項1記載の回転電機の固定子。
  3. 前記ターン部は、前記固定子コアから最も離れた位置にクランク形状に形成されたクランク部を有する請求項1〜2のいずれか1項に記載の回転電機の固定子。
  4. 前記クランク部は、前記線材の幅分だけ前記固定子コアの径方向にずれている請求項3記載の回転電機の固定子。
  5. 前記ターン部は、周方向に隣接した別のターン部と軸方向に重なるように配置されている請求項1〜4のいずれか1項に記載の回転電機の固定子。
  6. 前記固定子巻線は、断面形状が矩形状である請求項1〜5のいずれか1項に記載の回転電機の固定子。
  7. 前記固定子巻線は、前記固定子コアの全周にわたって連続して配設されている請求項1〜6のいずれか1項に記載の回転電機の固定子。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の回転電機の固定子と、
    該回転電機の固定子の内周側または外周側に、周方向に交互に異なる磁極を形成している回転子と、
    を備えたことを特徴とする回転電機。
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