JP4618927B2 - 化学気相成長用原料及び金属化合物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、特定の分子構造を有する金属化合物を含有してなる化学気相成長(CVD)法用原料及びこれに用いられる特定の金属化合物に関し、詳しくは、特定の分子構造を有するβ−ジケトン錯体であるトリスβ−ジケトネート化合物を含有してなる化学気相成長(CVD)用原料及びこれに用いられる特定の金属化合物に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
希土類元素を含む機能性セラミックスは、特異な電気特性、光学特性を有するので、半導体、電子部品、光学部品等に応用が期待されており、特に高温超電導体、半導体メモリ、光通信用回路等への応用が検討されている。
【0003】
その中でも、希土類元素をドープした光学ガラスは、特異的な光学特性を有するので、レーザ発信器、光ファイバ、光導波路、光増幅器等に応用されており、これらを用いた光通信用回路は高速大容量通信システムを実現するものとして期待されている。特にプラセオジム、エルビウム、ツリウムは、光増幅器のドーパントとして優れた性質を有しており有用な元素である。これらについては、例えば、マテリアルインテグレーションVol.13、No.9(2000)、化学工業時報(平成12年8月5日)に記載がある。
【0004】
これら希土類元素を含む機能性セラミックスの製造法としては、火焔堆積法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、塗布熱分解法やゾルゲル法等のMOD法が挙げられるが、組成制御性、段差被覆性に優れること、半導体デバイスと類似のプロセスを用いることが可能で量産化に適すること、ハイブリッド集積が可能である等の多くの長所を有しているので、化学気相成長(以下、CVDと記載することもある)法が最適な製造プロセスである。
【0005】
上記のCVD法に使用される原料としては、所望のセラミックスを構成する金属元素を気相の状態で容易に供給することができる化合物、即ち、揮発性が大きく、安定して揮発させることのできる金属化合物が求められており、また、原料の輸送等の操作性が良好である液体の温度域の大きいものが求められている。
【0006】
希土類元素のCVD原料としては、従来は、2,2,6,6−テトラメチルヘプタン−3,5−ジオン(THD)、ヘキサフルオロアセチルアセトン(HFA)のβ−ジケトン錯体が用いられてきた。これらは、高融点の固体なので、ライン中での析出、詰まり等が発生する場合があり、インラインでの原料の輸送性に問題点があった。また、原料の気化工程において、昇華現象でガス化させるか、あるいは、融点以上の高温に原料を保つ必要があり、揮発量不足、経時変化等の原料ガス安定供給性に問題があった。
【0007】
上記の問題点に対し、比較的低融点の金属化合物の使用が提案されている。例えば、J.inorg.nucl.Chem.,33(1971)に2,2−ジメチル−6,6,7,7,8,8,8−ヘプタフルオロオクタン−3,5−ジオン(FOD)の錯体、特開平9−41144号公報には、6−エチル−2,2−ジメチル−3,5−オクタンジオンの錯体、特開平9−228049号公報には2,2,6,6−テトラメチル−3,5−オクタンジオンの錯体が報告されているが、上記の問題に対して充分に満足できるものではない。また、特開平9−136857号公報に金属化合物に対し液体状態を与えるエーテル鎖を有するβ−ジケトンの金属化合物が報告されているが、希土類元素の金属化合物については、具体的に記載されていない。
【0008】
従って、本発明の目的は、化学気相成長(CVD)法による希土類元素を含む機能性セラミックスの製造に適した希土類元素の金属化合物を用いた化学気相成長(CVD)用原料及びこれに用いられる金属化合物を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、検討を重ねた結果、特定の分子構造を有するβ−ジケトン化合物を用いた金属化合物が、上記の問題点を解決し得ることを知見し、本発明に到達した。
【0010】
本発明は、上記知見に基づいてなされたものであり、下記一般式(I)で表される金属化合物(トリスβ−ジケトネート)を含有してなる化学気相成長(CVD)用原料に関する。
【化3】
(式中、Mは、希土類元素を表し、R1及びR2は、一方が炭素数1〜8のアルキル基を表し、他方が1−エチルペンチルを表す。)
【0011】
また、本発明は、上記のCVD原料に用いられる下記一般式(II)で表される新規の金属化合物に関する。
【化4】
(式中、Mは、希土類元素を表し、R3及びR4は、一方が第三ブチルを表し、他方が1−エチルペンチルを表す。)
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0013】
本発明に係る上記一般式(I)で表される金属化合物において、Mで表される希土類元素としては、スカンジウム、イットリウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウムが挙げられる。
【0014】
また、R1 又はR2 で表される炭素数1〜8のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、第二ブチル、第三ブチル、アミル、イソアミル、第三アミル、1−エチルブチル、1,1−ジメチルプロピル、1−メチルペンチル、1,1−ジメチルブチル、ヘキシル、シクロヘキシル、ヘプチル、イソヘプチル、第三ヘプチル、1−エチルペンチル、1−メチルシクロヘキシル、n−オクチル、イソオクチル、第三オクチル、2−エチルヘキシルが挙げられる。
【0016】
これらの中でも、上記一般式(II)で表される金属化合物は、特に原料供給性及び原料輸送性に優れるので、CVD原料として好ましいものである。
【0017】
上記一般式(II)において、Mは、上記一般式(I)と同様に希土類元素を表し、R3及びR4は、一方が第三ブチルを表し、他方が1−エチルペンチルを表す。
【0018】
上記のMで表される希土類元素は、得られる機能性セラミックスの組成により、任意に選ばれるものである。例えば、酸化銅系高温超電導体の原料としては、イットリウム、ランタン、セリウム、ネオジム、サマリウム、イッテルビウムが挙げられ、強誘電体半導体メモリの原料としては、ランタン、プラセオジムが挙げられ、光ファイバ増幅器用のドーパント原料としては、プラセオジム、エルビウム、ツリウムが挙げられる。
【0019】
本発明に係る上記の金属化合物の具体例としては、例えば、下記に例示する化合物No1〜4が挙げられる。尚、下記式では、便宜上R1とR2又はR3とR4を区別した形で記載しているが、これは、金属原子と配位子であるβ−ジケトンとの錯体化合物を表す方法の一つであり、R1とR2又はR3とR4を厳密に区別しているものではない。化合物No.1〜4は、25℃で液体又はガラス状の固体であり、130℃の低温度で充分な流動性を有する液体であるので、CVD原料として輸送性に特に優れるので好ましい。
【0020】
【化5】
【0021】
本発明に係る上記の金属化合物において、その製造方法は、特に制限を受けることはなく、希土類元素の塩とβ−ジケトンとの反応等の周知一般の方法を用いることができる。例えば、塩化物、硝酸塩等の無機塩又はその水和物と、該当するβ−ジケトン化合とを水酸化ナトリウム、アンモニア、アミン等の塩基の存在下で反応させて製造してもよく、トリメトキシド、トリエトキシド、トリイソプロポキシド、トリブトキシド等の低分子アルコールのアルコキシドと該当する配位子化合物との交換反応により製造してもよい。
【0022】
また、本発明に係る金属化合物の配位子である上記のβ−ジケトン化合物は、該当するケトンと有機酸エステル、酸ハライド等の有機酸の反応性誘導体との公知の縮合反応等によって得られる。例えば、6−エチル−2,2−ジメチルデカン−3,5−ジオンは、ピナコリンと2−エチルヘキサン酸フェニルをナトリウムアミドで縮合させることにより得ることができる。
【0023】
本発明の化学気相成長(CVD)用原料とは、上記の金属化合物を含有してなるものであり、その形態は、使用されるCVD法の輸送供給方法等の手法により適宜選択されるものである。
【0024】
輸送供給方法としては、CVD用原料を原料容器中で加熱及び/又は減圧することにより気化させ、必要に応じて用いられるアルゴン、窒素、ヘリウム等のキャリアガスと共に堆積反応部へと導入する気体輸送法、CVD用原料を液体又は溶液の状態で気化室まで輸送し、気化室で加熱及び/又は減圧することにより気化させて、堆積反応部へと導入する液体輸送法がある。気体輸送法の場合は、上記の金属化合物そのものがCVD用原料となり、液体輸送法の場合は、該金属化合物そのもの又は該金属化合物を有機溶剤に溶かした金属化合物溶液がCVD用原料となる。
【0025】
また、多成分系薄膜を製造する多成分系のCVD法においては、CVD用原料を各成分独立で気化、供給する方法(以下、シングルソース法と記載することもある)と、多成分原料を予め所望の組成で混合した混合原料を気化、供給する方法(以下、カクテルソース法と記載することもある)がある。カクテルソース法の場合、本発明に係る金属化合物と他の成分の金属供給源化合物との混合物或いは混合溶液がCVD用原料である。
【0026】
上記のCVD用原料に使用する有機溶剤としては、特に制限を受けることはなく周知一般の有機溶剤を用いることができる。該有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール、n−ブタノール等のアルコール類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸メトキシエチル等の酢酸エステル類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル等のエーテルアルコール類;テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジブチルエーテル等のエーテル類;メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、エチルブチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等のケトン類;ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン等の炭化水素類が挙げられ、これらは、溶質の溶解性、使用温度と沸点、引火点の関係等によって適宜選択される。
【0027】
上記の他の成分の金属供給源化合物としては、特に制限を受けず周知一般のCVD原料となる化合物を用いることができる。該金属供給源化合物としては、アルコール化合物、グリコール化合物、β−ジケトン化合物、シクロペンタジエン化合物等の1種類又は2種類以上の有機配位化合物と金属との化合物が挙げられる。
【0028】
上記の他の成分の金属供給源化合物としては、例えば、光学ガラスの場合は、珪素化合物としては、モノシラン、ジシラン、トリメチルシラン、トリエチルシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、ヘキサメトキシジシロキサン、ヘキサエトキシジシロキサン、トリメトキシメチルシラン、トリエトキシメチルシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン等が挙げられ、硼素化合物としては、ボラン、ジボラン、トリメチルボレート、トリエチルボレート、トリメチル硼素、トリエチル硼素等が挙げられ、リン化合物としては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリプロピルホスフェート、トリイソプロピルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリメチルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリプロピルホスファイト、トリイソプロピルホスファイト等が挙げられ、珪素−硼素化合物及び珪素−リン化合物としては、特開平2−12916号公報に記載のトリス(トリメチルシリル)ボレート、ジメチル(トリメチルシリル)ホスファイト等が挙げられ、ゲルマニウム化合物としては、ゲルマン、テトラメトキシゲルマニウム、テトラエトキシゲルマニウム、テトラプロポキシゲルマニウム、テトライソプロポキシゲルマニウム、テトラメチルゲルマニウム、テトラエチルゲルマニウム等が挙げられ、チタン化合物としては、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラブトキシチタン、ビス(2,2,6,6−テトラメチルヘプタン−3,5−ジオナト)ジイソプロポキシチタン、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチルヘプタン−3,5−ジオナト)チタン、ビス(2,2,6,6−テトラメチルヘプタン−3,5−ジオナト)チタン−2−メチルペンタン−2,4−ジオキシド等が挙げられ、アルミニウム化合物としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリブチルアルミニウム、トリメトキシアルミニウム、トリエトキシアルミニウム、トリイソプロポキシアルミニウム、トリス(2,2,6,6−テトラメチルヘプタン−3,5−ジオナト)アルミニウム等が挙げられる。
【0029】
本発明のCVD用原料には、必要に応じて金属化合物の安定性を付与するため求核性試薬を含有してもよい。該求核試薬としては、グライム、ジグライム、トリグライム、テトラグライム等のエチレングリコールエーテル類、18−クラウン−6、ジシクロヘキシル−18−クラウン−6、24−クラウン−8、ジシクロヘキシル−24−クラウン−8、ジベンゾ−24−クラウン−8等のクラウンエーテル類、エチレンジアミン、N, N’−テトラメチルエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、1,1,4,7,7−ペンタメチルジエチレントリアミン、1,1,4,7,10,10−ヘキサメチルトリエチレンテトラミン等のポリアミン類、サイクラム、サイクレン等の環状ポリアミン類、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸−2−メトキシエチル等のβ−ケトエステル類又はβ−ジケトン類が挙げられ、これら安定剤の使用量は、金属化合物1モルに対して0.1モル〜10モルの範囲で使用され、好ましくは1〜4モルで使用される。
【0030】
本発明のCVD用原料は、CVDのプロセス、製造されるセラミックスの用途及び組成等の使用方法により何ら制限を受けることなく用いることができる。
【0031】
上記のCVDプロセスは、原料の輸送供給方法、成膜方法等があり、例えば、輸送供給方法としては、上記の気体輸送法、液体輸送法、シングルソース法、カクテルソース法等が挙げられ、成膜法としては、熱CVD、プラズマCVD、光CVD等の方法を挙げることができる。
【0032】
上記の用途、組成については、例えば、高温超電導体用途の組成として、YBa2 Cu3 O7 −δ(YBC)型酸化物やYBC型酸化物のYサイトの一部又は全部をランタン、セリウム、ネオジム、サマリウム、イッテルビウム等のランタノイド元素で置換したREBC型酸化物が挙げられ、強誘電体メモリ用途としてはランタン添加チタン酸ジルコン酸鉛(PLZT)が挙げられ、光ファイバ増幅器用途等の光学ガラスの組成としては、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化ゲルマニウム、酸化チタンから選ばれる1種以上からなるシリカ系ガラス;フッ化ジルコニウム、フッ化バリウム、フッ化ランタン、フッ化アルミニウム、フッ化ナトリウムから選ばれる1種以上からなるフッ化物ガラス;テルライトガラス、硼酸ガラス、カルコゲナイトガラス、硫化物ガラス、ビスマス系ガラス、リン酸珪酸ガラス、硼酸珪酸ガラス等の光学ガラスにプラセオジム、エルビウム、ツリウムをドープしたものが挙げられる。
【0033】
【実施例】
以下、製造実施例及び評価例をもって本発明を更に詳細に説明する。しかしながら、本発明は以下の製造実施例及び評価例によって何ら制限を受けるものではない。
【0034】
[製造実施例1]
(化合物No.1の合成)
アルゴン置換した200ml反応用フラスコに乾燥メタノール20ml、6−エチル−2,2−ジメチルデカン−3,5−ジオン4.75g、水酸化ナトリウム0.84gを仕込み、これに三硝酸ランタン六水和物3.03gと乾燥メタノール20mlの混合物を加え、25℃で8時間撹拌した。系内を減圧濃縮して得られた残渣に乾燥ヘキサンを50ml加え、60℃で加熱撹拌した後、濾過、脱溶媒を行い、得られた残渣を、クーゲルロール分留器を用いて、150〜200℃、33〜23Paで減圧蒸留を行い目的物である軟化点123〜125℃のガラス状固体を4.70g(収率82.4%)得た。得られたガラス状固体について、以下の分析を行い目的物である化合物No.1であることを確認した。
【0035】
(分析値)
<元素分析>
炭素61.8質量%(理論値61.90%)、水素9.26質量%(理論値9.277%)、ランタン17.0質量%(理論値17.04%)
<スペクトル分析>
IR分析
・β−ジケトンに特徴的な1600cm-1のピークが無いことを確認し、以下に示すβ−ジケトン錯体に特徴的な吸収波数を確認した。
2959cm-1、2931cm-1、2873cm-1、2850cm-1、1573cm-1、1529cm-1、1504cm-1。
【0036】
[製造実施例2]
(化合物No.2の合成)
アルゴン置換した500ml反応用フラスコに乾燥メタノール35ml、6−エチル−2,2−ジメチルデカン−3,5−ジオン10.0g、水酸化ナトリウム1.77gを仕込み、これに三硝酸プラセオジム六水和物6.67gと乾燥メタノール35mlの混合物を加え、25℃で4時間撹拌した。系内を減圧濃縮して得られた残渣に乾燥ヘキサンを150ml加え、60℃で加熱撹拌した後、濾過、脱溶媒を行い、得られた残渣を、クーゲルロール分留器を用いて、150〜200℃、45〜25Paで減圧蒸留を行い目的物である軟化点104〜105℃のガラス状固体を10.35g(収率86.3%)得た。得られたガラス状固体について、以下の分析を行い目的物である化合物No.2であることを確認した。
【0037】
(分析値)
<元素分析>
炭素61.6質量%(理論値61.75%)、水素9.22質量%(理論値9.254%)、プラセオジム17.2質量%(理論値17.25%)
<スペクトル分析>
・IR分析
β−ジケトンに特徴的な1600cm-1のピークが無いことを確認し、以下に示すβ−ジケトン錯体に特徴的な吸収波数を確認した。
2959cm-1、2930cm-1、2873cm-1、2850cm-1、1571cm-1、1529cm-1、1502cm-1。
【0038】
[製造実施例3]
(化合物No.3の合成)
アルゴン置換した200ml反応用フラスコに乾燥メタノール50ml、6−エチル−2,2−ジメチルデカン−3,5−ジオン9.16g、水酸化ナトリウム1.62gを仕込み、これに三塩化エルビウム水和物(塩素含有量26.5%品)5.00gと乾燥メタノール50mlの混合物を加え、25℃で2時間撹拌した。系内を減圧濃縮して得られた残渣に乾燥ヘキサンを80ml加え、60℃で加熱撹拌した後、濾過、脱溶媒を行い、得られた残渣を、190〜210℃、45〜30Paで減圧蒸留を行い目的物である液体9.81g(収率93.1%)得た。得られた液体について、以下の分析を行い目的物である化合物No.3であることを確認した。
【0039】
(分析値)
<元素分析>
炭素59.7質量%(理論値59.82%)、水素8.92質量%(理論値8.965%)、エルビム19.8質量%(理論値19.83%)
<スペクトル分析>
・IR分析
β−ジケトンに特徴的な1600cm-1のピークが無いことを確認し、以下に示すβ−ジケトン錯体に特徴的な吸収波数を確認した。
2958cm-1、2931cm-1、2873cm-1、2850cm-1、1569cm-1、1527cm-1、1500cm-1。
【0046】
[評価例1]
(原料輸送性評価)
上記で得られた化合物と下記に示す比較化合物について、流動性を観察した。
25℃で流動性のあるものを◎、130℃で流動性のあるものを○、130℃で流動性のないものを×とした。結果を表1〜2に示す。尚、表2には、比較化合物の融点も記した。
【0047】
【表1】
【0048】
【表2】
【0049】
上記結果より、本発明に係る金属化合物は、CVD原料として充分な輸送性を有していることが確認できた。
【0050】
[評価例2]
(原料供給性評価)
図1に示すCVD装置を用いて、石英ガラス基板上に、原料温度180℃、酸化ガス;酸素、36sccm、キャリアガス;アルゴン、54sccm、反応圧力;400〜350Pa、反応温度;450℃で酸化エルビウム成膜を10分間行い、成膜後、アルゴン中で500℃、10分間アニールを行った。これを連続して十回繰り返し、一回目と十回目の膜厚を触針段差計で測定し、一回目と十回目の成膜速度の差により原料供給性を評価した。製造した薄膜の組成はX線回折で確認した。結果を表3に示す。
【0051】
【表3】
【0052】
上記結果より、本発明に係る金属化合物は、CVD原料として安定な原料供給性を有し、経時変化のない安定したCVDプロセスを与えることが確認できた。
【0053】
【発明の効果】
本発明は、CVD法による希土類元素を含む機能性セラミックスの製造に適した希土類元素の金属化合物を用いたCVD原料を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明に用いられるCVD装置の一例を示す概略説明図である。
Claims (4)
- 上記一般式(I)において、Mで表される希土類元素がランタン、プラセオジム、エルビウムから選ばれるものである請求項1に記載の化学気相成長用原料。
- 上記一般式(II)において、Mで表される希土類元素がランタン、プラセオジム、エルビウムから選ばれるものである請求項3に記載の金属化合物。
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