JP4107924B2 - 薄膜の製造方法及びこれに用いられる化学気相成長用原料組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、特定の珪素化合物を珪素供給源化合物として用いた化学気相成長法による複合酸化物薄膜の製造方法及び該製造方法に用いられる化学気相成長用原料組成物に関する。本発明の薄膜の製造方法により製造された複合酸化物薄膜は、ゲート絶縁膜、キャパシタ膜、光学ガラス等として有用なものである。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
強誘電体や高誘電体である珪素を含有する複合酸化物薄膜(以下、シリケート系薄膜と記載することもある)は、ゲート絶縁膜、キャパシタ膜等として次世代の半導体メモリやマイクロプロセッサ等のLSIへの応用が検討されている。例えば、ビスマスシリケートを用いたキャパシタ強誘電体(例えば、非特許文献1及び非特許文献2参照)や、チタニウム、ジルコニウム、ハフニウム、アルミニウム、ランタン、イットリウム等のシリケートを用いた高誘電体ゲート絶縁膜(例えば、非特許文献3参照)が報告されている。
【0003】
また、薄膜の製造法としては、火焔堆積法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、塗布熱分解法やゾルゲル法等のMOD法が挙げられるが、組成制御性、段差被覆性に優れること、量産化に適すること、ハイブリッド集積が可能である等多くの長所を有しているので、ALD(Atomic Layer Deposition)法を含む化学気相成長化学気相成長(以下、CVDと記載することもある)法が最適な製造プロセスである。
【0004】
CVD法に用いる珪素供給源化合物としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、ヘキサメトキシジシロキサン、ヘキサエトキシジシロキサン、トリメトキシメチルシラン、トリエトキシメチルシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン等が使用されており、チタニウム、ジルコニウム、ハフニウム、ビスマス、アルミニウム、ランタン、イットリウム等の金属供給源化合物としては、アルコキシド化合物、β−ジケトン錯体、シクロペンタジエニル系錯体、アミノ化合物、ハライド、ハイドライド、アルキル金属化合物、アリール金属化合物等が使用されている。また、1−メトキシ−2−メチル−2−プロパノールに代表されるエーテル基を有するアルコール化合物を配位子に用いたCVD用原料が報告されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。尚、特許文献1に記載された一般式(III)で表される化合物は、本発明における一般式(I)で表される珪素化合物を含むが、特許文献1には、珪素化合物について、具体的な構造の記載、使用法の記載及び評価の記載はない。
【0005】
一般に、従来のCVD法に用いられる珪素供給源化合物は、他の金属供給源化合物よりも揮発性が大きく、酸化分解し難いものである。そのため、多成分系の薄膜をCVD法により製造する場合、使用される原料の揮発特性や酸化分解性が異なると、薄膜の組成制御が困難になり、操作性、生産性等に支障をきたすという問題を生じるが、この問題を解決することができる珪素供給源化合物と他の金属供給源化合物との適切な組み合わせは見出されていなかった。
【0006】
【非特許文献1】
Jpn. J. Appl. Phys., vol39, pp.5679-5682, 2000
【非特許文献2】
日経エレクトロニクス、2002.5.20
【非特許文献3】
Semiconductor FDP World, 2001.10
【特許文献1】
特開平6−321824号公報
【特許文献2】
特開2002−69641号公報
【0007】
従って、本発明の目的は、特定の珪素化合物を用いた、組成制御性が良好な、珪素を含有する複合酸化物薄膜(シリケート系薄膜)の化学気相成長法による製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、検討を重ねた結果、特定のエーテルアルコール化合物を配位子に用いた珪素化合物が、他の金属供給源化合物との併用に適した揮発特性及び酸化分解性を有することを見出し、該珪素化合物を他の金属供給源化合物と共に用いることで、上記の問題点を解決し得ることを知見した。
【0009】
本発明は、上記知見に基づいてなされたものであり、珪素供給源化合物及び他の金属供給源化合物(本発明において、他の金属供給源化合物とは、珪素供給源化合物以外の金属供給源化合物を指す)を用いて、珪素及び他の金属原子(本発明において、他の金属原子とは、珪素以外の金属原子を指す)を含有してなる複合酸化物薄膜を、化学気相成長法により製造する方法において、上記珪素供給源化合物として、下記一般式(I)で表される珪素化合物を用い、上記他の金属供給源化合物として、下記一般式(a)〜(d)のいずれかで表されるものを用い、(A)チタニウム、ジルコニウム若しくはハフニウムを含有する複合酸化物薄膜、(B)ビスマスを含有する複合酸化物薄膜、(C)アルミニウムを含有する複合酸化物薄膜、又は(D)希土類原子を含有する複合酸化物薄膜を製造する薄膜の製造方法を提供するものである。
また、本発明は、下記一般式(I)で表される珪素化合物、及び下記一般式(a)〜(d)のいずれかで表される他の金属供給源化合物の少なくとも一種類からなる化学気相成長用原料組成物を提供するものである。また、本発明は、下記一般式(I)で表される珪素化合物、下記一般式(a)〜(d)のいずれかで表される他の金属供給源化合物の少なくとも一種類及び有機溶剤からなる化学気相成長用原料組成物を提供するものである。
【0010】
【化3】
【0011】
【化4】
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0013】
先ず、本発明の薄膜の製造方法において珪素供給源化合物として用いられる上記一般式(I)で表される珪素化合物について説明する。
この珪素化合物は、CVD法に用いられる従来の珪素供給源化合物と比較して、他の金属供給源化合物と併用する場合に、揮発特性及び酸化分解特性をあわせることが容易な化合物である。
【0014】
上記一般式(I)において、R1及びR2で表される炭素数1〜3のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピルが挙げられ、R3で表される炭素数1〜4で表されるアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、第二ブチル、第三ブチルが挙げられる。
【0015】
上記珪素化合物としては、上記一般式(I)におけるR1及びR2がメチル基であり、mが1であるものが、分子量が小さいので気化温度を低くでき、有機成分が少ないので製造される薄膜中の残留不純物の懸念が小さいので好ましい。このような好ましい上記珪素化合物としては、下記に示す化合物No.1〜6が挙げられる。
【0016】
【化5】
【0017】
また、上記の一般式(I)で表される珪素化合物を得る方法としては、珪素のハロゲン化物、硝酸塩等の無機塩と、該当するアルコール化合物とを、ナトリウム、水素化ナトリウム、ナトリウムアミド、水酸化ナトリウム、ナトリウムメチラート、アンモニア、アミン等の塩基の存在下で反応させる方法、珪素のハロゲン化物、硝酸塩等の無機塩と、該当するアルコール化合物のナトリウムアルコキシド、リチウムアルコキシド、カリウムアルコキシド等のアルカリ金属アルコキシドとを反応させる方法、珪素のテトラメトキシド、テトラエトキシド、テトライソプロポキシド、テトラブトキシド等の低分子アルコールのアルコキシドと、該当するエーテルアルコール化合物とをアルコール交換反応させる方法等が挙げられる。
【0018】
本発明の薄膜の製造方法は、上記一般式(I)で表される珪素化合物及び他の金属供給源化合物を用いて、(A)チタニウム、ジルコニウム若しくはハフニウムを含有する複合酸化物薄膜、(B)ビスマスを含有する複合酸化物薄膜、(C)アルミニウムを含有する複合酸化物薄膜、又は(D)希土類原子を含有する複合酸化物薄膜を製造するものである。
【0019】
先ず、(A)チタニウム、ジルコニウム若しくはハフニウムを含有する複合酸化物薄膜について、該複合酸化物薄膜を製造する際に用いる他の金属供給源化合物と併せて説明する。
(A)チタニウム、ジルコニウム若しくはハフニウムを含有する複合酸化物薄膜としては、例えば、TiSixOy、ZrSixOy、HfSixOyで表される複合酸化物薄膜が挙げられる。このx及びyの値は、特に制限を受けず、所望の値を選択できるものであり、例えば、ゲート絶縁膜に好適な組成としては、TiSi1〜4O4〜10、ZrSi1〜4O4〜10、HfSi1〜4O4〜10等が挙げられる。
【0020】
(A)チタニウム、ジルコニウム若しくはハフニウムを含有する複合酸化物薄膜の製造に使用される他の金属供給源化合物を、以下、チタニウム、ジルコニウム又はハフニウム供給源化合物ともいう。
【0023】
上記のチタニウム、ジルコニウム又はハフニウム供給源化合物としては、前記の珪素化合物と異なる配位子成分を有すると、供給系内において或いは堆積時に、原料同士の配位子交換反応により気化特性の変化や堆積反応の変化を生じ、安定した薄膜の製造プロセスが得られない場合があるので、前記の珪素化合物と同一のエーテルアルコール化合物を配位子成分として有する下記一般式(a)で表されるアルコキシド化合物を用いる。
【0024】
【化6】
【0025】
上記一般式(a)において、R4及びR5で表される炭素数1〜3のアルキル基としては、R1で例示したものが挙げられ、R6で表される炭素数1〜4のアルキル基としては、R3で例示したものが挙げられる。
【0026】
次に、(B)ビスマスを含有する複合酸化物薄膜について、該複合酸化物薄膜を製造する際に用いる他の金属供給源化合物と併せて説明する。
(B)ビスマスを含有する複合酸化物薄膜としては、例えば、キャパシタ膜に好適な組成であるBi2SiO5、Bi4(TiSi)3O12等が挙げられる。
【0027】
(B)ビスマスを含有する複合酸化物薄膜の製造に使用される他の金属供給源化合物(以下、ビスマス供給源化合物ともいう)としては、下記一般式(b)で表されるアルコキシド化合物を用いる。
【0028】
【化7】
【0029】
上記一般式(b)において、R4及びR5で表される炭素数1〜3のアルキル基としては、R1で例示したものが挙げられ、R6で表される炭素数1〜4のアルキル基としては、R3で例示したものが挙げられる。
【0030】
上記のビスマス供給源化合物としては、前記の珪素化合物と異なる配位子成分を有すると、供給系内或いは堆積時に、原料同士の配位子交換反応により気化特性の変化や堆積反応の変化を生じ、安定した薄膜の製造プロセスが得られない場合があるので、前記の珪素化合物と同一のエーテルアルコール化合物を配位子成分として有する上記一般式(b)で表されるアルコキシド化合物を用いる。
【0031】
次に、(C)アルミニウムを含有する複合酸化物薄膜について、該複合酸化物薄膜を製造する際に用いる他の金属供給源化合物と併せて説明する。
(C)アルミニウムを含有する複合酸化物薄膜としては、例えば、AlSixOy、ZrAlxSiOy、TiAlxSiOy、HfAlxSiOyで表される複合酸化物薄膜が挙げられる。x及びyの値は、特に制限を受けず、所望の値を選択できるものであり、例えば、AlSi0.8〜1.2O3.1〜3.9、ZrAl2SiO7、TiAl2SiO7、HfAl2SiO7である。
【0032】
(C)アルミニウムを含有する複合酸化物薄膜の製造に使用される他の金属供給源化合物を、以下、アルミニウム供給源化合物ともいう。
【0035】
上記のアルミニウム供給源化合物としては、前記の珪素化合物と異なる配位子成分を有すると、供給系内において或いは堆積時に、原料同士の配位子交換反応により気化特性の変化や堆積反応の変化を生じ、安定した薄膜の製造プロセスが得られない場合があるので、前記の珪素化合物と同一のエーテルアルコール化合物を配位子成分として有する下記一般式(c)で表されるアルコキシド化合物を用いる。
【0036】
【化8】
【0037】
上記一般式(c)において、R4及びR5で表される炭素数1〜3のアルキル基としては、R1で例示したものが挙げられ、R6で表される炭素数1〜4のアルキル基としては、R3で例示したものが挙げられる。
【0038】
次に、(D)希土類原子を含有する複合酸化物薄膜について、該複合酸化物薄膜を製造する際に用いる他の金属供給源化合物と併せて説明する。
(D)希土類原子を含有する複合酸化物薄膜としては、例えば、M2SixOyで表される複合酸化物薄膜が挙げられる。x及びyの値は、特に制限を受けず、所望の値を選択できるものであり、例えば、ゲート絶縁膜に好適な組成としては、YSi0.8〜1.2O3.1〜3.9、LaSi0.8〜1.2O3.1〜3.9等が挙げられる。
【0039】
(D)希土類原子を含有する複合酸化物薄膜の製造に使用される他の金属供給源化合物を、以下、希土類供給源化合物ともいう。
【0041】
希土類供給源化合物を表す下記一般式において、M2で表される希土類原子としては、スカンジウム、イットリウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム等が挙げられる。
【0042】
上記の希土類供給源化合物としては、前記の珪素化合物と異なる配位子成分を有すると、供給系内において或いは堆積時に、原料同士の配位子交換反応により気化特性の変化や堆積反応の変化を生じ、安定した薄膜の製造プロセスが得られない場合があるので、前記の珪素化合物と同一のエーテルアルコール化合物を配位子成分として有する下記一般式(d)で表されるアルコキシド化合物を用いる。
【0043】
【化9】
【0044】
上記一般式(d)において、R4及びR5で表される炭素数1〜3のアルキル基としてはR1で例示したものが挙げられ、R6で表される炭素数1〜4のアルキル基としては、R3で例示したものが挙げられる。
【0045】
次に、これらの化合物を用いた薄膜の製造方法について説明する。
本発明の薄膜の製造方法は、上記に説明した、珪素供給源化合物としての一般式(I)で表される珪素化合物と、他の金属供給源化合物とを用いた、化学気相成長(CVD)法によるものである。CVD法とは、気化させた珪素供給源化合物及び他の金属供給源化合物と、必要に応じて用いられる反応性ガスを基板上に導入し、次いで、珪素供給源化合物及び他の金属供給源化合物を基板上で分解及び/又は反応させて薄膜を基板上に成長、堆積させる方法を指す。本発明の薄膜の製造方法は、珪素供給源化合物及び/又は他の金属供給源化合物を含有してなるCVD用原料の輸送供給方法、堆積方法、製造条件、製造装置等については、特に制限を受けるものではなく、周知一般の条件、方法等を用いることができる。また、珪素供給源化合物と他の金属供給源化合物との使用比は、特に制限を受けずに、所望の薄膜組成を与える比を選択できる。
【0046】
上記の必要に応じて用いられる反応性ガスとしては、例えば、酸素、オゾン、二酸化窒素、一酸化窒素、水蒸気等が挙げられる。
【0047】
輸送供給方法としては、珪素供給源化合物及び/又は他の金属供給源化合物を含有してなるCVD用原料を原料容器中で加熱及び/又は減圧することにより気化させ、必要に応じて用いられるアルゴン、窒素、ヘリウム等のキャリアガスと共に堆積反応部へと導入する気体輸送法、及び、該CVD用原料を液体の状態又は該CVD用原料を有機溶剤と混合した溶液の状態で気化室まで輸送し、気化室で加熱及び/又は減圧することにより気化させて、堆積反応部へと導入する液体輸送法がある。
【0048】
また、珪素供給源化合物と他の金属供給源化合物とをそれぞれ別系列で気化、供給する方法(以下、シングルソース法と記載することもある)と、珪素供給源化合物と他の金属供給源化合物とを予め所望の組成で混合した混合原料を気化、供給する方法(以下、カクテルソース法と記載することもある)がある。本発明の薄膜の製造方法において、カクテルソース法の場合、珪素供給源化合物と他の金属供給源化合物とを混合した混合物、又は珪素供給源化合物及び他の金属供給源化合物と有機溶剤とを混合した溶液がCVD用原料である。
【0049】
上記のCVD用原料に使用する有機溶剤としては、特に制限を受けることはなく、周知一般の有機溶剤を用いることが出来る。該有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール、n−ブタノール等のアルコール類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸メトキシエチル等の酢酸エステル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル等のエーテルアルコール類;テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジブチルエーテル等のエーテル類;メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、エチルブチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等のケトン類;ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン等の炭化水素類;1−シアノプロパン、1−シアノブタン、1−シアノヘキサン、シアノシクロヘキサン、シアノベンゼン、1,3−ジシアノプロパン、1,4−ジシアノブタン、1,6−ジシアノヘキサン、1,4−ジシアノシクロヘキサン、1,4−ジシアノベンゼン等のシアノ基を有する炭化水素類;ピリジン、ルチジンが挙げられ、これらは、溶質の溶解性、使用温度と沸点、引火点との関係等によって適宜選択される。上記有機溶剤を使用する場合、該有機溶剤中における珪素供給源化合物及び他の金属供給源化合物の合計量が、0.01〜1モル/リットル、特に0.05〜0.5モル/リットルとなるようにするのが好ましい。
【0050】
上記の有機溶剤に水分が含まれていると、珪素供給源化合物及び/又は他の金属供給源化合物の加水分解により、CVD用原料中に固相が生成し、原料の供給性や得られる薄膜の膜質に支障をきたす場合がある。従って、上記の有機溶剤は、蒸留、吸着、化学反応等による脱水処理を施し、含水量を10ppm以下にすることが好ましく、1ppm以下にすることがより好ましい。
【0051】
また、上記の堆積方法としては、原料ガス又は原料ガスと反応性ガスを熱のみにより反応させ薄膜を堆積させる熱CVD,熱とプラズマを使用するプラズマCVD、熱と光を使用する光CVD、熱、光及びプラズマを使用する光プラズマCVD、CVDの堆積反応を素過程に分け、分子レベルで段階的に堆積を行うALD(Atomic Layer Deposition)が挙げられる。
【0052】
また、上記の製造条件としては、反応温度(基板温度)、反応圧力、堆積速度等が挙げられる。反応温度については、珪素供給源化合物及び他の金属供給源化合物が充分に反応する温度である250℃以上が好ましく、350〜800℃がより好ましい。また、反応圧力は、熱CVD、光CVDの場合、大気圧〜10Paが好ましく、プラズマを使用する場合は、10〜2000Paが好ましい。また、堆積速度は、原料の供給条件(気化温度、気化圧力)、反応温度、反応圧力によりコントロールすることが出来る。堆積速度は、大きいと得られる薄膜の特性が悪化する場合があり、小さいと生産性に問題を生じる場合があるので、1〜1000nm/分が好ましく、5〜500nm/分がより好ましい。
【0053】
また、本発明の薄膜の製造方法においては、薄膜層堆積の後に、より良好な電気特性を得るためにアニール処理を行ってもよく、段差埋め込みが必要な場合には、リフロー工程を設けてもよい。この場合の温度は、600〜1200℃であり、700〜1000℃が好ましい。
【0054】
最後に、前記一般式(I)で表される珪素化合物、前記一般式(a)〜(d)で表される他の金属供給源化合物の少なくとも一種類及び必要に応じて用いられる前記有機溶剤からなる化学気相成長(CVD)用原料組成物について説明する。該CVD用原料組成物は、本発明の薄膜の製造方法においてカクテルソース法を採用する場合に用いるCVD用原料である。また、その配合比は、特に制限を受けずに、所望の薄膜組成を与える比を選択できる。
【0055】
また、上記のCVD用原料組成物には、必要に応じて珪素供給源化合物である一般式(I)で表される珪素化合物及び/又は他の金属供給源化合物に安定性を付与するため求核性試薬を含有してもよい。該求核性試薬としては、グライム、ジグライム、トリグライム、テトラグライム等のエチレングリコールエーテル類、18−クラウン−6、ジシクロヘキシル−18−クラウン−6、24−クラウン−8、ジシクロヘキシル−24−クラウン−8、ジベンゾ−24−クラウン−8等のクラウンエーテル類、エチレンジアミン、N,N’−テトラメチルエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、1,1,4,7,7−ペンタメチルジエチレントリアミン、1,1,4,7,10,10−ヘキサメチルトリエチレンテトラミン等のポリアミン類、サイクラム、サイクレン等の環状ポリアミン類、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸−2−メトキシエチル等のβ−ケトエステル類又はβ−ジケトン類が挙げられ、安定剤としてのこれらの求核性試薬の使用量は、一般式(I)で表される珪素化合物と他の金属供給源化合物との合計量1モルに対して、通常0.1〜10モルの範囲で使用され、好ましくは1〜4モルで使用される。
【0056】
【実施例】
以下、製造例、実施例等をもって本発明を更に詳細に説明する。しかしながら、本発明は以下の実施例等によって何ら制限を受けるものではない。
【0057】
[製造例1]化合物No.1の製造
アルゴン置換した3000ml反応用フラスコに乾燥トルエン1000ml、四塩化珪素0.806モルを仕込み、−20℃に冷却した溶液に、該当するエーテルアルコール3.63モルとナトリウム3.22モルを反応させて得たナトリウムアルコキシドを滴下した。110℃で16時間還流した後、溶媒をトルエンからヘキサンに交換してから、固相を濾別し、ヘキサンを留去した。得られた残渣について減圧蒸留を行い、得られた液体について、1H−NMRと元素分析により構造を確認した。これらの結果を以下に示す。
1H−NMR;(ケミカルシフト(ppm);多重度;H数)
(1.53;s;24)、(3.20;s;12)、(3.34;s;8)
元素分析(Si/C/H;%)
6.35/54.0/10.5(理論値6.33/54.1/10.7)
【0058】
[製造例2]化合物No.3の製造
上記製造例1と同様の手順で合成を行い、圧力14Pa、塔頂温度116℃の留出分を分取し、目的物である無色透明の液体を収率43.5%で得た。得られた液体について、製造例1と同様に構造確認を行った。これらの結果を以下に示す。
1H−NMR:(ケミカルシフト(ppm);多重度;H数)
(0.87−0.92;t;12)、(1.53-1.59;m+s;32)、(3.31-3.35;t;8)、(3.44;s;8)
元素分析(Si/C/H;質量%)
5.07/60.0/11.2(理論値5.05/60.5/11.4)
【0059】
[評価例]
上記製造例1及び2それぞれにおいて得られた化合物No.1及び化合物No.3、テトラエトキシシラン(TEOS)、並びに以下に示す他の金属供給源化合物a−1〜d−1について、示差熱分析装置を用いて、30℃から10℃/分の昇温速度、乾燥アルゴン気流(100ml/分)下で、−50%温度(化合物の質量が50%減少する温度)を測定した。また、化合物No.1、化合物No.3及び以下に示す他の金属供給源化合物a−1〜d−1について、30℃から10℃/分の昇温速度、乾燥酸素気流(100ml/分)下で酸化分解温度(発熱ピークトップの温度)を測定した。TEOSについては、密閉容器中で酸素と混合し、500℃で1分間加熱し、酸化分解の有無を確認した結果、酸化分解は確認できなかった。化合物No.1、化合物No.3及びTEOSについてのこれらの結果を表1に示す。また、他の金属供給源化合物a−1〜d−1についてのこれらの結果を、化合物No.1又は化合物No.3及びTEOSとの比較と共に表2に示す。下記表2から明らかなように、−50%温度及び酸化分解温度について、他の金属供給源化合物a−1〜d−1とTEOSとの差は大きかったのに対して、他の金属供給源化合物a−1〜d−1と化合物No.1又は化合物No.3との差は小さく、本発明に係る珪素化合物は、揮発特性及び酸化分解特性が他の金属供給源化合物と類似していることが確認された。
【0060】
【化10】
【0061】
【表1】
【0062】
【表2】
【0063】
[実施例1]
ジエチレングリコールジメチルエーテルを金属ナトリウム線で乾燥した後、アルゴン気流下で、前留分10質量%及び釜残分10質量%をカットして蒸留精製を行い、水分量1ppm未満の溶媒を得た。この溶媒500mlに珪素供給源化合物として化合物No.1の0.15mol及び他の金属供給源化合物として化合物a−1の0.1molをアルゴン気流下で配合して珪素−チタニウムのカクテルソースを得た。図1に示すCVD装置を用いて、シリコンウエハ上に以下の条件により、得られたカクテルソースを用いて薄膜を製造した。製造した薄膜について、膜厚と組成の測定を行った。膜厚については、触針式段差計(タリステップ)で測定し、膜組成については、製造した薄膜を5%フッ酸水溶液に浸して得たはく離液をICP元素分析装置で測定した。測定結果を以下に示す。
(条件)気化室温度:170℃、原料流量:20mg/分、酸素ガス流量:100sccm、反応圧力:667Pa、反応時間:30分、基板温度:600℃
キャリアAr:200sccm
(結果)膜厚:95nm、組成比(モル):Si/Ti=1.00:1.01
【0064】
[実施例2]
図2に示すCVD装置を用いて、珪素供給源化合物である化合物No.1及び他の金属供給源化合物である化合物a−4を用い、シリコンウエハ上に以下の条件で、薄膜を製造した。得られた薄膜について、上記実施例1と同様に膜厚と組成の測定を行った。測定結果を以下に示す。
(条件)原料温度:珪素原料;85℃、ハフニウム原料;120℃、キャリアガス流量:珪素原料;50ml/分、ハフニウム原料;50ml/分、酸素ガス流量:100sccm、反応圧力:667Pa、反応時間:30分、基板温度:450℃、成膜後のアニール処理:酸素アルゴン混合雰囲気下、600℃、30分
(結果)膜厚:120nm、組成比(モル):Si/Hf=1.00:1.03
【0065】
[実施例3]
図2に示すCVD装置を用いて、珪素供給源化合物である化合物No.1及び他の金属供給源化合物である化合物b−1を用い、シングルソース法により、シリコンウエハ上に以下の条件で、薄膜を製造した。製造した薄膜について、実施例1と同様に膜厚と組成の測定を行った。測定結果を以下に示す。
(条件)原料温度:珪素原料;85℃、ビスマス原料;100℃、キャリアガス流量:珪素原料;50ml/分、ビスマス原料;50ml/分、酸素ガス流量:100sccm、反応圧力:667Pa、反応時間:30分、基板温度:450℃、成膜後のアニール処理:酸素アルゴン混合雰囲気下、600℃、30分
(結果)膜厚:115nm、組成比(モル):Si/Bi=1.00:2.06
【0066】
[実施例4]
テトラヒドロフランを金属ナトリウム線で乾燥した後、アルゴン気流下で、前留分10質量%及び釜残分10質量%をカットして蒸留精製を行い、水分量1ppm未満の溶媒を得た。この溶媒500mlに珪素供給源化合物である化合物No.3の0.1mol及び他の金属供給源化合物である化合物b−2の0.12molをアルゴン気流下で配合して珪素−ビスマスのカクテルソースを得た。図1に示すCVD装置を用いて、シリコンウエハ上に以下の条件により、得られたカクテルソースを用いて薄膜を製造した。製造した薄膜については、実施例1と同様に膜厚と組成の測定を行った。測定結果を以下に示す。
(条件)気化室温度:170℃、原料流量:20mg/分、酸素ガス流量:100sccm、反応圧力:667Pa、反応時間:30分、基板温度:450℃、キャリアAr:200sccm
(結果)膜厚:88nm、組成比(モル):Si/Bi=1.00:1.97
【0067】
[実施例5]
エチレングリコールジエチルエーテルを金属ナトリウム線で乾燥した後、アルゴン気流下で、前留分10質量%及び釜残分10質量%をカットして蒸留精製を行い、水分量1ppm未満の溶媒を得た。この溶媒500mlに珪素供給源化合物である化合物No.1の0.2mol及び他の金属供給源化合物である化合物c−1の0.1molをアルゴン気流下で配合して珪素−アルミニウムのカクテルソースを得た。図1に示すCVD装置を用いて、シリコンウエハ上に以下の条件により、得られたカクテルソースを用いて薄膜を製造した。製造した薄膜については、実施例1と同様に膜厚と組成の測定を行った。測定結果を以下に示す。
(条件)気化室温度:170℃、原料流量:20mg/分、酸素ガス流量:100sccm、反応圧力:667Pa、反応時間:30分、基板温度:450℃、キャリアAr:200sccm
(結果)膜厚:102nm、組成比(モル):Si/Al=1.00:1.02
【0068】
[実施例6]
ジエチレングリコールジエチルエーテルを金属ナトリウム線で乾燥した後、アルゴン気流下で、前留分10質量%及び釜残分10質量%をカットして蒸留精製を行い、水分量1ppm未満の溶媒を得た。この溶媒500mlに珪素供給源化合物である化合物No.3の0.1mol及び他の金属供給源化合物である化合物d−1の0.1molをアルゴン気流下で配合して珪素−ランタンのカクテルソースを得た。図1に示すCVD装置を用いて、シリコンウエハ上に以下の条件により、得られたカクテルソースを用いて薄膜を製造した。製造した薄膜については、実施例1と同様に膜厚と組成の測定を行った。測定結果を以下に示す。
(条件)気化室温度:220℃、原料流量:20mg/分、酸素ガス流量:100sccm、反応圧力:667Pa、反応時間:30分、基板温度:600℃、キャリアAr:200sccm
(結果)膜厚:104nm、組成比(モル):Si/La=1.00:1.05
【0069】
上記実施例1〜6において、珪素供給源化合物として一般式(I)で表される珪素化合物を用いる本発明の薄膜の製造方法によって複合酸化物薄膜を製造したところ、組成制御性が良好であり、所望の組成を有する複合酸化物薄膜が得られた。
【0070】
【発明の効果】
本発明の薄膜の製造方法によれば、特定の珪素化合物を用いることによって、化学気相成長法により、珪素を含有する複合酸化物薄膜(シリケート系薄膜)を、良好な組成制御性で、製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の薄膜の製造方法においてカクテルソース法により薄膜を製造する際に用いられるCVD装置の一例を示す概要図である。
【図2】図2は、本発明の薄膜の製造方法においてシングルソース法により薄膜を製造する際に用いられるCVD装置の一例を示す概要図である。
Claims (6)
- 上記一般式(I)で表される珪素化合物及び上記一般式(a)〜(d)のいずれかで表される他の金属供給源化合物を、それらの混合物として用いるか、又は該珪素化合物及び該他の金属供給源化合物を、有機溶剤と混合した溶液として用いる請求項1記載の薄膜の製造方法。
- 上記一般式(I)で表される珪素化合物及び上記一般式(a)〜(d)のいずれかで表される他の金属供給源化合物を別個に用いる請求項1記載の薄膜の製造方法。
- 上記一般式(I)におけるR1及びR2がメチル基であり、mが1である請求項1〜3のいずれかに記載の薄膜の製造方法。
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