JP4059662B2 - 化学気相成長用銅原料及びこれを用いた薄膜の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、化学気相成長(以下、CVDと記載する)法に用いられるCVD用銅原料及び該原料を用いた銅系薄膜の製造方法に関し、詳しくは、特定の構造を有する銅(II)のβ−ジケトネート錯体を含有してなるCVD用銅原料及びこれを用いた銅系薄膜の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
銅及び銅系合金は、高い導電性、エレクトロマイグレーション耐性からLSIの配線材料として応用されている。また、銅を含む複合金属酸化物は、高温超電導体等の機能性セラミックス材料として応用が期待されている。
【0003】
これら銅、銅を含む合金、銅を含む複合金属酸化物等の銅系薄膜の製造方法としては、スパッタリング法、イオンプレーティング法、塗布熱分解法等が挙げられるが、加工寸法が微細になるに従い、組成制御性、段差被覆性、段差埋め込み性に優れること、LSIプロセスとの適合性等からCVD法が最適な薄膜製造プロセスとして検討されている。
【0004】
しかしながら、銅系薄膜をCVD法によって製造するための銅のCVD原料は、これまでに提案されたものが必ずしも十分な特性を有しているものではなかった。例えば、ジピバロイルメタナト銅に代表される固体の銅(II)のβ−ジケトネート錯体は、固体ゆえ、原料の気化工程において、昇華現象でガス化させるか、あるいは、融点以上の高温に原料を保つ必要があり、揮発量不足、経時変化等の原料ガス供給性やインラインでの原料の輸送に問題があった。これに対し、固体原料を有機溶剤に溶解させた溶液を用いる溶液CVD法が特開平5−132776号公報、特開平8−186103公報等で提案されているが、固体原料では、気化装置中での温度変化や溶剤の部分的揮発、濃度変化が原因の固体析出を起こし、配管の詰まり等により供給量が経時的に減少する傾向があるので、成膜速度や銅組成制御性について安定した薄膜製造が得られないという問題が残っている。
【0005】
また、特開平10−140352号公報、特開平10−195654号公報には、液体で、揮発性の大きい原料である銅(I)のβ−ジケトネート錯体に有機珪素化合物を付加させた銅化合物の使用が提案されているが、該化合物は、熱的、化学的に不安定な化合物であり、低温で分解する、多成分系での使用に適さない等の問題がある。
【0006】
更に、米国特許5980983号には、二種類以上のβ−ジケトンの混合物を使用することで得た液体のβ−ジケトネートを用いる方法が報告されているが、混合物なので薄膜製造条件の安定性、固体析出に問題が残る。
【0007】
上記問題に対し、特開2001−181840号公報には、特定の構造を有する銅(II)のβ−ジケトネート錯体を含有しなるCVD原料が報告されている。しかし、この原料は、200℃以下の低い成膜温度(基体温度)で成膜した場合に膜中に原料由来の不純物が残留し、必要な電気的特性を得られない場合がある。特にLSI銅配線に用いた場合、不純物の炭素及び酸素により、充分な導電率を得られない問題があった。
【0008】
従って、本発明の目的は、各種CVD法に適する充分な熱的安定性を有し、低い成膜温度でも良好な電気的特性を与えるCVD用銅原料及び該原料を用いた銅系薄膜のCVD法による製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、検討を重ねた結果、特定の構造を有する銅(II)のβ−ジケトネート錯体を見出し、該化合物を用いることにより、上記課題を解決し得ることを知見した。
【0010】
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、下記一般式(1)で表される銅(II)のβ−ジケトネート錯体を含有してなる化学気相成長(CVD)用銅原料及び該CVD用銅原料を用いた化学気相成長(CVD)法による銅系薄膜の製造方法を提供するものである。
【化3】
【0011】
また、本発明は、上記の銅のCVD用銅原料について、特に良好な性能を与える配位子化合物である下記一般式(2)で表されるβ−ジケトン化合物を提供するものである。
【化4】
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0013】
本発明に係る銅(II)のβ−ジケトネート錯体は、下記に示す化合物No.1〜4である。なお、上記一般式(1)及び下記式では、便宜上β−ジケトン配位子化合物の末端アルキル基(2−ヘプチル基と炭素数1〜4の直鎖アルキル基)を区別した形で記載しているが、これは、金属原子と配位子であるβ−ジケトンとの錯体化合物を表す方法の一つであり、これらの位置を厳密に区別しているものではない。
【0014】
【化5】
【0015】
上記の錯体の中でも化合物No.2と化合物No.3が特に揮発性と熱的安定性バランスがよく好ましい構造である。
【0016】
本発明に係る銅(II)錯体を与えるβ−ジケトン化合物は、該当するケトンと有機酸エステル(低級アルコールエステル、フェニルエステル)化合物、酸ハライド等有機酸の反応性誘導体との縮合反応によって得ることができる。
【0017】
例えば、炭素数1〜4の直鎖アルキルメチルケトンと2−エチルヘキサン酸エステルとの縮合反応により得ることができ、また、2−ヘプチルメチルケトンと炭素数2〜5の直鎖の有機酸から誘導されるエステル化合物との縮合反応により得ることができる。また、これらの縮合反応の縮合剤としては、塩基性化合物が用いられる。該縮合剤としては、例えば、水素化ナトリウム、水素化リチウム、ナトリウムアミド、リチウムアミド、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、ナトリウム、リチウム、ナトリウムメチラート、リチウムメチラート等が挙げられる。
【0018】
本発明に係る銅(II)錯体を与えるβ−ジケトン化合物としては、上記一般式(2)で表されるβ−ジケトン化合物が好ましい。
【0019】
本発明に係る銅(II)のβ−ジケトネート錯体について、その製造方法は、何ら制限を受けず、β−ジケトン化合物と銅塩との公知の反応によって得ることができ、例えば、水酸化銅(II)と該当するβ−ジケトン化合物から合成される。
【0020】
本発明の化学気相成長(CVD)用銅原料とは、上記の銅(II)のβ−ジケトネート錯体を含有してなるものであり、その形態は、使用されるCVD法の輸送供給方法等の手法により適宜選択されるものである。
【0021】
CVD法の輸送供給方法としては、CVD用銅原料を原料容器中で加熱及び/又は減圧することにより気化させ、必要に応じて用いられるアルゴン、窒素、ヘリウム等のキャリアガスと共に堆積反応部へと導入する気体輸送法、CVD用銅原料を液体又は溶液の状態で気化室まで輸送し、気化室で加熱及び/又は減圧することにより気化させて、堆積反応部へと導入する液体輸送法がある。気体輸送法の場合は、上記の銅(II)のβ−ジケトネート錯体そのものがCVD用銅原料となり、液体輸送法の場合は、銅(II)のβ−ジケトネート錯体そのもの又は該銅(II)のβ−ジケトネート錯体を有機溶剤に溶かした銅(II)のβ−ジケトネート錯体溶液がCVD用銅原料となる。
【0022】
また、多成分系薄膜を製造する多成分系のCVD法においては、CVD用原料を各成分独立で気化、供給する方法(以下、シングルソース法と記載することもある)と、多成分原料を予め所望の組成で混合した混合原料を気化、供給する方法(以下、カクテルソース法と記載することもある)がある。カクテルソース法の場合、本発明に係る銅(II)のβ−ジケトネート錯体と他の成分の金属供給源化合物との混合物或いは混合溶液がCVD用原料である。
【0023】
上記のCVD用原料に使用する有機溶剤としては、特に制限を受けることはなく周知一般の有機溶剤を用いることができる。該有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール、n−ブタノール等のアルコール類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸メトキシエチル等の酢酸エステル類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル等のエーテルアルコール類;テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジブチルエーテル等のエーテル類;メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、エチルブチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等のケトン類;ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン等の炭化水素類、1−シアノプロパン、1−シアノブタン、1−シアノヘキサン、シアノシクロヘキサン、シアノベンゼン、1,3−ジシアノプロパン、1,4−ジシアノブタン、1,6−ジシアノヘキサン、1,4−ジシアノシクロヘキサン、1,4−ジシアノベンゼン等のシアノ基を有する炭化水素類、ピリジン、ルチジンが挙げられ、これらは、溶質の溶解性、使用温度と沸点、引火点の関係等によって適宜選択される。
【0024】
上記の他の成分の金属供給源化合物としては、特に制限を受けずCVD原料となる化合物を用いることができる。本発明に係る銅系薄膜とは、その組成物中に銅元素含有する薄膜のことであり、例えば、配線材料としては、銅、銅−アルミニウム合金、銅−銀合金等が挙げられ、高温超電導酸化物材料としては、YBa2Cu3O7-δ型酸化物(YBC系)超電導体やYBC系超電導体のYサイトをランタノイド元素で置換したREBC系超電導体、Bi2Sr2Ca2Cu2O8、Bi2Sr2Ca2Cu3O10等のBSCC系超電導体が挙げられる。従って、上記の他の金属供給源化合物としては、これらの金属と、アルコール化合物、グリコール化合物、β−ジケトン化合物及びシクロペンタジエン化合物等から選ばれる一種類又は二種類以上の有機配位化合物との化合物が挙げられる。
【0025】
また、本発明に用いられる上記のCVD用原料には、必要に応じて銅及び/又は他の金属供給源化合物の安定性を付与するため求核性試薬を含有してもよい。該求核試薬としては、グライム、ジグライム、トリグライム、テトラグライム等のエチレングリコールエーテル類、18−クラウン−6、ジシクロヘキシル−18−クラウン−6、24−クラウン−8、ジシクロヘキシル−24−クラウン−8、ジベンゾ−24−クラウン−8等のクラウンエーテル類、エチレンジアミン、N,N’−テトラメチルエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、1,1,4,7,7−ペンタメチルジエチレントリアミン、1,1,4,7,10,10−ヘキサメチルトリエチレンテトラミン等のポリアミン類、サイクラム、サイクレン等の環状ポリアミン類、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸−2−メトキシエチル等のβ−ケトエステル類又はβ−ジケトン類が挙げられ、これら求核性試薬(安定剤)の使用量は、金属化合物1モルに対して0.1〜10モルの範囲で使用され、好ましくは1〜4モルの範囲で使用される。
【0026】
本発明の銅系薄膜の製造方法とは、上記一般式(1)で表される銅(II)のβ−ジケトネート錯体を原料に用いた化学気相成長(CVD)法によるものである。CVD法とは、気化させた原料と必要に応じて用いられる反応性ガスを基体上に導入し、次いで、原料を基体上で分解及び/又は反応させて薄膜を基体上に成長、堆積させる方法を指す。本発明の製造方法は、原料の輸送供給方法、堆積方法、製造条件、製造装置等については、特に制限を受けるものではない。
【0027】
上記の必要に応じて用いられる反応性ガスとしては、例えば、酸素、オゾン、二酸化窒素、一酸化窒素、水蒸気の酸化性ガス、水素等の還元性ガスが挙げられる。
【0028】
また、上記の輸送供給方法としては、上述した気体輸送法、液体輸送法、カクテルソース法、シングルソース法が挙げられる。
【0029】
また、上記の堆積方法としては、原料ガス又は原料ガスと反応性ガスを熱のみにより反応させセラミックスを堆積させる熱CVD、熱とプラズマを使用するプラズマCVD、水素原子源付プラズマCVD、熱と光を使用する光CVD、熱、光及びプラズマを使用する光プラズマCVD、CVDの堆積反応を素過程に分け、分子レベルで段階的に堆積を行うAL(atomic layer)−CVDが挙げられる。
【0030】
また、上記の製造条件としては、反応温度(基体温度)、反応圧力、堆積速度等が挙げられる。基体温度については、熱CVDの場合は原料である金属化合物が充分に反応する温度である200℃以上が好ましく、250〜800℃がより好ましい。また、プラズマを使用する場合は50〜350℃以上が好ましく、100〜300℃がより好ましい。反応圧力は、熱CVD、光CVDの場合、大気圧〜10Paが好ましく、プラズマを使用する場合は、5〜1000Paが好ましい。また、堆積速度は、原料の供給条件(気化温度、気化圧力、溶液供給量)、反応温度、反応圧力によりコントロールすることができる。堆積速度は、大きいと得られる薄膜の電気的な特性が悪化する場合があり、小さいと生産性に問題を生じる場合があるので、0.05〜1000nm/分が好ましく、0.2〜500nm/分がより好ましい。
【0031】
また、本発明の薄膜の製造方法においては、薄膜堆積の後に、より良好な電気特性を得るために不活性雰囲気、酸性雰囲気、還元性雰囲気又はこれらとプラズマの併用での処理を行ってもよく、段差埋め込みが必要な場合には、リフロー工程を設けてもよい。これらの処理温度は、100〜1200℃であり、150〜1000℃が好ましい。
【0032】
また、上記基体としては、例えば、シリコン、窒化チタンや窒化タンタル等のバリア層を堆積したシリコン、酸化ケイ素、絶縁ガラス、導電性金属等が挙げられる。
【0033】
【実施例】
以下、製造例、実施例をもって本発明を更に詳細に説明する。しかしながら、本発明は以下の製造例、実施例によって何ら制限を受けるものではない。
【0034】
[製造例1]
(6−エチルデカン−3,5−ジオンの合成)
アルゴン置換した3000ml反応用フラスコに、水分含量1ppm以下のテトラヒドロフラン700g、ナトリウムアミド83.74gを仕込み、系内を5℃以下に冷却しながら2−エチルヘキサン酸フェニルを216g滴下した。これを5℃以下を保ちながら15分撹拌した後、エチルメチルケトンを139.3g滴下し、50℃で3時間撹拌した。反応系を10℃以下に冷却し、有機相の1/5の容量の水を加え、更に系内がpH2以下になるまで希塩酸を加えてから油水分離して得た有機相を水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、水の順で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。得られた溶液を濃縮し、減圧蒸留(条件;搭頂125〜130℃、25〜20torr)して得た液体を更にシリカゲル、酢酸エチル−ヘキサン溶媒にてカラム精製を行い、目的物である6−エチルデカン−3,5−ジオンを52.7g(収率27.5%)得た。また、これについて、1H−NMR、IR、元素分析により構造を確認した。
【0035】
<分析結果>
・1H−NMR分析:(ケミカルシフト;ピーク形状;プロトン数)
(0.08〜0.86;m;6)(0.90〜0.95;t;3)(1.10〜1.29;m;4)(1.29〜1.43;m;2)(1.55〜1.67;m;2)(1.87〜1.95;m;1)(1.95〜2.05;q;2)(3.07;s;0.2)(5.25;s;0.9)(16.45;br;0.8)
・IR:(cm-1)
2962、2933、2875、1725、1606、1461、1378、1357、1259、1203、1145、1110、1064、950、775
・元素分析(質量%)
炭素;72.65(理論値72.68)、水素;11.16(11.18)
【0036】
[製造例2]
(7−エチルウンデカン−4,6−ジオンの合成)
アルゴン置換した5000ml反応用フラスコに、水分含量1ppm以下のテトラヒドロフラン1200g、ナトリウムアミド118.0gを仕込み、系内を5℃以下に冷却しながら2−エチルヘキサン酸フェニルを303.0g滴下した。これを5℃以下を保ちながら15分撹拌した後、2−ペンタノンを234.6g滴下し、50℃で5時間撹拌した。反応系を10℃以下に冷却し、トルエン100g、有機相の1/5の容量の水を加え、更に系内がpH2以下になるまで希塩酸を加えてから油水分離して得た有機相を水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、水の順で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。得られた溶液を濃縮し、減圧蒸留(条件;搭頂125〜130℃、20〜18torr)して得た液体を更にシリカゲル、酢酸エチル−ヘキサン溶媒にてカラム精製を行い、目的物である7−エチルウンデカン−4,6−ジオンを50.9g(収率17.6%)得た。また、これについて、1H−NMR、IR、元素分析により構造を確認した。
【0037】
<分析結果>
・1H−NMR分析:(ケミカルシフト;ピーク形状;プロトン数)
(0.73〜0.78;t;3)(0.08〜0.88;t+t;6)(1.15〜1.42;m+m+m;6)(1.43〜1.54;m;2)(1.56〜1.69;m;2)(1.89〜2.00;m+t;3)(3.12;s;0.09)(5.24;s;1)(16.56;br;0.8)
・IR:(cm-1)
2962、2933、2873、1725、1608、1461、1380、1357、1259、1214、1149、1091、1039、952、777
・元素分析(質量%)
炭素;73.54(理論値73.54)、水素;11.37(11.39)
【0038】
〔製造例3〕
(化合物No.2の合成)
500ml四つ口フラスコに水酸化銅(II)10.0g、トルエン200g、製造例1で得られた6−エチルデカン−3,5−ジオン41.0gを仕込み、生成する水を除きながら2時間還流した。反応液を冷却後、5Cの濾紙で濾過し、濾液を脱溶媒し、暗緑色液体44.6g(収率95.0%)を得た。得られた液体のIR吸収より、β−ジケトンに特徴的な1606cm-1のピークが無いことを確認し、以下に示す銅(II)のβ−ジケトナト錯体に特徴的な吸収波数を確認した。2960cm-1、2931cm-1、2873cm-1、1567cm-1、1519cm-1、1425cm-1、472cm-1。また、ICPによる銅含有量測定の結果は、理論値13.87質量%に対し13.83質量%でありよく一致した。
【0039】
[製造例4]
(化合物No.3の合成)
500ml四つ口フラスコに水酸化銅(II)10.0g、トルエン200g、製造例2で得られた7−エチルウンデカン−4,6−ジオン43.6gを仕込み、生成する水を除きながら2時間還流した。反応液を冷却後、5Cの濾紙で濾過し、濾液を脱溶媒し、暗緑色液体47.9g(収率96.1%)を得た。得られた液体のIR吸収より、β−ジケトンに特徴的な1600cm-1のピークが無いことを確認し、以下に示す銅(II)のβ−ジケトナト錯体に特徴的な吸収波数を確認した。2960cm-1、2927cm-1、2873cm-1、1571cm-1、1517cm-1、1425cm-1、487cm-1。また、ICPによる銅含有量測定の結果は、理論値13.07質量%に対し13.03質量%でありよく一致した。
【0040】
[実施例1]
(溶液CVD法による銅薄膜の製造)
図1に示すプラズマCVD装置を用いて、窒化チタンバリア層を施したシリコンウエハ上に、気化室温度200℃、原料流量;0.1ml/min、キャリアガス;アルゴン50sccm、反応性ガス;水素70sccm、反応圧力;50Pa、プラズマ出力20W、反応温度(基体温度);150℃で銅成膜を30分間行った。原料は、実施例1−1及び実施例1−2として、化合物No.2及び化合物No.3のそれぞれの0.15mol/リットル濃度オクタン溶液を使用し、比較例1−2及び比較例1−2として、上記化合物と類似構造である下記に示す比較化合物1及び比較化合物2のそれぞれの0.15mol/リットル濃度オクタン溶液用いた。
【0041】
得られた銅薄膜について、SIMS測定による薄膜中の不純物である炭素含有量、酸素含有量の評価、及び4探針法による表面抵抗の評価を行った。また、これを連続して10回繰り返し、1回目と10回目の膜厚を触針段差計で測定し、1回目と10回目の膜厚の差により経時変化率(10回目の膜厚/1回目の膜厚)の評価を行った。結果を表1に示す。
【0042】
【化6】
【0043】
【表1】
【0044】
[実施例2]
(CVD法による銅薄膜の製造)
図2に示すCVD装置を用いて、窒化タンタルバリア層を施したシリコンウエハ上に、原料温度130℃、キャリアガス;アルゴン40sccm、反応性ガス;水素50sccm、反応圧力;600〜500Pa、反応温度(基体温度);400℃で銅成膜を20分間行った。原料は、化合物No.1〜No.3を用いた。成膜後、アルゴン中で500℃、10分間アニールを行い上記実施例1と同様に薄膜の表面抵抗と経時変化率を評価した。結果を表2に示す。
【0045】
【表2】
【0046】
【発明の効果】
本発明は、各種CVD法に適する充分な熱安定性を有し、低い成膜温度でも良好な電気的特性を与えるCVD用銅原料及び該原料を用いた銅系薄膜のCVD法による製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の銅系薄膜の製造方法に用いられる溶液CVD装置の一例を示す概要図である。
【図2】図2は、本発明の銅系薄膜の製造方法に用いられるCVD装置の他の例を示す概要図である。
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