JP4618299B2 - 圧電薄膜フィルタ - Google Patents

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Description

【技術分野】
【0001】
本発明は圧電薄膜フィルタに関し、詳しくは、共振子を格子型に接続した圧電薄膜フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
共振子を格子型に接続したフィルタにおいて、フィルタ特性を急峻にするために容量を付加することが提案されている。
【0003】
例えば図23に示すように、入力端子2,5と出力端子3,6との間に、直列腕共振子4,7と並列腕共振子8,9とが格子型に接続され、並列腕共振子8,9に並列に容量10,11を接続する、弾性表面波(SAW)フィルタ1の回路構成が提案されている。(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】
特許第3389911号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような回路構成にすると、直列腕共振子の周波数が並列腕共振子の周波数より高い場合、通過帯域の低域側の急峻性が改善され、通過帯域から離れた周波数において大きな減衰が得られる。逆に、直列腕共振子の周波数が並列腕共振子の周波数より低い場合、上記とは反対側に通過帯域の高域側が急峻なフィルタ特性になる。
【0005】
SAWフィルタでは、並列腕共振子と直列腕共振子のγ値(=1/k)が同一である。直列腕共振子と並列腕共振子のγ値が同じで、共振周波数のみが異なっている場合、通過帯域近傍において減衰極ができず、通過帯域近傍のフィルタ特性の急峻性が悪化する。そこで、特許文献1のように容量を付加することによって、フィルタ特性の急峻性を改善することができる。容量は、例えば圧電基板上に一対のくし型電極を形成することにより、共振子と同時に形成することができる。
【0006】
電極面積を調整することにより、並列腕共振子の容量を直列腕共振子の容量より小さくし、例えば、並列腕共振子の容量を0.18pF、直列腕共振子の容量を0.3pF、付加容量を0.12pFとすることができる。この場合、並列腕共振子の容量0.18pFと付加容量0.12pFとの和が、直列腕共振子の容量0.3pFと等しいので、付加容量込みの並列腕共振子のインピーダンスと直列腕共振子のインピーダンスとは、共振周波数から離れた周波数域において同一になる。これにより、通過帯域から離れた周波数において大きな減衰量を得られる。
【0007】
図1(a)に、1つの共振子の等価回路を示す。Lは直列インダクタンス、Cは直列容量、Rは直列抵抗、Cは並列容量である。この共振子に並列に付加容量Cxを並列に接続すると、図1(b)に示すようになる。付加容量Cxを並列に接続すると、直列容量Cはそのままで、並列容量がC'=C+Cxの共振子と同等となる。そして、容量比は、γ=C/C=1/k(kは電気機械結合係数)から、γ'=C'/C=1/k'に大きくすることができる。したがって、付加容量が並列に接続された並列腕共振子は、直列腕共振子に対してγ値が大きくされ、直列腕共振子と並列容量が同じにされた共振子であると見なせる。
【0008】
ここで、k=2・Δf/fr=1/γ=C/C(又は、k=C/C')となることについて説明する。
【0009】
まず、k=2・Δf/frと定義される。Δf=fa−fr、frは共振周波数、faは反共振周波数である。
【0010】
図1(a)の等価回路のパラメータを用いると、
fr=1/{2π(L・C1/2
fa=1/[2π{L・C・C/(C+C)}1/2]=fr・(1+1/γ)1/2
である。
【0011】
ここで、1≪γであるので、
fa=fr・(1+1/γ)1/2≒fr・{1+1/(2・γ)}
これにより、Δf=fa−fr=fr/(2・γ)となり、
=2・Δf/fr=1/γ=C/C
となる。
【0012】
上記のように容量を付加するSAWフィルタの回路構成を、単純にバルク弾性波(BAW)フィルタに置き換えると、基板上に容量を形成する場合には、容量を形成するための特別な工程が増えるという問題点がある。
【0013】
本発明は、かかる実情に鑑み、特別な工程を追加することなく、通過帯域から離れた周波数における大きな減衰量を得るとともに、通過帯域近傍の両側で急峻性を改善することができる、共振子を格子型に接続した圧電薄膜フィルタを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、上記課題を解決するために、以下のように構成した圧電薄膜フィルタを提供する。
【0015】
圧電薄膜フィルタは、一対の電極の間に圧電薄膜が挟まれた複数の第1、第2及び第3の共振子を備える。前記第2の共振子が、格子型に接続された直列腕共振子又は並列腕共振子のいずれか一方を構成する。並列に接続された前記第1及び前記第3の共振子が、格子型に接続された直列腕共振子又は並列腕共振子の他方を構成する。前記第2の共振子の容量は、前記第1の共振子の容量より大きい。前記第3の共振子の容量は、前記第2の共振子の前記容量と前記第1の共振子の前記容量との差に略等しい。前記第1の共振子の共振周波数は、前記第2の共振子の共振周波数より高い。前記第3の共振子の反共振周波数は、前記第2の共振子の前記共振周波数より大きく、前記第1の共振子の前記共振周波数より小さい。
【0016】
上記構成において、第2の共振子が、格子型に接続された直列腕共振子を構成し、並列に接続された第1及び第3の共振子が、格子型に接続された並列腕共振子を構成する。あるいは、第2の共振子が、格子型に接続された並列腕共振子を構成し、並列に接続された第1及び第3の共振子が、格子型に接続された直列腕共振子を構成する。
【0017】
上記構成によれば、直列腕共振子と並列腕共振子との容量が略等しいので、通過帯域から離れた周波数において大きな減衰量を得ることができる。
【0018】
また、通過帯域の両側で急峻に減衰するフィルタ特性を得ることができる。すなわち、第1の共振子に並列に接続される第3の共振子は、第1の共振子の共振周波数と反共振周波数の間において容量性を持ち、第1の共振子に並列に容量を付加したのと同等である。そのため、第3の共振子によって、第1の共振子の反共振点を共振点側に近づけ、通過帯域の高域側のフィルタ特性の急峻性を改善することができる。一方、通過帯域低域側近傍において、並列に接続した第1及び第3の共振子と第2の共振子とのインピーダンスが符号を含めて同じになる周波数(極)ができる。これにより、通過帯域の低域側の急峻性を改善することができる。
【0021】
好ましくは、前記第1の共振子と前記第3の共振子の容量の和が、前記第2の共振子の容量と等しい。
【0022】
上記構成によれば、直列腕共振子の容量と並列腕共振子の容量とを等しくすることで、通過帯域外でのインピーダンスが一致するため、帯域外の減衰量が大きなフィルタを得ることができる。
【0023】
また、本発明は、上記課題を解決するために、以下のように構成した圧電薄膜フィルタを提供する。
圧電薄膜フィルタは、一対の電極の間に圧電薄膜が挟まれた複数の第1、第2及び第3の共振子を備える。前記第2の共振子が、格子型に接続された直列腕共振子又は並列腕共振子のいずれか一方を構成する。並列に接続された前記第1及び前記第3の共振子が、格子型に接続された直列腕共振子又は並列腕共振子の他方を構成する。前記第2の共振子の容量は、前記第1の共振子の容量より大きい。前記第1の共振子と前記第3の共振子の容量の和が、前記第2の共振子の容量と異なる。前記第1の共振子の共振周波数は、前記第2の共振子の共振周波数より高い。前記第3の共振子の反共振周波数は、前記第2の共振子の前記共振周波数より大きく、前記第1の共振子の前記共振周波数より小さい。
【0024】
上記構成によれば、直列腕共振子の容量と並列腕共振子の容量とが異なることで、通過帯域の両外に減衰極を形成することができる。これによって、より急峻な減衰特性を持ったフィルタが得られる。
【0025】
上記各構成において、好ましくは、前記第3の共振子の共振周波数が、前記第2の共振子の共振周波数と一致している。
上記構成によれば、厚み方向の振動を利用するBAW共振子により圧電薄膜フィルタを構成する場合、第3の共振子と第2の共振子とを同じ膜厚で形成できるため、工程数を削減できる。また、低周波側の通過帯域端で急峻に減衰するフィルタ特性とすることができる。
好ましくは、前記第1の共振子の反共振周波数と共振周波数の差が、前記第2の共振子の反共振周波数と共振周波数の差より小さい。
【0026】
上記構成によれば、2つの動作周波数を用いることで、通過帯域の両側で急峻な減衰特性を持ったフィルタが得られる。
【発明の効果】
【0027】
本発明の圧電薄膜フィルタによれば、特別な工程を追加することなく、通過帯域から離れた周波数における大きな減衰量を得るとともに、通過帯域近傍の両側で急峻性を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】共振子及び共振子に容量を付加したときの等価回路を示す回路図である。
【図2】インピーダンス特性を示すグラフである。
【図3】フィルタの回路図である。(実施例1)
【図4】インピーダンス特性のグラフである。(実施例1)
【図5】インピーダンス特性のグラフである。(実施例1)
【図6】フィルタ特性のグラフである。(実施例1)
【図7】フィルタ特性のグラフである。(実施例1)
【図8】フィルタの回路図である。(比較例)
【図9】フィルタ特性のグラフである。(実施例1、比較例)
【図10】フィルタ特性のグラフである。(実施例1、比較例)
【図11】フィルタ特性を示すスミスチャートである。(実施例1、比較例)
【図12】フィルタの回路図である。(実施例2)
【図13】インピーダンス特性のグラフである。(実施例2)
【図14】インピーダンス特性のグラフである。(実施例2)
【図15】フィルタ特性のグラフである。(実施例2)
【図16】フィルタ特性のグラフである。(実施例2)
【図17】インピーダンス特性のグラフである。(実施例3)
【図18】フィルタ特性のグラフである。(実施例3)
【図19】フィルタ特性のグラフである。(実施例3)
【図20】インピーダンス特性のグラフである。(実施例4)
【図21】フィルタ特性のグラフである。(実施例4)
【図22】フィルタ特性のグラフである。(実施例4)
【図23】フィルタの回路図である。(従来例)
【符号の説明】
【0029】
10,40 フィルタ
C_1 並列腕共振子(第1の共振子)
C_2 直列腕共振子(第2の共振子)
Cx_1 付加共振子(第3の共振子)
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態について、図3〜図22を参照しながら説明する。
【0031】
<実施例1> 実施例1の圧電薄膜フィルタ10について、図3〜図11を参照しながら説明する。
【0032】
図3の回路図に示すように、圧電薄膜フィルタ10は、直列腕共振子C_2と並列腕共振子C_1とが格子型に接続されたラティス型フィルタである。すなわち、2つの直列腕共振子C_2が、入力端子11と出力端子13との間、入力端子12と出力端子14との間に、それぞれ接続されている。2つの並列腕共振子C_1が、入力端子11と出力端子14との間、入力端子12と出力端子13との間に、それぞれ接続されている。さらに、各並列腕共振子C_1には、それぞれ、付加共振子Cx_1が並列に接続されている。
【0033】
直列腕共振子C_2の容量は、並列腕共振子C_1の容量より大きい。付加共振子Cx_1の容量は、直列腕共振子C_2の容量と並列腕共振子C_1の容量との差に略等しい。これによって、通過帯域から離れた周波数において、圧電薄膜フィルタ10は、大きな減衰量を得ることができる。
【0034】
また、並列腕共振子C_1の共振周波数は、直列腕共振子C_2の共振周波数より高い。付加共振子Cx_1の反共振周波数は、直列腕共振子C_2の共振周波数より大きく、並列腕共振子C_1の共振周波数より小さい。これにより、通過帯域の高域側で急峻に減衰するフィルタ特性を得ることができる。
【0035】
すなわち、並列腕共振子C_1に並列に接続される付加共振子Cx_1は、並列腕共振子C_1の共振周波数と反共振周波数の間において容量性を持ち、並列腕共振子C_1に並列に容量を付加したのと同等である。そのため、付加共振子Cx_1によって、並列腕共振子C_1の反共振点を共振点側に近づけ、通過帯域の高域側のフィルタ特性の急峻性を改善することができる。
【0036】
一方、通過帯域低域側近傍において、並列に接続した並列腕共振子C_1と付加共振子Cx_1の合成インピーダンスと、直列腕共振子C_2のインピーダンスとが、符号を含めて同じになる周波数(極)ができる。これにより、通過帯域の低域側の急峻性を改善することができる。
【0037】
一例として、並列腕共振子C_1の容量が0.18pF、直列腕共振子C_2の容量が0.3pF、付加共振子Cx_1の容量が0.12pFの場合について説明する。
【0038】
並列腕共振子C_1の反共振周波数は5460MHz、k=5.8%である。付加共振子Cx_1の反共振周波数は5240MHz、k=5.8%である。直列腕共振子C_2の反共振周波数は5265MHz、k=5.8%である。
【0039】
図4及び図5に、それぞれの共振子について動作周波数を変えた場合のインピーダンス特性を示す。図6及び図7に、フィルタ特性を示す。図5は、図4の一部拡大図である。図6は、図7の一部拡大図である。
【0040】
図4及び図5において、太線15は直列腕共振子C_2のインピーダンス特性を示す。細線16は、並列腕共振子C_1のインピーダンス特性を示す。破線16xは、付加共振子Cx_1のインピーダンス特性を示す。鎖線17は、並列腕共振子C_1と付加共振子Cx_1とを並列に接続したときの合成インピーダンス特性を示す。
【0041】
並列腕共振子C_1と付加共振子Cx_1の動作周波数が異なるため、並列腕共振子C_1の共振周波数と反共振周波数の範囲において、付加共振子Cx_1は容量特性しか持っておらず、特許文献1と同様に、容量が付加された状態となり、特許文献1と同様の原理で、kが変化する。
【0042】
図5に示すように、通過帯域外の点18(5.070GHz、23.902Ω)で、直列腕共振子C_2のインピーダンス特性曲線15と、並列腕共振子C_1と付加共振子Cx_1の合成インピーダンス特性曲線17とが一致している。これにより、図6及び図7に示すように、通過帯域の近傍に減衰極19が生じ、急峻かつ帯域外減衰の大きなフィルタ特性が得られる。
【0043】
この例では、3種類の共振子C_1、C_2、Cx_1は、それぞれ異なる動作周波数を持つ。そのため、BAW共振子により圧電薄膜フィルタ10を作製する場合には、各共振子C_1、C_2、Cx_1ごとに、膜厚・構造を変化させる必要があり、工程が増える。
【0044】
図8は、比較例のラティス型フィルタ20の回路図である。比較例のラティス型フィルタ20は、入力端子21,22と出力端子23,24との間に、2つの直列腕共振子C_4と2つの並列腕共振子C_3とが格子型に接続され、各並列腕共振子C_3には、それぞれ、容量Cxが並列に接続されている。パラメータは、実施例1のラティス型フィルタ10と同様とする。すなわち、並列腕共振子C_3は、容量が0.18pF、反共振周波数が5460MHz、k=5.8%である。付加容量Cxの容量は、0.12pFである。直列腕共振子C_4は、容量が0.30pF、反共振周波数が5265MHz、k=5.8%である。
【0045】
比較例と実施例について、図9に伝送特性(S21)、図10に反射特性(S11)、図11に反射特性(S11)のスミスチャート(周波数1.000GHz〜9.000GHz)をそれぞれ示す。図9〜図11において、実施例の特性は実線30〜32で示し、比較例の特性は破線33〜35で示している。
【0046】
図9に示すように、符号36で示す通過帯域の低域側において、実施例30は、比較例33よりも急峻性が改善される。また、符号37で示す通過帯域の高域側においては、実施例30は、比較例33と同程度に、急峻性が改善される。
【0047】
図10に示すように、実施例31は比較例34よりS11(反射)を低減する。これは、図11に示すように、通過帯域低域側近傍におけるインピーダンスが、比較例35では容量性インピーダンス(水平軸より下側)であるのに対し、実施例32では定抵抗円上をプラス側に大きくなる方向にシフトした誘導性インピーダンスとなり、50Ωポイント38付近で巻いているためである。
【0048】
<実施例2> 実施例2の圧電薄膜フィルタ40について、図12〜図16を参照しながら説明する。
【0049】
実施例2では、2種類の動作周波数を持たせて、工程を増やさずに、付加共振子を並列に接続する。
【0050】
図12の回路図に示すように、圧電薄膜フィルタ40は、実施例1と同様に、入力端子41,42と出力端子43,44との間に、2つの直列腕共振子C_2と2つの並列腕共振子C_1とが格子型に接続され、さらに、各並列腕共振子C_1に、それぞれ、付加共振子Cx_1が並列に接続されている。
【0051】
圧電薄膜フィルタ40では、実施例1と異なり、付加共振子Cx_1の共振周波数と、直列腕共振子C_2の共振周波数とを同じにする。厚み方向の振動を利用するBAW共振子により圧電薄膜フィルタ40を構成する場合、付加共振子Cx_1と直列腕共振子C_2とを同じ膜厚で形成できるため、工程数を削減できる。
【0052】
一例として、並列腕共振子C_1の容量が0.18pF、直列腕共振子C_2の容量が0.3pF、付加共振子Cx_1の容量が0.12pFの場合について説明する。
【0053】
並列腕共振子C_1の反共振周波数は5440MHz、k=5.8%である。付加共振子Cx_1の反共振周波数は5245MHz、k=5.8%である。直列腕共振子C_2の反共振周波数は5245MHz、k=5.8%である。
【0054】
図13及び図14に、それぞれの共振子について動作周波数を変えた場合のインピーダンス特性を示す。図15及び図16に、フィルタ特性を示す。図14は、図13の一部拡大図である。図15は、図16の一部拡大図である。
【0055】
図13及び図14において、太線45は直列腕共振子C_2のインピーダンス特性を示す。図13において、細線46は、並列腕共振子C_1のインピーダンス特性を示す。鎖線46xは、付加共振子Cx_1のインピーダンス特性を示す。図14において、細線47は、並列腕共振子C_1と付加共振子Cx_1とを並列に接続したときの合成インピーダンス特性を示す。
【0056】
図14に示すように、直列腕共振子C_2のインピーダンス特性曲線45の通過帯域外の共振点45a(5.105GHz、2.988Ω)と、並列腕共振子C_1と付加共振子Cx_1の合成インピーダンス特性曲線47の共振点47aとの周波数が一致している。これにより、図15及び図16に示すように、通過帯域の近傍に減衰極49が生じ、急峻かつ帯域外減衰の大きなフィルタ特性が得られる。
【0057】
付加共振子Cx_1は、並列腕共振子C_1ではなく、2つの直列腕共振子C_2に、それぞれ並列に接続してもよい。この場合に、付加共振子Cx_1の動作周波数は、並列腕共振子C_1の動作周波数と同じする。
【0058】
動作周波数が異なる直列腕共振子C_2又は並列腕共振子C_1のいずれか一方に、直列腕共振子C_2又は並列腕共振子C_1の他方と動作周波数が同じである付加共振子Cx_1を並列に接続することで、フィルタ特性を改善することができる。
【0059】
<実施例3> 実施例3のフィルタについて、図17〜図19を参照しながら説明する。
【0060】
実施例3では、2種類の動作周波数と、互いに異なるkを持たせて、通過帯域の両側の帯域端近傍に急峻な減衰を持たせる。回路図は、実施例1及び実施例2と同じであるので省略する。
【0061】
並列腕共振子又は直列腕共振子のどちらか一方に付加する付加共振子の共振周波数が、付加共振子を付加しない他方の共振子の共振周波数と一致するようにする。すなわち、周波数は2種類とする。
【0062】
さらに、付加共振子と、付加対象となる共振子のkを変える。kを変える方法としては、
(1)電極と圧電膜の比率を変えること
(2)2倍波で動作させること
があげられる。
【0063】
(1)の具体例として、振動部分の構成と膜厚値を表1に示す。
【表1】
Figure 0004618299
【0064】
(2)の具体例として、振動部分の構成と膜厚値を表2に示す。
【表2】
Figure 0004618299
【0065】
一例として、並列腕共振子C_1の容量が0.2pF、直列腕共振子C_2の容量が0.3pF、付加共振子Cx_1の容量が0.1pFの場合について説明する。
【0066】
並列腕共振子C_1と付加共振子Cx_1とは、動作周波数とkとを変える。すなわち、並列腕共振子C_1の反共振周波数は5310MHz、k=2.7%である。付加共振子Cx_1の反共振周波数は5245MHz、k=5.8%である。直列腕共振子C_2の反共振周波数は5245MHz、k=5.8%である。
【0067】
図17にインピーダンス特性、図18及び図19にフィルタ特性を示す。
【0068】
図17において、太線50は直列腕共振子C_2のインピーダンス特性を、細線52は、並列腕共振子C_1と付加共振子Cx_1とを並列に接続したときの合成インピーダンス特性を示す。両者は、共振点50a(5.095GHz、2.988Ω),52aで周波数(共振周波数)が一致し、帯域外の点51(5.369GHz、214.857Ω)でインピーダンスが一致している。これにより、図18及び図19に示すように、通過帯域の低周波側と高周波側の両側近傍に減衰極56,57が生じ、急峻かつ帯域外減衰の大きなフィルタ特性となる。高域側の減衰極57により、実施例1、2よりも、フィルタ特性をさらに改善することができる。
【0069】
<実施例4> 実施例4のフィルタについて、図20〜図22を参照しながら説明する。
【0070】
実施例4では、直列腕と並列腕の合成容量を異ならせて、通過帯域の両側の帯域端近傍に急峻な減衰を持たせる。回路図は、実施例1及び2と同じであるので、省略する。
【0071】
実施例4では、実施例3と同様に、並列腕共振子又は直列腕共振子のどちらか一方に付加する付加共振子の共振周波数が、付加共振子を付加しない他方の共振子の共振周波数と一致するようにする。すなわち、周波数は2種類とする。
【0072】
実施例1〜3において、直列腕共振子C_2の容量と、並列腕共振子C_1及び付加共振子Cx_1の合成容量とを一致させていたが、実施例4では、若干、容量が異なるようにする。
【0073】
一例として、並列腕共振子C_1の容量が0.22pF、直列腕共振子C_2の容量が0.3pF、付加共振子Cx_1の容量が0.11pFの場合について説明する。
【0074】
並列腕共振子C_1の反共振周波数は5450MHz、k=5.8%である。付加共振子Cx_1の反共振周波数は5245MHz、k=5.8%である。直列腕共振子C_2の反共振周波数は5245MHz、k=5.8%である。
【0075】
図20にインピーダンス特性、図21及び図22にフィルタ特性を示す。図21は、図22の一部拡大図である。
【0076】
図20において、太線60は直列腕共振子C_2のインピーダンス特性を、細線62は、並列腕共振子C_1と付加共振子Cx_1とを並列に接続したときの合成インピーダンス特性を示す。両者は、帯域外の点61(4.796GHz、72.565Ω)と、点63(5.748GHz、118.154Ω)とで、インピーダンスが一致している。また、直列腕共振子C_2の共振点60a(5.095GHz、2.988Ω)、並列腕共振子C_1と付加共振子Cx_1とを並列に接続したときの共振点62aとの周波数が一致する。これにより、図21及び図22に示すように、通過帯域の低周波側と高周波側の両近傍に減衰極66,67,68が生じ、急峻かつ帯域外減衰の大きなフィルタ特性となる。
【0077】
<まとめ> 付加共振子は、直列腕共振子や並列腕共振子と同時に形成することができ、圧電薄膜フィルタの作製において、特別な工程を追加する必要はない。共振子であっても、共振子の共振周波数より低い周波数および反共振周波数より高い周波数では容量として動作するので、これを利用してγ値(=1/k)を調整し、通過帯域から離れた周波数における大きな減衰量を得るとともに、通過帯域近傍の両側で急峻性を改善することができる。
【0078】
5GHz帯W−LAN用のバンドパスフィルタでは、2.4GHz帯無線LANやその他の2GHz帯近辺を使用している機器などからの干渉を防ぐために、通過帯域から離れた周波数において大きな減衰量が得られ、通過帯域の両側で急峻に減衰させた特性が必要とされる。実施例1〜4の圧電薄膜フィルタは、このような要求を満たすので、5GHz帯W−LAN用のバンドパスフィルタに好適である。
【0079】
なお、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、種々変更を加えて実施することが可能である。
【0080】
例えば、並列腕共振子に付加共振子を並列に接続する代わりに、直列腕共振子に付加共振子を並列に接続してもよい。また、ラティス型フィルタの段数は、実施例1〜4の2段に限らず、1段であっても、3段以上であってもよい。

Claims (5)

  1. 一対の電極の間に圧電薄膜が挟まれた複数の第1、第2及び第3の共振子を備え、
    前記第2の共振子が、格子型に接続された直列腕共振子又は並列腕共振子のいずれか一方を構成し、
    並列に接続された前記第1及び前記第3の共振子が、格子型に接続された直列腕共振子又は並列腕共振子の他方を構成し、
    前記第2の共振子の容量は、前記第1の共振子の容量より大きく、
    前記第3の共振子の容量は、前記第2の共振子の前記容量と前記第1の共振子の前記容量との差に略等しく、
    前記第1の共振子の共振周波数は、前記第2の共振子の共振周波数より高く、
    前記第3の共振子の反共振周波数は、前記第2の共振子の前記共振周波数より大きく、前記第1の共振子の前記共振周波数より小さいことを特徴とする、圧電薄膜フィルタ。
  2. 前記第1の共振子と前記第3の共振子の容量の和が、前記第2の共振子の容量と等しいことを特徴とする、請求項1に記載の圧電薄膜フィルタ。
  3. 一対の電極の間に圧電薄膜が挟まれた複数の第1、第2及び第3の共振子を備え、
    前記第2の共振子が、格子型に接続された直列腕共振子又は並列腕共振子のいずれか一方を構成し、
    並列に接続された前記第1及び前記第3の共振子が、格子型に接続された直列腕共振子又は並列腕共振子の他方を構成し、
    前記第2の共振子の容量は、前記第1の共振子の容量より大きく、
    前記第1の共振子と前記第3の共振子の容量の和が、前記第2の共振子の容量と異なり、
    前記第1の共振子の共振周波数は、前記第2の共振子の共振周波数より高く、
    前記第3の共振子の反共振周波数は、前記第2の共振子の前記共振周波数より大きく、前記第1の共振子の前記共振周波数より小さいことを特徴とする圧電薄膜フィルタ。
  4. 前記第3の共振子の共振周波数が、前記第2の共振子の共振周波数と一致していることを特徴とする。請求項1ないし3のいずれか一つに記載の圧電薄膜フィルタ。
  5. 前記第1の共振子の反共振周波数と共振周波数との差が、前記第2の共振子の反共振周波数と共振周波数との差より小さいことを特徴とする、請求項1ないし4のいずれか一つに記載の圧電薄膜フィルタ。
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