JP2004048283A - 縦結合型弾性表面波フィルタ - Google Patents
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Abstract
【課題】従来のSAWフィルタでは、通過帯域近傍の周波数での減衰量は確保し易い反面、通過帯域から離れた周波数帯では減衰量が小さくなってしまうという問題があった。
【解決手段】少なくとも2組以上のIDT2,3,4の両側に、短絡グレーティング電極からなる反射器1,5を配した2端子対SAW共振器32の片側に、少なくとも一つ以上の1端子対SAW共振器33を並列要素として接続する。この1端子対SAW共振器33の共振周波数を2端子対SAW共振器32の通過帯域の中心周波数f0の1.1〜1.5倍の範囲の周波数にする。これにより、通過帯域の高周波側で通過帯域から離れた周波数帯でも減衰量が大きく、阻止域も広く、かつ通過帯域の損失が小さいSAWフィルタを実現する。
【選択図】 図1
【解決手段】少なくとも2組以上のIDT2,3,4の両側に、短絡グレーティング電極からなる反射器1,5を配した2端子対SAW共振器32の片側に、少なくとも一つ以上の1端子対SAW共振器33を並列要素として接続する。この1端子対SAW共振器33の共振周波数を2端子対SAW共振器32の通過帯域の中心周波数f0の1.1〜1.5倍の範囲の周波数にする。これにより、通過帯域の高周波側で通過帯域から離れた周波数帯でも減衰量が大きく、阻止域も広く、かつ通過帯域の損失が小さいSAWフィルタを実現する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば移動体用通信装置、例えば携帯電話・自動車電話等の主として高周波回路に用いられる弾性表面波(以下SAW)フィルタに関するものであり、特に通過帯域が低損失で、遮断帯域が高減衰であるSAWフィルタを提供するものである。
【0002】
【従来の技術】
現在、一般に使用されている携帯電話機は、複数の通信システムを使用できる、あるいは同じシステムでも異なる複数の周波数帯を使用できる、いわゆるデュアルバンド機、トリプルバンド機、マルチバンド機と呼ばれるものが主流である。日本においても某社のPDC用携帯電話機では、2つあるいは3つの周波数帯が使用されている。またW−CDMA方式の携帯電話サービスが開始されたが、全国展開には至っていないために、今後PDCと併用できる携帯電話機が登場するものと思われる。
世界的にみてもしばらくは、更にデュアルバンド機やトリプルバンド機の比率が上昇していくと思われ、同時に年々多機能化・高性能化が進み、パソコン機能の取り込みや通信速度の高速化等が進められている。
これにともない、部品数の増大により携帯電話機が大型化しかねないため、回路のLSI化や個々の部品の小型化等が同時に進められている。このような情勢の中で、主として高周波のフィルタとして用いられるSAW(弾性表面波)デバイスも年々小型化が図られている。
【0003】
またSAWフィルタは小型でフィルタとしての特性が優れているという特徴から、従来、携帯電話機ではRF・IFフィルタとして広く使用されてきたが、近年の特性改善に伴い、より低損失が求められるアンテナ直下のトップ用フィルタやデュプレクサにおいても、一般的にサイズが大きい誘電体フィルタや誘電体デュプレクサ等からの置換えが進んでいる。
【0004】
従来のSAWフィルタの電極構造として低損失なものの第1の例として、例えば特許第3191473号に開示されたものを以下に示す。図8は上記特許に示された1端子対弾性表面波共振器(以下1端子対SAW共振器)を梯子型に接続した構造のものであり、その伝送特性を図9に示す。図9においてf0は通過帯域の中心周波数、faはいわゆる反共振周波数である。
図8において、51は圧電基板、52は圧電基板51上に構成されたくし型電極、53は反射器である。これらは1端子対弾性表面波共振器54a,54bを構成している。また、56は入力端子、57は出力端子である。1端子型対弾性表面波共振器54a,54bはそれぞれ図10(a)に示す特性を有するので、2つの1端子型対弾性表面波共振器54a,54bの反共振周波数faを若干異なるように設定し、梯子型に接続することにより図9の特性が得られるのである。
図9では通過帯域近傍(周波数faの近く)の減衰量は十分である反面、通過帯域から離れた周波数帯(図9の両端)では減衰量が十分とは言えなくなっている。
【0005】
また、第2の例として上記特許に開示されたものを図11に示す。図11のものは、1つの2端子対SAW共振器55に1端子対SAW共振器54を直列要素として接続した構造であり、その場合図10(c)のような伝送特性を実現することができる。即ち2端子対弾性表面波共振器55は、単独では図10(b)に示す特性(スプリアスfs)を備える。そこで1端子対弾性表面波共振器54の反共振周波数faを前述のスプリアス周波数fsにあわせると図10(c)の特性となる。この場合、通過帯域の高周波側周波数での減衰量があまり必要でなければ、1端子対SAW共振器を接続しなくてもよい。
【0006】
従来は、主に前記2つの構造の組み合わせで、低損失なSAWフィルタを実現することが一般的であったが、これらの構造で低損失な特性を実現すると、誘電体フィルタ等の他方式のフィルタに比べ、通過帯域近傍の減衰量は確保し易い反面、通過帯域から離れた周波数帯(例えば図9のfaより高い周波数)では減衰量が少なくなってしまうという問題があった。
例えば通過帯域が800〜900MHz帯の携帯電話システム用においては、送受信間の遷移帯域幅が狭いEGSM(10MHz)やAMPS(20MHz)等では、デュプレクス周波数での減衰量において要求値を満たし易い反面、800MHzPDCの50MHzやそれ以上に遷移帯域幅が広くなった場合、従来のSAWフィルタでは要求値を満たすような減衰量を確保するのが難しくなる。また減衰量を確保するために、図8の梯子の段数を増やしたり、あるいは図11の2端子対SAW共振器55の段数を増やすと、挿入損失が大きくなるという問題があった。
【0007】
このような、十分な減衰量を得ることが難しいという課題を解決する発明として、特開平4−54011号には、1端子対SAW共振器を並列要素として接続し、かつ共振周波数をフィルタ通過帯域より高周波に設定するものが開示されている。この場合、2端子対SAW共振器の段数が2段、かつ、1端子対SAW共振器の共振周波数が2端子対SAW共振器特有の通過帯域近傍高周波側の段差部に設定されている。これは前記段差部の減衰量が十分でないため、減衰量を確保するよう1端子対SAW共振器が接続されているのだが、この場合2端子対SAW共振器の段数が2段で、かつ1端子対SAW共振器の共振周波数を通過帯域近傍でなければ、フィルタ全体としても50Ωの整合が取りにくいためこのような構成でしか使用されていなかった。この場合、挿入損失は大きくなるため、例えば800MHzPDCの挿入損失の要求は一般的に2.0dB以下であるが、低損失用として多く用いられるLiTaO3基板を用いても3.0dB以下の特性を実現させるのは非常に困難である。
【0008】
例えば、国内800MHzPDC受信側用では通過帯域が810〜843MHzで挿入損失の要求が一般的に2dB程度以下と非常に低損失な要求であり、また帯域外減衰量が最も必要な周波数は送信側の周波数である940〜958MHzで、一般的に−50dB以上の大きな減衰量が要求される。帯域外減衰量の周波数は通過帯域の中心周波数である826.5MHzの1.137倍以上であり、従来の構成においては前記要求を両方満たすことはできなかった。
なお、図11のように、1端子対SAW共振器54を直列要素として接続した構造において、通過帯域より高周波側でかつ通過帯域より離れた周波数帯に反共振周波数を設定した場合も、減衰量は改善できるが現実的に使用されている範囲内においては同じIDT容量、すなわち同じIDT面積の1端子対SAW共振器をそれぞれ、直列要素及び並列要素として接続した場合では、直列要素として接続した方が並列要素として接続した場合に比べ減衰量及び阻止域の幅があまり取ることが出来ない。よって、減衰量及び阻止域の幅をある程度広く確保しようとすれば、反共振周波数が異なるか、または同じである多くの1端子対SAW共振器を直列要素として多段に接続する必要があり、結果として通過帯域内の挿入損失が大きくまたSAWチップ部の電極パターンも大きくなってしまうため現実的ではない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
以上のように、従来のSAWフィルタでは、誘電体フィルタ等の他方式のフィルタに比べ通過帯域近傍の周波数での減衰量は確保し易い反面、通過帯域から離れた周波数帯では減衰量が小さくなってしまうという課題があった。
また減衰量を確保するために、フィルタの接続段数を増やしたり、あるいは2端子対SAW共振器の段数を増やすと、挿入損失が大きくなってしまうので、容易に段数は増やせないという課題があった。
【0010】
また、1端子対SAW共振器を並列要素として接続し、かつ共振周波数がフィルタ通過帯域より高周波に設定する場合でも、1端子対SAW共振器の共振周波数が、2端子対SAW共振器特有の通過帯域近傍の高周波側の段差部に設定しなければ、フィルタ全体として50Ωの整合が取りにくく、結果として挿入損失は大きくなるなど、帯域外減衰量を満たしつつ低損失を実現することが難しいという課題があった。
【0011】
【課題を解決するための手段】
この発明の縦結合型弾性表面波フィルタは、圧電基板上に形成され、少なくとも2組以上のくし型電極と、このくし型電極の両側に配置された短絡グレーティング電極からなる反射器と、前記くし形電極の1つに接続された入力端子とを有し中心周波数がf0の通過帯域を有する2端子対弾性表面波共振器、
前記2端子対弾性表面波共振器の片側に配置され、前記2端子対弾性表面波共振器に並列要素として接続されたくし形電極と、このくし形電極の両側に配置された短絡グレーティング電極からなる反射器と、このくし形電極のを有するとともに、共振周波数が前記f0の1.1倍以上1.5倍以下に設定された1端子対弾性表面波波共振器とを備えたものである。
【0012】
また、前記並列接続された1端子対弾性表面波共振器は複数あり、その内の少なくとも1つの共振周波数が、前記f0の1.1倍以上1.5倍以下としたものである。
【0013】
また、前記並列接続された1端子対弾性表面波共振器は複数あり、それぞれの共振周波数が前記f0の1.1倍以上1.5倍以下であるとともに互いに異なることを特徴とする請求項1に記載の縦結合型弾性表面波フィル前記1端子対弾性表面波共振器は複数あり、その内の1つの共振周波数が、前記f0の1.1倍以上1.5倍以下としたものである。
【0014】
また、圧電基板上に形成され、少なくとも2組以上のくし型電極と、このくし型電極の両側に配置された短絡グレーティング電極からなる反射器と、前記くし形電極の1つに接続された入力端子とを有し中心周波数がf0の通過帯域を有する2端子対弾性表面波共振器、
前記2端子対弾性表面波共振器に直列要素として接続されたくし形電極と、このくし形電極の両側に配置された短絡グレーティング電極からなる反射器とを有する1端子対弾性表面波共振器、
前記1端子対弾性表面波共振器に並列要素として接続されたくし形電極と、このくし形電極の両側に配置された短絡グレーティング電極からなる反射器とを有するとともに、共振周波数が前記f0の1.1倍以上1.5倍以下に設定された1端子対弾性表面波共振器とを備えたものである。
【0015】
また、並列要素として接続された前記1端子対弾性表面波共振器の共振周波数は、直列要素として接続された前記1端子対弾性表面波共振器の反共振周波数の1倍以上1.5倍以下としたものである。
【0016】
また、前記2端子対弾性表面波共振器の前記くし形電極は3組設けられているものである。
【0017】
また、前記1端子対弾性表面波共振器の出力端子に接続された特性インピーダンス整合用の素子を備えたものである。
【0018】
また、前記特性インピーダンス整合用素子は、前記1端子対弾性表面波共振器の出力端子に接続されたインダクタとしたものである。
【0019】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
本実施の形態の縦結合型弾性表面波フィルタ(以下SAWフィルタと言う)は、特にフィルタの通過帯域より高周波側で、かつ通過帯域よりある程度離れた周波数帯にて大きな減衰量が必要な場合、1つの2端子対SAW共振器に対し、1つ以上の1端子対SAW共振器を並列要素として接続し、かつこの1端子対SAW共振器の共振周波数がフィルタ通過帯域よりも高く、大きい減衰が必要な周波数帯になるように、IDTの周期を設定することにより、帯域内にて低損失な特性を確保しつつ、帯域外の周波数において大きな減衰量を実現するものである。
【0020】
図1は本発明の実施の形態1のSAWフィルタの構成図である。図において、1、5、6、8は短絡グレーティングからなる反射器、2、3、4、7はくし形電極(すだれ状電極またはIDTともいう)、30はIDT3に接続された入力端子、31はIDT7に接続された出力端子、9はIDT7から出力端子31に至る接続線の途中に接続されたインダクタである。
図1のものは励振可能な図示しない圧電基板上に3つのIDT2、3,4と、その両側に配置した短絡グレーティングからなる反射器1、5を有し、通過帯域中心周波数がf0の縦結合型2端子対SAW共振器32に、前記2端子対SAW共振器32の片側、すなわち図1の場合、下側のポートにIDT7とその両側に配置された反射器6、8を有する1端子対SAW共振器33を並列要素として接続して縦結合型弾性表面波フィルタを構成し、前記1端子対SAW共振器33の共振周波数を前記f0の1.1倍以上、1.5倍以下に、即ちフィルタの通過帯域よりも高周波側になるようIDT7の周期を設定している。そして1端子対SAW共振器33と同じポートに、即ち、出力端子に特性インピーダンスに整合させるためのインダクタ9を1個並列に接続している。なお図1では1端子対SAW共振器33は1個のみ図示しているが、複数個を並列に接続してよい。
【0021】
一般論として、整合の際には整合用のインダクタとコンデンサとを用いれば、整合前のインピーダンスがどのような値であれ、任意の特性インピーダンスに整合させることができるが、整合素子を多く使うと整合素子による損失が増加し、また同じ素子数でもインダクタのインダクタンス値及びコンデンサのキャパシタンス値の大きさによって損失分も大きく異なる。低損失にするにはできるだけ素子数を少なくし、かつ各素子の抵抗分を小さくすることが整合素子を含めたフィルタ全体の損失を低く抑えるためには重要である。
一般的に整合素子の損失分を小さくするには、インダクタのインダクタンス値はできるだけ小さく、またコンデンサのキャパシタンス値はできるだけ大きくする必要があるが、コンデンサの場合キャパシタンス値を大きくすれば一般的にサイズも大きくなるため小型化には不利である。そこで図1のものでは、1端子対SAW共振器33のIDT7の容量を、整合素子が並列接続のインダクタ9のみで済む(コンデンサを要しない)ように、最適に設定している。このインダクタ9のインダクタンス値をできるだけ小さくすれば一般的にインダクタのサイズも小型になり抵抗分も小さく低損失にすることができる。図1の構成では、2端子対SAW共振器32及び1端子対SAW共振器33をそれぞれ最適設計すれば、整合用インダクタ9のインダクタンス値をかなり小さくすることができるので、低損失化には非常に有利な構成である。
【0022】
具体的に、図1の構成にて、国内800MHzPDCの受信側用に最適設計したSAWフィルタを開発・作製し、電気特性を測定した結果を図3、図4に示す。図3より帯域外減衰量(940〜958MHz)が53dB程度、図4より通過帯域(810〜843MHz)での挿入損失が1.7dB程度と、従来例で具体例として示した数値の両方を満たしていることが分かる。またここでは整合用のインダクタ9にチップインダクタを用いており、図3,図4は前記チップインダクタを含めた特性である。チップインダクタのインダクタンス値は3.9nHと非常に小さなインダクタンス値にすることができ、インダクタの抵抗分が小さく済んでいることから低損失化に貢献している。
本実施の形態での阻止域周波数は、具体的には通過帯域の中心周波数f0から1.1倍以上、1.5倍以下の周波数範囲で特に効果が大きい。
【0023】
1端子対SAW共振器33を並列要素として使う場合、その前後にインダクタンス成分が接続されれば共振周波数での減衰量が大きくなり阻止域も広がるが、1端子対SAW共振器を圧電基板に形成した場合にはその前後との接続に電極パターンによる配線を介するため、一般的に配線によるインダクタンス成分が入ってしまう。また1端子対SAW共振器33とSAWフィルタパッケージ(図示しない)のグランド間の接続にワイヤを用いた場合には、更にワイヤのインダクタンス成分が入るため、減衰量も更に大きく阻止域も更に広くとることができる。
【0024】
実施の形態2.
図1の1端子対SAW共振器33は、前述のとおり複数個並列に接続してよい。この場合、これら複数の1端子対SAW共振器33の内の少なくとも1つのものの共振周波数が、前述のf0の1.1倍以上1.5倍以下であれば、前述の効果が得られる。そして共振周波数が前述の範囲内にあるものの数が増えれば、それに応じてその周波数での減衰量を大きくすることが出来る。
また、これら複数の1端子対SAW共振器33の共振周波数を、互いに少しずつ異なる値とすることにより、広い周波数範囲で減衰量を大きくすることが出来る。
いずれにしても、複数の1端子対SAW共振器33の共振周波数を任意に設定して、フィルタ全体としての周波数特性を任意に調整することが出来る。
【0025】
実施の形態3.
図2は本発明の実施の形態3の縦結合型弾性表面波フィルタの構成図である。
図2では実施の形態1の図1に対し、2端子対SAW共振器32と1端子対SAW共振器33の間に、IDT16とその両側に配置した反射器15、17を有する第2の1端子対SAW共振器34を直列要素として追加挿入した構成である。図2では第2の1端子対SAW共振器34は1このみ示しているが、複数個挿入してもよい。
図2の1端子対SAW共振器33の共振周波数の設定は実施の形態1の場合と同じである。また、図2の1端子対SAW共振器33の共振周波数が第2の1端子対SAW共振器の反共振周波数frの1倍以上1.5倍以下になるように、第2の1端子対SAW共振器の反共振周波数を設定する。こうすることにより、実施の形態1のものに比して更に帯域外減衰量を大きくすることができる。しかし挿入損失については第2の1端子対SAW共振器34を追加挿入した分、若干増えている。以上に説明した実施の形態1、2のいずれの構成を採用するかは、要求された特性に応じて選択すればよい。
【0026】
具体例として、図2の構成にて最適設計したSAWフィルタを作製し電気特性を測定した結果を図5、図6に示す。図5より帯域外減衰量(940〜958MHz)が61dB程度、図6より通過帯域(810〜843MHz)での挿入損失が2.1dB程度となっており、実施の形態1の例に対し、帯域外減衰量は大きくなっているが、挿入損失は若干増えている。また同様に整合用のチップインダクタ21を用いているが、インダクタンス値は3.6nHとここでも非常に小さなインダクタンス値にすることができた。
【0027】
なお実施の形態1、2のフィルタ単体としての構成に限らず、デュプレクサ等他の回路と組み合わせたものとしても、同様の効果が得られる。実施の形態1、2の構成を受信部のフィルタとした時の、デュプレクサとしての回路構成を図7に示す。
【0028】
【発明の効果】
以上のように、この発明の弾性表面波フィルタによれば、少なくとも2組以上のIDTの両側に、短絡グレーティング電極からなる反射器を配した通過中心周波数がf0の2端子対SAW共振器に1端子対SAW共振器を並列要素として接続し、かつこの1端子対SAW共振器の共振周波数をf0の1.1倍以上1.5倍以下にすることで、通過帯域にて低損失な特性を有し、通過帯域の高周波側で通過帯域から離れた周波数帯でも減衰量が大きくかつ阻止域も広いものとする効果が得られる。
【0029】
また、前記1端子対SAW共振器は複数個あり、そのうちの少なくとも1つの共振周波数を前記の範囲としたので、調整が簡単であるという効果が得られる。
【0030】
また、前記1端子対SAW共振器は複数個あり、それぞれの共振周波数が上記の範囲にあり、かつ、互いに異なるようにしたので、フィルタ全体とての特性を任意に調整できるという効果が得られる。
【0031】
また、1つ以上の1端子対SAW共振器を直列要素として接続したので、フィルタの減衰特性を更に大きくすることが出来る。
【0032】
また、直列要素として接続した1端子対SAW共振器の共振周波数を、並列接続された1端子対SAW共振器の反共振周波数の1.0〜1.5倍の範囲としたので、フィルタの減衰特性を更に大きくすることが出来る。
【0033】
また、2端子対SAW共振器のくし形電極は3組としたので、各共振器間の相互干渉が少なく、調整しやすいフィルタが得られるという効果が得られる。
【0034】
また、1端子対SAW共振器が接続された出力端子側に、特性インピーダンス整合素子を接続したので、任意のインピーダンスに調整できるという効果が得られる。
【0035】
また、インピーダンス整合としてインダクタのみで所定のインピーダンスを得られるように、SAW共振器を最適設計したので、小型で低損失なSAWフィルタを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態1の縦結合型SAWフィルタの構成図である。
【図2】実施の形態2の縦結合型SAWフィルタの構成図である。
【図3】図1の縦結合型SAWフィルタの伝送特性図である。。
【図4】図3の一部拡大図である。
【図5】図2の縦結合型SAWフィルタの伝送特性図である。
【図6】図5の一部の拡大図である。
【図7】実施の形態1、2の縦結合型SAWフィルタをデュプレクサに用いた場合の回路構成図である。
【図8】従来の弾性表面波フィルタの構成図である。
【図9】図8のフィルタの特性図である。
【図10】図8のフィルタの特性説明図である。
【図11】従来の別の弾性表面波フィルタの構成図である。
【符号の説明】
1、5、6、8、15、17 反射器、
2〜4、7、16 くし形電極(IDT)、
9 インダクタ、 32 2端子対弾性表面波共振器、
33 1端子対弾性表面波共振器、
34 第2の1端子対弾性表面波共振器。
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば移動体用通信装置、例えば携帯電話・自動車電話等の主として高周波回路に用いられる弾性表面波(以下SAW)フィルタに関するものであり、特に通過帯域が低損失で、遮断帯域が高減衰であるSAWフィルタを提供するものである。
【0002】
【従来の技術】
現在、一般に使用されている携帯電話機は、複数の通信システムを使用できる、あるいは同じシステムでも異なる複数の周波数帯を使用できる、いわゆるデュアルバンド機、トリプルバンド機、マルチバンド機と呼ばれるものが主流である。日本においても某社のPDC用携帯電話機では、2つあるいは3つの周波数帯が使用されている。またW−CDMA方式の携帯電話サービスが開始されたが、全国展開には至っていないために、今後PDCと併用できる携帯電話機が登場するものと思われる。
世界的にみてもしばらくは、更にデュアルバンド機やトリプルバンド機の比率が上昇していくと思われ、同時に年々多機能化・高性能化が進み、パソコン機能の取り込みや通信速度の高速化等が進められている。
これにともない、部品数の増大により携帯電話機が大型化しかねないため、回路のLSI化や個々の部品の小型化等が同時に進められている。このような情勢の中で、主として高周波のフィルタとして用いられるSAW(弾性表面波)デバイスも年々小型化が図られている。
【0003】
またSAWフィルタは小型でフィルタとしての特性が優れているという特徴から、従来、携帯電話機ではRF・IFフィルタとして広く使用されてきたが、近年の特性改善に伴い、より低損失が求められるアンテナ直下のトップ用フィルタやデュプレクサにおいても、一般的にサイズが大きい誘電体フィルタや誘電体デュプレクサ等からの置換えが進んでいる。
【0004】
従来のSAWフィルタの電極構造として低損失なものの第1の例として、例えば特許第3191473号に開示されたものを以下に示す。図8は上記特許に示された1端子対弾性表面波共振器(以下1端子対SAW共振器)を梯子型に接続した構造のものであり、その伝送特性を図9に示す。図9においてf0は通過帯域の中心周波数、faはいわゆる反共振周波数である。
図8において、51は圧電基板、52は圧電基板51上に構成されたくし型電極、53は反射器である。これらは1端子対弾性表面波共振器54a,54bを構成している。また、56は入力端子、57は出力端子である。1端子型対弾性表面波共振器54a,54bはそれぞれ図10(a)に示す特性を有するので、2つの1端子型対弾性表面波共振器54a,54bの反共振周波数faを若干異なるように設定し、梯子型に接続することにより図9の特性が得られるのである。
図9では通過帯域近傍(周波数faの近く)の減衰量は十分である反面、通過帯域から離れた周波数帯(図9の両端)では減衰量が十分とは言えなくなっている。
【0005】
また、第2の例として上記特許に開示されたものを図11に示す。図11のものは、1つの2端子対SAW共振器55に1端子対SAW共振器54を直列要素として接続した構造であり、その場合図10(c)のような伝送特性を実現することができる。即ち2端子対弾性表面波共振器55は、単独では図10(b)に示す特性(スプリアスfs)を備える。そこで1端子対弾性表面波共振器54の反共振周波数faを前述のスプリアス周波数fsにあわせると図10(c)の特性となる。この場合、通過帯域の高周波側周波数での減衰量があまり必要でなければ、1端子対SAW共振器を接続しなくてもよい。
【0006】
従来は、主に前記2つの構造の組み合わせで、低損失なSAWフィルタを実現することが一般的であったが、これらの構造で低損失な特性を実現すると、誘電体フィルタ等の他方式のフィルタに比べ、通過帯域近傍の減衰量は確保し易い反面、通過帯域から離れた周波数帯(例えば図9のfaより高い周波数)では減衰量が少なくなってしまうという問題があった。
例えば通過帯域が800〜900MHz帯の携帯電話システム用においては、送受信間の遷移帯域幅が狭いEGSM(10MHz)やAMPS(20MHz)等では、デュプレクス周波数での減衰量において要求値を満たし易い反面、800MHzPDCの50MHzやそれ以上に遷移帯域幅が広くなった場合、従来のSAWフィルタでは要求値を満たすような減衰量を確保するのが難しくなる。また減衰量を確保するために、図8の梯子の段数を増やしたり、あるいは図11の2端子対SAW共振器55の段数を増やすと、挿入損失が大きくなるという問題があった。
【0007】
このような、十分な減衰量を得ることが難しいという課題を解決する発明として、特開平4−54011号には、1端子対SAW共振器を並列要素として接続し、かつ共振周波数をフィルタ通過帯域より高周波に設定するものが開示されている。この場合、2端子対SAW共振器の段数が2段、かつ、1端子対SAW共振器の共振周波数が2端子対SAW共振器特有の通過帯域近傍高周波側の段差部に設定されている。これは前記段差部の減衰量が十分でないため、減衰量を確保するよう1端子対SAW共振器が接続されているのだが、この場合2端子対SAW共振器の段数が2段で、かつ1端子対SAW共振器の共振周波数を通過帯域近傍でなければ、フィルタ全体としても50Ωの整合が取りにくいためこのような構成でしか使用されていなかった。この場合、挿入損失は大きくなるため、例えば800MHzPDCの挿入損失の要求は一般的に2.0dB以下であるが、低損失用として多く用いられるLiTaO3基板を用いても3.0dB以下の特性を実現させるのは非常に困難である。
【0008】
例えば、国内800MHzPDC受信側用では通過帯域が810〜843MHzで挿入損失の要求が一般的に2dB程度以下と非常に低損失な要求であり、また帯域外減衰量が最も必要な周波数は送信側の周波数である940〜958MHzで、一般的に−50dB以上の大きな減衰量が要求される。帯域外減衰量の周波数は通過帯域の中心周波数である826.5MHzの1.137倍以上であり、従来の構成においては前記要求を両方満たすことはできなかった。
なお、図11のように、1端子対SAW共振器54を直列要素として接続した構造において、通過帯域より高周波側でかつ通過帯域より離れた周波数帯に反共振周波数を設定した場合も、減衰量は改善できるが現実的に使用されている範囲内においては同じIDT容量、すなわち同じIDT面積の1端子対SAW共振器をそれぞれ、直列要素及び並列要素として接続した場合では、直列要素として接続した方が並列要素として接続した場合に比べ減衰量及び阻止域の幅があまり取ることが出来ない。よって、減衰量及び阻止域の幅をある程度広く確保しようとすれば、反共振周波数が異なるか、または同じである多くの1端子対SAW共振器を直列要素として多段に接続する必要があり、結果として通過帯域内の挿入損失が大きくまたSAWチップ部の電極パターンも大きくなってしまうため現実的ではない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
以上のように、従来のSAWフィルタでは、誘電体フィルタ等の他方式のフィルタに比べ通過帯域近傍の周波数での減衰量は確保し易い反面、通過帯域から離れた周波数帯では減衰量が小さくなってしまうという課題があった。
また減衰量を確保するために、フィルタの接続段数を増やしたり、あるいは2端子対SAW共振器の段数を増やすと、挿入損失が大きくなってしまうので、容易に段数は増やせないという課題があった。
【0010】
また、1端子対SAW共振器を並列要素として接続し、かつ共振周波数がフィルタ通過帯域より高周波に設定する場合でも、1端子対SAW共振器の共振周波数が、2端子対SAW共振器特有の通過帯域近傍の高周波側の段差部に設定しなければ、フィルタ全体として50Ωの整合が取りにくく、結果として挿入損失は大きくなるなど、帯域外減衰量を満たしつつ低損失を実現することが難しいという課題があった。
【0011】
【課題を解決するための手段】
この発明の縦結合型弾性表面波フィルタは、圧電基板上に形成され、少なくとも2組以上のくし型電極と、このくし型電極の両側に配置された短絡グレーティング電極からなる反射器と、前記くし形電極の1つに接続された入力端子とを有し中心周波数がf0の通過帯域を有する2端子対弾性表面波共振器、
前記2端子対弾性表面波共振器の片側に配置され、前記2端子対弾性表面波共振器に並列要素として接続されたくし形電極と、このくし形電極の両側に配置された短絡グレーティング電極からなる反射器と、このくし形電極のを有するとともに、共振周波数が前記f0の1.1倍以上1.5倍以下に設定された1端子対弾性表面波波共振器とを備えたものである。
【0012】
また、前記並列接続された1端子対弾性表面波共振器は複数あり、その内の少なくとも1つの共振周波数が、前記f0の1.1倍以上1.5倍以下としたものである。
【0013】
また、前記並列接続された1端子対弾性表面波共振器は複数あり、それぞれの共振周波数が前記f0の1.1倍以上1.5倍以下であるとともに互いに異なることを特徴とする請求項1に記載の縦結合型弾性表面波フィル前記1端子対弾性表面波共振器は複数あり、その内の1つの共振周波数が、前記f0の1.1倍以上1.5倍以下としたものである。
【0014】
また、圧電基板上に形成され、少なくとも2組以上のくし型電極と、このくし型電極の両側に配置された短絡グレーティング電極からなる反射器と、前記くし形電極の1つに接続された入力端子とを有し中心周波数がf0の通過帯域を有する2端子対弾性表面波共振器、
前記2端子対弾性表面波共振器に直列要素として接続されたくし形電極と、このくし形電極の両側に配置された短絡グレーティング電極からなる反射器とを有する1端子対弾性表面波共振器、
前記1端子対弾性表面波共振器に並列要素として接続されたくし形電極と、このくし形電極の両側に配置された短絡グレーティング電極からなる反射器とを有するとともに、共振周波数が前記f0の1.1倍以上1.5倍以下に設定された1端子対弾性表面波共振器とを備えたものである。
【0015】
また、並列要素として接続された前記1端子対弾性表面波共振器の共振周波数は、直列要素として接続された前記1端子対弾性表面波共振器の反共振周波数の1倍以上1.5倍以下としたものである。
【0016】
また、前記2端子対弾性表面波共振器の前記くし形電極は3組設けられているものである。
【0017】
また、前記1端子対弾性表面波共振器の出力端子に接続された特性インピーダンス整合用の素子を備えたものである。
【0018】
また、前記特性インピーダンス整合用素子は、前記1端子対弾性表面波共振器の出力端子に接続されたインダクタとしたものである。
【0019】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
本実施の形態の縦結合型弾性表面波フィルタ(以下SAWフィルタと言う)は、特にフィルタの通過帯域より高周波側で、かつ通過帯域よりある程度離れた周波数帯にて大きな減衰量が必要な場合、1つの2端子対SAW共振器に対し、1つ以上の1端子対SAW共振器を並列要素として接続し、かつこの1端子対SAW共振器の共振周波数がフィルタ通過帯域よりも高く、大きい減衰が必要な周波数帯になるように、IDTの周期を設定することにより、帯域内にて低損失な特性を確保しつつ、帯域外の周波数において大きな減衰量を実現するものである。
【0020】
図1は本発明の実施の形態1のSAWフィルタの構成図である。図において、1、5、6、8は短絡グレーティングからなる反射器、2、3、4、7はくし形電極(すだれ状電極またはIDTともいう)、30はIDT3に接続された入力端子、31はIDT7に接続された出力端子、9はIDT7から出力端子31に至る接続線の途中に接続されたインダクタである。
図1のものは励振可能な図示しない圧電基板上に3つのIDT2、3,4と、その両側に配置した短絡グレーティングからなる反射器1、5を有し、通過帯域中心周波数がf0の縦結合型2端子対SAW共振器32に、前記2端子対SAW共振器32の片側、すなわち図1の場合、下側のポートにIDT7とその両側に配置された反射器6、8を有する1端子対SAW共振器33を並列要素として接続して縦結合型弾性表面波フィルタを構成し、前記1端子対SAW共振器33の共振周波数を前記f0の1.1倍以上、1.5倍以下に、即ちフィルタの通過帯域よりも高周波側になるようIDT7の周期を設定している。そして1端子対SAW共振器33と同じポートに、即ち、出力端子に特性インピーダンスに整合させるためのインダクタ9を1個並列に接続している。なお図1では1端子対SAW共振器33は1個のみ図示しているが、複数個を並列に接続してよい。
【0021】
一般論として、整合の際には整合用のインダクタとコンデンサとを用いれば、整合前のインピーダンスがどのような値であれ、任意の特性インピーダンスに整合させることができるが、整合素子を多く使うと整合素子による損失が増加し、また同じ素子数でもインダクタのインダクタンス値及びコンデンサのキャパシタンス値の大きさによって損失分も大きく異なる。低損失にするにはできるだけ素子数を少なくし、かつ各素子の抵抗分を小さくすることが整合素子を含めたフィルタ全体の損失を低く抑えるためには重要である。
一般的に整合素子の損失分を小さくするには、インダクタのインダクタンス値はできるだけ小さく、またコンデンサのキャパシタンス値はできるだけ大きくする必要があるが、コンデンサの場合キャパシタンス値を大きくすれば一般的にサイズも大きくなるため小型化には不利である。そこで図1のものでは、1端子対SAW共振器33のIDT7の容量を、整合素子が並列接続のインダクタ9のみで済む(コンデンサを要しない)ように、最適に設定している。このインダクタ9のインダクタンス値をできるだけ小さくすれば一般的にインダクタのサイズも小型になり抵抗分も小さく低損失にすることができる。図1の構成では、2端子対SAW共振器32及び1端子対SAW共振器33をそれぞれ最適設計すれば、整合用インダクタ9のインダクタンス値をかなり小さくすることができるので、低損失化には非常に有利な構成である。
【0022】
具体的に、図1の構成にて、国内800MHzPDCの受信側用に最適設計したSAWフィルタを開発・作製し、電気特性を測定した結果を図3、図4に示す。図3より帯域外減衰量(940〜958MHz)が53dB程度、図4より通過帯域(810〜843MHz)での挿入損失が1.7dB程度と、従来例で具体例として示した数値の両方を満たしていることが分かる。またここでは整合用のインダクタ9にチップインダクタを用いており、図3,図4は前記チップインダクタを含めた特性である。チップインダクタのインダクタンス値は3.9nHと非常に小さなインダクタンス値にすることができ、インダクタの抵抗分が小さく済んでいることから低損失化に貢献している。
本実施の形態での阻止域周波数は、具体的には通過帯域の中心周波数f0から1.1倍以上、1.5倍以下の周波数範囲で特に効果が大きい。
【0023】
1端子対SAW共振器33を並列要素として使う場合、その前後にインダクタンス成分が接続されれば共振周波数での減衰量が大きくなり阻止域も広がるが、1端子対SAW共振器を圧電基板に形成した場合にはその前後との接続に電極パターンによる配線を介するため、一般的に配線によるインダクタンス成分が入ってしまう。また1端子対SAW共振器33とSAWフィルタパッケージ(図示しない)のグランド間の接続にワイヤを用いた場合には、更にワイヤのインダクタンス成分が入るため、減衰量も更に大きく阻止域も更に広くとることができる。
【0024】
実施の形態2.
図1の1端子対SAW共振器33は、前述のとおり複数個並列に接続してよい。この場合、これら複数の1端子対SAW共振器33の内の少なくとも1つのものの共振周波数が、前述のf0の1.1倍以上1.5倍以下であれば、前述の効果が得られる。そして共振周波数が前述の範囲内にあるものの数が増えれば、それに応じてその周波数での減衰量を大きくすることが出来る。
また、これら複数の1端子対SAW共振器33の共振周波数を、互いに少しずつ異なる値とすることにより、広い周波数範囲で減衰量を大きくすることが出来る。
いずれにしても、複数の1端子対SAW共振器33の共振周波数を任意に設定して、フィルタ全体としての周波数特性を任意に調整することが出来る。
【0025】
実施の形態3.
図2は本発明の実施の形態3の縦結合型弾性表面波フィルタの構成図である。
図2では実施の形態1の図1に対し、2端子対SAW共振器32と1端子対SAW共振器33の間に、IDT16とその両側に配置した反射器15、17を有する第2の1端子対SAW共振器34を直列要素として追加挿入した構成である。図2では第2の1端子対SAW共振器34は1このみ示しているが、複数個挿入してもよい。
図2の1端子対SAW共振器33の共振周波数の設定は実施の形態1の場合と同じである。また、図2の1端子対SAW共振器33の共振周波数が第2の1端子対SAW共振器の反共振周波数frの1倍以上1.5倍以下になるように、第2の1端子対SAW共振器の反共振周波数を設定する。こうすることにより、実施の形態1のものに比して更に帯域外減衰量を大きくすることができる。しかし挿入損失については第2の1端子対SAW共振器34を追加挿入した分、若干増えている。以上に説明した実施の形態1、2のいずれの構成を採用するかは、要求された特性に応じて選択すればよい。
【0026】
具体例として、図2の構成にて最適設計したSAWフィルタを作製し電気特性を測定した結果を図5、図6に示す。図5より帯域外減衰量(940〜958MHz)が61dB程度、図6より通過帯域(810〜843MHz)での挿入損失が2.1dB程度となっており、実施の形態1の例に対し、帯域外減衰量は大きくなっているが、挿入損失は若干増えている。また同様に整合用のチップインダクタ21を用いているが、インダクタンス値は3.6nHとここでも非常に小さなインダクタンス値にすることができた。
【0027】
なお実施の形態1、2のフィルタ単体としての構成に限らず、デュプレクサ等他の回路と組み合わせたものとしても、同様の効果が得られる。実施の形態1、2の構成を受信部のフィルタとした時の、デュプレクサとしての回路構成を図7に示す。
【0028】
【発明の効果】
以上のように、この発明の弾性表面波フィルタによれば、少なくとも2組以上のIDTの両側に、短絡グレーティング電極からなる反射器を配した通過中心周波数がf0の2端子対SAW共振器に1端子対SAW共振器を並列要素として接続し、かつこの1端子対SAW共振器の共振周波数をf0の1.1倍以上1.5倍以下にすることで、通過帯域にて低損失な特性を有し、通過帯域の高周波側で通過帯域から離れた周波数帯でも減衰量が大きくかつ阻止域も広いものとする効果が得られる。
【0029】
また、前記1端子対SAW共振器は複数個あり、そのうちの少なくとも1つの共振周波数を前記の範囲としたので、調整が簡単であるという効果が得られる。
【0030】
また、前記1端子対SAW共振器は複数個あり、それぞれの共振周波数が上記の範囲にあり、かつ、互いに異なるようにしたので、フィルタ全体とての特性を任意に調整できるという効果が得られる。
【0031】
また、1つ以上の1端子対SAW共振器を直列要素として接続したので、フィルタの減衰特性を更に大きくすることが出来る。
【0032】
また、直列要素として接続した1端子対SAW共振器の共振周波数を、並列接続された1端子対SAW共振器の反共振周波数の1.0〜1.5倍の範囲としたので、フィルタの減衰特性を更に大きくすることが出来る。
【0033】
また、2端子対SAW共振器のくし形電極は3組としたので、各共振器間の相互干渉が少なく、調整しやすいフィルタが得られるという効果が得られる。
【0034】
また、1端子対SAW共振器が接続された出力端子側に、特性インピーダンス整合素子を接続したので、任意のインピーダンスに調整できるという効果が得られる。
【0035】
また、インピーダンス整合としてインダクタのみで所定のインピーダンスを得られるように、SAW共振器を最適設計したので、小型で低損失なSAWフィルタを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態1の縦結合型SAWフィルタの構成図である。
【図2】実施の形態2の縦結合型SAWフィルタの構成図である。
【図3】図1の縦結合型SAWフィルタの伝送特性図である。。
【図4】図3の一部拡大図である。
【図5】図2の縦結合型SAWフィルタの伝送特性図である。
【図6】図5の一部の拡大図である。
【図7】実施の形態1、2の縦結合型SAWフィルタをデュプレクサに用いた場合の回路構成図である。
【図8】従来の弾性表面波フィルタの構成図である。
【図9】図8のフィルタの特性図である。
【図10】図8のフィルタの特性説明図である。
【図11】従来の別の弾性表面波フィルタの構成図である。
【符号の説明】
1、5、6、8、15、17 反射器、
2〜4、7、16 くし形電極(IDT)、
9 インダクタ、 32 2端子対弾性表面波共振器、
33 1端子対弾性表面波共振器、
34 第2の1端子対弾性表面波共振器。
Claims (8)
- 圧電基板上に形成され、少なくとも2組以上のくし型電極と、このくし型電極の両側に配置された短絡グレーティング電極からなる反射器と、前記くし形電極の1つに接続された入力端子とを有し中心周波数がf0の通過帯域を有する2端子対弾性表面波共振器、
前記2端子対弾性表面波共振器の片側に配置され、前記2端子対弾性表面波共振器に並列要素として接続されたくし形電極と、このくし形電極の両側に配置された短絡グレーティング電極からなる反射器とを有するとともに、共振周波数が前記f0の1.1倍以上1.5倍以下に設定された1端子対弾性表面波共振器とを備えたことを特徴とする縦結合型弾性表面波フィルタ。 - 前記並列接続された1端子対弾性表面波共振器は複数あり、その内の少なくとも1つの共振周波数が、前記f0の1.1倍以上1.5倍以下であることを特徴とする請求項1に記載の縦結合型弾性表面波フィルタ。
- 前記並列接続された1端子対弾性表面波共振器は複数あり、それぞれの共振周波数が前記f0の1.1倍以上1.5倍以下であるとともに互いに異なることを特徴とする請求項1に記載の縦結合型弾性表面波フィルタ。
- 圧電基板上に形成され、少なくとも2組以上のくし型電極と、このくし型電極の両側に配置された短絡グレーティング電極からなる反射器と、前記くし形電極の1つに接続された入力端子とを有し中心周波数がf0の通過帯域を有する2端子対弾性表面波共振器、
前記2端子対弾性表面波共振器に直列要素として接続されたくし形電極と、このくし形電極の両側に配置された短絡グレーティング電極からなる反射器とを有する1端子対弾性表面波共振器、
前記1端子対弾性表面波共振器に並列要素として接続されたくし形電極と、このくし形電極の両側に配置された短絡グレーティング電極からなる反射器とを有するとともに、共振周波数が前記f0の1.1倍以上1.5倍以下に設定された1端子対弾性表面波共振器とを備えたことを特徴とする縦結合型弾性表面波フィルタ。 - 並列要素として接続された前記1端子対弾性表面波共振器の共振周波数は、直列要素として接続された前記1端子対弾性表面波共振器の反共振周波数の1倍以上1.5倍以下であることを特徴とする請求項4に記載の縦結合型弾性表面波フィルタ。
- 前記2端子対弾性表面波共振器の前記くし形電極は3組設けられていることを特徴とする請求項1または4に記載の縦結合型弾性表面波フィルタ。
- 前記1端子対弾性表面波共振器の入出力端子に接続された特性インピーダンス整合素子を備えたことを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の縦結合型弾性表面波フィルタ。
- 前記特性インピーダンス整合素子はインダクタであることを特徴とする請求項7に記載の縦結合型弾性表面波フィルタ。
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