JP4617530B2 - 固形農薬組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、感温性吸排水樹脂を含む固形農薬組成物に関し、さらに詳しくは崩壊分散する温度を任意に設定することができる固形農薬組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、農薬製剤としては、粒剤、粉剤、乳剤、水和剤、フロアブル剤、顆粒水和剤等の剤形がある。これらの農薬製剤のうち、粒剤および顆粒水和剤は、使用時に粉立ちがなく使用者への安全性が高いこと、人体または環境に悪影響を及ぼす有機溶剤を含まないことから広く一般に使用されている。また固形製剤は製剤中に含まれる水分が少なく、加水分解を受けやすい農薬活性成分に対して適した製剤であり、製剤の剤形として広く用いられている。
【0003】
これらの固形製剤は希釈することなくそのまま直接に土壌、水面または作物に散布する場合、比較的速やかに薬剤が短時間に崩壊分散して効果を発揮するが、これら薬剤を日中に散布すると温度が高いために有用作物に対して薬害等の懸念があり、早朝または夕刻における低温時の散布が好ましい。しかるに近年、農業従事者の高齢化や農村の過疎化により農業労働力の脆弱化が進んでおり、所定の低温時に農薬を散布するためには時間が限られ、また異なる日に繰り返し散布することになり、農業従事者にとって過重となっている。
【0004】
従来、農薬活性成分が必要な時期までに放出せず、一旦放出すると速やかに農薬活性成分を放出する製剤が知られている(特開平6−9303号、同6−4304号、同6−72805号、同6−80514号)。しかし、これらの製剤は散布後1か月程度経過した後に農薬を放出させるものであり、一定の温度、特に低温で崩壊分散して農薬を放出させる農薬組成物については知られていない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、崩壊分散温度を任意に設定することができ、このため特定の温度を超えた温度では崩壊分散せず、特定の温度以下の温度で崩壊分散し、これにより作物に対して薬害が懸念されるような高温では崩壊分散せず、低温で速やかに崩壊分散させることが可能な固形農薬組成物を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは鋭意研究した結果、農薬活性成分を含む固形製剤において、農業活性成分を感温性の吸排水性樹脂と配合するか、または感温性の吸排水性樹脂で被覆することにより、特定の温度で崩壊分散する固形農薬組成物、特に固形農薬組成物が特定の温度以下で崩壊分散することを見出し本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は次の固形農薬組成物である。
(1) 農薬活性成分を含む固形製剤が感温吸排水性樹脂の被覆膜で被覆されたものからなり、
前記感温吸排水性樹脂は、N−アルキル置換アクリルアミドモノマーを主成分とする原料モノマーの共重合により得られるポリアクリルアミド系共重合体架橋物であり、
前記被覆膜は、前記感温吸排水性樹脂が感温点以下の温度では水分を吸収することにより崩壊して、農薬活性成分が放出されるように構成されている
ことを特徴とする固形農薬組成物。
(2) 固形農薬組成物全体に占める農薬活性成分の含有量が0.01〜80重量%、感温吸排水性樹脂の含有量が0.1〜50重量%である上記(1)記載の固形農薬組成物。
(3) ポリアクリルアミド系共重合体架橋物が、N−イソプロピルアクリルアミドモノマーを主成分とする原料モノマーの共重合により得られるポリN−イソプロピルアクリルアミド系共重合体架橋物である上記(1)または(2)記載の固形農薬組成物。
(4) 上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の固形農薬組成物がさらに感温吸排水性樹脂で被覆された固形農薬組成物。
(5) 感温吸排水性樹脂が2種以上の感温吸排水性樹脂である上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の固形農薬組成物。
(6) さらに補助剤を含む上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の固形農薬組成物。
(7) 上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の固形農薬組成物がさらに、ポリウレタン樹脂、硬化植物油、硬化動物油、パラフィンワックス、ポリオレフィンワックス、ステアリン酸カルシウム、フェニルキシリールエタン、アルキルナフタレン、および脂肪酸エステル類からなる群より選ばれる1以上の疎水性物質で被覆された固形農薬組成物。
(8) 粒剤または微粒剤である上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の固形農薬組成物。
(9) 顆粒水和剤である上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の固形農薬組成物。
(10) 水田用である上記(1)ないし(9)のいずれかに記載の固形農薬組成物。
【0008】
本明細書において、「(メタ)アクリ」は「アクリ」および/または「メタクリ」を意味する。
【0009】
本発明に用いる農薬活性成分は除草剤、殺菌剤、殺虫剤および植物成長調節剤等の農薬活性成分であり、粒剤、微粒剤、粉剤、錠剤および顆粒水和剤等の固形の製剤に製剤可能な農薬活性成分であれば公知の農薬活性成分が制限なく使用することができる。農薬活性成分は1種または2種以上を併用してもよい。
【0010】
これらの農薬活性成分の除草剤の例をあげれば次の通りである。
2−クロロ−4,6−ビス−(エチルアミノ)−s−トリアジン(CAT)、2,4,6−トリクロルフェニル−4’−ニトロフェニルエーテル(CNP)、N−{[(4,6−ジメトキシピリミジン−2−イル)アミノカルボニル]}−1−メチル−4−(2−メチル−2H−テトラゾール−5−イル)(アジムスルフロン)、2−クロロ−4−エチルアミノ−6イソプロピルアミノ−s−トリアジン(アトラジン)、1−(2−クロロイミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イルスルホニル)−3−(4,6−ジメトキシピリミジン−2−イル)尿素(イマゾスルフロン)、S−ベンジル=1,2−ジメチルプロピル(エチル)チオカルバマート(エスプロカルブ)、5−tert−ブチル−3−(2,4−ジクロロ−5−イソプロポキシフェニル)−1,3,4−オキサジアゾリン−2−オン(オキサジアゾン)、3−[1−(3,5−ジクロルフェニル)−1−メチルエチル]−2,3−ジヒドロ−6−メチル−5−フェニル−4H−1,3−オキサジン−4−オン(オキサジクロメホン)、S−(2−クロロベンジル)N,N−ジエチルチオカーバメート(オルソベンカーブ)、1−(ジエチルカルバモイル)−3−(2,4,6−トリメチルフェニルスルフォニル)−1,2,4−トリアゾール(カフェンストロール)、2,4−ジクロロフェニル−3’−メトキシ−4’−ニトロフェニルエーテル(クロメトキシニル)、(RS)−2−(2,4−ジクロロ−m−トリルオキシ)プロピオンアニリド(クロメプロップ)、S,S’−ジメチル=2−ジフルオロメチル−4−イソブチル−6−トリフルオロメチルピリジン−3,5−ジカルボチオアート(ジチオピル)、
【0011】
n−ブチル−(R)−2−[4−(2−フルオロ−4−シアノフェノキシ)フェノキシ]プロピオネート(シハロホップブチル)、2−メチルチオ−4−エチルアミノ−6−(1,2−ジメチルプロピルアミノ)−s−トリアジン(ジメタメトリン)、2−メチルチオ−4,6−ビス(エチルアミノ)−s−トリアジン(シメトリン)、S−1−メチル−1−フェニルエチル=ピペリジン−1−カルボチオアート(ジメピペレート)、1−α,α−ジメチルベンジル)−3−(パラトリル)尿素(ダイムロン)、2−クロロ−N−(3−メトキシ−2−テニル)−2’,6’−ジメチルアセトアニリド(テニルクロール)、α−(2−ナフトキシ)プロピオンアニリド(ナプロアニリド)、2,6−ビス(4,6−ジメトキシピリミジン−2−イルオキシ)安息香酸ナトリウム(ビスピリバックナトリウム)、5−(2,4−ジクロロフェノキシ)−2−ニトロ安息香酸メチル(ビフェノックス)、2−[4−(2,4−ジクロロベンゾイル)−1,3−ジメチルピラゾール−5−イルオキシ〕アセトフェノン(ピラゾキシフェン)、エチル=5−(4,6−ジメトキシピリミジン−2−イルカルバモイルスルファモイル)−1−メチルピラゾール−4−カルボキシラート(ピラゾスルフロンエチル)、4−(2,4−ジクロロベンゾイル)−1,3−ジメチル−5−ピラゾリル−p−トルエンスルホネート(ピラゾレート)、2−クロロ−6−「4,6−ジメトキシピリミジ−2−イル)チオ]安息香酸ナトリウム(ピリチオバックナトリウム)、O−3−tert−ブチルフェニル=6−メトキシ−2−ピリジル(メチル)チオカルバマート(ピリブチカルブ)、メチル=2−[(4,6−ジメトキシピリミジン−2−イル)オキシ]−6−[(E)−1−(メトキシイミノ)エチル]ベンゾエイト(ピリミノバックチル)、
【0012】
2−メチル−4−クロロフェノキシチオ酢酸−S−エチル(フェノチオール)、2−クロロ−2’,6’−ジエチル−N−(ブトキシメチル)アセトアニリド(ブタクロール)、メチル[[2−クロロ−4−フルオロ−5−[(5,6,7,8−テトラヒドロ−3−オキソ−1H,3H−[1,3,4]チアジアゾロ[3,4−α]ピリダジン−1−イリデン)アミノ]フェニル]チオ]アセタート(フルチアセットメチル)、2−クロロ−2’,6’−ジエチル−N−(2−プロポキシエチル)アセトアニリド(プレチラクロール)、2−メチルチオ−4,6−ビス(イソプロピルアミノ)−s−トリアジン(プロメトリン)、(RS)−2−ブロモ−N−(α,α−ジメチルベンジル)−3,3−ジメチルブチルアミド(ブロモブチド)、メチル=α−(4,6−ジメトキシピリミジン−2−イルカルバモイルスルファモイル)−O−トルアート(ベンスルフロンメチル)、2−[4−[2,4−ジクロロ−m−トルオイル]−1,3−ジメチルピラゾール−5−イルオキシ]−4’−メチルアセトフェノン(ベンゾフェナップ)、S−(4−クロルベンジル)N,N−ジエチルチオカーバメート(ベンチオカーブ)、N−(1−エチルプロピル)−3,4−ジメチル−2,6−ジニトロアニリン(ペンディメタリン)、3−(4−クロロ−5−シクロペンチルオキシ−2−フルオロフェニル)−5−イソプロピリデン−1,3−オキサゾリジン−2,4−ジオン(ペントキサゾン)、2−ベンゾチアゾール−2−イルオキシ−N−メチルアセトアニリド(メフェナセット)、S−エチルヘキサヒドロ−1H−アゼピン−1−カーボチオエート(モリネート)、3−(3,4−ジクロロフェニル)−1−メトキシ−1−メチル尿素(リニュロン)など。
【0013】
農薬活性成分の殺菌剤の例をあげれば次の通りである。
O,O−ジイソプロピル−S−ベンジルチオフォスフェート(IBP)、ジイソプロピル−1,3−ジチオラン−2−イリデン−マロネート(イソプロチオラン)、3−(3,5−ジクロロフェニル)−N−イソプロピル−2,4−ジオキソイミダゾリジン−1−カルボキサミド(イプロジオン)、5−エチル−5,8−ジヒドロ−8−オキソ[1,3]ジオキソロ[4,5−g]キノリン−7−カルボン酸(オキソリニック酸)、カスガマイシン(カスガマイシン)、6−(3,5−ジクロロ−4−メチルフェニル)−3(2H)−ピリダジノン(ジクロメジン)、ジンクエチレンビスジチオカーバメート(ジネブ)、3,5−ジメチルテトラヒドロ−2H−1,3,5−チアジアジン−2−チオン(ダゾメット)、3,4,5,6−テトラクロロ−N−(2,3−ジクロロフェニル)フタルアミド酸(テクロフタラム)、5−メチル−1,2,4−トリアゾロ[3,4−b]ベンゾチアゾール(トリシクロラゾール)、(E)−4−クロロ−α,α,α−トリフルオロ−N−(1−イミダゾール−1−イル−2−プロポキシエチリデン)−o−トルイジン(トリフルミゾール)、バリダマイシン(バリダマイシン)、1,2,5,6−テトラヒドロピロロ[3,2,1−ij]キノリン−4−オン(ピロキロン)、(Z)−2’−メチルアセトフェノン=4,6−ジメチルピリミジン−2−イルヒドラゾン−4,5,6,7−テトラクロロフタリド(フェリムゾン)、α,α,α−トリフルオロ−3’−イソプロポキシ−O−トルアニリド(フルトラニル)、3−アリルオキシ−1,2−ベンゾイソチアゾール−1,1−ジオキシド(プロベナゾール)、1−(4−クロロベンジル)−1−シクロペンチル−3−フェニル尿素(ペンシクロン)、亜鉛イオン配位マンガニーズエチレンビスジチオカーバメート(マンゼブ)、マンガニーズエチレンビスジチオカーバメート(マンネブ)、メチル=N−(2−メトキシアセチル)−N−(2,6−キシリル)−DL−アラニナート(メタラキシル)、N−(4−メチル−6−プロパ−1−イニルピリミジン−2−イル)アラニン(メパニピリム)、3’−イソプロポキシ−2−メチルベンズアニリド(メプロニル)、水酸化第二銅(水酸化第二銅)など。
【0014】
農薬活性成分の殺虫剤の例をあげれば次の通りである。
2−sec―ブチルフェニル−N−メチルカーバメート(BPMC)、エチルパラニトロフェニルチオノベンゼンホスホネート(EPN)、O,O−ジメチル−O−(3−メチル−4−ニトロフェニル)チオホスフェート(MEP)、1−ナフチル−N−メチルカーバメート(NAC)、O,S−ジメチル−N−アセチルホスホロアミドチオエート(アセフェート)、1−(6−クロロ−3−ピリジルメチル)−N−ニトロイミダゾリジン−2−イリデンアミン(イミダクロプリド)、2−(4−エトキシフェニル)−2−メチルプロピル=3−フェノキシベンジル=エーテル(エトフェンプロックス)、1,3−ビス(カルバモイルチオ)−2−(N,N−ジメチルアミノ)プロパン塩酸塩(カルタップ)、2,3−ジヒドロ−2,2−ジメチル−7−ベンゾ[b]フラニル=N−ジブチルアミノチオ−N−メチルカルバマート(カルボスルファン)、O,O−ジメチル−O−3,5,6−トリクロロ−2−ピリジルホスホロチオエート(クロルピリホスメチル)、(RS)−α−シアノ−3−フェノキシベンジル=(RS)−2,2−ジクロロ−1−(4−エトキシフェニル)シクロプロパンカルボキシラート(シクロプロトリン)、O,O−ジメチル−S−(N−メチルカルバモイルメチル)ジチオホスフェート(ジメトエート)、(2−イソプロピル−4−メチルピリミジル−6)−ジエチルチオホスフェート(ダイアジノン)、5−ジメチルアミノ−1,2,3−トリチアンシュウ酸塩(チオシクラム)、
【0015】
N−(4−tert−ブチルベンジル)−4−クロロ−3−エチル−1−メチルピラゾール−5−カルボキサミド(テブフェンピラド)、O,O−ジエチル−O−(3−オキソ−2−フェニル−2H−ピリダジン−6−イル)ホスホロチオエート(ピリダフェンチオン)、2−tert−ブチルイミノ−3−イソプロピル−5−フェニル−1,3,5,6−テトラヒドロ−2H−1,3,5−チアジアジン−4−オン(ブプロフェジン)、ブチル=2,3−ジヒドロ−2,2−ジメチルベンゾフラン−7−イル=N,N’−ジメチル−N,N’−チオジカルバマート(フラチオカルブ)、(RS)−α−シアノ−3−フェノキシベンジル=N−(2−クロロ−α,α,α−トリフルオロ−p−トリル)−D−バリナート(ブルバリネート)、1−[4−(2−クロロ−α,α,α−トリフルオロ−p−トリルオキシ)−2−フルオロフェニル]−3−(2,6−ジフルオロベンゾイル)尿素(フルフェノクスロン)、O,O−ジプロピル−O−4−メチルチオフェニルホスフェート(プロパホス)、trans−5−(4−クロロフェニル)−N−シクロヘキシル−4−メチル−2−オキソチアゾリン−3−カルボキサミド(ヘキシチアゾクス)、S,S’−2−ジメチルアミノトリメチレン=ジ(ベンゼンチオスルホナート)(ベンスルタップ)、エチル=N−[2,3−ジヒドロ−2,2−ジメチルベンゾフラン−7−イルオキシカルボニル(メチル)アミノチオ]−N−イソプロピル−β−アラニナート(ベンフラカルブ)、ジメチルジカルベトキシエチルジチオホスフェート(マラソン)など。
【0016】
農薬活性成分の植物成長調節剤の例をあげれば次の通りである。
4’−クロロ−2’−(α−ヒドロキシベンジル)イソニコチンアニリド(イナベンフィド)、(E)−(S)−1−(4−クロロフェニル)−4,4−ジメチル−2−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)ペンタ−1−エン−3−オール(ウニコナゾール)、(2RS,3RS)−1−(4−クロロフェニル)−4,4−ジメチル−2−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)ペンタン−3−オール(パクロブトラゾール)、カルシウム=3−オキシド−5−オキソ−4−プロピオニルシクロヘキサ−3−エンカルボキシラート(プロヘキサジオンカルシウム塩)など。
【0017】
本発明で使用する感温吸排水性樹脂は、温度条件により水分の吸収および排出に関する特性が変化する樹脂であり、特定の温度(以下、感温点という)以下の温度では水分を吸収する特性を示し、特定の温度を超えた温度では吸収していた水分を排出する特性を示す吸排水性の樹脂である。ここで「感温」とは温度条件により樹脂の吸排水性に関する特性が変化することを意味する。また「感温点」とは樹脂の吸排水性に関する特性が変化する温度を意味する。このような、温度条件により吸排水性が変化する特性は可逆的に変化するものが好ましいが、非可逆のものを使用することもできる。本発明で使用する感温吸排水性樹脂は、感温点が20〜40℃の中にある樹脂が好ましい。
【0018】
上記のような特性を有する感温吸排水性樹脂は、感温点以下の温度条件に置かれた場合には外部から水分を吸収して膨潤する。一方感温点を超えた条件に置かれた場合には外部に水分を排出する。
上記のような感温吸排水性樹脂は、物理的または化学的に三次元に架橋された網目構造を有する有機高分子化合物であり、感温点以下の温度では網目構造内に水を吸着して含水ゲルを生成し、感温点を超える温度では吸着していた水を脱離すると考えられている。感温点は後述の方法で任意の温度に容易に設定することができる。また感温点は広い温度範囲の中から任意の温度に設定することができる。
【0019】
このような感温吸排水性樹脂は公知であり、その製法については特開昭61−55180号、特開平5−179148号、同7−224119号、同8−89108号、同8−100010号および同9−302339号などに開示されている。本発明では、これらの公報に記載されている感温吸排水性樹脂を使用することができる。またこれらの公報に記載されている樹脂以外にも、前記のような温度条件により水分の吸収および排出に関する特性が変化する樹脂であれば、制限なく使用することができる。
【0020】
本発明で使用される代表的な感温吸排水性樹脂としては、ポリN−イソプロピルアクリルアミド系共重合体架橋物、ポリN,N−ジエチルアクリルアミド系共重合体架橋物、ポリN−メチル−N−エチルアクリルアミド系共重合体架橋物等のN−アルキル置換アクリルアミドモノマーを主成分とする原料モノマーの共重合により得られるポリアクリルアミド系共重合体架橋物があげられる。これらの中ではN−イソプロピルアクリルアミドモノマーを主成分とする原料モノマーの共重合により得られるポリN−イソプロピルアクリルアミド系共重合体架橋物が好ましい。
【0021】
このようなポリアクリルアミド系共重合体架橋物は、N−アルキル置換アクリルアミドモノマー、架橋性モノマーおよび必要により共重合される他のモノマーを共重合することにより得ることができる。また別の方法として、N−アルキル置換アクリルアミドモノマーおよび必要により共重合される他のモノマーを重合した後、得られた重合体を架橋剤により架橋する方法またはγ線等の放射線を照射して架橋する方法などにより得ることができる。
【0022】
このようにして得られるポリアクリルアミド系共重合体架橋物の感温点はモノマーの種類および配合比率、または架橋の程度などを選択することにより任意の温度に設定することができる。例えば、N−アルキル置換アクリルアミドモノマー、架橋性モノマー、他のモノマーの種類または配合比率を変えるなどの方法により任意の感温点を有する感温吸排水性樹脂を得ることができる。
【0023】
前記N−アルキル置換アクリルアミドモノマーとしては、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−n−プロピルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、アクリロイルピペリジン、アクリロイルピロリジンなどがあげられる。N−アルキル置換アクリルアミドモノマーは一種単独で使用することもできるし、二種以上を組み合せて使用することもできる。
【0024】
前記架橋性モノマーとしては、N,N−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のジビニルモノマーなどがあげられる。架橋性モノマーは一種単独で使用することもできるし、二種以上を組み合せて使用することもできる。
【0025】
前記必要により共重合される他のモノマーとしては、(メタ)アクリル酸またはその塩、(メタ)アクリルアミド、ブチルアクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド等のビニルモノマーなどがあげられる。他のモノマーは一種単独で使用することもできるし、二種以上を組み合せて使用することもできる。
【0026】
本発明において感温吸排水性樹脂として使用されるポリアクリルアミド系共重合体架橋物は、具体的には次のような方法で製造することができる。すなわち、前記N−アルキル置換アクリルアミドモノマーを主成分とし、前記架橋性モノマーおよび他のモノマーを含む原料モノマーに、t−ブチルヒドロペルオキシド、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩等のアゾ系重合開始剤、またはこれらの水溶性重合開始剤とロンガリット、亜硫酸水素ナトリウム等の還元性物質を組み合せ、任意の割合で共重合することにより感温点の異なる感温吸排水性樹脂を得ることができる。
【0027】
より具体的には、25℃に感温点を有する感温吸排水性樹脂は、N−イソプロピルアクリルアミド:ダイアセトンアクリルアミド:アクリル酸:N,N−メチレンビスアクリルアミドを重量比で100:25:5:1の割合で蒸留水に溶解、分散し、窒素ガス気流下にロンガリット、t−ブチルヒドロペルオキシドの重合開始剤を加え、断熱下に重合を行うことにより得ることができる。また30℃に感温点を有する感温吸排水性樹脂は、N−ジエチルアクリルアミド:ダイアセトンアクリルアミド:アクリル酸:N,N−メチレンビスアクリルアミドを重量比で18:3:1:1の割合で蒸留水に溶解、分散し、窒素ガス気流下にロンガリット、t−ブチルヒドロペルオキシドの重合開始剤を加え、断熱下に重合を行うことにより得ることができる。これらの場合、N−アルキル置換アクリルアミドおよびアクリル酸の種類または配合比率を変えるなどの方法により任意の感温点を有する感温吸排水性樹脂を得ることができる。
【0028】
本発明で使用する感温吸排水性樹脂としては、市販品を使用することもできる。市販品としてはポリN−イソプロピルアクリルアミド系共重合体架橋物であるサーモゲル((株)興人製、登録商標、感温点20℃、25℃、30℃、35℃または40℃)などがあげられる。
感温吸排水性樹脂は一種単独で使用することもできるし、二種以上を組み合せて使用することもできる。
【0029】
本発明の固形農薬組成物は、前記農薬活性成分と前記感温吸排水性樹脂とを含むものであるが、農薬活性成分に感温吸排水性樹脂が配合されたもの(農薬活性成分と感温吸排水性樹脂とが混合されたもの)とは異なり、農薬活性成分を含む固形製剤が感温吸排水性樹脂で被覆されたものである。具体的には、次のものなどがあげられる。
【0030】
1)農薬活性成分を含む固形製剤が感温吸排水性樹脂で被覆された固形農薬組成物。
2)上記1)の固形農薬組成物がさらに感温吸排水性樹脂で被覆された固形農薬組成物。この場合、感温点の異なる感温吸排水性樹脂で被覆するのが好ましい。
3)上記1)〜2)のいずれかの固形農薬組成物がさらに、後述の疎水性物質で被覆された固形農薬組成物。
4)感温点の異なる感温吸排水性樹脂を用いて調製した固形農薬組成物を2種以上混合した固形農薬組成物。
5)上記1)〜4)のいずれかの固形農薬組成物に、さらに農薬活性成分および補助剤を加えて製剤化した固形農薬組成物。
6)補助剤を含む上記1)〜4)のいずれかの固形農薬組成物。
【0031】
上記3)の固形農薬組成物のように、疎水性物質で被覆することにより一定期間溶出が抑制され、一定期間経過後の低温時に農薬活性成分を放出させることが可能な遅効性の固形農薬組成物が得られる。
上記疎水性物質としては、一般に、農薬を被覆して農薬活性成分の溶出を制御するのに用いられる水の透過性が少ないものであれば、常温で固体のものでも、液体のものでも使用できる。疎水性物質の具体的なものとしては、ポリウレタン樹脂、硬化植物油、硬化動物油、パラフィンワックス、ポリオレフィンワックス、ステアリン酸カルシウム、フェニルキシリールエタン、アルキルナフタレン、脂肪酸エステル類からなる群より選ばれる1以上の疎水性物質があげられる。
【0032】
上記5)または6)の固形農薬組成物で使用する補助剤としては、農薬の製剤で一般的に使用されている固体または液体の担体、界面活性剤、結合剤、安定剤および色素などがあげられる。これらの補助剤を必要に応じて使用し、固形農薬組成物とする。農薬活性成分と感温吸排水性樹脂とだけから本発明の固形農薬組成物を得ることはできるが、散布や施用などのことを考慮すると、通常補助剤を使用するのが好ましい。
【0033】
本発明の固形農薬組成物の剤形は固形であれば特に制限されず、粒剤、微粒剤、錠剤、粉剤、水和剤および顆粒水和剤等のいずれの剤形であってもよい。いずれの剤形においても、感温吸排水性樹脂で被覆することが可能である。
【0034】
固形農薬組成物が感温吸排水性樹脂を配合した固形農薬組成物である場合、感温点を超えた高温では固形農薬組成物が崩壊せず、感温点以下の低温で固形農薬組成物が崩壊して農薬活性成分が水中または土壌に溶出する。
固形農薬組成物が感温吸排水性樹脂で被覆した本発明の固形農薬組成物である場合、感温点を超えた高温の場合には被覆膜が崩壊しないため農業活性成分が放出されず、感温点以下の低温で水分を吸水して崩壊することで農薬活性成分が放出される。
【0035】
例えば、25℃の感温点を有する感温吸排水性樹脂を配合した場合には、25℃を超えた水温では水に崩壊せず、25℃以下の温度で崩壊分散する。感温吸排水性樹脂を使用しない従来の固形製剤の場合、粒剤を土壌に散布すると温度に関係なく、高温の場合でも低温の場合でも土壌中の水分によって粒剤は崩壊するが、例えば25℃の感温点を有する感温吸排水性樹脂を用いた本発明の固形農薬組成物の場合には、25℃を超えた温度では崩壊せず、25℃以下の温度で崩壊する。
【0036】
感温吸排水性樹脂を配合する場合には、粒剤、微粒剤、錠剤、粉剤、水和剤および顆粒水和剤等いずれの剤形も製剤可能であるが、本発明の固形農薬組成物は散布時が高温の場合には崩壊せず、低温で良好に崩壊分散するので、希釈せず農耕地、水田などに直接散布する粒剤、微粒剤、錠剤等の製剤が好ましい。
本発明のように感温吸排水性樹脂で被覆する場合には、粒剤、微粒剤、錠剤、粉剤、水和剤および顆粒水和剤等いずれの剤形も製剤可能である。粉剤、あるいは水等で希釈して散布する水和剤、および顆粒水和剤は感温吸排水性樹脂で被覆することが好ましい。
顆粒水和剤を製造する場合には、比較的高い感温点を有する感温吸排水性樹脂を使用することが好ましい。例えば、40℃以下の感温吸排水性樹脂を使用した場合には、40℃以下の水温で固形農薬組成物が水分を吸収して崩壊分散を始め、容易に懸濁液となる。
【0037】
本発明の固形農薬組成物は農薬の製造に採用されている公知の製剤化法により製造することができる。すなわち、感温吸排水性樹脂を配合する粒状物の製造は、農薬活性成分を粉砕または吸油性担体に担持させ、感温吸排水性樹脂ならびに界面活性剤、結合剤または固体担体等の補助剤を加え、圧縮造粒または押出造粒により成形することができる。水を使用して捏和造粒する場合は、感温点以上の温度で成形、乾燥を行うのが好ましい。感温吸水性樹脂は乾燥状態のものを用い結合剤を配合して成形することができるが、液相で重合して得る溶液を用いると結合剤なしに成形することができるので好ましい。
【0038】
本発明のように感温吸排水性樹脂で被覆する場合には、粒剤、微粒剤、錠剤、粉剤、水和剤および顆粒水和剤等いずれの剤形も製剤可能であるが、水等で希釈して散布する水和剤および顆粒水和剤等を製造する時は、予め感温点以下の温度条件で、水またはアルコール中でN−イソプロピルアクリルアミド系モノマー、架橋性モノマー等を用いて共重合させて得られた感温吸排水性樹脂の溶液を、農薬活性成分に被覆、または農薬活性成分と補助剤の混合物に被覆し、乾燥して得られた感温吸排水性樹脂で被覆された農薬活性成分が含有された組成物を用い、界面活性剤、凝集剤、増量剤等の補助剤を加えて混合または粉砕し製造することができる。また、感温吸排水性樹脂で被覆された農薬活性成分が含有された組成物を用い、界面活性剤、結合剤、増量剤等の補助剤を加え、圧縮造粒、流動層造粒または押出造粒により顆粒水和剤を製造することができる。
【0039】
本発明の固形農薬組成物中の感温吸排水性樹脂の含有量は0.1〜99.99重量%、好ましくは1〜99.9重量%、農薬活性成分の含有量は0.01〜99.9重量%、好ましくは0.1〜99重量%であるのが望ましいが、散布、施用を考慮すると補助剤を配合するのが通常の使用方法であり、この場合の感温吸排水性樹脂の含有量は0.1〜50重量%、好ましくは1〜30重量%、農薬活性成分の含有量は0.01〜80重量%、好ましくは0.1〜50重量%、補助剤の含有量は配合量0.1〜99重量%、好ましくは1〜95重量%であるのが望ましい。
【0040】
より具体的には、感温吸排水性樹脂を配合する場合には、農薬の剤形、各種成分の性質、配合割合などによって異なるが、感温吸排水性樹脂の含有量は0.1〜50重量%、好ましくは1〜30重量%とするのが望ましく、粒剤、微粒剤、錠剤および顆粒水和剤の場合には0.1〜50重量%、好ましくは1〜30重量%、粉剤、水和剤の場合には0.5〜10重量%、好ましくは1〜5重量%とするのが望ましい。
農薬活性成分の含有量は有効成分の効力、性質などにより異なるが0.01〜80重量%、好ましくは0.1〜50重量%とするのが望ましく、粒剤、微粒剤、粉剤とする場合には0.01〜30重量%、好ましくは0.1〜20重量%、水和剤、顆粒水和剤、錠剤とする場合には5〜80重量%、好ましくは10〜50重量%とするのが望ましい。
補助剤の含有量は0.1〜99重量%、好ましくは1〜95重量%とするのが望ましく、粒剤、微粒剤、粉剤とする場合には0.1〜99重量%、好ましくは1〜95重量%、水和剤、顆粒水和剤、錠剤とする場合には0.1〜90重量%、好ましくは1〜80重量%とするのが望ましい。
【0041】
本発明のように感温吸排水性樹脂で被覆する場合には、農薬の剤形、各種成分の性質、配合割合などによって異なるが、感温吸排水性樹脂の含有量は0.1〜50重量%、好ましくは1〜20重量%とするのが望ましく、粒剤、微粒剤、錠剤および顆粒水和剤の場合には0.1〜50重量%、好ましくは1〜20重量%、粉剤、水和剤の場合には0.5〜10重量%、好ましくは1〜5重量%とするのが望ましい。
農薬活性成分の含有量は有効成分の効力、性質などにより異なるが、通常0.01〜80重量%、好ましくは0.1〜50重量%とするのが望ましく、粒剤、微粒剤、粉剤とする場合には0.01〜30重量%、好ましくは0.1〜20重量%、水和剤、顆粒水和剤、錠剤とする場合には5〜80重量%、好ましくは10〜50重量%とするのが望ましい。
補助剤の含有量は0.1〜99重量%、好ましくは1〜95重量%とするのが望ましく、粒剤、微粒剤、粉剤とする場合には0.1〜99重量%、好ましくは1〜95重量%、水和剤、顆粒水和剤、錠剤とする場合には0.1〜90重量%、好ましくは1〜80重量%とするのが望ましい。
【0042】
感温吸排水性樹脂を多く用いた場合には感温点を超えた高温では崩壊せず、感温点以下の低温では速やかに水分を吸収し短時間で崩壊する効果を有し、少ない場合には感温点を超えた高温では崩壊しないものの、感温点以下の低温で水分を吸収し所定の時間を要し徐々に崩壊する。このような方法により崩壊時間を任意に変えることができる。
【0043】
本発明の固形農薬組成物は、農薬活性成分に感温吸排水性樹脂を加え、不活性な固体または液体の担体で希釈し、必要に応じて界面活性剤、分散剤または結合剤等の補助剤を配合して、粒剤、微粒剤、錠剤、粉剤、水和剤および顆粒水和剤等の固形製剤とすることができる。
上記固体または液体の担体としては、タルク、ベントナイト、クレー、カオリン、酸性白土、ろう石、ゼオライト、珪藻土、炭酸カルシウム、ホワイトカーボン、バーミキュライト、消石灰、珪砂、硫安、尿素、ボウ硝等の固体担体;イソプロピルアルコール、キシレン、N−メチル−2−ピロリドン、シクロヘキサノン、アルキルナフタレン、脂肪酸エステル、植物油、鉱物油、動物油、水等の液体担体などがあげられる。
【0044】
前記界面活性剤および分散剤としては、例えば、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェート、アルキルベンゼンスルホネート、ナフタレンスルホネートホルマリン縮合物、リグニンスルホネート、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルスルホネート等があげられる。
結合剤としては、例えばカルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、アラビアゴム、デキストリン等があげられる。
【0045】
農薬施用後、一定期間農薬活性成分を放出させず、一定期間後に内部の農薬活性成分を外部に溶出させる被覆農薬粒剤が知られている。これらの被覆農薬粒剤の内部に感温吸排水性樹脂を配合することにより、一定期間後の固形製剤崩壊時の低温時に固形農薬組成物を崩壊分散させることが可能である。被覆型農薬粒剤に水を吸収して体積が増加する性質を有するベントナイト、澱粉、高吸収性高分子等を含んだ被覆型農薬粒剤はベントナイト、澱粉、高吸収性高分子等を感温吸排水性樹脂に代えるか、またはベントナイト、澱粉、高吸収性高分子等の量を少なくし、感温吸排水性樹脂を加える。
【0046】
【作用】
本発明で使用する感温吸排水性樹脂は、感温点以下の温度では水分を吸収し、感温点を超えた温度では吸収していた水分を排出する。このような感温吸排水性樹脂を被覆した本発明の固形農薬組成物は、感温点以下の温度において感温吸排水性樹脂が吸水して膨潤することにより体積が増加し、これにより速やかに固形農薬組成物が崩壊分散するものと推測される。
【0047】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を実施例および試験例にて以下詳細に説明するが、本発明はこれらの例のみに限定されるものではない。なお、部は特に断らない限り重量部である。
【0048】
製造例1(25℃に感温点を有する感温吸排水性樹脂の製造)
N−イソプロピルアクリルアミド:ダイアセトンアクリルアミド:アクリル酸:N,N−メチレンビスアクリルアミドを重量比で100:25:5:1の割合で蒸留水に溶解、分散し、窒素ガス気流下にN,N−メチレンビスアクリルアミドの重量に対してロンガリットを3.5倍重量、t−ブチルヒドロペルオキシドを3倍重量の割合で加え、断熱下に5℃で8時間重合を行った。これにより、N−イソプロピルアクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、アクリル酸、および架橋性モノマーであるN,N−メチレンビスアクリルアミドが共重合した共重合体架橋物であって、25℃に感温点を有する感温吸排水性樹脂を得た。
【0049】
製造例2(30℃に感温点を有する感温吸排水性樹脂の製造)
N−ジエチルアクリルアミド:ダイアセトンアクリルアミド:アクリル酸:N,N−メチレンビスアクリルアミドを重量比で18:3:1:1の割合で蒸留水に溶解、分散し、窒素ガス気流下にN,N−メチレンビスアクリルアミドの重量に対してロンガリットを0.01倍重量、t−ブチルヒドロペルオキシドを0.1倍重量の割合で加え、断熱下に15℃で8時間重合を行った。これにより、N−イソプロピルアクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、アクリル酸、および架橋性モノマーであるN,N−メチレンビスアクリルアミドが共重合した共重合体架橋物であって、30℃に感温点を有する感温吸排水性樹脂を得た。
【0050】
製造例3(30℃に感温点を有する感温吸排水性樹脂の製造)
N−イソプロピルアクリルアミド:ダイアセトンアクリルアミド:アクリル酸:N,N−メチレンビスアクリルアミドを重量比で18:3:1:1の割合で蒸留水に溶解、分散し、窒素ガス気流下にN,N−メチレンビスアクリルアミドの重量に対してロンガリットを0.01倍重量、t−ブチルヒドロペルオキシドを0.1倍重量の割合で加え、断熱下に15℃で8時間重合を行った。これにより、N−イソプロピルアクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、アクリル酸、および架橋性モノマーであるN,N−メチレンビスアクリルアミドが共重合した共重合体架橋物であって、30℃に感温点を有する感温吸排水性樹脂を得た。
【0051】
実施例1
ピリミノバックメチル0.3部、サーモゲル300((株)興人製、登録商標、感温点30℃)5部、ポリビニルアルコール5部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5部、炭酸カルシウム89.2部を混合粉砕し、均一な粉体とした。得られた粉体を60℃の温水(60℃)で加温したジャケット付きリボンニーダーに加え、粉体の重量に対して温水(60℃)18部相当を加え、混合捏和した。この捏和物を直ちにバスケット型造粒機で粒径0.8mmに造粒し、80℃に調整した温風乾燥機で1時間乾燥した。得られた粒状物を篩を用いて0.5〜1.0mmの粒度に調整し、ピリミノバックメチル0.3部を含有する農薬粒剤組成物を得た。
【0052】
実施例2
ベンスルフロンメチル0.83部、メフェナセット11.2部、サーモゲル300((株)興人製、登録商標、感温点30℃)5.5部、ポリビニルアルコール5.5部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5部、ホワイトカーボン1部、炭酸カルシウム75.47部を混合粉砕し、均一な粉体とした。得られた粉体を60℃の温水で加温したジャケット付きリボンニーダーに加え、粉体の重量に対して温水(60℃)20部相当を加え、混合捏和した。この捏和物を直ちにバスケット型造粒機で粒径0.8mmに造粒し、80℃に調整した温風乾燥機で1時間乾燥した。得られた粒状物を篩を用いて0.5〜1.0mmの粒度に調整した。次にこの粒状固形農薬組成物90部に、アクリルポリオール7.5部、4,4’−ジフェニルメタンイソシアネート2.5部を混合した溶液を均一に被覆し、ベンスルフロンメチル0.75部、メフェナセット10部を含有する農薬粒剤組成物を得た。
【0053】
実施例3
ベンスルフロンメチル0.51部、ピリミノバックメチル0.3部、サーモゲル250((株)興人製、登録商標、感温点25℃)15部、カルボキシメチルセルロース5部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5部、炭酸カルシウム78.69部を混合粉砕し、均一な粉体とした。得られた粉体を60℃の温水で加温したジャケット付きリボンニーダーに加え、粉体の重量に対して温水(60℃)22部相当を加え、混合捏和した。この捏和物を直ちにバスケット型造粒機で粒径0.8mmに造粒し、80℃に調整した温風乾燥機で1時間乾燥した。得られた粒状物を篩を用いて0.5〜1.0mmの粒度に調整し、ベンスルフロンメチル0.51部、ピリミノバックメチル0.3部を含有する農薬粒剤組成物を得た。
【0054】
実施例4
ピロキロン14.2部、サーモゲル250((株)興人製、登録商標、感温点25℃)2.5部、カルボキシメチルセルロース2部、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム0.2部、タルク81.1部を混合粉砕し、均一な粉体とした。得られた粉体を60℃の温水で加温したジャケット付きリボンニーダーに加え、粉体の重量に対して温水(60℃)16部相当を加え、混合捏和した。この捏和物を直ちにバスケット型造粒機で粒径1.2mmに造粒し、80℃に調整した温風乾燥機で1時間乾燥した。篩を用いて0.71〜1.4mmの粒度に調整後、得られた粒状固形農薬組成物85部、ひまし油5部、0.5mm以下に粉砕したパラフィンワックス(滴点80℃)10部を混合し、90℃に調整した温風乾燥機で20分間放置し、ピロキロン12部を含有する農薬粒剤組成物を得た。
【0055】
実施例5
イミダクロプリド3.2部、ポリビニルアルコール5部、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム0.1部、ベントナイト15部、クレー76.7部を混合粉砕し、均一な粉体とした。得られた粉体をリボンニーダーに加え、粉体の重量に対して水24部相当を加え、混合捏和した。この捏和物をバスケット型造粒機で粒径1.2mmに造粒し、80℃に調整した温風乾燥機で1時間乾燥し、篩を用いて0.71〜1.4mmの粒度に調整した。得られた粒状固形農薬組成物95部を流動層造粒に入れ、風量30L/秒エアー温度20℃の運転条件下、製造例3で得られた感温点30℃を有するポリN−イソプロピルアクリルアミド系共重合体架橋物の20重量%水溶液25部を25mL/分の流量で噴射し、粒状固形農薬組成物に被覆した。噴霧が終了した時点でエアー温度を80℃として30分間乾燥し、イミダクロプリド5部を含有する農薬粒剤組成物を得た。
【0056】
実施例6
ペンディメタリン2.1部をフェニルキシリールエタン4.9部に混合溶解した原液を、粒度0.25〜0.36mmのクレー造粒基剤93部に吸着させ、ペンディメタリン含有粒状固形農薬組成物をした。この粒組成物97部を流動層造粒機に入れ、風量20L/秒、エアー温度20℃の運転条件下、製造例1で得られた感温点25℃を有するポリN−イソプロピルアクリルアミド系共重合体架橋物の20重量%水溶液15部を20mL/分の流量で噴霧し、粒状固形農薬組成物に被覆した。噴霧が終了した時点でエアー温度を80℃として30分間乾燥し、ペンディメタリン2部を含有する農薬粒剤組成物を得た。
【0057】
実施例7
トリシクラゾール20部、製造例3で得られた感温点30℃を有するポリN−イソプロピルアクリルアミド系共重合体架橋物の20重量%水溶液150部、ホワイトカーボン50部を均一に混合し、風量10L/秒、エアー温度30℃の運転条件に設定した流動層造粒機内に5mL/分の流量で噴霧した。噴霧終了後、エアー温度を80℃として30分乾燥させ、粉状組成物を得た。この粉状組成物5部、大豆脂肪酸0.5部、ジイソプロピルリン酸エステル0.1部、ホワイトカーボン1部、クレー93.4部を混合粉砕し、トリシクラゾール1部を含有する農薬粉剤組成物を得た。
【0058】
実施例8
ピロキロン24部、サーモゲル350((株)興人製、登録商標、感温点35℃)10部、トリポリリン酸ナトリウム5部、平均分子量20000のポリエチレングリコール10部、ブチルナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム10部、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸アンモニウム3部を均一に混合粉砕後、粒度分布が0.15〜0.35mmにある粒状乳糖38部を加えて混合した。この混合物を直径10mm、厚さ5mmの円柱状となるよう19.6MPa(200kgf/cm2)の圧力で打錠し、ピロキロン24部を含有する農薬錠剤組成物を得た。
【0059】
実施例9
製造例2で得られた感温点30℃を有するポリN−ジエチルアクリルアミド系共重合体架橋物の20重量%水溶液100部、プロヘキサジオンカルシウム50部、ホワイトカーボン30部を均一に混合し、風量10L/秒、エアー温度30℃の運転条件に設定した粒動造粒機内に5mL/分の流量で噴霧した。噴霧終了後、エアー温度を80℃として30分乾燥させ、粉状組成物を得た。この粉状組成物20部、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸アンモニウム5部、ジブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム10部、ホワイトカーボン2部、炭酸カルシウム63部を均一に混合粉砕し、プロヘキサジオンカルシウム10部を含有する農薬水和剤組成物を得た。
【0060】
実施例10
トリシクラゾール40部、製造例1で得られた感温点25℃を有するポリN−イソプロピルアクリルアミド系共重合体架橋物の20重量%水溶液200部、ホワイトカーボン20部を均一に混合し、風量10L/秒、エアー温度30℃の運転条件に設定した流動層造粒機内に5mL/分の流量で噴霧した。噴霧終了後、エアー温度を80℃として30分乾燥させ、粉状組成物を得た。この粉状組成物50部、ブチルナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム5部、ラウリル硫酸ナトリウム5部、平均分子量20000のポリエチレングリコール10部を均一に混合粉砕後、粒度分布が0.15〜0.35mmにある結晶性硫酸アンモニウム33部を加え、混合した。この混合物を14.7MPa(150kgf/cm2)で板状とした後、粒度分布が05〜1.7mmになるように解砕し、トリシクラゾール20部を含有する農薬顆粒水和剤組成物を得た。
【0061】
実施例11
ピラゾスルフロンエチル20部、製造例1で得られた感温点25℃を有するポリN−イソプロピルアクリルアミド系共重合体架橋物の20重量%水溶液200部、珪藻土20部、ホワイトカーボン20部を均一に混合し、風量10L/秒、エアー温度30℃の運転条件に設定した流動層造粒機内に5mL/分の流量で噴霧した。噴霧終了後、エアー温度を80℃として30分乾燥させ、粉状組成物を得た。この粉状組成物14部、カフエンストロール40部、カルボキシメチルセルロース10部、ポリアクリル酸ナトリウム2部、ジブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム5部、トリポリリン酸ナトリウム5部、炭酸カルシウム24部を混合粉砕し、均一な粉体とした。得られた粉体を60℃の温水で加温したジャケット付きリボンニーダーに加え、粉体の重量に対して温水(60℃)24部相当を加え、混合捏和した。この捏和物を直ちにバスケット型造粒機で粒径0.5mmに造粒し、80℃に調整した温風乾燥機で1時間乾燥した。得られた粒状物を篩を用いて0.25〜0.71mmの粒度に調整し、ピラゾスルフロンエチル2.8部、カフェンストロール40部を含有する農薬顆粒水和剤組成物を得た。
【0062】
比較例1
ベンスルフロンメチル0.83部、メフェナセット1.2部、ポリビニルアルコール5.5部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5部、ホワイトカボン1部、ベントナイト25部、炭酸カルシウム55.97部を混合粉砕し、均一な粉体とした。この粉体をリボンニーダーに加え、粉体の重量に対して水24部相当を加え混合捏和した。この捏和物をバスケット型造粒機で粒径0.8mmに造粒し、80℃に調整した温風乾燥機で1時間乾燥した。得られた粒状物を用いて0.5〜1.0mmの粒度に調整した。次にこの粒状固形農薬組成物90部にアクリルポリオール7.5部、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート2.5部を混合した溶液および均一に被覆し、ベンズスルフロンメチル0.75部、メフェナセット10部を含有する農薬粒剤組成物を得た。
【0063】
比較例2
ベンスルフロンメチル0.51部、ピリミノバックメチル0.3部、カルボキシメチルセルロース3部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5部、炭酸カルシウム95.69部を混合粉砕し、均一な粉体とした。得られた粉体をリボンニーダーに加え、粉体の重量に対して水18部相当を加え、混合捏和した。この捏和物をバスケット型造粒機で粒径0.8mmに造粒し、80℃に調整した温風乾燥機で1時間乾燥した。得られた粒状物を篩を用いて0.5〜1.0mmの粒度に調整し、ベンスルフロンメチル0.51部、ピリミノバックメチル0.3部を含有する農薬粒剤組成物を得た。
【0064】
比較例3
イミダクロプリド3部、ポリビニルアルコール5部、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム0.1部、ベントナイト20部、クレー71.9部を混合粉砕し、均一な粉体とした。得られた粉体をリボンニーダーに加え、粉体の重量に対して水24部相当を加え、混合捏和した。この捏和物をバスケット型造粒機で粒径1.2mmに造粒し、80℃に調整した温風乾燥機で1時間乾燥した。篩を用いて0.71〜1.4mmの粒度に調整し、イミダクロプリド5部を含有する農薬粒剤組成物を得た。
【0065】
比較例4
ペンディメタリン2部をフェニルキシリールエタン5部に混合溶解した原液を、粒度0.25〜0.36mmのクレー造粒基剤93部吸着混合し、ペンディメタリン2部を含有する農薬微粒剤組成物を得た。
【0066】
比較例5
トリシクラゾール1部、大豆脂肪酸0.5部、ジイソプロピルリン酸エステル0.1部、ホワイトカーボン1部、クレー97.3部を混合粉砕し、トリシクラゾール1部を含有する農薬粉剤組成物を得た。
【0067】
比較例6
ピロキロン24部、トリポリリン酸ナトリウム5部、平均分子量20000のポリエチレングリコール10部、ブチルナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム10部、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸アンモニウム3部を均一に混合粉砕後、粒度分布が0.15〜0.35mmにある粒状乳糖48部を加え、混合した。この混合物を直径10mm、厚さ5mmの円柱状となるよう19.6MPa(200kgf/cm2)の圧力で打錠し、ピロキロン24部を含有する農薬錠剤組成物を得た。
【0068】
比較例7
プロヘキサンジオンカルシウム10部、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸アンモニウム5部、ジブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム10部、ホワイトカーボン2部、炭酸カルシウム73部を均一に混合粉砕し、プロヘキサジオンカルシウム10部を含有する農薬水和剤組成物を得た。
【0069】
比較例8
ピラゾスルフロンエチル2.8部、カフェンストロール40部、カルボキシメチルセルロース5部、ポリアクリル酸ナトリウム2部、ジブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム10部、トリポリリン酸ナトリウム5部、ホワイトカーボン5部、炭酸カルシウム24部を混合粉砕し、均一な粉体とした。この粉体をリボンニーダーに加え、粉体の重量に対して水24部相当を加え混合捏和した。この捏和物をバスケット型造粒機で粒径0.5mmに造粒し、80℃に調整した温風乾燥機で1時間乾燥した。得られた粒状物を篩を用いて0.25〜0.71mmの粒度に調整し、ピラゾスルホンエチル2.8部、カフェンストロール40部を含有する農薬顆粒水和剤組成物を得た。
【0070】
試験例1(崩壊性−1)
実施例1〜6、比較例1〜4で得られた粒状固形農薬組成物を無作為に5粒選び、40℃に設定した恒温水槽に水1Lを張った直径15cmのシャーレーに静かに投下した。投下6時間後の粒状固形農薬組成物の崩壊分散の様子を観察した。次いで恒温水槽の設定温度を20℃に変更し、変更2時間後の崩壊分散状態を観察した。結果を表1に示す。
【0071】
【表1】
【0072】
試験例2(崩壊試験−2)
実施例2、4、5、10、11、比較例1、3、8より得られた粒状固形農薬組成物、ならびに対照としてウルフエース粒剤17(市販品)およびコラトップ粒剤5(市販品)を12g秤り取り、屋外で2m×2mに区取りした水田に均一に散布した。散布時の水温および観察時の水温を記録し、散布後の任意の時間で粒状固形農薬組成物の崩壊分散状態を確認した。結果を表2に示す。
【0073】
【表2】
【0074】
試験例3(薬害試験―1)
2葉期の水稲苗(品種:日本晴)を機械植えした後、1区の面積が4m2(2m×2m)となるよう試験区を作り、実施例2、3、比較例1、2については、移植10日後の正午過ぎの田面水の温度が高い時点で、実施例7、8、9、比較例5、6、7については、移植後2か月経過後の正午過ぎの田面水の温度が高い時点で固形農薬組成物を散布し、水稲に対する薬害を調査した。結果を表3に示す。
【0075】
【表3】
【0076】
表1および表2の結果から明らかな通り、実施例の粒状固形農薬組成物は比較例の粒状固形農薬組成物に比べ、感温点を超えた温度では崩壊分散しにくいが、感温点以下の温度では短時間に粒状固形農薬組成物が崩壊分散した。
【0077】
表3の結果から明らかな通り、感温吸排水性樹脂を含有する実施例の粒状固形農薬組成物は比較例の粒状固形農薬組成物に比べ、日中の水温が高い状態に散布しても薬害が軽減する傾向が認められた。
【0078】
【発明の効果】
感温吸排水性樹脂を被覆した固形農薬組成物は感温点を超えた温度では固形農薬組成物が崩壊せず、感温点以下の温度で固形農薬組成物が崩壊して農薬活性成分が水中または土壌に溶出する。また、固形農薬組成物を疎水性物質で被覆し、崩壊分散を長期間抑制した固形農薬組成物中に感温吸排水性樹脂を配合することにより、一定期間後の感温点以下の温度で固形農薬組成物を崩壊させることが可能である。したがって、本発明の固形農薬組成物は一定期間経過後または散布当日の低温時に農薬を放出させることが可能であり、夕方の温度の低下と共に固形農薬組成物を崩壊分散させ、高温施用による農薬の薬害を回避することができる。
Claims (10)
- 農薬活性成分を含む固形製剤が感温吸排水性樹脂の被覆膜で被覆されたものからなり、
前記感温吸排水性樹脂は、N−アルキル置換アクリルアミドモノマーを主成分とする原料モノマーの共重合により得られるポリアクリルアミド系共重合体架橋物であり、
前記被覆膜は、前記感温吸排水性樹脂が感温点以下の温度では水分を吸収することにより崩壊して、農薬活性成分が放出されるように構成されている
ことを特徴とする固形農薬組成物。 - 固形農薬組成物全体に占める農薬活性成分の含有量が0.01〜80重量%、感温吸排水性樹脂の含有量が0.1〜50重量%である請求項1記載の固形農薬組成物。
- ポリアクリルアミド系共重合体架橋物が、N−イソプロピルアクリルアミドモノマーを主成分とする原料モノマーの共重合により得られるポリN−イソプロピルアクリルアミド系共重合体架橋物である請求項1または2記載の固形農薬組成物。
- 請求項1ないし3のいずれかに記載の固形農薬組成物がさらに感温吸排水性樹脂で被覆された固形農薬組成物。
- 感温吸排水性樹脂が2種以上の感温吸排水性樹脂である請求項1ないし4のいずれかに記載の固形農薬組成物。
- さらに補助剤を含む請求項1ないし5のいずれかに記載の固形農薬組成物。
- 請求項1ないし6のいずれかに記載の固形農薬組成物がさらに、ポリウレタン樹脂、硬化植物油、硬化動物油、パラフィンワックス、ポリオレフィンワックス、ステアリン酸カルシウム、フェニルキシリールエタン、アルキルナフタレン、および脂肪酸エステル類からなる群より選ばれる1以上の疎水性物質で被覆された固形農薬組成物。
- 粒剤または微粒剤である請求項1ないし7のいずれかに記載の固形農薬組成物。
- 顆粒水和剤である請求項1ないし7のいずれかに記載の固形農薬組成物。
- 水田用である請求項1ないし9のいずれかに記載の固形農薬組成物。
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