JP3045649B2 - 徐放性農薬粒剤 - Google Patents

徐放性農薬粒剤

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JP3045649B2 JP6305745A JP30574594A JP3045649B2 JP 3045649 B2 JP3045649 B2 JP 3045649B2 JP 6305745 A JP6305745 A JP 6305745A JP 30574594 A JP30574594 A JP 30574594A JP 3045649 B2 JP3045649 B2 JP 3045649B2
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康雄 岩田
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、50℃以上の融点をもつ
固体状の農薬活性成分を含有し且つ該活性成分の溶出を
制御された新規な徐放性農薬粒剤に関する。本発明は、
特別には、3−アリルオキシ−1,2−ベンゾイソチア
ゾール−1,1−ジオキシド(一般名「プロベナゾー
ル」として知られる)を殺菌活性成分として含有する徐
放性殺菌剤粒剤に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、農薬活性成分を含む農薬粒剤
の薬害軽減及び(又は)薬効持続を計るためには、活性
成分溶出の制御をできる製剤法の種々な研究が行われて
きた。例えば、農薬成分を含む核を熱可塑性樹脂被膜で
被覆してなる粒剤(特公平01−5002号公報)、農薬活性
成分を含む核に被覆層を設けて活性成分を徐放化する際
の被膜むらを防ぐ手段を施した粒剤(特公平01−4483号
公報)、農薬活性成分を含む核を水不溶性オリゴマーま
たはポリマーで被覆した粒剤(特公平02− 57047号公
報)、スルホニルウレア系除草活性成分と活性炭とパラ
フィンワックスと鉱物質担体との混合物よりなる粒剤
(特開昭63− 35504号公報)、粒状の泡ガラスから可溶
性アルカリ分を溶出させてピンホールを生じさせた後、
泡ガラス粒のピンホールに香料、肥料、除草剤の液体を
含浸させてなる液体含浸された粒状の泡ガラスよりなる
農薬(特開昭63−176337号公報)、固体状の農薬活性成
分の粒子表面に直接に疎水性物質の微粉体を付着または
固定化してなる農薬(特開平01−316302号公報)が挙げ
られる。
【0003】また、水中非崩壊性の農薬粒剤の表面を疎
水性油状液体を含浸させ疎水性微粉で被覆してなる粒剤
(特開平02−286602号公報)、ベントナイトを担体とし
て用いてこれに農薬活性成分とCaCl2 を混合し造粒
させ製造されてベントナイトが凝集した形で水中で好ま
しい状態で崩壊し得る粒剤(特開平03−106802号公
報)、殺虫活性成分を含む吸収性微粉体等を非吸油性粒
状担体の表面に被覆してなる粒剤(特開平03−7202号公
報)、ポリグリセリン脂肪酸エステルと農薬活性成分と
を含む粉状混合物の造粒により得られた粒状物であっ
て、ポリグリセリン脂肪酸エステルのHLBを変化させ
る制御手段を施した粒剤(特開平05− 237号公報)、農
薬活性成分を含む吸収性微粉体または農薬活性成分で非
吸油性の粒状担体を被覆する際、被覆用の接着剤として
水溶性接着剤と水不溶性接着剤との混合物を用いてある
粒剤(特開平04−352701号公報)、セルロース粉体を10
%以上含有する不活性粒状担体で農薬活性成分を被覆し
てなる粒剤(特開平05− 17302号公報)、農薬活性成分
とベントナイトを必須成分として含み且つポバール、酢
酸ビニル樹脂エマルション等と水との混合物をバインダ
ーとして含む組成物を非崩壊性粒に被覆してなる粒剤
(特開平05− 906号公報)、農薬活性成分を含有する粒
状担体の表面に二重の被覆層を形成してなる重層被覆さ
れた粒状農薬(特開平06−9303号公報、特開平06−9304
号公報、特開平06− 72805号公報、特開平06−80514号
公報)などが挙げられる。
【0004】しかしながら、上記の従来技術に係る農薬
粒剤はそれらの製造方法が煩雑であったり、また農薬活
性成分の薬害軽減効果や防除効果又は性能の点で必ずし
も満足すべきものとはいいがたい。
【0005】したがって、簡便な製造方法で製造できて
且つ農薬活性成分の本来の防除効果を低減することなく
農薬活性成分の薬害を軽減できるように該活性成分の溶
出を徐放化された新規な農薬粒剤の開発が望まれてい
る。
【0006】一般論として、農薬活性成分を含む組成物
を粉剤、水和剤又は粒剤に製剤化する時には、農薬活性
成分のための不活性担体として又は増量剤として或る量
のシリカ、例えばホワイトカーボンを配合できることは
知られている。しかしながら、常温で固体状である農薬
活性成分を用いて従来実際に製造された農薬粒剤の配合
組成例を詳しく調査すると、固体状の農薬活性成分にす
べて固体状の補助剤(担体を含めて意味する)の1種又
はそれ以上を配合するが、液体状の補助剤を全く配合し
ないでなる農薬組成物を造粒して農薬粒剤を製造した場
合には、該粒剤に非晶質シリカをほとんど配合しないの
が通例である。その理由は不詳であるが、比較的に価格
の高い非晶質シリカを用いずとも、安価な不活性固体状
担体、例えばクレーを用いることでその粒剤は農薬とし
て製剤される目的を達し得るからであると推測される。
【0007】また、従来製造された農薬粒剤の配合組成
例について農薬活性成分が固体状で且つ配合された補助
剤が液体状である場合や、農薬活性成分が液体状であり
且つ配合された補助剤の一つが液体状物質である場合に
は、その液体状物質の吸収剤又は吸油剤として液体の吸
収に足る少量の非晶質シリカを配合する時もある。但し
この際に配合される非晶質シリカの配合量は該粒剤の含
有する該液体状物質の重量と同等量であるか、もしくは
数%(重量)の量だけ、但し5重量%より少ない量だけ
を上乗するのが実状である。
【0008】しかも、従来これまでに、50℃以上の融点
をもつ固体状の農薬活性成分と非晶質シリカを含有する
ように製造された農薬粒剤において、該シリカの含量が
5〜50%(重量)という特定の範囲内にしてある農薬粒
剤は本発明者らの知る限りでは文献に記載されていな
い。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、前記のよう
な従来技術に係る徐放性の農薬粒剤に伴う問題点を解決
しようとするものであり、簡便な方法で製造でき且つ農
薬活性成分の本来有する防除効果を低減させずに該農薬
活性成分により起される薬害が軽減又は防止されるよう
に徐放性を付与された新規な農薬粒剤を提供することを
目的としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記の諸
問題点を解決すべく鋭意研究した。その結果、50℃以
上の融点をもつ固体状の農薬活性成分の粒子と非晶質シ
リカの粒子と1種又はそれ以上の補助剤成分との混合物
を造粒して農薬粒剤を調製するに当って、該混合物に含
まれる非晶質シリカの含量は、該混合物に含まれる補助
剤成分のすべてが固体である場合には、該混合物の全体
重量に基づいて5〜50%(重量)の範囲内の量であり
且つこの量で配合された非晶質シリカによって、水中に
入れた前記の粒剤からの農薬活性成分が100%の溶出
率で水中へ溶出するのに35日〜42日間又はそれ以上
の長時間を要するという徐放性を与えられるものとする
か、あるいは該混合物に含まれる補助剤成分の1種又は
それ以上が液状物質である場合には、その混合物に含ま
れる非晶質シリカの含量は、該シリカの含量から該液状
物質の含量を差し引いた差の値が該混合物の全体重量に
基づいて5〜50%(重量)の範囲内の量であり且つこ
の量で配合された非晶質シリカによって、水中に入れた
前記の粒剤からの農薬活性成分が100%の溶出率で水
中に溶出するのに前記のように長時間を要するという前
記の徐放性を与えられるものとする時には、そのように
特定の含量で配合された非晶質シリカが徐放性付与剤と
して作用できることを発見して、目的とする性質を有す
る徐放性農薬粒剤が容易に製造できることを見いだし、
更にこうして得た農薬粒剤を施用する場合に農薬活性成
分の本来有する防除効果を損うことなく作物に対する薬
害が軽減された有利な農薬粒剤であることを見いだし
た。
【0011】従って、本発明の要旨とするところは、5
0℃以上の融点をもつ固体状の農薬活性成分の粒子と非
晶質シリカの粒子と1種又はそれ以上の補助剤成分との
混合物を造粒して成る農薬粒剤であって、該混合物に含
まれる非晶質シリカの含量は、該混合物に含まれる補助
剤成分のすべてが固体である場合には、該混合物の全体
重量に基づいて5〜50%(重量)の範囲内の量であり
且つこの量で配合された非晶質シリカによって、水中に
入れた前記の粒剤からの農薬活性成分が100%の溶出
率で水中へ溶出するのに35日〜42日間又はそれ以上
の長時間を要するという徐放性を与えられるのであり、
あるいは該混合物に含まれる補助剤成分の1種又はそれ
以上が液状物質である場合には、その混合物に含まれる
非晶質シリカの含量は、該シリカの含量から該液状物質
の含量を差し引いた差の値が該混合物の全体重量に基づ
いて5〜50%(重量)の範囲内の量であり且つこの量
で配合された非晶質シリカによって、水中に入れた前記
の粒剤からの農薬活性成分が100%の溶出率で水中に
溶出するのに前記の長時間を要するという徐放性を与え
られるのであることを特徴とする、徐放性農薬粒剤にあ
る。
【0012】本発明の農薬粒剤において農薬活性成分は
殺虫活性成分、殺菌活性成分又は除草活性成分であるこ
とができる。特に、本発明の農薬粒剤では農薬活性成分
が殺菌剤である固体状の3−アリルオキシ−1,2−ベ
ンゾイソチアゾール−1,1−ジオキシドすなわちプロ
ベナゾール(一般名)であることができる。
【0013】なお、本発明の農薬粒剤においては、「補
助剤成分」とは、該粒剤中に存在する農薬活性成分及び
非晶質シリカ以外のすべての追加的に配合される成分を
指し、該粒剤を造粒して製剤化する場合又は活性成分の
施用を補助するために通常添加される補助的な成分、例
えば界面活性剤、担体、結合剤、安定化剤、物理性改良
剤、固結剤及び着色料をすべて含めて意味するものであ
る。
【0014】次に本発明の徐放性農薬粒剤について具体
的に説明する。本発明の農薬粒剤に含まれる農薬活性成
分は、常温にて固体状であり融点が50℃以上の固体状農
薬活性成分として用い得る化合物であれば何れも使用で
きる。このような化合物としてたとえば次のものが挙げ
られる。
【0015】(A)殺虫剤として:− ピリダフェンチオン、ジメトエート、PMP、モノクロ
トホス、CVMP、ジメチルビンホス、アセフェート、
サリチオン、DEP、NAC、MTMC、MIPC、P
HC、MPMC、XMC、ベンダイオカルブ、ピリミカ
ーブ、メソミル、オキサミル、チオジカルブ、レスメト
リン、シペルメトリン、フェンプロパトリン、トラロメ
トリン、カルタップ、チオシクラム、ベンスルタップ、
ジフルベンズロン、テフルベンズロン、クロルフルアズ
ロン、ブプロフェジン、フェノキシカルブ、ピレトリ
ン、ロテノン、CPCBS、ケルセン、フェニソブロモ
レート、テトラジホン、キノメチオネート、アミトラ
ズ、ベンゾメート、酸化フェンブタスズ、ジエノクロ
ル、フェンピロキシメート、クロフェンテジン、ピリダ
ベン、クロフェンテジン、ポリナクチン複合体、ミルベ
メクチン、メスルフォンフェス、酒石酸モランテル、塩
酸レバミゾール、ベンゾエピン、メタアルデヒド、ダゾ
メット、ベノミル、カルタップ、チオシクラム、イソプ
ロチオラン、DBEDCなど。
【0016】(B)殺菌剤として:− キャプタン、トルクロホスメチル、ベノミル、プロシミ
ドン、オキシカルボキシン、フルトラニル、テクロフタ
ラム、トリクラミド、メタラキシル、オキサジキシル、
トリフルミゾール、フェナリモル、ブラストサイジン
S、カスガマイシン、バリダマイシンA、PCNB、ヒ
ドロキシイソキサゾール、ダゾメット、クロロネブ、メ
タスルホカルブ、プロベナゾール、イソプロチオラン、
トリシクラゾール、ピロキロンなど。
【0017】(C)除草剤として:− 2,4−D、MCP、MCPB、MCPP、トリクロピ
ル、クロメプロップ、ナプロアニリド、フェノキサプロ
ップエチル、キザロホップエチル、CNP、クロメトキ
シニル、ビフェノックス、MCC、フェンメディファ
ム、MBPMC、ピリブチカルブ、DCPA、ブロモブ
チド、メフェナセット、ナプロパミド、ジフェナミド、
プロピザミド、アシュラム、DCMU、リニュロン、シ
デュロン、ダイムロン、メチルダイムロン、カルブチレ
ート、イソウロン、チアザフルロン、エチジムロン、テ
ブチウロン、ベンスルフロンメチル、ピラゾスルフロン
エチル、シマジン、アトラジン、シメトリン、アメトリ
ン、プロメトリン、ジメタメトリン、シアナジン、ヘキ
サジノン、メトリブジン、ターバシル、ブロマシル、レ
ナシル、PAC、ベンタゾン、ダゾメット、オキサジア
ゾン、ピラゾレート、ピラゾキシフェン、ベンゾフェナ
ップ、パラコート、ジクワット、トリフルラリン、ベス
ロジン、プロジアミン、MDBA、ピクロラム、イマザ
ピル、ジチオピル、TCTP、TCA、テトラピオン、
アミプロホスメチル、グリホサート、ビアラホス、グリ
ホシネート、アイオキシニル、DBN、DCBN、アロ
キシジム、ACN、クロルフタリム、DSMA、塩素酸
ナトリウム、シアン酸ナトリウムなど。
【0018】本発明の粒剤中の前記の農薬活性成分の含
量は、特に限定されるものではないが、一般的には粒剤
の全体重量の 0.1〜50%(重量%)であることができ
る。農薬活性成分の種類により、10アール当たりの必要
な施用量となるように適当な含量で配合すればよい。な
お、前記の農薬活性成分として用い得る化合物名は、
「農薬ハンドブック1992年版」(社団法人 日本植物防
疫協会発行)に記載の一般名である。
【0019】本発明の粒剤に含まれる非晶質シリカは、
特に限定されないが、湿式方法又は乾式方法で製造され
たホワイトカーボン又は含水非晶質シリカ又は無定形シ
リカ又は含水珪酸などとして市販されるものである。例
えば次のものが挙げられる。すなわち、カープレックス
(塩野義製薬(株)の商品名)、ソーレックス、ファイ
ンシール、トクシル(トクヤマ(株)の商品名)、ニッ
プシール(日本シリカ工業(株)の商品名)、アエロジ
ル(日本アエロジル(株)の商品名)などが挙げられ
る。
【0020】本発明の粒剤に含まれる非晶質シリカの含
量は、本発明の粒剤をなす原料混合物の諸成分のすべて
が固体の場合、該原料混合物又はこれから造粒された粒
剤の重量に基づいて5〜50重量%、好ましくは10〜30重
量%の範囲内にあり、あるいは該原料混合物中に液状物
質の成分が含まれている場合、該非晶質シリカの含量
(重量%として計算)から原料混合物中の前記の液状物
質の含量(重量%として計算)を差し引いた差の値が5
〜50重量%、好ましくは10〜30重量%の範囲内である。
なお、本発明の農薬粒剤を作る粉末状の原料混合物を造
粒するために加水して混練する時に加える水は、前記に
いう「液状物質」ではない。
【0021】本発明の粒剤に配合できる界面活性剤とし
ては、農薬製剤に常用される非イオン性界面活性剤、陰
イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤および両性
界面活性剤などが挙げられる。
【0022】例えば、非イオン界面活性剤としては、ア
ルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリール
エーテル、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテ
ル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシ
エチレンソルビタンアルキレート、ポリオキシエチレン
フェニルエーテルポリマー、ポリオキシエチレンアルキ
レンアリールフェニルエーテル、ポリオキシエチレンア
ルキレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプ
ロピレンブロックポリマーなどがある。陰イオン界面活
性剤としては、リグニンスルホン酸塩、アルキルアリー
ルスルホン酸塩ジアルキルスルホサクシネート、ポリオ
キシエチレンアルキルアリールエーテルサルフェート、
アルキルナフタレンスルホン酸塩、ポリオキシエチレン
スチリルフェニルエーテルサルフェートなどがある。陽
イオン界面活性剤および両性界面活性剤としては、アル
キルアミン塩、第四級アンモニウム塩アルキルベタイ
ン、アミンオキサイドなどが挙げられる。
【0023】本発明の粒剤に配合できる結合剤は特に限
定されないが、次の結合剤、例えば、ポリビニルアルコ
ール、澱粉、デキストリン、カルボキシメチルセルロー
ス、ポリビニルピロリドン、アルギン酸ナトリウム、リ
グニンスルホン酸ナトリウム、リグニンスルホン酸カル
シウムなどを使用できる。
【0024】また、本粒剤に配合できる担体としては、
クレー、珪石、タルク、ベントナイト、炭酸カルシウ
ム、軽石、ケイソウ土、バーミキュライト、パーライト
及び結晶質シリカなどが1種又はそれ以上使用できる。
【0025】また物理性改良剤としてはヒマシ油、ゴマ
油、ヒマワリ油、トーモロコシ油、綿実油、大豆油など
の植物油などが挙げられる。本発明の粒剤には、上記の
農薬活性成分、界面活性剤、結合剤以外に、農薬活性成
分の安定化剤、固結剤などの追加的成分を配合してもよ
い。
【0026】本発明の粒剤において、前記の特定された
含量の範囲で配合された非晶質シリカは粒剤からの農薬
活性成分の溶出を制御する作用、すなわち粒剤から活性
成分の溶出に徐放性を付与する作用を有する。
【0027】本発明の徐放性農薬粒剤の調製方法は特に
限定されない。農薬粒剤を調製する従来知られた一般の
方法で調製でき、例えば原料組成物を圧縮成形する方法
又は押出し造粒する方法などで製造できる。しかし、特
に例えば次の工程〜から成る方法によって調製する
のが好ましい。
【0028】工程:プロベナゾール、非晶質シリカ、
界面活性剤、結合剤及び担体ならびに所望ならばその他
の補助剤を一緒にハンマーミルで混合し、固体粉末状の
原料組成物を得る。 工程:この粉末状の原料組成物に、適当量の水を加え
て含水の混合物を作り混練し、その混練物をバスケット
型押し出し造粒機に入れて造粒し、粒状の組成物を得
る。 工程:この粒状の組成物を流動乾燥させ、乾燥された
粒子を目標の粒度分布をもつ粒を得るように篩別し、篩
別された所望な粒度の粒を本発明の改良された農薬粒剤
とする。
【0029】次に実施例により本発明の農薬粒剤の製造
例をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例
に限定されるものではない。以下の実施例で「部」とあ
るのはすべて重量部を意味する。
【0030】実施例1 殺菌剤としてプロベナゾール原体24.0部、非晶質シリカ
としてホワイトカーボン 5.0部(トクシル;トクヤマ
(株)の商品名)、界面活性剤としてラウリル硫酸ナト
リウム 0.2部、結合剤としてポリビニルアルコール 2.0
部、担体としてクレー68.3部を共にハンマーミルで混合
粉砕して均一な粉末混合物 100部を得た。これに適量の
水を添加しよく混練した。得られた混練物をバスケット
型押し出し造粒機で造粒し、流動乾燥した後に篩別によ
り整粒して、本発明の徐放性の農薬粒剤を得た。得られ
た農薬粒剤中の各成分の含量(重量%)は後記の表1に
要約して示される。
【0031】実施例2〜4 実施例1で調製された粉末混合物に含まれるホワイトカ
ーボンの含量を 5.0部から10部、15部又は30部に増量し
且つクレー含量を68.3部からそれぞれに63.8部、58.8部
又は 43.98部に減量した組成をもつ粉末混合物を実施例
1と同様に調製した。得られた粉末混合物3種を実施例
1と同様にして造粒、乾燥及び整粒して本発明の農薬粒
剤3種を得た。これら農薬粒剤3種の各成分の含量(重
量%)は後記の表1に要約して示される。
【0032】実施例5 プロベナゾール原体24.0部、ホワイトカーボン(カープ
レックス;塩野義製薬(株)の商品名) 5.0部、ラウリ
ル硫酸ナトリウム 0.2部、リグニンスルホン酸ナトリウ
ム 5.0部、ベントナイト20.0部、タルク45.8部を共にハ
ンマーミルで混合粉砕して均一な粉末混合物 100部を得
た。これに適量の水を添加しよく混練した。得られた混
練物をバスケット型押し出し造粒機で造粒し、流動乾燥
した後に篩別により整粒して、徐放性の農薬粒剤を得
た。
【0033】実施例6〜8 実施例5で調製された粉末混合物に含まれるホワイトカ
ーボンの含量を 5.0部から10部、15部又は30部に増量し
且つタルク含量を45.8部からそれぞれに40.8部、35.8部
又は20.8部に減量した組成をもつ粉末混合物を実施例5
と同様に調製した。得られた粉末混合物3種を実施例5
と同様にして造粒、乾燥及び整粒して本発明の農薬粒剤
3種を得た。これら農薬粒剤3種の各成分の含量(重量
%)は後記の表1に要約して示される。
【0034】実施例9〜12 プロベナゾール原体24.0部、ホワイトカーボン8部、ラ
ウリル硫酸ナトリウム0.2部、ポリビニルアルコール 4.
0部、クレー60.8部及び物理性改良剤として大豆油3部
からなる粉末混合物 100部を実施例1と同様にして調製
した。また、前記の粉末混合物に含まれるホワイトカー
ボンの含量を8部から13部、18部又は33部に増量し且つ
クレー含量を60.8部からそれぞれに55.8部、50.8部又は
35.8部に減量した組成をもつ粉末混合物3種も実施例1
と同様に調製した。得られた粉末混合物の計4種をそれ
ぞれに実施例1と同様に造粒、乾燥及び製粒して本発明
の農薬粒剤4種を得た。これら農薬粒剤4種の各成分の
含量(重量%)は後記の表1に要約して示す。
【0035】比較例1〜2 プロベナゾール原体24.0部、ラウリル硫酸ナトリウム
0.2部、ポリビニルアルコール 2.0部、クレー73.8部を
共にハンマーミルで混合粉砕して均一な粉末混合物 100
部を得た。この粉末混合物はホワイトカーボンの配合が
省略され且つクレーが増量されている点で実施例1で調
製された粉末混合物と異なる。前記の粉末混合物に適量
の水を添加しよく混練した。得られた混練物をバスケッ
ト型押し出し造粒機で造粒し、流動乾燥した後に篩別に
より整粒して、比較のための農薬粒剤を得た。
【0036】また、前記の如く得た比較のための農薬粒
剤用の原料の粉末混合物に含まれるクレー73.8部を69.8
部に減量し且つホワイトカーボン4部を添加した組成を
もつ粉末混合物を前記と同様に調製した。そして、これ
を前記と同様に造粒、乾燥及び整粒して比較のための別
の農薬粒剤を得た。これら農薬粒剤2種の各成分の含量
(重量%)は後記の表1に要約して示す。 比較例3〜4 プロベナゾール原体24.0部、ラウリル硫酸ナトリウム
0.2部、リグニンスルホン酸ナトリウム 5.0部、ベント
ナイト20.0部、タルク50.8部をハンマーミルで混合粉砕
して均一な粉末混合物を得た。この粉末混合物はホワイ
トカーボンの配合が省略され且つタルクが増量されてい
る点で実施例5で調製された粉末混合物と異なる。その
粉末混合物に適量の水を添加しよく混練した。得られた
混練物をバスケット型押し出し造粒機で造粒し、流動乾
燥した後に篩別により整粒して、比較のための農薬粒剤
を得た。
【0037】また、前記の如く得た比較のための農薬粒
剤用の原料の粉末混合物に含まれるタルク50.8部を46.8
部に減量し且つホワイトカーボン4部を添加した組成を
もつ粉末混合物を前記と同様に調製した。そして、これ
を前記と同様に造粒、乾燥及び整粒して比較のための別
の農薬粒剤を得た。これら比較のための農薬粒剤2種の
各成分の含量(重量%)は後記の表1に要約して示す。
【0038】比較例5〜6 プロベナゾール原体24.0部、ホワイトカーボン3部、ラ
ウリル硫酸ナトリウム0.2部、ポリビニルアルコール 4.
0部、クレー68.8部、物理活性改良剤としての大豆油3
部からなる粉末混合物 100部を比較例1と同様にして調
製した。また、前記の粉末混合物に含まれるホワイトカ
ーボンの含量を3部から7部に増量し且つクレー含量を
68.8部から38.2部に減量した組成をもつ粉末混合物も同
様に調製した。これら粉末混合物を比較例1と同様に造
粒し、流動乾燥した後に篩別により整粒して、比較のた
めの農薬粒剤2種を得た。これら比較のための農薬粒剤
の各成分の含量(重量%)は後記の表1に要約して示さ
れる。
【0039】次に、試験例1〜12により本発明の農薬粒
剤が活性成分の徐放性を示すこと及び(又は)活性成分
の防除効果を低減せずに薬害軽減作用を示すことを例証
する。
【0040】試験例1〜12 農薬活性成分の水中溶出試験 1000mlの大きさのビーカーに3度硬水 500mlを入れ(水
深6cm)、実施例1〜12及び比較例1〜6に準じて調製
した粒剤42mgを均一に水中に散粒する。ビーカーを20℃
の暗室に放置し、一定期間毎に水深5cmの深さ3か所よ
り採水し、取った水試料中のプロベナゾール濃度を液体
クロマトグラフィーで測定してビーカー中の水に溶出し
た全体のプロベナゾール溶出量を算定した。供試粒剤中
のプロベナゾール全量がビーカー中の水 500mlに溶出し
終った時のプロベナゾール濃度は理論上は 20ppmに相当
するから、その都度測定した溶出量から、粒剤よりのプ
ロベナゾールの初期含量に基づく溶出率を算出した。得
られた試験結果を次の表1に示す。
【0041】
【0042】上の表1の結果から明らかなように、実施
例1〜12で得た本発明の粒剤は、それの活性成分のプロ
ベナゾールを 100%の溶出率で水中へ溶出するのに35日
〜42日間又はそれ以上の長時間を要しており、活性成分
の徐放性を有することが示される。これに対して、比較
のための粒剤は、 100%の溶出率に達すのに7〜14日間
の時間を要するのみであった。
【0043】次の試験例により、育苗中の稲の稚苗に施
用された時のプロベナゾールを有効成分とした本発明の
徐放性粒剤が水田移植後もプロベナゾールによるいもち
病の防除作用を長期間保持する効能を有することを例証
する。
【0044】試験例13〜24及び比較試験例7〜12 従来慣用の育苗用培土を入れた育苗箱(横30cm×縦60cm
×高さ3cm)の1箱あたりに、通常の種子消毒と予備措
置をした稲(品種:コシヒカリ)の籾 150gを播種し
た。このように播種された育苗箱を32℃で多湿条件下で
2日間放置して籾の出芽をさせた。その後、透明アクリ
ル樹脂製の温室内に育苗箱を移して播種後20日間にわた
り稲稚苗を移植時まで生育管理した。
【0045】播種19日後(移植の前日)に、実施例1〜
12に準じて調製されて農薬活性成分としてプロベナゾー
ル24%(重量)を含み且つ徐放性付与剤として非晶質シ
リカ(ホワイトカーボン)5%,8%,10%,13%,15
%,18%,30%又は33%(重量)を含む粒剤50gを、育
苗箱1箱あたりに稚苗の上から均一に散粒した(1箱あ
たりのプロベナゾール施用量は12gであった)。この
際、苗の茎葉に付着した粒剤は手で培土表面に払い落し
た。その後に、1箱あたり 500ccの水を茎葉から灌水し
た。
【0046】この粒剤施用1日後に、例年、いもち病が
発生する水田に1区の面積が60m2(2m×30m)の試
験区を作り、稚苗を水田に田植機で移植した。いもち病
の発病調査は水田移植60日後に葉いもち病を対象に、ま
た水田移植 110日に穂いもち病を対象に行った。発病調
査は、各々の試験区とも3か所から任意に50株を選び
(1区あたり合計150株)、下記の基準で発病程度を調
査して発病度を求め、下記の計算式により、プロベナゾ
ール処理された稚苗を移植された試験区(処理区)と対
照試験例(無処理区)との対比から防除価(%)を求め
た。なお、本試験は2連制(A区及びB区)で行った。
【0047】 葉いもち病調査基準 指 数 病斑が認められない(健全) 0 株当たりの病斑数が1〜3 1 株当たりの病斑数が4〜10 2 下位葉に病斑が多数認められるが、 3 上位葉には極めて少ない 最上葉にわずかに病斑が認められる 4 最上葉に多数病斑が認められ、 5 ズリコミ症状を伴う ズリコミとともに枯死葉が目立つ 6
【0048】
【0049】 穂いもち病調査基準 指 数 発病が認められない 0 枝梗の1/3以下が発病 1 枝梗の1/3〜2/3が発病 2 枝梗の2/3が発病 3 首および節いもち 4
【0050】
【0051】また、比較のため、前記の比較例1〜6で
調製されてプロベナゾールを含むがホワイトカーボンを
含まない又は規定量より少なく含む比較のための徐放性
のない粒剤を、上記の試験例13〜24と同様に育苗箱内の
稚苗に施用し、その後に上記の試験例と同様に稲の移植
と栽培を行った場合を比較試験例7〜12とした。
【0052】なお、プロベナゾールを含む粒剤を全く施
用しないで上記の試験例13を反復した場合を対照試験例
(無処理区)とした。得られた試験結果を次の表2に要
約して示す。
【0053】
【0054】表2の結果から判るように、本発明の徐放
性粒剤を用いた試験例13〜24において、水田移植後長期
間にわたり、自然感染によるいもち病の発病が完全に又
は実質的に防除できたことが認められた。これに対し
て、比較試験例7〜12では、いもち病は有害の程度に発
生し、また対照試験例(無処理区)では、いもち病の発
病が水田移植60日後の時点で約30%台又はそれ以上に達
した。
【0055】次の試験例により、育苗中の稲の稚苗に施
用された時のプロベナゾールを活性成分とした本発明の
徐放性粒剤がプロベナゾールによる薬害を水田に移植後
の稲に発現するのを軽減又は防止される効果を有するこ
とを例証する。
【0056】試験例25〜36及び比較試験例13〜18 従来慣用の育苗用培土を入れた育苗箱(横30cm×縦60cm
×高さ3cm)の1箱あたりに、通常の種子消毒と予備措
置をした稲(品種:朝日)の籾 150gを播種した。この
ように播種された育苗箱を32℃で多湿条件下で2日間放
置して籾の出芽をさせた。その後、透明アクリル樹脂製
の温室内に育苗箱を移して播種後20日間にわたり稲稚苗
を移植時まで生育管理した。
【0057】播種19日後(移植の前日)に、実施例1〜
12に準じて調製されて有効成分としてプロベナゾール24
%(重量)を含み且つホワイトカーボンを種々の含量
(重量%)で含む粒剤12種の50gを、試験例25と同様に
育苗箱1箱あたりに稚苗の上から均一にそれぞれに散粒
した(1箱あたりのプロベナゾール施用量は12gであっ
た)。この際、苗の茎葉に付着した粒剤は手で培土表面
に払い落した。その後に、1箱あたり 500ccの水を茎葉
の上から灌水した。
【0058】この粒剤施用1日後に、培土上に付着した
粒剤が落ちないように培土を根部に付着したままの苗4
本を1株として育苗箱から取出し、1/5000アールの大
きさのワグネルポットの各個にそれぞれ移植した。移植
後、透明アクリル樹脂製の温室内で稲を湛水条件下に栽
培管理した。この栽培中は随時に、移植7〜28日後まで
各株の最長葉の先端から株元までの長さ(cm)を「草
丈」として測定した。また、移植28日後には、1株あた
りの茎数(本数)と1株あたりの地上部の生重(g)も
調査した。
【0059】なお、本試験例25〜36では、1試験区あた
り5個のワグネルポットで稲を栽培して5連制で試験を
行った。草丈、茎数、生重はそれぞれの平均値として算
出した。また、比較のため、前記の比較例1〜6で調製
されてプロベナゾールを含むが徐放性のない比較のため
の粒剤を、上記の試験例25〜36と同様に育苗箱内の稚苗
に施用し、その後に上記の試験例と同様に稲の移植と栽
培を行った場合を比較試験例13〜18とした。更に、プロ
ベナゾールを含む粒剤を全く施用しないで上記の試験例
25を反復した場合を対照試験例(無処理区)とした。得
られた試験結果を次の表3に要約して示す。
【0060】
【0061】上の表3の結果から判るように、本発明の
徐放性粒剤を用いた試験例25〜36において、稲の移植7
日後、14日後、21日後及び28日後に調査した草丈、葉令
及び(又は)生重の点で見た稲の生育状況は、対照試験
例(無処理区)のそれとほゞ同等であると認められて、
稲の生育障害の薬害が発現してないことを示した。これ
に対して、徐放性のないプロベナゾール粒剤を施用した
比較試験例13〜18では、本発明の試験例25〜36及び対照
試験例に比べて稲の生育状況が明らかに悪いと認めら
れ、薬害が起きたことを示す。
【0062】
【発明の効果】本発明の徐放性農薬粒剤は、次のような
効果を有する。
【0063】 粒剤から農薬有効成分の溶出が制御さ
れることにより、薬害軽減及び長期間の薬効持続が可能
となる。
【0064】 従来の一般的な設備と製造方法で本発
明の徐放性農薬粒剤を調製することが可能である。
【0065】 本発明の徐放性粒剤は従来の製造設備
を用いて製造でき、しかも特殊な溶出制御の手段を使わ
ないため製造が簡便で且つ非常に経済的である。
【0066】 本発明の粒剤に配合される非晶質シリ
カは安全性の高い物質であるから環境に対して安全であ
る。
フロントページの続き (72)発明者 米村 伸二 神奈川県厚木市岡田1丁目8番11−205 (56)参考文献 特開 平7−242514(JP,A) 特開 平5−124905(JP,A) 特開 平7−187932(JP,A) 特開 昭56−39003(JP,A) 国際公開95/9532(WO,A1) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) A01N 25/08 A01N 25/12 A01N 43/80

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 50℃以上の融点をもつ固体状の農薬活
    性成分の粒子と非晶質シリカの粒子と1種又はそれ以上
    の補助剤成分との混合物を造粒して成る農薬粒剤であっ
    て、該混合物に含まれる非晶質シリカの含量は、該混合
    物に含まれる補助剤成分のすべてが固体である場合に
    は、該混合物の全体重量に基づいて5〜50%(重量)
    の範囲内の量であり且つこの量で配合された非晶質シリ
    カによって、水中に入れた前記の粒剤からの農薬活性成
    分が100%の溶出率で水中へ溶出するのに35日〜4
    2日間又はそれ以上の長時間を要するという徐放性を与
    えられるのであり、あるいは該混合物に含まれる補助剤
    成分の1種又はそれ以上が液状物質である場合には、そ
    の混合物に含まれる非晶質シリカの含量は、該シリカの
    含量から該液状物質の含量を差し引いた差の値が該混合
    物の全体重量に基づいて5〜50%(重量)の範囲内の
    量であり且つこの量で配合された非晶質シリカによっ
    て、水中に入れた前記の粒剤からの農薬活性成分が10
    0%の溶出率で水中に溶出するのに前記の長時間を要す
    るという徐放性を与えられるのであることを特徴とす
    る、徐放性農薬粒剤。
  2. 【請求項2】 農薬活性成分が殺虫活性成分、殺菌活性
    成分又は除草活性成分である請求項1に記載の農薬粒
    剤。
  3. 【請求項3】 農薬活性成分が農園芸用殺菌剤である3
    −アリルオキシ−1,2−ベンゾイソチアゾール−1,
    1−ジオキシドである請求項1に記載の農薬粒剤。
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