JP2019014692A - 徐放性農薬粒状組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】粒剤に含有された、加熱によって分解や揮発を生じる農薬活性成分の初期の放出を抑えつつ、長期間の放出を保つ農薬粒状組成物の提供。【解決手段】粒状担体に農薬活性成分を混合後、非晶質二酸化ケイ素等の吸油性粉体を加え混合し、農薬活性成分層を形成、続いて該農薬活性成分層にシリコーンオリゴマー及び/又はシランカップリング剤及び硬化触媒を加えてシリコーンレジンを形成し、被覆する農薬粒状組成物。好ましくは、バインダーとして常温で液体で不揮発性の有機化合を含有し、粒径が300〜2000μmである農薬粒状組成物。農薬活性成分の蒸気圧が20℃で0.5mPa以上であり、水溶解度が25℃で0.1%以上であることが好ましい農薬粒状組成物。更に、農薬活性成分がダイアジノン又はチオシクラムであることが望ましい、農薬粒状組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、農薬活性成分の環境への放出を制御する農薬粒剤に関する。
近年、農業従事者の高齢化が益々深刻になり、農作業の省力化が求められている。それに伴い農薬も省力散布製剤やその散布方法に関する技術が検討されている。さらに、環境負荷低減という面から農薬の使用量及び使用回数の減少と使用期間の早期化が望まれる。これらの要請を受け、農薬活性成分の溶出制御、溶出期間の長期化を目的とした農薬粒剤の開発が行われている。そこで、農薬活性成分の農薬製剤中から土壌中及び水中への放出速度を制御する製剤技術の開発が必要となるが、農薬活性成分の放出を制御する製剤としてはこれまでにも様々な基材を用いた農薬粒剤が開発されている。
このような放出制御粒剤として、脂肪酸及び/又は脂肪酸誘導体や、各種樹脂等の疎水性材料を基材として用いて練り込み造粒するもの(特許文献1〜4)、農薬活性成分を含有する液体をマイクロカプセル化するもの(特許文献5)、農薬活性成分を含有する顆粒を被覆するもの(特許文献6〜8)、ワックスのエマルションと撥水性粉末をコーティング後、加熱乾燥するもの(特許文献9)が挙げられる。
特開2000−178102号公報 特開平11−292706号公報 特開2000−351705号公報 特開2011−6396号公報 特開平11−314032号公報 特開平11−005704号公報 特開2007−119442号公報 特公昭52−21059号公報 特開2000−239105号公報
しかし、特許文献1に示した溶出制御粒剤は、数日から数週間といった長期の溶出制御はできず、十分な生物効果を得られない。特許文献2においては、農薬活性成分の溶出効率が十分でなく、農薬粒剤中に薬物が一部もしくは多くの含量が留まってしまい、一定の施用量において生物効果を得るための十分な溶出が得られないといった欠点があった。また、特許文献3の農薬粒剤の製造方法は、基材であるモンタンロウ誘導体と農薬活性成分を加熱溶融して混合した後に、冷却固化したものを破砕造粒することによって得られる。特許文献3に限らず、いずれの特許文献も加熱溶融工程や加熱乾燥工程を含む製造方法であり、熱に不安定な農薬活性成分を用いることができない。また、モンタンロウ誘導体などの脂肪酸誘導体と農薬活性成分を固体のまま直接混合し、加熱工程を経ずに押出造粒を行うと、得られる粒の硬度が低く、保存や輸送時に粒が割れたり欠けたりすることで粒剤の総表面積が大きくなり望む溶出速度が得られなくなるおそれがある。
本発明は、粒剤に含有された農薬活性成分の初期の放出を抑えつつ、長期間の放出を保つ農薬粒状組成物を提供することを目的とする。特に、水溶解度が高く、加熱によって分解や揮発を生じる農薬活性成分を安定に徐放性農薬粒状組成物に製剤化することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、
「(1)粒状担体にシリコーンレジンを被覆することを特徴とする農薬粒状組成物。
(2)農薬活性成分、シリコーンレジン、吸油性粉体及び前記粒状担体を含むことを特徴とする(1)に記載の農薬粒状組成物。
(3)前記吸油性粉体が非晶質二酸化ケイ素、パーライト、珪藻土、ゼオライト、クレー、白土、バーミキュライト、セピオライト、デキストリン、結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース、木粉、パルプ粉の中から選ばれる1種以上を含むことを特徴とする(2)に記載の農薬粒状組成物。
(4)前記粒状担体の粒径が300〜2000μmであることを特徴とする(1)及至(3)のいずれか一項に記載の農薬粒状組成物。
(5)前記粒状担体に農薬活性成分を混合後、前記吸油性粉体を加え混合し、農薬活性成分層を形成し、該農薬活性成分層にシリコーンオリゴマー及び/またはシランカップリング剤及び硬化触媒を加え、シリコーンレジンを形成し、被覆することを特徴とする(1)及至(4)のいずれか一項に記載の農薬粒状組成物。
(6)バインダーとして常温液体で不揮発性の有機化合物を含有する(1)及至(5)のいずれか一項に記載の農薬粒状組成物。
(7)農薬活性成分の蒸気圧が20℃で0.5mPa以上である(2)及至(6)のいずれか一項に記載の農薬粒状組成物。
(8)農薬活性成分の水溶解度が25℃で0.1%以上である(2)及至(7)のいずれか一項に記載の農薬粒状組成物。
(9)農薬活性成分がダイアジノンである(7)に記載の農薬粒状組成物。
(10)農薬活性成分がチオシクラムである(8)に記載の農薬粒状組成物。
(11)複数回被覆することを特徴とする(1)〜(9)のいずれかに記載の農薬粒状組物」に、関する。
本発明の農薬粒状組成物は農薬活性成分の放出を所望の速度に制御できる農薬粒剤を容易に得られる。初期の農薬活性成分の放出を抑えることにより、長期間にわたって農薬活性成分を放出することを可能にし、高い防除効果を示し、農作業の省力化、農薬使用量及び使用回数の削減に貢献できる。
以下に本発明の徐放性農薬粒剤組成物についてより詳しく説明する。
本発明の農薬粒状組成物は、農薬活性成分の環境への放出を制御することにより、所望の期間に亘り効力を発現させることができ、当該農薬粒状組成物の散布初期における農薬活性成分の放出量を抑制し、初期放出過多による薬害等の悪影響を避けることができる。さらには、農薬活性成分を被覆した粒状担体にシリコーンオリゴマーもしくはシランカップリング剤を吸油性粉末に吸着させながら被覆して得られる徐放性農薬粒状組成であり、水もしくは土壌中において放出性の高い農薬活性成分の放出を制御し、散布回数を減らし省力化を可能にする農薬粒剤とすることができる。
本発明の農薬粒状組成物に用いられる農薬活性成分は、農薬殺虫活性成分、農薬殺菌活性成分、除草活性成分のいずれでもよく、またこれらに限定されるものではない。用いられる農薬活性成分は基本的には制限はないが、具体的には例えば次のようなものが挙げられる。
農薬殺虫活性成分としては、例えば、フェニトロチオン、フェンチオン、ダイアジノン、アセフェート、シアノホス、ジメトエート、フェントエート、マラチオン、トリクロルホン、モノクロトホス、エチオン等の有機リン系化合物、BPMC、ベンフラカルブ、カルボスルファン、メソミル、アルジカルブ、オキサミル、フェノチオカルブ等のカーバメート系化合物、エトフェンプロックス、フェンバレレート、エスフェンバレレート、フェンプロパトリン、シペルメトリン、ペルメトリン、シハロトリン、デルタメトリン、シクロプロトリン、フルバリネート、ビフェンスリン、ハルフェンプロックス、トラロメトリン、シラフルオフェン、d―フェノトリン、シフェノトリン、d―レスメトリン、アクリナスリン、シフルトリン、テフルトリン、トランスフルスリン、テトラメトリン、アレトリン、プラレトリン、エンペントリン、イミプロスリン、d―フラメトリン等のピレスロイド系化合物、ブプロフェジン等のチアジアジン誘導体、ニトロイミダゾリジン誘導体、カルタップ、チオシクラム、ベンスルタップ等のネライストキシン誘導体、N―シアノ―N―メチル―N′―6―クロロ―3―ピリジルメチル)アセトアミジン等のN―シアノアミジン誘導体、エンドスルファン、ジコホル等の塩素化炭化水素化合物、昆虫成長制御化合物であるクロルフルアズロン、テフルベンズロン、フルフェノクスロン等のベンゾイルフェニルウレア系化合物、アミトラズ、クロルジメホルム等のホルムアミジン誘導体、ジアフェンチウロン等のチオ尿素誘導体、N―フェニルピラゾール系化合物、イミダクロプリド、クロチアニジン、ニテンピラム、チアメトキサム等のネオニコチノイド系化合物、テブフェノジド、クロマフェノジド等のジアシルヒドラジン系化合物、メタアルデヒド、メトキサジアゾン、ブロモプロピレート、テトラジホン、キノメチオネート、プロパルギット、フェンブタティンオキシド、ヘキシチアゾクス、クロフェンテジン、ピリダベン、フェンピロキシメート、デブフェンピラド、ポリナクチンコンプレックス、ピリミジフェン、ミルベメクチン、アバメクチン、イベルメクチン、アザジラクチン、スピノサド、スピネトラム、フルベンジアミド、クロラントラニリプロール等を挙げることができる。
農薬殺菌活性成分としては、例えば、ベノミル、カルベンダジム、チアベンダゾール、チオファネートメチル等のベンズイミダゾール系化合物;ジエトフェンカルブ等のフェニルカーバメート系化合物;プロシミドン、イプロジオン、ビンクロゾリン等のジカルボキシイミド系化合物;ジニコナゾール、プロペナゾール、エポキシコナゾール、テブコナゾール、ジフェノコナゾール、シプロコナゾール、フルシラゾール、トリアジメフォン等のアゾール系化合物;メタラキシル等のアシルアラニン系化合物;フラメトピル、メプロニル、フルトラニル、イソチアニル、ボスカリド等のカルボキシアミド系化合物;トルクロホスメチル、フォセチルアルミニウム、ピラゾホス等の有機リン系化合物;ピリメサニル、メパニピリム、シプロジニル等のアニリノピリミジン系化合物;フルジオキソニル、フェンピクロニル等のシアノピロール系化合物;ブラストサイジンS、カスガマイシン、ポリオキシン、バリダマイシン等の抗生物質;アゾキシストロビン、クレソキシムメチル、SSF−126等のメトキシアクリレート系化合物;クロロタロニル、マンゼブ、キャプタン、フォルペット、トリシクラゾール、ピロキロン、プロベナゾール、フサライド、シモキサニル、ジメトモルフ、CGA245704、ファモキサドン、オキソリニック酸、フルアジナム、フェリムゾン、ジクロシメット、クロベンチアゾン、イソバレジオン、テトラクロオロイソフタロニトリル、チオフタルイミドオキシビスフェノキシアルシン、3−アイオド−2−プロピルブチルカーバメイト、パラヒドロキシ安息香酸エステル、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム等を挙げることができる。
除草化合物としては、例えば、アトラジン、メトリブジン等のトリアジン系化合物;フルオメツロン、イソプロチュロン等のウレア系化合物;ブロモキシニル、アイオキシニル等のヒドロキシベンゾニトリル系化合物;ペンディメサリン、トリフルラリン等の2、6―ジニトロアニリン系化合物;2,4−D、ジカンバ、フルロキシピル、メコプロップ等のアリロキシアルカノイック酸系化合物;ベンスルフロンメチル、メツルフロンメチル、ニコスルフロン、プリミスルフロンメチル、シクロスルファムロン等のスルホニルウレア系化合物;イマザピル、イマザキン、イマゼタピル等のイミダゾリノン系化合物;メソトリオン、テフリルトリオン等のトリケトン系化合物;フェノキサスルホン等のスルホニルイソキサゾリン系化合物;ビスピリバックNa塩、ビスチオバックNa塩、アシフルオルフェンNa塩、サルフェントラゾン、パラコート、フルメツラム、トリフルスルフロンメチル、フェノキサプロップ−p−エチル、ジフルフェニカン、ノルフルラゾン、イソキサフルトール、グルフォシネートアンムニウム塩、グリフォセート、ベンタゾン、メフェナセット、プロパニル、フルチアミド、フルミクロラックペンチル、フルミオキサジン等を挙げることができる。
本発明に於いてはこれらの中でも、蒸気圧が高くガス化しやすいものや、水溶解度が高さから散布後速やかに外部環境下に放出される農薬活性成分が好適である。蒸気圧が高い農薬活性成分の具体例としてはダイアジノン等の有機リン系活性成分やテフルトリン等のピレスロイド系活性成分が一例として挙げられ、20℃における蒸気圧が0.5mPa以上が好ましい。これらの農薬活性成分はその蒸気圧の高さから農薬粒状組成物の外に放出されやすく、技術的な工夫を施さなければ施用から程なく製剤から放出され、圃場環境の影響を受けて流亡及び分解されて速やかに効力を発現する濃度以下まで低下する。また、水溶解度が高い農薬活性成分の具体例としては25℃における水溶解度が30ppm以上の農薬活性成分が好ましく、一例としてチオシクラムやカルタップなどのネライストキシン系活性成分が挙げられる。これらの農薬活性成分は水溶解度が高く、農薬粒状組成物中から外部に溶出しやすく、溶出を抑制する工夫がなければ速やかに溶出し、外部環境の影響を受けて分解するなどして効力を発現する濃度以下まで低下する。
当然ながら本発明に於いて使用できる農薬活性成分はこれらに限らない。また、農薬活性成分を単独又は2種以上を併用してもよい。
本発明の農薬粒状組成物中の農薬活性成分の含有割合は、通常0.1〜20重量%、好ましくは1〜15質量%である。粒剤中の含有量が0.1重量%に満たない場合は農薬活性成分の十分な効力発現が期待できず、20重量%を超えると粒状担体表面への被覆が困難となる、被覆した農薬活性成分が剥離して製剤中で局在化を生じる、農薬活性成分の外部環境への放出が十分に制御し得ない等の問題が生じる。
本発明に使われる粒状担体は、例えば珪砂、クレー、タルク、白土、珪藻土、炭酸カルシウム、ゼオライト、二酸化チタン、ロウ石、非晶質二酸化珪素、軽石、バーミキュライト、ベントナイト、セリサイト、アタパルジャイト、パーライト、セピオライト、海砂、河川砂、各種果実種子の解砕物、クルミや落花生の殻の破砕物、パルプ粒などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。本発明に用いられる農薬活性成分の性質に応じて物理化学的性質を勘案して使用する粒状担体を選定する。
本発明に使われる粒状担体の粒度は、最終製剤に要求される粒度の範囲の中で適切なものを適時選択すればよく、300〜2000μmの範囲のものが選択され、好ましくは500〜1500μmである。また、粒状担体は物理的な強度の観点から、実質的に均質で一体であるものが好ましい。
本発明の農薬粒状組成物は粒状担体に有効成分を被覆し、更にその外層にシリコーンレジンを被覆することで得られる。シリコーンレジンそのものは常温で著しく流動性に乏しい液体、または固体であるため、被覆する場合はシリコーンレジンより分子量が小さく、流動性が良好なシリコーンオリゴマーやシリコーンレジンの単位構造であるシランカップリング剤を有効成分が被覆された粒核表面に被覆し、更に粒核表面上で反応させることによってシリコーンレジンを生成し、当該レジンによって被覆された本発明の徐放性農薬粒状組成を得る。
本発明の農薬粒状組成物中におけるシリコーンレジンの含有割合は、通常0.1〜50重量%、好ましくは3〜40重量%である。本農薬粒状組成物中の含有割合が0.1重量%を下回ると本農薬粒状組成物中の農薬活性成分の放出を制御できず、50重量%を上回ると、シリコーンレジンの量が過多となって被覆が剥離し、所望の徐放能を示さないといった問題を生じる。通常の範囲内でシリコーンレジンの添加量を種々変更することによって所望の放出速度の農薬粒状組成物を得ることができる。
本発明の農薬粒状組成物中に含まれるシリコーンレジンの原料となるシリコーンオリゴマーとしてはKR−213、X−40−2327、KR−500、KR−517、X−41−1818(全て信越化学工業製、商品名)などが挙げられる。また、シランカップリング剤としてはKBE−403、KBE−502、KBM−603、KBM−802(全て信越化学工業製、商品名)などが挙げられ、常温で硬化し、所望の放出速度が得られるものであれば上記の例に限定されない。また、常温での硬化を促進するために触媒を添加することも可能である。触媒としてはX−40−2309(信越化学工業製、リン酸系)、D−25(信越化学工業製、チタン系)、DX−175(信越化学工業製、チタン系)、DX−9740(信越化学工業製、アルミ系)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらのシリコーンオリゴマー、シランカップリング剤の中から1種、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明の農薬粒状組成物は粒状担体の表面に液体の農薬活性成分やシリコーンレジンを被覆させるため、種々の吸油性粉体を使用することができる。吸油性粉体としては非晶質二酸化珪素、パーライト、珪藻土、ゼオライト、クレー、白土、バーミキュライト、セピオライト、デキストリン、結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース、木粉、パルプ粉などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これら吸油性粉体の1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明の農薬粒状組成物では常温で固体の農薬活性成分を粒状担体に被覆するためにバインダーとして常温液体で不揮発性の有機化合物を含有する。常温液体で不揮発性の有機化合物としては流動パラフィン、シリコーンオイル、ポリエチレングリコール、動植物油などが挙げられるが、これに限定されるものではない。これらバインダーの中でも農薬活性成分と反応性を有さないことから流動パラフィンやシリコーンオイルがバインダーとして好ましく、また、融点が40℃以上の農薬活性成分を粒状担体に被覆する場合に、好ましい。
本発明に用いられる吸油性粉体の含有割合は被覆する常温液体の農薬活性成分やシリコーンレジンの重量、吸油性粉体の比重や吸油能によって適宜調整が必要となるが、通常0.5〜30重量%であり、好ましくは1〜15重量%である。吸油性粉体が0.5重量%を下回ると常温液体の農薬活性成分とシリコーンレジンの総量に対して不足するため、粒同士が接着し、団粒が生じる。また、30重量%を上回ると吸油性粉体が過多となり、吸油性粉体が余るだけでなく、シリコーンレジン層に多量の吸油性粉体が含まれることで当該製剤内から農薬活性成分が外部へ放出されやすくなり、かえって放出が制御できなくなる。
本発明の農薬粒状組成物は、粒状担体表面に農薬活性成分層やシリコーンレジン層を形成する際、必要に応じて界面活性剤を添加しても良い。界面活性剤としては例えば、リグニンスルホン酸塩、(アルキル)ナフタレンスルホン酸塩、及びその縮合物、フェノールスルホン酸塩及びその縮合物、スチレンスルホン酸塩の縮合物、マレイン酸とスチレンスルホン酸との縮合物の塩、アクリル酸やマレイン酸などのカルボン酸縮合物の塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、ラウリルサルフェートの塩、ポリオキシエチレン(以下、POE)アルキルエーテルサルフェートの塩、POEアルキルアリールエーテルサルフェートの塩、POEアルキルエーテルリン酸エステル及びその塩、POEアルキルアリールエーテルリン酸エステル及びその塩などのアニオン性界面活性剤や、トリポリリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム等のリン酸塩、POEアルキルエーテル、POEアルキルアリールエーテル、POEラノリンアルコール、POEアルキルフェノールホルマリン縮合物、POEソルビタン脂肪酸エステル、POEグリセリルモノ脂肪酸エステル、ポリオキシプロピレン(POP)グリコールモノ脂肪酸エステル、POEソルビトール脂肪酸エステル、POE脂肪酸エステル、POEヒマシ油誘導体、高級脂肪酸グリセリンエステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、POE−POPブロックポリマー、POE脂肪酸アミド、アルキロールアミド、POEアルキルアミン等のノニオン性界面活性剤が挙げられるが、これらに限定されるものではない。本発明の農薬粒状組成物に置いて、界面活性剤は通常0〜30重量%、好ましくは0〜15重量%であり、1種または2種以上の組み合わせで使用される。
本発明の被覆農薬粒状組成物は上記各成分に加えて必要に応じて被覆層に安定剤、防腐剤、着色剤の添加物を適宜含有することができる。安定剤は農薬活性成分の分解を抑えられる知見のあるものであればよく、通常0〜10重量%、好ましくは0〜5重量%である。
本発明の農薬粒状組成物の製造において、粒状担体の表面に被覆する工程に用いられる機械としては、特に装置に制限はなく、慣用の装置を用いることができる。例えば、回転パン、回転ドラム、コンクリートミキサー、ナウターミキサー、リボンミキサー、ダブルコーンミキサー等が挙げられるが、この限りではない。
被覆工程は通常一般に行われている被覆法を用いて行うことができる。例えば、液体の農薬活性成分の場合、粒状担体に液体の農薬活性成分を加えて混合して均一に行き渡らせた後、ここに吸油性粉体を加えて更に混合し、粒状担体表面に農薬活性成分の層を形成する。また、固体の農薬活性成分の場合、粒状担体にバインダーを加えて混合して均一に行き渡らせた後、ここに固体の農薬活性成分を加えて更に混合し、粒状担体表面に農薬活性成分の層を形成する。こうして粒状担体表面に形成した農薬活性成分の層の上にシリコーンレジンを加えて混合し、均一に行き渡らせた後、吸油性粉体を加えて更に混合してシリコーンレジン層を形成する。一般的に一度に多量のシリコーンオリゴマー及び/またはシランカップリング剤を添加すると団粒を生じるため、被覆回数を複数回に分けることができる。
被覆完了後、最外層に被覆されたシリコーンオリゴマー及び/またはシランカップリング剤が空気中の水分と反応することによってシリコーンレジン層が形成される。必要であれば被覆完了後に人為的に水分を添加することができる。
本発明の農薬粒状組成物は一般的に農薬粒剤を施用する方法によって使用することができる。例えば、直接手で散布する方法や、パイプ散粒機、空中散粒機、背負い式散粒機、動力散粒機、トラクター搭載型散粒機、育苗箱用散粒機、多口ホース散粒機、散粒機を搭載した田植機等を用いた施用にも活用できる。また、本発明の農薬粒状組成物を水田や畑地において使用する場合には、その施用量は10アール当たり0.1〜40kg、好ましくは0.5〜20kgである。
本発明の農薬粒状組成物は例えば、水田、乾田、育苗箱、畑地、果樹園、桑畑、温室、露地等の農耕地、森林、芝生、ゴルフ場、街路樹、道路、路肩、湿地などの非農耕地、池、貯水池、川、水路、下水道などの水系等において、含有する農薬活性成分や使用目的に応じて使用することができる。また、本発明の農薬粒状組成物の使用にあたっては、本発明の農薬粒状組成物を単独で施用することもできるし、適宜その用途により他の製剤、例えば他の農薬粒剤、粒状肥料、粒状培土、粒状植物栄養剤、粒状植物調整制御剤、粒状ホルモン剤、種子等の粒状農薬資材等と混合して用いることができる。
本発明の農薬粒状組成物は農薬施用におけるあらゆる場面に適用可能であるが、本発明の農薬粒状組成物は農薬活性成分の放出制御性能を活用できる場面での使用が特に好適である。特に通常農薬が施用される時期よりも早期の施用、例えば育苗箱施用(作物が発芽し生育している育苗箱に農薬粒剤を散粒する方法を指す)、田植時施用、育苗期施用、播種期施用、発芽期施用、移植期施用などは、本発明の農薬粒状組成物は農薬活性成分が放出制御されたものであるという特性を活用できる場面としては好適である。
以下実施例により、本発明を更に詳細に説明する。
実施例1
容器に粒状炭酸カルシウム(日東粉化工業製、商品名:寒水1630)82.0重量部、ダイアジノン5.4重量部を投入して混合した。ここにカープレックス#80(DSL.ジャパン製、非晶質二酸化珪素粉末)3.0重量部を加えてよく混合することで粒核表面に農薬活性成分の層を形成した。ここにシリコーンオリゴマー(信越化学工業製、商品名:KR−213)5.0重量部と硬化触媒(信越化学工業製、商品名:D−20)0.1重量部を予めよく混合したもの1.02重量部を投入し、混合後、ニップシールNA(東ソー・シリカ製、非晶質二酸化珪素粉末)0.9重量部を投入して混合し、粒核表面にシリコーンレジンの層を作った。このシリコーンレジンを被覆する段階を5回繰り返し、ダイアジノンを5.2重量%含む農薬粒状組成物を得た。
実施例2
容器に粒状炭酸カルシウム(日東粉化工業製、商品名:寒水1630)72.5重量部、ダイアジノン5.4重量部を投入して混合した。ここにカープレックス#80(DSL.ジャパン製、非晶質二酸化珪素粉末)3.0重量部を加えてよく混合することで粒核表面に農薬活性成分の層を形成した。ここにシリコーンオリゴマー(信越化学工業製、商品名:KR−213)10.0重量部と硬化触媒(信越化学工業製、商品名:D−20)0.2重量部を予めよく混合したもの1.02重量部を投入し、混合後、ニップシールNA(東ソー・シリカ製、非晶質二酸化珪素粉末)0.9重量部を投入して混合し、粒核表面にシリコーンレジンの層を作った。このシリコーンレジンを被覆する段階を10回繰り返し、ダイアジノンを5.2重量%含む農薬粒状組成物を得た。
実施例3
容器に粒状炭酸カルシウム(日東粉化工業製、商品名:寒水1630)62.5重量部、ダイアジノン5.4重量部を投入して混合した。ここにカープレックス#80(DSL.ジャパン製、非晶質二酸化珪素粉末)3.0重量部を加えてよく混合することで粒核表面に農薬活性成分の層を形成した。ここにシリコーンオリゴマー(信越化学工業製、商品名:KR−213)15.0重量部と硬化触媒(信越化学工業製、商品名:D−20)0.3重量部を予めよく混合したもの1.02重量部を投入し、混合後、ニップシールNA(東ソー・シリカ製、非晶質二酸化珪素粉末)0.9重量部を投入して混合し、粒核表面にシリコーンレジンの層を作った。このシリコーンレジンを被覆する段階を15回繰り返し、ダイアジノンを5.2%含む農薬粒状組成物を得た。
実施例4
容器に粒状炭酸カルシウム(日東粉化工業製、商品名:寒水1630)53.5重量部、ダイアジノン5.4重量部を投入して混合した。ここにカープレックス#80(DSL.ジャパン製、非晶質二酸化珪素粉末)3.0重量部を加えてよく混合することで粒核表面に農薬活性成分の層を形成した。ここにシリコーンオリゴマー(信越化学工業製、商品名:KR−213)20.0重量部と硬化触媒(信越化学工業製、商品名:D−20)0.4重量部を予めよく混合したもの1.02重量部を投入し、混合後、ニップシールNA(東ソー・シリカ製、非晶質二酸化珪素粉末)0.9重量部を投入して混合し、粒核表面にシリコーンレジンの層を作った。このシリコーンレジンを被覆する段階を20回繰り返し、ダイアジノンを5.2重量%含む農薬粒状組成物を得た。
実施例5
容器に粒状炭酸カルシウム(日東粉化工業製、商品名:寒水1630)82.1重量部、ダイアジノン5.4重量部を投入して混合した。ここにカープレックス#80(DSL.ジャパン製、非晶質二酸化珪素粉末)3.0重量部を加えてよく混合することで粒核表面に農薬活性成分の層を形成した。ここにシリコーンオリゴマー(信越化学工業製、商品名:X−40−2327)1.0重量部を加えて混合後、ニップシールNA(東ソー・シリカ製、非晶質二酸化珪素粉末)0.9重量部を投入して混合し、粒核表面にシリコーンレジンの層を作った。このシリコーンレジンを被覆する段階を5回繰り返し、ダイアジノンを5.2重量%含む農薬粒状組成物を得た。
実施例6
容器に粒状炭酸カルシウム(日東粉化工業製、商品名:寒水1630)72.6重量部、ダイアジノン5.4重量部を投入して混合した。ここにカープレックス#80(DSL.ジャパン製、非晶質二酸化珪素粉末)3.0重量部を加えてよく混合することで粒核表面に農薬活性成分の層を形成した。ここにシリコーンオリゴマー(信越化学工業製、商品名:X−40−2327)1.0重量部を加えて混合後、ニップシールNA(東ソー・シリカ製、非晶質二酸化珪素粉末)0.9重量部を投入して混合し、粒核表面にシリコーンレジンの層を作った。このシリコーンレジンを被覆する段階を10回繰り返し、ダイアジノンを5.2%含む農薬粒状組成物を得た。
実施例7
容器に粒状炭酸カルシウム(日東粉化工業製、商品名:寒水1630)82.1重量部、ダイアジノン5.4重量部を投入して混合した。ここにカープレックス#80(DSL.ジャパン製、非晶質二酸化珪素粉末)3.0重量部を加えてよく混合することで粒核表面に農薬活性成分の層を形成した。ここにシリコーンオリゴマー(信越化学工業製、商品名:KR−500)5.0重量部と硬化触媒(信越化学工業製、商品名:D−20)0.1重量部を予めよく混合したもの1.02重量部を加えて、ニップシールNA(東ソー・シリカ製、非晶質二酸化珪素粉末)0.9重量部を投入して混合し、粒核表面にシリコーンレジンの層を作った。このシリコーンレジンを被覆する段階を5回繰り返し、ダイアジノンを5.2重量%含む農薬粒状組成物を得た。
実施例8
容器に粒状炭酸カルシウム(日東粉化工業製、商品名:寒水1630)82.1重量部、ダイアジノン5.4重量部を投入して混合した。ここにカープレックス#80(DSL.ジャパン製、非晶質二酸化珪素粉末)3.0重量部を加えてよく混合することで粒核表面に農薬活性成分の層を形成した。ここにシリコーンオリゴマー(信越化学工業製、商品名:KR−517)5.0重量部と硬化触媒(信越化学工業製、商品名:D−20)0.1重量部を予めよく混合したもの1.02重量部を加えて、ニップシールNA(東ソー・シリカ製、非晶質二酸化珪素粉末)0.9重量部を投入して混合し、粒核表面にシリコーンレジンの層を作った。このシリコーンレジンを被覆する段階を5回繰り返し、ダイアジノンを5.2重量%含む農薬粒状組成物を得た。
実施例9
容器に粒状炭酸カルシウム(日東粉化工業製、商品名:寒水1630)82.1重量部、ダイアジノン5.4重量部を投入して混合した。ここにカープレックス#80(DSL.ジャパン製、非晶質二酸化珪素粉末)3.0重量部を加えてよく混合することで粒核表面に農薬活性成分の層を形成した。ここにシリコーンオリゴマー(信越化学工業製、商品名:X−41−1818)5.0重量部と硬化触媒(信越化学工業製、商品名:D−20)0.1重量部を予めよく混合したもの1.02重量部を加えて、ニップシールNA(東ソー・シリカ製、非晶質二酸化珪素粉末)0.9重量部を投入して混合し、粒核表面にシリコーンレジンの層を作った。このシリコーンレジンを被覆する段階を5回繰り返し、ダイアジノンを5.2重量%含む農薬粒状組成物を得た。
比較例1
容器に粒状炭酸カルシウム(日東粉化工業製、商品名:冠水1630)91.2重量部、ダイアジノン5.3重量部を投入して混合した。ここにカープレックス#80(DSL.ジャパン製、非晶質二酸化珪素粉末)1.6重量部、ニップシールNA(東ソー・シリカ製、非晶質二酸化珪素粉末)1.6重量部を加えて混合し、ダイアジノンを5.1%含む農薬粒状組成物を得た。
試験例1
(試験方法)
目開き2mmの篩を通過させた圃場土を水分量35%に調整し、900mL広口ガラス瓶に500gに投入する。ここへ実施例及び比較例の製剤を土中の有効成分濃度が1000ppmになるよう添加し、よく混合して試験土壌を調製した。混合物はガラス瓶の蓋を開けた状態で25℃、湿度98%に設定した恒温層にて保存し、1週間ごとにガラス瓶から100gの試験土壌をサンプリングし、有効成分濃度を測定した。サンプリング後は水分を35%に調整し、4週間後まで試験を継続した。
試験例1の結果を表1にまとめた。
<土壌中のダイアジノン残存率(%)>
Figure 2019014692
表1に示したように本発明の徐放性粒状農薬組成物は被覆するシリコーンレジンンを種々調整することによって、さまざまな放出特性を持つ製剤に仕上げることが可能であり、製剤から放出される農薬活性成分の量を抑制するとともに、持続的な放出制御を達成し、所望の放出速度の製剤を得ることができた。一方、シリコーンレジン層を設けていない比較例では製剤からの農薬活性成分の放出を抑制できず、試験開始直後よりダイアジノンが製剤化内から速やかに放出かつ、土壌中から消失しているため、持続的な効力は望めないもとと推察される。

Claims (11)

  1. 粒状担体にシリコーンレジンを被覆することを特徴とする農薬粒状組成物。
  2. 農薬活性成分、シリコーンレジン、吸油性粉体及び前記粒状担体を含むことを特徴とする請求項1に記載の農薬粒状組成物。
  3. 前記吸油性粉体が非晶質二酸化ケイ素、パーライト、珪藻土、ゼオライト、クレー、白土、バーミキュライト、セピオライト、デキストリン、結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース、木粉、パルプ粉の中から選ばれる1種以上を含むことを特徴とする請求項2に記載の農薬粒状組成物。
  4. 前記粒状担体の粒径が300及至2000μmであることを特徴とする請求項1及至3のいずれか一項に記載の農薬粒状組成物。
  5. 前記粒状担体に農薬活性成分を混合後、前記吸油性粉体を加え混合し、農薬活性成分層を形成し、該農薬活性成分層にシリコーンオリゴマー及び/またはシランカップリング剤及び硬化触媒を加え、シリコーンレジンを形成し、被覆することを特徴とする請求項1及至4のいずれか一項に記載の農薬粒状組成物。
  6. バインダーとして常温液体で不揮発性の有機化合物を含有する請求項1及至5のいずれか一項に記載の農薬粒状組成物。
  7. 農薬活性成分の蒸気圧が20℃で0.5mPa以上である請求項2及至6のいずれか一項に記載の農薬粒状組成物。
  8. 農薬活性成分の水溶解度が25℃で0.1%以上である請求項2及至7のいずれか一項に記載の農薬粒状組成物。
  9. 農薬活性成分がダイアジノンである請求項7に記載の農薬粒状組成物。
  10. 農薬活性成分がチオシクラムである請求項8に記載の農薬粒状組成物。
  11. 複数回被覆することを特徴とする請求項1及至9のいずれかに記載の農薬粒状組成物
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