JP3621127B2 - 改良農薬製剤 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は改良農薬製剤に関する。
詳しくは、水中への活性成分の溶出速度を抑えることのできる、すなわち溶出抑制能を有する農薬原末組成物、及び該農薬原末組成物から成る農薬粒剤に関する。
【0002】
【従来の技術と課題】
農薬原体(末)を粒剤に製剤して散布する方法は、作業効率性、環境中へ放出抑制、薬害発生の低減等、農薬散布法の中でも、特に、水田用農薬製剤の散布に際しては、好適なものである。
然し、水易溶性農薬では、通常の公知の製剤化では、溶出量を調節することができず、本来の農薬の生理活性作用を充分に、的確に現わすことができない。
【0003】
溶出制御に関する技術については、すでにいくつかの技術、例えばカルボキシメチルセルロース、デキストリン等を、粒剤中に加えた技術(特公昭34−8849号)、樹脂、ロウ状物質を加えたり、また被覆する技術(特公昭47−23199号、特開昭60−202801号)、粒剤中に活性炭及び植物性油を配合する技術(特開昭56−169601号)、またパラフィンワックスと鉱物質担体、活性炭、粘土鉱物等を利用する技術(特開昭63−35504号、同63−45201号、特開平2−288803号及び同5−262606号)等が知られている。
これらの公知技術によっても、水易溶性農薬に対しては、活性成分の溶出量を的確かつ充分に調節することはできない。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、斯る課題解決に対し、この度、下記で示される組成物を得ることに成功し、該組成物を用いて成る農薬粒剤を得ることに成功した。すなわち、水易溶性農薬原体の少なくとも一種と、水に不溶性又は難溶性で、50℃以下の温度で軟化又は液化しない物質と、更に水に不溶性の鉱油、天然油脂又はシリコンオイルとを混合し、該混合物を溶融又は打錠した後、0.1〜0.5mmの粒径に整粒することから成る溶出抑制能を有する農薬原末組成物、並びに該農薬原末組成物を用い、押し出し造粒法により製造することから成る溶出抑制型農薬粒剤。
【0005】
上記の本発明の農薬原末組成物は、水易溶性農薬原体の水中への溶出を抑える働きを有しており、従ってこれを用いることにより押し出し造粒法によって製造される農薬粒剤を水田の田面水に散粒した場合、上記溶出抑制能を保持した粒剤型態のため、他の粒剤型態では、達成できない卓越した長い残効性を有した作用効果と、薬害発生の防止効果の双方を得ることができる。
【0006】
本発明に於ける水易溶性農薬原体の例としては、
エチル5−〔3−(4,6−ジメトキシピリミジン−2−イル)ウレイドスルホニル〕−1−メチルピラゾール−4−カルボキシレート、
メチルα−(4,6−ジメトキシピリミジン−2−イルカルバモイルスルファモイル)−O−トルアート、
3−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−1−〔2−(2−メトキシエトキシ)−フェニルスルホニル〕ウレア、
N−(2−クロロイミダゾール〔1,2−a〕ピリジン−3−イル−スルホニル)−N′−(4,6−ジメトキシ−2−ピリミジニル)ウレア、
1−(6−クロロ−3−ピリジルメチル)−N−ニトロ−イミダゾリジン−2−イリデンアミン
等を例示できる。
【0007】
本発明に於いて、水に不溶性又は難溶性で、50℃以下の温度で軟化又は液化しない物質の例としては、
パラフィンワックス、天然ワックス、ポリエチレン、又はポリプロピレンを例示することができ、そして天然ワックスの例としては、カルナバワックス、木ロウ、ミツロウ等を例示できる。
また、水に不溶性の鉱油の例としては、スピンドル油を、例示できる。
天然油脂の例としては、動植物に起因する広範な油脂類を包含し、大豆油、亜麻仁油、綿実油、米ぬか油、パーマ油、オリーブ油、ヤシ油、魚油等々を例示できる。
シリコンオイルの例としては、ジアルキルジクロロシラン重合体であり、その好例としては、ジメチルジクロロシラン重合体を示す。そして
【0008】
本発明の溶出抑制能を有する農薬原末組成物は、
i)水易溶性農薬原体の少なくとも一種と、
ii)水に不溶性又は難溶性で、50℃以下の温度で軟化又は液化しない物質と、iii)更に、水に不溶性の鉱油、天然油脂又はシリコンオイルとを、
混合し、該混合物を溶融又は打錠した後、0.1〜0.5mmの粒径に整粒することから成る。
そして該農薬原末組成物を押し出し造粒機に供することにより、溶出抑制能を保持した本発明の農薬粒剤を得ることができる。斯る農薬粒剤を製造するに際しては、固体希釈剤、担体等の農薬補助剤を含有させることができ、斯る固体希釈剤としては、土壌天然鉱物(例えば、カオリン、クレー、タルク、チョーク、石英、アタパルガイド、モンモリロナイト又は珪藻土等)、粉砕合成鉱物(例えば、高分散ケイ酸、アルミナ、ケイ酸塩等)を挙げることができる。
粒剤のための固体担体としては、粉砕且つ分別された岩石(例えば、方解石、大理石、軽石、海泡石、白雲石等)、無機及び有機物粉の合成粒、そして有機物質(例えば、おがくず、ココやしの実のから、とうもろこしの穂軸そしてタバコの茎等)の細粒体を挙げることができる。
【0009】
上記、本発明の農薬原末組成物及び農薬粒剤の対象となる防除活性化合物は、除草剤、殺菌剤、殺虫剤、植物成長調整剤等、広く農薬の概念に含まれるすべての化合物であり、本発明の農薬粒剤を実際に水田の田面水に散粒することにより、前記の如く、活性化合物の溶出を抑制し、長い残効性を示すと同時に、薬害発生を抑えることができる。
更に、本発明の農薬粒剤は、他の農薬活性化合物を含有することもできる。そして、他の農薬活性化合物は、特に限定されるものでなく、斯る活性化合物の種類によって本発明の溶出抑制能は影響をうけない。
【0010】
他の農薬活性化合物を例えば、例示すると次の通りである。
2−ベンゾチアゾール−2−イルオキシ−N−メチルアセトアニリド、
1−(1−メチル−1−フェニルエチル)−p−トリルウレア、
S−p−クロロベンジルジエチルチオカーバメート、
S−ベンジル1,2−ジメチルプロピル(エチル)チオカーバメート、
S−1−メチル−1−フェニルエチルピペリジン−1−カルボチオエート、
O−3−tert−ブチルフェニル6−メトキシ−2−ピリジル(メチル)チオカーバメート、
2−クロロ−2′,6′−ジエチル−N−(2−プロポキシエチル)−アセトアニリド、
(RS)−2−ブロモ−N−(α,α−ジメチルベンジル)−3,3−ジメチルブチルアミド、
4−(2,4−ジクロロベンゾイル)−1,3−ジメチルピラゾール−5−イルp−トルエンスルホネート、
2−〔4−(2,4−ジクロロベンゾイル)−1,3−ジメチルピラゾール−5−イルオキシ〕アセトフェノン、
2−〔4−(2,4−ジクロロ−m−トルオイル)−1,3−ジメチルピラゾール−5−イルオキシ〕−4−メチルアセトフェノン、
メチル 2−〔(4,6−ジメトキシ−2−ピリミジニル)オキシ〕−6−〔1−(メトキシイミノ)エチル〕−ベンゾエート。
【0011】
次に実施例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれのみによって限定されるものではない。
【0012】
【実施例】
農薬原体
化合物A:メチル α−(4,6−ジメトキシピリミジン−2−イルカルバモイルスルファモイル)−O−トルアート
化合物B:1−(6−クロロ−3−ピリジルメチル)−N−ニトロイミダゾリジン−2−イリデンアミン
【0013】
実施例1
原末処方、製法
化合物A原体 5.00%
ジメチルポリシロキサン 0.20%
カルナウバワックス 残
以上を十分に混合し打錠装置にセットされた金型に入れ300kg/cm2 の圧力で打錠し、得られた成形物をピンミルで破砕した。100〜300μmの部分を集めて原末とした。
粒剤処方、製法(化合物A 含量0.3%)
化合物A原末 6.00%
ベントナイト粉末 30.00%
リグニンスルホン酸ナトリウム 0.50%
タルク粉末 残
以上の粉末を十分に混合した後、水を加えて混練し、0.8mmのスクリーンを使って押し出した。流動床乾燥機で乾燥して粒剤を得た。
【0014】
実施例2
原末処方、製法
化合物B原体 20.00%
ジメチルポリシロキサン 0.50%
パラフィンワックス 残
以上を十分に混合し打錠装置にセットされた金型に入れ300kg/cm2 の圧力で打錠し、得られた成形物をピンミルで破砕した。100〜300μmの部分を集めて原末とした。
粒剤処方、製法(化合物B 含量1.0%)
化合物B原末 5.00%
ベントナイト粉末 30.00%
リグニンスルホン酸ナトリウム 0.50%
タルク粉末 残
以上の粉末を十分に混合した後、水を加えて混練し、0.8mmのスクリーンを使って押し出した。流動床乾燥機で乾燥して粒剤を得た。
【0015】
比較例1−1
粒剤処方、製法(化合物A 含量0.3%)
化合物A原体 0.30%
ベントナイト粉末 30.00%
リグニンスルホン酸ナトリウム 0.50%
タルク粉末 残
以上の粉末を十分に混合した後、水を加えて混練し、0.8mmのスクリーンを使って押し出した。流動床乾燥機で乾燥して粒剤を得た。
【0016】
比較例1−2
原末処方、製法
化合物A原体 5.00%
カルナウバワックス 残
以上を十分に混合し打錠装置にセットされた金型に入れ300kg/cm2 の圧力で打錠し、得られた成形物をピンミルで破砕した。100〜300μmの部分を集めて原末とした。
粒剤処方、製法(化合物A 含量0.3%)
化合物A原末 6.00%
ベントナイト粉末 30.00%
リグニンスルホン酸ナトリウム 0.50%
タルク粉末 残
以上の粉末を十分に混合した後、水を加えて混練し、0.8mmのスクリーンを使って押し出した。流動床乾燥機で乾燥して粒剤を得た。
【0017】
比較例2−1
粒剤処方、製法(化合物B 含量1.0%)
化合物B原体 1.00%
ベントナイト粉末 30.00%
リグニンスルホン酸ナトリウム 0.50%
タルク粉末 残
以上の粉末を十分に混合した後、水を加えて混練し、0.8mmのスクリーンを使って押し出した。流動床乾燥機で乾燥して粒剤を得た。
【0018】
比較例2−2
原末処方、製法
化合物B原体 20.00%
パラフィンワックス 残
以上を十分に混合し打錠装置にセットされた金型に入れ300kg/cm2 の圧力で打錠し、得られた成形物をピンミルで破砕した。100〜300μmの部分を集めて原末とした。
粒剤処方、製法(化合物B 含量1.0%)
化合物B原末 5.00%
ベントナイト粉末 30.00%
リグニンスルホン酸ナトリウム 0.50%
タルク粉末 残
以上の粉末を十分に混合した後、水を加えて混練し、0.8mmのスクリーンを使って押し出した。流動床乾燥機で乾燥して粒剤を得た。
【0019】
試験例1
試験方法
実施例1,2および比較例1−1,1−2,2−1,2−2の製剤を0.5g計りとり、20℃の恒温機の中に静置した2リットルのビーカーに入った蒸留水中に投じた。一定時間毎に水の一部を採取しHPLC法で溶出した成分濃度を測定した。その結果を第1表及び第2表に示す。
【0020】
【表1】
【0021】
【表2】
【0022】
試験例2(生物試験)
水田雑草に対する除草効果試験
供試薬剤
発明製剤 :実施例1で処方された粒剤
比較製剤1:比較例1−1で処方された粒剤
比較製剤2:比較例1−2で処方された粒剤
【0023】
試験方法
温室内において、水田土壌を詰めた1/2000アール(25×20×9cm)ポットに、2.5葉期(草丈15cm)の水稲苗(品種:日本晴)を1ポット当り1株3本植えとし2ケ所移植した。次いで、コナギ、ホタルイの各種子とウリカワの塊基を播種し、約2〜3cm灌水した。水稲移植後5日後、上記製剤を夫々の試験区に水面処理した。処理、3cmの灌水状態を保ち、1日当たり1cm減水する区と、減水しない区の両方の区で、散布3週間後に除草効果及び稲に対する薬害の程度を調査した。
除草効果の評価は、完全枯死を100%とし、0%を除草効果無しとした。調査結果を下記第3表に示す。薬害も同様に%表示で評価した。
A : 減水なし、
B : 減水条件下
【0024】
【表3】
【0025】
【発明の効果】
本発明の溶出抑制能を有する農薬原末組成物及び該組成物を用いて、得られる農薬粒剤は、前記実施例で示される通り、溶出抑制効果を示し、優れた残効性を示す。
Claims (5)
- 水易溶性農薬原体の少なくとも一種と、水に不溶性又は難溶性で、50℃以下の温度で軟化又は液化しない物質と、更に水に不溶性のシリコンオイルとを混合し、該混合物を溶融又は打錠した後、0.1〜0.5mmの粒径に整粒することから成る溶出抑制能を有する農薬原末組成物。
- 水に不溶性又は難溶性の物質が、パラフィンワックス、天然ワックス、ポリエチレン、又はポリプロピレンである請求項1記載の農薬原末組成物。
- シリコンオイルがジアルキルジクロルシラン重合体である請求項1記載の農薬原末組成物。
- 請求項1記載の農薬原末組成物を用い、押し出し造粒法により製造することから成る溶出抑制型農薬粒剤。
- 請求項1記載の農薬原末組成物と、他の農薬活性化合物の少なくとも一種とから成る混合組成物を用い、押し出し造粒法により製造することから成る溶出抑制型農薬粒剤。
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