JP4617358B2 - 生体高分子産生の制御因子を使用した組成物および方法 - Google Patents

生体高分子産生の制御因子を使用した組成物および方法 Download PDF

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Description

本発明は、一般に、エキソポリサッカリドの産生に関し、より詳細には、エキソポリサッカリド産生を調整することができる核酸配列およびその変種ならびに粘液形態のエキソポリサッカリドを高産生する細菌を生成するためのこのような核酸配列の使用方法を提供する。
産業および食品産業で適用するための安価且つ環境に優しいゲル化剤の需要が高まっている。いくつかの例示的なゲル化剤の産業上の適用には、掘削、接着剤、塗料、動物の飼料、家庭用品、日常生活用品(例えば、シャンプー、ローション)、口腔ケア製品(例えば、練り歯磨き)、および医薬品などが含まれる。いくつかの例示的な食品産業におけるゲル化剤の使用には、プディング、乳製品、パイのフィリング、ドレッシング、菓子類、ソース、およびシロップでの使用が含まれる。バイオテクノロジー産業は、商業的利用に許容可能な種々のエキソポリサッカリド製品の利用可能性の増加によってこのゲル化剤の需要に答えている。
細菌エキソポリサッカリドは、その固有のレオロジー特性(例えば、剪断耐性、種々のイオン化合物との適合性、極端な温度、pHおよび塩濃度に対する安定性)により、ゲル化剤または増粘剤として有用な化合物である。種々の細菌は、増粘剤またはゲル化剤として特に有用なエキソポリサッカリドを産生する。例えば、多くのエキソポリサッカリド型を産生する細菌は、スフィンゴモナスである。いくつかのこのようなポリサッカリドには、ゲラン、ウェラン、ラムサン、S7、およびS88が含まれる(例えば、Pollock,J.Gen.Microbiol.139:1939,1993を参照のこと)。スフィンゴモナスによって産生されたエキソポリサッカリドを、「スフィンガン」といい、少なくとも3つのスフィンガン(ゲラン、ウェラン、およびラムサン)が、大量液中発酵によって商業的に産生されている。
多数の細菌エキソポリサッカリド製品は、合成によって産生された材料よりも魅力的な一定範囲の改良点が得られるが、これらは、所望の生成物の回収および精製に関連するコストのために依然として比較的産生に費用かかる。さらに、エキソポリサッカリドのより高い発酵収率が可能な条件により、培養液の粘度も増加し、最終的に、発酵培養液中で充分に細菌成長させるために、酸素および栄養素を効率的に分散させるためのより高いエネルギー導入を必要とする。すなわち、より高いエキソポリサッカリド収率が得られる発酵により、より高い産生コストもかかる。
したがって、より多くのエキソポリサッカリドを産生し、且つ発酵培養液の粘度を増加させない形態でエキソポリサッカリドを産生する細菌の同定を補助するためにエキソポリサッカリドの細菌生合成をより深く理解する必要がある。さらに、このような細菌を作製または同定し、それにより、典型的な産業発酵条件下でエキソポリサッカリドの産生および収率が至適化される方法が必要である。本発明は、このような要求を満たし、さらに、他の関連する利点を提供する。
本発明は、一般に、エキソポリサッカリド産生を調整することができる核酸配列およびその変種の使用ならびに粘液形態のエキソポリサッカリドを高産生する細菌を生成するためのこのような核酸配列の使用方法に関する。
1つの態様では、本発明は、高ストリンジェント条件下でプローブとハイブリッド形成したままである配列を含む単離された核酸分子であって、前記プローブが、配列番号1または配列番号1の相補物からなる、単離核酸分子を提供する。1つの実施形態では、上記単離核酸分子は、スフィンゴモナス種でのエキソポリサッカリド産生を変化させることができる少なくとも1つのポリペプチドをコードする。関連する実施形態では、少なくとも1つのコードされたポリペプチドは、配列番号2と少なくとも80%同一性のアミノ酸配列を含むか、コードされたポリペプチドは、アミノ酸が保存的に置換された配列番号2のアミノ酸配列を含むか、ポリペプチドは、配列番号2のアミノ酸配列を含むか、ポリペプチドは、配列番号2のアミノ酸配列からなる。さらに別の実施形態では、本発明は、配列番号1または配列番号1の相補物に記載のヌクレオチド配列を含む単離核酸分子を提供する。さらに他の実施形態では、任意の上記ヌクレオチド分子は、DNAまたはRNAである。
別の実施形態では、本発明は、上記核酸分子のいずれか1つに作動可能に連結された少なくとも1つのプロモーターを含む組換え発現ベクターを提供する。さらに別の実施形態では、組換え発現ベクターは、第2の核酸配列によってコードされたポリペプチド産物(タグまたは酵素など)を含む融合タンパク質として調整ポリペプチドを発現する。ある実施形態では、組換え発現ベクターは、調節されたプロモーターを有する。さらに他の実施形態では、組換え発現ベクターはプラスミドである。さらに別の実施形態では、組換え発現ベクターは、プラスミドX026またはプラスミドX029(ATCC PTA−5127、寄託日:2003年4月4日)である。1つの実施形態では、組換え発現ベクターは、配列番号1に記載のヌクレオチド配列を含む核酸分子に作動可能に連結された少なくとも1つのプロモーターを含む。
さらに別の実施形態では、本発明は、上記組換え発現ベクターのいずれかを含む宿主細胞に関する。ある実施形態では、宿主細胞は、スフィンガン産生細菌、スフィンゴモナス細胞、またはスフィンガン産生スフィンゴモナス細菌などの原核細胞である。他の実施形態では、宿主細胞は、ゲラン、ウェラン、ラムサン、ジウタン(diutan)、アルカラン(alcalan)、S7、S88、S198、およびNW11などのスフィンガンを産生することができるスフィンゴモナス細菌である。さらに他の実施形態では、宿主細胞は、カプセル形態または粘液形態で産生される。ある実施形態では、宿主細胞は、スフィンゴモナスα252株(ATCC PTA−5128,Welam Slime;April 4,2003)、X287株(ATCC PTA−3487,Gellan Slime,June 28,2001)、X530株(ATCC PTA−3486,June 28,2001)、Z473株(ATCC PTA−3485,June 28,2001)、X031株(ATCC PTA−3488,June 28,2001)、またはα27株である。関連する実施形態では、宿主細胞は、ザントモナス細菌、より詳細には、ザントモナスX59株(ATCC 55298、1992年2月18日)、X55株(ATCC 13951)、α287株、α300株、またはα301株などのキサンタン産生細菌である。ある実施形態では、組換え発現ベクター上の核酸から発現したポリペプチドまたは融合タンパク質は、宿主細胞中のエキソポリサッカリド産生レベルを変化させる。
さらに別の態様では、本発明は、上記の核酸分子のいずれかによってコードされたポリペプチドを発現する場合でさえも粘液形態のエキソポリサッカリドを産生することができる細菌を含む、エキソポリサッカリドを産生する単離細菌であって、前記細菌は、スフィンゴモナスα027株の変異体またはザントモナスα287株、α300株、もしくはα301株の変異体を含む上述した細菌のいずれかである、単離細菌を提供する。他の実施形態では、上記核酸分子のいずれかによってコードされる少なくとも1つのポリペプチドが発現される場合に粘液形態のエキソポリサッカリドを産生する細菌は、α062株(ATCC PTA−4426、2002年6月4日)、α063株、α065株、もしくはα069株、またはザントモナスα449株(ATCC PTA−5064、2003年3月19日)、α485、もしくはα525株である。さらに他の実施形態では、本発明は、スフィンゴモナスα062株(ATCC PTA−4426)、α063株、α065株、またはα069株およびその変異体または誘導体からなる群から選択される単離細菌であって、前記細菌が、上述した核酸分子のいずれかによってコードされる少なくとも1つのポリペプチドを発現する場合でさえも粘液形態のエキソポリサッカリドを産生することができるような単離細菌、および、このような細菌の混合物を提供する。さらに他の実施形態では、本発明は、ザントモナスα449株(ATCC PTA−5064)、α485、またはα525株およびその変異体または誘導体からなる群から選択される単離細菌であって、前記細菌が、上記核酸分子のいずれかによってコードされる少なくとも1つのポリペプチドを発現する場合でさえも粘液形態のエキソポリサッカリドを産生することができる単離核酸およびこのような細菌の混合物を提供する。
本発明の別の態様では、エキソポリサッカリドを産生する条件下で産生に充分な時間細菌を培養する工程であって、前記細菌が、前記核酸分子のいずれかによってコードされる少なくとも1つのポリペプチドを発現する場合でさえも粘液形態のエキソポリサッカリドを高産生する工程と、このような培養物から粘液形態の前記エキソポリサッカリドを分離する工程とを含む、エキソポリサッカリドを高産生する方法を提供する。ある実施形態では、細菌は、スフィンゴモナス細菌(ゲラン、ウェラン、ラムサン、ジウタン、アルカラン、S7、S88、S198、および、NW11からなる群から選択されるエキソポリサッカリドを高産生することができるものなど(スフィンゴモナスα062株(ATCC PTA−4426)、α063株、α065株、およびα069株が含まれる))である。他のある実施形態では、細菌は、ザントモナス細菌(例えば、ザントモナスα449株(ATCC PTA−5064)、α485、およびα525株を含むキサンタンを高産生することができるものなど)である。培養が発酵工程を含むか、細菌が培養物1リットルあたり約20g〜約60gのエキソポリサッカリドを産生する、上記方法のいずれかも提供する。いくつかの実施形態では、発酵が、約25℃〜約35℃の範囲の温度で約48時間〜約96時間行われる。さらに他の実施形態では、本発明は、細菌からのエキソポリサッカリドの分離は、アルコール沈殿(培養物への約1〜約1.5培養体積のアルコールの添加など)による、上記方法のいずれかを提供する。他の実施形態では、発酵培養物の粘度が、約15,000cp〜約40,000cpの範囲である。
別の態様を参照すれば、本発明は、粘液形態のエキソポリサッカリド産生のために抑制された細菌を変異誘発物質と接触させる工程であって、前記細菌が、
(i)請求項2〜4のいずれか一項に記載の核酸分子によってコードされたポリペプチドをコードする核酸分子に作動可能に連結された少なくとも1つのプロモーターを含む組換え発現ベクターを含み、かつ前記細菌が、
(ii)エキソポリサッカリド産生が抑制されるように(i)のポリペプチドを発現する工程と、
エキソポリサッカリド産生を抑制することができるポリサッカリドの存在下で粘液形態のエキソポリサッカリドを高産生することができる細菌をこれらの細菌から同定する工程とを含む、粘液形態のエキソポリサッカリドを高産生することができる細菌の作製方法を提供する。
ある実施形態では、変異誘発物質(a)と、粘液形態のエキソポリサッカリドを産生することができる細菌(b)とを接触させる工程であって、前記細菌が、
(i)少なくとも1つのポリペプチドをコードする核酸分子に作動可能に連結された少なくとも1つのプロモーターを含む組換え発現ベクターを含み、前記核酸分子が上記ヌクレオチド配列のいずれかであり、かつ前記細菌が、
(ii)変異誘発された細菌を産生する条件下で産生に充分な時間エキソポリサッカリド産生が抑制されるように(i)の少なくとも1つのポリペプチドを発現する工程(A)と、前記変異誘発された細菌の間で、粘液形態のエキソポリサッカリドを高産生することができる1つまたは複数の細菌を同定する工程(B)とを含む、粘液形態のエキソポリサッカリドを高産生することができる細菌の作製方法を提供する。1つの実施形態では、この方法で使用される変異誘発物質はスルホン酸エチルメタンであり、細菌はスフィンゴモナス細菌、例えば、ゲラン、ウェラン、ラムサン、ジウタン、アルカラン、S7、S88、S198、およびNW11から選択されるエキソポリサッカリドを産生することができるものなど(スフィンゴモナスα027株を含む)である。
別の態様では、本発明は、スフィンゴモナスα062株(ATCC PTA−4426)、α063株、α065株、またはα069株などのスフィンゴモナスα027株の変異体およびα449株(ATCC PTA−5046)、α485、または、α525株などのザントモナスα300の変異体を含む、上記方法のいずれか1つによって産生された細菌を提供する。
本明細書中に記載のように、本発明は、エキソポリサッカリド生合成の調整因子をコードする核酸分子を提供し、ならびに、もはや調整因子に応答せず、それにより、より高いレベルのエキソポリサッカリドを産生することができる細菌を同定するための前記核酸分子の作製および使用方法を提供する。スフィンガンポリサッカリドなどの生体高分子の大量産生を容易にするために改良されたエキソポリサッカリド産生細菌を作製するための遺伝子技術の使用が望ましい。しかし、このような巨大分子を合成する代謝エネルギーの不必要な消費がある時期、例えば、エネルギーを成長に向かわせなければならない時期に起こる場合、細菌生存が危うくなるので、生体高分子の合成は高度に制限される。さらに、多数のタンパク質を作製してこれらの高分子を輸送する必要があるので、エキソポリサッカリドの合成およびアセンブリの制限は非常に複雑である。本発明は、もはや負の制御因子に応答しないスフィンゴモナス誘導体を生成するために、スフィンガン生合成の負の制御因子をコードし、その結果として、通常のスフィンガンエキソポリサッカリド量よりも大量に産生することができる核酸配列の同定および使用によってこれらの問題を解決する。
本説明では、特記しない限り、任意の濃度範囲、比率範囲、または整数範囲は、引用した範囲内の任意の整数値、および、適切な場合、その分数(整数の1/10および1/100など)が含まれると理解すべきである。本明細書中で使用される、「約」、「本質的に含む」は、平均±15%を意味する。代替物(alternative)(例えば、「または」)の使用は、代替物のいずれか1つ、両方、または任意の組み合わせを意味すると理解すべきである。用語を単数形で記載する場合、本発明者らはその用語の複数形も意図する。さらに、本明細書中に記載の構造および置換基の種々の組み合わせ由来の各化合物または化合物の群は、各化合物または化合物の群が個別に記載されているのと同一の範囲で本出願によって開示されていると理解すべきである。したがって、特定の構造または特定の置換基の選択は、本発明の範囲内である。
スフィンガンポリサッカリド
本明細書中で使用される、用語「スフィンガン」および句「スフィンガンエキソポリサッカリド」は、スフィンゴモナス属のメンバーによって分泌された関連するが異なるポリサッカリド群をいう(Pollock,J.Gen.Microbiol.139:1939−1945,1993)。スフィンゴモナス属の代表的なメンバーおよびこれらが産生するスフィンガンには、エキソポリサッカリドS−60(ゲラン)を産生するスフィンゴモナス・パウチモビリス(ATCC 31461、以前はシュードモナス・エロデア)(例えば、U.S.Patent Nos.4,377,636;4,326,053;4,326,052、および4,385,123を参照のこと);エキソポリサッカリドS−7を産生するスフィンゴモナス種ATCC 21423(例えば、U.S.Patent No.3,960,832を参照のこと);エキソポリサッカリドS−88を産生するスフィンゴモナス種ATCC 31554(例えば、U.S.Patent Nos.4,331,440および4,535,153を参照のこと);エキソポリサッカリドS−88を産生するS−130(ウェラン)を産生するスフィンゴモナス種ATCC 31555(例えば、U.S.Patent No.4,342,866を参照のこと);エキソポリサッカリドS−194(ラムサン)を産生するスフィンゴモナス種ATCC 31961(例えば、U.S.Patent No.4,401,760を参照のこと);エキソポリサッカリドS−198を産生するスフィンゴモナス種ATCC 31853(例えば、U.S.Patent No.4,529,797を参照のこと);エキソポリサッカリドS−657(ジウタン)を産生するスフィンゴモナス種ATCC 53159(例えば、U.S.Patent No.5,175,278を参照のこと);エキソポリサッカリドNW11を産生するスフィンゴモナス種ATCC 53272(例えば、U.S.Patent No.4,874,044を参照のこと);および生体高分子B−16(アルカラン)を産生するスフィンゴモナス種FERM BP−2015(以前はアルカリゲネス・ラタスB−16)(例えば、U.S.Patent No.5,175,279を参照のこと)などが含まれる。
スフィンガンの構造は全ていくらか関連している。各スフィンガンの主鎖は、4つの糖(D−グルコース、D−グルクロン酸、L−マンノース、およびL−ラムノースが含まれる)の関連配列からなる。スフィンガン群のポリサッカリドメンバーを、ポリマー骨格を形成する炭水化物、アシル置換基(例えば、アセチル、グリセリル、ピルビル、ヒドロキシブタノール)の有無、および側鎖の有無によって互いに区別可能である。例えば、スフィンガンポリサッカリドは、ポリマー骨格炭水化物に結合した炭水化物側鎖およびアセチル基またはピルビル基を含み得る。例えば、Mikolajczak et al.,Appl.Env.Microbiol.60:402,1994を参照のこと。ある実施形態では、スフィンガンエキソポリサッカリドのメンバーを、以下の一般的な反復化学構造:
(式中、Glcはグルコースであり、GlcAはグルクロン酸または2−デオキシ−グルクロン酸であり、Rhaはラムノースであり、Manはマンノースであり、XはRhaまたはManであってよく、ZはGlc残基2に結合し、α−L−Rha−(1−4)−α−L−Rha、α−L−Man、またはα−L−Rhaであってよく、YはGlc残基1に結合し、β−D−Glc−(1−6)−α−D−Glc、β−D−Glc−(1−6)−β−D−Glc、またはα−L−Rhaであってよく、下付き文字mおよびnは、独立して、0〜約1であってよく、ポリマーの「還元末端」は、骨格のX残基に向かっている)によって示すことができる。標準的技法では、オリゴサッカリドまたはポリサッカリドの還元末端を右側に配置する。本明細書中で使用される、用語「骨格」または「主鎖」は、Y鎖およびZ鎖を除く(すなわち、mおよびnが0に等しい場合)構造の一部をいう。
例えば、ゲラン(S−60)の主鎖は、糖であるD−グルコース、D−グルクロン酸、およびL−マンノースを2:1:1のモル比で含み、これらが互いに結合して以下のサブユニットの順序のテトラサッカリド繰り返し単位を形成する:グルコース、グルクロン酸、グルコース、ラムノース。
別のスフィンガン(ジウタン(S−657))の主鎖は、ヘキサポリサッカリド繰り返し単位を形成するグルコース残基2に結合したL−ラムノースのさらなるジサッカリド側鎖を有するという点でゲランと異なる。
さらに別のスフィンガン(ウェラン(S−130))は、ゲランと同一の一次構造を有するが、ペンタポリサッカリド繰り返し単位を形成するグルコース残基2に結合した1つのL−マンノースまたは1つのL−ラムノースの側鎖を有する。
スフィンガンポリサッカリドファミリーのいくつかのメンバーは、種々の位置でアセチル化される。例えば、本明細書中に記載するように、ゲラン(「ゲランガム」ともいう)は、ウェランと同一の炭水化物骨格(すなわち、X=Rha)を有するが、ウェランが有する側鎖の糖を欠き(すなわち、m=0およびn=0)、ウェランと対照的に、グルコース残基1が完全にグリセリル化し(glycerylated)、部分的にアセチル化している。ゲランガムは、平均して、テトラサッカリド繰り返し単位あたり約1個のグリセリル基と、および2つの繰り返し単位あたり約1つのアセチル基とを有する。アシル基を含む別のスフィンガンは、グルコース残基2の2位および/または6位にアセチル基を含むジウタン(S−657)である。当分野で公知であり、且つ本明細書中に記載されているように、スフィンガンポリサッカリドを、従来の様式で脱アシル化を促進してアシル基を除去する条件に供することができる。したがって、本明細書中で使用される、「脱アシル化」は、グリセリル基およびアセチル基などの1つまたは複数のアシル置換基を欠くスフィンガンポリサッカリドをいう。
背景知識として、スフィンゴモナスは、カプセルまたは粘液形態のスフィンガンエキソポリサッカリドを産生することができる。本明細書中で使用される、「カプセル」は、産生される細菌細胞の表面に付着し、希釈、沈殿、または遠心分離後でさえも細胞に付着したままであるポリサッカリドをいう。典型的には、細菌細胞からカプセルエキソポリサッカリドを分離するためには、物理的(例えば、加熱)または化学的処理のいくつかの型が必要である。
本明細書中で使用される、「粘液」は、産生される細菌細胞に付着しないポリサッカリドをいう。すなわち、粘液形態のエキソポリサッカリドを、例えば、発酵培養液または培養液の水希釈物の遠心分離によって(熱処理または他の物理的または化学的処理の非存在下でさえも)細菌細胞から実質的に分離することができる。当分野で公知のように、粘液形態のエキソポリサッカリドを産生する細菌を、光学顕微鏡での観察によってカプセルポリサッカリドを産生する細菌と区別することができる:カプセル化スフィンゴモナスが多細胞凝集体を形成する一方で、粘液形成細菌は均一に分散される。さらに、例えば、U.S.Patent No.6,605,461に記載の変異誘発によって、カプセル化スフィンゴモナスを、粘液性のスフィンゴモナスに変換することができる。
本明細書中で使用される、用語「スフィンゴモナス」は、本明細書中に記載のように、エキソポリサッカリド(例えば、スフィンガン)を産生するグラム陰性細菌属およびその誘導株をいう。グラム陰性細菌のスフィンガン産生ファミリーは、1993年にスフィンゴモナス属に属すると最初に同定された(Pollock,J.Gen.Microb.139:1939,1993を参照のこと)。本発明で有用なスフィンゴモナスには、親スフィンゴモナス株およびその誘導株が含まれる。
本明細書中で使用される、「親株」は、親株の遺伝子の中身(例えば、ゲノム配列内またはゲノム外配列の置換、挿入、または欠失)または表現型を修飾する化学的変異誘発、生物学的変異誘発、または他の型の変異誘発などの任意の処理の前の細菌群または各細菌をいう。当業者は、変異スフィンゴモナスといえども、その後の一連の変異処理にて、カプセル形態ではなく粘液形態のエキソポリサッカリドを産生するスフィンゴモナス誘導株などの「親株」になり得ることを理解している。本明細書中で使用される、用語「誘導体」は、スフィンゴモナスの種、株、または細菌をいう場合、本明細書中に記載されるように、スフィンガンエキソポリサッカリドを産生する能力が本質的に同一なままであるか増強される任意のスフィンゴモナスの種、株、または細菌を意味する。
さらに、本明細書中で使用される、「遺伝子が変異された」、「遺伝子が修飾された」、「変異誘発された」、および「変異体」は、1つまたは複数の自発的または誘導性の変異を有する特質、変異された細菌または株を親細菌または株と区別する性質を示す特質をいう。したがって、スフィンガンエキソポリサッカリドを高産生する変異スフィンゴモナスの種、株、または細菌は、本発明の目的のための親スフィンゴモナスの種、株、細菌の誘導体として意図される。本明細書中で使用される、「誘導性変異誘発」は、DNAの遺伝子変化を誘導することが一般に公知の薬剤(化合物、電磁照射、イオン化照射、および生物学的因子(ウイルス、プラスミド、挿入エレメント、またはトランスポゾンなど)が含まれる)での細菌細胞の処理を意味する。1つの好ましい実施形態では、本発明は、エキソポリサッカリド生合成の負の制御因子の存在下でエキソポリサッカリドを産生する変異スフィンゴモナスを提供する。
本明細書中で使用される、用語「生合成」は、中間体または最終産物に到達するためのいくつかの生合成工程を含み得る、核酸、ポリペプチド、またはポリサッカリドなどの任意の高分子型(例えば、スフィンゴモナスのスフィンガンまたはザントモナスのキサンタン)の生物学的な産生または合成を説明する。例えば、スフィンガンエキソポリサッカリドは、多数の細菌酵素(例えば、グリコシルトランスフェラーゼ)によって調節される一連の工程において各炭水化物単位から合成される。用語「バイオマス」は、細菌培養物中のエキソポリサッカリドおよび細菌細胞をいう。
ある実施形態では、本発明のスフィンゴモナスは、粘液形態のエキソポリサッカリドを産生する。例えば、粘液形態のスフィンガンエキソポリサッカリドを合成および輸送するように遺伝子が変異されたスフィンゴモナス株を、本発明の文脈では、「親株」として使用することができる。本発明で有用なスフィンゴモナス親株の例には、粘液形態のゲランガム(S−60)を産生するX287株(ATCC PTA−3487)株、粘液形態のウェランガム(S−130)を産生するX530株(ATCC PTA−3486)およびα252株(ATCC PTA−5128)、粘液形態のエキソポリサッカリドS−88を産生するZ473株(ATCC PTA−3485)、ならびに粘液形態のエキソポリサッカリドS−7を産生するX031株(ATCC PTA−3488)(例えば、U.S.Patent Nos.5,338,841および6,605,461を参照のこと)が含まれる。粘液形態のスフィンガンエキソポリサッカリドを産生するスフィンゴモナス株の1つの利点は、発酵培養液の粘度を有意に減少させることができ、漸増量の所望のポリサッカリドを蓄積することが可能であることである。しかし、例示的な粘液形態のX287株(ATCC PTA−3487)が親スフィンゴモナス・パウチモビリス(ATCC 31461)株と同じようなレベルでゲランガムを産生する一方で、依然として培養液の粘度が遊離に減少する。したがって、本発明の1つの態様は、スフィンガンなどのポリサッカリドの発現を調整することができる核酸配列の同定である。
スフィンガン生合成調整因子
多数の細菌種は、グルコースなどの容易に変換可能な炭素源および適量の酸素を供給した場合に酸性ポリサッカリドを合成および分泌する。細菌スフィンゴモナス属のいくつかのメンバーは、まとめてスフィンガンとして知られる種々の酸性ポリサッカリドを産生する。一定の環境状況下で、細菌は、負の制御因子系を介したエキソポリサッカリド産生の最小化によってエネルギーを保存する。本発明は、一般に、スフィンゴモナスにおけるエキソポリサッカリド産生を変化させる(例えば、統計的に有意な様式で増減する)ことができる1つまたは複数のポリペプチドをコードする核酸配列に関する。本発明はまた、もはやエキソポリサッカリド生合成の制御因子に応答しない細菌のスクリーニングによって粘液形態のエキソポリサッカリドを高産生することができる細菌の作製方法に関する。したがって、本発明の一定の好ましい実施形態では、スフィンゴモナス属におけるエキソポリサッカリド産生を調整することができる1つまたは複数のポリペプチドをコードする単離核酸分子を使用して、例えば、粘液形態のエキソポリサッカリドを高産生する(すなわち、統計的に有意な様式で親株よりも大量に産生する)ことができる変異細菌を作製する。
エキソポリサッカリド産生を調整することができる適切な核酸分子およびポリペプチドには、天然に存在する核酸分子およびポリペプチドならびにその誘導体または類似体が含まれるが、これらに限定されない。
「精製ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質」または「精製核酸分子」は、事実上核酸分子またはポリペプチドに会合する炭水化物、核酸(DNAまたはRNA)、または他のタンパク性夾雑物などの夾雑細胞成分を個別に本質的に含まない配列である。好ましくは、精製核酸およびポリペプチドは、本発明の化学的カップリング反応での使用または必要に応じて他の用途に充分に夾雑物を含まない。「単離ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質」または「単離核酸分子」は、その元の環境から取り出されている(天然の環境下で(例えば、天然環境は変化していない細胞であり得る)共存している物質のいくつかまたは全部から分離されているなど)配列である。
標準的な分子遺伝子技術を使用して、エキソポリサッカリド生合成の調整因子をコードする核酸を同定および単離することができる。
本明細書中で使用される、「調整因子」は、典型的には、本明細書中に記載のアッセイまたはスクリーニングにおける生物学的過程でのインヒビターまたはアクチベーター(または両方)(例えば、リプレッサー、アクチベーター、σ因子、抗菌薬、アンチセンス分子、干渉分子、および酵素など)としての活性を(直接的または間接的に)有する生体高分子(例えば、核酸、タンパク質、非ペプチド、または有機分子)などの化合物(天然に存在するか天然に存在しない)をいう。「調整」は、統計的に有意な様式で生物活性または過程の機能的性質(例えば、遺伝子発現、酵素活性、または受容体結合)を増強または阻害する(またはその両方)化合物の能力をいう。例えば、当分野で周知の方法(例えば、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd edition,Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,1989を参照のこと)を使用して、スフィンゴモナスS−88種(ATCC 31554)由来のゲノム発現ライブラリーを構築し、カプセル形態または粘液形態(好ましくは、粘液形態)のエキソポリサッカリドを発現する細菌(例えば、スフィンゴモナスX031株)に形質転換し、もはやエキソポリサッカリドを発現しない組換え細菌をスクリーニングすることができる。
本発明のこのような方法を使用して、(約2,600個のヌクレオチド、配列番号3の)核酸分子を同定し、スフィンガン生合成を直接または間接的に阻害する1つまたは複数のポリペプチドをコードするスフィンゴモナスS−88種ゲノムから単離した。さらに、配列番号3から単離した573個のヌクレオチド(配列番号1)のフラグメントを、スフィンゴモナス(S−7、S−88、S−130、S−194、S−198、およびNW11)のスフィンガン生合成を阻害するのに充分であると同定した。配列番号1はまた、ザントモナスにおけるキサンタン生合成を阻害することができる(例えば、ザントモナス・キャンペストリスX59、ATCC 55298)。好ましい実施形態では、エキソポリサッカリド生合成の調整因子は、ポリペプチド調整因子をコードする核酸分子であり、好ましくは、調整因子は、エキソポリサッカリド生合成の負の調整因子である。すなわち、エキソポリサッカリド生合成の負の調整因子をコードする核酸を発現する宿主細胞により、その宿主細胞におけるエキソポリサッカリドの発現が阻害される。
背景の目的とし、且つ理論に拘束されることを望まないが、配列番号3の核酸配列の分析により、この配列によって潜在的に3つのポリペプチド(3−デオキシ−D−アラビノ−ヘプツロン酸−7−リン酸シンターゼ(DAHPS)の相同体、MPGと呼ばれる新規のポリペプチド、およびSpsNと呼ばれる新規のポリペプチドが含まれる)がコードされることが明らかとなった。DAHPSは、芳香族アミノ酸の生合成に関与する。さらに、配列番号1は、SpsN、MPG、およびDAHPSのカルボキシル末端をコードする。したがって、本明細書中により詳細に記載されているように、1つまたは複数のMPGおよびSpsNは、スフィンガンおよびキサンタンの生合成の直接的または間接的な調整因子として機能することができる。実施例3は、いかにspsN核酸配列の存在が一定の細菌のエキソポリサッカリド生合成の阻害に必要であり、且つ潜在的に充分であるかを記載する。好ましい実施形態では、本発明は、スフィンゴモナス種またはザントモナス種におけるエキソポリサッカリド産生を変化させることができる少なくとも1つのポリサッカリドをコードする配列番号3または配列番号1に記載の核酸分子を提供する。さらに、本発明は、それ自体が調整因子として機能するか、調整因子として機能する別の核酸をコードする配列番号3または配列番号1に記載の核酸分子にも関すると理解すべきである。したがって、別の好ましい実施形態では、スフィンゴモナス種またはザントモナス種におけるエキソポリサッカリド産生を変化させることができる配列番号3または配列番号1に記載の核酸分子を提供する。
エキソポリサッカリド生合成の調整因子をコードする単離核酸の特定の実施形態が配列番号3および1に記載されている一方で、本発明の文脈内で、1つまたは複数の単離核酸の言及には、これらが配列番号4または配列番号2などのエキソポリサッカリド生合成の調整因子と類似の構造および機能を有する天然または非天然のタンパク質、ポリペプチド、またはペプチドをコードするという点で実質的に類似のこれらの配列の変種が含まれる。
本明細書中で使用されるように、ヌクレオチド配列は、
(a)ヌクレオチド配列がスフィンゴモナスまたはザントモナスから単離した配列番号3または1のコード領域に由来する場合(例えば、上記で考察した配列の配列または対立遺伝子異形(variation)の一部が含まれる)、
(b)ヌクレオチド配列が中ストリンジェンシーまたは高ストリンジェンシー下で本発明のヌクレオチド配列とハイブリッド形成することができる場合、
(c)ヌクレオチド配列が、(a)または(b)で定義したヌクレオチド配列の遺伝コード中の「ゆらぎ」の結果として縮重する場合(すなわち、配列が、異なるコドン配列を使用して同一のアミノ酸をコードする配列)、または
(d)(a)、(b)、または(c)に記載の任意の配列の相補物である場合、「実質的に類似している」と考えられる。本明細書中に記載のように、ポリヌクレオチド変種は、コードされたポリペプチドの活性が好ましくは実質的に減少するような1つまたは複数の置換、付加、欠失、および/または挿入を含み得る。
1つの実施形態では、高ストリンジェント条件下でプローブとハイブリッド形成したままである配列を含む単離された核酸分子であって、前記プローブが、配列番号1または配列番号1の相補物からなる、単離核酸分子が好ましい。好ましい実施形態では、本発明は、配列番号1または配列番号1の相補物からなる単離核酸分子を提供する。したがって、本発明のある単離核酸は、エキソポリサッカリド生合成の調整因子をコードする核酸、その類似体、相同体、もしくは誘導体の存在の検出に有用であるか、エキソポリサッカリド生合成を変化させることができるポリペプチドの発現に有用である。本明細書中で使用される、「核酸分子」または「ポリヌクレオチド」は、少なくとも10塩基長のヌクレオチドのポリマー形態(リボヌクレオチドもしくはデオキシヌクレオチドのいずれかまたはいずれかのヌクレオチド型の修飾形態)をいう。この用語には、一本鎖および日本鎖形態のDNAもしくはRNAまたは多数の公知の天然および非天然の核酸の変種のいずれか(例えば、ホスホロチオエートを含む核酸などのより高い分解耐性を有する核酸)が含まれる。ある実施形態では、エキソポリサッカリド生合成の調整因子をコードする核酸分子は、DNAまたはRNAである。
「中ストリンジェントハイブリッド形成条件」および「高ストリンジェントハイブリッド形成条件」は、標的配列の一部が実質的にプローブ配列の相補物と類似する場合のみでハイブリッド形成を容易に検出することができる、ヌクレオチド塩基対合および水素結合形成の確立された原理にしたがった標的ヌクレオチドへのプローブヌクレオチド配列のハイブリッド形成条件である。ハイブリッド形成条件は、プローブサイズならびに当業者に公知の様式での温度、時間、および塩濃度によって変化する。例えば、50ヌクレオチドプローブについての中ハイブリッド形成条件は、5×SSPE(1×SSPE=180mM塩化ナトリウム、10mMリン酸ナトリウム、1mM EDTA(pH7.7)、5×Denhardt液(100×Denhardt液=2%(w/v)ウシ胎児血清、2%(w/v)Ficoll、2%(w/v)ポリビニルピロリドン)、および0.5%SDSを含む緩衝液で55〜60℃で一晩インキュベートしたハイブリッド条件を含む。中ストリンジェンシーでのハイブリッド形成後の洗浄を、典型的には、0.5×SSC(1×SSC=150mM塩化ナトリウム、15mMクエン酸三ナトリウム)または0.5×SSC中にて55〜60℃で行う。高ストリンジェントハイブリッド形成条件は、典型的には、50%ホルムアミドの存在下での42℃で一晩の2×SSPE、その後の約0.1×SSC〜0.2SSC、および0.1SDSでの65℃で30分間またはそれを超えた1回またはそれを超えた洗浄を含むであろう。
本発明のエキソポリサッカリド生合成の調整因子をコードする単離核酸を、種々の方法を使用して得ることができる。例えば、上記のように、SpsNまたはMPGポリペプチドとの反応性を示す抗体でのスクリーニングによってcDNAまたはゲノム発現ライブラリーから核酸分子を得ることができる(例えば、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor,1989;Ausubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publishing,1987を参照のこと)。さらに、ランダムプライミングPCRを行うことができる(例えば、Methods in Enzymol.254:275,1995を参照のこと)。さらに、特に、特定の遺伝子または遺伝子ファミリーが望ましい場合、ランダムプライミングPCRの変形形態も使用することができる。1つのこのような方法では、一方のプライマーはランダムプライマーであり、他方はエキソポリサッカリド生合成の調整因子をコードするアミノ酸配列またはヌクレオチド配列に基づいた縮重プライマーである。
他の方法を使用して、エキソポリサッカリドの調整因子をコードする単離核酸分子を得ることもできる。例えば、本明細書中に提供した配列情報を使用して、放射性標識、酵素標識、タンパク質標識、または蛍光標識などで標識されることができるプローブであって、例えば、1つまたは複数の選択された宿主細胞中での複製または発現のためにデザインされたファージベクター、プラスミドベクター、ファージミドベクター、またはウイルスベクター中で構築されたゲノムライブラリーまたはcDNAライブラリーとハイブリッド形成することができるプローブを合成することによって、核酸分子を単離することができる(例えば、上述のSambrook et al.の文献;上述のAusubel et al.の文献を参照のこと)。上記のように、RNAまたはゲノム核酸配列を示すDNAを、配列番号1および3に示す単離核酸配列またはその変種の5’および3’配列に相補的なプライマー対を使用した増幅によって得ることもできる。クローニングを簡単にするために、プライマーに制限酵素部位を組み込むこともできる。したがって、本発明は、特に、スフィンゴモナスまたはザントモナス由来のサンプル中でのエキソポリサッカリド生合成の調整因子をコードする少なくとも1つのmRNAまたはDNAの増幅に特異的なPCR増幅手順で使用するためのプライマーとして有用である核酸分子を含む(PCR手順については、例えば、U.S.Patent No.4,683,195;U.S.Patent No.4,965,188;and Innis et al.,PCR Strategies,Academic Press,San Diego,1995を参照のこと)。このようなPCR増幅法は当分野で公知であり、プライマー伸長PCR、実時間PCR、逆転写酵素PCR(Freeman et al.,BioTechniques 26:112,1999)、逆PCR(Triglia et al.,Nucleic Acids Res.16:8186,1988)、捕捉PCR(Lagerstrom et al.,PCR Methods Applic.1:111,1991)、差分(differential)プライマー伸長(WO 96/30545)、および当分野で公知であるかその後に開発された他のPCR増幅法(例えば、Innis et al.,PCR Strategies,Academic Press,San Diego.1995を参照のこと)が含まれる。
操作時、PCR法は、一般に、化学合成されたプライマー分子の使用を含むが、これらを、酵素または組換えによって生成することができる。PCRプライマーは、一般に、特定の遺伝子または条件の同定に好ましい条件下で使用される2つのヌクレオチド配列(センス方向(5’−>3’)のものおよびアンチセンス方向3’−>5’のもの)を含む。同一のPCRプライマー;オリゴマーのネスト化された組;またはオリゴマーの縮重プールを、密接に関連するDNA配列またはRNA配列の検出および/または定量のための低ストリンジェントな条件下で使用することができる。これらの核酸分子を、サンプル中のコンタクチンmRNA分子またはDNA分子を同定するためのプローブとして個別または組み合わせて使用することもできる。これらの核酸は、以下を含む:
5’−GACGGATCCTTGCCGAGGTGCG−3’(配列番号5)、
5’−CGACGGCCACTACTAGCGTTCGAACG−3’(配列番号6)、
5’−GTCCGTCGGTATCTACGGCTTCGAACG−3’(配列番号7)。
配列番号5は順方向プライマーであり、配列番号6および配列番号7は逆方向プライマーである。
本発明の核酸分子を、当分野で公知の種々の方法によって作製することができる。例えば、核酸分子を、当分野で公知の合成手順または分子生物学的技術を使用して作製することができる(例えば、上述のSambrook et al.の文献を参照のこと)。当業者は、本発明の核酸分子の長さを、核酸分子が使用される特定の目的に依存して容易に選択することができる。PCRプライマーのために、核酸分子の長さは、好ましくは約10ヌクレオチド長と約50ヌクレオチド長との間、より好ましくは約12ヌクレオチド長と約30ヌクレオチド長との間、最も好ましくは約15ヌクレオチド長と約25ヌクレオチド長との間である。プローブのために、核酸分子の長さは、好ましくは約20ヌクレオチド長と約1,000ヌクレオチド長との間、より好ましくは約100ヌクレオチド長と約500ヌクレオチド長との間、最も好ましくは約150ヌクレオチド長と約400ヌクレオチド長との間である。
本明細書中に提供した単離された配列番号1および3のヌクレオチド配列の変種(対立遺伝子が含まれる)を、合成または構築された天然の変種(例えば、多型、変異体、および他の血清型)から容易に得ることができる。変異体生成のための多数の方法が開発されている(一般に、上述のSambrook et al.の文献;上述のAusubel et al.の文献を参照のこと)。簡単に述べれば、ヌクレオチド置換物の好ましい生成方法は、変異すべき塩基にわたり、且つ変異塩基を含むオリゴヌクレオチドを使用する。オリゴヌクレオチドを相補的な一本鎖核酸とハイブリッド形成し、オリゴヌクレオチドから第2の鎖の合成が開始される。大腸菌または他の原核生物および酵母および他の真核生物などの宿主細胞への形質転換のための二本鎖核酸を調製する。標準的なスクリーニングおよびベクター増幅プロトコールを使用して、変異配列を同定し、これが高収率で得られる。
同様に、エキソポリサッカリド生合成の調整因子をコードする核酸分子の欠失または挿入を、任意の種々の公知の方法によって構築することができる。例えば、配列は、制限酵素またはヌクレアーゼで消化され、配列が欠失、付加、または置換されるように再ライゲーションすることができる。同様に、種々のトランスポゾンおよび他の挿入エレメントを使用して、欠失および挿入された組換え体を作製することができる。したがって、1つの例では、本明細書中に記載のように、spsNコード配列中にTn10Kanトランスポゾンを含むspsN変異体を、当分野で公知の方法によって作製することができる。変種配列の他の生成手段(これも公知である)を、過度の実験を必要とすることなく使用することができる(例えば、上述のSambrook et al.の文献および上述のAusubel et al.の文献を参照のこと)。さらに、典型的には、制限酵素マッピング、配列分析、およびハイブリッド形成などによって変種配列の検証を行う。エキソポリサッカリド生合成を変化させることができるエキソポリサッカリド生合成の調整因子をコードする変種は、本発明の文脈で特に有用である。
当業者は、他のspsNコード配列を類似の様式で同定および単離することができることを認識するであろう。例えば、spsNの類似体もしくは誘導体またはスフィンゴモナスまたは他の関連細菌(ザントモナスまたはシュードモナスなど)の他の種由来のspsN相同体を、本明細書中に記載のアッセイを使用して同定および単離することができる。したがって、ある実施形態では、スフィンゴモナスまたはザントモナスにおけるエキソポリサッカリド生合成の好ましい調整因子は、配列番号3または配列番号1に記載の核酸配列およびエキソポリサッカリド生合成を変化させることができる配列番号3または配列番号1の類似体または誘導体を含む。本明細書中で使用される、用語「誘導体」および「類似体」は、エキソポリサッカリド生合成の調整因子をいう場合、上記のように、このような親調整因子と生物学的機能または活性が本質的に同一なままであるか(少なくとも50%、好ましくは70%、80%、90%、または95%超)、増強されたエキソポリサッカリド生合成の任意の調整因子をいう。このような類似体および誘導体の生物学的機能および活性を、本明細書中に記載され、且つ当分野で公知のアッセイなどを使用した標準的な方法(例えば、プレートアッセイ、ゲル分析、転写アッセイ、翻訳アッセイ)を使用して決定することができる。例えば、類似体または誘導体は、切断によって活性化することができるプロタンパク質であり得るか、アミノ酸修飾によって活性化または安定化されてエキソポリサッカリド生合成の活性な調整因子を産生することができる前駆体であり得る。あるいは、エキソポリサッカリド生合成の調整因子およびその類似体または誘導体を、1つまたは複数の調整因子抗体に特異的に結合する能力によって同定することができる。
類似体または誘導体の別の例には、天然に存在する調整因子のアミノ酸配列と比較して、1つまたは複数のアミノ酸が保存的に置換されたエキソポリサッカリド生合成の調整因子(例えば、SpsN)が含まれる。共通のアミノ酸の間で、「保存的なアミノ酸置換」は、例えば、以下の各群内のアミノ酸間での置換によって説明する(1)グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、およびイソロイシン、(2)フェニルアラニン、チロシン、およびトリプトファン、(3)セリンおよびトレオニン、(4)アスパラギン酸およびグルタミン酸、(5)グルタミンおよびアスパラギン、ならびに(6)リジン、アルギニン、およびヒスチジン、またはこれらの組み合わせ。さらに、調整因子の類似体または誘導体には、例えば、通常のアミノ酸の前駆体などの非タンパク質アミノ酸(例えば、ホモセリンおよびジアミノピメレート)、異化経路における中間体(例えば、ピペコリン酸および通常のアミノ酸のD−エナンチオマー)、およびアミノ酸類似体(例えば、アゼチジン−2−カルボン酸、ホモプロリン、およびカナバニン)が含まれ得る。
類似体または誘導体のさらに他の実施形態には、親分子(すなわち、「親」分子は、例えば、親が野生型SpsNまたはSpsNの類似体であえるかどうかの出発点に依存する)と少なくとも約60%の同一性、より好ましくは少なくとも約70%、80%、90%、最も好ましくは少なくとも約95%の同一性を保持するエキソポリサッカリド生合成の調整因子が含まれる。本明細書中で使用される、「パーセント同一性」または「%同一性」は、コンピューター実行アルゴリズム、典型的には、デフォルトパラメーターを使用して、被験物のポリペプチド、ペプチド、またはその類似体もしくは変種配列全体と、試験配列とを比較することにより、換算される(returned)百分率の値である。任意の標準的なソフトウェアプログラム(DNASTAR(登録商標)(Madison,Wisconsin)製のLasergene(登録商標)バイオインフォマティクス演算スイートで提供されているソフトウェアプログラムなど)を使用して、配列比較を行うことができる。BLAST(登録商標)またはALIGNなどのアルゴリズムについての参考文献は、例えば、Altschul,J.Mol.Biol.219:555−565,1991;またはHenikoff and Henikoff,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10915−10919,1992に見出すことができ、好ましくはBLAST(登録商標)を使用する(本明細書中で使用される、BLAST(登録商標)は、1つまたは複数の以下の検索アルゴリズムをいい(National Center for Biotechnology Information(NCBI,Bethesda,MD)ウェブサイト(www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST)で利用可能なBLASTn、MEGABLAST、BLASTp、PSI−BLAST、PHI−BLAST、BLASTx、tBLASTn、tBLASTx、RPS−BLAST、CDART、VecScreen、およびtrace BLASTなど))、結果をGenBank(登録商標)などのデータベースと比較する。適切なアラインメントの決定による複数のヌクレオチド配列またはアミノ酸配列の他の比較方法は当業者に周知である(例えば、Peruski and Peruski,The Internet and the New Biology:Tools for Genomic and Molecular Research(ASM Press,Inc.1997);Wu et al.(eds.),「Information Superhighway and Computer Databases of Nucleic Acids and Proteins,」 in Methods in Gene Biotechnology,pages 123−151(CRC Press,Inc.1997);およびBishop(ed.),Guide to Human Genome Computing,2nd Edition,Academic Press,Inc.,1998を参照のこと)。
本明細書中で使用される、2つまたはそれ以上のペプチドまたはポリペプチド間の「類似性」を、一般に、一方のペプチドまたはポリペプチドと、アミノ酸が保存的に置換された1つまたは複数の他方のペプチドまたはポリペプチドとのアミノ酸配列の比較によって決定する。さらに、当分野で公知であるように、MPG(配列番号4)またはSpsN(配列番号2)などの親化合物のアミノ酸配列に基づいて、相同体、類似体、または誘導体群についてのコンセンサス配列を決定することができる。好ましい実施形態では、ポリペプチド調整因子は、配列番号2のアミノ酸配列を含み、さらにより好ましい実施形態では、調整因子は、配列番号2のアミノ酸配列からなる。
類似体または誘導体はまた、エキソポリサッカリド生合成の調整因子の融合タンパク質であり得る。融合タンパク質(すなわち、キメラ)には、ポリペプチドタグ(例えば、エピトープタグまたは6xHisタグ)、キャリア、または酵素などの非調整因子ペプチドまたはポリペプチドと、1つまたは複数のエキソポリサッカリド生合成の調整因子との融合物が含まれる。ペプチドはまた、検出可能な標識または「タグ」(放射性標識、蛍光標識、質量分析タグ、およびビオチンなど)を有することもできる(すなわち、標識することもできる)。
組換え技術によってペプチドを産生することができ、種々の宿主系は、エキソポリサッカリド生合成の調整因子およびその類似体または誘導体の産生に適切であり、宿主系には、細菌(例えば、大腸菌)、酵母(例えば、出芽酵母)、昆虫(例えば、Sf9)、および哺乳動物細胞(例えば、CHO、COS−7)が含まれる。多数の発現ベクターが開発されており、これらの各宿主に利用可能である。好ましい実施形態では、細菌で機能的な(すなわち、複製することができる)ベクターを本発明で使用し、さらにより好ましくは、ベクターは広い宿主範囲のプラスミド(pRK311(Ditta et al.,Plasmid 13:149,1985)およびpMMB(EH)(Fuerste et al.,Gene 48:119,1986)など)である。しかし、時折、他の宿主または1つを超える宿主で機能的なベクターを有することが好ましいかもしれない。大腸菌におけるクローニングおよび発現のためのベクターおよび手順は、本明細書中および、例えば、Sambrook et al.(1987)and in Ausubel et al.(1995)中で考察されている。
「ベクター」は、所望のポリペプチドの発現を指示することができる核酸アセンブリをいう。ベクターは、目的の核酸コード配列または単離核酸分子に作動可能に連結された発現制御配列(例えば、転写プロモーター/エンハンサーエレメント)を含み得る。ベクターは、DNA、RNA、またはこれらの2つの組み合わせ(例えば、DNA−RNAキメラ)から構成され得る。任意選択的に、ベクターは、ポリアデニル化配列、1つまたは複数の制限部位、ならびに必要に応じてネオマイシンホスホトランスフェラーゼまたはハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼなどの1つまたは複数の選択マーカーを含み得る。さらに、選択された宿主細胞および使用したベクターに依存して、複製起点、さらなる核酸制限部位、エンハンサー、転写の誘導性または抑制性を付与する配列、および選択マーカーを、本明細書中に記載のベクターに組み込むこともできる。
「クローニングベクター」は、宿主細胞中で自律的に複製することができるプラスミド、コスミド、またはバクテリオファージなどの核酸分子をいう。クローニングベクターは、典型的には、ベクターの本質的な生物学的機能を喪失することなく決定可能な様式で外来ヌクレオチド配列を挿入することができる1つまたは少数の制限エンドヌクレアーゼ認識部位を含む。クローニングベクターはまた、典型的には、クローニングベクターで形質転換された細胞の同定および選択での使用に適切なマーカー遺伝子(例えば、抗生物質耐性コード遺伝子)を含む。マーカー遺伝子は、典型的には、テトラサイクリン、カナマイシン、およびアンピシリンなどの抗生物質に耐性を付与するタンパク質をコードする。
本明細書中で使用される、「核酸発現構築物」は、宿主細胞中で発現する核酸配列を含む核酸分子構築物をいう。典型的には、目的の核酸配列の発現を、発現制御配列(例えば、プロモーター)、任意選択的に、少なくとも1つの調節エレメント下におく。このような発現配列を、プロモーター「に作動可能に連結された」という。同様に、調節エレメントがプロモーターの活性を変化させる(すなわち、統計的に有意に増減する)場合、調節エレメントおよびプロモーターは作動可能に連結される。本明細書中で使用されるように、「発現制御配列」は、構造遺伝子の転写を指示するヌクレオチド配列をいう。典型的には、発現制御配列は、構造遺伝子の転写開始部位に対して近位の遺伝子の5’領域に配置される。発現制御配列が誘導性プロモーターである場合、転写率を、例えば、誘発剤の添加によって増加させることができるか、阻害剤の添加によって減少させることができる。対照的に、誘発剤または阻害剤は、構成性プロモーターの転写率に影響を与えない。
当業者は、例えば、配列番号4またはその変種のアミノ酸配列を有するペプチドをコードする単離核酸配列の発現のための適切な発現制御配列および適切な宿主を選択することができ、ここで、変種は、アミノ酸が保存的に置換されているか配列番号4と少なくとも80%の配列が同一なアミノ酸配列を含み、変種はエキソポリサッカリド生合成を変化させることができる。好ましい実施形態では、スフィンゴモナスにおいてエキソポリサッカリド生合成を変化させることができる少なくとも1つのポリペプチドをコードする配列番号1または3に記載の核酸配列に作動可能に連結された少なくとも1つのプロモーターを含む組換え発現ベクターを提供する。
エキソポリサッカリド生合成の調整因子をコードするDNA配列を、特定の宿主に適切な発現ベクターに移入することができる。ある実施形態では、核酸配列を、ベクターまたは発現ベクターにクローン化して融合タンパク質を生成することができる。融合タンパク質の単離が容易になるように、ポリペプチドタグである融合パートナーを選択することができる。融合キャリアは、宿主プロテアーゼによって調整因子の分解を防止することができるか、融合パートナーはさらに、封入体、周辺質、外膜、または細胞外環境へ融合ペプチドを輸送するように機能することができる。したがって、本発明は、スフィンゴモナスにおけるエキソポリサッカリド生合成を変化させることができる融合タンパク質として発現される少なくとも1つのポリペプチドをコードする配列番号1または3に記載の核酸分子またはその変種に作動可能に連結された少なくとも1つのプロモーターを含む組換え発現ベクターを意図する。典型的には、エキソポリサッカリド生合成の調整因子に融合したタンパク質部分は第2の核酸配列によってコードされ、好ましくは、本明細書中に記載され、且つ当分野で公知のように、第2の核酸配列は、ポリペプチドタグまたは酵素をコードする。ある実施形態では、発現ベクターのプロモーターは、好ましくは、調節されており、ある実施形態では、ベクターは、好ましくは、スフィンゴモナス、シュードモナス、またはザントモナスで複製するプラスミドである。好ましい実施形態では、プラスミドは、配列番号1(X029、ATCC PTA−5127)または配列番号3を含むpRK311である。
本明細書中で使用される、「宿主細胞」は、クローニングベクターまたは核酸発現構築物のいずれかを含む任意の原核細胞または真核細胞をいう。この用語には、宿主細胞の染色体またはゲノム中にクローン化された核酸配列を含むように組換え操作された原核細胞または真核細胞も含まれる。好ましくは、宿主細胞は、原核細胞、より好ましくは細菌、さらにより好ましくはスフィンゴモナス、ザントモナス、またはシュードモナスである。スフィンゴモナスが最も好ましい。一定の好ましい実施形態では、宿主細胞は、ゲラン、ウェラン、ラムサン、ジウタン、アルカラン、S7、S88、S198、およびNW11を産生するスフィンゴモナス種などのスフィンガン産生細菌である。1つの実施形態では、本発明は、プラスミドX029(ATCC PTA−5127)を含むα027などの宿主細胞スフィンゴモナスを提供する。別の実施形態では、宿主細胞はザントモナスである。
増強されたエキソポリサッカリドの生合成
本発明の別の態様によれば、エキソポリサッカリドを過剰産生することができる細菌を同定および単離する方法を提供する。特に、エキソポリサッカリド生合成の調整因子を使用して、エキソポリサッカリド生合成の調整因子にもはや応答しないエキソポリサッカリド産生細菌を同定することができる。例えば、エキソポリサッカリドを産生する細菌のコロニーは、寒天プレート上に粘液性の外見を有する一方で、非産生細菌は非粘液性の外見を有する。エキソポリサッカリド産生細菌へのエキソポリサッカリド生合成の調整因子をコードする組換え発現ベクターの移入により、エキソポリサッカリド発現が抑制され、これは、細菌が寒天プレート上に非粘液性の外見を有することを意味する。これらの抑制された株を、エキソポリサッカリド生合成の調整因子の存在下でさえもエキソポリサッカリドを発現することができる自発的変異体または誘導性変異体についてスクリーニングすることができる。
ある実施形態内で、粘液形態のエキソポリサッカリド産生のための抑制された細菌を変異誘発物質と接触させる工程であって、
前記細菌が、
(i)エキソポリサッカリド産生を変化させることができる少なくとも1つのポリペプチドをコードする核酸分子に作動可能に連結された少なくとも1つのプロモーターを含む組換え発現ベクターを含み、かつ前記細菌が、
(ii)エキソポリサッカリド産生が抑制されるように(i)のポリペプチドを発現する
工程と、
エキソポリサッカリド産生を抑制することができるポリサッカリドの存在下で粘液形態のエキソポリサッカリドを高産生することができる細菌をこれらの細菌から同定する工程とを含む、粘液形態のエキソポリサッカリドを高産生することができる細菌の作製方法を提供する。
用語「高産生」は、第1の細菌株が直接または間接的に由来する第2の株よりも統計的に有意により大量のエキソポリサッカリドを産生する第1の細菌株の能力をいう。第1の細菌株が1サイクルの変異誘発および/または第2の株の選択から得られる場合、第1の細菌株は、第2の細菌株に「直接由来する」。第1の株が多サイクルの変異誘発および/または第2の株の選択から得られる場合、第1の細菌株は、第2の細菌株に「間接的に由来する」。
1つの好ましい実施形態では、変異誘発物質(a)と、粘液形態のエキソポリサッカリドを産生することができる細菌(b)とを接触させる工程(A)であって、
前記細菌が、
(i)少なくとも1つのポリペプチドをコードする核酸分子に作動可能に連結された少なくとも1つのプロモーターを含む組換え発現ベクターを含み、前記核酸分子がエキソポリサッカリド産生を変化させることができる少なくとも1つのポリペプチドをコードし、ならびに、
前記細菌が、
(ii)変異誘発された細菌を産生する条件下で産生に充分な時間エキソポリサッカリド産生が抑制されるように(i)の前記少なくとも1つのポリペプチドを発現する工程(A)と、
前記変異誘発された細菌の間で、粘液形態のエキソポリサッカリドを高産生することができる1つまたは複数の細菌を同定する工程(B)とを含む、粘液形態のエキソポリサッカリドを高産生することができる細菌の作製方法を提供する。
一定の好ましい実施形態では、細菌は、S−60、S−7、S130、S−7、S−194、S−198、およびNW11などのスフィンゴモナスであり、変異誘発物質は、例えば、スルホン酸エチルメタン(EMS)、N−メチル−N’−ニトロ−ニトロソグアニジン(MNNG)または当分野で公知の別の適切な変異誘発物質である。別の好ましい実施形態では、エキソポリサッカリド生合成の調整因子は、配列番号1または3によってコードされ、好ましくは、配列番号2または4のアミノ酸配列をコードする配列を含む核酸分子によってコードされる。1つの特に好ましい実施形態では、親細菌はスフィンゴモナスα027であり、もはやエキソポリサッカリド生合成の調整因子に応答しないα027の変異体はスフィンゴモナスα062(ATCC PTA−4426)である(より詳細には、実施例を参照のこと)。別の実施形態では、親細菌はザントモナス・キャンペストリスX59であり、もはやエキソポリサッカリド生合成の調整因子に応答しないX59の変異体はザントモナス・キャンペストリスα449(ATCC PTA−5064)である。好ましくは、変異株は、(統計的に有意な様式で)親株よりも多くのエキソポリサッカリドを産生する(少なくとも約10%〜約20%多い、好ましくは少なくとも約20%〜約30%多い、より好ましくは少なくとも約30%〜約40%多いなど)。
エキソポリサッカリドの産生
本発明の別の態様は、エキソポリサッカリド産生の増強に関する。例えば、スフィンガンエキソポリサッカリドを産生するために、遺伝子操作したスフィンゴモナス細菌を、一般にU.S.Patent No.5,854,034に記載の当分野で周知の適切な発酵条件下で培養する。簡単に述べれば、遺伝子操作したスフィンゴモナスの培養に適切な培地は、一般に、例えば、炭水化物(グルコース、ラクトース、スクロース、マルトース、またはマルトデキストリンが含まれる)などの炭素源;例えば、無機アンモニウム、無機硝酸塩、有機アミノ酸、または加水分解酵母、ダイズ粉、もしくはカゼインなどのタンパク性材料;蒸留可溶性成分(distiller’s solubles)またはコーンスティープリカー;無機塩およびビタミンを含む水性培地である。広範な種々の発酵培地が、本発明のスフィンガンの細菌産生を支える。炭水化物は、発酵培養液中に種々の量で含まれるが、通常、発酵培地の約1重量%と約5重量%との間である。炭水化物を、発酵前または発酵中に同時に添加することができる。窒素量は、水性培地の約0.01重量%〜約0.2重量%の範囲であり得る。単一の炭素源または窒素源ならびにこれらの供給源の混合物を使用することができる。無機塩のうち、スフィンゴモナス発酵で使用されるものは、ナトリウムイオン、カリウムイオン、アンモニウムイオン、硝酸イオン、カルシウムイオン、リン酸イオン、硫酸イオン、塩化物イオン、炭酸イオン、および類似のイオンを含む塩である。マグネシウム、マンガン、コバルト、鉄、亜鉛、銅、モリブデン、ヨウ化物、およびホウ酸塩などの微量金属も有利に含み得る。ビオチン、葉酸塩、リポ酸塩、ナイアシンアミド、パントテン酸、ピリドキシン、リボフラビン、チアミン、およびビタミンB12、およびその混合物などのビタミンも有利に使用することができる。
一般に、約25℃と35℃との間(およびこれらが含まれる)の温度で発酵を行うことができ、約28℃〜32℃の温度範囲内(およびこれらが含まれる)で至適な生産性を得られる。接種材料を、標準的な体積増加法(フラスコ培養物の震盪および少量の撹拌液中発酵が含まれる)によって調製する。接種材料を調製するための培地は、産生培地と同一であり得るか、Luria培養液またはYM培地などの当分野で周知のいくつかの標準的な培地のうちのいずれか1つであり得る。種培養物中の炭水化物濃度を、約1重量%未満に減少させることができる。1つを超える播種期を使用して、所望の接種体積を得ることができる。典型的な接種体積は、全最終発酵体積の約0.5%〜約10%の範囲である。発酵容器は、典型的には、内容物を撹拌するための撹拌機を含む。容器はまた、自動pH制御機器および発泡制御機器を有し得る。容器に産生培地を添加し、加熱によって適切に滅菌する。あるいは、炭水化物または炭素源を添加前に個別に滅菌することができる。予め成長させた種培養物を、冷却した培地(一般に、約28℃〜約32℃の発酵温度)に添加し、撹拌培地を約48時間〜約96時間発酵させ、約15,000センチポアズ(cp)〜約20,000cpの粘度を有し、約10〜約15g/Lの粘液形態のスフィンガンエキソポリサッカリドを有する培養液が得られる。対応する親スフィンゴモナス株の発酵により、典型的には、約25,000cp〜約50,000cpの粘度を有する培養液が得られる。
この態様では、本発明は、浸漬し、撹拌し、曝気した液体培養で成長させたスフィンゴモナスまたはザントモナスから得た粘液形態のエキソポリサッカリドを提供する。培養24時間後の液体培養物中の溶存酸素濃度は、好ましくは、水の約5%飽和を超える。カプセル化株を使用した類似の発酵では、24時間後の溶存酸素は0%であった。粘液形態のエキソポリサッカリドによって得られたより低い粘度によって曝気が改良され、より長い期間の培養でスフィンゴモナスに産生力を持たせることが可能である。本発明の別の態様では、ある発酵由来の細菌をその後の発酵の接種材料として使用する半バッチプロセスで発酵を行うことができる。この態様では、例えば、産生されるエキソポリサッカリドから分離したスフィンゴモナスを、新鮮な発酵培養液に添加することができるか、新鮮な発酵培養液を残存するスフィンゴモナスに添加することができる。したがって、本発明の態様は、個別の種培養物を準備する必要がない。
エキソポリサッカリドの回収は、その産生のために使用した条件に関係なく、好ましくは、沈殿工程を含む。次いで、沈殿したエキソポリサッカリドを、遠心分離によって回収することができる。ゲランおよびウェランの典型的な回収方法は以下である。発酵直後、培養液を少なくとも90℃に加熱して生きている細菌を死滅させる。次いで、エキソポリサッカリドを、約2体積(すなわち、培養体積に等しい)のイソプロピルアルコールでの沈殿によって培養液から分離し、沈殿したエキソポリサッカリド繊維を回収し、圧縮し、乾燥させ、粉砕する。蒸留によってアルコールを除去する。この最も簡潔な過程では、ポリサッカリドは細胞に付着したままであり、その結果、乾燥および粉砕したポリサッカリドを水に再懸濁した場合、溶液は透明ではない。ゲランガムの場合、再懸濁した生成物がより透明になるように細菌細胞からポリサッカリドを精製するためのさらなる工程を導入することができる。アルコール沈殿前に、培養液を遠心分離および/もしくは濾過またはその両方を行う一方で、遠心分離または濾過することができる高粘性状態と液化状態との間の臨界遷移温度を超えた温度で維持する。異なるスフィンガンについてのこれらの過程は、例えば、U.S.Patent No.4,326,052(ゲラン);U.S.Patent No.4,326,053(ゲラン);U.S.Patent No.4,342,866(ウェラン);U.S.Patent No.3,960,832(S−7);およびU.S.Patent No.4,535,153(S−88)に開示されている。
ある実施形態では、本発明は、エキソポリサッカリドを産生する条件下で産生に充分な時間細菌を培養する工程であって、前記細菌が、エキソポリサッカリド産生を変化させることができる核酸分子によってコードされる少なくとも1つのポリペプチドを発現する場合に粘液形態のエキソポリサッカリドを高産生する工程と、前記培養物から粘液形態の前記エキソポリサッカリドを分離する工程とを含む、エキソポリサッカリドを高産生する方法を提供する。好ましくは、細菌は、スフィンゴモナス(ゲラン、ウェラン、ラムサン、ジウタン、アルカラン、S7、S88、S198、またはNW11を産生するものなど)、より好ましくは、スフィンゴモナスα062株(ATCC PTA−4426)、α063株、α065株、およびα069株である。好ましい実施形態では、培養は発酵によって行われ、細菌は、培養物1リットルあたり約5g〜約80g、より好ましくは約10g〜約70g、さらにより好ましくは約20g〜約60gのエキソポリサッカリドを産生する。至適な発酵条件は、約25℃〜約35℃の温度範囲で約48時間〜約96時間である。好ましくは、エキソポリサッカリドを、アルコール沈殿によって分離し、好ましくは、約1〜約1.5倍体積のアルコールを培養物に添加する。好ましくは、発酵培養物の最終粘度は、約5,000cp〜約40,000cp、より好ましくは約10,000cp〜約35,000cp、最も好ましくは約15,000cp〜約30,000cpの範囲である。
本明細書中で言及し、そして/または出願データシートに列挙した上記の全米国特許、米国特許出願公開、米国特許出願、外国特許、外国特許出願、および非特許刊行物は、その全体が本明細書中で記載されているかのように本明細書中で参照して組み込まれる。
白色高グルコース耐性スフィンゴモナスの準備
スフィンゴモナスX287(ATCC PTA−3487)を使用して、125mlのバッフル付きフラスコ中の1%または5%グルコースを含む1/4YM−に震盪することなく30℃で2週間接種した。このような拡大インキュベーション後に培養物を1/4YM+プレートに塗布した場合、エキソポリサッカリド陰性変異体は認められなかった。同一の培養物を、10%グルコースを有する1/4YMのプレート上に塗布した。単離コロニー(83)を選択し、これを使用して3%グルコースを有する2ml 1/4YMに接種し、300rpmで震盪しながら30℃で40時間インキュベートした。これらの培養物を、高グルコースプレート上に塗布し、12コロニーを選択し、X729〜X741として保存した。これら12の変異体のうちの6つは、視覚的に白色の変異体であった。
コロニーを使用して、小さなチューブ中の2ml YM−に接種し、300rpmにて30℃で24時間震盪した(種−1と呼ぶ)。100μlのこれらの培養物を使用して、5ml B10G3に接種し、培養物を斜めに配置し、300rpmで24時間インキュベートした(種−2と呼ぶ)。次いで、5mlの種−2を125ml バッフル付きフラスコ中の20ml B10G3に添加し、最初の17時間は200rpmで震盪しながらインキュベートし、その後の46時間までを400rpmでインキュベートした。10gの最終培養液を、2.0倍体積のイソプロピルアルコール(IPA)によって室温で沈殿させた。サンプルを、60℃の減圧下にて2時間乾燥させた。
X733株が125ml バッフル付きフラスコに接種され、48時間インキュベートされた。1/4YM+プレート上に塗布した培養液が粘液形態−カプセル形態のコロニーおよび少数の黄色のコロニーを生成した。変色指示薬は、いくらかの範囲での変異安定性を予想するためのヒントを示す。白色粘性コロニーの1つを選択し、X996として保存した。
0.1%のX996を接種し、500ml バッフル付きフラスコを使用して、3%および6%グルコースを含む100mlのB10中にて160rpmで24時間培養した。
接種率が低い場合、このX996変異体を再現可能に培養することは困難であった。この変異体は、高速振盪下でインキュベートした場合、充分に成長しなかった。
このX996を、125m バッフル付きフラスコを使用して、7%グルコースを補足した30mlのB10培地中で30時間インキュベートした。
接種率が低いとX996細胞成長は抑制された。この培養培地を、振盪することなく室温で1週間保存した。次いで、培養物を、1/4YM 10%グルコースプレート上に塗布した。スフィンゴモナスα016〜α018を、高グルコース含有1/4YMプレート上で単離した。
もはやSpsNに応答しないスフィンゴモナスの同定
本実施例は、以下の工程によってスフィンガンおよびキサンタンの生合成を抑制するDNA配列の同定を記載する:(1)スフィンゴモナスS−88ゲノムDNAの発現ライブラリーの作製、(2)発現ライブラリーのスフィンゴモナスS−7への形質転換、および(3)スフィンゴモナスS−7におけるエキソポリサッカリドS−7産生の抑制についてのスクリーニング(すなわち、プレート上に細菌培養物を塗布し、コロニーについて非粘液性の外見を観察する)。プライマー(配列番号5(22量体)ならびに配列番号6および7(それぞれ、26量体および27量体))を作製し、テンプレートZ964(Z939(pRK311−s88nc2、2.7Kb)由来のフラグメントであるpBluescriptKS−BH,716bp)と共に使用して、特に機能的spsNをコードする573塩基対のフラグメントを産生した。573塩基対のPCRフラグメント(配列番号1)を、プラスミドpRK311にクローン化し、2つの独立したクローン(X026およびX029)を以下のようにさらに試験した。
X025=pRK311−MPG(385bp、22量体〜26量体);X026=pRK311−MPG+SpsN(573bp、22量体〜27量体);X028=pRK311−MPG(385bp、22量体〜26量体);X029=pRK311−MPG+SpsN(573bp、22量体〜27量体);Z959−1〜−3=pRK311−s88nc2 EH2700bp spsN::Tn10Knを有する独立クローン;Z967=pRK311−BH716bp;+は、トランス抱合体(transconjugant)が選択培地上にエキソポリサッカリドを産生することを意味し、−は、トランス抱合体(transconjugant)が選択培地上にエキソポリサッカリドを産生しないことを意味する。
これらの結果は、SpsNをコードする核酸分子(例えば、X029)がスフィンゴモナスS−7、S−130、S−194、S−198、S−88、NW11、およびザントモナスX59におけるポリマー合成を阻害することができることを実証する。
配列決定したアンプリコンの分析から、spsN(エキソポリサッカリド生合成の調整因子)を、DAHPS(3−デオキシ−D−アラビノ−ヘプツロン酸−7−リン酸シンターゼ)の下流に配置した。DAHPSは、芳香族アミノ酸の生合成を制御する。活性なPCR産物を、pRK311にクローン化し、これをX029(pRK311−spsN、Tetr)と呼ぶ。配列番号1を含むこの発現ベクターが、スフィンゴモナスα016に抱合され、これをα027と命名し、ポリマー産生表現型が抑制されている。次いで、このα027をEMSで処理して、変異体が薬物圧(drug pressure)Tet下(すなわち、X029の存在下で、エキソポリサッカリド生合成の調整因子(Spsn)をコードする)でエキソポリサッカリド陽性表現型を示すことが見出された。これらの条件下で、いくつかのエキソポリサッカリド陽性表現型は、SpsNまたはほかの場所の変異に起因し得る。プラスミドX029(すなわち、SpsNをコードする)を除去するための無薬物条件下での選択後、α061株〜α076株を選択し、さらなる試験(例えば、バイオマス産生)のために保存した。これらの株を、5%グルコースを含む4ml B10培地を含むガラス管中で24時間培養した。次いで、3mlのこの培養物を、125ml バッフル付きフラスコ中の3%グルコースを含む25ml B10培地に300rpmで48時間接種した。2倍体積のIPAによって、各フラスコから10gの培養液が沈殿した。沈殿物を、60℃で6時間乾燥させた。
2ml培養物を、125ml中の5%グルコースを含む30ml B10種培地に接種した。これを、200rpmで40時間インキュベートし、300rpmで72時間までインキュベートした。
以下の表は、変異体(すなわち、α062、α063、およびα065)が元のX287粘液変異体よりも20%を超えるバイオマスを産生したことを示す。
培養培地の成分は以下であった。
もはやSpsNに応答しないスフィンゴモナス株とその親株との間のエキソポリサッカリド産生の比較
元の粘液株であるX287株およびα016株を、いくつかの42L発酵試験下で変異α062と比較した。これらの実験のための1%出発培養液として400mlの24時間フラスコ培養物を調製した。ATCC31464株(X287の親)を、カプセル形成ゲラン野生型株として使用した。
培養液を、2倍体積のIPAによって沈殿させ、その後、60℃で6時間乾燥させた。最終粘度は、4〜12rpmであった。
発酵スコア(バイオマス収率)は以下である。
α062の培養液(G158)を、ATCC31461の培養液(G157)と比較した。結果を、以下の表に示す。
もはやSpsNに応答しないザントモナスの同定
X029(ATCC PTA−5127)中に生体高分子抑制因子を含むDNA配列を、交配によってザントモナス・キャンペストリスX55(ATCC13951)およびX59(ATCC55298)にトランス抱合(transconjugated)した。ポリマー産生抑制コロニーを、テトラサイクリン含有選択プレート上で、α287、α300、およびα301として単離した。
このキサンタンガム産生抑制α300(X59:X029)トランス抱合体を、化学的変異誘発物質EMSで処理した。薬物圧下でさえも抑制因子X029に応答しない変異コロニーが最初に単離され、次いで、薬物感受性変異体α449(ATCC PTA−5064)、α474、α485、α499、α501、α525、α526、α544を、無薬物圧下で選択して、X029抑制因子を除去した。これらの変異体を、125ml バッフル付きフラスコを使用して、26ml YM+3&グルコース培地中で48時間インキュベートした。これらの変異体の性能を、以下の表に示した。
α449およびα501は、同レベルの生細胞数でさえも32時間で親X59のバイオマスよりも10〜20%大量のバイオマスを生成した。これは、変異体のポリマー蓄積速度が親X59よりも速いことを示す。
図1は、α449培養物の生細胞数とOD600との間の関係を示す。至適種培養物を達成するために、次の産生発酵段階のために、OD600値に基づいて細胞数を最大にした。
図2は、SEB−022−SF+MSP培地を使用したα449 42L産生発酵を示す。白丸は、6L発酵槽におけるSEB−022−SF−MSP培地でのX59またはα449の発酵由来のキサンタンガム産生を示し、黒丸は、70L発酵槽におけるSEB−022−SF+MSP(「SFM」とも呼ばれる)を使用したα449発酵のバイオマス(細胞およびキサンタンガムが含まれる)を示し、三角は、ATCC13951の発酵由来のキサンタンガム産生を示す。図2中のATCC13951発酵のデータは、Letisse et al.,Applied Microbiology and Biotechnology 55(4):417−22,2001に由来する。MSPは、消化ダイズタンパク質をいう。
80g/Lスクロースの最終産生収率は、57.3g/Lであった。この変異体は、28℃、溶存酸素30%、およびpH6.5の条件下で抑制因子X029に応答せず、より高いレベルのキサンタンガムを蓄積した。
α449の400ml種培養物を、SEB−022−SF+MSP(スクロース=80g/L)培地に接種し、70L発酵槽を使用して70時間インキュベートした。この培地は、0.69g/Lの総窒素(Soy由来の0.6g/LおよびMSP由来の0.09g/L)を含む。最終培養液のODは11.3であり、pHは6.55であり、生細胞数は2.0×1010/mlであった。最終培養液の粘度は、Brookfield粘度計による4番スピンドルを使用して、34,900cp/16,300cp/9,420cp−12rpm/30rpm/60rpmであった。
本実施例で使用したSEC−022−SF+MSP培地の成分は以下である。
本実施例で使用したSEC−022−SF−MSP培地の成分は以下である。
スフィンゴモナスα449株の培養物の生細胞数とOD600との間の関係を示す図である。 SEB−022−SF+MSP培地を使用したα449 42L産生発酵を示す図である。

Claims (35)

  1. 配列番号1に記載のヌクレオチド配列もしくは配列番号1の相補物またはこれらと少なくとも95%の同一性を保持するヌクレオチド配列を含み、前記核酸分子が、スフィンゴモナス種でのエキソポリサッカリド産生を抑制することができる少なくとも1つのポリペプチドをコードする、単離核酸分子。
  2. 前記少なくとも1つのコードされたポリペプチドが、配列番号2と少なくとも95%同一性のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の単離核酸分子。
  3. 前記少なくとも1つのコードされたポリペプチドが、アミノ酸が保存的に置換された配列番号2のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の単離核酸分子。
  4. 前記少なくとも1つのポリペプチドが、配列番号2のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の単離核酸分子。
  5. 前記核酸分子がDNAまたはRNAである、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の単離核酸分子。
  6. 請求項1に記載の核酸分子に作動可能に連結された少なくとも1つのプロモーターを含む組換え発現ベクター。
  7. 前記少なくとも1つのポリペプチドが、第2の核酸配列によってコードされたポリペプチド産物を含む融合タンパク質として発現される、請求項6に記載の組換え発現ベクター。
  8. 前記第2の核酸配列が、ポリペプチドタグまたは酵素をコードする、請求項7に記載の組換え発現ベクター。
  9. プラスミドX029(ATCC PTA−5127)である、請求項6に記載の組換え発現ベクター。
  10. 配列番号1に記載のヌクレオチド配列を含む核酸分子に作動可能に連結された少なくとも1つのプロモーターを含む組換え発現ベクター。
  11. 請求項6から請求項10のいずれか一項に記載の組換え発現ベクターを含む宿主細胞。
  12. 前記宿主細胞が原核細胞である、請求項11に記載の宿主細胞。
  13. 前記原核細胞がスフィンゴモナス細胞である、請求項12に記載の宿主細胞。
  14. 前記宿主細胞がスフィンガン産生細菌である、請求項11に記載の宿主細胞。
  15. 前記スフィンゴモナス細胞が、ゲラン、ウェラン、ラムサン、ジウタン(diutan)、アルカラン(alcalan)、S7、S88、S198、およびNW11からなる群から選択されるスフィンガンを産生することができる、請求項13に記載の宿主細胞。
  16. 前記スフィンガンが、カプセル形態または粘液形態で産生される、請求項14または請求項15に記載の宿主細胞。
  17. 前記スフィンガン産生細菌が、スフィンゴモナスα252株(ATCC PTA−5128)、X287株(ATCC PTA−3487)、X530株(ATCC PTA−3486)、Z473株(ATCC PTA−3485)、またはX031株(ATCC PTA−3488)である、請求項14に記載の宿主細胞。
  18. 前記宿主細胞がキサンタン産生細菌である、請求項11に記載の宿主細胞。
  19. 前記キサンタン産生細菌が、ザントモナスX59株(ATCC 55298)またはX55株(ATCC 13951)である、請求項18に記載の宿主細胞。
  20. 前記少なくとも1つの発現したポリペプチドまたは融合タンパク質が、前記宿主細胞中のエキソポリサッカリド産生レベルを抑制する、請求項11に記載の宿主細胞。
  21. 請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の核酸分子およびその混合物によってコードされたポリペプチドを発現する場合、粘液形態のエキソポリサッカリドを産生することができる、スフィンゴモナスα062株(ATCC PTA−4426)単離細菌。
  22. 請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の核酸分子およびその混合物によってコードされたポリペプチドを発現する場合でさえも、粘液形態のエキソポリサッカリドを産生することができる、ザントモナスα449株(ATCC PTA−5064)単離細菌。
  23. 細菌培養においてエキソポリサッカリドを産生する条件下で産生に充分な時間スフィンゴモナスα062株(ATCC PTA−4426)を培養する工程であって、前記スフィンゴモナスα062株(ATCC PTA−4426)が、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の核酸分子によってコードされたポリペプチドを発現する場合でさえも粘液形態のエキソポリサッカリドを高産生する工程と、
    前記培養物から粘液形態の前記エキソポリサッカリドを分離する工程と
    を含む、エキソポリサッカリドを高産生する方法
  24. 細菌培養においてエキソポリサッカリドを産生する条件下で産生に充分な時間ザントモナスα449株(ATCC PTA−5064)を培養する工程であって、前記ザントモナスα449株(ATCC PTA−5064)が、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の核酸分子によってコードされたポリペプチドを発現する場合でさえも粘液形態のエキソポリサッカリドを高産生する工程と、
    前記培養物から粘液形態の前記エキソポリサッカリドを分離する工程と
    を含む、エキソポリサッカリドを高産生する方法
  25. 前記培養が発酵工程を含む、請求項23または24のいずれか一項に記載の方法。
  26. 前記細菌が、培養物1リットルあたり20gから60gのエキソポリサッカリドを産生する、請求項25に記載の方法。
  27. 前記発酵を、25℃〜35℃の範囲の温度で48時間〜96時間行う、請求項25に記載の方法。
  28. 前記エキソポリサッカリドの分離が、前記培養物に1〜1.5培養体積のアルコールを添加する工程を含む、請求項25に記載の方法。
  29. 前記発酵培養物の粘度が、15,000cp〜40,000cpの範囲である、請求項28に記載の方法。
  30. 変異誘発物質(a)と粘液形態のエキソポリサッカリドを産生することができる細菌(b)とを接触させる工程(A)であって、前記細菌が、
    (i)少なくとも1つのポリペプチドをコードする核酸分子に作動可能に連結された少なくとも1つのプロモーターを含む組換え発現ベクターを含むことと、前記核酸分子が請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のヌクレオチド配列であり、かつ前記細菌が、
    (ii)変異誘発された細菌を産生する条件下で産生に充分な時間エキソポリサッカリド産生が抑制されるように(i)の少なくとも1つのポリペプチドを発現する工程(A)と、
    前記変異誘発された細菌の間で、粘液形態のエキソポリサッカリドを高産生することができる1つまたは複数の細菌を同定する工程(B)と
    を含む、粘液形態のエキソポリサッカリドを高産生することができる細菌の作製方法。
  31. 前記細菌が、ゲラン、ウェラン、ラムサン、ジウタン、アルカラン、S7、S88、S198、およびNW11からなる群から選択されるエキソポリサッカリドを産生することができるスフィンゴモナス細菌である、請求項30に記載の方法。
  32. 前記細菌がザントモナス細菌である、請求項30に記載の方法。
  33. 請求項30又は請求項31に記載の方法によって産生された細菌。
  34. スフィンゴモナスα062株(ATCC PTA−4426)。
  35. ザントモナスα449株(ATCC PTA−5064)。
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