JP4615234B2 - 水中溶存ホウ素の不溶化分離方法、ホウ素溶存廃水の無害化方法及びホウ素資源の回収方法 - Google Patents

水中溶存ホウ素の不溶化分離方法、ホウ素溶存廃水の無害化方法及びホウ素資源の回収方法 Download PDF

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Description

本発明は、水中溶存ホウ素の不溶化分離方法、ホウ素溶存廃水の無害化方法及びホウ素資源の回収方法に関する。更に詳しくは、本発明は、水中溶存ホウ素を不溶化(不溶性の複合酸化物に変換)して分離すると言う、従来は報告されていない新規手段により、ホウ素溶存廃水の毒性問題を解決し、更にはホウ素を有用鉱物資源として回収する方法に関する。
ホウ素は、Nd-Fe-B 磁石やガラス産業、メッキ産業等に広く用いられており、これらの産業におけるホウ素化合物全体の消費量はこの10年間で約25%増加している。そして、これらの産業から排出されるホウ素含有廃棄物は、一般的にホウ酸を含む廃水の形態である
ホウ酸は、ヒトに対して経口にてほぼ完全に吸収され、ヒトの生殖能及び発生に対して、精巣の萎縮、精細管上皮の萎縮、精細管の縮小、肋骨の無発生、心室中隔欠損、大動脈拡大、産前死亡率の上昇等の様々な悪影響を及ぼす。このため、近年、ホウ素の排水基準値及び環境基準値がそれぞれ10ppm及び1ppmと制定され、ホウ素溶存廃水の処理が重要視されるようになって来た。
一方、ホウ素を含む全ての鉱物は、三方晶系や正四面体のホウ素原子の混合物を含有する無機ホウ酸塩である。自然界に存在するこれらのホウ酸塩から様々な市販ホウ素含有製品が生産されるが、その98%もホウ酸塩である。現在採掘されているホウ素含有鉱物は、主としてアルカリ土類金属の無機ホウ酸塩である。市販用として重要なホウ酸塩の一覧を下記の「表1」に示す。
Figure 0004615234
ホウ素含有鉱物は世界中に広く分布しているが、採算が取れる程の埋蔵量がある鉱床は比較的まれであり、世界のホウ素資源の80%以上がトルコ、アメリカ合衆国及びロシアの3ケ国にて生産されている。そして我が国ではホウ素資源のほぼ100%を輸入に頼っている。従って、特に我が国においては、国内で排出されるホウ素含有廃棄物からホウ素を回収・再利用する技術を確率することは、循環型社会を目指す上でも、急務である。
従来、水中に溶存しているホウ素(ホウ酸)を分離、除去あるいは回収する方法としてイオン交換樹脂法、凝集沈殿法及び溶媒抽出法が知られている。イオン交換樹脂法とは、廃水中に溶解している多様な形態のホウ酸イオンをイオン交換樹脂により捕捉・除去・回収し、廃水中のホウ素濃度を低減させる方法である。凝集沈殿法とは、ホウ酸イオンを含む廃水中にカルシウム系又はアルミニウム系の沈殿凝集剤を大量に投入し、沈殿凝集剤中にホウ素を取り込み共沈させる方法である。溶媒抽出法とは、脂肪族ジオール等の抽出剤を用い、ホウ酸をエステルとして抽出する方法である。
下記の特許文献1にはイオン交換樹脂法の一例が、下記の特許文献2には凝集沈殿法の一例が、下記の特許文献3には溶媒抽出法の一例が、それぞれ開示されている。
特開平9−314130号公報 特開2003−236562号公報 特開平10−249330号公報
しかしながら、イオン交換樹脂法では、大量のイオン交換樹脂を必要とするため、非常に高コストになると言う問題があった。凝集沈殿法では、ホウ素の回収率が低く、しかも回収した大量の沈殿を再利用できないために汚泥処理の問題を生じていた。溶媒抽出法では、廃水に対する抽出剤の溶解により、新たな水質汚染の問題や抽出剤の損失コストの問題を生じていた。
本願発明者は、以上のような従来技術の諸問題から、結局のところ、廃水中にホウ酸として溶解しているホウ素を難溶性ないしは不溶性の化合物として沈殿させることにより分離、除去あるいは回収する技術が必要であると考えた。
しかし、水中溶存ホウ素は低pH域ではBO 3− 、高pH域ではB(OH)4−として存在し、更に濃度によってもその形態が変化して高濃度域ではポリマーが形成される。このような点もあって、従来、水中溶存ホウ素を難溶性/不溶性の化合物として沈殿させる手法は報告されていない。
そこで本発明は、簡易な手段によって水中溶存ホウ素を難溶性ないしは不溶性の化合物として沈殿させ、その結果としてホウ素溶存廃水の無害化及びホウ素の鉱物資源としての回収を可能とすることを、解決すべき課題とする。
(第1発明の構成)
上記課題を解決するための本願第1発明の構成は、ホウ素が溶解している水媒体に対してアルカリ土類金属の水酸化物を添加し、もしくは更にリン酸イオンを供給したもとで、亜臨界条件の温度下及び圧力下での水熱処理を行ってホウ素とアルカリ土類金属との不溶性複合酸化物を生成させることにより、前記水媒体からホウ素を分離する、水中溶存ホウ素の不溶化分離方法である。
上記第1発明において、温度及び圧力の「亜臨界条件」とは、臨界点(水の場合は374°C、22.12MPa)以下の温度と圧力の条件を言う。
(第2発明の構成)
上記課題を解決するための本願第2発明の構成は、前記第1発明に係るアルカリ土類金属が2価のアルカリ土類金属である、水中溶存ホウ素の不溶化分離方法である。
(第3発明の構成)
上記課題を解決するための本願第3発明の構成は、前記第2発明に係る2価のアルカリ土類金属がカルシウムである、水中溶存ホウ素の不溶化分離方法である。
(第4発明の構成)
上記課題を解決するための本願第4発明の構成は、前記第1発明〜第3発明のいずれかに係る水媒体に対するリン酸イオンの供給が、リン酸又は可溶性リン酸塩の添加によって行われる、水中溶存ホウ素の不溶化分離方法である。
(第5発明の構成)
上記課題を解決するための本願第5発明の構成は、前記第1発明〜第4発明のいずれかに係る亜臨界条件の温度が50°C〜250°Cの範囲内の温度であり、亜臨界条件の圧力が常圧〜4MPaの範囲内の圧力である、水中溶存ホウ素の不溶化分離方法である。
(第6発明の構成)
上記課題を解決するための本願第6発明の構成は、前記第1発明〜第5発明のいずれかに係る水媒体が、ホウ素と他の1種以上の有用元素とを含有する希土類焼結磁石のスクラップを酸の存在下で水熱処理した処理液に由来するものである、水中溶存ホウ素の不溶化分離方法である。
(第7発明の構成)
上記課題を解決するための本願第7発明の構成は、ホウ素が溶解している水媒体に対して第1発明〜第6発明のいずれかに係る水中溶存ホウ素の不溶化分離方法を行うことにより、その水媒体を、少なくともホウ素に基づく毒性に関して無害化する、ホウ素溶存水媒体の無害化方法である。
(第8発明の構成)
上記課題を解決するための本願第8発明の構成は、ホウ素が溶解している水媒体に対して第1発明〜第6発明のいずれかに係る水中溶存ホウ素の不溶化分離方法を行うことにより、その水媒体から前記不溶性複合酸化物を有用鉱物資源として回収する、ホウ素資源の回収方法である。
(第1発明の効果)
本願発明者は、水中溶存ホウ素を難溶性ないし不溶性の化合物として沈殿させる簡易な手法の開発を試みる過程で、自然界に見られるホウ素鉱物の生成過程に熱水が深く関わっている点から、水中溶存ホウ素に対する水熱処理に着眼した。更に、鉱床から採掘されている代表的なホウ素含有鉱物が、前記の表1に示すように、主としてアルカリ土類金属の無機ホウ酸塩であること、換言すればホウ素とアルカリ土類金属の複合酸化物である点にも着眼した。
そして、これらの着眼点に基づいて種々の試行錯誤を重ねた結果、第1発明によって、ホウ素が溶解している水媒体からホウ素を不溶性複合酸化物として沈殿・分離させることに、初めて成功した。
第1発明における不溶性複合酸化物の生成及び沈殿のメカニズムについては、アルカリ土類金属の水酸化物として水酸化カルシウムCa(OH)を用いた場合を例にとると、図1に示すようなものであると考えられる。即ち、水媒体中にホウ酸イオンとして溶存するホウ素に対してCa(OH)を添加して、もしくは更にリン酸の存在下に、亜臨界状態で水熱処理を行うと、図1の中程に示す不溶性のカルシウム・ホウ素複合酸化物(Ca・HO)を微粒子として析出し、沈殿するので、容易に分離及び回収することができる。
第1発明の方法によれば、ホウ素が溶解している水媒体に対して必ず投入する資材は、アルカリ土類金属の水酸化物のみである。更に、亜臨界条件の温度及び圧力を実現できる水熱処理装置があれば足りる。アルカリ土類金属の水酸化物は安価に入手できるし、水熱処理装置も簡易かつ低コストに調達又は設計できる。又、水熱処理後に前記凝集沈殿法のような汚泥処理の問題を生じないし、前記溶媒抽出法のような水質汚染等の問題も生じない。
第1発明の方法において、必須の条件ではないが、更にリン酸イオンを供給することが好ましい。リン酸イオンの供給は、上記した不溶性複合酸化物を生成するために必要な条件ではなく、その回収率の向上のために好ましいが、水中溶存ホウ素が高濃度である場合にはリン酸イオンを供給しない方が良い。
更に、後述の実施例に示すように、第1発明に係る水中溶存ホウ素の不溶化分離方法を適正にプロセス設計した場合には、ホウ素濃度が500ppmの場合に99%、ホウ素濃度が3000ppmの場合に97%と言う極めて高い収率での水中溶存ホウ素の分離又は回収が可能である。
(第2発明の効果)
水酸化物として添加するアルカリ土類金属の種類は任意に選択することができるが、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)等の2価のアルカリ土類金属が特に好ましい。これらのアルカリ土類金属の水酸化物を添加すると、ホウ素を不溶性複合酸化物としてより良好に分離・回収できる。
(第3発明の効果)
水酸化物として添加する2価のアルカリ土類金属としては、カルシウムがとりわけ好ましく、即ち、カルシウムの水酸化物Ca(OH)を添加することが、とりわけ好ましい。
(第4発明の効果)
ホウ素が溶存する水媒体に対するリン酸イオンの供給は、一般的には、その水媒体に対してリン酸を投入し、又は可溶性のリン酸塩を投入すると言う形態で行うことができる。可溶性のリン酸塩としては、NaHPO、NaHPO、KHPO等を例示できる。
(第5発明の効果)
水熱処理における亜臨界条件の温度としては、50°C〜250°Cの範囲内の温度が好ましく、亜臨界条件の圧力としては、常圧〜4MPaの範囲内の圧力が好ましい。閉鎖系での水熱処理において、温度と圧力は相関するので、温度が決まれば圧力も決まる関係にある。温度(圧力)が上記範囲の下限値に満たないと、不溶性複合酸化物の生成速度が遅く、又は生成しない恐れがあり、温度(圧力)が上記範囲の上限値を超えると、不溶性複合酸化物の回収率が低下する恐れがある。
(第6発明の効果)
水熱処理に供する水媒体の種類は、ホウ素が溶解しており、そのホウ素の分離が望まれる水媒体である限りにおいて限定されない。このような水媒体の一例として、希土類焼結磁石のスクラップの処理液を挙げることができる。
希土類焼結磁石はリサイクル価値のある有用元素を含有している。例えば、ホウ素と他の1種以上の有用元素とを含有する希土類焼結磁石のスクラップを酸の存在下で水熱処理することにより、有用元素を沈殿として回収することができるが、その際にホウ素が溶存した処理液が残る。このような処理液は、本発明の好適な対象である。
(第7発明の効果)
第7発明においては、ホウ素が溶解している水媒体に対して第1発明〜第6発明のいずれかに係るホウ素の不溶化分離方法を行うので、その水媒体をホウ素の毒性に関して有効に無害化することができる。
この第7発明においても、投入資材及び処理装置の面からプロセスを簡易かつ低コストに実行可能であること、高い収率での水中溶存ホウ素の分離・排除が可能である点は、第1発明と同様である。
(第8発明の効果)
第8発明においては、ホウ素が溶解している水媒体に対して第1発明〜第6発明のいずれかに係るホウ素の不溶化分離方法を行うので、その水媒体からホウ素資源を有効に回収することができる。
この第8発明においても、投入資材及び処理装置の面からプロセスを簡易かつ低コストに実行可能であること、高い収率での水中溶存ホウ素の分離・排除が可能である点は、第1発明と同様である。
次に、本願の第1発明〜第8発明を実施するための形態を、その最良の形態を含めて説明する。以下において単に「本発明」と言う時は、本願の各発明を一括して指している。
〔水中溶存ホウ素の不溶化分離方法、ホウ素溶存水媒体の無害化方法及びホウ素資源の回収方法〕
本発明に係る水中溶存ホウ素の不溶化分離方法は、(1)ホウ素が溶解している水媒体に対してアルカリ土類金属の水酸化物を添加し、(2)もしくは更に、リン酸イオンを供給したもとで、(3)亜臨界条件の温度下及び圧力下での水熱処理を行ってホウ素とアルカリ土類金属との不溶性複合酸化物を生成させることにより、(4)水媒体からホウ素を分離する、方法である。
この方法は、第7発明のように、ホウ素が溶解している水媒体を、専らホウ素毒性に関して無害化する目的で行うこともできるし、第8発明のように、ホウ素が溶解している水媒体からホウ素を有用鉱物資源として回収する目的で行うこともできる。もちろん、上記の無害化とホウ素回収とを同時に達成する目的で行うこともできる。
このような方法の対象となる水媒体の種類は、ホウ素(ホウ酸イオン)が溶解しているものである限りにおいて、特段に限定されない。最も代表的な水媒体が、各種の産業活動の現場、例えばメッキ、ガラス、半導体、塗料・顔料、印刷、セラミックス等の産業活動の現場から排出される廃水である。
これらの廃水には、ホウ素のみが分離・回収のターゲットである廃水も包含されるし、第6発明の場合のように、ホウ素と他の幾つかの有毒及び/又は有用な元素が分離・回収のターゲットである廃水も包含される。後者の場合には、ホウ素以外のターゲット元素は、本発明とは異なる工程においてホウ素とは別途に分離・回収される場合があり得るし、本発明の工程においてホウ素と同時に分離・回収することができる場合もあり得る。
本発明の方法の対象となる水媒体は、必ずしも、廃棄を予定されている水媒体に限定されない。廃棄を予定されていない水媒体、例えばホウ素の精製又は抽出を目的とする水媒体等も、処理対象たる水媒体に包含される。
〔亜臨界条件下での水熱処理〕
本発明において、ホウ素が溶解している水媒体に対する水熱処理は、亜臨界条件の温度及び圧力下で行う。「亜臨界条件」の温度及び圧力とは、前記した定義のように、臨界点以下の温度及び圧力を言う。
水熱処理の条件としては、より具体的には、100°C〜250°Cの範囲内の温度、とりわけ130°C〜170°Cの範囲内の温度が好ましく、常圧〜4MPaの範囲内の圧力、とりわけ0.25MPa〜0.8MPaの範囲内の圧力が好ましい。水熱処理を行う時間は特段に限定されないが、例えば14〜20時間程度が好ましい。
以上の水熱処理は、例えば市販の工業用オートクレーブ等の装置を利用して簡易に行うことができる。
〔アルカリ土類金属の水酸化物の添加、リン酸イオンの供給〕
ホウ素が溶解している水媒体に対して添加するアルカリ土類金属の水酸化物の種類は限定されない。好ましくは、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)等の2価のアルカリ土類金属の水酸化物、とりわけ好ましくはカルシウムの水酸化物Ca(OH)を添加する。
アルカリ土類金属の水酸化物の添加濃度は特段に限定されないが、例えばカルシウムの水酸化物の場合、含有ホウ素の1〜5倍モル量程度が好ましい。
ホウ素が溶解している水媒体に対してリン酸イオンを供給する形態は限定されないが、例えばリン酸を投入し、あるいは可溶性のリン酸塩を添加することができる。可溶性のリン酸塩としては、NaHPO、NaHPO、KHPO等を例示することができる。
ホウ素が溶解している水媒体に対してリン酸や可溶性リン酸塩を添加する場合、その添加量は特段に限定されないが、リン酸イオンとして、アルカリ土類金属の水酸化物に対して0.5倍モル量以下程度となるような量が好ましい。
ホウ素が溶解している水媒体に対するアルカリ土類金属の水酸化物の添加と、リン酸イオンの供給とは、同時に行っても良いし、任意の順序で別々に行っても良い。
〔不溶性複合酸化物の生成、分離、回収〕
上記のような水熱処理の結果、ホウ素とアルカリ土類金属との不溶性複合酸化物が生成し、沈殿として得られるので、これを濾過、遠心分離等の任意の手段で水媒体から分離し、再利用のために回収する。再利用の用途としては、ホウ砂の生産を例示することができる。
ホウ素とアルカリ土類金属との複合酸化物としては、利用したアルカリ土類金属の種類等に対応して、様々な種類のものが得られるが、例えば前記の表1に示す各種化合物、あるいはCa・HO等が例示される。
以下に、本発明の一実施例を説明する。この実施例は、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
(処理対象物及び前処理)
処理対象物として、Fe 68wt%、Nd 28wt%、B 1wt%を含む、市販のNiメッキ被覆NdFe14B焼結磁石(φ5×3mm)を用いた。そして、Nd、Fe及びNiをそれぞれ沈殿として回収した後、その処理液中に溶存するホウ素を本発明の方法によって回収した。従って、本発明の実施例としては、Nd、Fe及びNiを沈殿として回収するまでの工程は、前処理として位置づけることができる。
まず、上記の焼結磁石を、HClと(COOH)の混合水溶液と共に、テトラフルオロエチレンで内張りした耐圧容器中に収容し、水熱処理を施した。その際、HClの濃度は3M、(COOH)の濃度は0.25M、処理温度は110°C程度、処理時間は6時間以上とすることが最適であった。
上記の水熱処理により、Nd(COの沈殿として、試料中のNdを99%以上の高収率で回収した。この沈殿化合物は、空気中800°Cの加熱処理により、NdFeB焼結磁石の工業的製造原料であるNdに変換することが可能である。更に、Nd回収後の水熱処理液に含まれているFe及びNiは、NaOHを用いて処理液をpH7とすることにより、それぞれシュウ酸塩沈殿として回収することができた。
(ホウ素の回収)
以上のプロセスを経過した後、ホウ素(B)が500ppm溶存する処理液を試料液として、本発明に係るホウ素の回収方法を実施した。
まず、試料液30mlを多数準備し、これらに対して0〜3.0gの範囲で様々に設定した投与量のHPOを別々に投与し、5分間攪拌した。次に、これらの試料液のそれぞれに対して、0〜4.0gの範囲で様々に設定した投与量のCa(OH)を別々に添加し、5分間攪拌した。
続いて、これらをいずれもテトラフルオロエチレンで内張りした耐圧容器中に収容し、90〜240°Cの範囲内で設定した様々の処理温度、及び2〜16時間の範囲内で設定した様々の処理時間にて水熱処理を行ったところ、それぞれの収率で沈殿生成物を得た。沈殿生成物のSEM写真を図2に、その拡大写真を図3に示す。又、この沈殿生成物をXRDパターンにより解析したところ、図4に示す通りであって、ホウ素とカルシウムの複合酸化物Ca・HOであることを確認した。なお、この複合酸化物は、自然界では存在しない。
(最適処理条件の検討−1)
上記に示した、HPOの投与量、Ca(OH)の投与量、水熱処理の処理温度及び処理時間の様々な設定について、プロセスの最適設計のために、それぞれの最適処理条件を検討した。
図5には、処理温度が170°C、処理時間が14時間であった場合における、HPO及びCa(OH)の投与量と、沈殿によるホウ素回収量(処理液中のホウ素の残留量)との関係を示す。図5よりHPOとCa(OH)の最適投与量〔上記実施例条件においてHPOが1.5g、Ca(OH)が3.0g〕、及び好適な投与量の範囲が明瞭に読み取れる。
次に、上記の図5に示すHPOとCa(OH)の最適投与量の場合における、水熱処理の処理温度と、処理液中のホウ素の残留量との関係を図6に示す。図6では、14時間水熱処理のものを対象として分析した。図6中には、ホウ素残留量の廃水基準値を併せて示す。従って廃水基準から見た水熱処理の最適処理温度(130°C)と、好適な処理温度の範囲が明瞭に読み取れる。
更に、上記の図5に示すHPOとCa(OH)の最適投与量の場合における、水熱処理の処理時間と、処理液中のホウ素の残留量との関係を図7に示す。図7では、170°Cでの水熱処理のものを対象として分析した。図7中にも、ホウ素残留量の廃水基準値を併せて示す。従って廃水基準から見た水熱処理の最適処理時間(14時間以上)が明瞭に読み取れる。
(最適処理条件の検討−2)
なお、図8及び図9には、処理温度が130°C、処理時間が14時間であった場合における、HPO及びCa(OH)の投与量と、沈殿によるホウ素回収量(処理液中のホウ素の残留量)との関係を示す。
本発明によって、ガラス産業、メッキ産業等におけるホウ素の溶存廃水の毒性問題を解決し、更にはホウ素を有用鉱物資源として回収する簡易な方法が提供される。
不溶性複合酸化物の生成及び沈殿のメカニズムを説明する図である。
沈殿生成物のSEM写真である。
沈殿生成物の拡大したSEM写真である。
沈殿生成物のXRDパターンを示す図である。
添加剤投与量と、沈殿によるホウ素回収量との関係を示すグラフである。
水熱処理の処理温度と、ホウ素の残留量との関係を示す図である。
水熱処理の処理時間と、ホウ素の残留量との関係を示す図である。
添加剤投与量と、沈殿によるホウ素回収量との関係を示すグラフである。
添加剤投与量と、沈殿によるホウ素回収量との関係を示すグラフである。

Claims (7)

  1. 500〜3000ppmのホウ素が溶解している水媒体に対してアルカリ土類金属の水酸化物を添加し、もしくは更にリン酸イオンを供給したもとで、耐圧容器中、90〜240℃の範囲内の温度下での水熱処理を行ってホウ素とアルカリ土類金属との不溶性複合酸化物を生成させることにより、前記水媒体からホウ素を分離することを特徴とする水中溶存ホウ素の不溶化分離方法。
  2. 前記アルカリ土類金属が2価のアルカリ土類金属であることを特徴とする請求項1に記載の水中溶存ホウ素の不溶化分離方法。
  3. 前記2価のアルカリ土類金属がカルシウムであることを特徴とする請求項2に記載の水中溶存ホウ素の不溶化分離方法。
  4. 前記水媒体に対するリン酸イオンの供給が、リン酸又は可溶性リン酸塩の添加によって行われることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の水中溶存ホウ素の不溶化分離方法。
  5. 前記水媒体が、ホウ素と他の1種以上の有用元素とを含有する希土類焼結磁石のスクラップを酸の存在下で水熱処理した処理液に由来するものであることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の水中溶存ホウ素の不溶化分離方法。
  6. ホウ素が溶解している水媒体に対して請求項1〜請求項5のいずれかに記載の水中溶存ホウ素の不溶化分離方法を行うことにより、その水媒体を、少なくともホウ素に基づく毒性に関して無害化することを特徴とするホウ素溶存水媒体の無害化方法。
  7. ホウ素が溶解している水媒体に対して請求項1〜請求項5のいずれかに記載の水中溶存ホウ素の不溶化分離方法を行うことにより、その水媒体から前記不溶性複合酸化物を有用鉱物資源として回収することを特徴とするホウ素資源の回収方法。
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