JP4612152B2 - 研削工具 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は研削工具用台金およびそれを用いた研削工具に係り、特に研削工具の台金の構成材として使用した場合に振動の発生が少なく、高い加工精度で安定した研削操作が可能な研削工具用台金およびそれを用いた研削工具に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から研削工具を構成する金属材として、S55Cなどの高炭素鋼やSCM435などのクロムモリブデン鋼が広く使用されている。ところで、研削加工中においてバイトなどの切削工具や回転砥石などの研削工具と工作物との間に発生するびびり振動は、加工能率の低下、加工精度の劣化、工具の寿命の低下を惹起する。特に溝切り加工や突切り加工は、外丸削り加工や面削り加工等の切削加工と比較して、びびり振動が発生し易く、とりわけ切削幅の広い溝切り加工の場合には刃先(切削チップ)と工作物との接触幅が大きくなり、びびり振動が発生し研削加工精度が低下し易い難点がある。
【0003】
上記びびり振動を防止する基本的な対策として、従来、研削工具自体の剛性を高める工夫が種々試行されている。例えば研削工具を構成する材料として、従来から利用されていたCr−Mo鋼に代えて、例えばWC材などの超硬合金材やSK材を使用したホルダタイプの研削工具が開発されている。また研削工具本体に部分的に制振合金を使用して高減衰化を図る工夫がなされている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、制振合金自体の機械的強度が高剛性材料と比較して大幅に低いため、超硬合金などの高剛性材料を使用した研削工具を超えるびびり抑制効果を発揮することは困難であった。特に突切り加工用や溝切り加工用の研削工具においては、研削工具本体の幅も狭くなり剛性を高めることは極めて困難であった。
【0005】
一方、突切り加工用の研削工具で超硬合金にて形成されたものは、Cr−Mo鋼等で形成された保持器(ツールブロック)によって保持されて使用されていたが、びびり振動の抑制効果が未だ不充分であったため、研削加工の安定性が乏しく、加工精度のばらつきも大きくなり、さらに研削面にびびりマークが発生し易く、加工製品の製造歩留りが低下してしまう問題点があった。
【0006】
また、S55Cなどの高炭素鋼やSK材から成る研削工具においては、剛性が低いために研削時に作用する衝撃力によって容易に変形し易く、高精度の研削加工が極めて困難であり、研削速度を低く設定した場合においても、工具寿命が短かく、頻繁に工具の交換が必要であり、不経済でもある上に、加工効率が低下する問題点があった。
【0007】
さらに、回転砥石型の研削工具例として、従来からS55CやSK材から成る円盤状の工具本体(台金)の周縁に、ニッケル(Ni)等の金属から成る電着層を形成し、その電着層を介して砥粒を一体に接合した研削工具も使用されている。この研削工具から砥粒が脱落して所定の研削能力が得られなくなった場合には、廃棄されていたため、繰り返して使用する場合と比較して経済性が低いという問題点もあった。
【0008】
またWC材などの超硬合金材で形成した研削工具においては、通電処理によってニッケル金属層などを析出させながら砥粒の接合固定を行う電着処理が困難であり、砥粒の再電着による研削工具の再生が困難になる問題点もあった。
【0009】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、特に研削工具の台金の構成材として使用した場合に、振動の発生が少なく、高い加工精度で安定した研削操作が可能である一方、耐酸性に優れており酸洗再生処理によっても劣化せず、繰り返して使用が可能な研削工具用台金およびそれを用いた研削工具を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者は上記目的を達成するため、種々の組成の合金から成る研削工具を調製し、その合金組成、機械的特性および電気的特性が研削時の振動発生量,研削加工精度,耐酸性,電着特性等に及ぼす影響を実験により比較研究した。
【0011】
その結果、ニッケル(Ni),銅(Cu),鉄(Fe)およびコバルト(Co)の少なくとも1種、必要に応じてモリブデン(Mo)を所定量含有し残部タングステンから成るW基合金材で研削工具の台金を形成したときに、研削加工時における振動発生が効果的に抑制され、加工精度を大幅に高めることが可能になり、加工精度のばらつきも大幅に縮小し、長寿命の研削工具が得られるという知見を得た。さらに、工具の寿命は砥粒の摩耗や剥離に大きな影響を受けるが、本発明においては特に砥粒の電着メカニズムに着目し、また、靭性に基づく耐衝撃性,ヤング率,硬度などの機械的特性を一定値以上とし、電着特性を改善することによって砥粒の接合強度が向上し、工具の長寿命化も実現できることが判明した。また、上記W基合金材は耐酸性にも優れており、研削工具の再生時に実施する酸洗処理によって劣化することが少なく、繰り返して使用できるという顕著な効果も発揮されることが判明した。
【0012】
本発明は上記知見に基づいて完成されたものである。すなわち、本発明に用いられる研削工具用台金は、Ni,Cu,FeおよびCoから選択される少なくとも一種の金属を20重量%以下含有し、残部Wから成るW基合金で形成されたものであることが好ましい。
【0013】
また、本発明に用いられる研削工具用台金は、Ni,Cu,FeおよびCoから選択される少なくとも一種の金属を20重量%以下,Moを10重量%以下含有し、残部Wから成るW基合金で形成されたものであることが好ましい。
【0014】
さらに本発明に用いられる研削工具用台金は、Niを0.1〜10重量%,Cu,FeおよびCoから選択される少なくとも一種の金属を20重量%以下含有し、残部Wから成るW基合金で形成されたものであることが好ましい。
【0015】
さらに、本発明に用いられる研削工具用台金は、シャルピー衝撃値が4×103kg・m/m2以上であるW基合金で形成されたものであることが好ましい。
【0016】
また、本発明に用いられる研削工具用台金は、密度が16×103kg/m3以上であり、ヤング率が1.96×105MPa以上であるW基合金で形成されたものであることが好ましい。
【0017】
さらに本発明に係る研削工具は、上記のように調製された研削工具用台金の少なくとも被研削物と接触する部位に、被研削物を研削する研削砥粒を一体に接合したものである。すなわち、本発明に係る研削工具は、Niを0.1重量%〜10重量%含有し、Cuを2重量%〜4重量%含有し、Fe、CoおよびMoから選択される少なくとも一種の金属を含有し、残部Wから成るW基合金で形成された台金と、この台金の周縁に電着されてなる厚さ0.4〜0.75mmのニッケル層と、このニッケル層に少なくとも一部が埋め込まれた研削砥粒と、を備え、前記金属がFeおよびCoから選択される少なくとも一種の金属である場合、前記W基合金はこのFeおよびCoから選択される少なくとも一種の金属をNi、Cu、FeおよびCoの合計量で0.1重量%〜20重量%含有し、前記金属がMoの場合、前記W基合金はMoを1重量%〜10重量%含有することを特徴とする。
【0018】
また、上記研削工具において、研削砥粒が立方晶窒化硼素(c−BN)およびダイヤモンドの少なくとも一方から構成するとよい。さらに、上記研削工具用台金において、W基合金の密度が16×103kg/m3以上であることが好ましい。また、研削砥粒は電着したニッケル層を介して合金に一体に接合されている構造が好ましい。また、研削砥粒は、モース硬度が8以上の砥粒であることが好ましい。さらに、台金の比抵抗が0.15μΩ・m以下であることが好ましい。また、W基合金のヤング率(剛性)が1.96×105MPa以上であることが好ましい。さらに、W基合金のHRc硬度が40以下の範囲であることが好ましい。
【0019】
また、本発明に用いられる切削工具の製造方法は、上記の研削工具用台金を切削加工することにより、所定形状に加工し、得られた研削工具用台金の少なくとも被研削物と接触する部位に研削砥粒を電着により一体に接合するものであることが好ましい。
【0020】
本発明に係る研削工具を構成する工具用台金に含有されるNi,Cu,FeおよびCoは、いずれもW基合金の加工性を改善し、またタングステンの焼結温度を低減して製造条件を緩和するとともに、タングステン原料粉末の焼結時において原料粉末を相互に結合せしめて緻密で強固な焼結体を形成する役目を果たすものであり、20重量%以下の割合で添加される。
【0021】
なお、添加量が0.1重量%未満であると低温条件下における焼結操作が困難であり、焼結体の緻密化が十分に進行せず高強度の焼結体が得られない。一方、20重量%を超えるように添加量を増しても焼結時における緻密化の進行割合が少ない。また比較的に低密度のNi,Cu,Co,Feを過量に添加するとW基合金材全体の密度が低下して、質量効果が大きな金属材が得られない。そのためNi,Cu,Co,Feの添加量は20重量%以下の範囲内に設定されるが、0.1〜15重量%の範囲がより好ましい。
【0022】
特に、ニッケル(Ni)は、電着性を高めるとともに、研削工具の靭性値(シャルピー衝撃値)および剛性を高めて研削時の振動発生および変形を防止するための成分であり、0.1〜10重量%の範囲で含有されることが好ましい。Ni含有量が0.1重量%未満と過少な場合には、上記改善効果が不十分となる場合がある。一方、Ni含有量が10重量%を超えるように過大になると、相対的にW含有量が低下し、高比重のW成分の質量効果による振動抑止作用が低下し、研削加工精度が低下してしまう。そのためNi含有量は0.1〜10重量%の範囲が好ましいが、0.5〜5重量%の範囲がより好ましい。
【0023】
一方、銅(Cu)は、研削工具の比抵抗値を下げて通電処理によって工具縁部にNi層を析出させて工具本体(台金)に研削砥粒を電着する際の電着特性を改善するために1〜10重量%の範囲で含有されることが好ましい。上記Cu含有量が1重量%未満と過少な場合には、研削砥粒を固定するためのNi層の形成速度が小さく電着操作が非効率になるとともに、研削砥粒の固定強度が低下して切削時に脱落し易くなり、研削工具の寿命が短くなる。一方、Cu含有量が10重量%を超えるように過大になると、合金材の剛性,硬度が低下して切削時に変形が起こり易く、いずれにしても研削加工精度が低くなる。そのため、Cu含有量は10重量%以下の範囲とされるが、2〜4重量%の範囲がより好ましい。
【0024】
モリブデン(Mo)は必須の構成元素ではないが、特に台金にねばりを付与して加工性を向上させるための成分として有効であり、10重量%以下の範囲で含有されることが好ましい。しかしながら、Mo含有量が1.0重量%未満と過少な場合には、上記の加工性の改善効果が少ない。一方、Mo含有量が10重量%を超えるように過大になると、台金の密度が低下し、高比重のW成分の質量効果による振動抑止作用が低下し、研削加工精度が低下してしまう。そのためMo含有量は10重量%以下の範囲とされるが、2〜6重量%の範囲がより好ましい。
【0025】
タングステン(W)は本発明に係る研削工具を構成する台金の主成分であり、その高密度性に起因する質量効果によって、研削加工時における振動発生を効果的に抑止し、高い研削加工精度を実現するための必須成分である。特に、上記Wを主成分とする本発明に係る研削工具用台金の密度を16×103kg/m3以上に調整することにより、研削加工時の振動発生をより効果的に防止でき、高い研削加工精度を実現することができる。
【0026】
本発明に係る研削工具用台金は高融点金属としてのタングステン(W)を基材として構成されているW基合金であるため、所定量のW,Ni,Cu,Fe,Co,Mo原料粉末を配合した原料混合体を成形後、非酸化性雰囲気中で温度1100〜1600℃で焼結したり、ホットプレス処理やHIP処理するという粉末冶金法によって焼結体に調製され、この焼結体を切削加工することにより所定形状に加工して製造される。本発明の研削工具を構成する上記焼結体のシャルピー衝撃値は、研削工具としての耐久性および構造強度を確保するために4×103kg・m/m2以上であることが望ましい。
【0027】
また、上記焼結体で形成した研削工具本体(台金)の比抵抗は、電着処理時の通電特性に大きな影響を及ぼすため、本発明ではCu成分の配合量の調節によって0.15μΩ・m以下とされる。この比抵抗値が0.15μΩ・mを超えるように過大になると、電着処理に要する時間が増大するとともに、研削砥粒の固定保持強度が低下してしまう。そのため、比抵抗値0.15μΩ・m以下とされるが、0.10μΩ・m以下がさらに好ましい。
【0028】
さらに、研削工具本体(台金)のヤング率は、研削加工時の工具の変形量に大きな影響を及ぼすため、本発明では1.96×105MPa以上とされる。ヤング率が1.96×105MPa未満と過小な場合には、研削加工時における工具の変形量が大きくなり、高い研削加工精度が得られない。そのため、台金のヤング率は1.96×105MPa以上とされるが、2.50×105MPa以上がより好ましい。
【0029】
また工具本体(台金)の硬度は、研削加工時における研削工具の変形量および構造強度に影響を及ぼすため本発明ではJISのロックウェル硬度(HRc)で40以下の範囲とされる。なお、硬度が20HRc未満と過小な場合には、研削加工時における変形量が大きくなり、高い研削加工精度が得られない。一方、硬度が40HRcを超えるように過大になると、工具の脆性が高まり構造強度が低下して割れや欠けが発生し易くなる。そのため、台金の硬度は40HRc以下とされるが、30〜35HRcの範囲がより好ましい。
【0030】
また、研削砥粒としては、電着処理によって工具本体(台金)に接合固定が可能な砥粒であれば、特に限定されるものではないが、モース硬度が8以上の砥粒が好ましい。具体的には、平均粒径が0.1〜0.15mm程度の立方晶窒化硼素(c−BN)およびダイヤモンドの少なくとも一方から成る超砥粒であることが好ましい。上記超砥粒は、モース硬度が8以上と硬度が著しく高く、研削性能も著しく優れているため、好適に使用できる。
【0031】
上記研削砥粒は、前記本発明に係る研削工具用台金の周縁に電着した厚さ0.4〜0.75mm程度のニッケル層(Niめっき層)などを介して工具本体に一体に接合固定される。前記工具用合金から成る研削工具本体(台金)に研削砥粒を電着処理によって一体に接合固定することにより本発明に係る研削工具が製造される。
【0032】
なお、研削砥粒の接合状態は、図1および図2に示すように、研削工具用台金の外周縁部に連続的な砥粒層3を形成するように、外周縁部全面に砥粒を電着等により接合する形態を採用することができる。
【0033】
一方、図3に示すように、研削工具用台金2の外周縁部の周方向に所定の間隔をおいて複数の砥粒層3を断続的に形成してもよい。例えば、直径が50〜60mmの円盤状の研削工具1aを製作する場合、砥粒層3aが存在する周方向の幅および砥粒層3aが存在しない周方向の幅は2〜5mm程度に設定される。
【0034】
図3に示すように台金2の外周縁部の周方向に所定の間隔をおいて複数の砥粒層3aが断続的に形成されている研削工具1aによれば、研削操作の進行に伴って発生する研削くず(研削粉)が、隣接する砥粒層3a間に形成される空隙部に一旦収容された後に系外に円滑に排出されるため、研削性が大幅に改善される利点がある。
【0035】
上記構成に係る研削工具用台金および研削工具によれば、所定量のニッケル,銅,鉄,コバルト,モリブデンを含有する高密度のタングステン基合金から構成されているため、研削時に衝撃力が作用した場合においても、タングステン基材の高密度性に起因する質量効果によって振動発生が効果的に抑止され、高い加工精度で安定した研削操作が可能になる。
【0036】
特に従来の工具鋼と比較して剛性または靭性値が高いため、研削時における研削工具の変形が効果的に防止でき、高い研削加工精度が得られる。また本発明の研削工具用台金および研削工具は耐酸性に優れているため、研削工具の再生時に実施する酸洗処理によって劣化することが少なく、繰り返して使用できるという効果も奏する。
【0037】
さらに本発明の工具用台金および研削工具は比抵抗が低く、通電処理によって金属層を析出させながら研削砥粒の接合固定を行う電着処理も容易になり、砥粒の再電着による研削工具の再生も容易であり、また、短時間の切削加工によって製造できるため、経済性が優れている。
【0038】
【発明の実施の形態】
次に本発明の実施形態について添付図面を参照しながら、以下の実施例、参考例および比較例に基づいて具体的に説明する。
【0039】
[実施例1および2、参考例1〜3]
表1左欄に示すような工具用台金組成となるように、Ni,Cu,Fe,Co,Mo,W粉末を配合して原料混合体をそれぞれ調製し、各原料混合体を図1および図2に示すような円盤形状に圧粉成形し、得られた各成形体を水素炉にて1400℃で3時間焼結を行い各実施例用のW基工具用台金(焼結体)を調製した。
【0040】
次に得られた各工具用台金を機械加工することにより、図1および図2に示すように円盤状の工具用台金の外周部に周溝4を形成して回転砥石用の台金2を調製した。すなわち、円盤状の台金素材を用意し、台金素材の反りが許容範囲内となるように研磨加工等により修正した後に、台金素材の中心部に穿設した取付穴5を基準として台金素材の一方の端面を旋盤加工により仕上げ、しかる後に台金素材の他方の端面と外周縁部の周溝4とを旋盤による同時加工によって仕上げた。さらに仕上げた台金素材の両端面をラップ加工して表面を平滑化した後に、洗浄することにより台金2を調製した。さらに周溝4の両外周面に、表1に示す研削砥粒をNi電着することにより、実施例1および2、参考例1〜3に係るホイールタイプの研削工具1をそれぞれ調製した。
【0041】
[比較例1〜2]
実施例1において工具本体(台金)を構成するW基工具用台金に代えて機械構造用炭素鋼(S55C)または超硬合金(WC材)を使用した点以外は実施例1と同一寸法を有する工具本体(台金)を形成し、実施例1と同様に電着処理により研削砥粒を一体に接合することにより、それぞれ比較例1および比較例2に係る従来の研削工具を調製した。
【0042】
[比較例3〜4]
表1左欄に示すようにNi含有量およびCu含有量を本発明で規定する範囲外となるように台金の組成を変化させた点以外は実施例1と同様に同一寸法の台金を調製し、しかる後に台金周縁部に電着処理により研削砥粒を一体に接合することにより、それぞれ比較例3〜4に係る研削工具を製造した。
【0043】
上記のように調製した各実施例、参考例および比較例に係る研削工具の研削特性および寿命を評価するために、下記のような研削加工を実施した。すなわち、FC−25製のシリンダー材の内壁面に、幅3.2±0.002mm×深さ16mm×長さ20mmの溝を形成するために、各研削工具を用いて研削加工を繰返して実施した。なお研削周速度は、45m/secとし、工具の送り速度は30μm/secとした。
【0044】
そして、同一の研削条件で研削加工を繰返し、1個の研削工具で上記溝を繰返して形成できる加工回数を測定して研削工具の寿命として評価した。
【0045】
さらに前記のように調製した焼結体から各種試験片を切り出し、そのシャルピー衝撃値,密度,比抵抗,ヤング率および硬度(HRc)を測定した。
【0046】
また、各研削工具の加工性、経済性および製造性を評価するために、各研削工具に電着した砥粒が脱落して研削機能が低下した場合に電着層を酸洗して再度砥粒を電着して繰り返して使用できる回数を求め、再電着回数として測定した。また、研削工具用台金を所定の形状まで切削加工するまでに要する加工時間と所要工数とを測定した。なお、上記研削工具の寿命,再電着回数および台金製作に要する加工時間は、比較例1(S55C)の場合を基準値100として相対的に表示した。上記の測定値および算出値を下記表1にまとめて示す。
【0047】
【表1】
【0048】
上記表1に示す結果から明らかなように、所定量のNi等を含有するW基工具用台金を使用して形成した各実施例に係る研削工具によれば、従来材(S55C,WC材)で形成した比較例1〜2に係る研削工具と比較して密度が大きいため、研削加工時に発生する振動や変形が少ないため、加工精度が優れており、また延べ加工回数で示す寿命も1.5倍程度と長く、高い加工精度を長期的に亘って維持できる。
【0049】
一方、従来材である機械構造用炭素鋼(S55C)で形成した比較例1に係る研削工具では、構造強度(ヤング率)が低く、加工精度のばらつきも多く、寿命も短くなった。
【0050】
また、従来材である超硬合金(WC材)で形成した比較例2に係る研削工具では密度が高く、ある程度の振動防止効果が得られているが、電着処理によって研削砥粒を接合する操作が困難になり、研削工具の再生に要する工数が増大することが判明した。また、WC材自体が難加工材であるため、加工時間および加工工数が大きくなり、工具製作上の経済性が劣っている。
【0051】
さらにNi含有量およびCu含有量が本発明で規定する範囲外となる比較例3に係る研削工具およびWのみから成る比較例4に係る研削工具においては、シャルピー衝撃値,比抵抗,ヤング率,硬度のいずれかが不十分となり、研削工具としての要求特性を十分に発揮できないことが判明した。
【0052】
【発明の効果】
以上説明の通り本発明に係る研削工具用台金および研削工具によれば、所定量のニッケル等を含有する高密度のタングステン基合金から構成されているため、研削時に衝撃力が作用した場合においても、タングステン基材の高密度性に起因する質量効果によって振動発生が効果的に抑止され、高い加工精度で安定した研削操作が可能になる。
【0053】
特に従来の工具鋼と比較して剛性および耐衝撃性が高いため、研削時における工具の変形が効果的に防止でき、高い研削加工精度が得られる。また本発明の研削工具用台金および研削工具は電着特性に優れているため、研削工具の再生も容易であり、繰り返して使用できるという効果も奏する。
【0054】
さらに本発明の研削工具用台金および研削工具は比抵抗が低く、通電処理によって金属層を析出させながら研削砥粒の接合固定を行う電着処理も容易になり、砥粒の再電着による研削工具の再生も容易であり、経済性が優れている。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る研削工具用台金を使用して形成した研削工具の一実施例を示す断面図。
【図2】 図1に示す研削工具の正面図。
【図3】 砥粒層の他の形態を示す正面図。
【符号の説明】
1 研削工具
2 研削工具用台金
3 電着砥粒層
4 周溝
5 取付穴
Claims (1)
- Niを0.1重量%〜10重量%含有し、Cuを2重量%〜4重量%含有し、Fe、CoおよびMoから選択される少なくとも一種の金属を含有し、残部Wから成るW基合金で形成された台金と、
この台金の周縁に電着されてなる厚さ0.4〜0.75mmのニッケル層と、
このニッケル層に少なくとも一部が埋め込まれた研削砥粒と、
を備え、
前記金属がFeおよびCoから選択される少なくとも一種の金属である場合、前記W基合金はこのFeおよびCoから選択される少なくとも一種の金属をNi、Cu、FeおよびCoの合計量で0.1重量%〜20重量%含有し、
前記金属がMoの場合、前記W基合金はMoを1重量%〜10重量%含有することを特徴とする研削工具。
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