JP4610727B2 - シームレスカプセルの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は医薬、香料、香辛料、芳香剤等からなる充填物質をゼラチン等からなる皮膜物質で被覆してなる球形状のシームレスカプセルの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種のシームレスカプセルを製造する場合には、中心ノズルと、その外側を同芯に囲む円環状ノズルからなる同芯多重ノズルを用いる。すなわち、同芯多重ノズルの中心ノズルから液状の充填物質を流出させるとともに、中心ノズルを囲む円環状ノズルからは液状の皮膜物質を流出させ、充填物質の流れの外側を被うよう皮膜物質が流れる同芯円柱状の併合流を形成する。
【0003】
そして、この併合流をその先端から順次寸断することによって液滴を形成し、この液滴を硬化液と接触させて皮膜物質を硬化させ、これにより、充填物質を皮膜物質で被覆してなる球形状のシームレスカプセルを製造していた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来のシームレスカプセルの製造方法では、製造されたシームレスカプセルに種々の欠陥、例えば図3Aに示す大きなアイズ、図3Bに示す偏芯、図3Cに示す異形、図3Dに示すイボ付き等が生じる場合があった。
本発明は、欠陥のないシームレスカプセルを効率よく製造する方法を提供することにある。
【0005】
上記目的を達成するために、本発明者らは種々検討した結果、上記欠点は、同芯多重ノズルに供給された液状の皮膜物質の状態ないし物性が所望のものではない場合があることに起因することを見出した。特に、液状の皮膜物質の粘度は温度により定まるが、同芯多重ノズルに供給された皮膜物質の温度を所定温度としても、種々の要因でその粘度が極めて低くなっている場合があることを見出した。
【0006】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明は、充填物質を皮膜物質で被覆してなるシームレスカプセルを製造する方法において、中心ノズルと、その中心ノズルを同芯に囲む円環状ノズルとを有する同芯多重ノズルを用意するステップと、液状の充填物質を第1のタンクにて貯溜するステップと、液状の皮膜物質を第2のタンクにて所定の第1の温度で貯溜するステップと、液状の皮膜物質と接触することで当該皮膜物質を硬化させる硬化液を貯溜する硬化槽を用意するステップと、第1のタンクから液状の充填物質を同芯多重ノズルの中心ノズルに供給すると共に、第2のタンクから液状の皮膜物質を同芯多重ノズルの円環状ノズルに供給するステップと、中心ノズルから流出する液状の充填物質の流れと、円環状ノズルから流出して当該充填物質の流れの周囲を流れる液状の皮膜物質の流れとを寸断して液滴を形成するステップと、同芯多重ノズルからの液滴の皮膜物質を硬化槽に貯溜された硬化液と接触させて該皮膜物質を硬化させるステップとを含み、第2のタンクから同芯多重ノズルの円環状ノズルに液状の皮膜物質を移送しながら当該皮膜物質を加熱することにより徐々に昇温せしめて、円環状ノズルに導入時の温度が前記第1の温度よりも高い所定の第2の温度とすることを特徴としている。
【0007】
第1の温度は、第2のタンクに貯溜された液状の皮膜物質の粘度を実質的に一定に維持する温度であることが好ましい。
このように、第2のタンクに貯留された液状の皮膜物質は、粘度がほぼ一定に保たれる。また、皮膜物質に対する加熱は、同芯多重ノズルに向って移送中の一定時間に限られ、かつ、最終的には常に所定の第2の温度とされるため、同芯多重ノズルから流出する液状の皮膜物質の粘度はほぼ一定となる。
これにより、同芯多重ノズルから流出する液状の皮膜物質の物性ないしは状態は安定するため、欠陥の発生率が大幅に低減する。
【0008】
また、第2のタンクと円環状ノズルとの間の液状の皮膜物質を移送するための移送管として二重管を用意し、皮膜物質に対する前記加熱を、二重管の内管内に液状の皮膜物質を流通させると共に、二重管における内管と外管との間の環状空間に、皮膜物質を加熱するための加熱流体を流通させることにより行うことが、有効である。
【0009】
更に、昇温が不十分となる場合には、二重管の内管と連通する螺旋管を有する加熱器を二重管の中間に設け、皮膜物質に対する加熱を、皮膜物質を加熱するための加熱流体を螺旋管の周囲に流通させることにより行ってもよい。
【0010】
更に、同芯多重ノズル内に供給される液状の充填物質及び/又は液状の皮膜物質に振動を加え、これにより同芯多重ノズルから流出する液状の充填物質の流れ及び液状の皮膜物質の流れを寸断して液滴を形成することができる。
これにより所望の位置で流れを寸断できるので、一定の大きさの液滴を確実に形成することができる。
【0011】
振動は、同芯多重ノズル内の流路の一部を画成する壁部として可動壁を設け、可動壁を振動させることにより加えることができる。
【0012】
更に、同芯多重ノズルからの液滴を硬化槽内の硬化液中に、一の液滴の降下経路と次の液滴の降下経路とが水平方向において間隔があくように、分散させることが好ましい。
これは、ほぼ垂直方向における液滴の間隔が広がり、液滴同士の付着凝集を防止するものである。
【0013】
【発明の実施形態】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施の形態を説明する。
図1は、本発明によるシームレスカプセルの製造方法を実施するためのシステムを概略的に示しており、図2は、当該システムにおける同芯多重ノズル及びその周辺の構成を拡大して示している。
【0014】
図1において、符号1は、医薬、香料、香辛料、芳香剤等からなる液状の充填物質(以下、単に薬液と言う)を貯溜している薬液タンク1を示している。
薬液タンク1内の薬液は、可変吐出量型の薬液ポンプ3により、配管33を通して抽出され、配管23を経て同芯多重ノズル4に供給される。同芯多重ノズル4への薬液の流れは可能な限り安定したものであることが望ましいため、薬液ポンプ3は、流れに脈動を与えない型式のものが好ましい。
【0015】
また、図1において、符号5は、ゾル状態からゲル化する性質を有する物質、例えば、ゼラチン、寒天、カラギーナン若しくはアルギン酸、又は、グアーガム若しくはキサンタムガム等のガム類のような物質からなる液状の皮膜物質(以下、単にゼラチン溶液と言う)を貯溜しているゼラチンタンク(第1のタンク)を示している。
【0016】
ゼラチン溶液はゼラチンタンク5内に貯溜されている間、このゼラチンタンク5の周囲に設けられている温水ジャケット9内を循環する温水により加熱されることによって、その物性、特に粘度を一定に維持することのできる温度(第1の温度)、例えば、50℃に維持されている。
【0017】
温水ジャケット9内を循環する過程で降温した温水は管36を経て第1恒温槽7内に導かれ、ここでヒータ8により加熱されることによって昇温した後、管37、第1温水ポンプ10、管38を経て再び温水ジャケット9内を循環する。
【0018】
ゼラチンタンク5内のゼラチン溶液は、流れに脈動を形成しない可変吐出量型ゼラチンポンプ15により、二重管14の内管14aを通って抽出され、二重管16の内管16a、中間加熱器6の螺旋管6a、二重管17の内管17a、配管19をこの順に通って同芯多重ノズル4に供給される。
【0019】
二重管14の内管14aと外管14bとの間の環状空間には、加熱流体としての温水がゼラチンタンク5側の端部に設けられた流入口から導入される。
この温水は、第2恒温槽12においてヒータ13により加熱され一定の温度に維持されたものが、第2温水ポンプ13によって管39及び管40を経て二重管14に供給されるようになっている。内管14aと外管14bとの間を流れるこの温水により、二重管12の内管14a内を流れるゼラチン溶液が加熱される。
【0020】
内管14aと外管14bとの間の環状空間に流入した温水は、管41を経て、ゼラチンポンプ15の温水ジャケット15aに流れ、その後、管45を経て二重管16の内管16aと外管16bとの間の環状空間内に流入する。この過程で、内管16a内を流れるゼラチン溶液は、内管16aと外管16bとの間を流れる温水により加熱される。
次いで、二重管16内の温水は管42を経て中間加熱器6に入り、螺旋管6aの周囲を流れる過程で、螺旋管6a内を流れるゼラチン溶液を加熱する。
【0021】
そして、中間加熱器6から流出した温水は管43を経て二重管17の内管17aと外管17bとの間の環状空間に入り、この空間を流過する過程で内管17a内を流れるゼラチン溶液を加熱する。この後、温水は二重管17から流出して、管44を経て第2恒温槽12内に戻り、ここで再び加熱される。
【0022】
かくして、ゼラチン溶液はゼラチンタンク5から同芯多重ノズル4までの移送管14a、16a、6a、17aを流れている間に、温水により加熱されることによって50℃から徐々に昇温して所定の第2の温度、例えば、80℃となって同芯多重ノズル4に流入する。
【0023】
同芯多重ノズル4は、図2に示すように、下向に開口する中心ノズル4aとこれと同芯でこれを囲む円環状ノズル4bとを備え、これら中心ノズル4a及び円環状ノズル4bの先端部分は形成管20内の硬化液中に浸漬されている。
硬化液は、ゼラチン溶液に触れることでゼラチン溶液を硬化させるものであり、水、流動パラフィン、カルシウム溶液等から適宜選択することができる。
【0024】
薬液が管23を経て導人される同芯多重ノズル4内の室4cの上部には、この室4cの壁部の一部を画成する可撓膜等からなる可動壁4dが設けられている。
この可動壁4dは加振器11により上下動せしめられて、室4c内の薬液に所定の周期及び振巾の振動を加えることができる。従って、可動壁4dのこの動作によって、薬液中には下向に伝播する脈動波が発生される。
【0025】
同芯多重ノズル4に供給された薬液は中心ノズル4aから下向きに流出し、これと同時に同芯多重ノズル4に供給されたゼラチン溶液が、薬液の流れを囲む形で円環状ノズル4bから下向きに流出する。
そして、適当なタイミングで可動壁4dを上下動させ、薬液中に脈動波を発生させると、中心ノズル4aから流出する薬液が寸断され、同時に、ゼラチン溶液にも振動が伝えられ、円環状ノズル4bから流出するゼラチン溶液が寸断される。これにより薬液をゼラチン溶液により被覆してなる液滴が順次形成される。
【0026】
この液滴はこれに作用する重力及び形成管20内を下向に流動する硬化液に伴われて降下する過程で、その界面張力により次第に球形となる。また、液滴の表面のゼラチン溶液は硬化液と接触することによって冷却され及び/又は硬化液と反応して次第に硬化する。
【0027】
形成管20はほぼ垂直方向に延び、その下部は水平方向に湾曲されている。湾曲部の先端の開口20aは、硬化槽21内に貯溜された硬化液中に浸漬されている。
この形成管20は垂直軸まわりに回転可能に支持されており、図示しない電動機によって回転駆動されるようになっている。
【0028】
形成管20が垂直軸まわりに緩やかに回動すると、形成管20内の硬化液及びこれに伴われた液滴は開口20aから水平方向に流出し、これによって液滴は硬化槽21内に貯溜された硬化液中において開口20aの旋回軌跡より若干大径の円周上に分散せしめられ、次いで、硬化液中を緩やかに降下し、この過程でゼラチン溶液が充分に硬化してシームレスカプセルとなる。
硬化槽21の底に降下したシームレスカプセルは硬化液に伴われて、硬化槽21の底部の開口に接続された搬送管22に入り、この搬送管22内を通ってセパレータ23内へと送られる。
【0029】
セパレータ23内の上部には、多孔板や網等からなる篩板24が傾斜して配置されている。
篩板24の目はシースレスカプセルの外径よりも小さいので、硬化液及びシームレスカプセルがセパレータ23内に流入すると、硬化液は篩板24を透過してセパレータ23の底部に落下してここに貯溜され、シームレスカプセルは篩板24上を転動して樋25を経て回収容器26内に落下してここに貯溜される。
【0030】
セパレータ23の底部に貯溜された硬化液中には冷却器27が浸漬されていて、この冷却器27の伝熱管27a内には冷凍機28で冷却された冷媒が循環する。
従って、硬化液はセパレータ23の底部に貯溜されている間に冷却器27の伝熱管27a内を循環する冷媒と熱交換することによって冷却される。
【0031】
この硬化液はシリカゲル等からなる濾過材29を経てセパレータ23の底部から抽出され、硬化液管30、硬化液ポンプ31を経て形成管20の周囲に設置されたリザーブタンク32内に入り、次いで、形成管20の上縁を越えて形成管20内に流入する。
【0032】
搬送管22の最高位置となる部分、すなわち、逆U字状部22aはリザーブタンク32内の硬化液の液面よりも低くなっているが、この逆U字状部22aを上下動ユニット34により上下させ、逆U字状部22aとリザーブタンク32内の硬化液の液面との差を加減することによって形成管20から硬化槽21を経て搬送管22内を流動する硬化液の流速を調整することができる。
なお、図1において、符号35は温度センサー、符号36はバルブである。
【0033】
ところで、シームレスカプセルの皮膜を構成するために用いられるゼラチン溶液は、温度が高い程、その粘度は低くなるが、高温度下に長時間置くと、加水分解によって分子が小さくなってゼラチン溶液自体が劣化する。
また、ゼラチン溶液は、シームレスカプセルを形成するためには、同芯多重ノズル4から流出する際、粘度が200〜500mPa・s程度であることが好ましいことが分かっている。
【0034】
しかるに、ゼラチン溶液を例えば80℃の高い温度でゼラチンタンク5内に長時間貯溜すると、その分子構造が小さくなって劣化すると共に、粘度も大幅に低下する。
これをそのまま同芯多重ノズル4から流出させると、シームレスカプセルの成形状態が悪くなり、図3A〜図3Dに示すようなアイズ、偏芯、異形等の欠陥が多量に発生するとともに、ゼラチン溶液の硬化により形成された皮膜の強度も劣化する。
【0035】
そこで、従来においては、ゼラチン溶液をタンク5内に常温で貯溜しておき、これを加熱槽内に導いてここでヒータにより加熱することによって約80℃に急速に昇温させた後、同芯多重ノズル4に供給することが提案された。
しかし、この技術では、ゼラチン溶液を常温から約80℃に昇温させる際、ゼラチン溶液に局部的温度偏差や局部的な物性変化が発生し易いのみならず、同芯多重ノズル4に供給されるゼラチン溶液の温度や粘度を一定に維持するのが難しい。
【0036】
この実施形態においては、ゼラチン溶液をゼラチンタンク5内に、ゼラチン溶液の物性に影響を与えない温度、少なくとも分子構造に変化を与えない温度、例えば50℃で貯溜しておくため、貯溜されている間の粘度を容易に一定に維持することができる。
【0037】
そして、このゼラチン溶液を、同芯多重ノズル4への移送を行いながら、加熱することによって徐々に70℃〜90℃に昇温させる。この状態でゼラチン溶液は同芯多重ノズル4に供給され、すぐにそこから流出するので、同芯多重ノズル4から流出するゼラチン溶液の温度及び粘度等の物性を一定に維持することができる。
【0038】
すなわち、ゼラチン溶液は二重管14、16、17の内管14a、16a,17a及び中問加熱器6の螺旋管6aを移動しながら徐々に加熱され、略一定の温度勾配で昇温するので、局部的な温度偏差や物性変化の発生も防止できる。
また、ゼラチン溶液の昇温は、ゼラチンタンク5からノズル4までの移送中だけであり、一定時間であるので、同芯多重ノズル4に到達した時点ではゼラチン溶液は一定の物性を示す。
また、移送中の加温は短時間であるので、ゼラチン溶液の粘度の過度の低下や、ゼラチン溶液の劣化も防止できる。
【0039】
この結果、シームレスカプセルのアイズ、偏芯、異形、イボ付等の欠陥の発生を防止できるとともに、長時間安定して高品質のシームレスカプセルを製造することができる。
なお、二重管16と二重管17との間に中間加熱器6が介装されているので、二重管14、16、17の長さが短くなり、従って、装置の大型化を防止できる。
そして、ゼラチン溶液は中間加熱器6の螺旋管6a内を移動しながら加熱されるので、ゼラチン溶液が中間加熱器6内に滞留することはない。すなわち、長時間の加熱を防止できる。
【0040】
また、ゼラチン溶液は、同芯多重ノズル4に流入した直後に、そこから流出するので、温度低下は殆どなく、所望の粘度で流出する。
これは、同芯多重ノズル4に設けられている可動壁4dの作用と相俟って、安定した品質及び寸法のシームレスカプセルを製造することに寄与する。
すなわち、同芯多重ノズル4から流出する薬液とゼラチン溶液の併合流に可動壁4dの振動が薬液を介して伝達されることによって併合流はその先端から順次寸断されるが、ゼラチン溶液の粘度がほぼ一定に維持されるため、寸断を所望の位置で確実に行うことができる。
【0041】
しかも、可動壁4dに与えられる振動の振巾、振動数は加振器11によって容易に調整することができるので、液滴の大きさや単位時間当りの液滴の数を容易に調整することができる。
この結果、シームレスカプセルに欠陥を生じさせることなく、また、シームレスカプセルの重量や薬液の充填量のバラツキを増大させることなくシームレスカプセルの製造能力を大幅に向上できる。
【0042】
なお、可動壁4dは室4cの上部に設置されて室4cの一部を画成し、しかも、上下動せしめられるため、可動壁4dの振動によって生起され薬液中を下向に伝播する脈動波を同芯多重ノズル4から下向きに流出する併合流に減衰させることなく効果的に伝達することができる。
【0043】
また、加振器11は可動壁4dのみを上下に振動させれば足りるので、加振器11は構造が簡単で小型、かつ、安価なものを用いることができるとともに加振器11と可動壁4dとの連結構造も簡単、小型、安価となり、更に、周辺の機器に振動を与えることもないので、不要で有害な振動によるシームレスカプセルヘの悪影響を防止できる。
【0044】
また、上述したようにして、同芯多重ノズル4から良好な液滴が形成されるが、液滴は硬化液と接触することによって硬化してシームレスカプセルが完成するので、液滴の硬化が不充分であると、シームレスカプセルの変形、シームレスカプセル同志の付着凝集、シームレスカブセルの皮膜の破損等の不具合が発生する。
液滴を充分に硬化させるためには硬化液との接触時間を充分に採る必要がある。
【0045】
しかし、接触時聞を長くするために液滴を硬化液中に滞留させると、液滴同志が付着凝集してシームレスカプセルの皮膜が破れたり、シームレスカプセルの変形等が発生するおそれがある。
また、形成管20内及び硬化槽21内での硬化液の流速を遅くすると、液滴の硬化速度も遅くなるが、この場合は、液滴間の間隔を広げて液滴同士の接触を防止する必要が生ずる。
これは、液滴の投下の時間的間隔を延ばすこととなり、シームレスカプセルの製造能力が低下する。
更に、硬化液による液滴の搬送距離を長くすると、装置が大型化し、そのコストが嵩むおそれがある。
【0046】
この実施形態においては、同芯多重ノズル4から流出する併合流を寸断することによって形成された液滴は形成管20、硬化槽21、搬送管22内を移動する過程で冷却されて硬化するが、液滴は、緩やかに回転して円状の軌跡を描く形成管20の開口20aから硬化槽21内の硬化液中に分散して降下するため、同じ位置から液滴が降下する場合に比して、垂直方向における液滴間の間隔は広くなり、液滴同士が接触して付着凝縮する可能性が低減する。
ここで、分散とは、一の液滴の降下経路と、次の液滴の降下経路とは、水平方向において間隔が開けられていることを意味する。
【0047】
また、形成管20の開口20aから放出される液滴を垂直方向から所定の角度をもって放出することにより、垂直方向における降下速度が遅くなり、液滴を穏やかに降下させることができる。
従って、液滴と硬化液との接触時間を充分に採ることができ、欠陥のないシームレスカプセルの製造に寄与する。
また、液滴と硬化液との接触時間の確保は、硬化液中の液滴の搬送距離を短くすること、すなわち、形成管20、硬化槽21及び搬送管22を小型化しその長さを短くすることができるので、結果として装置の小型化に資することができる。
更に、液滴投下の時間的間隔を短くすることができるため、製造効率の向上にも寄与する。
【0048】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。
例えば、図示の同芯多重ノズル4は中心ノズル4aとこれを囲む円環状ノズル4bを具える2重構造であるが、中心ノズル4aのまわりにこれと同芯の複数の円環状ノズルを設けてなる三重以上のノズルを用いることができる。
また、中心ノズル4a又は円環状ノズル4bのいずれか一方のみから液を流出させれば、単一成分のシームレスカプセルを製造することができる。
【0049】
また、図示の実施形態においては、同芯多重ノズル4の上部に可動壁4dを設けて薬液に振動を与えているが、これに代えてゼラチン溶液に振動を与えてもよく、また、薬液及びゼラチン溶液の双方に同期して振動を与えてもよい。
更に、可動壁は、薬液を同芯多重ノズル4内の薬液流路及び/又はゼラチン溶液流路を画成するものであれば、どのような形状、構造であってもよく、同芯多重ノズル4の近傍に設けることが望ましい。
【0050】
また、図示の実施形態においては、形成管20を垂直軸まわりに回転させ、その開口20aから硬化液を液滴と一緒に水平方向に流出させているが、形成管の開口を硬化槽21内の液中の上部位置であって外周寄りの位置に配置し、この開口から硬化槽21の接線方向、かつ、水平方向に向かうように硬化液と一緒に液滴を流出させることもできる。この場合、硬化槽21内の硬化液を旋回させることができる。その旋回流に載った液滴の軌跡は螺旋を描くことになるため、液滴の硬化槽内での搬送距離が延び、その結果、ゼラチン溶液は充分に硬化する。
【0051】
更に、硬化槽21内に貯溜された硬化液中に硬化液のみを接線方向、かつ、水平方向に向かうように流入させることによって硬化槽21内の硬化液を旋回させることもでき、この場合は形成管を省略し、同芯多重ノズル4の下端を硬化槽21内の硬化液中に浸漬すればよい。
また、同芯多重ノズル4からの併合流を大気中に流出させて大気中で液滴を形成させ、この液滴を硬化槽21内で旋回する硬化液の液面に落下させることもできる。
【0052】
【発明の効果】
本発明によれば、欠陥のないシームレスカプセルを効率的に製造することができる。従って、本発明は、医薬品や菓子・食品類等の製造産業において大いに利用され得るものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるシームレスカプセルの製造方法を実施するためのシステムを示す概略図である。
【図2】図1のシステムにおいて用いられる同芯多重ノズルとその近傍を示す部分的拡大図である。
【図3】 (A)、(B)、(C)、(D)はそれぞれシームレスカプセルの欠陥を示す説明図である。
【符号の説明】
4 同芯多重ノズル
4a 中心ノズル
4b 円環状ノズル
4c 室
4d 可動壁
11 可振器
1 薬液タンク
3 薬液ポンプ
5 ゼラチンタンク
14,16,17 二重管
15 ゼラチンタンク
6 中間加熱器
7 第1恒温槽
12 第2恒温槽
20 形成管
21 硬化槽
22 搬送管
23 セパレータ
24 篩板
25 樋
26 回収容器
27 冷却器
28 冷凍機
29 濾過材
30 硬化液管
31 硬化液ポンプ
32 リザーブタンク
Claims (10)
- 充填物質を皮膜物質で被覆してなるシームレスカプセルを製造する方法において、
中心ノズルと、その中心ノズルを同芯に囲む円環状ノズルとを有する同芯多重ノズルを用意するステップと、
液状の充填物質を第1のタンクにて貯溜するステップと、
液状の皮膜物質を第2のタンクにて、前記液状の皮膜物質の粘度を実質的に一定に維持する所定の第1の温度で貯溜するステップと、
液状の皮膜物質と接触することで当該皮膜物質を硬化させる硬化液を貯溜する硬化槽を用意するステップと、
前記第1のタンクから液状の充填物質を前記同芯多重ノズルの前記中心ノズルに供給すると共に、前記第2のタンクから液状の皮膜物質を前記同芯多重ノズルの前記円環状ノズルに供給するステップと、
前記中心ノズルから流出する液状の充填物質の流れと、前記円環状ノズルから流出して該充填物質の流れの周囲を流れる液状の皮膜物質の流れとを寸断して液滴を形成するステップと、
前記同芯多重ノズルからの液滴の皮膜物質を前記硬化槽に貯溜された硬化液と接触させて該皮膜物質を硬化させるステップと
を含み、
前記第2のタンクから前記同芯多重ノズルの前記円環状ノズルに液状の皮膜物質を移送しながら加熱することにより該皮膜物質を徐々に昇温せしめて、前記円環状ノズルに導入時の温度が前記第1の温度よりも高い所定の第2の温度とすることを特徴とするシームレスカプセルの製造方法。 - 前記第2のタンクと前記円環状ノズルとの間の液状の皮膜物質を移送するための移送管として、内管と、該内管を囲む外管とからなる二重管を用意し、
皮膜物質に対する前記加熱が、前記内管内に液状の皮膜物質を流通させると共に、前記内管と前記外管との間の環状空間に、皮膜物質を加熱するための加熱流体を流通させるステップを含むことを特徴とする請求項1に記載のシームレスカプセルの製造方法。 - 前記二重管の前記内管と連通する螺旋管を有する加熱器を前記二重管の中間に設け、
皮膜物質に対する前記加熱が、皮膜物質を加熱するための加熱流体を前記螺旋管の周囲に流通させるステップを含むことを特徴とする請求項2に記載のシームレスカプセルの製造方法。 - 前記同芯多重ノズル内に供給される液状の充填物質及び/又は液状の皮膜物質に振動を加え、これにより前記同芯多重ノズルから流出する液状の充填物質及び液状の皮膜物質の流れを寸断して液滴を形成することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のシームレスカプセルの製造方法。
- 前記振動は、前記同芯多重ノズル内の流路の一部を画成する壁部として可動壁を用い、前記可動壁を振動させることにより加えられることを特徴とする請求項4に記載のシームレスカプセルの製造方法。
- 前記同芯多重ノズルからの液滴を前記硬化槽内の硬化液中で穏やかに降下させることを特徴とする請求項4に記載のシームレスカプセルの製造方法。
- 前記同芯多重ノズルからの液滴を前記硬化槽内の硬化液中に、一の液滴の降下経路と次の液滴の降下経路とが水平方向において間隔があくように、分散させたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のシームレスカプセルの製造方法。
- 前記同芯多重ノズル内に供給される液状の充填物質及び/又は液状の皮膜物質に振動を加え、これにより前記同芯多重ノズルから流出する液状の充填物質及び液状の皮膜物質の流れを寸断して液滴を形成することを特徴とする請求項7に記載のシームレスカプセルの製造方法。
- 前記振動は、前記同芯多重ノズル内の流路の一部を画成する壁部として可動壁を用い、前記可動壁を振動させることにより加えられることを特徴とする請求項8に記載のシームレスカプセルの製造方法。
- 前記同芯多重ノズルからの液滴を前記硬化槽内の硬化液中で穏やかに降下させることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のシームレスカプセルの製造方法。
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