JP4610217B2 - 燃料電池型反応装置及びそれを用いる過酸化水素の製造方法 - Google Patents
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Description
しかしながら、これらの従来公知の方法においては、例えば、上記(I)の方法では、大量の有機溶媒の添加を必要とし、また、多くの副生物や触媒の劣化が生じるので、さまざまな分離工程や再生工程を必要とする等の経済的に不利な点があり、より安価な製造法の開発が求められている。また、上記(II)の方法においては、高価な電力エネルギーを必要とする問題点がある。さらに上記(III)の方法においては、同一反応器内において水素と酸素を混合させる必要があり、爆発危険性等の安全上の問題を有し、工業的製造法としては難点がある。
燃料電池システムの化学合成への応用例としては、(IV)エチレンおよびプロピレンの部分酸化反応(非特許文献2参照)、(V)ベンゼンの水酸化反応(非特許文献3参照)、(VI)メタノールの酸化的カルボニル化反応(非特許文献4参照)などが提案されている。
がカチオン交換膜によって区画された構造を有する装置を用いて、アノード室に水素、カソード室に酸素を供給して、中間室の電解質溶液中に過酸化水素を発生させる方法である。しかしながら、この方法では、過酸化水素の生成速度が向上するものの、過酸化水素の蓄積濃度の点において必ずしも満足できるものではなかった。このような問題点を改善するため、さらに本発明者らは、新たな構造からなる燃料電池型反応装置を用いて水素と酸素から過酸化水素を製造する方法(特許文献4参照)を提案した。この方法は、アノードの内側とカソードの内側の間に形成された中間室、アノードの外側にあるアノード室、及びカソードの外側にあるカソード室を有する三槽構造からなり、さらにその中間室がアニオン交換膜によってカソード側中間室とアノード側中間室とに仕切られており、このカソード側中間室とアノード側中間室にアルカリ電解質溶液が導入されている装置を用いて、アノード室に水素、カソード室に酸素を供給して、カソード側中間室に過酸化水素を発生させる方法である。この方法では、過酸化水素の蓄積濃度が8.5重量%と飛躍的に反応性が向上したが、生成する過酸化水素はアルカリ電解質溶液中に蓄積されるため、過酸化水素の用途が限定されるという問題を抱えていた。
化学工業界においては、これら過酸化水素の製造方法に限らず、有用な化学薬品をより効率的に製造するための反応方法や触媒の開発が常に求められている。
すなわち、本発明は、
[1]アノード及びカソードによりアノード室、中間室、カソード室に区画され、該中間室が、隔膜によって該アノードと該隔膜の間及び該カソードと該隔膜の間にそれぞれ位置するアノード側中間室とカソード側中間室に仕切られ、該アノード側中間室及び該カソード側中間室に酸性又は中性の電解質溶液が導入されており、該アノードと該カソードは外側で電子伝導体によって互いに接続されている燃料電池型反応装置であって、カソードが、ポルフィリンあるいはフタロシアニン系大環状配位子を有する金属錯体と導電性炭素材料を含む触媒電極であり、カソード室に導入された酸化性物質のガスと電解質溶液とカソードとの気体−液体−固体の三相界面が形成され、酸化性物質が2電子還元されることを特徴とする燃料電池型反応装置。
[2]ポルフィリンあるいはフタロシアニン系大環状配位子を有する金属錯体の錯形成をする金属が、マンガンである上記[1]に記載の燃料電池型反応装置。
[3]導電性炭素材料が、活性炭、カーボンファイバー、グラファイト、カーボンウィスカー、カーボンブラックおよびアセチレンブラックから選ばれた1種または2種以上の炭素材料である上記[1]又は[2]に記載の燃料電池型反応装置。
[5]電解質溶液が、HCl,H2 SO4 ,HNO3 ,HClO4 ,H3 PO4 から選ばれた1種以上を含む水溶液である上記[1]〜[4]のいずれかの燃料電池型反応装置。[6]酸化還元反応による化合物の製造方法であって、上記[1]〜[5]のいずれかの燃料電池型反応装置を用い、アノード室に水素供与体を導入し、そしてカソード室に酸素含有ガスを導入して、カソード側中間室において過酸化水素を得ることを特徴とする化合物の製造方法。
本発明の燃料電池型反応装置を用いることで、有用な化学物質を穏和な条件で高選択率、高効率的かつ経済的な方法で製造することができると共に、所望により電力を副産物として得ることができる。また、還元性物質及び酸化性物質がアノードとカソードで各々分離された状態で反応を行うことができるので、爆発混合気の形成による爆発危険性が回避でき、生成物と酸化生成物との逐次的な反応による副生物の生成を抑制でき、さらに反応活性、反応選択性が高いという利点がある。実施例に示すように、本発明の反応装置を用いることで、水素と酸素から過酸化水素を酸性電解質溶液中において、高選択率かつ高効率的に製造することができ、必要により、電気エネルギーを得ることもできる。
本発明の燃料電池型反応装置を用いて、本発明の方法により還元性物質(水素)と酸化性物質(酸素)から過酸化水素を製造するための反応の原理を示す概略図を図1に示す。図1に示す装置は、アノード4の内側とカソード5の内側の間に形成された中間室、アノード4の外側にあるアノード室1、及びカソード5の外側にあるカソード室3を有する三槽構造からなり、さらにその中間室が、隔膜12によって、カソード側中間室2Aとアノード側中間室2Bとに仕切られている。この中間室(2A、2B)には電解質溶液が導入される。アノード室1には還元性物質を供給するための還元性物質の入り口6と、還元性物質の排出口14があり、カソード室3には酸化性物質を供給するための酸化性物質の入り口7及び酸化性物質の排出口15 がある。また、アノード側中間室2Bには所望により電解質溶液の入り口11と電解質溶液の出口13があり、カソード側中間室2Aには所望により電解質溶液の入り口8を設けることができる。その際、アノード側中間室2B及びカソード側中間室2Aが電解質溶液の入り口を有さない場合は、アノード側中間室2B及びカソード側中間室2Aが電解質溶液を含むような状態で反応装置が提供される。生成した過酸化水素を含む電解質溶液を中間室から抜き出す場合には、入り口8を用いて過酸化
水素を抜き出してもよい。また、アノード側中間室中の電解質溶液を連続的に供給する場合は、入り口11と出口13を用いて電解質溶液を供給することができる。電解質溶液を連続的に供給しない場合は、出口13を閉止すればよい。
本発明で用いるアノードは、触媒の役割を果たすアノード活物質からなりイオン伝導性又は活性種伝導性を有するものである。また、本発明で用いるカソードは、触媒の役割を果たすカソード活物質からなりイオン伝導性又は活性種伝導性を有するものである。ここで「活性種」とは、アノードについては、還元性物質に由来する、反応性を有する化学種であり、アノード室から中間室に向かってアノードを通過するものを意味する。カソードについては、酸化性物質に由来する、反応性を有する化学種であり、カソード室側から中間室に向かってカソードを通過するものを意味する。
本発明において、還元性物質として水素を用いる場合には、アノード活物質として、水素をプロトンにするための公知な触媒、例えば、前述した周期律表の8〜10族から選ばれる金属、好ましくはPt、Pdなどの金属又はこれらの化合物が用いられる。また、カソード活物質としては、前述した電気伝導性を有する導電性炭素材料、好ましくは活性炭、カーボンファイバー、グラファイト、カーボンウィスカー、カーボンブラックから選ばれた炭素材料を単独、もしくは2種以上の混合物として用いられる。
ここで、金属ポルフィリン類としては、ポルフィリン環の中心に金属原子を有するものであればよく、各種のものがある。ポルフィリン環には様々な置換基(フェニル基、置換
(メチル、カルボキシル、臭素、フッ素、ヒドロキシル、アミノ、スルホン)フェニル基等)が結合したものでもよく、また無置換のもの(次式(1)参照)でもよい。好ましくは、ポルフィリン、テトラフェニルポルフィリン、オクタエチルポルフィリン、プロトポルフィリン、テトラキス(カルボキシフェニル)ポルフィリン、テトラ(1−メチル−4−ピリジル)ポルフィリン等のポルフィリン類が用いられる。
分散させた後、溶媒を留去して導電性炭素材料に含浸担持する方法などが挙げられる。この場合、溶媒としては、ジメチルホルムアミド、キノリン、アセトン、ジクロロメタンあるいは水などを使用することができる。これらの混合物はそのままの状態でもカソード活物質として使用できるが、好ましくは上記混合物を熱処理したものを使用する。熱処理は、酸素、空気、不活性ガス中で行うことができるが、窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガス中で熱処理を行うことが好ましい。熱処理温度は、100〜900℃、好ましくは200〜700℃である。
以上、本発明の装置に用いるアノード活物質及びカソード活物質の組成について述べたが、電極として、金属及び/又はその化合物を、導電性炭素材料と組み合わせて用いる場合には、両者の重量の合計に対する前者の重量(金属換算)の比が0.01〜50重量%であることが好ましく、0.1〜30重量%であることがより好ましい。
後述の実施例で示されるように本発明の方法によって水素と酸素から過酸化水素を製造する場合には、アノードとして、白金黒及びカーボンファイバーを含む電極が好ましく用いられる(この場合、カーボンファイバーは、活物質としてではなく、導電性を上げる目的で添加されている)。なお、一般に燃料電池で使用されている入手しやすい電極を用いてもよい。
また、カソードとしては、マンガンポルフィリン類あるいはマンガンフタロシアニン類を活性炭に含浸担持したものを不活性ガス中で熱処理したものを電極成分として用いることが好ましい。
上述したアノード及びカソードは、上述した各主成分以外に撥水剤を混合して用いることが好ましい。この場合、撥水剤としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレンオリゴマー(TFEO)、フッ化黒鉛((CF)n )、フッ化ピッチ(FP)などが例示される。これら撥水剤は、本発明において、ガス(還元性物質、酸化性物質)と液体(電解質溶液)と固体電極(アノード、カソード)との気体−液体−固体における三相界面での電気化学的反応効率を向上させる効果を持つ。また、これら撥水剤は、触媒粒子の結着剤としても機能するので、上記成分と物理混合してホットプレスすることによりシート状に成型して電極として用いることができる。撥水剤を用いる場合の使用量は、使用する電極活物質の1〜250重量%、好ましくは25〜100重量%とすることができる。
間室2Aにおけるカソード5近傍で生成した過酸化水素のアノード4側への拡散を防ぐことができるので、分解反応などの副反応が抑制され、目的生成物の選択率及び収率が向上するという利点がある。
電解質溶液の供給方法としては、予めカソード側中間室2Aに所望により設けられた電解質溶液の入り口8及びアノード側中間室2Bに設けられた電解質溶液の入り口11から電解質溶液を導入しておいた後、アノード室に還元性物質、カソード室に酸化性物質を供給して反応を行わせる方法が用いられる。また、電解質溶液をアノード側中間室に連続的に供給する場合は、上記で説明したようにアノード側中間室2Bに電解質溶液の入り口11と電解質溶液の排出口13を設けて、中間室下部から上部へのアップフローで電解質溶液を連続的に供給してもよいし、また、電解質溶液を上部から下部へのダウンフローで連続的に供給してもよく、電解質溶液の供給方法は特に限定されない。電解質溶液を連続的に供給する場合の流量は、反応装置のスケールに合わせて適宜選択できるが、通常、0.1ml/時間〜100000ml/時間、好ましくは0.5ml/時間〜1000ml/時間とすることができる。
本発明で用いる酸化性物質としては、電子受容能力を有する化合物であれば特に制限はなく、例えば空気、酸素、酸化窒素などが挙げられ、好ましくは空気又は酸素が用いられる。また、これら酸化性物質は必ずしも純粋である必要はなく、窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガスとの混合物であってもよい。
本発明の方法においては、反応装置のスケールにともなって変わる種々の条件(例えば、還元性物質、酸化性物質及び電解溶液の供給量など)は、反応装置のスケールにあわせて適宜選択できる。
上記還元性物質及び酸化性物質がアノード室又はカソード室に供給される場合、それぞれの流量は、反応装置のスケールに合わせて適宜選択できるが、通常、それぞれの流量は0.1ml/分〜100000ml/分、好ましくは1ml/分〜1000ml/分とすることができる。
本発明の方法における反応条件としては、反応温度は、通常−20〜200℃、好ましくは−5〜150℃の範囲から選択される。また、反応時の還元性物質及び酸化性物質の圧力は、常圧で行うことができるが、所望により、加圧下でも減圧下でも実施することができる。加圧下で行う場合は、常圧を越えて100気圧以下とすることができる。減圧下で行う場合は、常圧未満で10-2Torr以上とすることができる。反応時間は、反応生
生物の選択率や収率の実質的な目標値を定め、適宜選択すればよく、特に制限されないが、通常、数秒ないし数時間である。
反応生成物は、反応装置中の反応混合物から慣用の手段、例えば、蒸留又は抽出などを公知の分離手段によって分離し、所望の純度にすることができる。なお、反応装置の大きさについては特に制限はないが、例えば、中間室の容積は約0.1cm3 から約10m3 の範囲から選択することができ、カソード室及びアノード室の容積もそれに合わせて調整することができる。
H2 → 2H + + 2e- (1)
O2 + 2H + + 2e- → H2 O2 (2)
すなわち、アノード4に供給された水素供与体である水素は、電極上でプロトンと電子を放出し((1)式)、プロトンは中間室2の電解質溶液に移動し、隔膜12を通過してアノード側電解質溶液室2Bからカソード側電解質溶液室2Aへ移動し、一方、電子は外部回路を経由してカソード5に移動する。そして、カソード5では供給された酸素が電子及びプロトンと反応して、生成物である過酸化水素が得られる((2)式)。
[実施例1]
実施例1では図2と図3に示す燃料電池型反応装置を用いて、酸素と水素からの過酸化水素の製造を行った。この反応装置は、アノード4の内側とカソード5の内側の間に形成された中間室と、アノード4の外側にあるアノード室1と、カソード5の外側にあるカソード室3を有する三槽構造からなり、さらに中間室が隔膜12より、カソード側中間室2Aとアノード側中間室2Bとに仕切られている。隔膜12としては、ナフィオン117膜(円形、厚さ:0.2mm、直径:約25mm、米国デュポン製)を用いた。アノード側中間室2Bには電解質溶液の入口11と排出口13が設けられている。また、カソード側中間室2Aには電解質溶液の入口8が設けられている。アノード側中間室及びカソード側中間室には、入口11及び入口8から、電解質溶液として、1.2N硫酸水溶液を各々1.2ml量導入した。アノード室1は還元性物質(水素)の入口6と、余剰の還元性物質の排出口14を有する。カソード室3は酸化性物質(酸素)の入口7と、余剰の酸化性物
質の排出口15を有する。アノード4とカソード5の上には集電のための金製メッシュ21が配され、金製リード線9によって、電流計10を介して短絡されている。
得られた過酸化水素の生成濃度は1.98重量%、生成速度は0.288mmol・cm-2・h-1、電流効率は30.3%、電流密度は51.0mA・cm-2であった。電流効率は、流れた電気量を無抵抗電流計とクーロンメーターを用いて計測し、下記の式によって求めた。
電流効率=(過酸化水素蓄積量(mol)×100/(流れた電気量(C )/9650
0(C/mol))式中の電気量とは、計測クーロン値(Q)を平均電流値に換算した値である(I(A)=Q(C)・3600(S))。
反応時間を4時間とした以外は実施例1と同様にして反応を行った。過酸化水素の生成濃度は2.56重量%、生成速度は0.217mmol・cm-2・h-1、電流効率は25.8%、電流密度は45.1mA・cm-2であった。
[実施例3]
カソード活成分として、オクタエチルポルフィリン塩化マンガン(アルドリッチ社
製)を用い、担持量をマンガン金属基準で1重量%とした以外は実施例1と同様にして反応を行った。過酸化水素の生成濃度は2.26重量%、生成速度は0.356mmol・cm-2・h-1、電流効率は34.1%、電流密度は56.1mA・cm-2であった。
[実施例4]
カソード活成分として、テトラ(スルホフェニル)ポルフィリン塩化マンガン(アルドリッチ社製)を用い、担持量をマンガン金属基準で1重量%とした以外は実施例1と同様
にして反応を行った。過酸化水素の生成濃度は1.79重量%、生成速度は0.265mmol・cm-2・h-1、電流効率は29.9%、電流密度は50.3mA・cm-2であった。
カソード活成分として、テトラ(1−メチル−4−ピリジル)ポルフィリン塩化マンガン(アルドリッチ社製)を用い、担持量をマンガン金属基準で1重量%とした以外は実施例1と同様にして反応を行った。過酸化水素の生成濃度は1.20重量%、生成速度は
0.180mmol・cm-2・h-1、電流効率は20.8%、電流密度は46.3mA・cm-2であった。
[実施例6]
電解質溶液として、1.2N 塩酸水溶液を用いた以外は実施例1と同様にして反応を
行った。過酸化水素の生成濃度は1.91重量%、生成速度は0.306mmol・cm-2・h-1、電流効率は23.9%、電流密度は68.7mA・cm-2であった。
[実施例7]
電解質溶液として、1.2N 硝酸水溶液を用いた以外は実施例1と同様にして反応を
行った。過酸化水素の生成濃度は1.58重量%、生成速度は0.255mmol・cm-2・h-1、電流効率は17.6%、電流密度は77.5mA・cm-2であった。
電解質溶液として、1.2N 過塩素酸水溶液を用いた以外は実施例1と同様にして反
応を行った。過酸化水素の生成濃度は1.62重量%、生成速度は0.253mmol・cm-2・h-1、電流効率は18.9%、電流密度は71.5mA・cm-2であった。
[実施例9]
アノード側中間室2Bに導入された1.2N硫酸水溶液を1.5ml/時間で連続的に供給した以外は実施例1と同様にして反応を行った。過酸化水素の生成濃度は1.95重量%、生成速度は0.285mmol・cm-2・h-1、電流効率は39.0%、電流密度は42.0mA・cm-2であった。
[実施例10]
実施例1と同様にして調製したカソードの繰り返し使用を行った。反応条件は実施例1と同様にして行った。反応1回目の過酸化水素の生成濃度は1.91重量%、生成速度は0.313mmol・cm-2・h-1、電流効率は33.0%、電流密度は50.9mA・cm-2、反応2回目の過酸化水素の生成濃度は2.09重量%、生成速度は0.346mmol・cm-2・h-1、電流効率は39.9%、電流密度は46.4mA・cm-2、反応3回目の過酸化水素の生成濃度は2.05重量%、生成速度は0.331mmol・cm-2・h-1、電流効率は41.0%、電流密度は43.3mA・cm-2となり、繰り返し使用による電極の劣化は認められなかった。
開回路条件(両極間を短絡させない)とした以外は、実施例1と同様にして反応を行った。その結果、反応は進行せず、過酸化水素の生成は認められなかった。
[比較例2]
アノード室に水素と酸素の混合ガスを供給した以外は、実施例1と同様にして反応を行った。その結果、反応は進行するが、過酸化水素は生成せず、得られた生成物は水のみであった。
[比較例3]
カソード室に水素と酸素の混合ガスを供給した以外は、実施例1と同様にして反応を行った。その結果、反応は進行せず、過酸化水素の生成は認められなかった。
比較例1〜3の結果より、本反応は燃料電池型反応によって進行することが明白である。
カソード活物質として、ポルフィリンマンガン塩を含浸担持せずに活性炭粉末(和光純薬工業(株)製)のみをヘリウムガス中、550℃で2時間加熱処して得られたものを用いた以外は実施例1と同様にして反応を行った。過酸化水素の生成濃度は0.81重量%、生成速度は0.116mmol・cm-2・h-1、電流効率は20.2%、電流密度は30.8mA・cm-2であった。
[比較例5]
カソード活物質として、塩化マンガン (和光純薬製)を用いた以外は実施例1と同様にして反応を行った。過酸化水素の生成濃度は0.80重量%、生成速度は0.116mmol・cm-2・h-1、電流効率は18.0%、電流密度は34.4mA・cm-2であった。
カソード活物質として、マンガンアセチルアセトナート(アルドリッチ社製)を用いた以外は実施例1と同様にして反応を行った。過酸化水素の生成濃度は0.60重量%、生成速度は0.087mmol・cm-2・h-1、電流効率は16.4%、電流密度は28.3mA・cm-2であった。
[比較例7]
カソード活物質として、テトラフェニルポルフィリン(アルドリッチ社製)を用いた以外は実施例1と同様にして反応を行った。過酸化水素の生成濃度は0.61重量%、生成速度は0.088mmol・cm-2・h-1、電流効率は13.0%、電流密度は36.2mA・cm-2であった。
2A カソード側中間室(電解質溶液が含まれる)
2B アノード側中間室(電解質溶液が含まれる)
3 カソード室
4 アノード
5 カソード
6 還元性物質(水素)の入口
7 酸化性物質(酸素)の入口
8 電解質溶液の入口
9 リード線
10 電流計
11 電解質溶液の入口
12 隔膜
13 電解質溶液の出口
14 還元性物質(水素)の排出口
15 酸化性物質(酸素)の排出口
21 金製メッシュ
22 テフロン(登録商標)製押え板A
23 テフロン(登録商標)製押え板B
24 テフロン(登録商標)製スペーサー
25 シリコン製スペーサー
Claims (6)
- アノード及びカソードによりアノード室、中間室、カソード室に区画され、該中間室が、隔膜によって該アノードと該隔膜の間及び該カソードと該隔膜の間にそれぞれ位置するアノード側中間室とカソード側中間室に仕切られ、該アノード側中間室及び該カソード側中間室に酸性又は中性の電解質溶液が導入されており、該アノードと該カソードは外側で電子伝導体によって互いに接続されている燃料電池型反応装置であって、カソードが、ポルフィリンあるいはフタロシアニン系大環状配位子を有する金属錯体と導電性炭素材料を含む触媒電極であり、カソード室に導入された酸化性物質のガスと電解質溶液とカソードとの気体−液体−固体の三相界面が形成され、酸化性物質が2電子還元されることを特徴とする燃料電池型反応装置。
- ポルフィリンあるいはフタロシアニン系大環状配位子を有する金属錯体の錯形成をする金属が、マンガンである請求項1に記載の燃料電池型反応装置。
- 導電性炭素材料が、活性炭、カーボンファイバー、グラファイト、カーボンウィスカー、カーボンブラックおよびアセチレンブラックから選ばれた1種または2種以上の炭素材料である請求項1又は2に記載の燃料電池型反応装置。
- 電解質溶液が、酸性の電解質溶液である請求項1〜3のいずれか1項に記載の燃料電池型反応装置。
- 電解質溶液が、HCl,H2 SO4 ,HNO3 ,HClO4 ,H3 PO4 から選ばれた1種以上を含む水溶液である請求項1〜4のいずれか1項に記載の燃料電池型反応装置。
- 酸化還元反応による化合物の製造方法であって、請求項1〜5のいずれか1項に記載の燃料電池型反応装置を用い、アノード室に水素供与体を導入し、そしてカソード室に酸素含有ガスを導入して、カソード側中間室において過酸化水素を得ることを特徴とする化合物の製造方法。
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