JP4609582B2 - 地下水浄化システム - Google Patents

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Description

本発明は、硝酸態窒素で汚染された地下水を浄化する地下水浄化システムに関する。
最近、地下水に含まれる有害汚染物質として硝酸態窒素が問題となっている。かかる問題は、湖沼、河川等の閉鎖性水域において窒素やリンによる水質の富栄養化が進行し、その結果、硝酸態窒素という形で地下水に流入することが原因であると考えられている。
硝酸態窒素は、農薬、除草剤、肥料、糞尿などに含まれる窒素成分が微生物により分解を受けた結果生じてくる物質であるが、この硝酸性窒素が体内に入ると、還元されて亜硝酸性窒素に変化し、発ガン性物質であるニトロソアミンという物質を生成したり、血液中のヘモグロビンの機能を低下させて酸素欠乏を引き起こしてチアノーゼ症状に陥る、いわゆるメトヘモグロビン血症を引き起こしたりすることが指摘されている。
そのため、地下水に含まれる硝酸態窒素をあらかじめ健康被害を生じない濃度以下となるように除去しなければならない。
特開2000−232876号公報 特開平10−113693号公報 特開平10−286590号公報
水に含まれる硝酸態窒素を除去する方法として、該硝酸態窒素をプラントで還元して窒素ガスに変える試みがなされており、既に実用化されているものもある。
ここで、プラントで実用化されている手法としては、スリースラッジ法、デュアルスラッジ法、シングルスラッジ法などがあるが、いずれも、中間工程において硝酸態窒素を還元させるために水素供与体(通常、メタノール)が別途必要となる、あるいはpHを中和するアルカリ剤の添加が必要となるという問題や、その結果として反応過程が複雑になるという問題を生じており、大量の汚染水を効率よくかつ低コストに処理するには未だ改善の余地があった。
また、硝酸態窒素で汚染された地下水を浄化することに加えて、そもそもそのような事態が生じるのを未然に防止する技術の開発も待たれていた。
本発明は、上述した事情を考慮してなされたもので、地下水に含まれる硝酸態窒素を低コストでかつ効率よく除去可能な水質浄化システムを提供することを目的とする
上記目的を達成するため、本発明に係る地下水浄化システムは、請求項1に記載したように、揚水管の周囲に、脱窒作用を有しかつ透水性及び通気性を有する水質浄化材を中実に形成してなる水質浄化枡を地盤に埋設し、地下水が前記水質浄化材を通過して、前記揚水管により揚水されるように構成したものである。
また、本発明に係る水質浄化システムは、前記水質浄化材を、石灰と、硫黄及び硫黄酸化細菌とを混合して構成したものである。
また、本発明に係る水質浄化システムは、前記水質浄化材を、水硬性材料を含むアルカリ性排泥と、硫黄及び硫黄酸化細菌とを、前記アルカリ性排泥の固化前に混合して構成したものである。
また、本発明に係る水質浄化システムは、前記水質浄化材を、水硬性材料を含むアルカリ性排泥が該水硬性材料の固化作用によって固化した排泥固化体と、硫黄及び硫黄酸化細菌とを混合して構成したものである。
このようにすると、水質浄化材の脱窒作用によって水中の硝酸態窒素は、窒素ガスに還元される。
例えば、請求項2乃至請求項4に係る発明においては、水質浄化材に硫黄及び硫黄酸化細菌を含んでおり、かかる水質浄化材と硝酸態窒素を含む水とが接触すると、水質浄化材中の硫黄が硫黄酸化細菌の酵素活性によって酸化されるとともに、その酸化反応に伴って、該硫黄が電子供与体となり、水中の硝酸態窒素を窒素ガスに還元する。
ここで、硫黄は自ら酸化されることにより硫酸となるが、石灰やアルカリ性排泥中のアルカリ成分によって中和される。例えば、石灰やアルカリ性排泥中の炭酸カルシウムや水酸化カルシウムと中和することにより、硫酸は中性の石膏となる。そのため、硫酸によってpHが小さくなり、硫黄酸化細菌の酵素活性が低下するのを防止することができることはもちろん、アルカリ性排泥の場合は特に、従来、産業廃棄物として処分せざるを得なかったものが、本発明によれば、硝酸態窒素を無害化する原材料として有効利用することができるという顕著な作用効果を奏する。
硝酸態窒素汚染の問題は、微生物分野では本願出願の時点で既に知られているところであるとともに、かかる硝酸態窒素を脱窒させる方法として硫黄と硫黄酸化細菌とを使用できる可能性や石灰石で硫酸を中和させることができることも知られている。
一方、土木建築業界においては、地中連続壁工法などの泥水工法でアルカリ性排泥が大量に発生し、その廃棄処分が大きな社会的問題となっているとともに、硝酸態窒素で汚染された地下水を水源とする際、経済的に実現性の高い浄化技術の開発が待たれていた。加えて、硝酸態窒素で汚染された汚染水が地盤に浸透して地下水に流入するのを未然に防止する浄化技術の開発も待たれていた。
本出願人は、かかる問題や、ガソリン精製等での脱硫工程で硫黄が余剰しつつある社会状況をも踏まえつつ、上述した微生物分野における公知技術を土木建築業界で活かすことはできないかという点に着眼し、さまざまな研究開発を行った結果、上述した新規な知見を得たものであり、その知見は産業上きわめて有意義な知見であることを念のため付言しておく。
水質浄化材が透水性、又は透水性及び通気性を備えるようにするには、例えばひび割れを生じるように成分調整する方法や、発泡剤等を添加することで多孔質体とする方法が考えられる。
水質浄化材を揚水管の周囲に中実に形成するとは、例えば、揚水管の周囲において中実円筒状又は角筒状に構成する場合を含む。
水質浄化材を揚水管の周囲に中実に形成する構成においては、該揚水管内を水質浄化材の内部透水空間に連通させるとともに、揚水管の、水質浄化材の周囲に形成される箇所においては、多数の孔を設けておくのが望ましい。内部透水空間とは、主として微細なクラックや空隙を意味する。
ここで、請求項1記載の水質浄化枡を使用するには、該水質浄化枡を構成する水質浄化材の内部通気空間が大気に連通するように地表面近傍に埋設する。内部通気空間とは、内部透水空間と同様、主として微細なクラックや空隙を意味し、内部透水空間と兼ねてもよい。
囲の地下水が硝酸態窒素で汚染されている環境でその地下水を水源として利用するべく、水源用浄化枡の内部透水空間の水を揚水管を介して揚水する。
このようにすれば、透水工程で上述した脱窒作用が生じ、地下水に含まれている硝酸態窒素は還元されて窒素ガスとなり、かかる窒素ガスは、水質浄化材の内部通気空間を介して大気へと放出される。そして、揚水された水は、硝酸態窒素が除去された水として利用することが可能となる
水質浄化材は、脱窒作用を有しかつ透水性を有するものであり、又は脱窒作用を有しかつ透水性及び通気性を有する水質浄化材であれば、どのようなものでもよいが、上述したように硫黄及び硫黄酸化細菌を含む構成がよい。
例えば、石灰と、硫黄及び硫黄酸化細菌とを混合して構成する、水硬性材料を含むアルカリ性排泥が該水硬性材料の固化作用によって固化した排泥固化体と、硫黄及び硫黄酸化細菌とを混合して構成する、水硬性材料を含むアルカリ性排泥と、硫黄及び硫黄酸化細菌とを、前記アルカリ性排泥の固化前に混合して構成するなどの態様が考えられる。なお、硫黄の酸化反応を触媒する硫黄酸化細菌の酵素活性に必要な酵素活性物質、例えば炭素源あるいは有機物については、必要に応じて適宜添加すればよい。例えば、炭、木材、サトウキビの絞りかす、廃材などが考えられる。
水硬性材料にはセメントや石灰が含まれる。
水硬性材料を含むアルカリ性排泥は、主として地中連続壁工法、泥水シールドなどの泥水工法で生じた排泥が対象となるが、運送の便宜のため、固化させる目的で水硬性材料が添加された排泥であってアルカリ性を呈しているものであれば、上述した泥水工法で生じた排泥に限定されるものではない。また、水硬性材料の固化作用は、セメントによる水和反応を主として意味する。
なお、水硬性材料を含むアルカリ性排泥と、硫黄及び硫黄酸化細菌とを、アルカリ性排泥の固化前に混合して水質浄化材を構成する場合、硫黄の酸化反応を硫黄酸化細菌が触媒するには、微生物活性が高くなるまで待たねばならず、それには日数を要するため、アルカリ性排泥に添加したとしても、硫黄の酸化反応が始まるまでには、アルカリ性排泥が固化する。したがって、水質浄化構造を構築する際に硫黄が酸化されてしまう懸念はほとんどない。
本発明に係る水質浄化システムによれば、水質浄化材と硝酸態窒素を含む地下水が接触すると、水質浄化材中の硫黄が硫黄酸化細菌の酵素活性によって酸化されるとともに、その酸化反応に伴って、該硫黄が電子供与体となり、地下水中の硝酸態窒素を窒素ガスに還元し、該地下水を浄化することができる。
第1実施形態に係る水質浄化システムの図であり、(a)は鉛直断面図、(b)はA−A線方向に沿う水平断面図。
以下、本発明に係る水質浄化システムの実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る水質浄化システムを示した断面図である。同図に示すように、本実施形態に係る水質浄化システムを構成する水源用浄化枡1aは、揚水管11の周囲に水質浄化材を中実に形成してある。
水源用浄化枡1aは、脱窒作用を有しかつ透水性及び通気性を有する水質浄化材で製造すればよいが、具体的には以下の3つの方法で製造することができる。
(i)石灰と、硫黄及び硫黄酸化細菌とを混合することで水源用浄化枡1aを構成する。
この場合、中実円筒状に形成できる型枠を予め製作し、その中に予め揚水管11を配置し、次いで、上述した石灰、硫黄及び硫黄酸化細菌を水とともに混合投入し、固化させればよい。
このようにすれば、揚水管11は、水質浄化材の内部透水空間に連通することとなり、該水質浄化材に透水してきた水を揚水することが可能となる。
周囲に水質浄化材が形成される揚水管11には、多数の透水孔12を設けておくのが望ましい。
固化の際には、意図的にひび割れを生じさせたり、発泡剤を添加して多孔質に形成するなど公知の技術を適宜採用することで透水性及び通気性を確保する。
(ii)セメントを含むアルカリ性排泥が該セメントの固化作用によって固化した排泥固化体と、硫黄及び硫黄酸化細菌とを混合することで水源用浄化枡1aを構成する。
この場合、中実円筒状に形成できる型枠を予め製作し、その中に予め揚水管11を配置し、次いで、上述した排泥固化体と、硫黄及び硫黄酸化細菌とを投入するとともにそれらを固化させるための固化剤、例えばセメントミルクを追加投入して固化させればよい。固化の際には、意図的にひび割れを生じさせたり、発泡剤を添加して多孔質に形成するなど公知の技術を適宜採用することで透水性及び通気性を確保する。
(iii)水硬性材料であるセメントを含むアルカリ性排泥と、硫黄及び硫黄酸化細菌とを、アルカリ性排泥の固化前に混合することで水源用浄化枡1aを構成する。
この場合、中実円筒状に形成できる型枠を予め製作し、その中に予め揚水管11を配置し、次いで、上述したアルカリ性排泥と、硫黄及び硫黄酸化細菌とを混合投入し、固化させればよい。固化の際には、意図的にひび割れを生じさせたり、発泡剤を添加して多孔質に形成するなど公知の技術を適宜採用することで透水性及び通気性を確保する。
上述した(i),(ii),(iii)の各製造方法においては、硫黄の酸化反応を触媒する硫黄酸化細菌の酵素活性に必要な酵素活性物質、例えば炭素源あるいは有機物を必要に応じて適宜添加すればよい。例えば、炭、木材、サトウキビの絞りかす、廃材などが考えられる。
なお、硫黄の酸化反応を硫黄酸化細菌が触媒するには、微生物活性が高くなるまで時間を要するため、石灰やアルカリ性排泥に硫黄及び硫黄酸化細菌を混合して固化させる場合、石灰やセメントの水和反応で水が消費されることとも相まって、水源用浄化枡1が完成するまでの間、微生物活性が高くなって硫黄が酸化されてしまう懸念はほとんどない。
ちなみに、設置後は、水源用浄化枡1aを構成する水質浄化材の内部透水空間に地下水が透水してくるので、かかる内部透水空間内で硫黄酸化細菌が硫黄を酸化するとともにそのときに硫黄が電子供与体として地下水に含まれる硝酸態窒素を還元し、窒素ガスに変える。また、硫黄の酸化で生じた硫酸は、石灰やセメントに起因するアルカリ成分で中和されるため、硫黄酸化細菌の酵素活性も低下しない。
また、アルカリ性排泥を用いる(ii),(iii)の製造方法の場合、アルカリ性排泥と硫黄との混合比は、重量比で例えば50〜90:50〜10とすればよい。
原材料であるアルカリ性排泥は、地中連続壁工事で発生した排泥を用いるのがよい。地中連続壁工事においては、地盤掘削を行う際、掘削された孔壁の崩落を防止すべく、掘削孔内に安定液として泥水を入れながら掘削を行うが、掘削終了後は、水中コンクリートを打設しながら安定液を置換回収する。
この使用済安定液が排泥となるが、水中コンクリートと置換回収されたものであるため、排泥中にはセメントが混入しており、それゆえ、かかる排泥は、アルカリ性排泥となっている。
このように製造された水源用浄化枡1aを、周囲の地下水が硝酸態窒素で汚染されている環境でその地下水を水源として利用したい場合に使用するには、図2に示すように水源用浄化枡1aを構成する水質浄化材の内部通気空間が大気に連通するように地盤4の地表面近傍に埋設する。
水源用浄化枡1aの埋設深さは、該水源用浄化枡を構成する水質浄化材の内部透水空間を介して透水してきた水を揚水することで該内部透水空間の水位を周囲の地下水位よりも低くできる深さとする。
ここで、地下水位が低いために水源用浄化枡1aの埋設深さが深くなり、そのために揚程が大きくなるようであれば、水源用浄化枡1aの底部に揚水ポンプを設置し、該揚水ポンプに揚水管11を接続して地上に揚水するようにすればよい。
このように設置された水源用浄化枡1aにおいては、周囲の地下水が該浄化枡を構成する水質浄化材を透水してその内部透水空間に流入することとなるが、かかる透水の際、水質浄化材の脱窒作用によって地下水中の硝酸態窒素は、窒素ガスに還元される。
すなわち、水源用浄化枡1aを構成する水質浄化材と硝酸態窒素を含む地下水とが接触すると、水質浄化材中の硫黄が硫黄酸化細菌の酵素活性によって酸化されるとともに、その酸化反応に伴って、該硫黄が電子供与体となり、地下水に含まれている硝酸態窒素は還元されて窒素ガスとなり、かかる窒素ガスは、水源用浄化枡1aを構成する水質浄化材の内部通気空間を介して大気へと放出される。そして、揚水された水は、硝酸態窒素が除去された水として利用することが可能となる。
ここで、上述したように、硫黄酸化で生じた硫酸は、石灰やアルカリ性排泥中のアルカリ成分によって中和され、硫酸は中性の石膏となる。そのため、硫酸によってpHが小さくなり、硫黄酸化細菌の酵素活性が低下するのを防止することができる。
内部透水空間と内部通気空間とは、水質浄化材内のひび割れ部や空隙部がこれらを兼用することとなる。
以上説明したように、本実施形態に係る水源用浄化システム1によれば、水質浄化材と硝酸態窒素を含む地下水とが接触すると、水質浄化材中の硫黄が硫黄酸化細菌の酵素活性によって酸化されるとともに、その酸化反応に伴って、該硫黄が電子供与体となり、地下水中の硝酸態窒素を窒素ガスに還元する。
そのため、地下水に含まれる硝酸態窒素を低コストでかつ効率よく除去することができるとともに、水源用浄化枡1aの中空空間2に流入した水は、硝酸態窒素が除去された処理水となるため、これを地上に揚水することにより、水源として有効利用することが可能となる。
一方、硫黄は自ら酸化されることにより硫酸となるが、アルカリ性排泥中のアルカリ成分によって中和されるため、硫酸によってpHが小さくなり、硫黄酸化細菌の酵素活性が低下するのを防止することができる。
なお、アルカリ性排泥はリンの吸着能が高いため、本実施形態に係る水源用浄化枡1を構成する水質浄化材は、硝酸態窒素の浄化作用のみならず、リンを吸着除去する作用効果も有する。
また、本実施形態に係る水源用浄化枡1aによれば、従来、産業廃棄物として処分せざるを得なかったアルカリ性排泥を、硝酸態窒素を無害化する原材料として有効利用することができるという顕著な作用効果を奏する。
また、本実施形態に係る水質浄化枡1aによれば、ガソリン精製等での脱硫工程で余剰しがちな硫黄を有効活用することもできる。
本実施形態では特に言及しなかったが、硝酸態窒素の汚染濃度が高い場合、揚水した水をすぐに利用せず、それに代えて、地盤に浸透させては水源用浄化枡1を介して揚水するという手順を繰り返すことにより、高濃度の地下水汚染区域を確実に浄化することが可能となる。
ちなみに、その場合の揚水エネルギーを、風力発電等の自然エネルギーから変換された電気エネルギーでまかなうようにすると、エネルギーの面で自給自足が可能な環境修復システムの構築が可能となる
1a 水源用浄化
中空空間
4 地盤
揚水

Claims (4)

  1. 揚水管の周囲に、脱窒作用を有しかつ透水性及び通気性を有する水質浄化材を中実に形成してなる水質浄化枡を地盤に埋設し、地下水が前記水質浄化材を通過して、前記揚水管により揚水されるように構成したことを特徴とする地下水浄化システム
  2. 前記水質浄化材を、石灰と、硫黄及び硫黄酸化細菌とを混合して構成した請求項1に記載の水質浄化システム
  3. 前記水質浄化材を、水硬性材料を含むアルカリ性排泥と、硫黄及び硫黄酸化細菌とを、前記アルカリ性排泥の固化前に混合して構成した請求項1に記載の水質浄化システム
  4. 前記水質浄化材を、水硬性材料を含むアルカリ性排泥が該水硬性材料の固化作用によって固化した排泥固化体と、硫黄及び硫黄酸化細菌とを混合して構成した請求項1に記載の水質浄化システム
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