JP2010022978A - 汚染土壌又は地下水の浄化方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】油分等の有機化合物で汚染された土壌又は地下水に窒素系栄養剤及びリン系栄養剤を添加して効率的に浄化する。
【解決手段】有機化合物により汚染された土壌又は地下水に、アンモニウム基を持つ窒素系栄養剤及びリン系栄養剤を添加することにより、該汚染土壌又は地下水を浄化する汚染土壌又は地下水の浄化方法であって、該土壌又は地下水の一部をサンプルとして採取し、サンプル中に含まれる微生物が有機化合物を酸化分解するときの酸素消費量又は二酸化炭素発生量の1/60〜1/15倍(窒素換算重量)の前記窒素系栄養剤を、前記土壌又は地下水に添加することを特徴とする、汚染土壌又は地下水の浄化方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、油分等の有機化合物により汚染された土壌又は地下水を浄化する方法に関するものであり、詳細には、土壌又は地下水に、アンモニウム基を持つ窒素系栄養剤とリン系栄養剤とを添加して浄化するに当たり、窒素系栄養剤の添加量を所定範囲に制御することによって浄化効率を向上させた汚染土壌又は地下水の浄化方法に関する。
本発明の汚染土壌又は地下水の浄化方法は、特に、原位置生物浄化方法として好適に用いられる。
近年、工場等の産業施設跡地等で、石油系炭化水素化合物等の有機化合物による土壌汚染の問題が増加している。土壌は人の生活や経済活動の基盤である土地を構成しており、汚染土壌を放置すると、直接摂取したり、農作物・魚介類等を通じて摂取することによって人の健康に影響が及ぶという問題がある。また、土壌中に残留した、上記有機化合物は、雨水等によって地下水中に溶解し、周辺に広がって汚染を更に拡大する。
なお、土壌又は地下水の汚染状況としては、通常、汚染領域の油分濃度がTPH(Total Petroleum Hydrocarbon:全石油系炭化水素)濃度として1,000mg/kg以上である場合や、TPH濃度が低くても人が不快に感じる程度に油臭が強い場合に「油分で汚染されている」と言われることが多い。
汚染土壌又は地下水を浄化する技術の一つとして、例えば、特許文献1には、好気性微生物による油汚染土壌の浄化方法として、土壌中の炭素量を基準として、C/N/P比を約100/20/1とするようにN/P型栄養素等を、処理すべき土壌に加える方法が開示されている。該特許文献に記載の方法によると、例えば油分濃度が10,000mg/kgの汚染土壌に対し、約2,000mg−N/kgの窒素及び約100mg−P/kgのリン源を添加する必要があるが、このように過剰に窒素やリンを添加すると、むしろ窒素やリンそれ自体が地下水汚染の原因となるおそれがある。
特許文献2には、土壌のpHを特定の範囲とし、N/P及び土壌中のN量を一定の範囲とするように、土壌に無機物N源及び/又はP源を添加する、油汚染土壌の生物的浄化方法が開示されている。該特許文献に記載の方法においても、油分濃度が低濃度である場合には、窒素及びリンが過剰である可能性がある。
特許文献3には、土壌中の好気性微生物への通気により土壌を浄化する方法において、汚染土壌中の残存酸素濃度の減少速度を測定し、該減少濃度の測定値に基づいて汚染土壌への通気量を制御する方法が開示されている。該特許文献に記載の方法においては、酸素量を制御することにより、微生物の分解活性に応じて通気を制御できることが記載されているが、窒素量やリン量については言及していない。
特許文献4には、炭素源/窒素含有量/リン含有量が100/1〜10/0.1〜1.0(重量比)となるように、有機窒素化合物や無機リン酸塩を土壌に加える、土壌浄化方法が開示されている。しかし、実際にこれらをどの程度添加すればよいかは明確でなく、過剰に添加した場合には、逆に土壌や地下水を汚染する原因となっていた。特に、尿素を土壌に添加すると、アンモニアが発生するため、pH8以上を維持して油分解に伴う土壌の酸性化を抑制する効果があるが、尿素を過剰量添加するとpHが上がり過ぎて土壌をアルカリ化して微生物による油分解作用を阻害する可能性があり、また、アンモニアが揮発放散して窒素が不足するという問題がある。即ち、この特許文献に開示された方法では、窒素等の添加量に幅がありすぎて、実際に土壌にどの程度添加すればよいかが明確ではない。
特表平9−501841号公報 特許第3346242号公報 特開2003−340431号公報 特開2005−185986号公報
上述したように、油分等の有機化合物で汚染された土壌や地下水を浄化するために、土壌又は地下水に、窒素系栄養剤やリン系栄養剤を添加する方法は知られていたが、実際にこれらをどの程度添加すればよいかは明確にされておらず、過剰に添加した場合には、逆に土壌や地下水を汚染する原因となっていた。
このように、従来は、油分等の有機化合物で汚染された土壌や地下水を浄化するための、窒素系栄養剤及びリン系栄養剤の効率的な添加基準の検討がなされていないのが実状であった。
従って、本発明の目的は、油分等の有機化合物で汚染された土壌又は地下水に窒素系栄養剤及びリン系栄養剤を添加して浄化する際の添加基準を明確なものとして、汚泥土壌又は地下水を効率的に浄化する方法を提供することにある。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、土壌又は地下水中の微生物が油分等の有機化合物を分解するときの酸素消費量又は二酸化炭素発生量とアンモニウム基を持つ窒素系栄養剤量との適切な割合を見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は以下を要旨とする。
[1] 有機化合物により汚染された土壌又は地下水に、アンモニウム基を持つ窒素系栄養剤及びリン系栄養剤を添加することにより、該汚染土壌又は地下水を浄化する汚染土壌又は地下水の浄化方法であって、前記汚染土壌又は地下水の一部をサンプルとして採取し、該サンプルに前記窒素系栄養剤及びリン系栄養剤を添加したときの酸素減少量又は二酸化炭素増加量と、前記窒素系栄養剤及びリン系栄養剤を添加しなかったときの酸素減少量又は二酸化炭素増加量とを、所定期間断続的又は連続的に測定し、それぞれの測定値の差を酸素消費量又は二酸化炭素発生量として求め、該酸素消費量又は二酸化炭素発生量の1/60〜1/15倍(窒素換算重量)の前記窒素系栄養剤を、前記土壌又は地下水に添加することを特徴とする汚染土壌又は地下水の浄化方法。
[2] 前記有機化合物が油分であることを特徴とする[1]に記載の汚染土壌又は地下水の浄化方法。
本発明の汚染土壌又は地下水の浄化方法によれば、油分等の有機化合物で汚染された土壌又は地下水に、適当量の窒素系栄養剤及びリン系栄養剤を添加して、効率よく浄化することができる。
本発明においては、窒素系栄養剤とリン系栄養剤を、微生物の高pH阻害とならない範囲(即ちpH9未満)で添加することにより、効率よく浄化することができる。
本発明の汚染土壌又は地下水の浄化方法は、原位置生物浄化方法として有効である。
以下に本発明の汚染土壌又は地下水の浄化方法の実施の形態について説明する。
本発明の汚染土壌又は地下水の浄化方法は、有機化合物により汚染された土壌又は地下水に、アンモニウム基を持つ窒素系栄養剤とリン系栄養剤とを添加して土壌又は地下水を浄化するに当たり、窒素系栄養剤の添加量を所定の範囲として浄化するものである。
本発明に用いられる窒素系栄養剤としては、アンモニウム基を有し、土壌中の微生物により利用されるものであれば特に制限はなく、例えば、尿素系栄養剤、硝酸アンモニウム、腐植酸アンモニウム等が挙げられ、この中でも尿素系栄養剤が好ましく用いられる。
尿素系栄養剤としては、ウレアホルム、尿素とイソブチルアルデヒドの縮合物、尿素とアセトアルデヒドの縮合物、シュウ酸とアンモニアの縮合物が例示される。
これらの窒素系栄養剤は、1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
一方、リン系栄養剤としても土壌中の微生物により利用されるものであれば特に制限はなく、例えばリン酸塩、過リン酸塩、メタリン酸塩、ポリリン酸塩等が挙げられる。具体的には、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、メタリン酸カリウム、ピロリン酸カリウム、トリポリリン酸カリウム等が挙げられ、これらの内、リン酸二水素カリウムやリン酸水素二カリウムが経済的観点から好ましい。
これらのリン系栄養剤は、1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
本発明の汚染土壌又は地下水の浄化方法においては、土壌又は地下水の一部をサンプルとして採取しサンプル中に含まれる微生物がサンプルに添加した窒素系栄養剤とリン系栄養剤を消費して油分等の有機化合物を分解するときの酸素消費量又は二酸化炭素発生量の1/60〜1/15倍(窒素換算重量)の窒素系栄養剤を、現場の汚染土壌又は地下水に添加する。窒素系栄養剤の添加量のより好ましい割合は、該酸素消費量又は二酸化炭素発生量の1/30〜1/20倍(窒素換算重量)である。窒素系栄養剤の添加量が上記範囲より少ないと、栄養不足のため油分等の有機化合物の分解活性が低下してしまうが、上記範囲を超えると、かえって油分等の有機化合物の分解活性が低下してしまう。
即ち、アンモニウム基を持つ窒素系栄養剤は、土壌又は地下水中で直ちに微生物分解を受けてアンモニアを生成するためpHが上昇する。従って、窒素系栄養剤が高濃度に存在すると、pHが上昇しすぎるため、油分等の有機化合物を分解する微生物の活性を低下させる。なお、土壌又は地下水中のpHが9を超えると、油分等の有機化合物に対する微生物の分解活性が低下することが分かっている。そのため、本発明において、土壌又は地下水の一部をサンプルとして採取しサンプル中に含まれる微生物が油分等の有機化合物を分解するときの酸素消費量又は二酸化炭素発生量は、前記サンプルに、窒素系栄養剤とリン系栄養剤をサンプルのpHが9以上とならないように添加したときと、窒素系栄養剤とリン系栄養剤を添加しなかったときの酸素減少量又は二酸化炭素増加量を、所定期間断続的又は連続的に測定し、それぞれの測定値の差を取ることによって求めるものとする。
なお、採取したサンプルに、濃度を変えて窒素系栄養剤を添加し、2〜3日室温に放置した後のサンプル中のpHを確認することによって、サンプルのpHが9以上とならない窒素系栄養剤の添加量を求めることができる。なお、土壌のpHは、後述の実施例の項に記載される方法で求められる。
本発明において、アンモニウム基を持つ窒素系栄養剤の量を上記範囲とした場合に、浄化効率が向上する理由の詳細は明らかではないが、下記理由によるものと推定される。
即ち、油分を初めとした様々な有機化合物を基質として生物分解試験を行った場合、COD分解によって菌体に取り込まれるCOD量は、酸素消費量又は二酸化炭素発生量とほぼ当量であることは既に知られている。一方、油分量はCOD量に対して重量あたり約1/3倍であることが知られている。従って、酸素消費量又は二酸化炭素発生量の3分の1が油分の分解量となることが分かる。また、菌体を構成する元素の構成割合は、炭素(C):窒素(N):リン(P)=100:(5〜20):(0.5〜2)であることが判明しているので、油分の分解に必要な窒素系栄養剤の添加量は、酸素消費量又は二酸化炭素発生量の約1/60〜1/15倍(窒素換算重量)となり、リン系栄養剤の添加量は、酸素消費量又は二酸化炭素発生量の約1/600〜1/150倍(リン換算重量)となると考えられる。
従って、本発明において、窒素系栄養剤添加量は、土壌又は地下水中に含まれる微生物が有機化合物を酸化分解するときの酸素消費量又は二酸化炭素発生量の1/60〜1/15倍(窒素換算重量)、好ましくは1/30〜1/20倍(窒素換算重量)とし、リン系栄養剤添加量は、酸素消費量又は二酸化炭素発生量の1/600〜1/150倍(リン換算重量)、好ましくは1/300〜1/200倍(リン換算重量)とし、窒素系栄養剤窒素換算添加量:リン系栄養剤リン換算添加量=1:0.1〜0.3となるように添加量を制御することが好ましい。
土壌又は地下水中に含まれる微生物が油分等の有機化合物を分解するときの酸素消費量又は二酸化炭素発生量を測定する方法については特に制限はなく、従来公知の方法で実施することができる。
以下に、土壌又は地下水中に含まれる微生物が有機化合物を酸化分解するときの酸素消費量又は二酸化炭素発生量を測定する方法について、図面を参照して説明する。
図1は、この酸素消費量を測定するための装置を示す概略図である。
図1に示すように、カラム12は、流路14を介して二酸化炭素吸収瓶20と連結されており、また、カラム12と二酸化炭素吸収瓶20とは、他の流路15を介して連結されており、流路15にはポンプ16が接続されている。カラム12中に汚染土壌又は地下水を採取したサンプルを充填し、ポンプ16によって内部空気が密閉循環されるようになっている。カラム12は、油分が付着しにくい材質で作製されているものが好ましく、例えば、ガラス製やステンレス製のものが好ましい。油分が分解されると酸素が消費されて二酸化炭素が発生するが、この二酸化炭素は、二酸化炭素吸収瓶20中に充填された二酸化炭素吸収剤22によって吸収される。二酸化炭素吸収剤22としては、例えば炭酸カルシウム、水酸化ナトリウム等が挙げられるが、5N濃度の水酸化ナトリウム水溶液が好ましい。
また、図1に示す装置においては、二酸化炭素吸収瓶20に、流路24を介して分圧変化測定装置26が接続されている。分圧変化測定装置26は、二酸化炭素吸収瓶20中の空気の分圧を測定することができる装置であり、酸素濃度を連続的に測定することができ、酸素の消費に伴い、系内に酸素を連続的に供給できるものが好ましい。このような装置としては、例えば、Challenging Systems社製のANRが挙げられる。この装置によれば、系内に供給した酸素供給量を連続的に記録測定することができ、酸素の消費量の積算値を算出することができる。なお、酸素の供給は、分圧変化測定装置26と、流路28を介して連結された酸素ボンベ30からの供給により実施することができる。また、酸素供給量のデータは、分圧変化測定装置26と、系路32を介して接続されたデータ記録装置34に記録される。
この他、酸素消費量を測定する方法としては、例えば、ライシメーターを用いた方法が挙げられ、また、二酸化炭素発生量を測定する方法としては、例えば、吸収剤中のIC(無機炭素)濃度を測定する方法が挙げられる。
なお、酸素消費量又は二酸化炭素発生量を測定する期間は、窒素系栄養剤とリン系栄養剤の添加効果が発揮されなくなるまでが好ましい。即ち、アンモニウム基を持つ窒素系栄養剤とリン系栄養剤をサンプルのpHが9以上とならないように添加したときと、窒素系栄養剤とリン系栄養剤を添加しなかったときの酸素消費速度(酸素消費量増加の傾き)又は二酸化炭素発生速度(二酸化炭素発生量増加の傾き)がほぼ同じになるまで実施することが好ましい。
本発明の汚染土壌又は地下水の浄化方法は、上述のようにして求めた酸素消費量又は二酸化炭素発生量の1/60〜1/15倍(窒素換算重量)のアンモニウム基を持つ窒素系栄養剤と共に、リン系栄養剤を土壌又は地下水に添加するものである。
本発明の汚染土壌又は地下水の浄化方法は、油分等の有機化合物で汚染された土壌又は地下水を浄化するものであり、特に原位置浄化方法において用いられる。
以下、油分で汚染された土壌又は地下水を浄化する場合の方法を主体として本発明を説明するが、本発明は、油分で汚染された土壌又は地下水を浄化するものに限定されるものでなく、その他の有機化合物で汚染された土壌又は地下水の浄化にも適用できる。
油分で汚染された土壌又は地下水としては、例えば、原油、ガソリン、軽油、重油、エンジンオイル等の炭化水素化合物等によって汚染された土壌又は地下水が挙げられ、本発明はこのような土壌及び/又は地下水において、バイオレメディエーションを実施するための方法として好適に用いることができる。
ここで、バイオレメディエーションは、
(1) 土着微生物を活性化させて浄化する方法。即ち、汚染土壌及び/又は地下水に生息する、油分を分解する能力を有する微生物に、栄養剤となる化合物を与えて微生物を増殖、活性化させ、汚染物質である油分の分解を促進する方法(バイオスティミュレーション)。
及び
(2) 外来微生物及び栄養剤となる化合物を導入して浄化する方法。即ち、外部で大量に増殖、活性化させた、油分を分解する能力を有する微生物を、栄養剤となる化合物と共に汚染土壌又は地下水に注入して浄化する方法(バイオオーグメンテーション)
のいずれでも良い。
例えば、汚染土壌又は地下水中に、油分を分解する微生物が含まれない場合、油分を分解する微生物を添加してもよい。なお、油分を分解する微生物としては、従来公知の微生物を用いることができ、例えば、Rhodococcus属細菌、Pseudomonas属細菌、Acinetobacter属細菌等が挙げられる。
上述した、バイオレメディエーションを実施するには、好気性微生物を用いて好気的な雰囲気で処理する場合と、嫌気性微生物を用いて嫌気的な雰囲気で処理する場合とがあり、本発明においては、いずれであってもよい。ただし、後者の嫌気処理においては、酸素消費が起こらないので、二酸化炭素発生量に基づいて本発明を実施するものとする。
また、好気処理については、土中に空気(酸素含有ガス)を注入しながら原位置で分解させるスパージング技術や、掘削土壌に通気管で空気を供給したり、空気を撹拌混合したりして、オンサイト又はオフサイトで分解させる技術が挙げられる。スパージング技術における空気の注入は、例えば、エアーコンプレッサー等を用いて行うことができる。また、空気の注入量は、土質、処理方法、汚染物質等の条件で変わるが、例えば1〜100L/min程度である。
本発明によれば、土壌又は地下水の一部をサンプルとして採取し、サンプル中に含まれる微生物が油分等の有機化合物を分解するときの酸素消費量又は二酸化炭素発生量を測定し、その測定量を基準としてアンモニウム基を持つ窒素系栄養剤とリン系栄養剤を過不足なく土壌又は地下水に添加するので、微生物の有する有機化合物の分解活性を阻害することがなく、土壌又は地下水の浄化効率が向上するとともに過剰の窒素系栄養剤やリン系栄養剤による地下水汚染の危険性を低減することもできる。
本発明においてアンモニウム基を持つ窒素系栄養剤とリン系栄養剤を添加する方法に特に制限はないが、原位置浄化法に用いる場合は、地表から散水してもよく、又は井戸から注入してもよい。掘削土壌を処理する場合には、掘削土壌に窒素系栄養剤とリン系栄養剤を添加して撹拌混合してもよい。
本発明において、窒素系栄養剤及びリン系栄養剤は、固体のまま添加することもできるが、土壌又は地下水に均等に分散させるために、水溶液として加えることが好ましい。この場合、窒素系栄養剤は濃度10〜20g−N/L程度の水溶液として用いるのが好ましく、リン系栄養剤は1〜5g−P/L程度の水溶液として用いるのが好ましい。なお、窒素系栄養剤とリン系栄養剤とは予め混合して窒素系栄養剤/リン系栄養剤混合水溶液として添加することができる。
また、窒素系栄養剤とリン系栄養剤の添加頻度については、空気供給前に1回添加するのみでもよいが、複数回に分けて(例えば定期的)に添加してもよい。
本発明の汚染土壌又は地下水の浄化方法は、好ましくは、原位置浄化方法を実施する際に用いられるが、原位置浄化方法のシステム等については、従来公知のものを特に制限なく用いることができる。
以下、実験例及び実施例により本発明を更に詳細に説明する。なお、本発明の範囲は、かかる実施例に限定されないことは言うまでもない。
〔実験例1〕
A重油を添加した模擬汚染土壌200g(油分濃度10,000mg/kg−土壌、含水率20重量%)を、200mL容量のカラムに充填し、窒素系栄養剤として尿素を15g−N/Lの水溶液として土壌水分に対して250mg−N/Lとなるように添加すると共に、リン系栄養剤として、リン酸二水素カリウム及びリン酸水素二カリウムのバッファ溶液(pH7)(以下「リン酸カリウムバッファ」と称す)を5mg−P/Lの水溶液として土壌水分に対して25mg−P/Lとなるように、カラム内に添加した後、通気(通気量:100mL/min)を行いながら、分圧変化測定装置としてChallemging Systems社製のANRを用いた図1に示す酸素消費量測定装置により酸素消費量を連続的に測定した。
〔比較実験例1〕
土壌に窒素系栄養剤及びリン系栄養剤を添加しないで、実験例1と同様にして酸素消費量を連続的に測定した。
実験例1及び比較実験例1の酸素消費量の測定結果を図2に示す。
図2は、実験例1及び比較実験例1において酸素消費量を連続的に測定した結果を示すグラフである。図2において、横軸は時間(日数)を表し、縦軸は酸素消費量(mg−O/kg−土壌)を表す。
図2に示すように、通気を開始し、約20日後には、実験例1、比較実験例1共に酸素消費速度がほぼ同じとなり、このときの酸素消費量は、実験例1において5000mg−O/kgであったのに対し、比較実験例1においては1000mg−O/kgであった。酸素消費量と微生物のCOD分解によって菌体に取り込まれるCOD量(以下「COD取込量」と称す。)とは、ほぼ等量であるから、窒素系栄養剤及びリン系栄養剤の添加により、CODとして約4000mg/kgが分解されたことになる。また、油分量はCOD量に対して重量あたり約1/3倍であるから、窒素系栄養剤及びリン系栄養剤の添加によって多く分解される油分は約1300mg/kg(=4000mg/kg÷3)であると算出された。
そのため、上述したように、菌体を構成する元素の構成割合は、炭素(C):窒素(N)=100:(5〜20)であることが分かっているので、例えば、必要な窒素系栄養剤の添加量は、約65〜260mg−N/kg(十分量は300mg−N/kg)と考えられる。ここで、土壌あたりの油分総量は10,000mg/kgであるから、必要となる窒素系栄養剤の添加量は、土壌中の油分総量あたりの炭素量に対して、最大でC:N=10,000:300=100:3(重量比)となる。
以上の結果を表1にまとめる。
Figure 2010022978
〔実施例1、2、比較例1、2〕
表2のように、窒素系栄養剤としての尿素を、酸素消費量に対してそれぞれ特定の比率で上記汚染土壌に添加し、またリン系栄養剤としてリン酸カリウムバッファ(pH7)を窒素:リンが10:1(重量比)となるように上記汚染土壌に添加した。その後、3週間連続的に通気(通気量:3mL/min)を行い、それぞれの油分残存量の測定平均値、油分分解率、並びに土壌中のpHを測定した。結果を表2に示す。
Figure 2010022978
なお、土壌中の油分残存量については、以下のノルマルヘキサン重量法により測定した。
<ノルマルヘキサン重量法による油分残存量の測定方法>
土壌を採取し、土壌中の水分を脱水処理した後、n−ヘキサンを混合撹拌し、次いでヘキサン相を回収する。次に、ヘキサン相を加熱してヘキサンのみを揮発させ、ヘキサン相中に溶解していた油分の重量を測定する。以上の操作を3回繰り返し、各測定値の平均値を油分残存量とする。
また、土壌のpHについては、土壌10gを純水20mLに懸濁した混合液をpH計で測定することにより求めた。
表2に示すように、実施例1、2においては、窒素系栄養剤及びリン系栄養剤の少ない比較例1に対して約2倍量の油分が分解されたことが分かった。一方、比較例2は実施例1、2より油分分解率が低い。これは窒素系栄養剤を過剰量添加したことにより、土壌中のpHが9.2まで上昇してしまい、油分の分解が阻害されたためと考えられる。
これに対して、酸素消費量に対して適当量の窒素系栄養剤とリン系栄養剤を添加した実施例1,2では、高い油分分解率を得ることができる。
酸素消費量を測定するための装置を示す概略図である。 実験例1及び比較実験例1において酸素消費量を連続的に測定した結果を示すグラフである。
符号の説明
12 カラム
14 流路
15 流路
16 ポンプ
20 二酸化炭素吸収瓶
22 二酸化炭素吸収剤
24 流路
26 分圧変化測定装置
28 流路
30 酸素ボンベ
34 データ記録装置

Claims (2)

  1. 有機化合物により汚染された土壌又は地下水に、アンモニウム基を持つ窒素系栄養剤及びリン系栄養剤を添加することにより、該汚染土壌又は地下水を浄化する汚染土壌又は地下水の浄化方法であって、
    前記汚染土壌又は地下水の一部をサンプルとして採取し、該サンプルに前記窒素系栄養剤及びリン系栄養剤を添加したときの酸素減少量又は二酸化炭素増加量と、前記窒素系栄養剤及びリン系栄養剤を添加しなかったときの酸素減少量又は二酸化炭素増加量とを、所定期間断続的又は連続的に測定し、それぞれの測定値の差を酸素消費量又は二酸化炭素発生量として求め、
    該酸素消費量又は二酸化炭素発生量の1/60〜1/15倍(窒素換算重量)の前記窒素系栄養剤を、前記土壌又は地下水に添加することを特徴とする汚染土壌又は地下水の浄化方法。
  2. 前記有機化合物が油分であることを特徴とする請求項1に記載の汚染土壌又は地下水の浄化方法。
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