JP4031737B2 - 汚染土壌の浄化方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、コールタールなどの石炭系油分や、原油・ガソリン・軽油・重油などの石油系油分、動植物油、ベンゼン・ナフタレンなどの芳香属系炭化水素、またはテトラクロロエチレン等の含ハロゲン炭化水素などの、有機物に汚染された土壌の生物学的浄化方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
コールタールなどの石炭系油分や、原油・ガソリン・軽油・重油などの石油系油分、動植物油、ベンゼン・トルエン・キシレンなどの単環芳香属炭化水素(Mono aromatic Hydrocarbons)、コールタールの主成分であるナフタレン・フエナンスレンなどの多環芳香属系炭化水素(Polycyclicaromatic Hydrocarbons, 以下PAHsと表す)またはテトラクロロエチレン等の含ハロゲン炭化水素など、様々な有機物で汚染された土壌が数多く報告されている。
【0003】
これらの土壌汚染は、主として、石油精製や石炭産業などの工場跡地などにみられる。これらの有機物質により土壌や地下水が汚染された場合、汚染物質を除去することが必要である。
【0004】
このような有機物によって汚染された土壌の浄化方法は、以下のように大別される:
(1)洗浄法
(2)加熱処理法(揮発・脱離)・熱分解法・溶融法
(3)吸着法
(4)化学分解法
(5)生物分解法
【0005】
まず、洗浄法は、土壌に含有・吸着している芳香属炭化水素を水中に分散または溶解させる方法であり、芳香属炭化水素を分解するものではない。処理というよりも前処理操作に位置づけられる。洗浄効果は、土壌粒度の影響を強く受け、粒度の小さいシルト・粘土への適用は困難である。
【0006】
加熱法は、土壌中の芳香属炭化水素を揮発化する効果は高い。しかしながら、加熱により土壌から揮発させた芳香属炭化水素は、そのまま大気に放出できないので、最終的にはトラップして分解し、無害化する必要がある。処理(エネルギー)コストが高いこと、装置コストが大きくなること、土壌性状が加熱により大幅に変化すること、臭気の発生などの課題がある。
【0007】
活性炭などによる芳香族有機物の吸着法は、洗浄法との併用になる。活性炭は芳香属炭化水素に対してはかなり吸着効果がある。しかしながら、その再生に膨大な費用がかかる欠点がある。
【0008】
また、過マンガン酸カリウムなどの薬剤を用いる芳香族系炭化水素の化学分解法は、通常、過剰の薬品添加量を必要とするため、処理コストが大きくなる。また、残留薬品による2次汚染の慎重な防止対策が必要である。
【0009】
生物分解法は、2次汚染の可能性が小さいこと、省エネルギーであること、低コストであること、広範囲の土壌に適用でき土壌そのものの性質を変えないなどの利点がある。微生物を用いた生物分解法は、バイオレメディエーションと通称されている。
【0010】
上記の主な方法の中で、欧米を中心にバイオレメディエーションが一般的となってきている。
バイオレメディエーションは、微生物による有機物分解の原理を有害化学物質で汚染された土壌や地下水の処理に適用するものであり、本質的には、生物化学的廃水処理プロセスと土壌中の有害化学物質のバイオレメディエーションプロセスに大きな差はない。対象とする有害化学物質は、石油等の油分または単環芳香族炭化水素(ベンゼン等)、多環芳香族系化合物(ナフタレン等)、動植物油であり、最終的には炭酸ガスまで分解され、土壌から除去される。
【0011】
バイオレメディエーションプロセスには、大別して、ランドファーミング法、スラリー法、及びバイオレメディエーションプロセスと洗浄法の併用法の3法がある(非特許文献1、及び非特許文献2を参照のこと)。
【0012】
ランドファーミング法(ランドパイル法などを含む)は、土壌表面近くの汚染物質対策として、米国等で広く用いられている。油性汚泥や石油精製廃棄物の管理処分、炭化水素や農薬で汚染された表面土壌処理などが処理対象である。浄化に時間を要するが、処理費用が安価であること、土壌の再利用が容易なことなどの利点があるとされている。この方法は、処理対象の土壌自体を微生物の種として用い、好気性の微生物を利用して、汚染物の分解を最適化するように設計される。好気性の微生物分解を促進させるために、以下の対策が必要であるとされている。
【0013】
(1)空気の供給(耕作機械による通気、バルキング剤添加による土壌空隙率確保)
(2)栄養塩添加(肥料等)
(3)乾燥防止(定期的な水分の添加)
(4)土壌のpH調整(石灰等の添加により中性に維持)
【0014】
特定の物質の分解速度をさらに向上させるために、外部から特定の微生物の植種を行う場合があり、下水汚泥、牛糞、コンポスト(堆肥等)などの使用報告例もある。
【0015】
処理設備としては、掘り返した汚染土壌を処分するベッド、ベッドからの浸出水処理設備、再利用設備のほか、場合によっては、覆蓋施設などが必要となる。
【0016】
スラリー法は、土壌に水を添加しスラリー状(スラリーリアクターまたはスラリーラグーン)として、汚染物の微生物分解を図る方法であり、米国等で適用事例がある。処理コストはランドファーミング法よりも高いが、処理速度や汚染物除去性能が優れている。スラリー法の微生物反応槽は、開放式タンクあるいは密閉式タンク、あるいはラグーンとなり、以下の設備が必要となる。
【0017】
(1)スラリー調整槽
(2)微生物反応槽(リアクターまたはラグーン)
(3)濃縮槽(沈澱池)
(4)脱水機
(5)脱水機等から発生する廃水の処理設備
【0018】
また、反応槽等においては、空気供給(ブロアーによる空気供給)、スラリーの沈殿防止(攪拌機による攪拌)、pH調整(中性に維持)、栄養塩添加、固液分離促進、等の操作が必要である。さらに、特定の物質の分解速度を向上させるために、外部から特定の微生物の植種を行う場合がある。濃縮槽や脱水機から発生する廃水については、廃水基準を遵守できるまで処理する必要がある。
【0019】
また、生物学的硝化脱窒素法は、都市下水では最も安価であり、安定した処理方法として広く用いられている。硝酸性窒素を含む農業廃水などの場合には、脱窒反応だけを用いればよい(非特許文献3参照)。
【0020】
【非特許文献1】
土壌環境センター、「土壌・地下水汚染ガイドブック」、PPM、p116〜p117、1998年
【非特許文献2】
千野裕之・辻博和、「クウェートにおける油汚染土のバイオレメディエーション」、環境技術、VOL29、No.5、p367-p374、2000年
【非特許文献3】
技報堂出版、「水処理工学第二版」、p296〜p309、1990年
【0021】
【発明が解決しようとする課題】
これまでに開発された微生物を用いた汚染土壌の処理方法には、以下のような課題が残されている。
【0022】
(1)物質の分解に要する期間が長く、数百日にもおよぶことがある。
(2)処理性能が不安定である。
(3)浄化状態の適切なリアルタイムのモニタリング指標がない。
【0023】
汚染土壌浄化に要する期間が長く、また、処理性能が不安定な理由は多くの原因がある。
【0024】
まず、特定の汚染物質に対して分解機能を有している微生物の育成が進んでおらず、その濃度が極めて低いことがあげられる。例えば、都市下水処理場や食品工業廃水処理場の活性汚泥を、芳香族化合物で汚染された土壌にそのまま用いても分解はほとんど進まない。しかしながら、芳香族炭化水素分解機能を有する微生物や活性汚泥を高濃度に維持できれば、処理期間の短縮の可能性が大きくなる。
【0025】
また、微生物の濃度ばかりでなく、これらの微生物が十分に機能を発揮できる土壌の環境条件が整っていなければならない。例えば、環境条件としては、汚染物負荷、pH、DO(溶存酸素)、温度、水分、微量栄養源、毒性物質の有無、微生物と空気と汚染物質の接触効率などがあげられる。微生物を高濃度に維持できるだけでなく、このような環境条件が整って分解に要する期間の短縮が初めて可能となるのである。土壌粒度が小さく、固化しやすい傾向がある場合、多くの場合、DO律速または汚染物質の拡散律速により、処理性能は大きく低下する。このような場合、外部からたとえ有用な微生物を添加しても顕著な効果は得られない。
【0026】
また、PAHsは、ベンゼンなどの単環芳香族炭化水素と比較すると、除去率が一般的に低い。これは、PAHsの土壌への吸着性が高いため、土壌粒子が動かない場合、DOとの接触機会が極めて少ないためと考えられる。したがって、PAHsについてはDO律速にならない環境をいかに作ることが極めて重要である。
【0027】
ランドファーミング法は、土粒子自体が動かないため、酸素との接触機会が極めて少ないため、微生物が有効に作用せず、このため分解性が低いと考えられる。空気を土壌に吹き込んだ場合であっても、空気のバイパスが生じて、均一な酸素供給が行なわれず、顕著な改善効果が得られない。耕作機械による通気にも限界がある。また、土壌の浄化状態の適切なモニタリング指標は全くみあたらない。耕作機械による通気や酸素吹き込みの頻度の決定根拠が不明である。
【0028】
スラリー法は、土壌粒子を水と一緒に空気で完全に流動させるため、水中に溶解したPAHsばかりでなく土壌粒子に付着したPAHsも空気と接触しやすくなる。この結果、スラリー法は、ランドフアーミング法と比較して、PAHsの分解効率は優れていると考えられる。その一方で、土壌スラリーの攪拌や空気吹き込みのための処理コストが上昇する課題がある。
【0029】
本発明は、このような従来のバイオレメディエーションプロセスの課題を解決し、土壌から汚染物質を高効率で除去することを目的とする。
【0030】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく検討を重ねた結果、以下の方法により、汚染土壌を安定して効率的に処理することに成功した。本発明の要旨とするところは次の〔1〕〜〔8〕である。
〔1〕汚染物質として、原油および原油から精製された石油製品に起因する油分、石炭製品に起因する油分、動植物油、ベンゼンを主体とする単環芳香族炭化水素、ナフタレンを主体とする多環芳香族炭化水素、テトラクロロエチレンを主体とする含ハロゲン炭化水素またはトリクロロエチレンを主体とする含ハロゲン炭化水素のいずれか1種以上を含有する汚染土壌を、非透水性の自然地盤若しくは人工地盤上に堆積され、または槽内に投入し、硝酸イオンおよび/または亜硝酸イオンを含んだ淡水、海水または海水と淡水の混合水を上記汚染土壌に添加して上記汚染土壌中の微生物により上記汚染土壌中の汚染物質を除去する汚染土壌の浄化方法であって、前記淡水、海水または混合水を汚染土壌に添加した後の汚染土壌中に含まれる水、循環水、湛水またはスラリー中の硝酸イオンおよび亜硝酸イオンに含まれる硝酸性窒素および亜硝酸性窒素濃度を測定し、測定された硝酸性窒素濃度と亜硝酸性窒素濃度の和を10mg/l以上1000mg/l以下に維持するように、前記淡水、海水または混合水の添加量を制御することを特徴とする汚染土壌の浄化方法。
【0031】
〔2〕前記汚染土壌に、前記汚染土壌中の汚染物質を含有する汚泥で馴養した微生物を添加することを特徴とする、〔1〕に記載の方法。
【0032】
〔3〕前記汚染土壌に添加する淡水、海水または混合水を集水し、循環使用することを特徴とする、〔1〕または〔2〕記載の方法。
【0033】
〔4〕前記汚染土壌を湛水するように、前記淡水、海水または混合水を添加することを特徴とする、〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の方法。
【0034】
〔5〕前記汚染土壌がスラリー状になるように、前記淡水、海水または混合水を添加することを特徴とする、〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の方法。
【0036】
〔6〕前記淡水、海水または混合水を汚染土壌に添加した後の汚染土壌に含まれる水、循環水、湛水またはスラリー中のORP(酸化還元電位・銀/塩化銀電極基準)を測定し、測定されたORPを−100mV以上+300mV以下に維持するように、前記淡水、海水または混合水の添加量を制御することを特徴とする、〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の方法。
【0037】
〔7〕前記淡水、海水または混合水を汚染土壌に添加した後の汚染土壌中に含まれる水、循環水、湛水またはスラリーのpHを6以上9以下に維持するように制御することを特徴とする〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の方法。
【0038】
〔8〕汚染土壌へ添加する前記淡水、海水、または混合水の全量または一部として、下水、有機排水または製鐵所コークス工場から発生する安水を処理している活性汚泥処理設備の処理水を用いることを特徴とする、〔1〕〜〔7〕いずれかに記載の方法。
【0040】
本発明〔1〕、〔4〕、及び〔5〕で記載している「添加」とは、量の多少を問わず、その形態としては、散布、注水を指す。
【0041】
また、本発明〔1〕、〔6〕、及び〔7〕で記載している「前記淡水、海水または混合水を汚染土壌に添加した後の汚染土壌に含まれる水」は、以下「間隙水」ともいう。
【0042】
【発明の実施の形態】
発明者らは、油分および/または芳香族系炭化水素および/または含ハロゲン炭化水素で汚染された土壌から汚染物を効率的に除去するため、以下の手法を発明した。表1に今回開発した汚染土壌の処理プロセスをまとめて示す。
【0043】
【表1】
【0044】
本発明の大きな特徴は、汚染土壌中の固気液の接触状態を以下の方法により改善し、従来法の除去効率を飛躍的に改善し、そしてエネルギーコストを削減した点にある。
【0045】
まず、酸素源として、空気中の酸素ではなく、水中に溶解した結合態の酸素を積極的に用いた。すなわち、土壌中に生息している微生物は、硝酸イオンおよび/または亜硝酸イオン中の結合態の酸素を用いて呼吸し、この際に土壌中の汚濁成分を分解する。硝酸イオンおよび/または亜硝酸イオン中の硝酸性窒素および/または亜硝酸性窒素は窒素ガスまで還元される。
【0046】
このような反応は、水処理の分野では既知であり、本発明とは逆に廃水・下水の窒素除去のために用いられている。以下、水処理における反応を述べる。廃水中の窒素は、アンモニア性窒素又は硝酸性窒素の形で含有されることが多い。アンモニア性窒素を含有する廃水は、都市下水、屎尿、製鉄所コークス工場廃水、肥料工場廃水、半導体工場廃水、皮革工場廃水などがある。また、アンモニア性窒素ではなく硝酸性窒素を含有する例としては、ステンレス鋼板洗浄廃水や農薬で汚染された地下水などがある。
【0047】
廃水からの窒素の除去方法としては、以下のような生物学的硝化−脱窒素法が広く知られている。これは、絶対好気性・独立栄養細菌(Nitrosomonas,Nitrobacter等の硝化細菌)による生物学的酸化反応と通性嫌気性・従属栄養細菌(Pseudomonas等)による生物学的還元反応の組み合わせから成る。
【0048】
まず、硝化工程は以下の2段の反応から成り、関与する硝化細菌の種類は異なる:
【0049】
【化1】
【0050】
式(1)に示す反応は、Nitrosomonasを代表種とするアンモニア酸化細菌によってもたらされ、そして式(2)に示す反応は、Nitrobacterを代表種とする亜硝酸酸化細菌によってもたらされる。
【0051】
次に脱窒工程であるが、上記反応によって生成した亜硝酸イオンおよび硝酸イオンは、通性の嫌気性細菌を用いて無酸素の条件下、以下のように還元されて酸化窒素ガス(N2O)あるいは窒素ガス(N2)となり大気中に放散される。以下に窒素ガスまで還元される事例を示す:
【0052】
【化2】
【0053】
本細菌群は、通性の嫌気性細菌群から成るとされており、酸素が有れば酸素を優先して用いて増殖できる細菌群も含んでいる(但し、酸素呼吸ができるすべての細菌が硝酸呼吸や亜硝酸呼吸ができるわけではない)。したがって、効率よく脱窒素を行う場合には、式(3)と式(4)の反応は、無酸素下で行なわれなければならない。また、式(3)と式(4)の反応においては、水素供与体が必要である。廃水処理においては、水素供与体として有機物が通常利用される。すなわち、都市下水などでは、下水中の有機物(BOD成分)が、有機物を含まない廃水ではメタノール、酢酸、エタノール、イソプロピルアルコール、グルコースなどが外部から添加されるのである。以下の式(5)は、メタノールの加水分解反応である:
【0054】
【化3】
【0055】
この生物学的硝化脱窒素法は、アンモニア性窒素濃度が50mg/l以下の都市下水では最も安価であり、安定した処理方法として広く用いられている。アンモニア性窒素ではなく、硝酸性窒素を含む農業廃水などの場合、脱窒反応だけを用いればよい(非特許文献3参照)。
【0056】
本発明は、上記の窒素除去の原理を、水処理とは逆に硝酸イオンおよび/または亜硝酸イオンを用いて、汚染土壌中の汚染物質を除去しようとするものである。しかしながら、土壌浄化での汚染物質は、水処理で知られているような、下水中の有機物(BOD成分)、メタノール、酢酸、エタノール、イソプロピルアルコール、グルコースなど、酸素ばかりでなく硝酸イオンや亜硝酸イオンを用いても微生物分解が可能であると明らかになっている物質ではない。すなわち、本発明は、汚染土壌中の汚染物質、例えば原油および原油から精製された石油製品に起因する油分、石炭製品に起因する油分、動植物油、ベンゼンを主体とする単環芳香族炭化水素、ナフタレンを主体とする多環芳香族炭化水素、テトラクロロエチレンを主体とする含ハロゲン炭化水素、またはトリクロロエチレンを主体とする含ハロゲン炭化水素などを水素供与体として利用し、硝酸や亜硝酸を用いて分解できる微生物群が存在することを見出し、硝酸イオンおよび/または亜硝酸イオンを含んだ淡水、海水または海水と淡水の混合水を積極的に利用し開発した新規のバイオレメディエーション法である。
【0057】
本発明では、汚染土壌への酸素供給は原則不要となり、連続的な曝気や土壌の掘り返しなどの作業・エネルギーコストを削減できる。
【0058】
また、本発明では、微生物の呼吸用の酸素源は、水中に溶解している化学結合態の酸素であるため、従来技術の爆気等で供給するガス状酸素に比べて、土壌中に極めて均一に分散し且つ汚染土壌の内部まで浸透する。このため、微生物の馴養および汚染物質の分解を、従来法よりも効率良く行うことができ、汚染土壌の早期浄化および効率の良い浄化が可能となるのである。
【0059】
更に、本発明では、比重の大きな土粒子そのものを動かすのではなく、水を循環させる。水に溶解している結合態酸素と汚濁成分と微生物の接触機会を増加させ、効率化を図っている。
【0060】
今回添加する硝酸イオンおよび/または亜硝酸イオンは、微生物の微量栄養源(窒素源)として添加するものではないことに留意すべきである。添加する硝酸イオンおよび/または亜硝酸イオンは、極めて高濃度であり、微生物の酸素源として添加するものである。
【0061】
まず、ケース 1 のランドファーミング法への適用方法について具体的に説明する。
まず、汚染土壌への添加水を準備する。硝酸イオンおよび/または亜硝酸イオンを淡水、海水または海水と淡水の混合水に溶解させる。硝酸イオンおよび/または亜硝酸イオンを含む薬品としては硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウムなどを用いればよい。水源が、淡水単独の場合、微生物の増殖に必要な微量栄養源を添加する必要がある場合があるので、海水が容易に得られる場合はこれを用いることが望ましい。海水を用いる理由としては、微生物処理に必要な鉄、マグネシウムなどの微量栄養源を含有していること、pH緩衝能があること、安価であること、水温がほぼ一定であることなどがあげられる。淡水と海水を混合して用いてもかまわない。汚染土壌の近辺に下水処理場や食品工場または製鐵所があり、硝酸イオンおよび/または亜硝酸イオンを含有している活性汚泥処理水を容易に得ることができればこれらを全量あるいは一部を用いてもかまわない。特に、製鐵所のコークス工場から発生する安水の活性汚泥処理水は、元々海水を混合させて処理しているため、海水を50〜70容積/容積%程度含有している。また、水温も30〜38℃近くで一定しているため、冬場の微生物活性の低下する時期には最適である。また、微生物の栄養源であるリンなども含有している。このため、汚染土壌を洗浄する水としては最も望ましいと考えられる。
【0062】
汚染土壌は、非透水性の自然地盤または人工シートで透水阻止をはかった人工地盤上に堆積させる(図1参照)。この後、汚染土壌の上部から、硝酸イオンおよび/または亜硝酸イオンを淡水または海水あるいは海水と淡水の混合水をポンプで汚染土壌の表面に均一に散布する。添加水中に一部の汚染物は溶出するが、この水を土壌下部において集水し、集水した水を再びポンプで汚染土壌の表面に均一に散布するように循環使用することが廃水規制遵守と薬品コスト削減の理由から望ましい。
【0063】
結合態酸素の供給ばかりでなく、通常の空気中に含まれる酸素を補助的に供給する手段、例えば、ブロアーによる空気供給または土壌の耕運あるいは土壌の撹拌を併用して実施してもかまわない。
【0064】
汚染土壌を鋼矢板内部に堆積・集積させ、この中に硝酸イオンおよび/または亜硝酸イオンを含有した淡水、海水または海水と淡水の混合水を添加し、汚染土壌をこの水中に湛水させてもかまわない。該淡水、海水または混合水をポンプを使用して土壌中を循環させることが、廃水規制遵守と薬品コスト削減の理由から望ましい(図2参照)。
【0065】
汚染土壌中の微生物および/または汚染物質を含有する汚泥で馴養した微生物が、汚染土壌に添加された水、循環する水、または湛水中の硝酸イオンおよび/または亜硝酸イオン中の結合態酸素を用いて呼吸し、汚染物質をCO2まで酸化する。逆に、硝酸イオンおよび/または亜硝酸イオン中の硝酸性窒素および/または亜硝酸性窒素は、窒素ガスまで還元される(脱窒素作用)。このようにして汚染物質は除去される(式(3)〜式(5)参照)。
【0066】
通常、汚染土壌中に存在する微生物は、汚染物質で既にある程度馴養されており、これを用いることができる。微生物の反応速度をさらに上げ、短期間で浄化する必要がある場合、汚染物質を含有する汚泥で馴養した微生物を汚染土壌に添加すればよい。この場合、例えば、汚染物質が芳香族系炭化水素の場合、製鐵所コークス工場から発生する安水の活性汚泥を用いることができる。安水の活性汚泥は、安水に含まれる多種類の芳香族系炭化水素で十分に馴養されており、また海水にも馴養されているため、芳香族系炭化水素の分解を加速することができる。
【0067】
汚染物質としては、生物分解可能な有機物であれば特定しないが、石炭および石油に起因する油分および/またはベンゼンを主体とする単環芳香族炭化水素および/またはナフタレンを主体とする多環芳香族炭化水素などの除去に効果的である。動植物油は容易に分解される。テトラクロロエチレン、トリクロロエチレン等の含ハロゲン炭化水素の除去にも用いることができる。
【0068】
本プロセスは、以下のように管理する。
まず、汚染土壌の間隙水または循環水または湛水の硝酸イオンおよび/または亜硝酸イオン中の硝酸性窒素および/または亜硝酸性窒素濃度を測定し、硝酸性窒素濃度と亜硝酸性窒素濃度の総和(硝酸イオン中の窒素+亜硝酸イオン中の窒素)が10mg/l以上に維持されていなければならない。結合態の酸素濃度は、この窒素濃度を測定することにより、推定できる。
【0069】
先に述べたように、当初含有されていた液中の硝酸イオンおよび/または亜硝酸イオン中の硝酸性窒素および/または亜硝酸性窒素は、脱窒素反応の進行に伴い、徐々に減少する。反応速度と結合態酸素量(硝酸イオン中の酸素+亜硝酸イオン中の酸素)には密接な関係があり、酸素濃度が低下するとこの影響を強く受ける。今回の場合、硝酸性窒素濃度と亜硝酸性窒素濃度の総和が10mg/l未満になると、この影響が強く現れた。そこで、硝酸性窒素濃度と亜硝酸性窒素濃度の合計が10mg/l未満となると、硝酸イオンおよび/または亜硝酸イオンを高濃度に含む液を添加し、間隙水または湛水の硝酸性窒素および/または亜硝酸性窒素濃度を上昇させる。
【0070】
この場合、間隙水または湛水の硝酸イオンおよび/または亜硝酸イオンに含まれる硝酸性窒素および/または亜硝酸性窒素濃度の上限値は、土壌の汚染状態にもよるが、目安は1000mg/l程度である。これ以上では、逆に微生物への阻害効果が現れる場合がある。また、処理コストが増大する。
【0071】
硝酸イオンおよび/または亜硝酸イオンに含まれる硝酸性窒素および/または亜硝酸性窒素濃度の連続的な分析管理は、実質的には非常に難しいので、汚染土壌の間隙水または湛水中のORP(銀/塩化銀電極基準)により、窒素濃度の存在程度を推定する。概ね、pH=7.5でORPが−100mV以上あれば、硝酸性窒素および/または亜硝酸性窒素の存在が推定される。これ以下であれば、硝酸性窒素および/または亜硝酸性窒素が脱窒素反応で消費され、10mg/l未満となっており、不足していることが推定される。その反対に、硝酸性窒素および/または亜硝酸性窒素が過剰に残存すれば、ORP値は上昇する。土壌の汚染状態にもよるが、間隙水または湛水の硝酸性窒素および/または亜硝酸性窒素濃度の和が1000mg/l残存している場合、ORPは+300mV程度であるため、+300mV以下に制御することが好ましい。
【0072】
さらに、pHは微生物の活性に強く影響するため、pHの管理は必須である。すなわち、汚染土壌の間隙水または湛水中のpHが6以上9以下に維持されるように、硝酸イオンおよび/または亜硝酸イオンを含んだ淡水、海水、または海水と淡水の混合水のpHを調整して汚染土壌に添加する。このpH範囲をはずれると、微生物の活性は急激に低下する。pHの調整剤としては、例えば、希硫酸や水酸化ナトリウムの水溶液などを用いればよい。また、汚染土壌のpHを事前に測定しておき、汚染土壌にpH調整剤として、石灰や硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウムなどを土中に混入させておいてもかまわない。
【0073】
次に、ケース2のスラリー法への適用事例について具体的に説明する。
本プロセスは、基本的には、汚染土壌を土壌スラリーとして汚染物質を処理するプロセスである。汚染土壌を槽内に投入し、そして硝酸イオンおよび/または亜硝酸イオンを含む水を添加して土壌スラリーとする工程、攪拌を与えることにより土壌スラリー中の前記汚染物質を水中に脱離するとともに、前記汚染物質を脱窒素反応により微生物分解する工程、および前記土壌スラリーをそのまま排出する工程または前記土壌スラリーを土壌と上澄液に分離して別々に排出する工程を、バッチ的あるいは連続的に行うものである。
【0074】
以下に詳細に説明する。
最初に、土壌スラリー反応槽において土壌スラリーを調整する方法について説明する。
まず、硝酸イオンおよび/または亜硝酸イオンを含む淡水、海水または海水と淡水の混合水に溶解させる。硝酸イオンおよび/または亜硝酸イオンを含む薬品としては硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウムなどの硝酸塩および/または亜硝酸塩を用いればよい。水源が淡水単独の場合は、微生物処理に必要な微量栄養源を添加する必要がある場合があるので、海水が容易に得られる場合はこれを用いることが望ましい。海水を用いる理由としては、微生物処理に必要なマグネシウムなどの微量栄養源を含有していること、pH緩衝能があること、安価であること、水温がほぼ一定であることなどがあげられる。
【0075】
淡水と海水を混合して用いてもかまわない。汚染土壌の近辺に下水処理場や食品工場あるいは製鐵所があり、硝酸イオンおよび/または亜硝酸イオンを含有している活性汚泥処理水を容易に得ることができればこれらを用いてもかまわない。
【0076】
特に、製鐵所のコークス工場から発生する安水の活性汚泥処理水は、元々海水を混合させて処理しているため、海水を50〜70容積/容積%程度含有している。また、水温も30-38℃近くで一定しているため、冬場の微生物活性の低下する時期には最適である。また、微生物の栄養源であるリンなども含有している。このため、汚染土壌を洗浄する水としては最も望ましいと考えられる。
【0077】
図3に示すように、土壌スラリー反応槽12において、汚染土壌1に、前述した水3を添加して土壌をスラリー化する。なお、汚染土壌の粒度、性状が広範囲で不均一の場合、土壌スラリー反応槽12でスラリー操作を行わず、別途、スラリー調整槽を設けて、均一化した後、土壌スラリー反応槽12に搬出する。
【0078】
汚染土壌と水との混合比は、土壌スラリー濃度が以下に述べる範囲に入るように、土壌の含水率を測定後決定する。土壌スラリー濃度としては、10質量%以上50質量%未満が望ましい範囲である。50質量%以上の場合は、土壌スラリーの攪拌動力が過大となり攪拌を維持することが難しく、一方、10質量%未満では水使用量が増大してしまい経済的でない。
【0079】
従来、土壌中の汚染物質を微生物を用いて分解するスラリー反応槽12は、通常、ブロアーによって連続的に空気で曝気される。しかしながら、本発明においては硝酸イオンおよび/または亜硝酸イオンに含まれる結合態酸素が供給されているため、特にブロアを用いてスラリー反応槽12を曝気する必要はない。一方、スラリーの攪拌は行った方がよい。水中攪拌の強化によって、汚染物質の気固液の接触頻度が更に増加し、汚染物質の分解速度が飛躍的に向上するからである。汚染土壌中の微生物および/または汚染物質で馴養した微生物が、汚染土壌中を循環するスラリー中の硝酸イオンおよび/または亜硝酸イオンに含まれる結合態酸素を用い、汚染物質をCO2まで酸化する。硝酸イオンおよび/または亜硝酸イオンに含まれる硝酸性窒素および/または亜硝酸性窒素は、窒素ガスまで還元される(脱窒素作用)。このようにして汚染物質は除去される(式(3)〜式(5)参照)。
【0080】
通常、汚染土壌中に存在する微生物は、汚染物質で既に馴養されており、これを用いることができる。微生物の反応速度をさらに上げ、短期間で浄化する必要がある場合、汚染物質を含有する汚泥で馴養した微生物を汚染土壌に添加すればよい。この場合、例えば、汚染物質が芳香族系炭化水素の場合、製鐵所コークス工場から発生する安水の活性汚泥を用いることができる。安水の活性汚泥は、安水に含まれる多種類の芳香族系炭化水素で十分に馴養されており、また、海水にも馴養されているため、芳香族系炭化水素の分解を加速することができる。
【0081】
汚染物質としては、生物分解可能な有機物であれば特定しないが、石炭および石油に起因する油分および/またはベンゼンを主体とする単環芳香族炭化水素および/またはナフタレンを主体とする多環芳香族炭化水素などの除去に効果的である。テトラクロロエチレン、トリクロロエチレン等の含ハロゲン炭化水素の除去にも用いることができる。
【0082】
本プロセスは、以下のように管理する。
まず、スラリーの硝酸イオンおよび/または亜硝酸イオンに含まれる硝酸性窒素および/または亜硝酸性窒素濃度を測定し、硝酸性窒素濃度と亜硝酸性窒素濃度の総和が10mg/l以上に維持されていなければならない。最初に含有されていた液中の硝酸イオンおよび/または亜硝酸イオンに含まれる硝酸性窒素および/または亜硝酸性窒素は、脱窒素反応の進行に伴い、徐々に減少する。反応速度と硝酸イオンおよび/または亜硝酸イオンに含まれる結合態酸素量には密接な関係があり、酸素濃度が低下するとこの影響を強く受ける。今回の場合、硝酸イオン濃度と亜硝酸イオン濃度の総和が10mg/l未満になると、この影響が強く現れた。そこで、硝酸性窒素濃度と亜硝酸性窒素濃度の合計が10mg/l未満となると、硝酸イオンおよび/または亜硝酸イオンを高濃度に含む液を添加し、スラリーの硝酸性窒素および/または亜硝酸性窒素濃度を上昇させる。
【0083】
この場合、スラリーの硝酸性窒素および/または亜硝酸性窒素濃度の上限値は、土壌の汚染状態にもよるが、目安は1000mg/l程度である。これ以上では、逆に微生物への阻害効果が現れる場合がある。また、処理コストが増大する。
【0084】
硝酸イオンおよび/または亜硝酸イオンに含まれる硝酸性窒素および/または亜硝酸性窒素濃度の連続的な分析管理は、実質的には非常に難しいので、スラリーのORP(銀/塩化銀電極基準)により、硝酸イオンおよび/または亜硝酸イオンに含まれる窒素濃度の存在程度を推定する。概ね、pH=7.5でORPが−100mV以上あれば、硝酸性窒素および/または亜硝酸性窒素の存在が推定される。これ未満であれば、硝酸性窒素および/または亜硝酸性窒素が消失しており、不足していることが推定される。その反対に、硝酸性窒素および/または亜硝酸性窒素が過剰に残存すれば、ORP値は上昇する。土壌の汚染状態にもよるが、間隙水または湛水の硝酸性窒素および/または亜硝酸性窒素濃度の和が1000mg/l残存している場合、ORPは+300mV程度であるため、+300mV以下に制御することが好ましい。
【0085】
さらに、pHは微生物の活性に強く影響するため、pHの管理は不可欠である。すなわち、スラリーのpHが6以上9以下に維持されるように、スラリーのpHを調整する。pHの調整剤としては、例えば、希硫酸や水酸化ナトリウムの水溶液、等を用いればよい。また、汚染土壌のpHを事前に測定し、pH調整剤として、予め石灰や硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウムなどを土中に混入させておいてもかまわない。添加水ではなく、汚染土壌にpH調整剤として、石灰や硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウムなどを土中に混入させてもかまわない。
【0086】
土壌スラリーの土壌と上澄み液の分離方法は、以下の通りである。図3の固液分離槽13で浄化土壌と上澄液に沈降分離し、沈降した浄化土壌は再利用される。上澄液は、循環ポンプ4を用い循環水3としてスラリー生成に再使用される。
【実施例】
以下、本発明の実施例を説明する。なお、本発明は本実施例に限定されるものではない。
【0087】
実施例 1 :ランドファーミング変法
油分やコールタールの主成分であるナフタレン、フエナンスレンなどの多環芳香属系炭化水素(PAHs)で汚染されたガス工場跡地の土壌に本方法を適用した。
汚染土壌1は、当初、油分を7000mg/kg−乾重(ノルマルヘキサン〜ソックスレー抽出重量法で測定)、ナフタレン、およびフェナンスレンなどの16種類のPAHsの和であるTotal-PAHsも1200mg/kg−乾重(溶媒抽出-GCMS(ガスクロマトグラフ質量分析計)法で測定)含んでいた。
【0088】
汚染土壌1を非透水性のシートで作成した非透水性地盤9の上に堆積させ、当初、亜硝酸イオン(NO2-Nとして100mg-N/l)を含む海水と淡水の混合水(海水:淡水=1:1)を1回/1時間散布し、土壌下部から散布した水をピットに集め、ポンプ4で循環使用した。
【0089】
また、循環水のORPをORPセンサー6で連続測定し−100mV(銀/塩化銀複合電極基準、以下同じ)以上+300mV以下に維持されていることを確認した。また、並行して3回/週、循環水中の亜硝酸イオン中のNO2-N濃度を測定、記録し、10mg/l以上残留していることを確認した。また、循環水のpHは、pHセンサー5で連続測定し、酸およびアルカリタンク8中の希硫酸や水酸化ナトリウムの溶液を用い、微生物の生育に適した7.0から8.5に維持した。微量栄養源としてのリン、窒素は特に添加しなかった。
【0090】
亜硝酸イオン(NO2-Nとして100mg-N/l)を含む海水と淡水の混合水の添加を開始してから60日間の油分および土壌中の芳香属系炭化水素濃度(mg/kg-乾重)の変化を以下の表2に示す。
【0091】
土壌中の油分は7000mg/kg−乾重から700mg/kg−乾重まで(除去率:90%)、また、T-PAHsは1200mg/kg−乾重から200mg/kg−乾重まで(除去率:83%)低下し、顕著な効果が認められた。
【0092】
一方、従来の空気を吹き込むランドファーミング法では、60日間で土壌中の油分は、5000mg/g-乾重に留まっていた(除去率29%)。
本開発方法により、バイオファーミング法の大幅な改善がなされたことが明らかになった。
【0093】
【表2】
【0094】
実施例 2 :スラリー変法
汚染土壌として、油分、ベンゼン、コールタールの主成分であるナフタレン、フェナンスレンなどの多環芳香族系炭化水素(PAHs)で汚染された土壌を用いた。
【0095】
汚染土壌は、油分を10000mg/kg-乾重(ノルマルヘキサン〜ソックスレー抽出重量法で測定)、ナフタレン、およびフェナンスレンなどの16種類のPAHsの和であるTotal-PAHsも4000mg/kg-乾重(溶媒抽出-GCMS(ガスクロマトグラフ質量分析計)法で測定)含んでいる。また、ベンゼン、トリクロロエチレンもそれぞれ溶出試験で1〜2mg/l、0.1〜0.2mg/l程度検出され、土壌環境基準をオーバーしていた。
【0096】
作業の手順を図3に従って説明する。まず、汚染土壌1を亜硝酸イオンを含んだ海水と淡水の混合水2(海水:淡水=1:1、NO2-Nとして500mg-N/l)により、スラリー調整槽11においてスラリー化する。汚染土壌1に、土壌容量の1倍量の海水と淡水の混合水を添加し、攪拌機によって攪拌する。
【0097】
続いて、土壌スラリーを、スラリー反応槽12に通水した。スラリー反応槽12において、土壌中の油分、PAHs、含ハロゲン炭化水素は、脱窒細菌によりCO2まで酸化される。
【0098】
スラリー反応槽12には、ORPセンサー6を設置し、ORPが−100mV以上+300mV以下に維持されていることを確認した。また、スラリー反応槽のpHは、pHセンサー5で連続測定し、酸およびアルカリタンク8中の希硫酸や水酸化ナトリウムの溶液を用い7.0〜9.0に維持した。微量栄養源としてのリン、窒素は特に添加しなかった。
【0099】
土壌スラリー槽12の滞留時間は50日の条件で運転し、この経過を追ったところ、以下の表3に示すように、土壌中の油分は10000mg/kg−乾重から500mg/kg−乾重まで(除去率:95%)、また、T-PAHsは2000mg/kg−乾重から200mg/kg−乾重まで(除去率:90%)低下し、顕著な効果が認められた。このように空気曝気をおこなわなくても、除去が進むことが確認された。
土壌からのベンゼン、トリクロロエチレンともに2日後の測定(溶出試験)で既に土壌環準の0.01mg/L、0.03mg/Lを下回っていた。
【0100】
【表3】
【0101】
【発明の効果】
本発明により、油分、芳香族系炭化水素、含ハロゲン炭化水素を含有する汚染土壌を、微生物を用いて簡便かつ効率的に浄化処理することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ランドファーミング変法(水添加-循環使用型)、すなわち、土壌中の油分、芳香族系化合物、含ハロゲン炭化水素を除去するプロセスフローである。
【図2】ランドファーミング変法(湛水型)、すなわち、土壌中の油分、芳香族系化合物、含ハロゲン炭化水素を除去するプロセスフローである。
【図3】スラリー変法、すなわち、土壌中の油分、芳香族系化合物、含ハロゲン炭化水素を除去するプロセスフローである。
【符号の説明】
1…汚染土壌
2…透水部
3…硝酸イオンおよび/または亜硝酸イオン含有水
4…循環ポンプ
5…pHセンサー
6…ORPセンサー
7…硝酸イオンおよび/または亜硝酸イオン含有水タンク
8…酸及びアルカリタンク
9…非透水性地盤
10…鋼矢板
11…スラリー調整槽
12…スラリー反応槽
13…固液分離槽
14…浄化土壌
Claims (8)
- 汚染物質として、原油および原油から精製された石油製品に起因する油分、石炭製品に起因する油分、動植物油、ベンゼンを主体とする単環芳香族炭化水素、ナフタレンを主体とする多環芳香族炭化水素、テトラクロロエチレンを主体とする含ハロゲン炭化水素またはトリクロロエチレンを主体とする含ハロゲン炭化水素のいずれか1種以上を含有する汚染土壌を、非透水性の自然地盤若しくは人工地盤上に堆積させ、または槽内に投入し、硝酸イオンおよび/または亜硝酸イオンを含んだ淡水、海水または海水と淡水の混合水を前記汚染土壌に添加して前記汚染土壌中の微生物により前記汚染土壌中の汚染物質を除去する汚染土壌の浄化方法であって、前記淡水、海水または混合水を汚染土壌に添加した後の汚染土壌中に含まれる水、循環水、湛水またはスラリー中の硝酸イオンおよび亜硝酸イオンに含まれる硝酸性窒素および亜硝酸性窒素濃度を測定し、測定された硝酸性窒素濃度と亜硝酸性窒素濃度の和を10mg/l以上1000mg/l以下に維持するように、前記淡水、海水または混合水の添加量を制御することを特徴とする汚染土壌の浄化方法。
- 前記汚染土壌に、前記汚染土壌中の汚染物質を含有する汚泥で馴養した微生物を添加することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
- 前記汚染土壌に添加する淡水、海水または混合水を集水し、循環使用することを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
- 前記汚染土壌を湛水するように、前記淡水、海水または混合水を添加することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
- 前記汚染土壌がスラリー状になるように、前記淡水、海水または混合水を添加することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
- 前記淡水、海水または混合水を汚染土壌に添加した後の汚染土壌中に含まれる水、循環水、湛水またはスラリー中のORP(酸化還元電位・銀/塩化銀電極基準)を測定し、測定されたORPを−100mV以上+300mV以下に維持するように、前記淡水、海水または混合水の添加量を制御することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
- 前記淡水、海水または混合水を汚染土壌に添加した後の汚染土壌中に含まれる水、循環水、湛水またはスラリーのpHを6以上9以下に維持するように制御することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
- 汚染土壌へ添加する前記淡水、海水または混合水の全量または一部として、下水、有機排水または製鐵所コークス工場から発生する安水を処理している活性汚泥処理設備の処理水を用いることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
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