JP4801015B2 - 土壌浸透水の浄化地盤および浄化方法 - Google Patents

土壌浸透水の浄化地盤および浄化方法 Download PDF

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本発明は、土壌浸透水の浄化地盤および浄化方法に係り、特に、硝酸性窒素、亜硝酸性窒素のいずれか一方を少なくとも含む土壌浸透水を効果的に浄化することのできる、土壌浸透水の浄化地盤および浄化方法に関するものである。
我が国では、過剰な施肥等の影響や畜産廃棄物の野積などの影響により、高濃度の窒素を含む土壌浸透水が地下に浸透し、この窒素による地下水汚染が顕在化している。中でも硝酸性窒素や亜硝酸性窒素は地下水環境基準項目に挙げられているが、特に農耕地区における基準値超過が顕著であることが確認されている。具体的には、平成16年度の環境省による地下水調査の結果、硝酸性窒素や亜硝酸性窒素の基準値超過率は5.5%に達しており、規制物質の中で最も高い値となっている。
硝酸の除去方法としては、(1)イオン交換法、(2)逆浸透膜処理法、(3)電気透析法、(4)生物学的脱窒法がある。このうち、生物学的脱窒法は、低コスト、低負荷な浄化技術であり、たとえばメタノールなどの水溶性有機物を添加する排水処理などが既に実用化されている。
ところで、本出願人は、特許文献1,2において、生分解性高分子(脂肪酸ポリエステル樹脂、生分解性高分子合成能を有する微生物より生産される高分子、デンプン系高分子、たんぱく質系高分子)を埋設した人工地中壁を構築する浄化技術を開示している(特許文献1では鉛直方向に広がる透過性浄化壁を、特許文献2では水平方向に広がる透過性浄化壁を開示)。この浄化方法は、窒素(硝酸性窒素)汚染水が浄化壁を通過する際に、生分解性高分子から溶解した有機物により脱窒反応が促進され、硝酸性窒素濃度負荷を長期的に低減する方法である。
特に特許文献2に開示の水平浄化壁は、これを農耕地等の作土層の下部にいったん設置すれば、長期的にメンテナンスフリーで土壌浸透水中の硝酸性窒素を低減できるという効果を有している。
特開2000−254687号公報 特開2001−300509号公報
農耕地等の作土層を介して地盤内に浸透していく土壌浸透水を浄化する場合には、特許文献2に開示の水平方向に広がる浄化壁が効果的であるが、その一方で、この浄化技術には次の課題が示されている。すなわち、(1)固形有機物層に還元層を設けることにより、土壌浸透水中の還元が過度に進行し、硫化水素などの作物に有害なガスの発生が確認されていること。(2)還元層のない条件では、土壌浸透水が脱窒に必要な還元環境を形成する前に帯水層へ到達してしまい、土壌浸透水中の脱窒処理効果がみられないこと。
本発明は上記する問題に鑑みてなされたものであり、浄化層設置後のメンテナンスフリーを実現し、かつ、少なくとも硝酸性窒素や亜硝酸性窒素、またはこれらの窒素に変換され得る窒素化合物のいずれか一種を含有する土壌浸透水からこれらの物質を効果的に除去することのできる土壌浸透水の浄化地盤と浄化方法を提供することを目的とする。
前記目的を達成すべく、本発明による土壌浸透水の浄化地盤は、硝酸性窒素、亜硝酸性窒素、またはこれらの窒素に変換され得る窒素化合物のいずれか一種を少なくとも含む土壌浸透水を浄化するための地盤であって、少なくとも徐放性有機物材料を含み、水平もしくは略水平に広がる透過性の浄化層が地盤内に造成されていることを特徴とするものである。ここで、上記窒素化合物としては、アンモニア性窒素や有機態窒素(タンパク質、アミノ酸、尿素)などを挙げることができる。
本発明の浄化地盤は、その地盤内に例えば一層の水平もしくは略水平に広がる透過性浄化槽を有しており、硝酸性窒素等を含む土壌浸透水をこの浄化層に通過させることにより、生物学的な脱窒処理をおこなうことで、たとえば地盤下方の帯水層中の特に窒素濃度を環境基準値以下の良好な地盤(地下水)とするものである。
浄化層は、たとえば徐放性有機物材料と原地盤(土壌)とを混合し、適度に締め固める等して造成される。
ここで、徐放性の有機物材料を使用するのは、水和反応や微生物分解により水溶性有機物をゆっくりと放出することにより、土壌細菌による脱窒作用を長期的に持続させるためである。
使用する徐放性有機物材料は特に限定するものではないが、中でも、ステアリン酸(C17H35COOH)やパルミチン酸(C15H31COOH)、ミリステン酸(C13H27COOH)、ラウリル酸(C11H23COOH))等の脂肪酸やこれらの混合材料が好ましい。さらにこの中でも、水溶性有機物の供給速度が遅く、耐久性が高いこと、および経済性等の観点からステアリン酸を使用すること、もしくは少なくともステアリン酸を含む脂肪酸の混合材料を使用することがより好ましい。
水溶性有機物は微生物分解による土壌浸透水の酸素消費を促進するため、脱窒菌が硝酸呼吸をおこなうに適した嫌気環境が形成される。また、水溶性有機物は加水分解によって脱窒反応に必要な電子供与体(水素)を放出する。このような脱窒菌が硝酸呼吸をおこなうに適した地盤環境が形成されることにより、土壌浸透水中の硝酸性窒素は最終的に無害な窒素まで変換される。
また、本発明による土壌浸透水の浄化地盤の他の実施の形態において、前記浄化層は、徐放性有機物材料の粒径を調整することにより、もしくは締め固め度を調整することにより、低透水性の土層に造成されていることを特徴とするものである。
浄化層の透水性が高い場合や、該浄化層の下層の不飽和層の透水性が高い場合、土壌浸透水が脱窒反応をおこなう前に帯水層に到達する危険性がある。
そこで、対策の一つとして、低透水性となるように粒径が調整された顆粒状の徐放性有機物材料を使用すること、もしくは、浄化層の締め固め度を調整することにより、浄化層自体の透水性を低くするものである。
また、本発明による土壌浸透水の浄化地盤の他の実施の形態において、前記浄化層の直下層が低透水性の土層であることを特徴とするものである。
これは、上記する脱窒反応前の土壌浸透水が帯水層に到達することを防止する他の対策を示す実施の形態であり、浄化層自体の透水性如何に関わらず、その直下層に低透水層を配置するものである。これは、原地盤における既存の低透水層の直上に浄化層を造成することによって実現できるし、低透水層が存在しない場合には、まず低透水層を地盤内に造成し、次いでその上に浄化層を造成するようにすればよい。
また、本発明による土壌浸透水の浄化地盤の他の実施の形態は、前記浄化層の上層に高通気性の土層を有することを特徴とするものである。
たとえば、多くの化成肥料は硝酸性窒素とアンモニア性窒素を含んでおり、したがって、土壌浸透水が徐放性有機物材料を含む浄化層に到達する前にアンモニア性窒素から硝酸性窒素に変換されることが重要である。本実施の形態はかかる条件を満たすことを目的としたものであり、少なくとも浄化層の上方に好気環境が形成される通気性の高い土層が存在することにより、上記変換が効果的に実現される。
また、本発明による土壌浸透水の浄化方法は、地盤内に造成される浄化層であって、少なくとも徐放性有機物材料を含み、水平もしくは略水平に広がる透過性の浄化層に、硝酸性窒素、亜硝酸性窒素、またはこれらの窒素に変換され得る窒素化合物のいずれか一種を少なくとも含む土壌浸透水を通過させることにより、該土壌浸透水を浄化するようにしたものである。
既述するように、本発明の土壌浸透水の浄化地盤による汚染された土壌浸透水の浄化方法によれば、該土壌浸透水からの脱窒処理が確実に促進・実行されることで、環境基準値を満足する地下水環境を形成できる。
なお、本発明の土壌浸透水の浄化方法においても、徐放性有機物材料として水溶性有機物の供給速度が遅く、耐久性が高いステアリン酸、または少なくともこれを含む脂肪酸混合材料を使用することが好ましいこと、土壌浸透水が帯水層に到達する前に脱窒処理を促進すべく、徐放性有機物材料の粒度調整を図ったり、浄化層の締め固め度を調整したり、場合によっては浄化層直下に低透水層を設けたり、浄化層上方に高通気性の土層を設けるなどの方策を講じるのは既述の通りである。
以上の説明から理解できるように、本発明の土壌浸透水の浄化地盤および浄化方法によれば、硝酸性窒素や亜硝酸性窒素、またはこれらの窒素に変換され得る窒素化合物を含有する土壌浸透水を効果的に、しかも長期に亘って脱窒処理することができ、これらの汚染物質による地下水環境の悪化を効果的に防止することができる。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1,2は本発明の浄化地盤の実施の形態の断面図であり、図3はステアリン酸の粒度分布の一実施の形態を示した粒径加積曲線である。図4は実証試験で使用した3つの地盤モデルの断面図であり、図4aは砂層のみからなる地盤モデルを示しており、図4bは砂層中にステアリン酸を含む水平な浄化層が形成された地盤モデルを示しており、図4cは図4bのモデルで浄化層直下に低透水層が形成された地盤モデルを示している。図5は実証試験中の地中温度の経時変化を示したグラフであり、図6は図4の各地盤モデルにおける土壌浸透水中の硝酸性窒素濃度と経過時間の関係を示したグラフであり、図6a〜図6cはそれぞれ図4a〜図4cの各モデルに対応している。図7は図4bの地盤モデルにおける各種測定項目の経時変化を示したグラフであり、具体的には、図7aはpHを示しており、図7bはORP(酸化還元電位)を示しており、図7cはTOC(全有機炭素濃度)を示しており、図7dはIC(無機炭素濃度)を示している。図8は図4a、図4bの各地盤モデルにおける試験終了時の土層中の細菌数を示したグラフである。
本発明の浄化地盤は、たとえば図1,2で示す土層断面図のような構成からなるものである。図1で示す浄化地盤10は、たとえば原地盤を構成する土層G2,G3の上層地表面に農耕地でよく見られる施肥や畜産糞尿などが混入されてなる作土層G1が形成された地盤において、その地盤内の帯水層上方に水平(または略水平)に広がる浄化層1が造成されたものである。
この浄化層1は原地盤土と徐放性有機物材料であるステアリン酸とを混合し、所定の締め固め度、すなわち、所定の透水係数を有するように締め固められて造成される。また、締め固め度の管理と併用して、もしくは締め固め度の程度とは関係なしに、混合される顆粒状のステアリン酸の粒度を調整することにより、この浄化層1に所望の透水係数を付与することもできる。図3で示す粒径加積曲線は低透過性の浄化層を形成するためのステアリン酸の粒度分布の一実施例を示している。
この浄化地盤10の地表面から雨水Rが下方に浸透すると、表層の作土層G1を通過する際に高濃度の硝酸性窒素等を含有する汚染土壌浸透水P1となって下方へ浸透していく。この汚染土壌浸透水P1が浄化層1を通過し、帯水層に到達するまでの間に所定の脱窒反応時間が確保されることにより、これが脱窒処理されて浄化土壌浸透水P2となって帯水層に浸透していく。
一方、図2で示す浄化地盤20は、図1の浄化地盤10における浄化層1の直下層に低透水層2が形成された地盤である。
この低透水層2は、上記する脱窒反応時間を確保するための層であり、現地盤内に粘性土等からなる低透水層が存在する場合には、この上方に浄化層1を造成することで浄化地盤20ができるし、原地盤内に低透水層が存在しない場合には、粘土層等からなる低透水層2を人為的に造成し、その上方に浄化層1を造成する。
この浄化地盤20の場合には、浄化層1を必ずしも低透水層とする必要はないため、締め固め度の管理や粒径調整等を必ずしも実施する必要はない。
次に、本発明者等による実証試験の概要とその結果について詳述する。この実験は、地盤内に造成されたステアリン酸を含む浄化層に硝酸性窒素を含む汚染土壌浸透水を通過させた際の、土壌浸透水の無害化(脱窒化)の有無等の検証を目的としたものである。
[試験サイト]
この実証試験は、宮崎県都城市郊外の地下水観測地点(周辺は農耕地である)で実施した。原地盤は地表下0.5mまでは黒ボク土を中心とする表土、地表下0.5〜4.8mまでは赤ホヤ層、地表下4.8m以深はシラス層であった。また、地下水位はGL−9.5m付近であり、実証試験サイトに浅井戸(不圧帯水層)から採取した地下水には環境基準値に近い硝酸性窒素濃度(平均7.8mg/L)が検出されている。
[地盤モデル]
実証試験地盤の断面図を図4a〜cに示している。各地盤モデルともに2m角で囲い込んだ範囲を一試験区とし、鋼矢板(根入れ長は3.7m)を試験区の周囲に打設した。一つの地盤モデルは、図4aで示すように、鋼矢板打設後、矢板内の原地盤(赤ホヤ層)を2.7mまで掘削し、透水性の高い山砂(砂層S)に置換したものである。
また、他の地盤モデルは徐放性有機物材料を用いた地盤モデルであり、図4bで示すように、原地盤を砂層に置換する際に地表下1.2〜1.7mにステアリン酸を重量比で10%添加した浄化層Pを有するものである。
さらに他の地盤モデルは、図4cで示すように、浄化層Pの下層(地表下1.7〜2.2m)に山砂と赤ホヤを重量比で25%混合した低透水層Qを有するものである。
各地盤モデルにおいて、鋼矢板内に人工地盤を作成する途中で、地表下0.7m(レベルL1)、1.7m(レベルL2)、および2.2m(レベルL3)にポーラスカップa(孔径が50μm),…を2つずつ設置し、各深度の土壌浸透水を真空ポンプにより地上で採取できる構成とした。また、各人工地盤は均一に転圧をおこない、簡易透水試験により各地盤モデルで共通する土層の透水性がほぼ同一であることを確認した。さらに、地表部には浅井戸から採取した地下水を散水できるように30mの灌水チューブを渦巻き状に設置した。また、雨水が試験サイトに浸入することを防止すべく、試験サイトの上部は防水テントで常時覆った。
[試験方法]
実証試験は、2005年10月5日から2006年3月8日までの160日間実施した。各試験区に隣接して設置した地下水貯水タンクに浅井戸から揚水した地下水を概ね1kL送水し、ポンプを用いて灌水チューブより試験地盤に全量散水した。散水に要する時間は約4時間であり、これは約60mm/hの時間降雨に相当するものである。
散水から2週間後、レベルL1、L2、L3のポーラスカップより土壌浸透水を採取し、pH、酸化還元電位(ORP)、溶存性窒素濃度(硝酸性窒素、亜硝酸性窒素、アンモニア性窒素)、全鉄イオン濃度、硫酸イオン濃度、全有機炭素濃度(TOC)、無機炭素濃度(IC)、を測定した。試料採取後に再度同様の方法で散水をおこない、2週間後の試料採取を繰り返し実施し、経時的な各土層における土壌浸透水の性状変化を観察した。また、試験サイトの地表面、地表下1mおよび2mの地点に自動温度記録計を設置し、実証試験サイトの温度推移を測定した。試験終了時には、各試験区のポーラスカップ近傍の山砂を採取して、全菌数、従属栄養細菌数(プレート法)、および脱窒菌数(MPN法)を計測した。
[試験結果について]
[地中温度]
試験期間中の地中温度の経時変化を図5に示している。本試験は秋から春にかけて実施し、地表温度は冬季には10℃以下まで低下した。一方、地表下1mの地点では10℃以上、地表下2mの地点では15℃以上の地中温度が試験期間中に維持されていることが示された。
[溶存性窒素の脱窒効果について]
次に、試験期間中の硝酸性窒素濃度の経時変化を図6に示している。図6a〜cはそれぞれ図4a〜cの各地盤モデルに対応している。図より、砂層のみの地盤モデル(図6a)では硝酸性窒素濃度が上層から下層までほぼ同様の濃度を示し、砂地盤中で土壌浸透水中の硝酸性窒素濃度がほとんど減少せずに鉛直下方の原地盤に到達していると考えられる。
一方、図6bおよび図6cでは、中層(レベルL2)および下層(レベルL3)の硝酸性窒素濃度が試験期間を通じて長期的に検出されないまま試験が終了した。また、試験期間中には亜硝酸性窒素濃度およびアンモニア性窒素濃度の測定も同時におこなったが、全ての観測点でこれらの溶存性窒素は検出されなかった。
上記結果より、土壌浸透水中の溶存性窒素は硝酸性窒素の形態で存在し、それらは浄化層Pにて脱窒反応により窒素に変換されたものと推察される。また、ステアリン酸を用いて水平浄化層を地盤内に造成することにより、低透水層を設置しなくとも土壌浸透水中の硝酸性窒素を長期的に除去できることが実証された。
[試験地盤の透水性]
試験地盤施工時の材料を用いて、試験地盤と同一の締め固め条件での室内飽和透水試験を別途実施した。その結果を以下の表1に示す。
Figure 0004801015
表1より、試験前の浄化層の飽和透水係数は砂層とほぼ同様の値を示しており、土壌浸透水が1日以内に原地盤まで到達する透水性の高い地盤であることを事前に確認している。一方、試験終了後に浄化層から採取した土壌を用いて同一の試験をおこなった結果、飽和透水係数はおよそ1/500に低下していることが明らかになった。この原因として、実証試験地盤の構築時にダンパーを用いた締め固めをおこなったため、ステアリン酸が細粒化し、透水性が低下したものと考えられる。透水性が低下した結果、浄化層において土壌浸透水を一時的に保持することが可能となり、低透水層がない図4bの地盤モデルにおいても生物学的脱窒反応に必要な時間が確保できたものと結論付けることができる。
[土壌浸透水中の水質性状の推移]
図4bの地盤モデルにおける、pH、ORP、TOC、ICの実証試験期間中の経時変化を図7に示している。
図7aより、試験期間中のpHは大きく変動せず、中性域付近で推移した。
図7bより、ORPも中層(レベルL2)および下層(レベルL3)で一時的に低下する時期が確認されたが、試験期間全体を通じて大きな低下は確認されなかった。また、ここではデータを掲載しないが、土壌浸透水中の硫酸イオン濃度も大きく変動せず、試験地盤内の土壌ガス中に硫化水素の発生が確認されなかったことから、浄化層では酸化還元電位の低下による硫酸還元環境の形成には至っていないと結論付けることができる。
図7cより、中層(レベルL2)における土壌浸透水のTOC濃度は、図4aの地盤モデルと比較して平均で34mg/L上昇し、ステアリン酸の供給が過剰であることが確認された。なお、表1中の(*)に関し、試験後の有機物供給層の試料は、土壌を乱さずに試験室に持ち帰り、試験前と同様の方法で飽和透水係数を測定した。
図7dより、IC濃度は深い採取地点ほど高濃度であったことから、土壌浸透水中に溶出した有機物は脱窒反応を含めて様々な微生物分解を受け、二酸化炭素に変換された結果であると結論付けることができる。
[試験終了時における試験地盤中の細菌数]
実証試験終了時の図4a,bの各地盤モデルにおけるポーラスカップ近傍から採取した土砂中の全菌数、従属栄養細菌数、脱窒菌数をそれぞれ図8a,bに示す。
図より、全菌数は双方ともに同様の菌数で存在し、採取深度による差もみられなかった。
一方、浄化層を有する図4bの地盤モデルでは、中層(レベルL2)および下層(レベルL3)において従属栄養細菌数および脱窒菌数が図4aの地盤モデルと比較して飛躍的に増加していることが確認された。したがって、ICの上昇は、この細菌の活動によることが裏付けられ、浄化層内では脱窒に適した細菌群集構造が形成されていると結論付けることができる。
本試験における土壌浸透水中の余剰有機分は、同様のステアリン酸添加条件で実施した室内試験と比較しても高くなっている。この原因として、浄化層の透水性が低くなったこと、および、ステアリン酸の細粒化によって比表面積が拡大したこと、により土壌浸透水への有機物供給量が増加したものと結論付けることができる。
上記実証試験より、ステアリン酸をはじめとする徐放性有機物材料と土を混合してなる水平な浄化層を地盤内に造成し、この浄化層自体に適度の低透水性を付与すること、もしくはこの浄化層直下に低透水層土層を形成しておくことにより、高濃度の硝酸性窒素を含有した土壌浸透水から効果的に脱窒処理を実行することが可能となる。
また、水平浄化層の厚みは50cm程度で十分に効果が得られることが実証された。よって、掘削深度を小さくすることが可能となり、本発明の浄化地盤の造成に際してその施工コストは廉価となる。特に圃場事業実施時に広範囲に水平浄化層を造成する場合には、施工コストの低減が顕著となり、その浄化効果と相俟って好適な浄化地盤または浄化方法といえる。さらに、一度造成してしまえば数十年に亘ってメンテナンスフリーで土壌に浸透する硝酸性窒素を除去することが可能となり、施工コストのみならず、メンテナンスコストをも含めたライフサイクルコストの大幅な低減に繋がるものである。
以上、本発明の実施の形態を図面を用いて詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本発明に含まれるものである。
本発明の浄化地盤の一実施の形態の断面図である。 本発明の浄化地盤の他の実施の形態の断面図である。 ステアリン酸の粒度分布の一実施の形態を示した粒径加積曲線である。 実証試験で使用した3つの地盤モデルの断面図であり、(a)は砂層のみからなる地盤モデルを示しており、(b)は砂層中にステアリン酸を含む水平な浄化層が形成された地盤モデルを示しており、(c)は(b)のモデルで浄化層直下に低透水層が形成された地盤モデルを示している。 実証試験中の地中温度の経時変化を示したグラフである。 図4の各地盤モデルにおける土壌浸透水中の硝酸性窒素濃度の経時変化を示したグラフであり、(a)〜(c)はそれぞれ図4の(a)〜(c)の各モデルに対応している。 図4の(b)の地盤モデルにおける各種測定項目と経過時間との関係を示したグラフであり、(a)はpHを示しており、(b)はORP(酸化還元電位)を示しており、(c)はTOC(全有機炭素濃度)を示しており、(d)はIC(無機炭素濃度)を示している。 図4の(a)、(b)の各地盤モデルにおける試験終了時の地盤中の細菌数を示したグラフである。
符号の説明
1…浄化層、2…低透水層、10,20…浄化地盤、G1…作土層、G2、G3…土層、R…雨水、P1…汚染土壌浸透水、P2…浄化土壌浸透水

Claims (5)

  1. 硝酸性窒素、亜硝酸性窒素、またはこれらの窒素に変換され得る窒素化合物のいずれか一種を少なくとも含む土壌浸透水を浄化するための地盤であって、
    少なくとも顆粒状のステアリン酸を含み、水平もしくは略水平に広がる8.3×10 −6 cm/sの飽和透水係数を備えた浄化層が地盤内に造成されていることを特徴とする土壌浸透水の浄化地盤。
  2. 前記浄化層は、顆粒状のステアリン酸の粒径を調整することにより、もしくは締め固め度を調整することにより造成されていることを特徴とする請求項1に記載の土壌浸透水の浄化地盤。
  3. 前記浄化層の直下層が、1.8×10−6cm/sの飽和透水係数を備えた土層であることを特徴とする請求項1または2に記載の土壌浸透水の浄化地盤。
  4. 前記浄化層の上層に通気性の土層を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の土壌浸透水の浄化地盤。
  5. 地盤内に造成される浄化層であって、少なくとも顆粒状のステアリン酸を含み、水平もしくは略水平に広がる8.3×10 −6 cm/sの飽和透水係数を備えた浄化層に、硝酸性窒素、亜硝酸性窒素、またはこれらの窒素に変換され得る窒素化合物のいずれか一種を少なくとも含む土壌浸透水を通過させることにより、該土壌浸透水を浄化するようにした土壌浸透水の浄化方法。
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