JP4606573B2 - 溶融サーモトロピック液晶ポリマーの冷却固化方法、およびサーモトロピック液晶ポリマーの固相重合方法 - Google Patents
溶融サーモトロピック液晶ポリマーの冷却固化方法、およびサーモトロピック液晶ポリマーの固相重合方法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、溶融状態のサーモトロピック液晶ポリマーを冷却して固化する方法、およびサーモトロピック液晶ポリマーの固相重合方法に関する。より詳細には、簡素かつ省スペース構造でありながら高い処理能力を有する機器を使用した冷却方法により、得られた固化物の特性の均一化や、冷却工程後に行われる粉砕工程の効率化を可能にする冷却固化方法に関する。
【0002】
また、本発明は、固相重合を含むサーモトロピック液晶ポリマーの製造工程において、そのポリマーの特定の冷却固化方法を含むことにより、特性の安定性および均一性に優れたサーモトロピック液晶ポリマーの製造を可能にするための方法に関する。
【0003】
【従来の技術】
反応槽あるいは押出機械から排出される溶融状態のサーモトロピック液晶ポリマーの冷却固化物では、その内部が十分に冷却されずに高温状態のままであると、高温状態の部分では重合反応や分解反応が進行する。その結果、冷却固化物内の外側部分と内側部分とで諸特性に差が生じ、得られた固化物は、成形材料としても成形品としても特性が不均一で信頼性の低いものになるという問題点がある。特に、この問題点は、溶融サーモトロピック液晶ポリマーが反応槽から大量に排出される場合、あるいは、肉厚部を有する成形品の成形を行う場合に大きな問題となる。
【0004】
特に、融点が310℃以上の全芳香族サーモトロピック液晶ポリマーの製造においては、溶融重合の工程のみで高い重合度のポリマーを得ることは、反応物を長時間、溶融状態で高温の環境下におくことになるので、熱による劣化が進行するという問題点がある。そのため、溶融重合が行われる反応槽で、ある程度の反応を進行させた後に、固相重合でさらに重縮合反応を進行させることが行われている。すなわち、そのような工程では、まず、反応途中の低重合の溶融重縮合物を抜き出し、抜き出された溶融重縮合物を冷却して固化する。次に、この固化物を粉砕し、得られた粉砕物を加熱して固相重合させることで、所定の重縮合反応を完結させている。
【0005】
反応槽から大量に排出される溶融サーモトロピック液晶ポリマーを冷却して固化する方法としては、重合槽の下に用意した複数個のバット状トレーで溶融液を冷却固化する方法がある。しかしながら、この方法は、積極的な冷却操作を行うものではなく、環境温度に依存して溶融ポリマーの冷却固化を行うのみである。よって、トレー上で冷却されて固化したサーモトロピック液晶ポリマーの内側部分は十分に冷却されておらず、その固化物の内側部分すなわち高温部分では重合反応と酢酸の生成が進み、品質のばらつきが大きくなる。さらには、粉砕工程に至る前のトレーからの固化物の取り出しや、粉砕工程に至る前にも荒割などの人手作業が必要であり、問題点が多い。
【0006】
溶融サーモトロピック液晶ポリマーを積極的に冷却して固化する方法として、特開平6−256485号公報に記載された方法が提案されている。その公報に記載された冷却固化方法では、重縮合反応途中の芳香族ポリエステルを、流路絞り込み式フィーダーを有する定量供給装置を通した後、二重式ベルト冷却機にて冷却固化する。この方法は、上記のように固化物内の外側部分と内側部分とで諸特性に差が生じるという問題点を解決するために、溶融サーモトロピック液晶ポリマーを帯状に付形し、冷却固化装置と溶融サーモトロピック液晶ポリマーとの接触時間を十分にとることにより、それらの間で熱交換を十分に行わせるものであると考えられる。
【0007】
しかしながら、冷却機として用いられるスチールベルト装置は、その構造から、必然的に高価なものとなる。特に、大量の溶融サーモトロピック液晶ポリマーを短時間で連続的に冷却するためには、複数の冷却装置を用意するか、冷却装置の大型化が必要であるため、その設備コストが非常に高価になる。加えて、サーモトロピック液晶ポリマーの製造時に必然的に発生する酢酸によって装置が腐食することを避けるために、サーモトロピック液晶ポリマーと接触するスチールベルトの全域を耐腐食性にする必要があり、大型化される冷却装置の材料費、設備費、メンテナンスなどの費用は極めて高価になってしまう。
【0008】
一方、溶融状態のポリマーを冷却固化する方法としては、回転軸が互いに平行な2本(一対)のロール間に溶融樹脂を通過させ、それらのロールによって溶融樹脂を冷却固化する方法も良く知られている。このように一対のロールを用いて溶融樹脂を冷却固化する装置および方法では、冷却装置などの構造が簡単であるために装置の大型化が容易であり、溶融樹脂と接する冷却面はロールの外周面に限定されるので冷却装置の耐腐食性に関する費用も過大にはならない。しかしながら、溶融サーモトロピック液晶ポリマーを単純に一対のロール間に通過させて冷却しただけでは、そのロール間を通過するサーモトロピック液晶ポリマーの内側部分を十分に冷却することができず、バット状トレーを用いた冷却固化方法と同様な問題が生じる。
【0009】
特開平2−86412号公報には、一対のロールを用いた冷却固化方法をさらに発展させた方法が記載されている。その冷却固化方法では、少なくとも1本のロールの表面に複数の溝を設け、そのロールを含む2本のロールの間に溶融状態の化合物を通す。通された溶融状態の化合物は、紐状、または複数の紐が接合されたシート状に押し出され、冷却固化される。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の特開平2−86412号公報に記載された冷却固化方法は、溶融状態の化合物が2本のロールの間を通過した後の冷却固化物の切断と粉砕でその効率を上げることを優先したものである。すなわち、この冷却固化方法は、溶融サーモトロピック液晶ポリマーを、少なくとも1本のロールに形成された溝の部分を通過させることを優先しているため、側面が平滑面となっている通常のロール同士の組み合わせと比較して、処理量が低下し、処理装置の構造が複雑化する。この方法では、溶融状態の化合物が2本のロールの間を通過するときに、その化合物が接触するロール面のみで溶融化合物の冷却固化が行われており、この点に関しては、通常のロールによる冷却と何ら変わることはない。
【0011】
本発明の目的は、溶融状態のサーモトロピック液晶ポリマーを冷却固化する際に、高い処理能力を持ちながら簡単な構造で、かつ省スペースでそのポリマーを冷却固化することができ、冷却固化物の外側部分と内側部分とで特性の均一性が高くなるように溶融サーモトロピック液晶ポリマーを冷却固化することが可能な方法を提供することにある。本発明は、これにより、成形材料として、あるいは固相重合用の原料として有用なサーモトロピック液晶ポリマーを得るためのものである。
【0012】
また、本発明の他の目的は、溶融重合をある程度だけ進行させた後に固相重合でさらに重縮合反応を進行させる際に、固相重合により製造されるサーモトロピック液晶ポリマーの特性の均一化および安定化が可能な固相重合方法を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明の溶融サーモトロピック液晶ポリマーの冷却固化方法は、互いに平行な回転軸を有し、溶融状態のサーモトロピック液晶ポリマーを挟み込んで冷却するために間隔を空けて配置された一対の冷却ロールと、該一対の冷却ロールの間の空間に溶融サーモトロピック液晶ポリマーを一時的に保持するために、前記空間に供給された溶融サーモトロピック液晶ポリマーにおける前記回転軸と平行な方向の流れを遮るように前記一対の冷却ロール上に互いに間隔を空けて設置された一対の堰とを準備する段階と、前記一対の冷却ロールのうち一方の冷却ロールの上側の面が他方の冷却ロール側に向かって回転するように、かつ前記他方の冷却ロールの上側の面が前記一方の冷却ロール側に向かって回転するように前記一対の冷却ロールの各々を回転させると共に、前記一対の冷却ロールおよび前記一対の堰で形成された凹部に溶融サーモトロピック液晶ポリマーを供給する段階と、供給された前記溶融サーモトロピック液晶ポリマーを流動状態で前記凹部内に一時的に保持させつつ、前記凹部内の溶融サーモトロピック液晶ポリマーを、回転する前記一対の冷却ロールの間を通過させて、該溶融サーモトロピック液晶ポリマーを冷却して固化する段階とを有し、前記一対の冷却ロールの間隔をL1とし、前記凹部内に一時的に保持された溶融サーモトロピック液晶ポリマーの上面における前記冷却ロールの回転軸と直角な方向の幅をL2としたときに、L2/L1>30の関係を満足するように、前記間隔L1の値を設定すると共に前記凹部への溶融サーモトロピック液晶ポリマーの供給量を調整する。
【0015】
さらに、前記サーモトロピック液晶ポリマーとして全芳香族サーモトロピック液晶ポリマーを用いることが好ましい。
【0016】
上記の通りの発明では、互いに平行な回転軸を有して間隔を空けて配置された一対の冷却ロールの間に、溶融状態のサーモトロピック液晶ポリマーを通過させてその溶融ポリマーを冷却固化する際に、一対の冷却ロールの間の空間に溶融ポリマーを一時的に保持するために一対の冷却ロール上に一対の堰を設置し、回転する一対の冷却ロールと一対の堰とで形成された凹部内に溶融サーモトロピック液晶ポリマーを流動状態で一時的に保持することにより、固化物の外側部分と内側部分とで諸特性をほぼ均一にすることが可能となり、極めて好ましい特性を有したサーモトロピック液晶ポリマーが得られる。その結果、サーモトロピック液晶ポリマーの固化物は、成形材料としても、成形品としても特性が均一で信頼性の高いものとなり、また、固相重合用の原料として有用なサーモトロピック液晶ポリマーが得られる。一対の冷却ロールと一対の堰とで形成された凹部内の溶融サーモトロピック液晶ポリマーでは、冷却ロールの回転運動によってその溶融ポリマーが冷却ロールの表面に連れ回されて常に流動した状態にあるので、冷却固化される前に物理的特性および温度の均一化が行われる効果がある。また、その凹部内に溶融サーモトロピック液晶ポリマーが一時的に保持されることにより、その凹部でその溶融ポリマーが予め冷却される効果が得られる。さらには、その凹部への溶融サーモトロピック液晶ポリマーの供給量が変動しても、凹部に保持された溶融サーモトロピック液晶ポリマーが固化物の排出量に対して緩衝役として機能するので、その排出量が一定に保たれる効果がある。これら3つの相乗効果により、冷却固化装置が簡素かつ省スペース構造でありながら、高い処理能力と高い冷却効果により、冷却工程後の固化物の粉砕工程の効率化、および品質の均一化が可能となる。また、一対の冷却ロールの間隔をL1とし、前記凹部内に一時的に保持された溶融サーモトロピック液晶ポリマーの上面における冷却ロールの回転軸と直角な方向の幅をL2としたときに、(L2/L1)>30の関係を満足するように、間隔L1の値を設定すると共に前記凹部への溶融サーモトロピック液晶ポリマーの供給量を調整することにより、上記の3つの効果が十分に発揮される。
【0017】
さらに、本発明のサーモトロピック液晶ポリマーの固相重合方法は、上記の冷却固化方法により溶融状態のサーモトロピック液晶ポリマーを固化することで得られたサーモトロピック液晶ポリマーの固化物を原料として固相重合を行うものである。
【0018】
さらに、固相重合後の融点が310℃以上となるサーモトロピック液晶ポリマーを用いて、溶融サーモトロピック液晶ポリマーの冷却固化、および固化物の固相重合を行うことができる。
【0019】
さらに、固相重合を行う前に、固化したサーモトロピック液晶ポリマーを粉砕する工程をさらに有している。
【0020】
上記の通りの発明に係る固相重合方法では、上述した冷却固化方法により溶融状態のサーモトロピック液晶ポリマーを固化することで得られた固化物を原料として固相重合を行うことにより、上述したように冷却工程後の固化物の粉砕工程の効率化、冷却工程後の固化物の品質の均一化が可能であるので、固相重合により製造されるサーモトロピック液晶ポリマーの特性の均一化および安定化が可能となる。
【0021】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0022】
図1は、本発明の一実施形態に係る溶融サーモトロピック液晶ポリマーの冷却固化方法について説明するための概要図であり、図1では、冷却ロールの回転軸方向から見た冷却固化装置の主要部の側面が模式的に示されている。図2は、図1に示される一対の冷却ロールおよび堰の上面図であり、図3は、図1および図2に示される堰の形状を示す平面図である。
【0023】
本発明の溶融サーモトロピック液晶ポリマーの冷却固化方法が適用された冷却固化装置は、成形材料に用いられるサーモトロピック液晶ポリマーを製造する装置の一部であって、サーモトロピック液晶ポリマーの固相重合を行う際に原料となる固化物を形成するためのものである。本実施形態における冷却固化装置では、図1および図2に示すように、互いに平行な回転軸を有する一対の冷却ロール1,2の間に溶融状態のサーモトロピック液晶ポリマー5を挟み込ませることにより、そのポリマーが冷却されて固化する。冷却ロール1はその中心軸を回転軸1aとして回転可能に支持され、冷却ロール2もその中心軸を回転軸2aとして回転可能に支持されている。冷却ロール1,2は、それらの回転軸1a,2aが、重力方向に対して垂直な一水平面内に配置されるように、かつ、冷却ロール1と2が間隔L1だけ離れるように配置されている。これにより、冷却ロール1の上側面における冷却ロール2側の部分と、冷却ロール2の上側面における冷却ロール1側の部分とから、回転軸1a,2aと平行な方向に延びる溝状の空間が構成されている。
【0024】
冷却ロール1,2の上面で構成された溝状の空間内では、その長手方向の一方の側に堰3が設置され、他方の側に堰4が設置されている。すなわち、堰3が冷却ロール1,2の各々の同じ側の一端部上に設置され、堰4が冷却ロール1,2の各々の同じ側の他端部上に設置されている。このように一対の堰3,4が互いに間隔を空けて冷却ロール1,2上に設置されたことにより、冷却ロール1,2の上面および堰3,4で囲まれた凹部7が冷却ロール1,2上に形成されている。堰3,4は、凹部7に供給された流動状態のサーモトロピック液晶ポリマー5の、回転軸1a,2aと平行な方向の流れを、冷却ロール1,2の端部上で遮り、冷却ロール1,2の間の空間にサーモトロピック液晶ポリマー5を流動状態で一時的に保持するためのものである。堰3,4の各々の外形形状は、凹部7の形状に対応して形成されており、冷却ロール1,2の外周面に沿ってほぼ扇形になっている。堰3と4の間隔は、図2に示されるようにL3となっている。堰3,4の各々は、不図示の支持部材によって、冷却ロール1,2との間に微小な間隔を空けて固定されている。このような構成では、凹部7内にある流動状態のサーモトロピック液晶ポリマー5が冷却ロール1,2の両端面側から流出することが堰3,4によって防止され、堰3,4と、冷却ロール1,2の外周面の一部とで囲まれた凹部7内にサーモトロピック液晶ポリマー5を一時的に保持することができる。
【0025】
サーモトロピック液晶ポリマーの製造装置には、冷却ロール1,2上の凹部7にサーモトロピック液晶ポリマー5を溶融状態で連続的に供給する供給装置が備えられている。その供給装置からのサーモトロピック液晶ポリマー5が、凹部7の、回転軸1a,2aに対して直角な方向の中央部の上方より凹部7内へと連続的に落下させられる。本実施形態では、サーモトロピック液晶ポリマー5として全芳香族サーモトロピック液晶ポリマーを用いた。また、本実施形態の冷却固化方法は、融点が310℃以上の全芳香族サーモトロピック液晶ポリマーの製造にも好適なものである。固相重合後の融点が310℃以上となるサーモトロピック液晶ポリマーを用いて、溶融サーモトロピック液晶ポリマーの冷却固化、および固化物の固相重合を行った場合に、後述するように特性が均一化、安定化したサーモトロピック液晶ポリマーを製造することが可能となる。
【0026】
また、冷却固化装置には、冷却ロール1,2の各々を、図1および2に示される矢印の方向に回転させるための駆動手段が備えられている。冷却ロール1は、その上側の面が冷却ロール2側に向かって回転するように回転速度ω1で回転させられ、冷却ロール2は、その上側の面が冷却ロール1側に向かって回転するように回転速度ω2で回転させられる。この冷却ロール1,2の回転運動により、凹部7内のサーモトロピック液晶ポリマー5が冷却ロール1,2のそれぞれの表面に連れ回されて移動させられ、その表面に連れて移動するサーモトロピック液晶ポリマー5が下方へと送り出される。凹部7内に保持されたサーモトロピック液晶ポリマー5は、その上方から供給されたサーモトロピック液晶ポリマー5の流れと、冷却ロール1,2の表面によって連れ回される流れとによって常に流動した状態にある。
【0027】
冷却ロール1,2の回転速度ω1,ω2や、冷却ロール1,2のロール径は通常共に等しいが、異なっていてもよい。ここで、冷却ロール1の外周面の円周方向の速度(周速度)をu1とし、冷却ロール2の周速度をu2とする。冷却ロール1,2の内部には、冷媒が流れる流路が形成されており、その流路を流れる冷媒の流量は可変となっている。冷却ロール1,2内の冷媒の流れによって、冷却ロール1,2上のサーモトロピック液晶ポリマー5を効率よく冷却できる構成となっている。
【0028】
このような構成の冷却固化装置では、後述するように冷却ロール1,2の間隔L1を所定の値に設定し、堰3と4の間の凹部7内へのサーモトロピック液晶ポリマー5の供給量を調整することにより、凹部7内でサーモトロピック液晶ポリマー5を一時的に保持させる。そして、冷却ロール3,4を回転させた状態で凹部7内にサーモトロピック液晶ポリマー5を一時的に保持させつつ冷却ロール3と4の間にサーモトロピック液晶ポリマー5を通過させる。このとき、サーモトロピック液晶ポリマー5が冷却ロール3,4の外周面と接してその外周面により冷却され、これにより、冷却ロール3と4の間を通過したサーモトロピック液晶ポリマー5が固化し、シート状の固化物6が得られる。本実施形態では、このように凹部7内にサーモトロピック液晶ポリマー5を一時的に保持させつつ冷却ロール1,2間にサーモトロピック液晶ポリマーを通すことにより、冷却ロール1,2間を通過するサーモトロピック液晶ポリマー5の内側部分で冷却が不十分になるということがなくなり、固化物6内の外側部分と内側部分とで諸特性をほぼ均一にすることが可能となる。その結果、成形材料として、あるいは固相重合用の材料として極めて好ましい特性を有したサーモトロピック液晶ポリマーが得られる。
【0029】
ここで、凹部7内に一時的に保持されたサーモトロピック液晶ポリマー5の上面において、回転軸1a,2aと直角な方向の幅を、図1および図2に示すようにL2とする。この場合、回転軸1a,2aを含む水平面から上方では、凹部7内で流動状態にあるサーモトロピック液晶ポリマー5の、回転軸1,2と直角な方向の幅の最小値がL1であり、その幅の最大値がL2である。
【0030】
次に、サーモトロピック液晶ポリマー5を冷却する動作について詳しく説明する。上述した冷却固化装置において、冷却ロール1,2上へのサーモトロピック液晶ポリマー5の単位時間当たりの供給量(単位時間当たりの供給体積)をV1とし、サーモトロピック液晶ポリマー5が単位時間当たりに冷却ロール1,2間を通過する理論上の体積を通過体積V2とする。この通過体積V2は、冷却ロール1,2の間隔L1、堰3,4の間隔L3、および冷却ロール1,2の周速度u1,u2より、
【0031】
【数1】
【0032】
の数式から求められる。
【0033】
本実施形態では、まず、サーモトロピック液晶ポリマー5の供給量V1を、通過体積V2より十分に過剰とし、2本の冷却ロール1,2と堰3,4とで囲まれる凹部7内に保持される流動状態のサーモトロピック液晶ポリマー5の量を徐々に増加させていく。サーモトロピック液晶ポリマー5が凹部7に所定の量だけ保持された後、供給量V1を通過体積V2と実質的に等しくし、凹部7内のサーモトロピック液晶ポリマー5の量を維持した状態にする。そのような状態でサーモトロピック液晶ポリマー5を凹部7内に一時的に保持しながら、冷却ロール1,2の回転速度と、冷却ロール1,2内の冷媒の流量を調整し、サーモトロピック液晶ポリマー5が冷却固化されてなる固化物6が冷却ロール1,2の下方へと排出されるようにする。
【0034】
本実施形態の冷却固化方法においては、一対のロール1,2と一対の堰3,4とで構成された凹部7内に保持されるサーモトロピック液晶ポリマー5が流動状態にあることが必須である。次では、凹部7内でのサーモトロピック液晶ポリマー5の流動動作について説明する。
【0035】
凹部7内に保持されたサーモトロピック液晶ポリマー5の一部は、図1の矢印A,A’に示されるように冷却ロール1,2の回転にしたがってそれらの外周面に連れ回されて下方へと搬送されるが(このとき、連れ回されたサーモトロピック液晶ポリマー5が冷却ロールの外周面で冷却される)、L2>L1の関係があるために、通過体積V2に相当する体積のみが冷却ロール1,2間を通過して冷却固化される。冷却ロール1,2に連れ回されて冷却ロール1,2間を通過しなかったサーモトロピック液晶ポリマー5は、図1の矢印B,B’に示されるように、圧力抵抗によって上方へと逆流し、逆流したサーモトロピック液晶ポリマー5が、その上方から供給された溶融サーモトロピック液晶ポリマー5と接触して混合する。このとき、サーモトロピック液晶ポリマー5の矢印B,B’方向への逆流によって、凹部7内でサーモトロピック液晶ポリマー5が攪拌されて混合され、その攪拌混合効果によって、サーモトロピック液晶ポリマー5内で物理的特性の均一化と、温度の均一化が生じる。また、凹部7内に保持されたサーモトロピック液晶ポリマー5に、その上方から供給されたサーモトロピック液晶ポリマー5が接触して混合するので、供給されたサーモトロピック液晶ポリマー5が、冷却ロール1,2上で溶融ポリマーが冷却して固化することを防ぐ熱エネルギーの供給源として機能する。これらの作用を伴ったサーモトロピック液晶ポリマー5の流動の結果、図1に示した矢印A,A’,B,B’方向へのサーモトロピック液晶ポリマー5の移動が繰り返される。
【0036】
すなわち、凹部7内に保持されるサーモトロピック液晶ポリマー5は、冷却ロール1,2の回転にしたがって矢印A,A’方向に沿って下方に搬送されるが冷却ロール1,2間を通過せずに上方へと逆流していくサーモトロピック液晶ポリマー5と、凹部7の上方から供給されたサーモトロピック液晶ポリマー5との混合物であり、全体として冷却ロール1,2の回転運動により運動状態を保っているサーモトロピック液晶ポリマーである。
【0037】
このような冷却固化の工程においては、凹部7内に保持されたサーモトロピック液晶ポリマー5が常に流動していることによって、次の(1)〜(3)のような効果が発生する。
【0038】
(1)凹部7に保持されるサーモトロピック液晶ポリマー5は、冷却ロール1,2間を通過して冷却固化される前に冷却ロール1,2の表面との接触、および周囲の外気との接触により予め冷却が行われる(予備冷却効果)。
【0039】
(2)凹部7に保持されるサーモトロピック液晶ポリマー5は、図1の矢印A,A’方向への連れ回り動作や、矢印B,B’方向への逆流運動によって、冷却ロール1,2間を通過して冷却固化される前に物理的特性および温度の均一化が行われる(均一化効果)。
【0040】
(3)凹部7に供給されるサーモトロピック液晶ポリマー5の量が変動しても、凹部7内に保持されたサーモトロピック液晶ポリマー5が、固化物6の排出量に対して緩衝役として機能するので、冷却ロール1,2間を通過して冷却固化された固化物6の排出量を一定に保つことができる(供給量の変動に対する排出量の緩衝効果)。
【0041】
本発明の冷却固化方法は、溶融サーモトロピック液晶ポリマー5を冷却固化する工程において、上記の3つの効果の相乗効果によって、冷却固化装置が簡素かつ省スペースでありながら、高い処理能力と高い冷却能力とにより、その後の固化物6の粉砕工程での効率化、および品質の均一化を可能としている。このような工程により冷却されたサーモトロピック液晶ポリマーの固化物6は、成形材料として、あるいは固相重合用の材料として有用なものとなる。固化物6を固相重合用の材料として用いた場合、すなわち溶融サーモトロピック液晶ポリマーが重縮合リアクターから排出された後に固相重合用の原料として用いられる場合には、固相重合で製造されるサーモトロピック液晶ポリマーの特性の均一化および安定化が可能となる。
【0042】
一般の熱可塑性樹脂は、粘弾性、粘着性、および金属との付着性などが高く、上述したような凹部7内での流動状態を得ることが困難であるが、サーモトロピック液晶ポリマー、特に全芳香族のサーモトロピック液晶ポリマーは、粘弾性、先着性、および金属との付着性が低いため、凹部7内で上述したような流動状態が保たれ、また、上記の(1)〜(3)の効果が発生すると考えられる。
【0043】
冷却ロール1,2の間隔L1は、溶融状態のサーモトロピック液晶ポリマーの粘度、冷却速度、固化後の断熱性や熱安定性、要求される単位時間当たりの処理能力、固化物6の粉砕処理装置の仕様などにより決定されるが、一般には、1mm以上7mm以下、好ましくは2mm以上5mm以下である。冷却ロール1,2の間隔L1を7mm以上空けると、冷却ロール1,2間を通過するサーモトロピック液晶ポリマー5の内側部分が効果的に冷却されないためにその内側部分での冷却効果が不足気味になることがあり、重合度が不均一になったり、その内側部分にたれが発生して固化物6の厚みが不均一になる。一方、間隔L1が1mm以下の場合には、サーモトロピック液晶ポリマー5の冷却が効果的に行われるものの、処理量が非常に少なくなり、処理能力が不足気味となる。よって、この場合には、質量1000kgの固化物6を10〜30分以内に抜き出すために、冷却固化装置を大型化することや、その装置を複数設置することが必要になり、経済的でなくなる。
【0044】
本発明の冷却固化方法において、製造条件を制御する因子としては、(L2/L1)が特に重要である。この(L2/L1)の値は、通常では30以上、好ましくは50以上、さらに好ましくは70以上とする。この値が大きくなることにより、前述した(1)予備冷却効果、(2)均一化効果、および(3)供給量の変動に対する排出量の緩衝効果を十分に発揮できる。他の因子としては、主として、上記の物理的特性および温度の均一化効果に関与する冷却ロール1,2の周速度u1,u2が挙げられる。
【0045】
冷却ロール1,2の表面温度と周速度u1,u2は、冷却ロール1,2間を通過するサーモトロピック液晶ポリマー5が冷却固化するように調整する。冷却ロール1,2は、上述したように冷媒が流通する流路を内部に有していることが好ましく、その冷媒の流量を調整して冷却ロール1,2の表面温度を調節することで、上記の予備冷却効果によるサーモトロピック液晶ポリマー5の冷却固化の適切化を図る。冷媒としては、水、空気、オイルなど、様々な液体や気体を使用できるが、比熱の大きさ、環境への負荷、価格などを勘案すると水を用いることが好ましい。冷却ロール内を流れる冷媒の流量を増加させることにより、凹部7内でのサーモトロピック液晶ポリマー5の流動状態を保つ範囲内で、予備冷却効果が向上する。また、冷却ロール1,2の材質としては、溶融サーモトロピック液晶ポリマー5から発生する腐食性ガスに対する耐性が強く、加工の容易な材質、例えばステンレス鋼を用いることが好ましい。特に好ましいものは、ステンレス鋼のSUS316またはSUS316Lである。ただし、サーモトロピック液晶ポリマー5を冷却固化するためにそのポリマーと接するのは冷却ロール1,2の表面であり、その表面が耐腐食加工されていれば、冷却ロール1,2の材質に特に制限はない。
【0046】
本実施形態の冷却固化方法では、回転軸が互いに平行な冷却ロール1,2は、各々のロールの上側の面が凹部7側へと移動するように内向きに回転する。これらのロールの回転速度ω1,ω2は異なっていても構わないが、凹部7内のサーモトロピック液晶ポリマー5における上記の均一化効果の点からは等速であることが好ましい。回転速度ω1,ω2の増加により上記の予備冷却効果と均一化効果が向上する。冷却ロール1,2の表面をしぼ加工するなどして、その表面に任意の微細な凹凸を設けることにより、上記の均一化効果をさらに向上させることもできる。なお、一対の冷却ロール1,2の径は、上述したように異なっていても構わないが、運転管理の容易さからは等しいことが好ましい。
【0047】
本発明の冷却固化方法および固相重合方法におけるサーモトロピック液晶ポリマーとしては以下の▲1▼〜▲8▼のうちいずれかのものを用いることができる。
【0048】
▲1▼p−ヒドロキシ安息香酸、p,p’−ビフェノール、およびテレフタル酸をモノマーとして製造されるコポリエステル
▲2▼p−ヒドロキシ安息香酸、p,p’−ビフェノール、テレフタル酸、およびイソフタル酸をモノマーとして製造されるコポリエステル
▲3▼p−ヒドロキシ安息香酸、p,p’−ビフェノール、ヒドロキノン、テレフタル酸、およびイソフタル酸をモノマーとして製造されるコポリエステル
▲4▼p−ヒドロキシ安息香酸、および2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸をモノマーとして製造されるコポリエステル
▲5▼p−ヒドロキシ安息香酸、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸、p,p’−ビフェノール、テレフタル酸、およびイソフタル酸をモノマーとして製造されるコポリエステル
▲6▼p−ヒドロキシ安息香酸、p,p’−ビフェノール、テレフタル酸、イソフタル酸、および2,6−ジカルボキシナフタレンをモノマーとして製造されるコポリエステル
▲7▼p−ヒドロキシ安息香酸、p,p’−ビフェノール、テレフタル酸、およびポリエチレンテレフタレートをモノマーとして製造されるコポリエステル
▲8▼p−ヒドロキシ安息香酸、およびポリエチレンテレフタレートをモノマーとして製造されるコポリエステル
【0049】
【実施例】
次に、本発明の実施例を示すが、本発明はこの実施例にて限定されるものではない。図4は、本発明の実施例1〜2、および比較例1〜4の製造条件や、冷却工程後の粉砕工程および固相重合工程における諸特性の評価結果を示す図であり、図5は、本発明の各実施例および各比較例ごとに変更した、サーモトロピック液晶ポリマーの製造条件について説明するための図である。図4に記載されているLCPはサーモトロピック液晶ポリマーを表している。本発明の各実施例および各比較例では、図1および図2に示した冷却固化装置において、図4および図5に基づいて後述する製造条件を実施例1〜2、および比較例1〜4のそれぞれの例で変化させて、溶融サーモトロピック液晶ポリマーの冷却固化工程、およびサーモトロピック液晶ポリマーの固相重合工程を行った。
【0050】
(溶融全芳香族サーモトロピック液晶ポリマーの製造)
まず、ダブルヘリカル型攪拌羽を有し、内容積が2m3の、SUS316(ステンレス鋼)製の反応槽を準備する。次に、pアセトキシ安息香酸を質量398.4kg(2884mol)、4,4’−ジヒドロキシジフェニルを質量116.4kg(625mol)、テレフタル酸を質量119.9kg(721.5mol)、イソフタル酸を質量40.0kg(240mol)、無水酢酸を質量520kg(5090mol)だけ、その反応槽に仕込む。そして、反応槽内の物質を攪拌しながら反応槽内の混合物の温度を室温から150℃まで1時間で昇温した。続いて、2時間だけその状態を保持した後、混合物を攪拌しながらその温度を150℃から0.5℃/minの上昇速度で310℃まで昇温し、発生する酢酸を除去しながら重合反応を行った。重合反応後、反応槽内の系を密閉し、その系内を窒素で14.7N/cm2(1.5kgf/cm2)に加圧し、反応槽内の質量約700kgの溶融全芳香族サーモトロピック液晶ポリマーを、反応槽の底部の排出口より一対の冷却ロール1,2上に排出した。このとき、排出された溶融サーモトロピック液晶ポリマーの温度は350℃であった。
【0051】
(冷却ロールの仕様および冷却工程)
冷却ロール1,2としては、SUS316L(ステンレス鋼)からなる、中空構造のものを用いた。2本の冷却ロールの大きさは同一であり、各実施例および各比較例では冷却ロール1,2の直径を630mm、ロール間距離L1を2mm、堰3,4間の距離L3を1800mmとした。したがって、冷却ロール1,2のそれぞれの半径dは315mmとなる。また、各冷却ロールの回転数は、実施例1〜2、および比較例1,2,4では冷却ロール1,2共に12rpmとした。この場合、冷却ロール1,2の周速度は、u1=u2=0.40m/sとなる。比較例3では、冷却ロール1,2共に回転数を24rpmとし、この場合、冷却ロール1,2の周速度は、u1=u2=0.80m/sとなる。
【0052】
このような仕様において、実施例1〜2のそれぞれでは、冷却ロール1,2の間を通過して冷却固化されたサーモトロピック液晶ポリマーの、一秒間当たりに送り出される体積V2は理論上では、V2=L1×L3×u1=0.002×1.8×0.4=0.0014m3となる。
【0053】
凹部7に供給する溶融状態のサーモトロピック液晶ポリマー5の温度は、実施例1〜2、および比較例1〜4のそれぞれの例で全て310℃とした。冷却ロール1,2内に流す冷却水の流量Mは、実施例1〜2、および比較例1,2,4では20[l/min.]とし、比較例3では70[l/min.]とした。
【0054】
(流動状態サーモトロピック液晶ポリマーの形成)
凹部7内への溶融サーモトロピック液晶ポリマー5の供給量V1を徐々に増加させ、その凹部7内に流動状態のサーモトロピック液晶ポリマーを形成・増加させ、堰上の目盛りから、凹部7内のサーモトロピック液晶ポリマー5の上面の最大幅L2を所定の長さとした。続いて、供給量V1を徐々に減じて、供給量V1を実質的に前記体積V2と同じ値とした。次に、両冷却ロール内の冷却水の流量を調整し、ロール間を通過直後に冷却固化したサーモトロピック液晶ポリマーの表面温度を調整し、所定の冷却固化工程を行った。
【0055】
ここで、実施例1〜2、および比較例1〜4のそれぞれの例において、図4に示されるように最大幅L2を変えて溶融サーモトロピック液晶ポリマーの冷却を行った。図5に示すように、冷却ロール1,2の回転軸1a,2aから、凹部7内のサーモトロピック液晶ポリマー(LCP)5の上面までの最大高さをhとすると、その高さhは、図4に示すように最大幅L2の値に応じて変わる。
【0056】
比較例2のように(L2/L1)の値が5と小さく、冷却ロールの回転数が12rpm、冷却ロール内の冷却水の流量が20[l/min.]である場合には、冷却ロール1,2の間を通過したサーモトロピック液晶ポリマー5が固化しなかった。
【0057】
(粉砕工程の作業性の評価)
所定の冷却ロール運転条件で冷却固化したシート状のサーモトロピック液晶ポリマーを、ホソカワミクロン株式会社製のフェザーミルを用いて1mmメッシュで粉砕し、▲1▼粉砕工程中での破砕羽の最高温度、▲2▼破砕羽へのLPCの付着性、▲3▼粉砕後の粒径分布、および▲4▼粉砕工程の連続運転性を評価した。
【0058】
その評価の結果、図4に示すように、実施例1,2のように(L2/L1)の値が30よりも大きい場合には、破砕羽へのサーモトロピック液晶ポリマーの付着が微量であり、粉砕後の粒径分布が均一であった。また、粉砕工程の連続運転も可能であった。比較例4のように(L2/L1)の値が29となっている場合には、サーモトロピック液晶ポリマーが破砕羽に少量だけ付着し、粉砕後の粒径分布がやや不均一であった。粉砕工程の連続運転は可能であった。
【0059】
比較例1のように(L2/L1)の値が17と小さい場合には、サーモトロピック液晶ポリマーが破砕羽に大量に付着した。また、比較例3のように、(L2/L1)の値は5と小さいが、冷却ロールの回転数、および冷却ロール内の冷却水の流量を他の実施例や他の比較例よりも増加させた場合には、サーモトロピック液晶ポリマーが破砕羽に少量だけ付着した。これら比較例1および3では、粉砕後の粒径分布が不均一であり、粉砕工程の連続運転もできなかった。
【0060】
(固相重合の原料としての評価)
粉砕後のサーモトロピック液晶ポリマーをロータリーキルン内において窒素雰囲気中で260℃の温度で8時間熱処理して固相重合を行い、▲5▼原料間の付着、▲6▼色相変化、および▲7▼任意にサンプリングした各粉体間の粘度分布のばらつきを評価した。粉体の粘度に関しては、インテスコ社製のキャピラリーレオメーターを使用して、310℃、剪断速度100sec-1で測定した。
【0061】
その評価結果として、重合後の原料間の付着は、図4に示すように実施例1,2では微量であり、比較例4では少量、比較例1では多量、比較例3では少量であった。重合後の原料の色相変化に関しては、実施例1の原料は微小に着色され、実施例2の原料は黄色に変化、比較例1,3,4の原料は褐色に変化した。重合後の原料の色むらに関しては、実施例1,2では色むらが微少にあり、比較例3,4では色むらが少しあり、比較例1では色むらが大きかった。重合後の各粉体間の粘度分布のばらつきに関しては、実施例1では粘度分布のばらつきが微小であり、実施例2ではばらつきが小さく、比較例3ではばらつきが大きかった。比較例1では、粘度分布のばらつきが、比較例4と比較して中程度であった。
【0062】
【発明の効果】
以上説明したように本発明は、互いに平行な回転軸を有して間隔を空けて配置された一対の冷却ロールの両端部上に一対の堰を設置し、回転する一対の冷却ロールと一対の堰とで形成された凹部内に溶融状態のサーモトロピック液晶ポリマーを流動状態で一時的に保持させつつ、その溶融サーモトロピック液晶ポリマーを一対の冷却ロールの間に通過させて冷却固化することにより、サーモトロピック液晶ポリマーの固化物は、成形材料としても、成形品としても特性が均一で信頼性の高いものとなり、また、固相重合用の原料として有用なサーモトロピック液晶ポリマーが得られる。このような冷却固化方法によれば、冷却固化装置が簡素かつ省スペース構造でありながら、高い処理能力と高い冷却効果により、冷却工程後の固化物の粉砕工程の効率化、および品質の均一化が可能となる。
【0063】
また、一対の冷却ロールの間隔をL1とし、前記凹部内に一時的に保持された溶融サーモトロピック液晶ポリマーの上面における冷却ロールの回転軸と直角な方向の幅をL2としたときに、(L2/L1)>30の関係を満足するように、間隔L1の値を設定すると共に前記凹部への溶融サーモトロピック液晶ポリマーの供給量を調整することにより、上記のような効果が十分に発揮される。
【0064】
さらに、本発明のサーモトロピック液晶ポリマーの固相重合方法によれば、上記の冷却固化方法により溶融状態のサーモトロピック液晶ポリマーを固化することで得られた固化物を原料として固相重合を行うので、上述したように冷却工程後の固化物の粉砕工程の効率化、冷却工程後の固化物の品質の均一化が可能であり、固相重合により製造されるサーモトロピック液晶ポリマーの特性の均一化および安定化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る溶融サーモトロピック液晶ポリマーの冷却固化方法について説明するための概要図である。
【図2】図1に示される一対の冷却ロールおよび堰の上面図である。
【図3】図1および図2に示される堰の形状を示す平面図である。
【図4】本発明の各実施例および各比較例の製造条件や、冷却工程後の粉砕工程および固相重合工程における諸特性の評価結果を示す図である。
【図5】本発明の各実施例および各比較例ごとに変更した、サーモトロピック液晶ポリマーの製造条件について説明するための図である。
【符号の説明】
1、2 冷却ロール
1a、2a 回転軸
3、4 堰
5 サーモトロピック液晶ポリマー
6 固化物
7 凹部
Claims (5)
- 互いに平行な回転軸を有し、溶融状態のサーモトロピック液晶ポリマーを挟み込んで冷却するために間隔を空けて配置された一対の冷却ロールと、該一対の冷却ロールの間の空間に溶融サーモトロピック液晶ポリマーを一時的に保持するために、前記空間に供給された溶融サーモトロピック液晶ポリマーにおける前記回転軸と平行な方向の流れを遮るように前記一対の冷却ロール上に互いに間隔を空けて設置された一対の堰とを準備する段階と、
前記一対の冷却ロールのうち一方の冷却ロールの上側の面が他方の冷却ロール側に向かって回転するように、かつ前記他方の冷却ロールの上側の面が前記一方の冷却ロール側に向かって回転するように前記一対の冷却ロールの各々を回転させると共に、前記一対の冷却ロールおよび前記一対の堰で形成された凹部に溶融サーモトロピック液晶ポリマーを供給する段階と、
供給された前記溶融サーモトロピック液晶ポリマーを流動状態で前記凹部内に一時的に保持させつつ、前記凹部内の溶融サーモトロピック液晶ポリマーを、回転する前記一対の冷却ロールの間を通過させて、該溶融サーモトロピック液晶ポリマーを冷却して固化する段階とを有し、
前記一対の冷却ロールの間隔をL1とし、前記凹部内に一時的に保持された溶融サーモトロピック液晶ポリマーの上面における前記冷却ロールの回転軸と直角な方向の幅をL2としたときに、
L2/L1>30
の関係を満足するように、前記間隔L1の値を設定すると共に前記凹部への溶融サーモトロピック液晶ポリマーの供給量を調整する、溶融サーモトロピック液晶ポリマーの冷却固化方法。 - 前記サーモトロピック液晶ポリマーとして全芳香族サーモトロピック液晶ポリマーを用いる、請求項1に記載の溶融サーモトロピック液晶ポリマーの冷却固化方法。
- 請求項1または2に記載の冷却固化方法により溶融状態のサーモトロピック液晶ポリマーを固化することで得られたサーモトロピック液晶ポリマーの固化物を原料として固相重合を行う、サーモトロピック液晶ポリマーの固相重合方法。
- 固相重合後の融点が310℃以上となるサーモトロピック液晶ポリマーを用いて、溶融サーモトロピック液晶ポリマーの冷却固化、および固化物の固相重合を行う、請求項3に記載のサーモトロピック液晶ポリマーの固相重合方法。
- 固相重合を行う前に、固化したサーモトロピック液晶ポリマーを粉砕する工程をさらに有する、請求項3または4に記載のサーモトロピック液晶ポリマーの固相重合方法。
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