JP2013193437A - 液晶ポリエステルフィルムの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明の液晶ポリエステルフィルムの製造方法は、原料樹脂としての液晶ポリエステルから円筒状フィルム22を得る第1工程と、前記円筒状フィルム22を折り畳み、折り畳まれた前記円筒状フィルム22の片端又は両端を裁断して液晶ポリエステルフィルムを得る第2工程と、を含み、(a)及び(b)の要件を満たすことを特徴とする。
【選択図】図1
Description
そして、これらの用途の開発に用いられる液晶ポリエステルフィルムは、第一に、厚み均一性に優れたフィルムであることが望まれている。第二に、引き取り方向(以下、MDと略す)とこれに直角な方向すなわち膨張方向(以下、TDと略す)の強度および弾性率が比較的均等化したフィルム(以下、等方化フィルムと略す)であることが望まれている。
Tダイ押し出し法によって、液晶ポリエステルフィルムを成形する場合、液晶ポリエステルは溶融状態で流動方向に分子が配向し易いという性質があるために、引き取り方向の強度と弾性率が大きくなり、等方化フィルムを得ることは困難である。
液晶ポリエステルフィルムのインフレーション製膜法としては、これまでに様々な特許文献(例えば特許文献1〜3)が報告されている。
しかし、従来の液晶ポリエステルを原料樹脂として用いる場合、高いブロー比では、溶融張力が低いため、膨張が困難であり、低いドロー比では、パリソンの撓みが生じるという問題点があった。
更に、配向制御されていることに加えて、厚み均一性に優れた液晶ポリエステルフィルムが求められている。
原料樹脂としての液晶ポリエステルから円筒状フィルムを得る第1工程と、
前記円筒状フィルムを折り畳み、折り畳まれた前記円筒状フィルムを裁断し片端又は両端を除去して液晶ポリエステルフィルムを得る第2工程と、を含み、
下記(a)及び(b)の要件を満たすことを特徴とする。
(a)引き取り方向の延伸倍率に対して、引き取り方向に直角な方向の延伸倍率を2.0〜6.0倍とする。
(b)調整リングにより、あらかじめ前記円筒状フィルムにおける外周部の最大膜厚部分を裁断により除去される位置に移動させる。
本発明の液晶ポリエステルフィルムの製造方法は、前記(a)において、引き取り方向の延伸倍率に対して、引き取り方向に直角な方向の延伸倍率を4.1〜5.0倍とすることが好ましい。
本発明の液晶ポリエステルフィルムの製造方法は、前記液晶ポリエステルの流動温度が280℃以上であることが好ましい。
原料樹脂としての液晶ポリエステルから円筒状フィルムを得る第1工程と、
前記円筒状フィルムを折り畳み、折り畳まれた前記円筒状フィルムを裁断し片端又は両端を除去して液晶ポリエステルフィルムを得る第2工程と、を含み、
下記(a)及び(b)の要件を満たすことを特徴とする。
(a)引き取り方向の延伸倍率に対して、引き取り方向に直角な方向の延伸倍率を2.0〜6.0倍とする。
(b)前記調整リングにより、あらかじめ前記円筒状フィルムにおける外周部の最大膜厚部分を裁断により除去される位置に移動させる。
先ず、原料樹脂としての液晶ポリエステルについて説明する。
原料樹脂としての液晶ポリエステルは、溶融状態で液晶性を示す液晶ポリエステルであり、450℃以下の温度で溶融するものであることが好ましい。
液晶ポリエステルは、液晶ポリエステルアミドであってもよいし、液晶ポリエステルエーテルであってもよいし、液晶ポリエステルカーボネートであってもよいし、液晶ポリエステルイミドであってもよい。液晶ポリエステルは、原料モノマーとして芳香族化合物のみを用いてなる全芳香族液晶ポリエステルであることが好ましい。
ここで、芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシアミン、及び芳香族ジアミンとして、それぞれ独立に、その一部又は全部に代えて、その重合可能な誘導体を用いてもよい。
(1)−O−Ar1−CO−
(2)−CO−Ar2−CO−
(3)−X−Ar3−Y−
(式中、Ar1は、フェニレン基、ナフチレン基又はビフェニリレン基を表す。Ar2及びAr3は、それぞれ独立に、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニリレン基又は下記一般式(4)で表される基を表す。X及びYは、それぞれ独立に、酸素原子又はイミノ基(−NH−)を表す。前記Ar1、Ar2及びAr3中の一つ以上の水素原子は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキル基又はアリール基で置換されていてもよい。)
(4)−Ar4−Z−Ar5−
(式中、Ar4及びAr5は、それぞれ独立に、フェニレン基又はナフチレン基を表す。Zは、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、スルホニル基又はアルキリデン基を表す。)
Ar1、Ar2及びAr3中のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−オクチル基及びn−デシル基が挙げられ、その炭素数は、1〜10であることが好ましい。
Ar1、Ar2及びAr3中のアリール基としては、フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、1−ナフチル基及び2−ナフチル基が挙げられ、その炭素数は、6〜20であることが好ましい。
Ar1、Ar2及びAr3中の一つ以上の水素原子がこれらの基で置換されている場合、その置換数は、Ar1、Ar2又はAr3を構成する基毎に、それぞれ独立に2個以下であることが好ましく、1個以下であることがより好ましい。
繰返し単位(3)は、液晶ポリエステルの溶融粘度が低くなり易いという観点から、X及びYがそれぞれ酸素原子であること、すなわち、所定の芳香族ジオールに由来する繰返し単位を有することが好ましく、繰返し単位(3)中、X及びYのみが酸素原子であることがより好ましい。
繰返し単位(3)の含有量は、液晶ポリエステルを構成する全繰返し単位の合計量に対して、35モル%以下が好ましく、10〜35モル%がより好ましく、15〜30モル%が特に好ましく、17.5〜27.5モル%が最も好ましい。
繰返し単位(2)の含有量と繰返し単位(3)の含有量との割合は、[繰返し単位(2)の含有量]/[繰返し単位(3)の含有量](モル/モル)で表して、0.9/1〜1/0.9が好ましく、0.95/1〜1/0.95がより好ましく、0.98/1〜1/0.98が特に好ましい。
Ar1が2,6−ナフチレン基である繰返し単位(1)、すなわち6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸に由来する繰返し単位を、40〜74.8モル%含有することが好ましく、40〜64.5モル%含有することがより好ましく、50〜58モル%含有することが特に好ましい。
Ar2が2,6−ナフチレン基である繰返し単位(2)、すなわち2,6−ナフタレンジカルボン酸に由来する繰返し単位を、12.5〜30モル%含有することが好ましく、17.5〜30モル%含有することがより好ましい。
更に、Ar2が1,4−フェニレン基である繰返し単位(2)、すなわちテレフタル酸に由来する繰返し単位を、0.2〜15モル%含有することが好ましく、0.5〜12モル%含有することがより好ましい。加えて、Ar2が2,6−ナフチレン基である繰返し単位(2)の含有量が、Ar2が2,6−ナフチレン基である繰返し単位(2)及びAr2が1,4−フェニレン基である繰返し単位(2)の合計含有量に対して、0.5モル倍以上含有することがより好ましく、0.6モル倍以上含有することがより好ましい。
Ar3は、1,4−フェニレン基である繰返し単位(3)、すなわちヒドロキノンに由来する繰返し単位を、12.5〜30モル%含有することが好ましく、17.5〜30モル%含有することがより好ましく、20〜25モル%含有することが特に好ましい。
ここで、芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、及び芳香族ジオールは、それぞれ独立に、その一部又は全部に代えて、その重合可能な誘導体が用いられてもよい。
中でも、前記液晶ポリエステルは、2,6−ナフチレン基を有するモノマーの合計量、すなわち6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸及び2,6−ナフタレンジオールの合計量が、全モノマーの合計量に対して、40モル%以上になるようにして、重合(重縮合)させて製造されるものであることがより好ましい。
次いで、本発明の液晶ポリエステルの製造方法の一実施形態について、図1を参照しながら説明する。
図1は、インフレーション製膜法に用いられるインフレーション成形装置50の構成図である。インフレーション成形装置50は、押出機31と、環状のインフレーションダイ30と、安定板32と、ピンチロール33と、巻取機34と、を備えている。
原料樹脂としての液晶ポリエステルを、インフレーションダイ本体10と該インフレーションダイ本体10の上面部に取り付けられた調整リング2を備えた環状のインフレーションダイ30より溶融押出しして円筒状フィルム22を得る第1工程と、
前記円筒状フィルム22をピンチロール33で折り畳み、折り畳まれた前記円筒状フィルム33を裁断し片端又は両端を除去して液晶ポリエステルフィルムを得る第2工程と、を含む。
また供給口31cの上流側と下流側にはそれぞれニーディング部を備えた造粒機を用いることが好ましい。ここでニーディング部とは、スクリュウ31bの一部に設けられて溶融混練を効率的に行うための部分をいう。該ニーディング部としては、ニーディングディスク(右ニーディングディスク、ニュートラルニーディングディスク、右ニーディングディスク)、ミキシングスクリュウ等を挙げることができる。
また、バブルは冷却により溶融して無定形状態から固体状態に移行するが、インフレーション製膜法においては、この際に液晶ポリエステルの分子の配向を固定することができる。特に液晶ポリエステルにおいては、インフレーション製膜法の条件がフィルムの物性に影響を与える。かかる製膜法の条件については、例えば、特開平2−3430号公報に記載が好ましい。
即ち、下記の通り定義されるMDの延伸倍率(以下、ドロー比と称し、Drと略す)と、TDの延伸倍率(以下、ブロー比と称し、B1と略す)の比(B1/Dr)が重要な要因となる。
ブロー比(Dr)=(折り幅×2)/(ダイ直径×π)
ドロー比(B1)=(ダイスリット間隔)/(ブロー比×フィルムの厚み)
特にフィルム物性をMD及びTDでほぼ等しくするためには、B1/Drを4.1〜5.0倍の範囲に選択することがより好ましく、これにより平均膜厚が25μm以下の薄膜フィルムを作製することが可能となる。
ピンチロール33は、金属ロールとゴムロールからなる。扁平となった円筒状フィルム22が、ピンチロール33によって折り畳まれる。
次いで、折り畳まれた円筒状フィルム22は、裁断により、片端又は両端を除去され、1枚又は2枚の液晶ポリエステルフィルムとして、巻取機34に巻き取られる。尚、裁断に用いられる機械としては、例えば、スリッターが挙げられる。
膜厚精度向上の観点から、折り畳まれた円筒状フィルム22の幅に対して、裁断により得られる前記液晶フィルムの幅が0.7倍以上であることが好ましい。
Cv値(%)=(測定膜厚の標準偏差)/(平均膜厚)×100
本発明によって得られる液晶ポリエステルフィルムのCv値は、15%以下であることが好ましく、12%以下であることがより好ましい。かかる液晶ポリエステルフィルムは、電子回路基板、包装材料、ガスバリヤ材料等に好適に用いられる。
溶融粘度は、得られたペレットについて、(株)東洋機械製作所製の流れ特性試験機(キャピログラフ)1Bを用いて、各測定温度に対して、ノズルの孔径0.5mm、ノズル長10mm、せん断速度1000s−1の条件で測定した。
液晶ポリエステルの流動開始温度は、(株)島津製作所製の流動特性評価装置「フローテスターCFT−500型」を用いて測定した。粉末状の試料約2gを内径1mm、長さ10mmのダイスを取り付けた毛細管型レオメーターに充填し、9.8MPa(100kgf/cm2)の荷重下において昇温速度4℃/分で液晶ポリエステルをノズルから押し出すときに、溶融粘度が4800Pa・s(48000ポアズ)を示す温度を流動開始温度とした。
攪拌装置、トルクメータ、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却器を備えた反応器に、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸1034.99g(5.5モル)、ヒドロキノン272.52g(2.475モル、0.225モル過剰仕込み)、2,6−ナフタレンジカルボン酸378.33g(1.75モル)、テレフタル酸83.07g(0.5モル)、無水酢酸1226.87g(12モル)、及び触媒として1−メチルイミダゾール0.17gを添加し、室温で15分間にわたって攪拌した後、攪拌しながら145℃まで昇温し、その温度を保持して攪拌した。
次いで、留出する副生酢酸、未反応の無水酢酸を留去しながら、3時間30分かけて145℃から310℃まで昇温させ、310℃で3時間保温して、液晶ポリエステルを得た。こうして得られた液晶ポリエステルを室温まで冷却し、粉砕機で粉砕して、粒子径が約0.1〜1mmの粉末状の液晶ポリエステル(プレポリマー)を得た。
このプレポリマーにおいて、共重合モル分率は、繰返し単位(1):繰返し単位(2):繰返し単位(3)=55モル%:22.5モル%:22.5モル%である。これら繰り返し単位の合計含有量に対する2,6−ナフタレンジイル基含有繰返し単位の共重合モル分率は、72.5モル%である。
このプレポリマーを、25℃から250℃まで1時間かけて昇温させた後、250℃から310℃まで10時間かけて昇温した。その後、310℃で5時間保温して固相重合させ、さらに冷却することで、粉末状の液晶ポリエステルを得た。液晶ポリエステルの流動開始温度は333℃であった。
粉末状の液晶ポリエステルを用いて、二軸押出機((株)池貝製の「PCM−30」)によって液晶ポリエステルの粉末の流動開始温度〜流動開始温度より10℃高い温度で造粒し、ペレットを得た。得られたペレットについて測定温度340℃の溶融粘度を測定したところ、101Pa・sであった。
合成例1で得られたペレットを単軸押出し機で加熱混練し、ダイ径30mm、スリット間隔0.25mmの環状インフレーションダイから押出し、引き取り方向の延伸倍率に対して引き取り方向に直角な方向の延伸倍率を4.1の条件下で円筒状の液晶ポリエステルフィルムを得て折り畳んだ(フィルム幅320mm)。得られた液晶ポリエステルフィルムの膜厚を測定したところ、23〜31μmで推移した。測定膜厚の標準偏差を平均膜厚で除した値(Cv値)は、21%であった。
比較例1の結果に基づいて、インフレーションダイ本体の上面部に取り付けられた調整リングにより、あらかじめ円筒状の液晶ポリエステルフィルムにおける膜厚31μmとなる部分が折り畳み部になるように移動させ、折り畳んだフィルムの両端をスリットにより除去することでフィルム幅288mmの液晶ポリエステルフィルムを得た。得られた液晶ポリエステルフィルムの膜厚を測定したところ、23〜27μmで推移した。それ以外は比較例1と同様の方法により行った。Cv値は、11%であった。
合成例1で得られたペレットを単軸押出し機で加熱混練し、ダイ径30mm、スリット間隔0.13mmの環状インフレーションダイから押出し、引き取り方向の延伸倍率に対して引き取り方向に直角な方向の延伸倍率を4.1の条件下で円筒状の液晶ポリエステルフィルムを得て折り畳んだ(フィルム幅320mm)。得られた液晶ポリエステルフィルムの膜厚を測定したところ、11〜15μmで推移した。Cv値は、22%であった。
比較例2の結果に基づいて、インフレーションダイ本体の上面部に取り付けられた調整リングにより、あらかじめ円筒状の液晶ポリエステルフィルムにおける膜厚15μmとなる部分が折り畳み部になるように移動させ、折り畳んだフィルムの両端をスリットにより除去することでフィルム幅288mmの液晶ポリエステルフィルムを得た。得られた液晶ポリエステルフィルムの膜厚を測定したところ、11〜13μmで推移した。それ以外は比較例2と同様の方法により行った。Cv値は、12%であった。
一方、要件(b)を満たさない比較例1〜2の液晶ポリエステルフィルムは、Cv値が、20%を超えていた。
本実施形態の液晶ポリエステルフィルムの製造方法によれば、膜厚精度の向上した等方化液晶ポリエステルフィルムが得られることが明らかである。
Claims (4)
- インフレーション製膜法により、液晶ポリエステルからフィルムを製造する液晶ポリエステルフィルムの製造方法であって、
原料樹脂としての液晶ポリエステルから円筒状フィルムを得る第1工程と、
前記円筒状フィルムを折り畳み、折り畳まれた前記円筒状フィルムを裁断し片端又は両端を除去して液晶ポリエステルフィルムを得る第2工程と、を含み、
下記(a)及び(b)の要件を満たすことを特徴とする液晶ポリエステルフィルムの製造方法。
(a)引き取り方向の延伸倍率に対して、引き取り方向に直角な方向の延伸倍率を2.0〜6.0倍とする。
(b)調整リングにより、あらかじめ前記円筒状フィルムにおける外周部の最大膜厚部分を裁断により除去される位置に移動させる。 - 前記折り畳まれた円筒状フィルムの幅に対して、得られる前記液晶フィルムの幅が0.7倍以上であることを特徴とする請求項1に記載の液晶ポリエステルフィルムの製造方法。
- 前記(a)において、引き取り方向の延伸倍率に対して、引き取り方向に直角な方向の延伸倍率を4.1〜5.0倍とすることを特徴とする請求項1又は2に記載の液晶ポリエステルフィルムの製造方法。
- 前記液晶ポリエステルの流動温度が280℃以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の液晶ポリエステルフィルムの製造方法。
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