JP4606340B2 - 結晶性シリケート多孔質体 - Google Patents

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Description

本発明は、新規な結晶性シリケート多孔質体及びその製造法に関する。詳しくは、マクロ細孔を有しながら、結晶性シリケートの構造を有し、高い耐熱性を実現した結晶性シリケート多孔質体及び該結晶性シリケート多孔質体を工業的に有利に製造することが可能な製造方法を提供するものである。
従来、無機あるいは有機の多孔質体または繊維を用いるフィルターは、材料が有する数nmから数十μmサイズの該材料の細孔あるいは繊維間隙にて粉塵粒子やオイルミスト粒子を捕捉することにより、フィルター効果が発現する。強度および耐熱性の見地からは、無機材料が好ましく、シリカ、アルミナ、炭化ケイ素等多孔質セラミックスが材料として用いられることが多い。とりわけ、多孔質シリカについては、シリカゲルの製法の如く、ケイ酸アルカリ塩水溶液に硫酸を加え生成するシリカゾルをゲル化させることによるシリカの製造技術がよく知られている(非特許文献1参照)。
一方、特許文献1に記載のように、テトラエトキシシランの如きケイ素アルコキシドを用いてゾルゲル法によりシリカを製造する際に、有機高分子を添加することによりマイクロメートル領域の細孔径を有するマクロ細孔を形成させたシリカを得ることが可能である。該シリカのマクロ細孔の構造は、相分離の過渡構造がゲル化で凍結されることにより決定される。さらに該シリカは、ナノメートル領域の細孔径のナノ細孔も有する。
ところが、上記方法によって得られるシリカ系多孔質体は、アルミナ等他の無機材料と比較して耐熱性に劣るという欠点があった。かかる問題を解決するため、金属の存在下での熱処理により、シリカを結晶化せしめることにより耐熱性を改善することが知られているが、結晶化の過程で細孔構造が失われ、ナノ細孔は下より、マクロ細孔までが消失するという問題が生じる。
加賀美敏郎、林瑛 監修、「高純度シリカの製造と応用」、株式会社シーエムシー、 1999年9月13日発行、229貢 特開平3−8729号公報
従って、本発明の課題(目的)は、マクロ細孔を有しながら、結晶化による高い耐熱性を有する無機多孔質体を提供することにある。
また、本発明の目的はかかる無機多孔質体を工業的に有利に製造することができる製造方法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねてきた。その結果、シリカゾル液の相分離を利用して得られるマクロ細孔及びナノ細孔の両者を合わせ持つシリカ多孔質体に水溶性金属化合物の水溶液を含浸させるか、低融点金属化合物を溶融状態で含浸させた後、熱処理後、耐熱性に優れるシリケートの形成によりマクロ細孔の消失を効果的に防止し、結晶性シリケートの構造を有し、高い耐熱性を実現した結晶性シリケート多孔質体を得られるという知見を得た。ここに、低融点金属化合物とは、シリカの物性に影響を及ぼさない約300℃以下の温度で融解し融液を形成する金属化合物である。そして、さらに研究を重ねた結果、得られる多孔質体において、多孔質体における金属元素の重量割合を特定の範囲に調整することによって、耐熱性の極めて優れた結晶性シリケート多孔質体を得ることに成功し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、平均細孔径が、0.1〜20μmのマクロ細孔を有する結晶性シリケートよりなり、該シリケートにおける金属元素(M)の重量割合が、酸化物換算で20〜70重量%の範囲にあり、且つ、気孔率が30〜80%であることを特徴とする結晶性シリケート多孔質体である。

また、本発明は、平均細孔径が、0.1〜50μmのマクロ細孔と、これに連続する、平均細孔径が、2〜30nmのナノ細孔を有する多孔質シリカに、水溶性金属化合物の水溶液を含浸させるか、低融点金属化合物を溶融状態で含浸させた後、加熱して結晶性シリケートを生成せしめることを特徴とする結晶性シリケート多孔質体の製造方法を提供する。
このように、マクロ細孔及びナノ細孔を有する多孔質シリカを用い、金属化合物を含浸後、熱処理による結晶性シリケート化により、マクロ細孔が維持された高気孔率の多孔質構造有し、高い耐熱性を実現した多孔質体が得られることは、従来全く知られていなかった。
尚、本願において、「多孔質体」は、粉体や粒径200μm以下の顆粒体と区別される体積(大きさ)を有する「体」を示すものであり、その形状は特に制限されない。例えば、板状、球状、ハニカム等の形状が一般的である。
本発明のマクロ細孔を有する結晶性シリケート多孔質体は、結晶性シリケートにより構成されることにより優れた耐熱性を有しながら、マクロ細孔の存在により高い気孔率および高比表面積を有する。
このため、該結晶性シリケート多孔質体は、結晶性シリケートよりなる材質により、1000℃以上の高温下での使用に耐え、また、連続したマクロ細孔を有するものは圧力損失が低く、高温用フィルター材料として好適である。
また、結晶性シリケートは、その組成を構成する金属の種類によっては触媒活性を有し、前記多孔質構造と合わせ、触媒担体等反応担体として有用である。
以下、本発明の結晶性シリケート多孔質体ならびにその製造方法について説明する。
本発明の結晶性シリケート多孔質体は、金属元素(M)の重量割合が、酸化物換算で20〜70重量%、好ましくは、30〜60重量%の範囲にある。上記金属元素の割合が、上記範囲より少ない場合、結晶性シリケートの存在量が不足し、耐熱性が不十分となり、また、上記範囲より多い場合は、金属元素の酸化物によりマクロ細孔が消失するおそれがある。
ここで、結晶性シリケート中の金属の存在状態および存在割合は、例えば、X線回折、蛍光X線解析、NMR解析、電子スピン共鳴等の公知の分析手法を使用して確認することができる。
また、上記金属(M)の種類は、シリケートを形成可能なものであれば、特に制限されないが、より良好な耐熱性の向上効果を得るためには、アルカリ土類金属やアルミニウム等の金属元素が好ましい。
本発明の結晶性シリケート多孔質体は、その骨格が実質的にシリケート結晶相からなるものであればよく、上記組成の結晶性シリケートが多孔質体の全てを構成してもよいし、結晶性シリケートと共に、前記金属元素に対応する金属酸化物、非晶質シリカ相、又はクリストバライト相が混在していてもよい。
ここで、骨格が実質的にシリケート結晶相からなることの確認は、X線回折および29Si−MAS−NMR測定によって行うことが可能である。
本発明の結晶性シリケート多孔質体は、上記シリケート結晶構造を有しながら、0.1〜20μm、特に、1〜15μmのマクロ細孔を有することを特徴とする。従来、このように十分な大きさのマクロ孔を有する結晶性シリケート多孔質体は報告が無く、本発明によって初めて提供されるものである。
特に、本発明においては、上記細孔の存在により、気孔率が30〜80%、特に、40〜75%を有する高い多孔性を有する結晶性シリケート多孔質体が好ましい。
尚、気孔率の測定は、試料の細孔内に水を充填置換し、置換前後の重量差から細孔容積を求め、これに加え試料の重量および体積の測定結果から、計算により求めることができる。
本発明において、上記マクロ細孔は、連通していてもよいし、独立していてもよしい、これらの細孔が混在していてもよい。しかし、前記触媒、フィルター等の用途に使用する場合、連通孔を有するものが好適である。
尚、前記マクロ細孔の孔径分布の測定は、水銀圧入法を用いることができる。また、SEM(走査型電子顕微鏡)による直接観察により細孔径、および細孔の連続性が確認できる。さらにまた、結晶性シリケ−ト多孔質体の成形体の圧力損失の程度によりマクロ細孔の連通性を推定できる。
(結晶性シリケート多孔質体の製造方法)
本発明の結晶性シリケート多孔質体の製造方法は、特に制限されるものではないが、工業的に有利な方法として、平均細孔径が、0.1〜50μmのマクロ細孔と、これに連続する、平均細孔径が、2〜30nmのナノ細孔を有するシリカ多孔質体に、水溶性金属化合物の水溶液を含浸させるか、低融点金属化合物を溶融状態で含浸させた後、加熱して結晶性シリケートを生成せしめる方法が挙げられる。
上記製造方法において使用するシリカ多孔質体の製造方法は、公知の方法が特に制限無く採用されるが、相分離を利用した手法により非晶質のシリカ多孔質体を製造する方法がマクロ細孔、メソ細孔の整ったシリカ多孔質体を得るために好適である。かかる製造方法は、例えば、前述の特許文献1にも記載されている。
即ち、シリカ源として、メトキシシラン、エトキシシラン等のケイ素アルコキシドや、水ガラス等を使用する。
水ガラスは、一般にはケイ酸アルカリ塩の濃厚水溶液であり、その種類や濃度は特に限定されないが、JIS規格の水ガラスである珪酸ナトリウムJIS3号またはそれと同等のものがシリカ源として取扱い易い。
相分離とゲル化を同時に起こして湿潤状態のゲルを作製するためには、シリカ源を含む溶液にポリマーおよび酸を存在させてゲル化を進める手段が有効に利用される。
ここでポリマーとは、適当な濃度の溶液を形成することができる有機高分子であって、シリカ源を含有する溶液中において均一に溶解することができるものが好適である。具体的には、高分子金属塩であるポリスチレンスルホン酸のナトリウム塩またはカリウム塩、高分子酸であって解離してポリアニオンとなるポリアクリル酸、高分子塩基であってポリカチオンを生ずるポリアクリルアミンまたはポリエチレンイミン、中性高分子であって主鎖にエーテル結合を持つポリエチレンオキシド、側鎖にヒドロキシル基を有するポリビニルアルコール、もしくはカルボニル基を有するポリビニルピロリドン等である。
これらのうち、ポリアクリル酸またはポリビニルアルコールが、取扱いが容易であり好ましい。ポリアクリル酸は分子量15,000〜300,000、好ましくは20,000〜150,000のものが好適である。
加水分解反応の触媒として働きゲル化を促進するために添加される酸として、通常硫酸、塩酸、硝酸等の鉱酸または有機酸が使用される。最終反応溶液の酸濃度は1リットルあたり、0.1〜5モル、好ましくは1〜4モルの範囲が好ましく、全体の酸の仕込み量は、例えば、珪酸ナトリウムJIS3号の仕込量の4〜5倍のモル比になるように調整する。
湿潤状態のゲルを得るためのゲル化の代表的方法は、シリカ源、ポリマー、酸等からなる混合溶液(以下、ゾル液と呼ぶ)を密閉容器などに入れ、0〜80℃で、好ましくは10〜30℃で10分〜1週間、さらに好ましくは1時間〜24時間放置することにより行う。
マクロ細孔の孔径や容積はゲル化条件によって制御することができる。
シリカ源に水ガラスを用いる場合は、作製された湿潤ゲルを乾燥する前に洗浄する必要がある。これは、水ガラスにナトリウム等のアルカリ金属が含まれており、湿潤ゲルをそのまま乾燥させると乾燥が進むにつれてゲルの崩壊が進むからである。洗浄は、ゲルを水に漬け、厚さが1cm程度あるゲルでは室温で12時間以上放置することにより行うが、ゲルの厚さがこれより薄ければより短時間で洗浄可能である。
マクロ細孔の他にナノ細孔を有する非晶質多孔質シリカを得るには、水洗後のゲルを塩基性水溶液中で熟成させればよい。非晶質多孔質シリカのナノ細孔の細孔径は、熟成条件によって制御できる。熟成は、0.01〜10規定のアルカリ溶液中で0〜80℃の温度で行うのが好ましい。これら熟成条件は、希望とするナノ細孔の平均細孔径を2〜30nmの範囲で適宜選択することにより決定できる。
尚、該ナノ細孔の細孔径は水銀圧入法あるいは窒素吸着法により確認することができる。
熟成後のゲルは、30〜80℃で数時間〜数十時間放置して乾燥を行う。乾燥後、マクロ細孔作製の目的で加えられた水溶性高分子化合物等の有機物を除去するため、および強度を向上しマクロ細孔構造を維持するために焼成する。焼成温度は、600〜1,100℃が好ましい。
また、該結晶性シリケート多孔質体を製造するために、上述のシリカ多孔質体に含浸せしめる金属化合物は結晶性シリケート相を形成する金属を成分とするものであれば限定されない。
例えば、カルシウム化合物、マグネシウム化合物、アルミニウム化合物などが挙げられる。該添加金属がマグネシウムの場合は、適切な条件において、フォルステライト(MgSiO)或いはエンスタタイト(MgSiO)が生成し、カルシウムの場合はラーナイト(CaSiO)、ウォラストナイト(CaSiO)或いはサイクロウォラストナイト(CaSiO)が生成し、アルミニウムの場合はムライト(3Al−2SiO)等が生成する。
かかる金属化合物は、前記製造方法において、水溶液をシリカ多孔質体に含浸させる場合は、水溶性化合物として、金属硝酸塩、金属塩化物、金属水酸化物等の化合物が好適であり、また、溶融させてシリカ多孔質体に含浸させる場合は、低融点金属化合物として、金属硫酸塩や金属硝酸塩等の化合物が好適である。
また、シリカ多孔質体に含浸させる金属化合物の量は、後述の加熱操作によって得られる結晶性シリケート多孔質体における金属元素(M)の重量割合が、前記範囲となるように適宜調整することが好ましい。
次に、該多孔質シリカを結晶性シリケート形成に必要な量の金属化合物の含浸後に加熱を行い、マクロ細孔を形成する骨格を結晶性シリカおよび結晶性シリケート相の複数の結晶相の共存状態に変換する。
本発明の前記多孔質体の製造方法において、金属化合物を含浸後の加熱条件は、金属元素とシリカとの組成に応じて、熱処理温度に対して生成するシリケート結晶相を示す2成分系平衡状態図を指針に、熱処理温度を決定することが好ましい。
一般に、結晶化のための熱処理温度はアルカリ土類金属の場合は600℃以上、アルミニウムの場合は1100℃以上であれば良い。高温での熱処理はシリカの結晶性シリケート化を促進するが、熱処理温度が高くなると細孔構造が失われる傾向があり、結晶性シリカ多孔質体の気孔率が低下するため、温度1000〜1300℃にて2時間以上保持する熱処理条件が好ましい。この時、マクロ細孔の孔構造が保持されるため、該結晶性シリカの気孔率は30〜70%の範囲の値をとり、高い気孔率を維持する。
原料の多孔質シリカのマクロ細孔径は0.5μmより小さいと高温熱処理によりマクロ細孔構造が失われるため、大きいマクロ細孔を有することが好ましいが、50μm以上のマクロ細孔を有する該多孔質シリカの調整は通常の条件下での調整は困難である。
本発明において、熱処理時に金属化合物を存在させると、金属が非晶質シリカの網目構造体中で局所的な電気的中性を保つべく不規則に分布し、非晶質構造形成の結合にあずからない酸素イオンを生成させることにより非晶質構造を変化させ、これがシリカの結晶化促進の駆動力となり、さらには所定量以上の金属が存在により、所定の温度で結晶性シリケートが形成されると考えられる。
上述したシリカ多孔質体の結晶性シリケート化の挙動は、金属化合物の種類、金属化合物の添加量、熱処理温度、保持時間、および出発物質となる多孔質シリカのマクロ細孔の孔径やナノ細孔の孔径により影響を受ける。従って、これら諸条件を適宜変化させることにより、所望の結晶状態の結晶性シリケート多孔質体が得られる。
以下、実施例を示して本発明をさらに具体的に説明する。
(圧力損失評価)
シリカ多孔質体の圧力損失評価は、直径6mm、長さ10mmの円柱状の測定試料に空気(流量 100ml/min)を流したときの圧力損失を測定することにより行った。圧力損失の測定には水あるいは水銀マノメータを用いた。尚、圧力損失は、充填層厚み及び流速を規格化した値、ΔP/uL(単位;Pa s m-2)で表した。ΔPは試料充填部の圧力損失(単位;Pa)、uは充填層のガス流速(単位;m/s)、Lは充填層厚み(単位;m)である。
(マクロ細孔の細孔径の測定)
予め120℃、12時間乾燥させた測定用試料を、水銀圧入法(カンタクローム社製、POREMASTER−60)によりマクロ細孔の細孔径を測定した。測定で得られた細孔径分布において、マイクロメートル領域に現れる最大ピークの孔径をマクロ細孔の平均細孔径とした。
(ナノ細孔の細孔径の測定)
予め120℃、12時間乾燥させた測定用試料を、窒素吸着法(マイクロメリティクス社製、ASAP2000)によりナノ細孔の平均細孔径を測定した。−196℃で窒素の吸着−脱離等温線を測定し、吸着等温線(脱離側)を用いて細孔径分布・比表面積を求めた。該吸着等温線からナノ細孔の平均細孔径を算出した。
(X線回折(XRD)測定)
調整した試料の結晶構造を調べるため、線源CuKαを用いた粉末X線回折(島津製作所製、XRD−7000)により結晶回折パターンを得、解析した。
(金属含有量の分析)
調整した試料の金属含有量を調べるため、エネルギー分散型蛍光X線分析法(島津製作所製、EDX−900HS)により測定を行った。
(MAS−NMR測定)
試料中のSi原子の存在状態および結晶性シリケートの構造を調べるため、29Si−MAS−NMR測定(日本ブルカー製、BURKER DPX−300
multinuclear spectrometer)を行った。
実施例1
平均分子量25,000のポリアクリル酸(以下HPAAという)共存下、水ガラス(3号珪曹)より、マクロ細孔の細孔径1μm、ナノ細孔の細孔径15nmの多孔質シリカを作製した。仕込組成は、重量比で水:濃硝酸:HPAA:水ガラス=97:37:6.5:52とし、室温で攪拌し均一溶液とした後、25℃で静置しゲル化させた。ナトリウム除去のために該ゲルを水洗した後、1規定のアンモニア水溶液中で、50℃で72時間熟成を行った後に、50℃で乾燥、600℃で焼成を行った。図1に焼成後の試料の断面SEM写真を示す。図1に示すように、該多孔質シリカには、細孔径の揃った貫通孔が三次元網目状に絡み合った構造で存在していることが確認され、図2に示すように、水銀圧入法によりマクロ細孔とナノ細孔の存在を確認した。また、窒素吸着法によりナノ細孔の平均細孔径が15nmであることを確認した。
該多孔質シリカ10gを、坩堝内で90℃にて調整した硝酸マグネシウム (Mg(NO6HO)融液39gに浸し、マグネシウム仕込み量を酸化物(MgO)換算量で38重量%に調整した。結晶性シリケート化のため、600〜1,400℃で2時間熱処理した。マグネシウムの含有量は蛍光X線分析により確認した。酸化マグネシウム(MgO)換算のマグネシウム含有量は40重量%であった。表1に結果を示す。同様に、該多孔質シリカを硝酸マグネシウム水溶液に入れ、アスピレータを2時間かけた後、50℃で4日間静置した。その後、細孔内に入らなかった硝酸塩水溶液を取り除き、50℃で乾燥し、600〜1,200℃で2時間熱処理した。マグネシウムの仕込み量は硝酸塩水溶液濃度により23重量%に調整した。結晶性シリケート化熱処理後のマグネシウムの含有量は蛍光X線分析により確認し、酸化マグネシウム換算の存在割合は21重量%であった。表1に結果を示す。
600〜1,400℃の熱処理温度について、上記の酸化マグネシウム(MgO)換算の仕込み量38重量%、および23重量%に調整した試料のX線回折図を図3、および図4にそれぞれ示す。これらの図から、熱処理温度が上がるに従い、600℃前後で結晶化が始まり、非晶質からフォルステライトに、そしてフォルステライトおよびエンスタタイへの混合結晶相に移ることがわかる。また、マグネシウム仕込み量が大きいと、これら結晶性シリケート相が安定的に形成される。これら結晶性シリカ系多孔質体の構造を調べるため、MgO仕込み量38重量%について、様々な熱処理温度での試料の細孔径分布を水銀圧入法により測定した。結果を図5に示す。加えて、図6に、MgO仕込み量38重量%における熱処理温度800℃および1,400℃の試料のSEM写真を、それぞれ示す。これらの結果を出発物質の多孔質シリカのSEM写真(図1)および細孔径分布(図2)と比較するとマクロ孔を特徴とする細孔構造が比較的良く維持されていることがわかる。加えて、様々な熱処理温度での試料の窒素吸着法による比表面積測定値を表1に示す。この結果は、1,000℃前後の熱処理温度でも、試料は数mの比表面積値を維持しており、さらに気孔率も60〜70%の値を保ち、耐熱性を有することを示唆する。
MgO仕込み量38重量%について、様々な熱処理温度での試料中のSiの存在状態を調べるため、図7に示すように、29Si−MAS−NMRを測定した。この結果、比較的低い熱処理温度ではフォルステライトの結合が、高い熱処理温度ではエンスタタイトの結合が支配的であり、試料の大部分が結晶性シリケートの構造であることを示している。
高温フィルター等への応用のための知見を得るため、酸化マグネシウム仕込み量38重量%、熱処理温度900℃の試料の圧力損失を測定した。結果を表1に示す。
実施例2
実施例1と同様にして、硝酸カルシウム(Ca(NO4HO)を用い、該多孔質シリカ原体10gを、坩堝内で50℃にて調整した融液42gに浸し、カルシウム仕込み量を酸化物(CaO)換算量で50重量%に調整した。結晶性シリケート化のため、1,000℃で2時間熱処理した。カルシウムの含有量は蛍光X線分析により確認した。酸化カルシウム(CaO)換算のカルシウム含有量は66重量%であった。表1に結果を示す。同様に、該多孔質シリカを硝酸カルシウム水溶液に入れ、アスピレータを2時間かけた後、50℃で4日間静置した。その後、細孔内に入らなかった硝酸塩水溶液を取り除き、50℃で乾燥し、900℃で2時間熱処理した。カルシウムの仕込み量は硝酸塩水溶液濃度により23重量%に調整した。結晶性シリケート化熱処理後のカルシウムの含有量は蛍光X線分析により確認し、酸化カルシウム換算の存在割合は34重量%であった。表1に結果を示す。
600〜1,400℃の熱処理温度について、上記の酸化カルシウム(CaO)換算の仕込み量34重量%、および23重量%に調整した試料のX線回折図を図8、および図9にそれぞれ示す。これらの図から、熱処理温度が上がるに従い、600℃前後で結晶化が始まり、非晶質からラーナイトに、そしてラーナイトおよびウォラストナイトへの混合結晶相に移ることがわかる。また、カルシウム仕込み量が大きいと、これら結晶性シリケート相が安定的に形成される。これら結晶性シリカ系多孔質体の構造を調べるため、CaO仕込み量34重量%について、様々な熱処理温度での試料の細孔径分布を水銀圧入法により測定した。結果を図10に示す。加えて、図11に、CaO仕込み量34重量%における熱処理温度800℃および1,400℃の試料のSEM写真を、それぞれ示す。これらの結果を出発物質の多孔質シリカのSEM写真(図1)および細孔径分布(図2)と比較するとマクロ孔を特徴とする細孔構造が比較的良く維持されていることがわかる。加えて、様々な熱処理温度での試料の窒素吸着法による比表面積測定値を表1に示す。この結果は、1,000℃前後の熱処理温度でも、試料は数mの比表面積値を維持しており、さらに気孔率も50%の値を保ち、耐熱性を有することを示唆する。
CaO仕込み量34重量%について、様々な熱処理温度での試料中のSiの存在状態を調べるため、図7に示すように、29Si−MAS−NMRを測定した。この結果、比較的低い熱処理温度ではラーナイトの結合が、高い熱処理温度ではウォラストナイトの結合が支配的であり、試料の大部分が結晶性シリケートの構造であることを示している。
実施例3
実施例1と同様にして、硝酸アルミニウム(Al(NO 9HO)を用い、該多孔質シリカ原体10gを、坩堝内で105℃にて調整した融液18gに浸し、アルミニウム仕込み量を酸化物(Al)換算量で33重量%に調整した。結晶性シリケート化のため、1,000℃で2時間熱処理した。アルミニウムの含有量は蛍光X線分析により確認した。酸化アルミニウム(Al)換算のアルミニウム含有量は33重量%であった。表1に結果を示す。同様に、該多孔質シリカを硝酸アルミニウム水溶液に入れ、アスピレータを2時間かけた後、50℃で4日間静置した。その後、細孔内に入らなかった硝酸塩水溶液を取り除き、50℃で乾燥し、900℃で2時間熱処理した。アルミニウムの仕込み量は硝酸塩水溶液濃度により20重量%に調整した。結晶性シリケート化熱処理後のアルミニウムの含有量は蛍光X線分析により確認し、酸化アルミニウム換算の存在割合は19重量%であった。表1に結果を示す。
600〜1,400℃の熱処理温度について、上記の酸化アルミニウム(Al)換算の仕込み量33重量%、および20重量%に調整した試料のX線回折図を図12、および図13にそれぞれ示す。これらの図から、熱処理温度が上がるに従い、1100℃前後で結晶化が始まり、非晶質からムライトに、そしてムライトおよびクリストバライトへの混合結晶相に移ることがわかる。また、アルミニウム仕込み量が大きいと、これら結晶性シリケート相が安定的に形成される。これら結晶性シリカ系多孔質体の構造を調べるため、Al仕込み量33重量%について、様々な熱処理温度での試料の細孔径分布を水銀圧入法により測定した。結果を図14に示す。加えて、図15に、Al仕込み量33重量%における熱処理温度1,100℃および1,300℃の試料のSEM写真を、それぞれ示す。これらの結果を出発物質の多孔質シリカのSEM写真(図1)および細孔径分布(図2)と比較するとマクロ孔を特徴とする細孔構造が比較的良く維持されていることがわかる。加えて、様々な熱処理温度での試料の窒素吸着法による比表面積測定値を表1に示す。この結果は、1,000℃前後の熱処理温度でも、試料は気孔率30%の値を保ち、耐熱性を有することを示唆する。
Al仕込み量33重量%について、様々な熱処理温度での試料中のSiの存在状態を調べるため、図7に示すように、29Si−MAS−NMRを測定した。この結果、高い熱処理温度ではムライトの結合が支配的であり、試料の大部分が結晶性シリケートの構造であることを示している。
比較例1
出発物質である多孔質シリカ(原体)を、金属を添加しない以外は実施例1と同様に1,100℃で熱処理し、該試料の気孔率および比表面積を測定した結果を原体の多孔質シリカのデータと共に表1に示す。実施例1〜3の結果と比べると、結晶性シリケート化による耐熱性の向上が明らかである。
比較例2
比較のためにマクロ細孔が存在しない市販のシリカ(和光純薬株式会社、試薬、
平均粒子径10μm)について、これを圧縮成型したものから試料を作製し、実施例1と同様に、MgO仕込み量35重量%、かつ熱処理温度1,100℃にて結晶化を行い、圧力損失の測定を行った。表1に結果を示す。表1における比較からわかるように、マクロ細孔が存在すると、圧力損失を低く維持でき、かつ、結晶性シリケートのマクロ細孔が連通孔であることが推定できる。
Figure 0004606340
本図は、原体の非晶質多孔質シリカのSEM写真である。 本図は、水銀圧入法による非晶質多孔質シリカの細孔径分布図である。 本図は、実施例1で得られた本発明の結晶性シリケート系多孔質体において、酸化マグネシウム換算の仕込み量23重量%で、熱処理温度を変化させたときのX線回折図である。 本図は、実施例1で得られた本発明の結晶性シリケート系多孔質体において、酸化マグネシウム換算の仕込み量38重量%で、熱処理温度を変化させたときのX線回折図である。 本図は、実施例1で得られた本発明の結晶性シリケート系多孔質体において、酸化マグネシウム換算の仕込み量38重量%で、熱処理温度を変化させたときの水銀圧入法による細孔径分布図である。 本図は、実施例1で得られた本発明の結晶性シリケート系多孔質体において、酸化マグネシウム換算の仕込み量38重量%、かつ熱処理温度800℃および1,400℃にて作製した試料のSEM写真である。 本図は、実施例1〜3で得られた本発明の結晶性シリケート系多孔質体において、マグネシウム、カルシウム、およびアルミニウムをそれぞれ添加した場合の29Si−MAS−NMRを測定結果である。 本図は、実施例2で得られた本発明の結晶性シリケート系多孔質体において、酸化カルシウム換算の仕込み量23重量%で、熱処理温度を変化させたときのX線回折図である。 本図は、実施例2で得られた本発明の結晶性シリケート系多孔質体において、酸化カルシウム換算の仕込み量50重量%で、熱処理温度を変化させたときのX線回折図である。 本図は、実施例2で得られた本発明の結晶性シリケート系多孔質体において、酸化カルシウム換算の仕込み量50重量%で、熱処理温度を変化させたときの水銀圧入法による細孔径分布図である。 本図は、実施例2で得られた本発明の結晶性シリケート系多孔質体において、酸化カルシウム換算の仕込み量50重量%、かつ熱処理温度800℃および1,400℃にて作製した試料のSEM写真である。 本図は、実施例3で得られた本発明の結晶性シリケート系多孔質体において、酸化アルミニウム換算の仕込み量20重量%で、熱処理温度を変化させたときのX線回折図である。 本図は、実施例3で得られた本発明の結晶性シリケート系多孔質体において、酸化アルミニウム換算の仕込み量33重量%で、熱処理温度を変化させたときのX線回折図である。 本図は、実施例3で得られた本発明の結晶性シリケート系多孔質体において、酸化アルミニウム換算の仕込み量33重量%で、熱処理温度を変化させたときの水銀圧入法による細孔径分布図である。 本図は、実施例3で得られた本発明の結晶性シリケート系多孔質体において、酸化アルミニウム換算の仕込み量33wt%、かつ熱処理温度1.100℃および1,300℃にて作製した試料のSEM写真である。

Claims (4)

  1. 平均細孔径が、0.1〜20μmのマクロ細孔を有する結晶性シリケートよりなり、該シリケートにおける金属元素(M)の重量割合が、酸化物換算で20〜70重量%の範囲にあり、且つ、気孔率が30〜80%であることを特徴とする結晶性シリケート多孔質体。
  2. 平均細孔径が、0.1〜50μmのマクロ細孔と、これに連続する、平均細孔径が、2〜30nmのナノ細孔を有する多孔質シリカに、水溶性金属化合物の水溶液を含浸させた後、加熱して結晶性シリケートを生成せしめることを特徴とする結晶性シリケート多孔質体の製造方法。
  3. 平均細孔径が、0.1〜50μmのマクロ細孔と、これに連続する、平均細孔径が、2〜30nmのナノ細孔を有する多孔質シリカに、低融点金属化合物を溶融状態で含浸させた後、加熱して結晶性シリケートを生成せしめることを特徴とする結晶性シリケート多孔質体の製造方法。
  4. 多孔質シリカのマクロ細孔が連通孔を有する請求項又は記載の結晶性シリケート多孔質体の製造方法。
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