JP4605686B2 - インチング用油圧クラッチの制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、インチングペダルの操作によって油圧クラッチを制御するようにした油圧クラッチの制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
モータグレーダ、ホイールローダなど、建設機械等の車両には、インチングペダルが設けられている。インチング操作は、例えばパワーをかけて掘削物等を押しながら走行、つまり走行しながら作業するときに実施される。
【0003】
建設機械のトランスミッションには、インチングペダルに対応するインチング用の油圧クラッチが設けられている。油圧クラッチの一方の回転板側には圧油室が設けられており、この圧油室内へ圧油を充填(フィリング)することによって、圧油室内のピストンをバネ力に抗して押し、他方の回転板にピストンを押し付けることができる。インチング用油圧クラッチは、たとえばトランスミッションの前進用油圧クラッチ、後進用油圧クラッチが使用される。
【0004】
インチングペダルを操作して、油圧クラッチを半クラッチ係合状態にすると車両の速度が微小速度になり、また油圧クラッチを半クラッチ係合状態から解放状態(係合解除状態)にすると車両が停止し、また油圧クラッチを半クラッチ係合状態から完全係合状態にすると車両の速度が元の走行速度に戻る。このように油圧クラッチの係合状態、解放状態を操作することによってインチング操作が行われる。
【0005】
油圧クラッチに対応して電磁比例圧力制御弁が設けられている。
【0006】
この場合インチングペダルからコントローラに操作量θを示す操作信号が入力される。コントローラは圧力制御弁に対して、操作量θに対応する指令信号(指令電流)Iが出力される。圧力制御弁では、入力された指令信号Iに応じて油圧クラッチに与える供給圧(以下クラッチ油圧)Pを変化させ、油圧クラッチを係合または解放(係合を解除)させる。これによりインチング操作が行われる。
【0007】
コントローラには、操作量θとクラッチ油圧Pとの関係を表した特性を予め記憶しており、この特性にしたがい操作量θに対応するクラッチ油圧Pが得られるように指令信号Iを圧力制御弁に対して出力する。
【0008】
ここで、コントローラに設定される操作量θとクラッチ油圧Pとの関係を示す特性は、図9に示すように固定的な関係にあり、この固定的な関係を変えるような制御は、従来行われていなかった。
【0009】
図9に示す特性は、インチングペダルの踏み込み量としてのペダル角度θとクラッチ油圧Pとの関係を示している。図8に示すようにインチングペダル83Aを踏み込まない状態(基準位置にある状態)では操作量θは0であり、インチングペダル83Aが完全に床まで踏み込まれた状態では操作量θは最大値θmaxになる。
【0010】
すなわちペダル角度θがθ0からθ1未満のペダルストローク領域S1では、クラッチ油圧Pは最大の油圧P1に設定されている。
【0011】
またペダル角度θがθ1からθ2未満のペダルストローク領域S2では、ペダル角度θの大きさに応じて、クラッチ油圧PがP2〜P3の範囲で変化する。
【0012】
さらにペダル角度θがθ2から最大値θmaxのペダルストローク領域S3では、クラッチ油圧Pは最小の油圧P3に設定されている。
【0013】
このクラッチ油圧P3は、油圧クラッチの圧油室内のピストンが回転板より切り離されず、かつ車両が走行することができないような値として設定されている。
【0014】
これは、インチングペダル83Aを、踏み込んだ位置から戻した時にスムーズにタイムラグなしに車両が起動できるようにするためである。つまりクラッチ油圧Pが最小値P3以上あれば、油圧クラッチの圧油室内へ充填された圧油が残存しており、再充填の必要がないので、インチングペダル83Aを戻す操作をしたときにタイムラグが生じることなくクラッチ油圧Pが立ち上がりクラッチ油圧Pを上昇させることができる。
【0015】
このようにインチングペダル83Aを備えた作業車両では、上述した固定的な特性にしたがい油圧クラッチに圧油を供給し、変速機の油圧クラッチを滑らせていわゆる半クラッチの状態にし、エンジンから駆動輪に伝達される出力トルクを小さくして車両の走行速度を微小な速度に手動制御している。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
しかし作業車両の種類によっては、トランスミッションの構造等に起因して、クラッチ油圧Pを最小値P3まで低下させたとしても、車両が停止せずにそのまま走行を続けるものがある。
【0017】
この種の車両では、インチングペダル83Aを踏み込んだときに車両を完全に停止させるべく、図7に示すように、ペダル角度θがθ2から最大値θmaxの範囲のペダルストローク領域S3で、クラッチ油圧Pが油圧零となる特性に、設定されている。
【0018】
このためオペレータがインチングペダル83Aを踏み込んだときには、油圧クラッチの圧油室から圧油がタンクにドレインされ、ピストンが完全に回転板から離れてしまう。この状態からオペレータがインチングペダル83Aを戻した場合には、油圧クラッチの圧油室内への圧油の再充填を行わなければならないため、操作感覚上、タイムラグを生じることになっていた。つまり上述したようにインチングペダル83Aが踏み込まれることによりクラッチ油圧Pが一旦0になったためインチングペダル83Aを戻す操作したとしても、戻し操作に応じて油圧クラッチに供給される圧油は、油圧クラッチの圧油室内への再充填に使用される。油圧クラッチの圧油室への充填には時間がかかるためインチングペダル83Aの戻し操作を開始してからしばらくして油圧クラッチの圧油室内へのフィリングが終了し、それ以後、戻し操作量θに相当するクラッチ油圧P(図11の特性にしたがったクラッチ油圧P)をはじめて得ることができる。このためオペレータに操作感覚上、インチングペダル83Aの戻し量と実際の車速の上昇との間に、タイムラグを与えることになる。
【0019】
さらにはフィリングが終了するまでに、インチングペダル83Aを相当量戻しているため、フィリングが終了した時点で、ペダル位置相当の高いピーク油圧が発生することにより、オペレータに不快なショックを与える。
【0020】
これについて図10を参照して説明する。
【0021】
図10は図7に示す特性にしたがいインチング操作が行われた場合の動作を示しており、オペレータがインチングペダル83Aを基準位置から踏み込み、再度基準位置まで戻すまでのタイムチャートである。
【0022】
図10(c)は時間tに応じてインチングペダル83Aの操作量θが変化する様子を示し、図10(b)は図10(c)のインチングペダル83Aの操作に応じて圧力制御弁に出力される指令信号(指令電流)Iが変化する様子を示す、図10(a)は図10(b)の指令信号Iに応じて油圧クラッチのクラッチ油圧Pが変化する様子を示している。
【0023】
同図10に示すように時刻t5以降ではインチングペダル83Aで戻し操作が行われており、破線はインチングペダル83Aが比較的大きな操作速度で戻し操作されたときの特性を示しており、実線はインチングペダル83Aが比較的小さな操作速度で戻し操作されたときの特性を示している。以下インチングペダル83Aが比較的大きな操作速度で戻された場合を代表させて説明する。
【0024】
オペレータがインチングペダル83Aを踏み込み、時刻t2で操作量θがθ2になりこれに応じて指令信号Iが零になると、油圧クラッチの圧油室内の圧油はドレインされる。時刻t4〜t5では操作量θが最大値θmaxに達している。時刻t2〜t6間では指令信号Iが零になっている。このため時刻t2〜t6間で油圧クラッチの圧油室内の圧油がドレインされることになり、油圧クラッチの圧油室のピストンは回転板から切り離される。
【0025】
そこでオペレータが時刻t5からインチングペダル83Aを戻し始めると、時刻t6で指令電流Iが0からI3に上昇される。しかし指令電流IがI3になったとしても既に油圧クラッチの圧油室内の圧油はドレインされているため、指令電流Iに伴い供給される圧油は、油圧クラッチの圧油室内への充填に使用される。そして指令電流IがI3になった時刻t6から時間Tfs1だけ経過した時刻t7でフィリングが完了する。この時刻t7で戻し操作量θに相当するクラッチ油圧Pをはじめて得ることができる(図10(a)の時刻t7参照)。すなわち指令電流Iが時刻t6で既に0から立ち上がっているにもかかわらず、それから時間Tfs1だけ遅れてクラッチ油圧Pが立ち上がるため、時間Tfs1分だけのタイムラグが生じる。
【0026】
しかも時刻t5でインチングペダル83Aを戻し始めてから、時刻t7でフィリングが完了するまでに、インチングペダル83Aを相当量戻しているため、その時点で戻し操作量θに相当する大きなクラッチ油圧Pが発生するので、このペダル位置相当の高いピーク油圧Ppkが車両の前後方向の加速度として車両に急激に加わり、オペレータに不快なショックを与えることになる(図10(a)の時刻t7参照)。
【0027】
なおインチングペダル83Aを比較的速く戻した場合について説明したが、インチングペダル83Aを比較的遅く戻した場合についても同様にして、Tfs2だけタイムラグが生じ、時刻t7′で不快なショックをオペレータに与えることになる。
【0028】
上述したタイムラグは、エンジンの駆動力がトルクコンバータを介して駆動輪に伝達されている場合と、トルクコンバータを介することなくロックアップクラッチを介して伝達されている場合の両方ともに起こり得る。
【0029】
しかしながらトルクコンバータを介して駆動力が伝達されている場合には、インチングクラッチの部分と、トルクコンバータの部分の両方で滑りが発生しているため、インチングペダルの戻し操作時に、タイムラグがより大きくなり、車速が上昇しにくい。
【0030】
以上の不具合を改善する従来の技術水準は以下のとおりである。
【0031】
すなわち油圧クラッチのフィリングが完了するまでのタイムラグを短縮すべくインチングペダル83Aを踏み込んだとしても油圧クラッチの圧油室内の圧油を完全にドレインさせずに一定の残圧を立てる機構が、油圧クラッチに設けられる。
【0032】
しかしながら既存の油圧クラッチに、かかる機構を追加することは場積が大きくなるとともに部品点数が増加することから、これを採用することは実際上難しい。しかも油圧クラッチの圧油室に残圧を立てるにしても、機種に合わせて車速を零になるように残圧を設定しなければならずこれを実現することは実際上難しい。
【0033】
本発明はこうした実状に鑑みてなされたものであり、インチングペダルなどのインチング用の操作手段を操作して車両を発進させる際に、停止状態から発進開始までのタイムラグをなくしオペレータに不快なショックを与えないようにするとともに、これを複雑な機構を用いることなく簡易な構成で実現できるようにすることを解決課題とするものである。
【0034】
【課題を解決するための手段、作用および効果】
上記解決課題を達成するために、第1の発明は、
エンジンと駆動輪との間に介在され、前記エンジンの駆動力を前記駆動輪に伝達するインチング用油圧クラッチと、前記インチング用油圧クラッチに対応して設けられた操作手段と、操作量の変化に伴い指令信号が変化するように、操作量と指令信号との関係を示す特性を予め設定し、この予め設定した特性に従い前記操作手段の操作量に応じた指令信号を出力する指令信号出力手段と、前記指令信号出力手段から出力された指令信号に応じた圧力の圧油を前記インチング用油圧クラッチの圧油室に対して供給して前記インチング用油圧クラッチを係合または解放させる圧力制御手段とを備えたインチング用油圧クラッチの制御装置において、
前記インチング用油圧クラッチを解放状態から係合状態に変化させる場合に適用され、
前記指令信号出力手段は、前記インチング用油圧クラッチの圧油室に一定量以上の圧油が供給されるまで、一定レベル以上の指令信号を前記圧力制御手段に出力すると共に、前記インチング用油圧クラッチの圧油室に圧油が充填完了された以降は、前記予め設定した特性に従い、前記操作手段の操作量に応じた指令信号を前記圧力制御手段に出力すること
を特徴とする。
【0035】
第2の発明は、第1の発明において、
前記エンジンと前記インチング用油圧クラッチとの間に、トルクコンバータと、当該トルクコンバータをロックアップするロックアップクラッチとが更に介在され、
前記ロックアップクラッチが作動し、前記エンジンの駆動力をロックアップして前記インチング用油圧クラッチに伝達している場合に、第1の発明の制御を行うこと
を特徴とする。
【0036】
第3の発明は、第1の発明において、
前記指令信号出力手段は、前記インチング用油圧クラッチの圧油室に、一定量以上の圧油が供給されるまで最大レベルの指令信号を一定期間だけ前記圧力制御手段に出力すること
を特徴とする。
【0037】
第1乃至第3の発明について図1、図4、図7を参照して説明する。
【0038】
第1発明によれば、図4に示すように、操作手段83Aが車両を発進させるように操作され始めると、指令信号出力手段70は、油圧クラッチFの圧油室に時刻t8で圧油が一定量以上供給されるまで、つまり充填完了する直前まで一定レベル以上の指令信号Imax、Ifを圧力制御手段31に出力すると共に、油圧クラッチFの圧油室に時刻t8で圧油が充填完了された以降は、予め設定した図7の特性に従い、操作手段83Aの操作量θに応じた指令信号Iを圧力制御手段31に出力し、操作量θに応じてクラッチ油圧Pを上昇させる。
【0039】
第2発明によれば、図1に示すように、エンジン10と油圧クラッチFとの間に、トルクコンバータ20と、トルクコンバータ20をロックアップするロックアップクラッチ21とが更に介在された車両に適用され、ロックアップクラッチ21が作動し、エンジン10の駆動力をロックアップして油圧クラッチFに伝達している場合に、第1の発明の制御が行われる。
【0040】
第3の発明によれば、図4に示すように、指令信号出力手段70は、油圧クラッチFの圧油室に圧油が一定量以上供給されるまで最大レベルの指令信号Imaxを一定期間Tft1だけ圧力制御手段31に出力する。
【0041】
第1発明〜第3発明によれば、操作手段83Aが車両を発進させるように操作され始めると、油圧クラッチFの圧油室に圧油がほぼ充填されるまでは、従来の図7に示す固定的な特性にしたがうのではなく、一定レベル以上の指令信号Imax、Ifを圧力制御手段31に出力するようにしているので、油圧クラッチFの圧油室内への圧油のフィリングを迅速に終了することができ、これにより停止状態から発進開始までのタイムラグがなくなり、不快なショックも発生しない。
【0042】
しかも指令信号出力手段70(コントローラ70)側で指令信号Iを調整すればよく、従来のように、油圧クラッチ側に複雑な機構を追加する必要がなくなるので、装置を簡易にすることができる。
【0043】
また第4の発明は、
エンジンと駆動輪との間に介在され、前記エンジンの駆動力を前記駆動輪に伝達するインチング用油圧クラッチと、前記インチング用油圧クラッチに対応して設けられた操作手段と、操作量の変化に伴い指令信号が変化するように、操作量と指令信号との関係を示す特性を予め設定し、この予め設定した特性に従い前記操作手段の操作量に応じた指令信号を出力する指令信号出力手段と、前記指令信号出力手段から出力された指令信号に応じた圧力の圧油を前記インチング用油圧クラッチの圧油室に対して供給して前記インチング用油圧クラッチを係合または解放させる圧力制御手段とを備えたインチング用油圧クラッチの制御装置において、
前記操作手段が、前記インチング用油圧クラッチを解放状態にする操作位置に操作されてから、所定時間を超えて、前記インチング用油圧クラッチを係合状態にする操作位置へ操作された場合には、
前記指令信号出力手段は、前記インチング用油圧クラッチの圧油室に一定量以上の圧油が供給されるまで、一定レベル以上の指令信号を前記圧力制御手段に出力すると共に、前記インチング用油圧クラッチの圧油室に圧油が充填完了された以降は、前記予め設定した特性に従い、前記操作手段の操作量に応じた指令信号を前記圧力制御手段に出力するととともに、
前記操作手段が、前記インチング用油圧クラッチを解放状態にする操作位置に操作されてから、前記所定時間以内に、前記インチング用油圧クラッチを係合状態にする操作位置へ操作された場合には、
前記指令信号出力手段は、前記予め設定した特性に従い、前記操作手段の操作量に応じた指令信号を前記圧力制御手段に出力すること
を特徴とする。
【0044】
第4の発明によれば、操作手段83Aが、インチング用油圧クラッチFを解放状態にする操作位置に操作されてから、所定時間を超えて、インチング用油圧クラッチFを係合状態にする操作位置へ操作された場合には、指令信号出力手段70は、油圧クラッチFの圧油室に時刻t8で圧油が一定量以上供給されるまで、つまり充填完了する直前まで、一定レベル以上の指令信号Imax、Ifを圧力制御手段31に出力すると共に、油圧クラッチFの圧油室に時刻t8で圧油が充填完了された以降は、予め設定した図7の特性に従い、操作手段83Aの操作量θに応じた指令信号Iを圧力制御手段31に出力し、操作量θに応じてクラッチ油圧Pを上昇させる。このため第1の発明と同様の効果が得られる。
【0045】
しかし操作手段83Aが、インチング用油圧クラッチFを解放状態にする操作位置に操作されてから、所定時間以内に、インチング用油圧クラッチFを係合状態にする操作位置へ操作された場合には、指令信号出力手段70は、予め設定した図7の特性に従い、操作手段83Aの操作量θに応じた指令信号Iを圧力制御手段31に出力し、操作量θに応じてクラッチ油圧Pを上昇させる。つまりインチング用油圧クラッチFが解放状態になっている時間が短い場合には、解放状態になっている時間が長い場合のように係合操作開始時に一定レベル以上の指令信号Imax、Ifが出力されることはなく、従来とおり予め設定した図7の特性にしたがった指令信号Iが出力される。これにより油圧クラッチFの圧油室内の圧油がタンクに排出し切る前に再充填されることが防止され、油圧クラッチFがショックを伴って係合することが防止される。
【0046】
また第5の発明は、
エンジンと駆動輪との間に介在され、前記エンジンの駆動力を前記駆動輪に伝達するインチング用油圧クラッチと、前記インチング用油圧クラッチに対応して設けられた操作手段と、操作量の変化に伴い指令信号が変化するように、操作量と指令信号との関係を示す特性を予め設定し、この予め設定した特性に従い前記操作手段の操作量に応じた指令信号を出力する指令信号出力手段と、前記指令信号出力手段から出力された指令信号に応じた圧力の圧油を前記インチング用油圧クラッチの圧油室に対して供給して前記インチング用油圧クラッチを係合または解放させる圧力制御手段とを備えたインチング用油圧クラッチの制御装置において、
前記インチング用油圧クラッチを解放状態から係合状態に変化させる場合に適用され、
前記指令信号出力手段は、前記インチング用油圧クラッチの圧油室に一定量以上の圧油が供給されるまで一定レベル以上の指令信号を前記圧力制御手段に出力すると共に、前記油圧クラッチの圧油室に圧油が充填完了された以降は、前記予め設定した特性が示す指令信号よりも所定量だけ大きい指令信号を一定期間だけ、前記操作手段の操作量に応じて、前記圧力制御手段に出力すること
を特徴とする。
【0047】
第6の発明は、第5の発明において、
前記エンジンと前記インチング用油圧クラッチとの間に、トルクコンバータが更に介在され、
前記エンジンの駆動力が前記トルクコンバータを介して前記インチング用油圧クラッチに伝達している場合に、第5の発明の制御を行うこと
を特徴とする。
【0048】
第7の発明は、第5の発明において、
前記エンジンと前記インチング用油圧クラッチとの間に、トルクコンバータと、当該トルクコンバータをロックアップするロックアップクラッチとが更に介在され、
前記ロックアップクラッチが不作動状態であり、前記エンジンの駆動力が前記トルクコンバータを介して前記油圧クラッチに伝達している場合に、第5の発明の制御を行うこと
を特徴とする。
【0049】
第8の発明は、第5の発明において、
前記指令信号出力手段は、前記インチング用油圧クラッチの圧油室に一定量以上の圧油が供給されるまで最大レベルの指令信号を一定期間だけ前記圧力制御手段に出力すること
を特徴とする。
【0050】
第5乃至第8の発明について図1、図6、図7を参照して説明する。
【0051】
第5発明によれば、図6に示すように、操作手段83Aが車両を発進させるように操作され始めると、指令信号出力手段70は、油圧クラッチFの圧油室に時刻t8で一定量以上の圧油が供給されるまで、つまり充填完了直前まで、一定レベル以上の指令信号Imax、Ifを圧力制御手段31に出力すると共に、油圧クラッチFの圧油室に時刻t8で圧油が充填完了された以降は、予め設定した図7の特性が示す指令信号Iよりも所定量ΔIだけ大きい指令信号I′を、操作手段83Aの操作量θに応じて、圧力制御手段31に出力し、操作量θに応じてクラッチ油圧Pを上昇させる。
【0052】
第6発明によれば、図1に示すように、エンジン10と油圧クラッチFとの間に、トルクコンバータ20が更に介在された車両に適用され、エンジン10の駆動力がトルクコンバータ20を介して油圧クラッチFに伝達している場合に、第5発明の制御が行われる。
【0053】
第7発明によれば、図1に示すように、エンジン10と油圧クラッチFとの間に、トルクコンバータ20と、トルクコンバータ20をロックアップするロックアップクラッチ21とが更に介在された車両に適用され、ロックアップクラッチ21が不作動状態であり、エンジン10の駆動力がトルクコンバータ20を介して油圧クラッチFに伝達している場合に、第5発明の制御が行われる。
【0054】
第8発明によれば、図6に示すように、指令信号出力手段70は、油圧クラッチFの圧油室に一定量以上の圧油が供給されるまで最大レベルの指令信号Imaxを一定期間Tft1だけ圧力制御手段31に出力する。
第5発明〜第8発明によれば、操作手段83Aが車両を発進させるように操作され始めると、油圧クラッチFの圧油室に一定量以上の圧油が供給されるまでは、従来の図7に示す固定的な特性にしたがうのではなく、一定レベル以上の指令信号Imax、Ifを圧力制御手段31に出力するようにしているので、油圧クラッチFの圧油室内への圧油のフィリングを迅速に終了することができる。
【0055】
ここでトルクコンバータ20を介して駆動力が伝達されている場合には、インチングクラッチFの部分と、トルクコンバータ20の部分の両方で滑りが発生しているため、インチングペダル83Aの戻し操作時に、タイムラグがより大きくなり、車速が上昇しにくい。
【0056】
そこで油圧クラッチFの圧油室に圧油が充填完了された以降も、従来の図7に示す固定的な特性にしたがうのではなく、圧油充填完了後も図7の特性にしたがう指令信号IよりもΔIだけ大きい指令信号I′を出力する。これにより油圧クラッチF側での伝達トルク上昇が早まり、伝達トルクの上昇の遅れを、油圧クラッチF側で補うことができる。これにより停止状態から発進開始までのタイムラグが少なくなり、車速を時刻t9で迅速に一定車速V0まで上昇させることができる。
【0057】
また第5〜第8発明では、指令信号出力手段70(コントローラ70)側で指令信号Iを調整しており、従来のように、油圧クラッチ側に複雑な機構を追加する必要がなくなるので、装置を簡易にすることができる。
【0058】
第9の発明は、
エンジンと駆動輪との間に介在され、前記エンジンの駆動力を前記駆動輪に伝達するインチング用油圧クラッチと、前記インチング用油圧クラッチに対応して設けられた操作手段と、操作量の変化に伴い指令信号が変化するように、操作量と指令信号との関係を示す特性を予め設定し、この予め設定した特性に従い前記操作手段の操作量に応じた指令信号を出力する指令信号出力手段と、前記指令信号出力手段から出力された指令信号に応じた圧力の圧油を前記インチング用油圧クラッチの圧油室に対して供給して前記インチング用油圧クラッチを係合または解放させる圧力制御手段とを備えたインチング用油圧クラッチの制御装置において、
前記操作手段が、前記インチング用油圧クラッチを解放状態にする操作位置に操作されてから、所定時間を超えて、前記インチング用油圧クラッチを係合状態にする操作位置へ操作された場合には、
前記指令信号出力手段は、前記インチング用油圧クラッチの圧油室に一定量以上の圧油が供給されるまで、一定レベル以上の指令信号を前記圧力制御手段に出力すると共に、前記インチング用油圧クラッチの圧油室に圧油が充填完了された以降は、前記予め設定した特性が示す指令信号よりも所定量だけ大きい指令信号を一定期間だけ、前記操作手段の操作量に応じて、前記圧力制御手段に出力するとともに、
前記操作手段が、前記インチング用油圧クラッチを解放状態にする操作位置に操作されてから、前記所定時間以内に、前記インチング用油圧クラッチを係合状態にする操作位置へ操作された場合には、
前記指令信号出力手段は、前記予め設定した特性に従い、前記操作手段の操作量に応じた指令信号を前記圧力制御手段に出力すること
を特徴とする。
【0059】
第9の発明によれば、操作手段83Aが、インチング用油圧クラッチFを解放状態にする操作位置に操作されてから、所定時間を超えて、インチング用油圧クラッチFを係合状態にする操作位置へ操作された場合には、指令信号出力手段70は、油圧クラッチFの圧油室に時刻t8で一定量以上の圧油が供給されるまで、つまり充填完了直前まで、一定レベル以上の指令信号Imax、Ifを圧力制御手段31に出力すると共に、油圧クラッチFの圧油室に時刻t8で圧油が充填完了された以降は、予め設定した図7の特性が示す指令信号Iよりも所定量ΔIだけ大きい指令信号I′を、操作手段83Aの操作量θに応じて、圧力制御手段31に出力し、操作量θに応じてクラッチ油圧Pを上昇させる。このため第5の発明と同様の効果が得られる。
【0060】
しかし操作手段83Aが、インチング用油圧クラッチFを解放状態にする操作位置に操作されてから、所定時間以内に、インチング用油圧クラッチFを係合状態にする操作位置へ操作された場合には、指令信号出力手段70は、予め設定した図7の特性に従い、操作手段83Aの操作量θに応じた指令信号Iを圧力制御手段31に出力し、操作量θに応じてクラッチ油圧Pを上昇させる。つまりインチング用油圧クラッチFが解放状態になっている時間が短い場合には、解放状態になっている時間が長い場合のように係合操作開始時に一定レベル以上の指令信号Imax、Ifが出力されることはなく、従来とおり予め設定した図7の特性にしたがった指令信号Iが出力される。これにより油圧クラッチFの圧油室内の圧油がタンクに排出し切る前に再充填されることが防止され、油圧クラッチFがショックを伴って係合することが防止される。
【0061】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を添付図面を参照して説明する。
【0062】
図7は、モータグレーダ、ホイールローダなどの建設機械等の作業車両に搭載された制御装置1を示している。
【0063】
同図1に示すようにエンジン10と駆動輪60との間にはトルクコンバータ20、副変速機30、主変速機としてのスピードギヤトレイン40、シャフト51、ディファレンシャル50が順に設けられている。
【0064】
トルクコンバータ20と並列にロックアップクラッチ21が設けられている。
副変速機30内には、車両を前進方向に走行させる前進用クラッチF、車両を後進方向に走行させる後進用クラッチRがそれぞれ設けられている。前進用クラッチF、後進用クラッチRは、インチング用のクラッチ(インチング用油圧クラッチ)として使用される。インチング用油圧クラッチはインチングペダル83Aの操作に応じて係合され、また解放(係合解除)がされる。
【0065】
前進用クラッチF、後進用クラッチRにはそれぞれ、圧力制御弁(電磁比例圧力制御弁)31、32としての例えば電子制御モデュレーションバルブ(ECMV)が接続されている。
【0066】
スピードギヤトレイン40内には複数の変速用クラッチつまり車速を第1の車速(1速)にする変速用クラッチ1st、第2の車速(2速)にする変速用クラッチ2nd、第3の車速(3速)にする変速用クラッチ3rd、第4の車速(4速)にする変速用クラッチ4thがそれぞれ設けられている。
【0067】
スピードギアトレイン40には圧力制御弁部41が接続されており、圧力制御弁部41は、スピードギアトレイン40内の各変速用クラッチ1st、2nd、3rd、4thにそれぞれ対応して接続される圧力制御弁(例えばECMV)を有している。
【0068】
上記各圧力制御弁31、32及び圧力制御弁部41の各圧力制御弁は、上記各クラッチFL、R、1st、2nd、3rd、4thの圧油室への供給圧Pを制御するものであり、コントローラ70から出力される指令信号(指令電流)Iによって各々独立して制御される。
【0069】
各圧力制御弁には、後述するようにクラッチの圧油室に圧油を充填し終えたとき(フィリングが終了したとき)の圧力(フィリング圧)Pfを検出するフィリングセンサとしての油圧スイッチが設けられている。油圧スイッチでフィリング圧Pfが検出されると、油圧スイッチはオンとなり、オン信号がコントローラ70に入力される。
【0070】
ロックアップスイッチ85は、エンジン10から副変速機30への動力をトルクコンバータ20又はロックアップクラッチ21の何れを介して伝達するかを選択するスイッチである。ロックアップスイッチ85によって「T/Cモード」が選択されると、コントローラ70から圧力制御弁33に指令電流Iが出力され、これにより圧力制御弁33から制御圧油がロックアップクラッチ21に出力され、ロックアップクラッチ21の両回転板が解放される。このためエンジン10の動力はトルクコンバータ20を介して副変速機30へ伝達される。またロックアップスイッチ85によって「L/Cモード」が選択されると、コントローラ70から圧力制御弁33に指令電流Iが出力され、これにより圧力制御弁33から制御圧油がロックアップクラッチ21に出力され、ロックアップクラッチ21の両回転板が係合される。このためエンジン10の動力はロックアップクラッチ21を介して副変速機30へ伝達される。
【0071】
本実施形態の発進制御には後述のように、「L/Cモード」時の発進制御と、「T/Cモード」時の発進制御の2種類がある。
【0072】
スピードギヤトレイン40の出力側にはシャフト51の回転数Nを検出する回転センサ81が設けられている。シャフト51の回転数Nを検出することにより実際の車速Vが検出される。
【0073】
回転センサ81の検出信号は、走行制御および本実施形態の後述する発進制御を実行する際のフィードバック信号としてコントローラ70に入力される。
【0074】
副変速機30の前進用クラッチF、後進用クラッチRがインチング用油圧クラッチとして使用されるときには、インチングペダル83Aによって操作される。インチングペダル83Aの操作によってインチング用油圧クラッチの係合および解放(係合解除)が行われる。インチングペダル83Aの基準位置からの操作量は、ポテンショメータ83で検出され検出信号がコントローラ70に入力される。シフト操作部84Aによって「前進走行」が選択され車両が前進走行しているときには、前進用クラッチFがインチングクラッチとして機能する。またシフト操作部84Aによって「後進走行」が選択され車両が後進走行しているときには、後進用クラッチRがインチングクラッチとして機能する。
【0075】
たとえば前進用クラッチFがインチングクラッチとして機能している場合を想定する。図8で既に説明したようにインチングペダル83Aが戻されており(基準位置にあり)操作量θが零のときには、前進用クラッチFは係合している。インチングペダル20が踏み込まれており操作量θが最大θmaxのときには、前進用クラッチFは解放している。
【0076】
アクセルペダル82Aはエンジン10に供給される燃料の噴射量(トルク)を増減する操作ペダルである。アクセルペダル82Aの踏み込み量は、ポテンショメータ82によって検出される。ポテンショメータ82の検出信号はコントローラ70に入力される。
【0077】
シフト操作部84Aは車両の前進、後進、速度段などの変速位置を選択する操作レバーである。シフト操作部84Aの操作位置に応じて、車両の前進走行と後進走行とが切り換えられるとともに、車速が切り換えられる。シフト操作部84Aの操作位置は、シフトポジションセンサ84によって検出される。シフトポジションセンサ84の検出信号はコントローラ70に入力される。
【0078】
コントローラ70は、ポテンショメータ82で検出されたアクセルペダル82Aの操作量、シフトポジションセンサ84で検出された変速位置、ポテンショメータ83で検出されたインチングペダル83Aの操作量、ロックアップスイッチ85の選択位置に基づいて、車両の変速、走行を制御するとともに、本実施形態の発進制御を行う。
【0079】
コントローラ70は、圧力制御弁31、32、圧力制御弁部41の各圧力制御弁に対して指令信号Iを出力する。各圧力制御弁は入力された指令信号Iに応じた指令油圧Pを生成し、対応するクラッチに出力する。
【0080】
以下前進用クラッチFがインチングクラッチとして機能している場合を代表させて説明する。
【0081】
インチングペダル83Aからコントローラ70に操作量θを示す操作信号が入力されると、コントローラ70は後述するように操作量θ等に基づいて指令信号Iを生成し、圧力制御弁31に対して、指令信号(指令電流)Iを出力する。圧力制御弁31では、入力された指令信号Iに応じて油圧クラッチFに与える供給圧(クラッチ油圧)Pを変化させ、油圧クラッチFを係合または解放(係合を解除)させる。これによりインチング操作が行われる。
【0082】
コントローラ70には、操作量θと指令信号I(クラッチ油圧P)との関係を表す特性が予め記憶されている。コントローラ70は、この特性をベースにして、指令信号Iを生成して圧力制御弁31に対して出力する。
【0083】
図7に、コントローラ70に設定される操作量θと指令信号I(クラッチ油圧P)との関係を表す特性を示す。
【0084】
図7に示す特性は、インチングペダル83Aの踏み込み量としてのペダル角度θと指令信号I(クラッチ油圧P)との関係を示している。図8に示すようにインチングペダル83Aを踏み込まない状態(基準位置にある状態)では操作量θは0であり、インチングペダル83Aが完全に床まで踏み込まれた状態では操作量θは最大値θmaxになる。
【0085】
すなわちペダル角度θがθ0からθ1未満の範囲のペダルストローク領域S1では、指令信号I(クラッチ油圧P)は最大の指令信号I1(最大の油圧P1)に固定されている。
【0086】
またペダル角度θがθ1からθ2未満の範囲のペダルストローク領域S2では、ペダル角度θの大きさに応じて、指令信号I(クラッチ油圧P)がI2〜I3(P2〜P3)の範囲で変化する。ペダル角度θがθstのときにクラッチ油圧Pが車両起動油圧Pstとなり、この車両起動油圧Pst以上のとき車両は起動することができる。
【0087】
さらにペダル角度θがθ2から最大値θmaxの範囲のペダルストローク領域S3では、指令信号I(クラッチ油圧P)は0(油圧0)に設定されている。
【0088】
したがってインチングペダル83Aが踏み込まれ、操作量θがθ2〜θmax(ペダルストローク領域S3)に達した場合には、指令信号Iは0(クラッチ油圧Pは0)となり、油圧クラッチFの圧油室内の圧油はタンクにドレインされ、微小な速度で走行していた車両は停止することができる。
【0089】
図2は、インチングペダル83Aがペダルストローク領域S3に維持されている時間Tと、圧力制御弁31の電磁ソレノイドに対して、最大レベル(フルトリガ)の指令信号Imax(以下フルトリガ指令電流Imax)を出力しているフルトリガ通電時間Tftとの関係を表す特性を示している。この特性のデータはコントローラ70内に記憶されている。
【0090】
まず図3、図4を併せ参照して「L/Cモード」時の発進制御について説明する。
【0091】
図3はコントローラ70で実行される発進制御の処理手順を示すフローチャートを示している。図4は図10に対応するタイムチャートであり、図4(c)は時間tに応じてインチングペダル83Aの操作量θが変化する様子を示し、図4(b)は図4(c)のインチングペダル83Aの操作に応じて圧力制御弁31に出力される指令信号(指令電流)Iが変化する様子を示し、図4(a)は図4(b)の指令信号Iに応じて油圧クラッチFのクラッチ油圧Pが変化する様子を示している。
【0092】
この実施形態では、たとえば前進用クラッチF(インチングクラッチ)および変速用クラッチ1stがそれぞれ係合して車両が前進走行中に、インチング操作が行われる場合を想定する。またロックアップスイッチ85によって「L/Cモード」が選択され、エンジン10の駆動力がロックアップクラッチ21を介して油圧クラッチFに伝達されているものとする。
【0093】
オペレータがインチングペダル83Aを踏み込みはじめた時刻0から踏み込まれている時刻t6までは、コントローラ70は従来と同様に図7に示す特性にしたがい指令信号Iを生成しこれを圧力制御弁31に出力する。
【0094】
すなわちオペレータがインチングペダル83Aを踏み込み始めた時刻0から時刻t1の間では、指令信号Iは最大の指令信号I1となっており、油圧クラッチFのクラッチ油圧Pは最大値P1になっている。さらに時刻t1〜t2間では操作量θの大きさに応じて指令信号IがI2〜I3の間で変化し、これを圧力制御弁31に出力する。時刻t2でインチングペダル83Aが踏み込まれθ2になると、以後指令信号Iが0となり、これに応じて油圧クラッチFのクラッチ油圧Pは0になる。すなわち時刻t2で指令信号Iが0になると、油圧クラッチFの圧油室内の圧油はタンクにドレインされる。時刻t4〜t5ではインチングペダル83Aの操作量θが最大値θmaxになっている。
【0095】
時刻t2〜t6間では指令信号Iが0になっている。このため時刻t2〜t6間の時間Tの大きさに応じて、油圧クラッチFの圧油室内の圧油がタンクにドレインされる量が定まる。いいかえれば時間Tの大きさに応じて、油圧クラッチFの圧油室内に圧油を再度充填するに要する時間が定まる。
【0096】
コントローラ70は、ポテンショメータ83から入力されているインチングペダル83Aの操作量θ(ペダル角度θ)に基づいて、インチングペダル83Aが踏み込まれている時間T(ペダルストローク領域S3に維持されている時間)を計時する(ステップS101)。
【0097】
次に、コントローラ70は、図2に示す特性にしたがい、計時した時間Tに対応するフルトリガ通電時間Tftを求める。たとえば計時時間がT1であれば、このT1に対応するフルトリガ通電時間Tft1が図2の特性から求められる(ステップS102)。
【0098】
オペレータがインチングペダル83Aを戻していき時刻t6で、その操作量θがθ2を下回り、ペダルストローク領域S3を外れると、以後、計測したフルトリガ通電時間Tft1だけ最大レベルの指令電流(フルトリガ指令電流)Imaxが圧力制御弁31に出力される。ここで、フルトリガ通電時間Tft1は、油圧クラッチFの圧油室に一定量以上の圧油が供給されて充填が完了(フィリング終了)する直前の状態になるような時間に設定されている(ステップS103)。
【0099】
すなわち時間Tが大きくなるほど油圧クラッチFの圧油室内に圧油を再充填するに時間が大きくなるので、時点Tに応じた時間分だけ最大流量の圧油を油圧クラッチFの圧油室に供給することで、時間Tの大きさいかんにかかわらずに最小の時間でフィリングを完了できるようにしている。
【0100】
フルトリガ通電時間Tft1が経過すると、コントローラ70では、指令電流Iが最大レベルImaxから、油圧クラッチFのフィリング圧に相当する指令電流Ifにまで下げられて圧力制御弁31に出力される(ステップS104)。
【0101】
以上のようにして油圧クラッチFの圧油室の充填が完了(フィリング終了)する直前の時間Tft1(フルトリガ通電時間Tft1)だけ、最大レベルの指令電流(フルトリガ指令電流)Imaxが出力され、以後は最大レベルImaxから指令電流Ifにまで下げられて、油圧クラッチFの圧油室の充填が完了する。このため油圧クラッチFには充填完了する直前まで高圧で流量が大きい圧油が供給され、以後は低圧で流量が低下した圧油が供給されて充填が完了するので、油圧クラッチFの係合に伴うショックを低減することができる。
【0102】
コントローラ70では圧力制御弁31内の油圧スイッチからオン信号(フィリング終了を示す信号)が入力されたか否かを判断している。そこでコントローラ70に、このオン信号が入力されると、油圧クラッチFの圧油室内へのフィリングが終了したものと判断し、以後現在のペダル操作量θに相当する指令信号Iを出力すべく、図7に示す特性にしたがい、指令信号Iを生成する。すなわちオン信号が時刻t8でコントローラ70に入力されると、その時刻t8で、入力されている現在のペダル操作量θに対応する指令信号Iを、図7の特性にしたがい求め、この指令信号Iを圧力制御弁31に出力する(ステップS105)。
【0103】
この時刻t8以後、図7に示す特性にしたがいインチングペダル83Aの戻し量θに応じた指令電流Iが圧力制御弁31に出力され、油圧クラッチFのクラッチ油圧Pは、操作量θに応じて上昇していく(ステップS106)。
【0104】
ここで本実施形態が従来技術に比べて優れている点を、図10と図4を対比しながら説明する。
【0105】
図10に示す従来技術の場合には、インチングペダル83Aの戻し操作時に、図7に示す固定された特性にしたがい操作量θに対応する指令電流Iを出力するだけであるので、油圧クラッチFの圧油室内への圧油の充填に長時間を要し、長大なタイムラグTfs1を生じている。これに対して図4に示す本実施形態の場合には、インチングペダル83Aの戻し操作時に、図7に示す固定された特性ではなくて、再充填に要する時間T1に応じた時間Tft1だけ最大レベルの指令電流Imaxを出力することによって、油圧クラッチFの圧油室内への圧油の充填を、踏み込み時間Tの長さによらずに最小の時間で終了させるようにしているので、タイムラグTF1は最小に抑えることができる(図4(a)参照)。
【0106】
また図10に示す従来技術の場合には、インチングペダル83Aを相当量戻した時点で戻し操作量θに相当する大きなクラッチ油圧Pが発生するため、ペダル位置相当の高いピーク油圧Ppkが車両の前後方向の加速度として急激に加わり、オペレータに不快なショックを与えることになっている。これに対して図4に示す本実施形態の場合には、フィリングが最小の時間で終了しインチングペダル83Aを未だ相当量戻していない時点で戻し操作量θに相当するクラッチ油圧Pが発生するため、ピーク油圧は低く抑えられ車両の前後方向の加速度を小さくすることができ、オペレータに不快なショックを与えることはない(図4(a)参照)。
【0107】
また本実施形態によれば、コントローラ70側で指令信号Iを調整すればよく、従来のように、油圧クラッチF側に複雑な機構を追加する必要がなくなるので、装置を簡易にすることができる。
【0108】
つぎに図5、図6を併せ参照して「T/Cモード」時の発進制御について説明する。
【0109】
図5はコントローラ70で実行される発進制御の処理手順を示すフローチャートを示している。図6は図10に対応するタイムチャートであり、図6(d)は時間tに応じてインチングペダル83Aの操作量θが変化する様子を示し、図6(c)は図6(d)のインチングペダル83Aの操作に応じて圧力制御弁31に出力される指令信号(指令電流)Iが変化する様子を示し、図6(b)は図6(c)の指令信号Iに応じて油圧クラッチFのクラッチ油圧Pが変化する様子を示し、図6(a)は図6(b)のクラッチ油圧Pに応じて車両の車速Vが変化する様子を示している。
【0110】
この実施形態では、たとえば前進用クラッチF(インチングクラッチ)および変速用クラッチ1stがそれぞれ係合して車両が前進走行中に、インチング操作が行われる場合を想定する。またロックアップスイッチ85によって「T/Cモード」が選択され、エンジン10の駆動力がトルクコンバータ20を介して油圧クラッチFに伝達されているものとする。
【0111】
オペレータがインチングペダル83Aを踏み込み始めてから踏み込むまでの動作は図4と同様であるので、図6ではインチングペダル83Aを踏み込んだ状態から戻したときの動作のみを示している。
【0112】
すなわち、コントローラ70は、ポテンショメータ83から入力されているインチングペダル83Aの操作量θ(ペダル角度θ)に基づいて、インチングペダル83Aが踏み込まれている時間T(ペダルストローク領域S3に維持されている時間)を計時する(ステップS201)。
【0113】
次に、コントローラ70は、図2に示す特性にしたがい、計時した時間Tに対応するフルトリガ通電時間Tftを求める。たとえば計時時間がT1であれば、このT1に対応するフルトリガ通電時間Tft1が図2の特性から求められる(ステップS202)。
【0114】
オペレータがインチングペダル83Aを戻していき時刻t6で、その操作量θがθ2を下回り、ペダルストローク領域S3を外れると、以後、計測したフルトリガ通電時間Tft1だけ最大レベルの指令電流(フルトリガ指令電流)Imaxが圧力制御弁31に出力される(ステップS203)。
【0115】
フルトリガ通電時間Tft1が経過すると、コントローラ70では、指令電流Iが最大レベルImaxから、油圧クラッチFのフィリング圧に相当する指令電流Ifにまで下げられて圧力制御弁31に出力される(ステップS204)。
【0116】
コントローラ70では圧力制御弁31内の油圧スイッチからオン信号(フィリング終了を示す信号)が入力されたか否かを判断している。そこでコントローラ70に、このオン信号が入力されると、油圧クラッチFの圧油室内へのフィリングが終了したものと判断し、以後現在のペダル操作量θに相当する指令信号Iに所定量ΔIを加えた指令信号I′を出力すべく、図7に示す特性をベースにして、指令信号Iを生成する。
【0117】
すなわちオン信号が時刻t8でコントローラ70に入力されると、その時刻t8で、入力されている現在のペダル操作量θに対応する指令信号Iを、図7の特性にしたがい求め、この指令信号Iに所定量ΔIを加算し、指令信号I′(=I+ΔI)を求め、この指令信号I′を圧力制御弁31に出力する(ステップS205)。
【0118】
コントローラ70には回転センサ81から回転数Nを示す信号が入力され、この回転数Nを車速Vに換算している。そして車速Vが一定の車速V0に達したか否かを判断している。そこで車速Vが一定の車速V0に達したものと時刻t9で判断されると、以後、指令信号I′の代わりに、図7に示す特性にしたがった指令信号Iが生成、出力される。すなわち車速Vが時刻t9で一定車速V0以上になると、その時刻t9で、入力されている現在のペダル操作量θに対応する指令信号Iを、図7の特性にしたがい求め、この指令信号Iを圧力制御弁31に出力する。時刻t9以後、インチングペダル83Aの戻し量θに応じた指令信号Iが圧力制御弁31に出力され、油圧クラッチFのクラッチ油圧Pは、操作量θに応じて上昇していく(ステップS206)。
【0119】
ここで本実施形態が従来技術に比べて優れている点を、図10と図6を対比しながら説明する。
【0120】
図10に示す従来技術の場合には、インチングペダル83Aの戻し操作時に、図7に示す固定された特性にしたがい操作量θに対応する指令電流Iを出力するだけであるので、油圧クラッチFの圧油室内への圧油の充填に長時間を要し、長大なタイムラグTfs1を生じている。これに対して図6に示す本実施形態の場合には、インチングペダル83Aの戻し操作時に、図7に示す固定された特性ではなくて、再充填に要する時間T1に応じた時間Tft1だけ最大レベルの指令電流Imaxを出力することによって、油圧クラッチFの圧油室内への圧油の充填を、踏み込み時間Tの長さによらずに最小の時間で終了させるようにしているので、タイムラグTF2は最小に抑えることができる(図6(b)参照)。
【0121】
また図10に示す従来技術の場合には、インチングペダル83Aを相当量戻した時点で戻し操作量θに相当する大きなクラッチ油圧Pが発生するため、ペダル位置相当の高いピーク油圧Ppkが車両の前後方向の加速度として急激に加わり、オペレータに不快なショックを与えることになっている。これに対して図6に示す本実施形態の場合には、フィリングが最小の時間で終了しインチングペダル83Aを未だ相当量戻していない時点での戻し操作量θに相当するクラッチ油圧Pが発生するため、ピーク油圧は低く抑えられ車両の前後方向の加速度を小さくすることができ、オペレータに不快なショックを与えることはない(図6(b)参照)。
【0122】
図6において実線は、図7に示す特性にしたがう指令信号Iに、所定量ΔIを加えた指令信号I′を出力している場合を示し、破線は図7に示す特性にしたがう指令信号Iをそのまま出力した場合を示している。これらを対比して指令信号I′を出力した場合の効果について説明する。
【0123】
すなわちトルクコンバータ20を介して駆動力が伝達されている場合には、インチングクラッチFの部分と、トルクコンバータ20の部分の両方で滑りが発生しているため、インチングペダル83Aの戻し操作時に、タイムラグがより大きくなり、トルクコンバータ20の出力軸の回転数上昇が遅く、車速が上昇しにくい。
【0124】
そこで圧油充填後も図7の特性にしたがう指令信号IよりもΔIだけ大きい指令信号I′を出力すれば(図6の実線参照)、油圧クラッチF側での伝達トルク上昇が早まり、トルクコンバータ20の滑り分による伝達トルクの上昇の遅れを、油圧クラッチF側で補うことができる。これにより停止状態から発進開始までのタイムラグが少なくなり、車速を時刻t9で迅速に一定車速V0まで上昇させることができる(図6(a)実線参照)。これに対して圧油充填後は図7の特性にしたがう指令信号Iをそのまま出力することにすれば、油圧クラッチF側での伝達トルク上昇は、トルクコンバータ20の滑り分だけ遅れることになる。これにより停止状態から発進開始までのタイムラグが大きくなり、車速が時刻t9よりも遅れた時刻t10でようやく一定車速V0に達することになる(図6(a)破線参照)。
【0125】
なお本実施形態では、車速Vを検出し、車速検出値に応じて指令信号I′から指令信号Iに切り換える時期t9を判断しているが、車速Vの代わりに回転センサ81で検出される回転数Nそのものを用いて判断してもよく、またインチングペダル83Aを戻し始めてからの時間を計時しこの計時時間を用いて判断してもよく、またトルクコンバータ20のすべり率を計測しこの計測したすべり率を用いて判断してもよい。
【0126】
なお上述した実施形態では、図2に示すようにフルトリガ通電時間Tftを、インチングペダル83Aが踏み込まれている(ペダルストローク領域S3に維持されている)時間Tをパラメータとして設定しているが、もちろん油圧クラッチの容量等のパラメータを加味してもよく、油圧クラッチの種類に応じて設定することができる。また油圧クラッチのクラッチディスクの摩耗量、使用時間等をパラメータとして、フルトリガ通電時間Tを設定してもよい。この場合には車両の使用年数(車両の稼動時間)いかんにかかわらずに常にほぼ同一の操作感覚を得ることができる。
【0127】
また上述した実施形態では、足で操作されるインチングペダル83Aによって油圧クラッチを作動させているが、手で操作される操作レバー等によって油圧クラッチを作動させてもよく、油圧クラッチを作動させる操作手段の形態、構造等は任意のものを採用することができる。
【0128】
また実施形態では、ロックアップクラッチ21を備えた車両を想定しているが、本発明としては、エンジン10とインチングクラッチとの間にロックアップクラッチ21を備えていない車両に対しても適用することができる。
【0129】
また図3に示す処理は、ロックアップクラッチ21が作動している場合に実行されるものとして説明したが、この図3に示す処理をロックアップクラッチ21が不作動でトルクコンバータ20を介してエンジン10の駆動力が駆動輪60に伝達されている場合に実行してもよい。
【0130】
また図5に示す処理は、トルクコンバータ20を介してエンジン10の駆動力が駆動輪60に伝達されている場合に実行されるものとして説明したが、この図5に示す処理をロックアップクラッチ21が作動しロックアップクラッチ21を介してエンジン10の駆動力が駆動輪60に伝達されている場合に実行してもよい。
【0131】
また上述した実施形態では、インチングペダル83Aが、インチング用油圧クラッチFを解放状態にする操作位置に操作されてから、インチング用油圧クラッチFを係合状態にする操作位置へ操作するまでの時間如何にかかわらず、一義的に第4図または第6図に示す制御を行う場合を想定している。
【0132】
しかしインチングペダル83Aが、インチング用油圧クラッチFを解放状態にする操作位置に操作されてから、インチング用油圧クラッチFを係合状態にする操作位置へ操作するまでの時間が短い場合には、油圧クラッチFの圧油室内の圧油がタンクに排出し切る前に再充填されてしまい、油圧クラッチFがショックを伴って係合することが予測される。
【0133】
そこで、以下のような制御を行うようにしてもよい。
【0134】
1)インチングペダル83Aが、インチング用油圧クラッチFを解放状態にする操作位置に操作されてから、所定時間を超えて、インチング用油圧クラッチFを係合状態にする操作位置へ操作された場合には、図4または図6に示す制御を行い、油圧クラッチFの係合操作開始時に、油圧クラッチFへの再充填を早める。
2)インチングペダル83Aが、インチング用油圧クラッチFを解放状態にする操作位置に操作されてから、所定時間以内に、インチング用油圧クラッチFを係合状態にする操作位置へ操作された場合には、従来とおり図7に示す特性に従い図10に示す制御を行う。これによりインチング用油圧クラッチFの圧油室内の圧油がタンクに排出し切る前に再充填されることが防止され、油圧クラッチFがショックを伴って係合することが防止される。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は実施形態の装置構成を示すブロック図である。
【図2】図2はインチングペダルが踏み込まれている時間とフルトリガ通電時間との関係を示す図である。
【図3】図3は実施形態の処理手順を示すフローチャートである。
【図4】図4(a)、(b)、(c)はロックアップモードでの発進制御を説明するために用いたタイムチャートである。
【図5】図5は実施形態の処理手順を示すフローチャートである。
【図6】図6(a)、(b)、(c)、(d)はトルクコンバータモードでの発進制御を説明するために用いたタイムチャートである。
【図7】図7は実施形態のインチングペダルの操作量と指令信号(油圧クラッチのクラッチ油圧)との関係を表す特性を示す図である。
【図8】図8はインチングペダルがオペレータによって踏み込まれている様子を示す図である。
【図9】図9はインチングペダルの操作量と油圧クラッチのクラッチ油圧との関係を表す特性を示す図である。
【図10】図10(a)、(b)、(c)は従来の発進動作を説明するために用いたタイムチャートである。
【符号の説明】
10 エンジン
20 トルクコンバータ
21 ロックアップクラッチ
31、32 圧力制御弁
60 駆動輪
70 コントローラ
81 回転センサ
83A インチングペダル
83 ポテンショメータ
F 前進用クラッチ
R 後進用クラッチ
Claims (6)
- エンジンと駆動輪との間に介在され、前記エンジンの駆動力を前記駆動輪に伝達するインチング用油圧クラッチと、前記インチング用油圧クラッチに対応して設けられた操作手段と、操作量の変化に伴い指令信号が変化するように、操作量と指令信号との関係を示す特性を予め設定し、この予め設定した特性に従い前記操作手段の操作量に応じた指令信号を出力する指令信号出力手段と、前記指令信号出力手段から出力された指令信号に応じた圧力の圧油を前記インチング用油圧クラッチの圧油室に対して供給して前記インチング用油圧クラッチを係合または解放させる圧力制御手段とを備えたインチング用油圧クラッチの制御装置において、
前記エンジンと前記インチング用油圧クラッチとの間に、トルクコンバータが更に介在され、
前記インチング用油圧クラッチを解放状態から係合状態に変化させる場合に適用され、
前記エンジンの駆動力が前記トルクコンバータを介して前記インチング用油圧クラッチに伝達している場合に、前記指令信号出力手段は、前記インチング用油圧クラッチの圧油室に一定量以上の圧油が供給されるまで一定レベル以上の指令信号を前記圧力制御手段に出力すると共に、前記油圧クラッチの圧油室に圧油が充填完了された以降は、前記予め設定した特性が示す指令信号よりも所定量だけ大きい指令信号を一定期間だけ、前記操作手段の操作量に応じて、前記圧力制御手段に出力すること
を特徴とするインチング用油圧クラッチの制御装置。 - 前記エンジンと前記インチング用油圧クラッチとの間に、前記トルクコンバータをロックアップするロックアップクラッチが更に介在され、前記ロックアップクラッチが不作動状態である場合に、請求項1記載の制御を行うこと
を特徴とする請求項1記載のインチング用油圧クラッチの制御装置。 - 前記指令信号出力手段は、前記インチング用油圧クラッチの圧油室に一定量以上の圧油が供給されるまで最大レベルの指令信号を一定期間だけ前記圧力制御手段に出力すること
を特徴とする請求項1記載のインチング用油圧クラッチの制御装置。 - エンジンと駆動輪との間に介在され、前記エンジンの駆動力を前記駆動輪に伝達するインチング用油圧クラッチと、前記インチング用油圧クラッチに対応して設けられた操作手段と、操作量の変化に伴い指令信号が変化するように、操作量と指令信号との関係を示す特性を予め設定し、この予め設定した特性に従い前記操作手段の操作量に応じた指令信号を出力する指令信号出力手段と、前記指令信号出力手段から出力された指令信号に応じた圧力の圧油を前記インチング用油圧クラッチの圧油室に対して供給して前記インチング用油圧クラッチを係合または解放させる圧力制御手段とを備えたインチング用油圧クラッチの制御装置において、
前記エンジンと前記インチング用油圧クラッチとの間に、トルクコンバータが更に介在され、
前記エンジンの駆動力が前記トルクコンバータを介して前記インチング用油圧クラッチに伝達している場合であって、前記操作手段が、前記インチング用油圧クラッチを解放状態にする操作位置に操作されてから、所定時間を超えて、前記インチング用油圧クラッチを係合状態にする操作位置へ操作された場合には、
前記指令信号出力手段は、前記インチング用油圧クラッチの圧油室に一定量以上の圧油が供給されるまで、一定レベル以上の指令信号を前記圧力制御手段に出力すると共に、前記インチング用油圧クラッチの圧油室に圧油が充填完了された以降は、前記予め設定した特性が示す指令信号よりも所定量だけ大きい指令信号を一定期間だけ、前記操作手段の操作量に応じて、前記圧力制御手段に出力するとともに、
前記エンジンの駆動力が前記トルクコンバータを介して前記インチング用油圧クラッチに伝達している場合であって、前記操作手段が、前記インチング用油圧クラッチを解放状態にする操作位置に操作されてから、前記所定時間以内に、前記インチング用油圧クラッチを係合状態にする操作位置へ操作された場合には、
前記指令信号出力手段は、前記予め設定した特性に従い、前記操作手段の操作量に応じた指令信号を前記圧力制御手段に出力すること
を特徴とするインチング用油圧クラッチの制御装置。 - 前記エンジンと前記インチング用油圧クラッチとの間に、前記トルクコンバータをロックアップするロックアップクラッチが更に介在され、前記ロックアップクラッチが不作動状態である場合に、請求項4記載の制御を行うこと
を特徴とする請求項4記載のインチング用油圧クラッチの制御装置。 - 前記指令信号出力手段は、前記インチング用油圧クラッチの圧油室に一定量以上の圧油が供給されるまで最大レベルの指令信号を一定期間だけ前記圧力制御手段に出力すること
を特徴とする請求項4記載のインチング用油圧クラッチの制御装置。
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