以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがってそれらについての詳細な説明は繰り返さない。
図1は、本実施の形態に係るシフト切換機構の制御装置を備えたシフト制御システム10の構成を示す。本実施の形態に係るシフト制御システム10は、車両のシフトポジションを切り換えるために用いられる。シフト制御システム10は、Pスイッチ20と、シフトスイッチ26と、車両電源スイッチ28と、車両の制御装置(以下、「EFI−ECU(Electronic Control Unit)」と表記する)30と、パーキング制御装置(以下、「SBW(Shift By Wire)−ECU」と表記する)40と、アクチュエータ42と、エンコーダ46と、シフト切換機構48と、表示部50と、メータ52と駆動機構60と、バッテリ電圧センサ70と、温度センサ80とを含む。シフト制御システム10は、電気制御によりシフトポジションを切り換えるシフトバイワイヤシステムとして機能する。具体的にはシフト切換機構48がアクチュエータ42により駆動されてシフトポジションの切り換えを行なう。本実施の形態に係るシフト切換機構の制御装置は、SBW−ECU40により実現される。
車両電源スイッチ28は、車両電源のオン・オフを切り換えるためのスイッチである。車両電源スイッチ28は、特に限定されるものではないが、たとえば、イグニッションスイッチである。車両電源スイッチ28がドライバなどのユーザから受付けた指示はEFI−ECU30に伝達される。たとえば、車両電源スイッチ28がオンされることにより、図示しない補機バッテリから電力が供給されて、シフト制御システム10が起動される。
Pスイッチ20は、シフトポジションをパーキングポジション(以下、「Pポジション」と呼ぶ)とパーキング以外のポジション(以下、「非Pポジション」と呼ぶ)との間で切り換えるためのスイッチであり、スイッチの状態をドライバに示すためのインジケータ22、およびドライバからの指示を受付ける入力部24を含む。ドライバは、入力部24を通じて、シフトポジションをPポジションに入れる指示を入力する。入力部24はモーメンタリスイッチであってもよい。入力部24が受付けたドライバからの指示を示すP指令信号は、SBW−ECU40に送信される。なお、このようなPスイッチ20以外により、非PポジションからPポジションにシフトポジションを切り換えるものであってもよい。
SBW−ECU40は、シフトポジションをPポジションと非Pポジションとの間で切り換えるために、シフト切換機構48を駆動するアクチュエータ42の動作を制御し、現在のシフトポジションの状態をインジケータ22に提示する。シフトポジションが非Pポジションであるときにドライバは入力部24を押下すると、SBW−ECU40はシフトポジションをPポジションに切り換えて、インジケータ22に現在のシフトポジションがPポジションである旨を提示する。
アクチュエータ42は、スイッチドリラクタンスモータ(以下、「SRモータ」と表記する)により構成され、SBW−ECU40からのアクチュエータ制御信号を受信してシフト切換機構48を駆動する。エンコーダ46は、アクチュエータ42と一体的に回転し、SRモータの回転状況を検知する。本実施の形態のエンコーダ46は、A相、B相およびZ相の信号を出力するロータリーエンコーダである。SBW−ECU40は、エンコーダ46から出力される信号を取得してSRモータの回転状況を把握し、SRモータを駆動するための通電の制御を行なう。
シフトスイッチ26は、シフトポジションをドライブ(D)ポジション、リバース(R)ポジション、ニュートラル(N)ポジション、ブレーキ(B)ポジションなどのポジションに切り換えたり、またPポジションに入れられているときには、Pポジションを解除したりするためのスイッチである。シフトスイッチ26が受付けたドライバからの指示を示すシフト信号はSBW−ECU40に送信される。SBW−ECU40は、ドライバからの指示を示すシフト信号に基づき、EFI−ECU30を通じて、駆動機構60におけるシフトポジションを切り換える制御を行なうとともに、現在のシフトポジションの状態をメータ52に提示する。駆動機構60は、無段変速機構から構成されているが、有段変速機構から構成されてもよい。
EFI−ECU30は、シフト制御システム10の動作を統括的に管理する。表示部50は、EFI−ECU30またはSBW−ECU40が発したドライバに対する指示や警告などを表示する。メータ52は、車両の機器の状態やシフトポジションの状態などを提示する。
バッテリ電圧センサ70は、アクチュエータ42に電力を供給する補機バッテリの電圧を検知する。バッテリ電圧センサ70は、検知された電圧を示す信号をEFI−ECU30に送信する。なお、バッテリ電圧センサ70は、検知された電圧を示す信号をSBW−ECU40に送信するようにしてもよい。また、バッテリ電圧センサ70は、補機バッテリからアクチュエータ42に供給される電圧を検知するようにしてもよい。
温度センサ80は、変速機(図示せず)の作動油の温度を検知する。温度センサ80は、検知された温度を示す温度検知信号を、EFI−ECU30に送信する。なお、温度センサ80は、検知された温度を示す信号を、SBW−ECU40に送信するようにしてもよい。また、温度センサ80は、アクチュエータ42の温度に関連した物理量を検知できればよく、たとえば、温度センサ80は、外気温を検知するようにしてもよいし、アクチュエータ42の温度を直接検知するようにしてもよい。
図2は、シフト切換機構48の構成を示す。以下、シフトポジションは、Pポジション、非Pポジションを意味し、非Pポジションにおける、R、N、Dの各ポジションを含まないとして説明するが、R、N、Dの各ポジションを含むようにしてもよい。すなわち、本実施の形態においては、Pポジションと非Pポジションとの2ポジションの構成について説明するが、Pポジションと、R、N、Dの各ポジションを含む非Pポジションとの4ポジションの構成にしてもよい。
シフト切換機構48は、アクチュエータ42により回転されるシャフト102、シャフト102の回転に伴って回転するディテントプレート100、ディテントプレート100の回転に伴って動作するロッド104、図示しない変速機の出力軸に固定されたパーキングロックギヤ108、パーキングロックギヤ108をロックするためのパーキングロックポール106、ディテントプレート100の回転を制限してシフトポジションを固定するディテントスプリング110およびころ112を含む。ディテントプレート100は、アクチュエータ42により駆動されてシフトポジションを切り換える。またエンコーダ46は、アクチュエータ42の回転量に応じた計数値を取得する計数手段として機能する。
図2は、シフトポジションが非Pポジションであるときの状態を示している。この状態では、パーキングロックポール106がパーキングロックギヤ108をロックしていないので、車両の駆動軸の回転は妨げられない。この状態からアクチュエータ42によりシャフト102を時計回り方向に回転させると、ディテントプレート100を介してロッド104が図2に示す矢印Aの方向に押され、ロッド104の先端に設けられたテーパ部によりパーキングロックポール106が図2に示す矢印Bの方向に押し上げられる。ディテントプレート100の回転に伴ってディテントプレート100の頂部に設けられた2つの谷のうちの一方、すなわち非Pポジション位置120にあったディテントスプリング110のころ112は、山122を乗り越えて他方の谷、すなわちPポジション位置124へ移る。ころ112は、その軸方向に回転可能にディテントスプリング110に設けられている。ころ112がPポジション位置124に来るまでディテントプレート100が回転したとき、パーキングロックポール106は、パーキングロックポール106の突起部分がパーキングロックギヤ108の歯部間に嵌合する位置まで押し上げられる。これにより、車両の駆動軸が機械的に固定され、シフトポジションがPポジションに切り換わる。
本実施の形態に係るシフト制御システム10では、シフトポジション切換時にディテントプレート100、ディテントスプリング110およびシャフト102などのシフト切換機構の構成部品に係る負荷を低減するために、SBW−ECU40が、ディテントスプリング110のころ112が山122を乗り越えて落ちるときの衝撃を少なくするように、アクチュエータ42の回転量を制御する。
ディテントプレート100のそれぞれの谷において、山122から離れた側に位置する面を壁と呼ぶ。すなわち壁は、SBW−ECU40による以下に示す制御を行なわない状態でディテントスプリング110のころ112が山122を乗り越えて谷に落ちるときに、ころ112とぶつかる位置に存在する。Pポジション位置124における壁を「P壁」と呼び、非Pポジション位置120における壁を「非P壁」と呼ぶ。
ころ112がPポジション位置124から非Pポジション位置120に移動する場合、SBW−ECU40は、非P壁210がころ112に衝突しないように、あるいは衝突しても衝撃力が緩和されるようにアクチュエータ42を制御する。具体的には、SBW−ECU40は、非P壁210がころ112に衝突する手前の位置でアクチュエータ42の回転を停止する。この位置を「非P目標回転位置」と呼ぶ。
また、ころ112が非Pポジション位置120からPポジション位置124に移動する場合、SBW−ECU40は、P壁200がころ112に衝突しないように、あるいは衝突しても衝撃力が緩和されるようにアクチュエータ42を制御する。具体的には、SBW−ECU40は、P壁200がころ112に衝突する手前の位置でアクチュエータ42の回転を停止する。この位置を「P目標回転位置」と呼ぶ。
SBW−ECU40によるアクチュエータ42の制御により、シフトポジション切換時においてディテントプレート100、ディテントスプリング110およびシャフト102などのシフト切換機構の構成部品に係る負荷を大幅に低減することができる。負荷を低減することによりシフト切換機構の構成部品の軽量化、低コスト化を図ることもできる。なお、本実施の形態においては、後述する制御が行なわれることにより、さらなるシフト切換機構の構成部品の低コスト化を図ることができる。
アクチュエータ42は、マニュアルシャフト102に設けられたディテントプレート100を回転する。ディテントプレート100に形成されたP壁200および非P壁210によりそれぞれ予め定められた方向の回転が規制される。
現在のシフトポジションは、P壁位置または非P壁位置から予め定められた回転量の範囲内にある場合に決定される。
具体的には、SBW−ECU40は、エンコーダ46で検出された回転量に基づく、アクチュエータ42の回転位置(ディテントプレート100におけるころ112の相対位置)がP壁位置から予め定められた位置までの第1の範囲内にあるときには、シフトポジションがPポジションであることを判定する。
一方、SBW−ECU40は、エンコーダ46で検出された回転量に基づく、アクチュエータ42の回転位置が非P壁位置から予め定められた位置までの第2の範囲内にあるときには、シフトポジションが非Pポジションであることを判定する。
SBW−ECU40は、P壁位置(あるいは非P壁位置)におけるカウンタ値と、アクチュエータ42の回転中にエンコーダ46により検知されるカウンタ値との差分の絶対値を算出することによりアクチュエータ42の回転量を検出する。
また、SBW−ECU40は、アクチュエータ42の回転位置が第1の範囲にも第2の範囲にもないときには、シフトポジションが不定またはシフトが切換中であることを判定する。
P目標回転位置は、非PポジションからPポジションへの切換時に、P壁200がディテントスプリング110のころ112に衝突しない位置であり、P壁位置から所定のマージンをもって定められる。マージンは、経時変化などによりガタを考慮して余裕を持って設定される。これによりある程度の使用回数であれば経時変化を吸収することができ、シフトポジション切換時におけるP壁200ところ112との衝突を回避できる。
非P目標回転位置は、Pポジションから非Pポジションへの切換時に、非P壁210がディテントスプリング110のころ112に衝突しない位置であり、非P壁位置から所定のマージンを持って定められる。マージンは経時変化などによるガタを考慮して余裕を持って設定され、ある程度の使用回数であれば経時変化を吸収することができ、シフトポジション切換時における非P壁210ところ112との衝突を回避することができる。なお、非P壁位置からのマージンとP壁位置からのマージンとは同一である必要はなく、ディテントプレート100の形状などに依存して異なってもよい。
以上、P壁位置および非P壁位置が検出されていることを前提にアクチュエータ42の制御方法を示した。P壁位置または非P壁位置は、Pポジション位置124または非Pポジション位置120におけるシフトポジション判定範囲および目標回転位置を定めるための基準位置となる。以下では、相対的な位置情報を検出するエンコーダ46を用いて、アクチュエータ42の位置制御を行なう方法、具体的には基準位置となる壁位置を検出する方法を示す。
SBW−ECU40は、アクチュエータ42を回転させる制御手段、およびアクチュエータ42のP壁位置、すなわち基準位置を設定する設定手段として機能する。P壁位置検出制御では、まず、アクチュエータ42によりディテントプレート100を時計回り方向、すなわちP壁200がディテントスプリング110のころ112に向かう方向に回転させ、ころ112とP壁200とを接触させる。P壁200は、Pポジション位置において、アクチュエータ42の時計回り方向の回転を規制する規制部材として機能する。なおP壁200は、ディテントスプリング110およびころ112と協同して規制部材を構成するようにしてもよい。
すなわち、SBW−ECU40は、規制部材により規制されたアクチュエータの回転位置に基づいて、複数のシフトポジションのうちの少なくとも1つのシフトポジションの位置を設定する。
図3に示す、矢印F1は、アクチュエータ42による回転力、矢印F2は、ディテントスプリング110によるばね力、矢印F3は、ロッド104による押し戻し力を示す。点線で示すディテントプレート100’は、P壁200ところ112とが接触した位置を示す。したがって、ディテントプレート100’の位置を検出することがP壁200の位置を検出することに相当する。
ディテントプレート100は、P壁200ところ112との接触後も、点線で示す位置から、アクチュエータ42の回転力F1により時計回り方向に、ディテントスプリング110のばね力に抗して回転される。これによりディテントスプリング110に撓みが生じて、ばね力F2が増加し、またロッド104による押し戻し力F3も増加する。回転力F1が、ばね力F2および押し戻し力F3と釣り合ったところでディテントプレート100の回転が停止する。
ディテントプレート100の回転停止は、エンコーダ46により取得される計数値の状態に基づいて判定される。SBW−ECU40は、エンコーダ46の計数値の最小値または最大値が所定時間変化しない場合に、ディテントプレート100およびアクチュエータ42の回転停止を判定する。計数値の最小値または最大値のいずれかを監視するかは、エンコーダ46に応じて設定されればよく、いずれにしても最小値または最大値が所定時間変化しないことは、ディテントプレート100が動かなくなった状態を示す。
SBW−ECU40は、回転停止時のディテントプレート100の位置を暫定的なP壁位置(以下、「暫定P壁位置」と呼ぶ)として検出し、またディテントスプリング110の撓み量または撓み角を算出する。撓み量または撓み角の算出は、SBW−ECU40に予め保持されている、アクチュエータ42への印加電圧に対応する撓み量または撓み角の関係を示すマップを用いて行なわれる。SBW−ECU40は、マップから暫定P壁位置検出時のアクチュエータ42への印加電圧に対応する撓み量ないし撓み角を算出する。なお、アクチュエータ42の印加電圧の代わりに、バッテリ電圧を用いたマップであってもよい。バッテリ電圧はEFI−ECU30を通じてSBW−ECU40により監視されており、容易に検出することができる。なお、この場合は、バッテリからアクチュエータ42までのワイヤハーネスなどによる電圧降下分を考慮してマップが作成されることになる。SBW−ECU40は、このマップを用いて、算出した撓み量または撓み角から、暫定P壁位置をマップ補正し、マップ補正した位置をP壁位置として確定する。P壁位置を確定することによりP目標回転位置を設定することができる。なお、印加電圧に対する撓み量または撓み角の関係を示すマップの代わりに、アクチュエータ42の出力トルクに対応する撓み量または撓み角の関係を示すマップであってもよいし、マップを用いて算出する代わりに、撓み量または撓み角を検出するセンサを設け、それにより検出するようにしてもよい。
また、非P壁位置の設定についてもP壁位置の設定方法と同様である。そのため、詳細な説明は繰り返さない。
以上のように説明したとおり、シフト制御システム10は、アクチュエータ42を回転させて、ディテントプレート100の壁と、ディテントスプリング110のころ112とを接触させる。そして、その接触位置を検出することにより、シフトポジションの基準位置に対応するディテントプレート100の壁位置を検出する。この壁位置を基準位置として設定することにより、相対位置情報しか検出できないエンコーダ46を用いても、アクチュエータ42の回転を適切に制御することができる。すなわち、ニュートラルスタートスイッチ等を用いずにシフトポジションの切り換えを適切に実行することができる。
以上のような構成を有するシフト制御システム10において、シフト切換機構48の応答性の向上等を目的として、出力特性の高いアクチュエータが選択されると、シフト切換機構48の構成部品に係る負荷による変形等の弊害が生じる場合がある。
たとえば、上述した壁当て制御中に、アクチュエータから高い出力トルクがディテントスプリング110に加えられると、ディテントスプリング110が大きく変形したり、耐久性が悪化する可能性がある。
そこで、図4(A)の実線に示すように、アクチュエータ42に供給される電流を予め定められた範囲(I(1)からI(2)までの範囲)内に収まるように電流制限回路を用いて、電流をカットすることが考えられる。本実施の形態において、電流制限回路は、SBW−ECU40の内部にハードウェアとして設けられるものとして説明するが、SBW−ECU40の外部に設けられるようにしてもよい。
電流制限回路により、アクチュエータ42に供給される電流は、予め定められた電流I(1)を上回ると、電流が減少し(電流カット)、予め定められた電流I(2)を下回ると、電流が増加して(電流オン)、電流の大きさを制限する。そのため、図4(B)の実線に示すように、アクチュエータトルクを、正常値を示すTa(1)に維持することができる。
なお、電流制限回路は、アクチュエータ42に供給される電流を予め定められた範囲内に収まるように制限することに限定されるものではなく、たとえば、電流制限回路は、予め定められた値以上の電流がアクチュエータ42に一定的に流れるように電流の大きさを制限する回路であってもよい。
しかしながら、電流制限回路に何らかの異常が発生して、電流カットが実施できない場合、図4(A)の破線に示すように、アクチュエータ42には、I(1)よりも大きいI(3)の電流がアクチュエータ42に流れる。そのため、図4(B)の破線に示すように、アクチュエータトルクは正常値を示すTa(1)よりも大きいTa(3)に維持されることとなる。そのため、ディテントスプリング110が塑性変形したり、耐久性が悪化したりする可能性がある。
これに対して、電流制限回路が正常であるか否かを判定する異常判定回路を設けることが考えられるが、電流制限回路に加えて、異常判定回路を設けるようにすると、シフト切換機構の構成が複雑化し、コストが上昇する場合がある。
そこで、本発明は、SBW−ECU40が、シフトポジションの位置を設定する際に、エンコーダ46により検知されたアクチュエータ42の回転量に基づいて、電流制限回路が異常状態であるか否かを判断する点に特徴を有する。
図5に、本実施の形態に係るシフト切換機構の制御装置であるSBW−ECU40の機能ブロック図を示す。
SBW−ECU40は、入力インターフェース(以下、入力I/Fと記載する)300と、演算処理部400と、通信部700と、記憶部600と、出力インターフェース(以下、出力I/Fと記載する)500とを含む。
入力I/F300は、Pスイッチ20からのP指令信号と、エンコーダ46からの計数信号と、シフトスイッチ26からのシフト信号とを受信して、演算処理部400に送信する。
通信部700は、通信回線(図示せず)を用いてEFI−ECU30に接続される。通信部700は、EFI−ECU30からバッテリ電圧検知信号と温度検知信号とを受信して演算処理部400に送信する。
演算処理部400は、壁当て制御部402と、速度変化判定部404と、異常判定部406と、表示制御部408とを含む。
壁当て制御部402は、車両の状態が予め定められた条件が成立すると、上述したようなP壁位置および非P壁位置を設定する壁当て制御を実施する。「予め定められた条件」とは、たとえば、予め定められた回数以上、Pポジションと非Pポジションとが切り換えられたという条件であってもよいし、予め定められたトリップ数毎という条件であってもよいし、車両電源スイッチ28がオンされる毎という条件であってもよく、特に限定されるものではない。なお、「1トリップ」は、車両電源スイッチ28がオンされてからオフされるまでをいう。
なお、切り換え回数あるいはトリップ数は、切り換えられる毎あるいは車両電源スイッチ28がオンされる毎に、演算処理部400がカウントして記憶部600に記憶しておくようにすればよい。なお、壁当て制御部402は、たとえば、壁当て制御中であることを判定すると、壁当て判定フラグをオンするようにしてもよい。
速度変化判定部404は、壁当て制御が実施されているときに、エンコーダ46により検知される計数信号に基づいて、アクチュエータ42の回転量の時間変化率が変化するか否かを判断する。
たとえば、速度変化判定部404は、エンコーダ46により検知されるカウンタ値に基づいてアクチュエータ42の回転量の時間変化率が変化するか否かを判断する。速度変化判定部404は、前回の計算サイクルにおいて算出されたカウンタ値の時間変化率と今回の計算サイクルにおいて算出されたカウンタ値の時間変化率との差の絶対値が予め定められた値以上であると、アクチュエータ42の回転量の時間変化率が変化したことを判定する。ここで、アクチュエータ42の回転量の時間変化率は、カウンタ値の時間変化率の絶対値に対応するものである。
なお、カウンタ値の時間変化率は、1回の計算サイクル間の時間変化率を算出するようにしてもよいし、予め定められた期間に遡って時間変化率を算出するようにしてもよい。
なお、速度変化判定部404は、たとえば、壁当て判定フラグがオンであることを条件として、カウンタ値の時間変化率が変化するか否かを判断するようにしてもよい。また、速度変化判定部404は、たとえば、アクチュエータ42の回転量の時間変化率が変化したことを判定すると、速度変化判定フラグをオンするようにしてもよい。
異常判定部406は、算出されたアクチュエータ42の回転量の時間変化率と、バッテリ電圧Vおよび変速機の作動油の温度THに対応した設定値に基づいて、電流制限回路が正常状態であるか否かを判定する。異常判定部406は、たとえば、算出されたアクチュエータ42の回転量の時間変化率(カウンタ値の時間変化率の絶対値)が、バッテリ電圧Vと変速機の作動油の温度THとの関数ΔCNT(V,TH)により算出される設定値よりも小さいか否かを判定する。
図6に、縦軸をアクチュエータトルクとし、横軸を変速機の作動油の温度としたときの、温度とアクチュエータトルクとの関係を示す。図6に示すように、たとえば、変速機の作動油の温度以外は同じ条件でアクチュエータ42を作動させた場合においては、変速機の作動油の温度が高くなるほど、アクチュエータ42において発現するトルクは低くなり、変速機の作動油の温度が低くなるほど、アクチュエータ42において発現するトルクは高くなる比例関係となる。これは、変速機の作動油の温度が低くなるほど、アクチュエータ42の温度は低くなる。そのため、アクチュエータ42のコイル抵抗が低下するためである。
また、図7に、縦軸をアクチュエータトルクとし、横軸をバッテリ電圧としたときの、電圧とアクチュエータトルクとの関係を示す。図7の実線に示すように、たとえば、バッテリ電圧以外は同じ条件でアクチュエータ42を作動させた場合においては、バッテリ電圧が高くなるほど、アクチュエータ42において発現するトルクは高くなり、バッテリ電圧が低くなるほど、アクチュエータ42において発現するトルクは低くなる比例関係となる。なお、図7の破線に示すように、変速機の作動油が低温になるほど、アクチュエータ42において発現するトルクは、同じバッテリ電圧であっても高くなり、変速機の作動油が高温になるほど、アクチュエータ42において発現するトルクは、同じバッテリ電圧であっても低くなる傾向にある。
関数ΔCNT(V,TH)は、図6および図7に示すような、温度とアクチュエータトルクとの関係およびバッテリ電圧とアクチュエータトルクとの関係に基づいて設定されるものである。なお、関数ΔCNT(V,TH)に代えて、マップ、数式あるいは表から設定値を算出するようにしてもよい。
異常判定部406は、算出されたアクチュエータ42の回転量の時間変化率が設定値よりも小さいと、電流制限回路は正常状態であることを判定する。異常判定部406は、算出されたアクチュエータ42の回転量の時間変化率が設定値以上であると、電流制限回路は異常状態であることを判定する。
なお、異常判定部406は、たとえば、電流制限回路が異常状態であることを判定すると、異常判定フラグをオンするようにしてもよい。
表示制御部408は、電流制限回路が異常状態であることが判定されると、警告ランプが点灯するように、点灯制御信号を生成して、出力I/F500を経由してインジケータ22に送信する。なお、表示制御408は、異常判定フラグがオンであることを条件として、警告ランプが点灯するように、点灯制御信号を生成してもよい。
なお、本実施の形態において、壁当て制御部402、速度変化判定部404、異常判定部406および表示制御部408は、いずれも演算処理部400であるCPU(Central Processing Unit)が記憶部600に記憶されたプログラムを実行することにより実現される、ソフトウェアとして機能するものとして説明するが、ハードウェアにより実現されるようにしてもよい。なお、このようなプログラムは記録媒体に記録されて車両に搭載される。
記憶部600には、各種情報、プログラム、しきい値、マップ等が記憶され、必要に応じて演算処理部400からデータが読み出されたり、格納されたりする。
以下、図8を参照して、本実施の形態に係るシフト切換機構の制御装置であるSBW−ECU40で実行されるプログラムの制御構造について説明する。
ステップ(以下、ステップをSと記載する)100にて、SBW−ECU40は、壁当て制御中であるか否かを判断する。SBW−ECU40は、たとえば、壁当て判定フラグがオンであると、壁当て制御中であることを判断するようにしてもよい。壁当て制御中であると(S100にてYES)、処理はS102に移される。もしそうでないと(S100にてNO)、この処理は終了する。
S102にて、SBW−ECU40は、カウンタ値の時間変化率が変化したか否かを判断する。具体的には、SBW−ECU40は、カウンタ値の時間変化率が変化したか否かを判断する。カウンタ値の時間変化率に速度変化があると(S102にてYES)、処理はS104に移される。もしそうでないと(S102にてNO)、この処理は終了する。
S104にて、SBW−ECU40は、EFI−ECU30を通じて受信するバッテリ電圧検知信号に基づいて、バッテリ電圧Vを検出する。
S106にて、SBW−ECU40は、EFI−ECU30を通じて受信する温度検知信号に基づいて、変速機内の作動油の温度THを検出する。
S108にて、SBW−ECU40は、カウンタ値の時間変化率の絶対値が、バッテリ電圧Vおよび温度THに基づいて算出される値ΔCNT(V、TH)よりも小さいか否かを判断する。カウンタ値の時間変化率の絶対値がΔCNT(V、TH)よりも小さいと(S108にてYES)、この処理は終了する。もしそうでないと(S108にてNO)、処理はS110に移される。
S110にて、SBW−ECU40は、異常警告表示処理を実行する。具体的には、SBW−ECU40は、インジケータ22において警告ランプが点灯するように制御する。
以上のような構造およびフローチャートに基づく、本実施の形態に係るシフト切換機構の制御装置であるSBW−ECU40の動作について図9を参照しつつ説明する。
時間T’(0)において、壁当て制御が開始されると(S100にてYES)、カウンタ値の時間変化率に変化があるか否かが判断される(S102)。
時間T’(1)において、ころ112がPポジション位置124あるいは非Pポジション位置120における壁に接触すると、ディテントスプリング110が撓み始める。このとき、ディテントスプリング110が撓むことによる反力がアクチュエータ42に加わるため、カウンタ値の時間変化率に変化が生じる(S102にてYES)。
たとえば、図9の実線に示すように、時間T’(1)から時間T’(2)までにおけるC(1)からC(2)までのカウンタ値の時間変化率の絶対値が、検出されたバッテリ電圧V(S104)と検出された変速機内の作動油の温度(S106)と関数ΔCNT(V、TH)とから算出された値よりも小さいと(S108にてYES)、電流制限回路は正常状態であることが判断される。
一方、図9の破線に示すように、時間T’(1)から時間T’(3)までにおいて、CC(1)からC(3)までのカウンタ値の時間変化率の絶対値が、検出されたバッテリ電圧V(S104)と検出された変速機内の作動油の温度(S106)と関数ΔCNT(V、TH)よりも大きいと(S108にてNO)、電流制限回路が異常状態であることが判断されて、インジケータ22の警告ランプが点灯する(S110)。
以上のようにして、本実施の形態に係るシフト切換機構の制御装置によると、シフトポジションの位置を設定する際に、アクチュエータの回転量の時間変化率に基づいて、電流制限回路が異常状態であるか否かを判断することができる。そのため、電流制限回路が正常に機能しているか否かを検出する回路を新たに設ける必要がない。したがって、シフト切換機構の構成の複雑化およびコストの上昇を抑制しつつ、アクチュエータに供給される電力の異常状態を精度よく検出するシフト切換機構の制御装置を提供することができる。
また、本実施の形態においては、ディテントスプリングが撓み始めた後の、すなわち、カウンタ値の時間変化率に変化が生じた後の時間変化率に基づいて電流制限回路が異常状態であるか否かを判断するようにしたが、カウンタ値の時間変化率に変化が生じた後の、アクチュエータの回転量(カウンタ値)に基づいて電流制限回路が異常状態であるか否かを判断するようにしてもよい。たとえば、ディテントスプリングからの反力とアクチュエータトルクに基づく力とが釣り合う位置、すなわち、壁当て制御中にカウンタ値の時間変化率が略ゼロになった時点におけるカウンタ値が設定値以上(ディテントプレートが壁当て側に回転するときにカウンタ値が正方向に増加する場合)であると、電流制限回路が異常状態であることを判断するようにしてもよい。
図9の実線に示すように、時間T’(2)において、カウンタ値の時間変化率が略ゼロとなる。このとき、ディテントスプリング110の撓みが終了する。すなわち、アクチュエータの回転力と、ディテントスプリング110が撓むことにより反力と、パーキングロックポールが戻ろうとする力との合力が略ゼロとなる。このとき、カウンタ値C(2)が設定値よりも小さいと、SBW−ECU40は、電流制限回路が正常状態であることを判断する。
そして、図9の破線に示すように、時間T’(3)において、カウンタ値の時間変化率が略ゼロとなる時点でカウンタ値C(3)が設定値以上であると、SBW−ECU40は、電流制限回路が異常状態であることを判断する。
なお、設定値は、バッテリ電圧および/または変速機の作動油の温度に応じて変更するようにしてもよい。また、ディテントプレートが壁当て側に回転するときにカウンタ値が負方向に増加する場合、壁当て制御中にカウンタ値の時間変化率が略ゼロになった時点におけるカウンタ値が設定値以下であると、電流制限回路が異常状態であることを判断することができる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
20 Pスイッチ、22 インジケータ、24 入力部、26 シフトスイッチ、28 車両電源スイッチ、30 EFI−ECU、40 SBW−ECU、42 アクチュエータ、46 エンコーダ、48 シフト切換機構、50 表示部、52 メータ、60 駆動機構、70 バッテリ電圧センサ、80 温度センサ、100 ディテントプレート、102 シャフト、104 ロッド、106 パーキングロックポール、108 パーキングロックギヤ、110 ディテントスプリング、112 ころ、120 非Pポジション位置、122 山、124 Pポジション位置、200 P壁、210 非P壁、300 入力I/F、400 演算処理部、402 壁当て制御部、404 速度変化判定部、406 異常判定部、408 表示制御部、500 出力I/F、600 記憶部。