以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがってそれらについての詳細な説明は繰返さない。なお、以下の説明においては、「シフトレンジ」は、「シフトポジション」と同じ意味を示す。
<第1の実施の形態>
図1は、本実施の形態に係るシフト制御システム10の構成を示す。本実施の形態のシフト制御システム10は、車両のシフトレンジを切り替えるために用いられる。シフト制御システム10は、Pスイッチ20、シフトスイッチ26、車両電源スイッチ28、車両制御装置(以下、「V−ECU」と表記する)30、パーキング制御装置(以下、「P−ECU」と表記する)40、アクチュエータ42、エンコーダ46、シフト制御機構48、表示部50、メータ52および駆動機構60を含む。シフト制御システム10は、電気制御によりシフトレンジを切り替えるシフトバイワイヤシステムとして機能する。具体的にはシフト制御機構48がアクチュエータ42により駆動されてシフトレンジの切替を行なう。
車両電源スイッチ28は、車両電源のオン・オフを切り替えるためのスイッチである。車両電源スイッチ28は、特に限定されるものではないが、たとえば、イグニッションスイッチである。車両電源スイッチ28がドライバなどのユーザから受付けた指示はV−ECU30に伝達される。たとえば、車両電源スイッチ28がオンされることにより、図示しないバッテリから電力が供給されて、シフト制御システム10が起動される。
Pスイッチ20は、シフトレンジをパーキングレンジ(以下、「Pレンジ」と呼ぶ)とパーキング以外のレンジ(以下、「非Pレンジ」と呼ぶ)との間で切り替えるためのスイッチであり、スイッチの状態をドライバに示すためのインジケータ22、およびドライバからの指示を受付ける入力部24を含む。ドライバは、入力部24を通じて、シフトレンジをPレンジに入れる指示を入力する。入力部24はモーメンタリスイッチであってもよい。入力部24が受付けたドライバからの指示は、V−ECU30、およびV−ECU30を通じP−ECU40に伝達される。
P−ECU40は、シフトレンジをPレンジと非Pレンジとの間で切り替えるために、シフト制御機構48を駆動するアクチュエータ42の動作を制御し、現在のシフトレンジの状態をインジケータ22に提示する。シフトレンジが非Pレンジであるときにドライバは入力部24を押下すると、P−ECU40はシフトレンジをPレンジに切り替えて、インジケータ22に現在のシフトレンジがPレンジである旨を提示する。
アクチュエータ42は、スイッチドリラクタンスモータ(以下、「SRモータ」と表記する)により構成され、P−ECU40からの指示を受けてシフト制御機構48を駆動する。エンコーダ46は、アクチュエータ42と一体的に回転し、SRモータの回転状況を検知する。本実施の形態のエンコーダ46は、A相、B相およびZ相の信号を出力するロータリーエンコーダである。P−ECU40は、エンコーダ46から出力される信号を取得してSRモータの回転状況を把握し、SRモータを駆動するための通電の制御を行なう。
シフトスイッチ26は、シフトレンジをドライブレンジ(D)、リバースレンジ(R)、ニュートラルレンジ(N)、ブレーキレンジ(B)などのレンジに切り替えたり、またPレンジに入れられているときには、Pレンジを解除したりするためのスイッチである。シフトスイッチ26が受付けたドライバからの指示はV−ECU30に伝達される。V−ECU30は、ドライバからの指示に基づき、駆動機構60におけるシフトレンジを切り替える制御を行なうとともに、現在のシフトレンジの状態をメータ52に提示する。駆動機構60は、無段変速機構から構成されているが、有段変速機構から構成されてもよい。
V−ECU30は、シフト制御システム10の動作を統括的に管理する。表示部50は、V−ECU30またはP−ECU40が発したドライバに対する指示や警告などを表示する。メータ52は、車両の機器の状態やシフトレンジの状態などを提示する。
図2は、シフト制御機構48の構成を示す。以下、シフトレンジは、Pレンジ、非Pレンジを意味し、非Pレンジにおける、R、N、D、Bの各レンジを含まない。シフト制御機構48は、アクチュエータ42により回転されるシャフト102、シャフト102の回転に伴って回転するディテントプレート100、ディテントプレート100の回転に伴って動作するロッド104、図示しない変速機の出力軸に固定されたパーキングギア108、パーキングギア108をロックするためのパーキングロックポール106、ディテントプレート100の回転を制限してシフトレンジを固定するディテントスプリング110およびころ112を含む。ディテントプレート100は、アクチュエータ42により駆動されてシフトレンジを切り替えるシフト手段として機能する。シャフト102、ディテントプレート100、ロッド104、ディテントスプリング110およびころ112は、シフト切替機構の役割を果たす。またエンコーダ46は、アクチュエータ42の回転量に応じた計数値を取得する計数手段として機能する。
図2は、シフトレンジが非Pレンジであるときの状態を示している。この状態では、パーキングロックポール106がパーキングギア108をロックしていないので、車両の駆動軸の回転は妨げられない。この状態からアクチュエータ42によりシャフト102を時計回り方向に回転させると、ディテントプレート100を介してロッド104が図2に示す矢印Aの方向に押され、ロッド104の先端に設けられたテーパ部によりパーキングロックポール106が図2に示す矢印Bの方向に押し上げられる。ディテントプレート100の回転に伴ってディテントプレート100の頂部に設けられた2つの谷のうちの一方、すなわち非Pレンジ位置120にあったディテントスプリング110のころ112は、山122を乗り越えて他方の谷、すなわちPレンジ位置124へ移る。ころ112は、その軸方向に回転可能にディテントスプリング110に設けられている。ころ112がPレンジ位置124に来るまでディテントプレート100が回転したとき、パーキングロックポール106は、パーキングギア108と嵌合する位置まで押し上げられる。これにより、車両の駆動軸が機械的に固定され、シフトレンジがPレンジに切り替わる。
本実施の形態に係るシフト制御システム10では、シフトレンジ切替時にディテントプレート100、ディテントスプリング110およびシャフト102などのシフト切替機構に係る負荷を低減するために、P−ECU40が、ディテントスプリング110のころ112が山122を乗り越えて落ちるときの衝撃を少なくするように、アクチュエータ42の回転量を制御する。
図3は、ディテントプレート100の構成を示す。それぞれの谷において、山122から離れた側に位置する面を壁と呼ぶ。すなわち壁は、P−ECU40による以下に示す制御を行なわない状態でディテントスプリング110のころ112が山122を乗り越えて谷に落ちるときに、ころ112とぶつかる位置に存在する。Pレンジ位置124における壁を「P壁」と呼び、非Pレンジ位置120における壁を「非P壁」と呼ぶ。ころ112がPレンジ位置124から非Pレンジ位置120に移動する場合、P−ECU40は、非P壁210がころ112に衝突しないようにアクチュエータ42を制御する。具体的には、P−ECU40は、非P壁210がころ112に衝突する手前の位置でアクチュエータ42の回転を停止する。この位置を「非P目標回転位置」と呼ぶ。また、ころ112が非Pレンジ位置120からPレンジ位置124に移動する場合、P−ECU40は、P壁200がころ112に衝突しないようにアクチュエータ42を制御する。具体的には、P−ECU40は、P壁200がころ112に衝突する手前の位置でアクチュエータ42の回転を停止する。この位置を「P目標回転位置」と呼ぶ。P−ECU40によるアクチュエータ42の制御により、シフトレンジ切替時においてディテントプレート100、ディテントスプリング110およびシャフト102などのシフト切替機構に係る負荷を大幅に低減することができる。負荷を低減することによりシフト切替機構の軽量化、低コスト化を図ることもできる。なお、本実施の形態においては、後述する制御が行なわれることにより、さらなるシフト切替機構の軽量化および低コスト化を図ることができる。
図4は、アクチュエータ42の制御方法を説明するための図である。アクチュエータ42は、ディテントプレート100を回転する。アクチュエータ42の回転は、P壁200および非P壁210により規制される。図4は、アクチュエータ42の回転制御を行なう上でのP壁200の位置および非P壁210の位置を概念的に示す。P壁位置から非P壁位置までをアクチュエータ42の可動回転量と呼ぶ。可動回転量は、エンコーダ46の計数値から求められる実際の可動回転量(以下、「実可動回転量」と呼ぶ)と、設計により定められた可動回転量(以下、「設計可動回転量」と呼ぶ)とを含む。
現在のシフトレンジは、P壁位置または非P壁位置から所定回転量の範囲内にある場合に決定される。シフトレンジの判定基準として、Pロック判定位置およびP解除判定位置を設定し、P壁位置からPロック判定位置の範囲、および非P壁位置からP解除判定位置までの範囲を、シフトレンジ判定範囲とする。具体的には、エンコーダ46で検出されたアクチュエータ42の回転量がP壁位置からPロック判定位置の範囲にあるときには、シフトレンジがPレンジであることを判定し、一方でアクチュエータ42の回転量は非P壁位置からP解除判定位置の範囲にあるときには、シフトレンジが非Pレンジであることを判定する。なお、アクチュエータ42の回転量がPロック判定位置からP解除判定位置の間にあるときには、シフトレンジが不定またはシフトが切替中であることを判定する。以上の判定は、P−ECU40により実行される。
P目標回転位置は、P壁位置とPロック判定位置との間に設定される。P目標回転位置は、非PレンジからPレンジへの切替時に、P壁200がディテントスプリング110のころ112に衝突しない位置であり、P壁位置から所定のマージンをもって定められる。マージンは、経時変化などによりガタを考慮して余裕を持って設定される。これによりある程度の使用回数であれば経時変化を吸収することができ、シフトレンジ切替時におけるP壁200ところ112との衝突を回避できる。
同様に、非P目標回転位置は、非P壁位置とP解除判定位置との間に設定される。非P目標回転位置は、Pレンジから非Pレンジへの切替時に、非P壁210がディテントスプリング110のころ112に衝突しない位置であり、非P壁位置から所定のマージンを持って定められる。マージンは経時変化などによるガタを考慮して余裕を持って設定され、ある程度の使用回数であれば経時変化を吸収することができ、シフトレンジ切替時における非P壁210ところ112との衝突を回避することができる。なお、非P壁位置からのマージンとP壁位置からのマージンとは同一である必要はなく、ディテントプレート100の形状などに依存して異なってもよい。
以上、P壁位置および非P壁位置が検出されていることを前提にアクチュエータ42の制御方法を示した。P壁位置または非P壁位置は、Pレンジ位置124または非Pレンジ位置120におけるシフトレンジ判定範囲および目標回転位置を定めるための基準位置となる。以下では、相対的な位置情報を検出するエンコーダ46を用いて、アクチュエータ42の位置制御を行なう方法、具体的には基準位置となる壁位置を検出する方法を示す。
P−ECU40またはV−ECU30は、前回の車両電源スイッチ28のオフ時におけるシフトレンジを記憶しておく。車両電源スイッチ28がオンされるとき、P−ECU40は記憶していたシフトレンジを現在のシフトレンジに設定する。壁位置検出制御は、現在のシフトレンジにおける壁位置を検出する。なお前回のシフトレンジを記憶していない場合には、V−ECU30は車速に基づいて現在のシフトレンジを定める。具体的に、たとえば車速が3km/h以下の低速にある場合には、V−ECU30は現在のシフトレンジをPレンジと定め、また3km/hよりも速い中高速にある場合には、現在のシフトレンジを非Pレンジと定める。なお、前回のシフトレンジを記憶していない状態で車速が中高速にある場合とは、たとえば車両の走行中に電源が瞬断されて、現在のシフトレンジのデータを消失したような状況に相当する。ほとんどの場合は、車両電源スイッチ28のオン時、車速が低速であることが判定され、現在のシフトレンジがPレンジと定められることになる。
図5(a)は、P壁位置を検出する制御方法を説明するための図である。P−ECU40は、アクチュエータ42を回転させる回転制御手段、およびアクチュエータ42のP壁位置、すなわち基準位置を設定する位置設定手段として機能する。P壁位置検出制御では、まず、アクチュエータ42によりディテントプレート100を時計回り方向、すなわちP壁200がディテントスプリング110のころ112に向かう方向に回転させ、ころ112とP壁200とを接触させる。P壁200は、Pレンジ位置において、アクチュエータ42の時計回り方向の回転を規制する規制手段として機能する。なおP壁200は、ディテントスプリング110およびころ112と協同して規制手段を構成するようにしてもよい。図5(a)において、矢印F1は、アクチュエータ42による回転力、矢印F2は、ディテントスプリング110によるばね力、矢印F3は、ロッド104による押し戻し力を示す。点線で示すディテントプレート100′は、P壁200ところ112とが接触した位置を示す。したがって、ディテントプレート100′の位置を検出することがP壁200の位置を検出することに相当する。
ディテントプレート100は、P壁200ところ112との接触後も、点線で示す位置から、アクチュエータ42の回転力F1により時計回り方向に、ディテントスプリング110のばね力に抗して回転される。これによりディテントスプリング110に撓みが生じて、ばね力F2が増加し、またロッド104による押し戻し力F3も増加する。回転力F1が、ばね力F2および押し戻し力F3と釣り合ったところでディテントプレート100の回転が停止する。
ディテントプレート100の回転停止は、エンコーダ46により取得される計数値の状態に基づいて判定される。P−ECU40は、エンコーダ46の計数値の最小値または最大値が所定時間変化しない場合に、ディテントプレート100およびアクチュエータ42の回転停止を判定する。計数値の最小値または最大値のいずれかを監視するかは、エンコーダ46に応じて設定されればよく、いずれにしても最小値または最大値が所定時間変化しないことは、ディテントプレート100が動かなくなった状態を示す。
P−ECU40は、回転停止時のディテントプレート100の位置を暫定的なP壁位置(以下、「暫定P壁位置」と呼ぶ)として検出し、またディテントスプリング110の撓み量または撓み角を算出する。撓み量または撓み角の算出は、P−ECU40に予め保持されている、アクチュエータ42への印加電圧に対応する撓み量または撓み角の関係を示すマップを用いて行なわれる。P−ECU40は、マップから暫定P壁位置検出時のアクチュエータ42への印加電圧に対応する撓み量ないし撓み角を算出する。なお、アクチュエータ42の印加電圧の代わりに、バッテリ電圧を用いたマップであってもよい。バッテリ電圧はP−ECU40により監視されており、容易に検出することができる。なお、この場合は、バッテリからアクチュエータ42までのワイヤハーネスなどによる電圧降下分を考慮してマップが作成されることになる。P−ECU40は、このマップを用いて、算出した撓み量または撓み角から、暫定P壁位置をマップ補正し、マップ補正した位置をP壁位置として確定する。P壁位置を確定することによりPロック判定位置およびP目標回転位置を設定することができる。なお、印加電圧に対する撓み量または撓み角の関係を示すマップの代わりに、アクチュエータ42の出力トルクに対応する撓み量または撓み角の関係を示すマップであってもよいし、マップを用いて算出する代わりに、撓み量または撓み角を検出するセンサを設け、それにより検出するようにしてもよい。
図5(b)は、非P壁位置を検出する制御方法を説明するための図である。P−ECU40は、アクチュエータ42を回転させる回転制御手段およびアクチュエータ42の非P壁位置、すなわち基準位置を設定する位置設定手段として機能する。非P壁位置検出制御では、まず、アクチュエータ42によりディテントプレート100を反時計回り方向、すなわち非P壁210がディテントスプリング110のころに向かう方向に回転させ、ころ112と非P壁210を接触させる。非P壁210は、非Pレンジ位置において、アクチュエータ42の反時計回り方向の回転を規制する規制手段として機能する。なお非P壁210は、ディテントスプリング110およびころ112と協同して規制手段を構成するようにしてもよい。図5(b)において、矢印F1はアクチュエータ42による回転力、矢印F2は、ディテントスプリング110によるばね力、矢印F3は、ロッド104による引張り力を示す。点線で示すディテントプレート100’’は、非P壁210ところ112とが接触した位置を示す。したがって、ディテントプレート100’’の位置を検出することが、非P壁210の位置を検出することに相当する。
ディテントプレート100は、非P壁210ところ112との接触後も点線で示す位置からアクチュエータ42の回転力F1により、ディテントスプリング110の引張り力に抗して反時計回り方向に回転される。これによりディテントスプリング110に伸びが生じて、ばね力F2が増加し、またロッド104により引張り力F3も増加する。回転力F1が、ばね力F2および引張り力F3と釣り合ったところでディテントプレート100の回転が停止する。
ディテントプレート100の回転停止は,エンコーダ46により取得される計数値に基づいて判定される。具体的にはエンコーダ46の計数値の最大値または最小値が所定時間変化しない場合に、ディテントプレート100およびアクチュエータ42の回転停止が判定される。
P−ECU40は、回転停止時のディテントプレート100の位置を暫定的な非P壁位置(以下、「暫定非P壁位置」と呼ぶ)として検出し、また、ディテントスプリング110の伸び量を算出する。伸び量の算出は、P−ECU40に予め保持されている、アクチュエータ42への印加電圧に対応する伸び量の関係を示すマップを用いて行なわれる。P−ECU40は、マップから暫定非P壁位置検出時のアクチュエータ42への印加電圧に対応する伸び量を算出する。P−ECU40は、このマップを用いて、算出した伸び量から、暫定非P壁位置をマップ補正し、マップ補正した位置を非P壁位置として確定する。非P壁位置を確定することにより、P解除判定位置および非P目標回転位置を設定することができる。なお、印加電圧に対する伸び量の関係を示すマップの代わりに、アクチュエータ42の出力トルクに対応する伸び量の関係を示すマップであってもよいし、マップを用いて算出する代わりに、伸び量を検出するセンサを設け、それにより検出するようにしてもよい。
以上のように、壁位置検出制御では、現在のシフトレンジにおける壁位置を検出する。既に、P壁位置から非P壁位置までの間の実可動回転量が検出されている場合には、この実可動回転量を用いて、他方のシフトレンジにおける壁位置を算出することもできる。実可動回転量は、一方のシフトレンジにおける壁位置検出制御を行なって壁位置を検出した後、他方のシフトレンジにおける壁位置検出制御を行なって他方の壁位置を検出することで、2つの壁位置の間の範囲を測定することができる。P−ECU40は、測定した実可動回転量を記憶する。一旦、実可動回転量を取得すれば、P−ECU40は、一方のシフトレンジにおける壁位置を検出すると、その壁位置から実可動回転量だけ回転した位置を他方のシフトレンジにおける壁位置と設定することができ、2つのシフトレンジにおけるシフトレンジ範囲および目標回転位置を設定することができる。
以上のことから、Pレンジおよび非Pレンジの双方の壁位置の検出は、P−ECU40が実可動回転量を記憶していない場合に行なえばよい。たとえば車両の工場出荷時やP−ECU40におけるデータが消失したような場合に、両壁位置の検出が行なわれる。また、実可動回転量を記憶している場合であっても、所定の切替回数やトリップ数毎に両壁位置の検出制御を行なってもよい。たとえば、シフトレンジの切替が数万回行なわれた場合には、摩耗によるガタ量が増加するため、実可動回転量にも誤差が生じてくる。そのため実可動回転量を改めて測定することにより経時変化に対応した壁位置検出を行なうことができる。さらに、車両電源スイッチ28がオンされる度に行なうようにしてもよいし、前回のトリップで、たとえば、アクチュエータ42の異常などが発生した場合において、両壁位置の検出制御を行ない、実可動回転量を算出してもよい。
なお、1回のトリップは、車両電源スイッチ28がオンからオフされるまでと定義してもよく、また実際に車両の車両電源がオンしてからオフするまでと定義してもよい。
図6は、前回トリップにおいて記憶されたデータを用いて行なう壁位置検出制御の例を示す。前回トリップ終了時のシフトレンジがPレンジにある場合、まずP壁位置の検出制御を行ない、実可動回転量を検出済みであれば、非P壁位置の検出制御を行なわない。一方で、実可動回転量が不明の場合には、非P壁位置の検出制御を行なう。非P壁位置の検出制御は、ドライバ操作により非Pレンジへの切替要求があったときに行なわれる。このとき、P−ECU40は、シフトレンジを非Pレンジに切り替えるとともに、非P壁210とディテントスプリング110のころ112とを接触させて、非P壁位置検出制御を実行する。両壁位置の検出後、P−ECU40は、実可動回転量を測定し、記憶する。
前回トリップ終了時のシフトレンジが非Pレンジにある場合、まず非P壁位置の検出制御を行ない、実可動回転量を検出済みであれば、P壁位置の検出制御を行なわない。一方で、実可動回転量が不明の場合には、P壁位置の検出制御を行なう。P壁位置の検出制御は、ドライバ操作によりPレンジへの切替要求があったときに行なわれる。P−ECU40は、シフトレンジをPレンジに切り替えるとともに、P壁200とディテントスプリング110のころ112とを接触させて、P壁位置検出制御を実行する。両壁位置の検出後、P−ECU40は、実可動回転量を測定し、記憶する。
前回トリップ終了時のシフトレンジが不明である場合、V−ECU30が車速に基づいて現在のシフトレンジを定め、P−ECU40に対して壁位置検出指令を送る。指令により、現在のシフトレンジをPレンジに定めたことが判明すると、P−ECU40は、まずP壁位置の検出制御を行ない、その後、ユーザからのシフト切替要求を受けて、非P壁位置の検出制御を行なう。一方、指令により、現在のシフトレンジを非Pレンジに定めたことが判明すると、P−ECU40は、まず非P壁位置の検出制御を行ない、その後、ユーザからのシフト切替要求を受けてP壁位置の検出制御を行なう。
図7は、アクチュエータ42の目標回転位置の算出方法の例を示す。図7では、P壁位置から非P壁位置に向かう方向にエンコーダ46による計数値がカウントアップする場合を例にとる。P壁位置、非P壁位置および実可動回転量を検出済みの場合、P目標回転位置を、(P壁位置+マージン)と設定し、非P目標回転位置を、(非P壁位置−マージン)と設定する。
P壁位置が検出済みであって、非P壁位置が不明である場合、実可動回転量を検出済みであれば、P目標回転位置を、(P壁位置+マージン)と設定し、非P目標回転位置を(P壁位置+実可動回転量−マージン)と設定する。また、実可動回転量が不明である場合には、P目標回転位置を、(P壁位置+マージン)と設定し、非P目標回転位置を、(P壁位置+設計可動回転量)と設定する。なお、設計可動回転量は、マージン分を考慮した値が設定される。
P壁位置が不明であって、非P壁位置が検出済みである場合、実可動回転量を検出済みであれば、P目標回転位置を、(非P壁位置−実可動回転量+マージン)と設定し、非P目標回転位置を、(非P壁位置−マージン)と設定する。また、実可動回転量が不明である場合には、P目標回転位置を、(非P壁位置−設計可動回転量)と設定し、非P目標回転位置を、(非P壁位置−マージン)と設定する。
なお別の例では、非P壁位置からP壁位置に向かう方向にエンコーダ46による計数値がカウントアップしてもよい。この場合、非P壁位置、P壁位置および実可動回転量を検出済みの場合、非P目標回転位置を、(非P壁位置+マージン)と設定し、P目標回転位置を、(P壁位置−マージン)と設定する。
非P壁位置が検出済みであって、P壁位置が不明である場合、実可動回転量を検出済みであれば、非P目標回転位置を、(非P壁位置+マージン)と設定し、P目標回転位置を、(非P壁位置+実可動回転量−マージン)と設定する。また、実可動回転量が不明である場合には、非P目標回転位置を、(非P壁位置+マージン)と設定し、P目標回転位置を、(非P壁位置+設計可動回転量)と設定する。
非P壁位置が不明であって、P壁位置が検出済みである場合、実可動回転量を検出済みであれば、非P目標回転位置を、(P壁位置−実可動回転量+マージン)と設定し、P目標回転位置を、(P壁位置−マージン)と設定する。また、実可動回転量が不明である場合には、非P目標回転位置を、(P壁位置−設計可動回転量)と設定し、P目標回転位置を、(P壁位置−マージン)と設定する。
以上のように説明したとおり、シフト制御システム10は、アクチュエータ42を回転させて、ディテントプレート100の壁と、ディテントスプリング110のころ112とを接触させる。そして、その接触位置を検出することにより、シフトレンジの基準位置に対応するディテントプレート100の壁位置を検出する。この壁位置を基準位置として設定することにより、相対位置情報しか検出できないエンコーダ46を用いても、アクチュエータ42の回転を適切に制御することができる。すなわち、ニュートラルスタートスイッチ等を用いずにシフトレンジの切り替えを適切に実行することができる。ここで、この方法によりシフトレンジの切り替えを行なう場合に、(1)シフトレンジが切り替わる位置までアクチュエータ42の回転を制御する。(2)耐久性を向上させるために、シフトレンジの切り替え動作ではディテントプレート100の壁に当てる前にアクチュエータ42の回転を止める。この(1)、(2)を満足させるためにシフトレンジを切り替える際のアクチュエータ42の実可動回転量を学習する必要がある。
しかしながら、P壁位置の検出では、ディテントスプリング110が縮められる。一方、非P壁位置の検出では、ディテントスプリング110が引張られる。そのため、壁位置の検出にあたって、検出開始時におけるシフトレンジと同じレンジの壁位置を検出する場合と、異なるレンジの壁位置を検出する場合とでスプリングの変形に差が発生する。そのため、検出が開始されるシフトレンジによって実可動回転量が異なってしまうことが考えられる。
図8は、非PレンジからP壁への壁当てによる壁位置検出時のエンコーダ46のカウント数の変化のタイムチャートの例を示す図である。図8のタイムチャートにおいて、横軸は、時間を示す。一方、縦軸は、エンコーダ46のカウント数を示す。この場合において、エンコーダ46のカウント数の最大値は、ディテントプレート100の非P壁210にころ112が接触する非P壁位置を示す。一方、エンコーダ46のカウント数の最小値は、ディテントプレート100のP壁200にころ112が接触するP壁位置を示す。このとき、図8を参照して、非PレンジからP壁への壁当て時において、ディテントプレート100のP壁200にころ112が接触することに応じて、ディテントスプリング110が撓むこととなり、その結果、ディテントスプリング110が縮められることがわかる。これは、非PレンジからP壁への壁当て時に回転力が大きいことに起因する。すなわち、非PレンジからP壁への回転力には、アクチュエータ42の出力トルクに加えてディテントプレート100の山122を乗り越えて谷に落ちるときの衝撃力が含まれることが考えられる。そのため、P壁位置の誤学習の可能性がある。P壁位置の誤学習により、算出される目標回転位置および実可動回転量にずれが生じるため、通常の切替時にディテントプレート100の壁に当たる可能性がある。つまり、ディテントスプリング110に対しての負荷が大きくなるといえる。そのため、P壁位置の検出は、非PレンジからP壁への壁当てよりも、PレンジからP壁への壁当てが望ましい。
そこで、壁当て学習により壁位置の検出を行なう際に、ころ112の壁位置の検出開始時の回転位置と壁位置検出終了時の回転位置とに基づく変化量が所定の変化量以上であることに応じて、壁位置検出を再度行なう。このことにより、たとえば、非PレンジからP壁への壁当て学習によるP壁位置の検出を行なう場合において、非Pレンジにおける開始位置からP壁を検出するとき、ディテントプレート100が所定の変化量以上回転しているとして、PレンジからP壁への壁当て学習を再び行なうこととなる。ここで、所定の変化量は、たとえば、Pレンジに対応するP壁位置の再検出開始時において、アクチュエータ42の回転開始位置がPレンジに対応する回転範囲内(P解除判定位置からP壁位置までの回転範囲内)となるように予め設定される。
以下、図9を参照しつつ、壁当て学習により壁位置の検出を開始したときのP−ECU40で実行されるプログラムの制御構造について説明する。なお、ここで壁位置の検出を行なうのは、Pレンジに対応するP壁位置でもよいし、非Pレンジに対応する非P壁位置でもよい。
ステップ(以下、ステップをSと略す。)100にて、P−ECU40は、壁当て学習による壁位置の検出を開始する。このとき、P−ECU40は、図示しない内部メモリに壁位置の検出開始時におけるエンコーダ46により取得される計数値を記憶させる。ここで、内部メモリは、書換可能な不揮発性メモリを含む。不揮発性メモリは、たとえば、SRAM(Static Random Access Memory)である。
S102にて、P−ECU40は、現在のシフトレンジに対応する壁位置を検出したか否かの判断を行なう。P−ECU40は、エンコーダ46により取得される計数値が所定の時間の間変化しない位置を壁位置として検出する。そして、現在のシフトレンジに対応する壁位置が検出されると(S102にてYES)、処理はS104に移される。もしそうでないと(S102にてNO)、P−ECU40は、壁位置が検出されるまで、検出処理を継続する。
S104にて、P−ECU40は、アクチュエータ42への電力供給を遮断する。S106にて、P−ECU40は、(壁位置検出時のシフトカウント−壁位置学習開始時のシフトカウント)が所定の変化量よりも大きいか否かを判断する。(壁位置検出時のシフトカウント−壁位置学習開始時のシフトカウント)が所定の変化量よりも大きいと判断されると(S106にてYES)、処理はS108に移される。もしそうでないと(S106にてNO)、処理はS112に移される。
S108にて、P−ECU40は、アクチュエータ42への電力供給の遮断から所定の時間が経過したか否かの判断を行なう。ここでアクチュエータ42への電力供給の遮断から所定の時間が経過することにより、壁当て学習によるディテントスプリング110の撓みあるいは伸びを開放し、通常の電力供給が開始されるときと同様にディテントスプリング110が撓みあるいは伸びのない状態でPレンジからP壁位置の検出を行なうことができる。アクチュエータ42への電力供給の遮断から所定の時間が経過すると(S108にてYES)、処理はS110に移される。もしそうでないと(S108にてNO)、P−ECU40は、所定の時間が経過するまで待機する。
S110にて、P−ECU40は、現在のシフトレンジに対応する壁位置の検出を再び開始する。そして、処理はS102に移される。
S112にて、P−ECU40は、検出された壁位置を現在のシフトレンジに対応する壁位置として確定する。
以上のような構造およびフローチャートに基づく、本実施の形態に係るシフト制御システム10における動作を詳細に説明する。
P−ECU40は、V−ECU30からのシフトの切替要求等に応じて、壁当て学習による壁位置の検出を開始する(S100)。P−ECU40は、壁位置が検出されると(S102にてYES)、アクチュエータ42への電力供給を遮断する(S104)。そして、P−ECU40は、(壁位置検出時シフトカウント−壁位置学習開始時シフトカウント)が所定の変化量より大きいと(S106にてYES)、アクチュエータ42への電力供給を遮断してから所定の時間経過した後に(S108にてYES)、壁位置学習を再び開始する(S110)。そして、再び壁位置が検出されると(S102にてYES)、P−ECU40は、アクチュエータ42への電力供給を遮断し(S104)、(壁位置検出時のシフトカウント−壁位置学習開始時シフトカウント)が所定の変化量より小さいと判断されると(S106にてNO)、壁位置を確定する(S112)。
次に、以下、図10を参照にして、車両電源スイッチ28がオンされることに応じて、壁当て学習によりP壁位置の検出を開始したときにP−ECU40で実行されるプログラムの制御構造について説明する。この説明においては、車両の工場出荷時を想定する。ただし、P−ECU40で実行されるプログラムは、車両の工場出荷時に限定されるものではない。たとえば、バッテリクリア時のようにP−ECU40の内部メモリに前回のシフトレンジが記憶されていない場合を含む。
S200にて、V−ECU30は、ユーザの車両電源スイッチ28への操作に応じて、シフト制御システム10に電力供給を開始する。
S202にて、P−ECU40は、初期待機状態となる。すなわち、工場出荷時であるため、内部メモリに前回のシフトレンジが記憶されていないので、V−ECU30からのレンジ切替要求を受けるまで待機する。
S204にて、P−ECU40は、V−ECU30からのシフトレンジの切替要求を受けたか否かの判断を行なう。V−ECU30からのシフトレンジの切替要求を受けると(S204にてYES)、P−ECU40は、処理をS206に移す。もしそうでないと(S204にてNO)、処理はS202に戻され、V−ECU30からのシフトレンジの切替要求を受けるまで待機する。
S206にて、P−ECU40は、初期駆動の動作として、エンコーダ46において、ロータと通電相の位相合わせを行なう。S208にて、P−ECU40は、P壁位置を検出するための壁当て学習を開始する。
S210にて、P−ECU40は、Pレンジに対応するP壁位置を検出したか否かの判断を行なう。Pレンジに対応する壁位置が検出されると(S210にてYES)、処理はS212に移される。もしそうでないと(S210にてNO)、P−ECU40は、P壁位置が検出されるまで検出処理が継続される。
S212にて、Pレンジに対応するP壁位置が検出されると、P−ECU40は、アクチュエータ42への電力供給を遮断する。
S214にて、P−ECU40は、(P壁位置検出時のシフトカウント−P壁位置学習開始時のシフトカウント)が所定の変化量よりも大きいか否かの判断を行なう。(P壁位置検出時のシフトカウント−P壁位置学習開始時のシフトカウント)が所定の変化量よりも大きいと判断されると(S214にてYES)、処理はS216に移される。もしそうでないと(S214にてNO)、処理はS220に移される。
S216にて、P−ECU40は、アクチュエータ42への電力供給の遮断から所定の時間が経過したか否かを判断する。アクチュエータ42への電力供給の遮断から所定の時間が経過したと判断すると(S216にてYES)、処理はS218に移される。もしそうでないと(S216にてNO)、P−ECU40は、所定の時間が経過するまで待機する。
S218にて、P−ECU40は、再びP壁位置の学習を開始する。その後、処理はS210に移される。S220にて、P−ECU40は、S210にて検出されたP壁位置をPレンジに対応する壁位置として確定する。
以上のような構造およびフローチャートに基づく、本実施の形態に係るシフト制御システム10における動作を図11のタイムチャートを参照して説明する。なお、図11におけるシフト制御システム10の動作は、工場出荷時の動作を一例として説明する。
図11(A)は、V−ECU30からの切替要求の変化を示す図である。また、図11(B)は、エンコーダ46により検出されるカウント数の変化を示す図である。図11(A)および図11(B)において、横軸は、時間を示す。
まず、図11(B)を参照して、ユーザの車両電源スイッチ28への操作に応じて、シフト制御システム10への電力供給が開始される(S200)。そして、工場出荷時において、P−ECU40に含まれる内部メモリには、シフトレンジの記憶がないため、V−ECU30は、車速判定を行なう。このとき、P−ECU40は、V−ECU30からの切替要求の信号を受けるまで待機する(S202)。そして、図11(A)を参照して、V−ECU30は、車速判定の結果、現在のシフトレンジがPレンジであると判定することに応じて、P−ECU40に対して、Pレンジの切替要求を送る(S204にてYES)。そして、P−ECU40は、初期駆動を実行する(S206)。
次に、図11(B)を参照して、P−ECU40は、P壁当て学習により、1回目のPレンジに対応するP壁位置の検出を行なう(S208)。ここで、P−ECU40は、P壁位置が検出されたと判断すると(S210にてYES)、アクチュエータ42への電力供給を遮断する(S212)。このとき、P−ECU40は、(P壁位置検出時のシフトカウント−P壁位置開始時のシフトカウント)が所定の変化量よりも大きいと判断すると(S214にてYES)、アクチュエータ42への電力供給を遮断してから所定の時間経過した後に(S216にてYES)、2回目のP壁位置の学習を開始する(S218)。そして、P壁位置が検出されると(S210にてYES)、P−ECU40は、アクチュエータ42への電力供給を遮断し(S212)、(P壁位置検出時のシフトカウント−P壁位置開始時のカウント)が所定の変化量よりも小さいと判断すると(S214にてNO)、P壁位置を確定する(S220)。
以上のようにして、本実施の形態に係るシフト制御システムによると、ニュートラルスイッチが不要となるとともに、以下のような効果を有する。すなわち、シフト制御システムにおいて、壁位置を設定するときに、エンコーダにより壁位置の設定開始時と設定終了時とにおいてそれぞれ取得されるカウント数に基づく変化量が所定の変化量を超えることに応じて、壁位置を再設定することにより、たとえば、非PレンジからP壁位置の検出を行なう場合、設定開始時と設定終了時とでエンコーダによりそれぞれ取得されるカウント数に基づく変化量が大きいとして、P壁位置を再設定することができる。すなわち、2回目の壁位置の検出の動作において、PレンジからP壁位置を検出することができる。PレンジからP壁位置への基準位置の検出時のアクチュエータの回転力は、非Pレンジから基準位置の検出時と比較して小さい。そのため、PレンジからのP壁位置の検出は、ディテントプレートに係合するディテントスプリングへの負荷が低い。すなわち、ディテントスプリングの変形を防止、あるいは低減することができる。ディテントスプリングの変形を防止、あるいは低減できるため、PレンジにおけるP壁位置が正しく設定されることにより、シフト切替機構の耐久性も向上する。その結果、シフトレンジ切替機構にかかる負荷を低減することができる。
<第2の実施の形態>
以下、本発明の第2の実施の形態に係る自動変速機のシフト制御システムについて説明する。本実施の形態に係る自動変速機のシフト制御システムのハードウェア構成は、前述の第1の実施の形態と同じである。それらについて、同じ参照符号を付してある。それらの機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明はここでは繰返さない。
本実施の形態に係るシフト制御システムは、壁位置検出制御が終了した後に、アクチュエータ42を検出された壁位置から、壁により回転が規制される方向の逆方向に所定の回転量の回転を行なう点が特徴である。
すなわち、壁位置検出制御が終了した後、ディテントスプリング110がディテントプレート100の壁に押し当てられて撓んだ、あるいは伸びた状態でP−ECU40がアクチュエータ42への電力供給を遮断した場合、またはその状態で何らかの故障が生じてアクチュエータ42への電力供給が停止した場合、ディテントスプリング110の弾性力により元の形状に戻ろうとする回復力によってディテントプレート100に不必要な回転が生じ、シフト位置が予定していない位置に移動しうる。このような事態を回避するために、本実施の形態では、壁位置検出制御の終了後に、アクチュエータ42を、壁位置から、壁により回転が規制される方向の逆方向に所定の回転量の回転を行なう。そして、ディテントスプリング110の撓みまたは伸びを解消してからP−ECU40は、アクチュエータ42への電力供給を遮断する。以下、このような制御を「戻し制御」と呼ぶ。
図12を参照して、P−ECU40で実行されるプログラムの制御構造について説明する。なお、図12に示したフローチャートの中で、前述の図10に示したフローチャートと同じ処理については同じステップ番号を付してある。それらについて処理も同じである。したがって、それらについての詳細な説明はここでは繰返さない。
S300にて、P−ECU40は、アクチュエータ42の通電相を第1の所定の時間、たとえば、50ミリ秒間固定してアクチュエータ42を完全に停止させる。
S302にて、P−ECU40は、アクチュエータ42の回転が壁により規制される方向の逆方向に、アクチュエータ42を駆動させる。たとえば、現在位置がP壁位置である場合は、非P壁の方向にアクチュエータ42を回転させる。
S304にて、P−ECU40は、エンコーダ46により検知されるアクチュエータ42の回転位置が検出された壁位置より所定の回転量手前に位置するか否かの判断を行なう。アクチュエータ42の位置が壁位置より所定の回転量手前の位置であると判断すると(S304にてYES)、処理はS306に移される。もしそうでないと(S304にてNO)、処理はS302に戻される。
S306にて、P−ECU42は、アクチュエータ42を完全に停止させるために、第2の所定の時間、たとえば、100ミリ秒間通電相を固定する。S308にて、P−ECU40は、アクチュエータ42への電力供給を遮断する。なお、第1の所定の時間と第2の所定の時間とは、同じ時間でもよいし、それぞれ別々に設定される時間でもよい。
これにより、ディテントスプリング110の回復力でディテントプレート100が回転する状態を回避することができる。このとき、P−ECU40がアクチュエータ42を壁位置から、逆の壁位置方向に回転させるときの所定の回転量は、ディテントスプリング110の撓みまたは伸びが解消される程度に設定すればよい。また、この所定の回転量は、ディテントプレート100やディテントスプリング110の形状などに依存して設定されてもよく、1回目で設定された目標回転位置と同じ位置であってもよいし、シフト位置を正確に定めるために目標回転位置よりも壁側に設定されてもよいし、より安全性を高めるために目標回転位置よりもさらに大きなマージンをとって設定されてもよい。あるいは、この所定の回転量は、ディテントプレート100の形状などに応じて、P壁側と非P壁側で異なる値としてもよく、たとえば、P壁側では非P壁方向に2度程度、非P壁側ではP壁方向に3度程度であってもよい。
以上のようにして、本実施の形態に係るシフト制御システムによると、ディテントスプリング110の撓みまたは伸び等による回復力でディテントプレート100に無用の回転が生じ、シフト位置が予定していない位置に移動しうる事態を回避することができる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
10 シフト制御システム、20 Pスイッチ、22 インジケータ、24 入力部、26 シフトスイッチ、28 車両電源スイッチ、30 V−ECU、40 P−ECU、42 アクチュエータ、46 エンコーダ、48 シフト制御機構、50 表示部、52 メータ、60 駆動機構、100 ディテントプレート、102 シャフト、104 ロッド、106 パーキングロックポール、108 パーキングギア、110 ディテントスプリング、112 ころ、120 非Pレンジ位置、122 山、124 Pレンジ位置、200 P壁、210 非P壁。