JP4602510B2 - 中性子遮蔽能を有する透明遮蔽材の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、成形歪みの無い透明度の高い中性子遮蔽材を得る製造方法に関する。
【0002】
【従来技術】
近年、原子炉、高速増殖炉などの原子力施設・核融合施設や患部医療用中性子線治療施設等の原子力事業の発展に伴い各施設から発生する中性子線の遮蔽保護材として、該施設での遠隔操作で必要とする遮蔽保護された監視部(のぞき窓)や施設内で作業する人達の安全管理面用具及び緊急事態発生時等に於ける作業員並びに緊急救援施設及び車両等には透明な中性子遮蔽能を有する成形防護品の開発が望まれている。
【0003】
中性子遮蔽材料としては、従来からポリエチレン樹脂と比較的多量の無機ホウ素化合物からなる中性子遮蔽材が知られている(特公昭62−49305)。また、含有ホウ酸塩鉱物を主成分とし、これを水素数の多い炭化水素系の樹脂をバインダーとし、熱可塑性を利用して成型するもの(特開昭52−106097)、エポキシ樹脂を使用した系では、エポキシ樹脂をそれぞれ主材として鉄粉を含有させた高速中性子減速層やホウ素を含有させた熱中性子吸収層の使用形態のもの(特公平4−47800)、エポキシ樹脂とポリエチレン、無機ホウ素化合物を含む混合物をアミン系硬化剤により硬化してなるもの(特公平4−67160)、核融合炉の支持構造用にエポキシ樹脂と充填剤と硬化剤により硬化させた硬化物を素材としたもの(特開昭60−387)等が提案されている。
【0004】
また、他の中性子遮蔽材料として広く利用されているものに水がある。水は原子炉の炉体冷却を兼ね、循環して使用されている。しかし、固定した構造用遮蔽物としては応用できないので水に代替できるものとして不純物が少なく水素数が比較的多い炭化水素化合物(例えば、パラフィン類、ポリエチレン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂)等がバインダーとして使用され構造部材として応用されている。これらは炭化水素化合物に充填剤としてホウ素等の遮蔽吸収能のある元素を含む無機充填剤を配合して、不透明な構造部材を提供するのみであった。このように、従来の中性子遮蔽材のうち、透明性を持つ中性子遮蔽材料については未だ有効な提案がなされていないのが実状である。
一方、透明遮蔽材料としては鉛ガラスがあるが、中性子遮蔽能が低いので実用性のある遮蔽能を得るためには非常に厚い層を形成しなければならず、かつ非常に重量が重いものであった。しかも雨水に対する耐久性に乏しく、また、外的衝撃に弱い強度のものであった。そのためガラスの様な透明性を持ち中性子遮蔽能を有し且つ安価で更に機械的強度やヘッドライト(熱線)の長時間の照射熱にも軟化しない耐熱性を併せもった軽量化された中性子遮蔽材の出現が待たれていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、かかる現状に鑑み特に透明性に富み且つ注型・成形加工の容易な中性子遮蔽成形品の開発について鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。即ち、本発明の目的は、優れた中性子遮蔽能を保有し、成形品の形状にとらわれることなく、また、例えば成形品の厚みが50mm以上という大型の成形品を製造するのに適した透明性に優れた注型・成形を行うことができる中性子遮蔽成形品の製造方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するためには、透明性を得る必要がある。そのためには中性子遮蔽性を有する不透明な無機質類等を含まない透明なエポキシ樹脂と硬化剤を主成分とすることが必要である。このように、熱容量の大きい無機質類等が混入されていないので硬化発熱量を吸収する材料が混合物中に含まれていないことになり、成形時に硬化反応して生成する熱で成形品の歪みの発生が余儀なくされてしまう。特に透明性を備えた有機系型枠が使用された場合には硬化発熱により型枠自体が変形してしまうことになる。また中性子遮蔽能を阻害する気泡が成形品に包含されてしまうと重大な遮蔽欠陥となり実用に至らなくなる。この様な背景からエポキシ樹脂そのものを使用する場合にはこれらの課題を解決した新しい製造方法の開発が待たれていた。
【0007】
本発明の要旨は、不透明な無機質類等を含まない透明なエポキシ樹脂と硬化剤とをそれぞれ単独で又は混合した後、脱泡処理を施し、しかる後、その混合物を分割して断続的に型に流し込み、湯口部分底部の泡の巻き込みを防止しながら型枠内に流し込み、硬化による発熱量を型枠内に流し込んだ混合物を型枠の外部冷却により除去しながら常温硬化させることを特徴とする、透明な中性子遮蔽材の製造方法である。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明について詳細に説明する。
本発明の透明な中性子遮蔽材の製造方法は以下の手順を実施する必要がある。第一工程は混合物を調整する工程であり、型枠の大きさに応じてエポキシ樹脂と硬化剤を含む混合物を約4〜5kg毎に計量混合し、混合後の樹脂温度を室温(20℃〜40℃)になる様に調整する。この間で脱泡処理を行う。脱泡処理法として真空脱泡(減圧脱泡)により行なう。エポキシ樹脂及び硬化剤成分をそれぞれ混合前に事前にそれぞれ脱泡処理して置いても良く混合後に一度に脱泡しても良い。どの段階で脱泡しても差し支えが無いが真空下での混合を折り込んだ何れかの方法で脱泡しなければならない。次にあらかじめ目的とする成形型枠をクリーンベンチ内にセットしクリーンベンチ内温度は室温(15℃〜40℃)範囲内に保って準備しておく必要がある。型枠は成形品の形状によるが直角などの鋭角部分が存在する場合には、湯口部底部の泡の巻き込みを防止する為に最初の流し込み時にあらかじめジャッキ等で型枠を傾け底部の泡の巻き込みを防止しておくことが好ましい。
【0009】
次に第二工程は樹脂の流し込みを行う工程になるが、分割して断続的に行なう。通常、1回4〜5kgスケールを5分以内で湯口部分で泡の巻き込みに注意して型枠壁に沿いながら流し込み、1回分の流し込みを終了させる。次に同様のスケールで2回目の流し込みを順次行う。成形型枠の大きさにより回数が決まってくるが、約50kgの成形品の場合は延べ12回となり、成形品の大きさ毎に必要な回数で断続的に流し込みを終了させる。
【0010】
第三工程は冷却を行いながら硬化させる工程になる。混合物の流し込みを終了すると、硬化に伴い発熱反応を生じる。この硬化による発熱量を型枠の外部冷却により除去しながら常温硬化させる。具体的手段として、混合物の流し込みを終了した型枠を冷却水槽に移動してそのまま水中にて型枠の外から冷却して硬化養生を行う。また、第二工程と第三工程を同時に実施することもできる。具体的には、第二工程の1回分の流し込みを終了した後、型枠を第三工程の冷却水槽に移動設置して2回分以降の混合物の流し込みを終了する毎に水槽中の冷却水面も型枠内の液面レベルまで上げて冷却し最終までくりかえしてして型枠内に流し込みして製造することもできる。冷却水槽は水温が40℃以下に保たれた冷却水が連続的に循環しており一定の水温度に保たれている。成形品の形状や大きさにより循環水の制御温度を選択しなければならないが少なくとも40℃以下に保たなければならない。この温度以上になると反応熱が成形品内部に蓄積され亀裂や歪みを発生させてしまう。また全く冷却をせずに空気冷却でおこなうと、内部発熱により混合物の温度が40℃以上に高まり有機系の透明型枠の軟化温度以上となり、型枠の変形をきたしてしまう。また冷却水温が10℃以下になると反応熱の制御が可能となるが、混合物の温度が下がり混合物の粘度が高くなり流し込み時に僅かに巻き込んだ気泡がそのまま成形品内に残り好ましくなく、また硬化不十分となったり、樹脂組成物の硬化度が不均一となったりしてバラツキを生じてしまう。また、注入樹脂面直上部の型部を冷却しているので、直後上昇してくる樹脂の熱をコントロールすることができ効果的に発熱量を除去することができる。また、水中で注型作業を行うために注入する樹脂重量圧に対して外からの水圧により型枠の変形を防止することができる。
【0011】
この様な三段階の工程を適用すると、エポキシ樹脂の硬化反応による発熱量は1モル当たりの理論定数値を基礎に成形品の重量と形状毎に循環水温を決定することができるので同一の形状であればそれに見合う冷却水温を一定に保つことにより常に安定した成形品が再現よく製造することが出来る。従って、これらの熱的操作を自動制御する製造方法も可能とするものである。硬化養生時間は、エポキシ樹脂組成物の構成により異なるが、急激な硬化は望ましくなく通常は1昼夜養生以上が望ましい。これ以上の長時間で硬化養生することは硬化発熱を除去する面で有利であるが生産性が悪くなり経済的に不利益となる。生産性を上げる為に短時間で硬化させようとすると反応熱の制御が出来ずに成形歪みを発生させてしまう。本発明の成形品は、中性子遮蔽機能を備えていることと長時間のヘッドライト(熱線)を連続的に照射された場合にも熱軟化しない耐熱性とを必要とする。また該成形品を経由して先の物体が鮮明に透視できる照度に優れた透明性を備えた成形品であることが必須であり、成形品を製造する段階で発生する気泡の差込や反応熱による歪みや熱による変色等の不具合を避けることが特に重要である。かかる問題を解決する為に鋭意研究した結果、不透明な無機質類等を含まないエポキシ樹脂と硬化剤の混合物を調整して脱泡する第一工程と第一工程で得られた混合物を型枠内へ断続的に流し込む第二工程と充填された混合物を型枠と一体で冷却槽内で連続的に型枠外から冷却して徐冷しながら硬化養生させる第三工程を連続的且つ段階的に行うことによりかかる問題点を解決するに至った。型枠が不透明な金型枠の場合は、型枠の取り外しを必要とするが、透明な有機系型枠で一体化した成形品の場合は、そのままで最終成形品として利用される。いずれの成形形状もかかる製造方法を適用することができ本発明の成果をかなでることができる。
【0012】
本発明で用いる液状エポキシ樹脂は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する常温で液状を示すものであれば任意のものを使用することができる。このようなエポキシ樹脂としては、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン系エポキシ樹脂、含ブロムエポキシ樹脂、シクロヘキシル環含有型エポキシ樹脂、プロピレングリコールグリシジルエーテルなどの脂肪族エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂等が挙げられ、これらのエポキシ樹脂は2種以上混合して用いても良い。また必要に応じて、ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、クレジルグリシジルエーテル、脂肪族アルコールのグリシジルエーテルなどのようなモノ及びジエポキシ化合物を配合しても良いし、常温固体状のエポキシ樹脂を適量配合しても良い。中性子遮蔽能を効果的に得るためには、不純物の比較的少なく、かつ水素数が比較的多いエポキシ樹脂が有利であり、脂肪族系エポキシ樹脂やシクロヘキシル環含有型エポキシ樹脂である4.4’ーイソプロピリデンシクロヘキサノール系エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂を選択すると有利である。
【0013】
本発明で使用するエポキシ樹脂組成物は前記エポキシ樹脂に常温硬化型エポキシ樹脂硬化剤を配合したものであるが、使用する常温硬化型エポキシ樹脂硬化剤は、常温(15〜40℃)においてエポキシ樹脂と硬化反応するものであり、通常10分ないし数時間のポットライフを与え、数10分ないし10日前後の硬化時間を要するエポキシ樹脂硬化剤であって特に限定されないが、たとえば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ヘキサメチレンジアミン、ポリオキシプロピレンジアミン、イミノビスヘキシルアミン等が、脂環式ポリアミンとしては常温でエポキシ基と反応する活性水素原子を有するアミノ基又は/及びイミノ基を分子中に少なくとも2個以上有する脂環式化合物であり、例えばビス(アミノ)シクロヘキサン、N−アミノエチルピペラジン、3,9ービス(3−アミノプロピル)2,4,8,10ーテトラオキサピロ(5,5)ウンデカン、mーキシレンジアミン、1−3ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、Nーアミノエチルピペラジン、ビス(4ーアミノシクロヘキシル)メタン、ノルボルナンジアミン等が挙げられ、これらの誘導体としては例えば脂肪族ポリアミンのエチレンオキサイド付加物、エポキシ樹脂付加物、ポリエチレンポリアミン変性物の変性脂肪族ポリアミン、複素環式ジアミン変性物、脂環式ポリアミンのモノグリシジルエーテル付加物、エポキシ樹脂付加物、アクリルニトル付加物、脂肪酸グリシジルエステル付加物等の変性脂環式ポリアミン、ポリエチレンポリアミンー脂肪酸、ポリエチレンポリアミンーダイマー酸、キシリレンジアミンーダイマー酸等の縮合反応生成物であるポリアミドアミンならびにその変性物があげられる。これらの硬化剤の1種又は2種以上の混合物が用いられる。いずれの場合も硬化物が透明であることが硬化剤選定時の必須要件である。硬化物の透明性は一般に照度により測定される。特殊車両用フロントに硬化物が採用された場合を例にとると道路交通法の規定光度以上に保持されている必要がある。本発明では、適切な光源のもとで照度50%以上をもって透明性が維持されているものと判定している。
【0014】
かかる常温硬化型エポキシ樹脂硬化剤の配合量は使用する硬化剤の種類によって適宣選択されるが、通常エポキシ樹脂100重量部に対して該硬化剤10〜200重量部、好ましくは20〜100重量部配合する。
【0015】
本発明に硬化速度の調整として硬化促進剤を用いることもできイミダゾールや3級アミン系やフェノール類等通常エポキシ樹脂の硬化促進剤として使用されるものを用いることができ、特に制限されるものでない。
【0016】
本発明で用いるエポキシ樹脂組成物は、上述したエポキシ樹脂、硬化剤を必須とするが硬化促進剤の他本発明の目的である透明性を損なわない範囲に於いて各種添加剤、カップリング剤、消泡剤、染料等の着色剤などを添加配合することができる。
【0017】
本発明で用いるエポキシ樹脂組成物は、混合粘度も重要である。常温で混合粘度が7000mPa・s以下に調整されたエポキシ樹脂組成物である事が望ましい。7000mPa・sを越えると混合時の気泡の巻き込みが起こりやすくなり不利である。5000mPa・s以下であれば低い程気泡の巻き込みが少なく消泡効果が高められるのでさらに有効である。
【0018】
本発明の型枠は、金属製の型枠でも良いが、これを使用する場合は、脱型する必要があり、その場合のためにあらかじめ離型剤を金型に塗布しても良い。有機系の透明な型枠を使用する場合は、成形物と一体化する必要があるが、それらの透明材料としては、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂が使用されるが、材料に特に限定されるものでなく、透明性が保たれていれば良い。一例としては、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、スチレン樹脂、PMMA樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられるがこれらに限定されるものでない。また成形時に空気中の塵、塵埃等の異物の混入を避けるためにクリーンベンチルーム内で成形作業を行うことが好ましく、クラス100,000以下の清浄空気雰囲気にすることが望ましい。
【0019】
本発明の成形品の形状は、特に限定されるものでなく、実用的に必要とする形状の型枠を調整することができれば何ら制約されるものではない。本発明は、特に厚さ方向が50mm以上の大型の成形品を得るために特に有効であり、一例として60×600×1000mmの板状のものが挙げられるが、正方体、長方体、円錐体、角錐体、球形等何れの形状でも良く、使用構造体の形状に適するものであれば良く、中性子遮蔽能の要求度に合わせて選択することができる。
【0020】
【実施例】
以下に実施例を示して本発明を詳細に説明するが、以下に限定されるものでない。実施例1〜2及び比較例1〜3
実施例1
(第一工程)
エポキシ樹脂(東都化成(株)製商品名 ST−3000;エポキシ当量230g/eq)3.0kgを34〜35℃に予熱し、硬化剤(東都レジン化工(株)製商品名HLー107;アミン価327mgKOH/g)1.2kgを計量の上約20℃に保ち、それぞれを混合して28〜30℃になる様に調整した。この時の混合粘度は2000mPa・sであった。次に真空脱泡装置にて1分間脱泡した。次にクリーンベンチ内に透明なアクリル樹脂製型枠(5mm厚板の内容積が50mm×590mm×990mmである長方体)をセットし、あらかじめ型枠をジャッキで傾けておき異物の混入が無いことを確認した。
(第二工程)
第一工程で得られた混合物を型枠の湯口壁に沿いながら流し込み5分間位で湯口部底部の泡の巻き込みに注意して4.5kgの全量を注ぎ込んだ。次にこの型枠を冷却用槽に設置し、型枠内に流し込んだ樹脂液面の高さまで15±10℃の冷却水の注水を行った。
次に同様にして第一工程と第二工程を繰り返して注入作業を計12回行い、その都度冷却水の液面が常に注入樹脂液面より高い位置を保つ様に調整し液面を上昇させた。
(第三工程)
全ての注入が終了して型枠内に全ての樹脂が充満し、冷却水液面は型枠後もそのまま水中にて硬化・養生を一晩(8〜12時間)続けた。冷却水は常に循環して15±10℃の一定温度に保ち硬化反応が続いている間連続して冷却を繰り返した。翌朝型枠を取り出しクリーンベンチ内に保管した。
得られた注形品は、泡の含まない均一な透明板であり、歪みの無い計画寸法の長方体であり、これの中性子遮蔽能は、注形品2枚を重ねた場合の結果は1/7.69VT(表−1表参照)であった。光度は平成7年式三菱型式E−E74A(前照灯:4灯式)車両では前照灯主走行ビームの光度36,000カンデラに対して遮蔽板2枚で27,000カンデラであり、平成5年式トヨタ型式E−SV30(前照灯:2灯式)車両では前照灯主走行ビームの光度48,000カンデラに対して遮蔽板2枚で38,500カンデラであり光度は規格以上であった。従ってそれぞれの照度は76.3%及び80.0%であった。ヘッドライト連続照射性を示す尺度の耐熱性は軟化温度210℃である透明な中性子遮蔽板であった。
【0022】
実施例2
エポキシ樹脂4,4’−イソプロピリデンビスシクロヘキサノール型エポキシ樹脂エポキシ当量225g/eqが3.0kgであり、硬化剤3,9ービス(3−アミノプロピル)2,4,8,10ーテトラオキサピロ(5,5)ウンデカン(アミン価320mgKOH/g)が1.2kgである以外は実施例1と同様の操作で注形品を得た。注入前の混合粘度は2500mPa・sであった。得られた注形品は、泡の含まない均一な透明板であり、歪みの無い計画寸法の長方体であり、中性子遮蔽能は注形品を2枚重ねた場合、1/7.65VTであり、光度は実施例1と同様に前照灯4灯式車両及び前照灯2灯式車両に於いて光度は既定値を合格し、それぞれの照度は76.0%及び79.8%であり、ヘッドライト連続照射性を示す尺度の耐熱性は軟化温度211℃である透明な中性子遮蔽板であった。
【0023】
比較例1
実施例1の第一工程で混合物を脱泡しなかった以外は実施例1と同様の操作を行った。得られた注形品は気泡が全体に残った透明板であった。
【0024】
比較例2
実施例1で注入型枠外を自然空冷で実施した以外は実施例1と同様の操作を行った。
得られた注形品は、内部の発熱により型枠が変形し内部が褐色に変色し歪な注形品となった。
【0025】
比較例3
実施例と同様な形状のポリエチレン製成形品を使用し、ヘッドライト連続照射性を示す尺度の耐熱性は、軟化温度129℃であった。この結果はヘッドライト連続照射性のみならず車両装着時のエンジン輻射熱で変形し遮蔽板として実用出来なかった。
【0026】
遮蔽材の特性である中性子遮蔽能、照度、ヘッドライト連続照射性を示す尺度の耐熱性については以下の方法によって測定し判定した。
また気泡の混入の有無は肉眼による外観検査により判定した。
〔中性子遮蔽能〕
中性子遮蔽能は、実用的な条件を想定し下記の具体的な測定法に準拠して測定した。中性子線源252Cf1.45MBqの線源を用いて特殊車両の運転席のフロントに実施例で得られた60mm×600mm×1000mmの透明板2枚を重ね図1の配置図に従って線源、遮蔽板、検出器をセットして中性子線を照射し、遮蔽板の無い場合と有る場合の中性子線量当量率(μSv/h)の比で表す。遮蔽板の有る場合を(1)として遮蔽板無い場合を(2)として(1)/(2)値として表わされる。本発明に於ける実用性の判定は1/5VT以下である必要がある。
〔照度〕
平成7年式三菱型式E−E74A(前照灯:4灯式)車両及び平成5年式トヨタ型式E−SV30(前照灯:2灯式)車両を用いて前照灯主走行ビ−ムの光度を測定し、実施例の透明遮蔽板2枚を重ね前照灯前に装着し、光度を測定した。遮蔽板を装着しない場合と遮蔽板2枚を装着した場合の光度保持比率で示す。また道路交通法による車両の前照灯の光度は、4灯式前照灯装着車両の場合は主走行ビーム及び副走行ビーム又は、すれ違いビームが同時に点灯しない方法の主走行ビームの場合にあって1灯に付き15,000カンデラ以上であり、その他の4灯式前照灯の主走行ビームにあっては1灯に付き12,000カンデラ以上であることが必要である。また、4灯式前照灯以外の車両の場合では1灯に付き15,000カンデラ以上と規定されている。もう一つの要件として道路交通法の規定光度以上でなくてはならない。本発明における実用性の判定は照度50%以上である。
〔耐熱性〕
耐熱性はヘッドライトの長時間の照射熱による軟化を考慮し、JIS K 7206のビカット軟化温度試験法に準拠して測定した。
試験荷重:A法 1kgf、昇温速度50℃/hrの条件で測定した。
実施例1で得られた遮蔽材の遮蔽能1/7.69VT値は、表1記載データより算出されたものである。
【表1】
実施例1の遮蔽能は、(1)/(2)=0.08/0.61=1/7.69VTと算出され、本発明で言う実用規定値とする1/5VT以下であった。同様の方法で測定値を計算し実施例2の値を得た。
【0027】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明は第一工程、第二工程及び第三工程を行なうことによって、透明性を有し、気泡の含まず、また、歪みのない中性子遮蔽能を有する成形品を得ることが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】中性子遮蔽能測定用配置図
Claims (6)
- 不透明な無機質類等を含まない透明なエポキシ樹脂と硬化剤とをそれぞれ単独で又は混合した後、脱泡処理を施し、しかる後、その混合物を分割して断続的に湯口部分底部の泡の巻き込みを防止しながら型枠内に流し込み、硬化による発熱量を型枠の外部冷却により除去しながら常温硬化させることを特徴とする、透明な中性子遮蔽材の製造方法。
- 上記エポキシ樹脂と硬化剤からなるエポキシ樹脂組成物の常温での粘度が7000mPa・s以下である請求項1記載の透明な中性子遮蔽材の製造方法。
- 上記エポキシ樹脂が、4,4’−イソプロピリデンビスシクロヘキサノール系エポキシ樹脂である請求項1又は2記載の透明な中性子遮蔽材の製造方法。
- 上記エポキシ樹脂組成物がエポキシ樹脂と、脂肪族アミン、脂環式アミン及び複素環式ジアミンとその変性物からなる群から選ばれた硬化剤とからなる常温硬化型エポキシ樹脂組成物である請求項1〜3の何れかの項記載の透明な中性子遮蔽材の製造方法。
- 上記エポキシ樹脂が、4,4’−イソプロピリデンビスシクロヘキサノール系エポキシ樹脂で、上記硬化剤が脂肪族アミン、脂環式アミン又は及び複素環式ジアミンとその変性物からなる群から選ばれた硬化剤からなる常温硬化型組成物である請求項1〜4の何れかの項記載の透明な中性子遮蔽材の製造方法。
- 該エポキシ樹脂硬化物成形品が透明な成形用型枠と一体化している透明な中性子遮蔽材である請求項1〜5の何れかの項記載の透明な中性子遮蔽材の製造方法。
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