JP4601861B2 - モノグリセリドの製造法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、化粧品等の乳化剤や保湿剤、洗浄剤、工業用乳化剤及び食品添加物として広く利用されているモノグリセリドを高純度で簡便に効率よく工業的に製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
高純度なモノグリセリドを得る方法として、油脂とグリセリンをアルカリ存在下反応させ、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリドの混合物を得た後、分子蒸留にて、モノグリセリドのみを得る方法が知られている。しかし、この方法は、モノグリセリド以外の生成物の回収と再反応を行うため、設備の負担が大きく、また、沸点の高い炭素数50以上のモノグリセリドに適用するのが困難である。更に沸点差により分取するため、エトキシレートなど分子量分布をもつモノグリセリドや中鎖脂肪酸(C8〜C14)、あるいは混合脂肪酸組成のモノグリセリドを得ることが困難である。また、蒸留時の加熱のため、不飽和脂肪酸組成を有するモノグリセリドを異性化することなく得ることが困難であるという問題がある。
【0003】
一方、モノグリセリドアセタールを脱アセタール化してモノグリセリドを得る方法も知られている。この方法に用いられるモノグリセリドアセタールの合成法としては、グリセリンとケトン又はアルデヒドを反応させたグリセリンアセタールと脂肪酸を反応させて得る方法があるが、この脂肪酸とのエステル化を、酸又は塩基触媒を用いて行った場合、通常のエステル化条件では保護基であるアセタールがエステル化で生成した水により容易に加水分解してしまい、生成物は目的物以外にグリセリン由来の水酸基をエステル化された複雑な混合物となる。また、酸又は塩基触媒の代わりに酵素を用い、減圧反応を行うことでモノグリセリドアセタールを得る方法も知られているが(特開平11−187891号)、酵素に対応した設備が必要になり、また、長鎖脂肪酸では、酵素に適した温度での反応は難しい。
【0004】
更に脂肪酸の代わりに、脂肪酸エステルを用い、触媒としてアルカリを用いてグリセリンアセタールとエステル交換反応を行う方法も知られているが、この方法では、着色し易く、また、副生物が生成するため、それらの除去、あるいは蒸留精製等が必要であるという問題がある。
【0005】
また、高純度のモノグリセリドアセタールの簡便で高品質な製造法として、カルボン酸とケトン又はアルデヒドとグリセリン類とを、触媒の存在下で一括して仕込み、アセタール化、エステル化、エステル交換を同時に進行させる方法も知られている(特開平11−370095号)。しかし、この方法ではエステル化及びアセタール化で生成する水を脱水する必要があり、そのための脱水溶媒又は捕水剤の使用が必要となる。また、反応速度は脱水律速であり合成に長時間を要する。
【0006】
本発明の課題は、モノグリセリドを高純度で簡便に効率よく製造する方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、水酸基、エーテル基、芳香環、ハロゲン原子、アミド基、ニトリル基、ニトロ基、チオール基もしくはスルフィド基から選ばれる少なくとも1つを有するアシル基を構成成分とする原料グリセリドとグリセリンのアセタール化物とのエステル交換反応を行い、モノグリセリドアセタールを含有する混合物を得、該混合物からグリセリンのアセタール化物及びグリセリンを除去した後、加水分解により脱アセタール化を行う、モノグリセリドの製造法である。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明で用いられる原料グリセリドとしては、一般式(1)で表される化合物(以下グリセリド(1)という)が挙げられる。
【0009】
【化5】
【0010】
[式中、Aは水素原子、あるいは炭素数2〜100の飽和又は不飽和カルボン酸から誘導される、水酸基、エーテル基、芳香環、ハロゲン原子、アミド基、ニトリル基、ニトロ基、チオール基もしくはスルフィド基から選ばれる少なくとも1つを有するアシル基を示し、3つのAは互いに同一でも異なっても良い。ただし、Aは同時に全てが水素原子にはならない。]
グリセリド(1)としては、グリセリンと、炭素数2〜100の、水酸基、エーテル基、芳香環、ハロゲン原子、アミド基、ニトリル基、ニトロ基、チオール基もしくはスルフィド基から選ばれる少なくとも1つを有する飽和又は不飽和カルボン酸から合成される、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド及びそれらの混合物、あるいは天然の油脂等が挙げられ、トリグリセリドを含有するものが好ましい。油脂としては、水酸基をもつリシノール酸を主構成脂肪酸とするヒマシ油等の油脂が挙げられる。また、炭素数2〜100の、水酸基、エーテル基、芳香環、ハロゲン原子、アミド基、ニトリル基、ニトロ基、チオール基もしくはスルフィド基から選ばれる少なくとも1つを有する飽和又は不飽和カルボン酸としては、置換基として、水酸基、ハロゲン原子、ニトリル基、ニトロ基、チオール基等を有する炭素数2〜22の脂肪酸;安息香酸、置換基として水酸基、ハロゲン原子、ニトリル基、ニトロ基、チオール基等を有する安息香酸等の芳香族カルボン酸;炭素数1〜100のアルコールにエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加した付加物(アルキレンオキサイド付加モル数1〜20)のカルボキシレート等のエーテルカルボキシレート等が挙げられる。
【0011】
グリセリンと、炭素数2〜100の、水酸基、エーテル基、芳香環、ハロゲン原子、アミド基、ニトリル基、ニトロ基、チオール基もしくはスルフィド基から選ばれる少なくとも1つを有する飽和又は不飽和カルボン酸からモノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド及びそれらの混合物を合成する方法としては、200℃以上の温度で常圧又は減圧下で窒素をバブリングさせ、生成水を系外に除去させながら反応させる方法等が挙げられる。
【0012】
また、グリセリンのアセタール化物としては、一般式(2)で表される化合物(以下化合物(2)という)が挙げられる。
【0013】
【化6】
【0014】
[式中、R1、R2は同一又は異なって、水素原子、直鎖又は分岐鎖の炭素数1〜22のアルキル基もしくはアルケニル基、あるいはアルキル基で置換されていてもよい総炭素数6〜30のアリール基を示し、R1とR2が結合して環を形成していても良い。]
化合物(2)において、R1とR2は上記の意味を示すが、R1とR2の合計炭素数は2〜9が好ましい。R1とR2の具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトンから誘導される基、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド等のアルデヒドから誘導される基が挙げられる。
【0015】
本発明においては、まず原料グリセリドに対し、グリセリンのアセタール化物を、好ましくは2〜20倍モル、更に好ましくは4〜16倍モル加え、触媒を、原料グリセリドに対して、好ましくは0.001〜50重量%、更に好ましくは0.2〜1重量%加え、減圧又は常圧下、好ましくは10〜200℃、更に好ましくは20〜100℃の反応温度でエステル交換反応を行う。この時系内の水分は少ない方が好ましく、更に好ましくは0.2重量%以下である。
【0016】
このエステル交換反応に用いられる触媒は、特に限定されるものではなく、通常のエステル交換に用いられる酸触媒又は塩基触媒が用いられ、酸触媒としては、塩酸、硫酸等の無機酸、パラトルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸等の有機酸、又は酸性白土、シリカアルミナ、パーフロロイオン交換ポリマー(ナフィオン(デュポン社製))等の固体酸が挙げられる。塩基触媒としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム等のアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の炭酸塩、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム等のアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の水酸化物、水素化ナトリウム、水素化リチウム、水素化カルシウム等のアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属水素化物、又は固体塩基もしくはナトリウムメチラート、カリウムメチラート、グリセリンアセタールのナトリウムアルコラート等のアルコラート類が挙げられる。
【0017】
本発明においては、上記のようなエステル交換反応を行うと、モノグリセリドアセタールを含有する混合物が得られる。例えばグリセリド(1)と化合物(2)とのエステル交換反応を行うと、一般式(3)〜(6)で表される化合物の少なくとも1種と未反応原料の混合物が得られる。
【0018】
【化7】
【0019】
[式中、A’は炭素数2〜100の飽和又は不飽和カルボン酸から誘導される、水酸基、エーテル基、芳香環、ハロゲン原子、アミド基、ニトリル基、ニトロ基、チオール基もしくはスルフィド基から選ばれる少なくとも1つを有するアシル基を示し、R1及びR2は前記の意味を示す。]
エステル交換反応終了後、触媒を中和あるいは吸着除去し、又は固体触媒の場合には濾過等により除去した後、グリセリンのアセタール化物を減圧又は常圧下にて留去し、必要であれば、水性溶媒により、反応副生物であるグリセリンと中和で生成した塩を取り除くことで、モノグリセリドアセタールを主成分とする混合物が得られる。得られたモノグリセリドアセタールを加水分解により脱アセタール化を行うことで、モノグリセリドを得る。
【0020】
ここで用いる中和剤は特に限定されるものではないが、触媒として塩基を用いた場合は硫酸等の無機酸や乳酸等を用いることができる。
【0021】
本発明で用いられる水性溶媒は、水を含有している溶媒であれば良く、水単独、又は水とエタノール等の低級アルコールとの混合物が好ましく、水が更に好ましい。
【0022】
反応副生物であるグリセリン若しくは中和で生成した塩の除去は、上記水性溶媒を用いた抽出にて行うことが好ましい。但し、グリセリン量が少なく、除去する必要のない場合はこの処理を行わなくて良い。
【0023】
また、加水分解による脱アセタール化の方法は、特に限定されるものではないが、酸触媒を用い、30〜100℃の温度で加水分解する方法が好ましく、特に水蒸気を系内に導入し、生成するケトン又はアルデヒドと水蒸気を系外に除去しながら行うのが好ましい。酸触媒としては、上記のエステル交換反応に用いられる酸触媒が挙げられる。反応終了後、触媒の中和又は濾過を行うことで、高純度のモノグリセリドが得られる。
【0024】
【発明の効果】
本発明により、化粧品の乳化剤や保湿剤、洗浄剤、工業用乳化剤、食品添加物等として広く利用されているモノグリセリドを短時間で簡便に効率よく合成することが可能となる。特に、分子蒸留を行う製造法では得られにくい高沸点のモノグリセリド、エトキシレートなどの分子量分布をもつモノグリセリド、中鎖カルボン酸(C8〜C14)のモノグリセリドや、油脂組成の混合アルキル組成を持つモノグリセリドを容易に得ることができる。
【0025】
【実施例】
例中の%は特記しない限り重量基準である。
【0026】
実施例1:ヒマシ油組成のモノグリセリドの合成
2L4ツ口フラスコに、2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−メタノール530.8g(4.0モル)と水酸化ナトリウム0.80g(0.02モル)を加え100℃まで昇温後、4.55kPaで脱水を行いアルコラート化を行った。60℃まで冷却したものにヒマシ油468.8g(0.5モル)を加え、2時間攪拌してエステル交換反応を行った後、50%硫酸にて中和した。次に1.33kPa、80〜120℃で減圧蒸留を行い、水と2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−メタノールを留去した後、水洗を行い、α−モノグリセリドアセタール597.9gを得た。GPC純度88.1%。
【0027】
得られたα−モノグリセリドアセタール554.8gに酸性白土(ガレオンアースNV、水澤化学(株)製)16.65gを仕込み、80℃、29.3kPaにおいて、1時間あたりα−モノグリセリドアセタールに対して10%の水蒸気を反応系内に導入し、生成するアセトンと過剰な水蒸気を系外に除去しながら、脱アセタール化反応を6時間行った後、酸吸着剤(KW600S、協和化学(株)製)を16.65g加えた後、1.33kPa、70℃で1.0時間脱水を行い、濾過し、下記式(7)で表されるヒマシ油組成モノグリセリド(リシノール酸モノグリセリド)464.9gを得た。GPC純度87.1%。トータル合成時間18時間。
【0028】
【化8】
【0029】
実施例2:ヒマシ油組成のモノグリセリドの合成
2L4ツ口フラスコに、2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−メタノール1057.2g(8.0モル)と水酸化ナトリウム0.80g(0.02モル)を加え100℃まで昇温後、6.55kPaで脱水を行いアルコラート化を行った。60℃まで冷却したものにヒマシ油465.9g(0.5モル)を加え、2時間攪拌してエステル交換反応を行った後、50%硫酸にて中和した。次に1.33kPa、80〜120℃で減圧蒸留を行い、水と2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−メタノールを留去した後、水洗を行い、α−モノグリセリドアセタール592.1gを得た。GPC純度95.4%。
【0030】
得られたα−モノグリセリドアセタール555.0gに酸性白土(ガレオンアースNV、水澤化学(株)製)16.65gを仕込み、80℃、29.3kPaにおいて、1時間あたりα−モノグリセリドアセタールに対して6%の水蒸気を反応系内に導入し、生成するアセトンと過剰な水蒸気を系外に除去しながら、脱アセタール化反応を6時間行った後、酸吸着剤(KW600S、協和化学(株)製)を16.65g加えた後、1.33kPa、70℃で1.0時間脱水を行い、濾過し、上記式(7)で表されるヒマシ油組成モノグリセリド(リシノール酸モノグリセリド)461.3gを得た。GPC純度92.1%。トータル合成時間18時間。
【0031】
実施例3:エーテルカルボキシレートモノグリセリドの合成
300mL4ツ口フラスコにエーテルカルボキシレート(カオウアキポRLM450)122.8g(0.25モル)とグリセリン11.5g(0.125モル)を加え、200℃、常圧で攪拌後、同温度下、2.67kPaで3時間反応させた。そして、エーテルカルボキシレート/グリセリン=2/1(モル比)のエステル化物を100.7g得た。
【0032】
300mL4ツ口フラスコに、2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−メタノール92.5g(0.7モル)と水酸化ナトリウム0.21g(0.0053モル)を仕込み、100℃まで昇温後、減圧脱水し、アルコラート化を行った後、60℃まで冷却したものに、上記エステル化物84.2g(0.087モル)を加え、2時間攪拌してエステル交換反応を行った後、50%硫酸にて中和した。次に1.33kPa、80〜120℃で減圧蒸留を行い、水と2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−メタノールを留去した。このものにジエチルエーテル200mLを加え飽和食塩水で洗浄を行い、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、濾過・濃縮を行いエーテルカルボキシレートα−モノグリセリドアセタール70.9gを得た。GPCではモノエステル領域に1本のピークを示し、得られたものの酸価(KOHmg/g)は1.8、ケン化価(KOHmg/g)は99.5と理論値に近かった(理論酸価0、理論ケン化価99.0)。
【0033】
得られたα−モノグリセリドアセタール56.56gに酸性白土(ガレオンアースNV、水澤化学(株)製)1.61gを仕込み、80℃、29.3kPaにおいて、1時間あたりα−モノグリセリドアセタールに対して6%の水蒸気を反応系内に導入し、生成するアセトンと過剰な水蒸気を系外に除去しながら、脱アセタール化反応を6時間行った後、酸吸着剤(KW600S、協和化学(株)製)を0.06g加えた後、1.33kPa、70℃で0.5時間脱水を行い、濾過し、下記式(8)で表されるエーテルカルボキシレートモノグリセリド46.2gを得た。GPCではモノエステル領域に1本のピークを示し、得られたモノグリセリドは酸価5.6、水酸基価189.5、ケン化価105.0であり理論値に近かった(理論値:酸価5.6、水酸基価213.0、ケン化価106.5)。1H−NMR:3H(0.8ppm)、18H(1.2ppm)、2H(14.6ppm)、2H(3.4ppm)、20H(3.5−3.8ppm)、1H(3.9ppm)、4H(4.2ppm)。
【0034】
【化9】
【0035】
(式中、Rは炭素数12と14のアルキル基の、約7対3(重量比)の混合アルキル基を示し、nは4.5である。)
実施例4:安息香酸モノグリセリドの合成
1L4ツ口フラスコに安息香酸を256.4g(2.1モル)とグリセリンを96.7g(1.05モル)加え、250℃、常圧で5時間攪拌して反応させた。そして、安息香酸/グリセリン=2/1(モル比)のエステル化物を311.9g得た。
【0036】
2L4ツ口フラスコに、2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−メタノール1057.2g(8.0モル)と水酸化ナトリウム1.6g(0.04モル)を仕込み、100℃まで昇温後、減圧脱水し、アルコラート化を行った後、60℃まで冷却したものに、上記エステル化物300.3g(1.0モル)を加え、2時間攪拌してエステル交換反応を行った後、50%硫酸にて中和した。次に1.33kPa、80〜120℃で減圧蒸留を行い、水と2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−メタノールを留去した。このものを水洗し、安息香酸α−モノグリセリドアセタール456.4gを得た。GC純度89.5%。
【0037】
得られたα−モノグリセリドアセタール440gに酸性白土(ガレオンアースNV、水澤化学(株)製)13.2gを仕込み、80℃、29.3kPaにおいて、1時間あたりα−モノグリセリドアセタールに対して6%の水蒸気を反応系内に導入し、生成するアセトンと過剰な水蒸気を系外に除去しながら、脱アセタール化反応を6時間行った後、酸吸着剤(KW600S、協和化学(株)製)を0.44g加えた後、1.33kPa、70℃で0.5時間脱水を行い、濾過し、下記式(9)で表される安息香酸モノグリセリド336.9gを得た。GC純度88.1%。トータル反応時間22時間。
【0038】
【化10】
【0039】
実施例5:オルト−ニトロ安息香酸モノグリセリドの合成
1L4ツ口フラスコにオルト−ニトロ安息香酸を350.91g(2.1モル)とグリセリンを96.7g(1.05モル)加え、250℃、常圧で3時間攪拌して反応させた。そして、オルト−ニトロ安息香酸/グリセリン=2/1(モル比)のエステル化物を406.5g得た。
【0040】
2L4ツ口フラスコに、2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−メタノール1057.2g(8.0モル)と水酸化ナトリウム1.6g(0.04モル)を仕込み、100℃まで昇温後、減圧脱水し、アルコラート化を行った後、60℃まで冷却したものに、上記エステル化物390.3g(1.0モル)を加え、2時間攪拌してエステル交換反応を行った後、50%硫酸にて中和した。次に1.33kPa、80〜120℃で減圧蒸留を行い、水と2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−メタノールを留去した。このものを水洗し、オルト−ニトロ安息香酸α−モノグリセリドアセタール540.1gを得た。GC純度90.4%。
【0041】
得られたα−モノグリセリドアセタール530gに酸性白土(ガレオンアースNV、水澤化学(株)製)15.9gを仕込み、80℃、29.3kPaにおいて、1時間あたりα−モノグリセリドアセタールに対して6%の水蒸気を反応系内に導入し、生成するアセトンと過剰な水蒸気を系外に除去しながら、脱アセタール化反応を6時間行った後、酸吸着剤(KW600S、協和化学(株)製)を0.53g加えた後、1.33kPa、70℃で0.5時間脱水を行い、濾過し、下記式(10)で表されるオルト−ニトロ安息香酸モノグリセリド421.0gを得た。GC純度89.3%。トータル反応時間20時間。
【0042】
【化11】
【0043】
比較例1
フラスコに、グリセリン350.0g(3.80モル)とメチルエチルケトン399.59g(5.70モル)とカプリル酸328.82g(2.28モル)とヘプタン267.73gとパラトルエンスルホン酸7.23g(0.038モル)を仕込み、86〜107℃にて、反応で生成する水を除去しながら14時間反応を行った。次に48.5%水酸化カリウム溶液により中和を行った後、6.66kPa、50〜100℃にてヘプタンと過剰なメチルエチルケトンを減圧留去した後、副生するグリセリンアセタールを0.67kPaで100〜140℃にて減圧留去した。その後、残液に対し50〜60℃にて水洗を3回行い、次に、50℃、0.67kPaにて脱水を行った後、α−モノグリセリドアセタール450.3g(2.06モル)を得た。収率90.47%。ガスクロ純度92.1%。
【0044】
得られたモノグリセリドアセタール220gに酸性白土(ガレオンアースNV、水澤化学(株)製)13.2gを仕込み、70℃、13.3kPaにおいて、1時間あたりモノグリセリドアセタールに対して10%の水蒸気を反応系内に導入し、生成するアセトンと過剰な水蒸気を系外に除去しながら、脱アセタール化反応を6時間行った後、酸吸着剤(KW600S、協和化学(株)製)を6.6g加えた後、6.65kPa、70℃で0.5時間脱水を行い、濾過し、モノグリセリド146.0gを得た。ガスクロ純度89.8%。トータル合成時間32時間。
Claims (5)
- 一般式(1)で表される原料グリセリドと、一般式(2)で表されるグリセリンのアセタール化物とのエステル交換反応を行い、一般式(3)で表されるモノグリセリドアセタールを含有する混合物を得、該混合物からグリセリンのアセタール化物及びグリセリンを除去した後、加水分解により脱アセタール化を行う、一般式(4)で表されるモノグリセリドの製造法。
(i)水素原子、あるいは
(ii)置換基として水酸基、ハロゲン原子、ニトリル基、ニトロ基及びチオール基から選ばれる少なくとも1つを有する炭素数2〜22の脂肪酸;安息香酸;置換基として水酸基、ハロゲン原子、ニトリル基、ニトロ基及びチオール基から選ばれる少なくとも1つを有する安息香酸;炭素数1〜100のアルコールにエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから選ばれるアルキレンオキサイドを付加した付加物(アルキレンオキサイド付加モル数1〜20)のカルボキシレート、から成る群から選択されるカルボン酸のカルボキシ基部分から水酸基を1つ除いた残基(アシル基)
を示し、3つのAは互いに同一でも異なっても良い。ただし、Aは同時に全てが水素原子にはならない。]
- 原料グリセリドがトリグリセリドを含有するものである請求項1記載の製造法。
- エステル交換反応を触媒存在下で行う請求項1又は2記載の製造法。
- グリセリンのアセタール化物の除去を留去により行う請求項1〜3のいずれかの項記載の製造法。
- グリセリンの除去を水性溶媒による抽出で行う請求項1〜4のいずれかの項記載の製造法。
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