JP4601321B2 - 厚鋼板の切断装置 - Google Patents
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Description
パンチカット方式においては、刃物が厚鋼板を切断していくにしたがって、厚鋼板の長手方向切断線とそれに交わる幅方向切断線とのコーナー部(交点部)へ向かう材料流れが発生し、それに起因した圧縮応力が発生し切断不良が起こる。加えて、材料流れによるカニリ(バリ)やティアマークと言われる品質不良が発生し、厚鋼板製造工程での大きな問題となっていた。
そこで、本発明は、上記問題点に鑑み、切断不良痕が発生しないような厚鋼板の切断装置を提供することを目的とする。
すなわち、本発明における課題解決のための技術的手段は、長手方向と幅方向とを有する厚鋼板の幅方向側部をパンチカット方式でシャー切断する厚鋼板の切断装置において、前記厚鋼板の長手方向切断線と幅方向切断線とが成すコーナー部の角度であるコーナー角を、当該厚鋼板の切断面に切断不良痕が発生しない角度としていることを特徴とする。
前述したコーナー部への材料流れ、及びそれに起因するコーナー部での切断不良痕の発生はパンチカット方式特有のものであり、フリーカット方式すなわち切断線にコーナー部が存在しない切り方では、カエリ等の切断不良痕は発生しないことが現場の実績より明らかとなっている。そこで、本願出願人は、パンチカット方式においても、切断線に存在するコーナー部の角度を180度に近づけ直線状とし、その部分のみに着目すれば、フリーカット方式に近づくようなシャー切断を行うことを考えた。
その結果として、切断不良痕を防ぐためのコーナー角は、好ましくは、コーナー角を110°以上180°未満の範囲とするよいことを明らかにした。
しかしながら、コーナー角が直線に近い状態であると、次の耳部切断を行う際、すなわち、前記コーナーを切断開始点とした厚鋼板の幅方向側部のシャー切断を行うに際し、材料逃げが発生して刃物が厚鋼板に食い込むことができず、切り込み不良が発生して、切断線ズレや刃物の焼付きなどが発生する。
好ましくは、前記コーナー角は170°以下にするとよい。
これにより、切断開始時に、刃物で厚鋼板の耳部を確実に曲げ、切断を開始することができるようになる。
なお、本発明における課題解決のための最も好ましい技術的手段として、長手方向と幅方向とを有する厚鋼板の幅方向側部をパンチカット方式でシャー切断する刃物を備えた厚鋼板の切断装置において、前記刃物は、厚鋼板の幅方向側部を長手方向切断線に沿って切断する長手方向刃先と、幅方向切断線に沿って切断する幅方向刃先とを有し、前記厚鋼板の切断面に切断不良痕が発生することを防ぐべく、前記長手方向刃先と幅方向刃先とが成すコーナー部の角度であるコーナー角を110°以上180°未満の範囲としていることを特徴とする厚鋼板の切断装置を採用してもよい。
図1に示す如く、厚板圧延装置(図示せず)により圧延が終了した厚鋼板1(圧延材)は、切断装置2に搬入され、幅方向端部の不定形部すなわち耳部3が切り落とされる。本切断装置2は、上下一対の刃物4,5にて厚鋼板1の耳部3を長手方向と幅方向とに同時に切断するパンチカット方式を採用している。
切断装置2は帯状の厚鋼板1の幅方向両側に配置された一対の切断ドラム6,6を有している。この切断ドラム6の回動軸芯は、厚鋼板1の長手方向を向いており、その周壁には前記軸芯に平行となっているシャー切断用の上部刃物4が取り付けられている。この上部刃物4は、切断ドラム6が前記軸芯周りに回動することで上下に動き、厚鋼板1に上から押しつけられる。
図2には、本発明にかかる切断装置2の上部刃物4の形状が示してあり、上部刃物4は厚鋼板1を長手方向に切断する長手方向刃先7と、長手方向刃先7の先端から平面視で厚鋼板1外側に斜め方向を向いている幅方向刃先8と、幅方向刃先8の先端から厚鋼板1の外側に逃げる逃げ刃先9とを有している。かかる逃げ刃先9を設けた理由については後述する。
図3の斜線は、切断装置2で今まさに切断されようとしている耳部3を示している。厚鋼板1が図の右から左へ移送されることで、次の耳部3(斜線部の右側の耳部3)が切断される。
以下、適切なコーナー角θ1の設定に関して述べる。
図4には、図3のA−Aの断面図が示されており、長手方向切断線L1に沿って厚鋼板1が剪断されていく様子が示されている。
その後、引っ張り応力が破断応力以上となった所から、材料内に亀裂が発生しそれが進展してゆく。(図4(b))
最終的に、上下方向から進展してきた亀裂がつながったときに、厚鋼板1の切断が完了する。(図4(c))
以上のことからわかるように、厚鋼板1のシャー切断においては、刃物4,5直下の材料に引っ張り応力が適切に発生することが必要である。
また、材料流れに伴う圧縮応力により、コーナー部CNにおける引っ張り応力が小さいものとなり、破断に必要な引っ張り応力が十分確保できなくなる。これは、コーナー部CNの切断不良につながる。
そこで、パンチカット方式においても、コーナー部CNの角度をなるべく直線状に近づけ、その部分のみに着目した場合、近似的なフリーカット方式のようなシャー切断となるようにすればよいことになる。
図の横軸はコーナー角θ1度であって、縦軸には重なり体積比を示している。重なり体積比とは、長手方向切断線L1を形成する方形の刃物と幅方向切断線L2を形成する方形の刃物とが重なる部分の体積を意味するものであって、コーナー部CNへの材料流れを程度を示す指標となる。重なり体積比が大きいほど、材料流れが大きいことを意味する。
かかる破線グラフの斜線部分においては、ティアマーク等の切断不良痕の発生が認められ、それ以外の所では切断不良痕の発生は認められなかった。
しかしながら、コーナー角θ1が180°に近い場合、前記コーナー部CNを再切断開始点とした厚鋼板1の側部のシャー切断を行う(二度切りを行う)際に、材料逃げや刃物4,5の横方向逃げが発生して、例えば上部刃物4自体が厚鋼板1に食い込むことができない等の切り込み不良が発生する。この現象は切断線L1,L2ズレや刃物4,5の焼付きなどの原因ともなりうる。
図6には、コーナー部CNを二度切りする際に、切り込み不良が発生する様子が模式的に示している。
コーナー部CNの角部に位置する三角柱状の先端部B1を考えると、二度切りの際には、このB1が材料が製品側に引き込まれて曲げが生じず、上部刃物4が食い込まない状況が発生する。かかる先端部B1は、上部刃物4により下方側に流されるように塑性変形され、切断後のカエリ発生の原因となる。
この切断可能幅B2の位置を、なるべくコーナー部CNの角部近傍にもってゆき、先端部B1の体積を小さくすることで、材料流れを起こす先端部B1の体積を極力小さくし、刃物がなるべく早期に材料に食い込むようにすることができる。切断可能幅B2を大きくするためには、コーナー角θ1を可能な限り90°に近づけるすなわち180°としないようすることが好ましい。
図の横軸はコーナー角θ1度であって、縦軸には二度切り部体積が示してある。
かかる実線グラフの斜線部分においては二度切りによるカエリが発生し、それ以外においては発生していないことが明らかとなっている。つまり、前記コーナー角θ1を170°以下にすることにより、コーナー部CNの切断開始時に、刃物4,5で厚鋼板1の耳部3を確実に曲げ、再切断を開始することができるようになる。
もっとも好ましいコーナー角θ1は、前記角度範囲のほぼ中間値である145°であることが判明している。
このコーナー角θ1を採用して刃物4,5形状を決めたものが、図3の刃物4,5である。
θ2の部分には、従来通り切断不良痕が発生することになるが、切断不良痕は次のシャー切断により切り取られるスクラップ上に位置するため、何ら問題はない。
これからわかるように、コーナー角θ1が145°であれば、切断不良痕(ティアマーク、カエリ)は解消すると共に、タング痕は改善され、さらに、二度切りにおける切断不良も発生しないことが明らかとなった。
2 切断装置
4 上部刃物
5 下部刃物
CN コーナー部
L1 長手方向切断線
L2 幅方向切断線
θ1 コーナー角
Claims (2)
- 長手方向と幅方向とを有する厚鋼板の幅方向側部をパンチカット方式でシャー切断する刃物を備えた厚鋼板の切断装置において、
前記刃物は、厚鋼板の幅方向側部を長手方向切断線に沿って切断する長手方向刃先と、幅方向切断線に沿って切断する幅方向刃先とを有し、
前記厚鋼板の切断面に切断不良痕が発生することを防ぐべく、前記長手方向刃先と幅方向刃先とが成すコーナー部の角度であるコーナー角を110°以上180°未満の範囲としていることを特徴とする厚鋼板の切断装置。 - 前記コーナー部を再切断の開始点とするシャー切断を行うに際して、切断開始時に切り込み不良が発生することを防ぐべく、前記コーナー角を170°以下に設定していることを特徴とする請求項1に記載の厚鋼板の切断装置。
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