JP6021467B2 - 溶接方法、金属部材補修方法及び台座部形成方法 - Google Patents
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Description
すなわち、本発明に係る溶接方法は、複数の層のビードを重ねることによって余盛部を形成し、前記余盛部の端部に位置する母材の硬化域を焼き戻す溶接方法であって、第1の層の第1ビードの上に施される第2の層の第2ビードを形成する際に母材において生じ、焼き戻しに適した温度を有する軟化域の幅を、前記第2ビードを形成する際の入熱量に基づいて算出し、前記余盛部の端部における前記第2ビードの前記第1ビードに対する高さ方向のずらし量又は幅方向のずらし量を、算出された前記軟化域の幅に基づいて決定するステップと、前記ずらし量に基づいて、前記第2ビードを形成するステップとを含む。
この発明によれば、溶接においてビードを形成する際に、焼き戻しに適した温度を有する軟化域が母材において生じるところ、第1ビードの上に施される第2ビードの第1ビードに対する高さ方向のずらし量又は幅方向のずらし量は、第2ビードの軟化域に基づいて決定される。そして、決定されたずらし量に基づいて第2ビードが形成されることから、第1ビードを形成する際に生じた母材における硬化域を焼き戻すことが可能になる。
この発明によれば、第2ビードの第1ビードに対する高さ方向のずらし量又は幅方向のずらし量が0mmであることから、ビードの形状に応じて、効率的に母材を焼き戻すことができる。
この発明によれば、複数のビードを一方向に形成することにより、金属部材を焼き戻すことができ、形成された複数のビードを除去することよって、焼き戻された金属部材を得ることができる。
この発明によれば、第1ステップで母材において硬化域が生じた場合でも、硬化域と重なるように複数のビードを閉ループ形状に形成することにより、金属部材を焼き戻すことができる。
この発明によれば、複数のビードを閉ループ形状に形成することにより、金属部材を焼き戻すことができ、かつ、焼き戻された状態の金属部材に台座部を形成することができる。
この発明によれば、第1ステップで複数のビードを一方向に形成することにより、金属部材を焼き戻すことができ、第2ステップで形成された複数のビードを除去することよって、焼き戻された金属部材を得ることができる。そして、第1ステップで母材において硬化域が生じた場合でも、第3ステップで硬化域と重なるように複数のビードを閉ループ形状に形成することにより、金属部材を焼き戻すことができ、かつ、第4ステップで焼き戻された状態の金属部材に台座部を形成することができる。
[焼き戻し溶接方法]
まず、本実施形態に係る焼き戻し溶接方法について説明する。
本実施形態に係る焼き戻し溶接方法は、溶接等によって加熱処理されて変態が生じやすい炭素鋼や低合金鋼などの金属部材を焼き戻す際に適用される。例えば、溶接によって金属部材を補修する場合や金属部材表面に台座部を形成する場合に用いられる。特に、該当する金属部材を取り外すことができない既設構造物での焼き戻し作業に適している。
ここで、T:温度(K)、k:熱拡散率(cm2/min)、t:時間(min)、c:比熱(kJ/kg・K)、ρ:密度(kg/cm3)、r:距離(cm)、Q:単位長さ当たりの入熱(kJ/cm)(=電流(A)×電圧(V)÷速度(cm/min))である。
R=r(θm=600℃)−r(θm=900℃) ・・・(4)
で表される。なお、最高到達温度は、入熱によって変化するが、上記式(1)と式(3)では溶接条件が変化しても対応でき、都度軟化域13の幅Rを求めることができる。
R≧X≒H
具体的には、溶接時のワイヤ供給量を制御して、各ビード2の高さHが、寸法R以下となるように制限する。これにより、第2の層のビード2による軟化域13が、第1層のビード2による硬化域12に重なり、第2の層のビード2を形成する際に硬化域12を焼き戻すことができる。
上述のとおり決定されたずらし量X1を用いて、第1の層の上に第2の層のビード2を形成する。
このようにして、複数の層のビード2を形成していくことによって、従来の重ね方では焼き戻されにくかった非定常部11を焼き戻すことができる。
次に、上述した焼き戻し溶接方法を用いて、金属部材の部分的な損傷部位を補修する方法について説明する。
まず、図9に示すように、損傷部を含む領域を、溶接によって補修が可能になる形状にするため、金属部材のうち損傷部を含む領域を除去して開先部14を形成する。
その後、上述した焼き戻し溶接方法でずらし量X1,X2を決定し、決定したずらし量X1,X2で、図10に示すように、複数のビード2を一方向に形成する肉盛溶接を実施する。その結果、母材3の定常部だけでなく非定常部11Aにおいても焼き戻すことができる。但し、各ビード2の始端及び終端に該当する領域の母材3は、非定常部11Bになるため、非定常部11Bに対して焼き戻しを施す必要がある。
次に、上述した焼き戻し溶接方法を用いて、金属部材表面に台座部を形成する方法について説明する。
図19に示すように、台座部4は、金属部材にパイプ5等を接続する際に、金属部材表面に設けられる。本実施形態では、上述した溶接後熱処理が不要な溶接方法を用いることから、新たに台座部4を形成したとしても、別途の焼き戻しが不要になる。従来、金属部材に直接パイプ5等を溶接によって接続すると焼き戻しが必要であった。一方、台座部4が設けられることによって、金属部材が熱によって変態することがなくなるため、パイプ5等を接続する際も、金属部材における焼き戻しが不要になる。
まず、溶接後熱処理が不要な材料が存在する領域を、溶接によって設置することが可能になる形状にするため、図9に示すように、金属部材のうち所定領域を除去して開先部14を形成する。
その後、上述した焼き戻し溶接方法でずらし量X1,X2を決定し、決定したずらし量X1,X2で、図10に示すように、複数のビード2を一方向に形成する肉盛溶接を実施する。このとき、肉盛溶接する際の溶加材は、熱によって組織が変態しないオーステナイト単層などの材料を用いる。その結果、開先部14内部は、溶接後熱処理が不要な材料によって埋められる。
その結果、円周形状の余盛部1の外周部分における非定常部11Cにおいて焼き戻すことができる。また、余盛部1の内周部分については、予め溶接後熱処理が不要な材料が存在することから、図12に示すように、従来のずらし量でビードを重ねても焼き戻しが不要である。その後、図20に示すように、円周の内周部分を肉盛溶接することによって台座部を形成する。
2 ビード
3 母材
10 定常部
11 非定常部
Claims (6)
- 複数の層のビードを重ねることによって余盛部を形成し、前記余盛部の端部に位置する母材の硬化域を焼き戻す溶接方法であって、
第1の層の第1ビードの上に施される第2の層の第2ビードを形成する際に母材において生じ、焼き戻しに適した温度を有する軟化域の幅を、前記第2ビードを形成する際の入熱量に基づいて算出し、
前記余盛部の端部における前記第2ビードの前記第1ビードに対する高さ方向のずらし量又は幅方向のずらし量を、算出された前記軟化域の幅に基づいて決定するステップと、
前記ずらし量に基づいて、前記第2ビードを形成するステップと、
を含む溶接方法。 - ビードを形成する際に生じる硬化域が前記母材と重なるか否かを判断するステップと、
前記硬化域が前記母材と重ならない場合、
前記第1ビードに対する前記第2ビードの高さ方向のずらし量又は幅方向のずらし量を0mmに決定するステップを更に含む請求項1に記載の溶接方法。 - 請求項1又は2に記載の溶接方法を用いて、複数のビードを一方向に形成する第1ステップと、
前記第1ステップで形成された前記複数のビードを除去する第2ステップと、
を含む金属部材補修方法。 - 前記第1ステップで前記複数のビードを形成する際に前記母材において生じた硬化域と重なるように、請求項1又は2に記載の溶接方法を用いて、複数のビードを閉ループ形状に形成する第3ステップを更に有する請求項3に記載の金属部材補修方法。
- 請求項1又は2に記載の溶接方法を用いて、前記母材上に複数のビードを閉ループ形状に形成するステップと、
閉ループ形状に形成された領域の内部に複数のビードを形成して台座部を形成するステップと、
を含む台座部形成方法。 - 請求項1又は2に記載の溶接方法を用いて、前記母材上に複数のビードを一方向に形成する第1ステップと、
前記第1ステップで形成された前記複数のビードを除去する第2ステップと、
請求項1又は2に記載の溶接方法を用いて、前記母材上に複数のビードを閉ループ形状に形成する第3ステップと、
閉ループ形状に形成された領域の内部に複数のビードを形成して台座部を形成する第4ステップと、
を含む台座部形成方法。
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