JP5909097B2 - 溶接方法 - Google Patents

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Description

本発明は、溶接母材上に形成した初層の溶接ビードの上に残層の溶接ビードを重ね溶接し、初層の溶接ビードを形成した時に前記溶接母材に生じた熱影響部を、残層の溶接ビードの重ね溶接時における溶接熱によって焼き戻すようにした、例えばテンパービード溶接等の溶接方法に関するものである。
原子炉圧力容器、石油やガス等のパイプライン、あるいは海洋構造物等において、炭素鋼や低合金高張力鋼からなる鉄鋼構造体における腐食や亀裂等の欠陥部の補修方法として、欠陥部をグラインダー等で抉り取った後、TIG溶接等により肉盛り溶接する補修方法が採られている。このような補修を行う場合には、肉盛り溶接を行う際の溶接熱の影響により材料の性質が変化してしまう。このような熱影響部でも、特に高温まで加熱された領域は、組織の変態が生じ、一般に焼き入れされた組織となって部分的に硬化してしまう。
このように硬化した部分は応力腐食割れや脆性破壊等の起点になる虞があるため、通常は、硬化した部分を熱処理して焼き戻しすることにより、熱影響部の機械的特性を改善している。しかしながら、既設プラント等の補修では、熱処理が実施不可能な場合がある。そのため、溶接後の熱処理を省略可能な溶接技術の確立が望まれている。
溶接後の熱処理を不要とする溶接技術として、テンパービード溶接が知られている。テンパービード溶接では、例えば、図9に示すように溶接母材51上に初層ビード52(下地層)を溶接した後、図10に示すように初層ビード52上に複数の残層ビード53を重ねて溶接する。初層ビード52を形成する際には、溶接母材51の溶接部近傍が急速に加熱冷却されることにより焼き入れ状態となり、熱影響部(硬化域)54が形成されるが、この熱影響部54は、初層ビード52の上に残層ビード53を重ねて溶接する際の溶接熱により焼き戻される。よって、テンパービード溶接では、肉盛溶接をすると同時に、溶接母材51中に発生した硬化域を焼き戻して補修部位を強化することができる。
溶接においては、通常、ビードが垂れ落ちることを防止するため、図10に示すように、残層ビード53は初層ビード52の端部より内側に重ね溶接される。このように、初層ビード52の端部より内側に残層ビード53を重ね溶接した場合、初層ビード52の形成時に生成された溶接母材51の硬化域(熱影響部54)のうち、幅方向中央部の領域(定常部)54aを焼き戻すことはできるものの、硬化域の外縁部54bには残層ビード53の溶接時の溶接熱が届きにくくなるため、硬化域が残留するという問題がある。
上記問題を解決する方法が、特許文献1に開示されている。特許文献1では、初層ビードを縁取る形状の当て材を母材上に設置し、この当て材の内面を基準として初層ビードに重なるように溶接して残層ビードを形成する。そのようにすることで、母材を溶融させることなく初層ビードの端部上に残層ビードを溶接することができるため、確実に硬化域端部を焼き戻すことが可能となる。
特開2007−130654号公報
しかしながら、溶接による補修を行う箇所は、必ずしも平坦で作業性が良いとは限らないため、上述のように当て材を用いて初層ビードの硬化域端部を焼き戻すことができない場合がある。また、当て材を溶接部に着脱する手段や工程が別途必要になり、補修作業が煩雑化するとともに作業時間が長引くという問題がある。
本発明は、かかる従来技術の問題を解決するためになされたものであって、簡潔な構成により、初層の溶接ビードの形成時に溶接母材に発生した熱影響部を、残層の溶接ビードの重ね溶接時に確実に焼き戻し可能にし、溶接母材の健全性を良好に保つことのできる溶接方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
即ち、本発明に係る溶接方法の第1の態様は、溶接母材上に形成した初層の溶接ビードの上に残層の溶接ビードを重ね溶接し、前記初層の溶接ビードを形成した時に前記溶接母材に生じた熱影響部を、前記残層の溶接ビードの重ね溶接時における溶接熱によって焼き戻すようにした溶接方法であって、前記残層の溶接ビードの最初のパスと最後のパスの形成時に、溶接トーチを、前記最初のパスと前記最後のパスの幅方向内側に傾斜させながら走査して前記溶接ビードを形成することにより、前記最初のパスと前記最後のパスの幅方向側と側とで前記溶接母材に対する溶接熱の加わり方に差を生じさせ前記溶接熱の加わり方が大きい側を前記初層の溶接ビードの幅方向外縁部の領域に重ねるようにして前記外縁部の領域に熱を加えながら前記残層の溶接ビードを形成し、前記残層の溶接ビードの形成時における前記溶接トーチの傾斜角度α n+1 は次式(1),(2)より求めることを特徴とする。
α n+1 <90°−θ ・・・(1)
tanθ =Σh /Σd ・・・(2)
但し、nは溶接ビードの層数、hは溶接ビードの積層高さ、dは溶接ビードの積層ピッチである。
上記方法によれば、残層の溶接ビードの幅方向の一側と他側とで溶接母材に対する溶接熱の加わり方が異なるため、初層の溶接ビードの上に残層の溶接ビードを重ね溶接する時に、溶接母材に対する溶接熱の加わり方が大きい側によって初層の溶接ビードの幅方向外縁部の領域を加熱しながら溶接することにより、残層の溶接ビードの形成と同時に溶接母材の熱影響部の焼き戻しを行うことができる。したがって、当て材等を用いる必要なく、簡素な構成により、溶接母材の熱影響部を確実に焼き戻し可能にし、溶接母材の健全性を良好に保つことができる。
また、溶接トーチの保持姿勢を調整するだけで、溶接ビードの幅方向の一側と他側とで溶接母材に対する溶接熱の加わり方に差を生じさせることができ、前記第1の態様においては、溶接ビードを形成しながら、溶接母材に潜在する熱影響部の焼き戻しを容易に行うことができる。
さらに、残層の溶接ビードの最初のパスと最後のパスの形成時に、初層の溶接ビードの形成時に溶接母材に形成された熱影響部を簡単に焼き戻すことができる。
しかも、残層の溶接ビードの各層における最初のパスおよび最後のパスを溶接する際に、それぞれ溶接ビードの幅方向の外側に熱が掛りやすくなり、初層の溶接ビードを形成した時に溶接母材に生じた熱影響部を確実に焼き戻すことができる。
発明に係る溶接方法の第の態様は、前記第の態様において、前記残層の溶接ビードを複数層形成する場合において、上側の層に向かうにつれて、前記溶接トーチを前記溶接ビードの幅方向内側に傾斜させる角度を大きくすることを特徴とする。
上記方法によれば、初層の溶接ビードを形成する時に溶接母材に形成された熱影響部に対して、残層の溶接ビードを形成する時の熱が掛りやすくなる。即ち、1層目の残層溶接ビードを形成する時のみに限らず、2層目以降の残層溶接ビードを形成する時にも、その熱を溶接母材の熱影響部に掛けることができ、これによって溶接母材の熱影響部の焼き戻しを確実に行い、溶接母材の健全性を良好に保つことができる。
発明に係る溶接方法の第の態様は、前記第または第の態様において、前記初層の溶接ビードの最初のパスと最後のパスの形成時に、前記溶接トーチを前記溶接ビードの幅方向外側に傾斜させながら走査することを特徴とする。
上記方法によれば、初層の溶接ビードの形成時に、溶接母材に発生する熱影響部の幅を狭めることができる。これにより、残層の溶接ビードの形成時に、溶接トーチの熱によって、溶接母材に潜在する熱影響部をより確実に焼き戻すことができる。
発明に係る溶接方法の第の態様は、前記第から第のいずれかの態様において、前記溶接トーチを保持してアーク長を制御するAVC装置のアーク長制御軸に対して、前記溶接トーチの傾斜角度調整軸を別軸にし、前記溶接トーチを傾斜させた状態で前記アーク長を変更しても溶接位置が変化しないようにすることを特徴とする。
上記方法によれば、溶接トーチを傾斜させた状態でアーク長を調整する場合に、溶接位置が溶接方向に直交する方向にずれることがない。このため、溶接トーチにより溶接される位置を正確に保ちながら溶接ビードを形成し、同時に溶接母材に潜在する熱影響部を焼き戻しすることができる。
以上のように、本発明に係る溶接方法によれば、簡素な構成により、初層の溶接ビードの形成時に溶接母材に発生した熱影響部を、残層の溶接ビードの重ね溶接時に確実に焼き戻して溶接母材の健全性を良好に保つことができる。
本発明の参考実施形態を示す溶接部の縦断面図であり、(a)は溶接トーチを溶接進行方向と直交方向の一側に傾斜した状態を示す図、(b)は溶接トーチを傾斜させない状態を示す図、(c)は溶接トーチを溶接進行方向と直交方向の他側に傾斜した状態を示す図である。 本発明の第1実施形態を示すテンパービード溶接部の縦断面図であり、(a)は初層ビードが形成された状態を示す図、(b)は一層目の残層ビードが形成された状態を示す図、(c)は残層ビードの形成が完了した状態を示す図である。 本発明の第2実施形態を示すテンパービード溶接部の縦断面図であり、(a)は初層ビードが形成された状態を示す図、(b)は一層目の残層ビードが形成された状態を示す図、(c)は残層ビードの形成が完了した状態を示す図である。 本発明の第3実施形態を示すテンパービード溶接部の縦断面図であり、(a)は初層ビードが形成された状態を示す図、(b)は一層目の残層ビードが形成された状態を示す図、(c)は残層ビードの形成が完了した状態を示す図である。 本発明の第4実施形態を示す、テンパービード溶接部における溶接ビードの積層ピッチと積層高さと溶接トーチの傾斜角との関係図である。 本発明の第5実施形態に係る溶接トーチとAVC装置を溶接方向に沿う視線で見た図であり、(a)〜(c)は溶接トーチを傾斜させない状態でアーク長を変化させた状態を示す図である。 (a)〜(c)は、図6に示す溶接トーチとAVC装置において、溶接トーチを傾斜させた状態でアーク長を変化させた状態を示す図である。 従来の溶接トーチとAVC装置を溶接方向に沿う視線で見た図であり、(a)〜(c)は溶接トーチを傾斜させた状態でアーク長を変化させた状態を示す図である。 従来のテンパービード溶接において、初層ビードが形成された状態を示す縦断面図である。 従来のテンパービード溶接において、残層ビードの形成が完了した状態を示す図である。
以下に、本発明の複数の実施形態について説明する。
[参考実施形態]
まず、本発明の参考実施形態について、図1を参照しながら説明する。
図1(a)〜(c)は、本発明の参考実施形態を示す溶接部の縦断面図である。ここでは、例えばTIG溶接を行う場合を例示する。
一般には、図1(b)に示すように、溶接母材1に対して溶接トーチ2を垂直に立てた状態で、図面に対して垂直な方向に走査して溶接ビード3を形成している。この時の溶接ビード3の断面形状と、溶接母材1への溶け込み量と、溶接母材1に対する溶接熱4の加わり方は、溶接ビード3の幅方向の一側と他側とで略対称な形状となる。
これに対して、図1(a)または(c)に示すように、溶接トーチ2を、溶接ビード3の幅方向の一側に傾斜させながら、つまり溶接進行方向に対して直交する方向の一側に傾斜させながら走査して溶接ビード3を形成することにより、溶接ビード3の幅方向の一側と他側とで溶接母材1に対する溶接熱4の加わり方(熱の及ぶ範囲)に差を生じさせて非対称にし、溶接熱4の加わり方が大きい側で溶接母材1に潜在する図示しない熱影響部の焼き戻しが行われるように溶接ビード3を形成することができる。
なお、溶接ビード3の幅方向の一側と他側とで溶接母材1に対する溶接熱4の加わり方(熱の及ぶ範囲)を非対称にする方法としては、本参考実施形態のように溶接トーチ2を溶接ビード3の幅方向の一側に傾斜させるのみに限らず、例えば溶接トーチ2の口金の形状を左右非対称にする、あるいは不活性ガスの噴出させる方向と量を調整する、といった手法によって溶接熱4の加わり方を非対称にしてもよい。
[第1実施形態]
次に、本発明の第1実施形態について、図2を参照しながら説明する。
図2(a)〜(c)は、本発明の第1実施形態を示すテンパービード溶接部の縦断面図である。ここでは、原子炉圧力容器等の鉄鋼構造体において、腐食や亀裂等の欠陥部をグラインダー等で抉り取った後に、TIG溶接により肉盛り溶接する場合について説明する。
まず、図2(a)に示すように、溶接母材11上に溶接トーチ12によって複数列の初層ビード13を溶接する。この時は、溶接母材11に対して溶接トーチ12を垂直に立てた状態で、図面に対して垂直な方向に走査して各初層ビード13を形成する。これらの初層ビード13が形成された後は、溶接母材11の溶接部近傍が急速に加熱冷却されることにより焼き入れ状態となり、熱影響部(硬化域)14が形成される。この熱影響部14は、組織の変態が生じた硬化域であり、このままでは応力腐食割れや脆性破壊等の起点になる虞がある。
次に、図2(b)に示すように、初層ビード13の上に複数の残層ビード15を重ねて溶接する。ビードの垂れ落ちを防止するため、残層ビード15を初層ビード13の端部より内側に重ね溶接する。例えば、初層ビード13のパス数(ビードの形成本数)が8であるとすれば、残層ビード15のパス数を7とし、残層ビード15の幅を初層ビード13の幅よりも狭くする。
そして、図2(b)および(c)に示すように、残層ビード15の最初のパスと最後のパスの形成時には、溶接トーチ12を残層ビード15の幅方向内側に傾斜させながら走査する。残層ビード15の中間部のパスの形成時には溶接トーチ12を垂直に立てて走査する。図2(c)には、残層ビード15を5層形成し終わった状態が示されている。これら5層の残層ビード15の各層における最初のパスと最後のパスの形成時には、全て溶接トーチ12を幅方向内側に傾斜させて走査する。
このようにして残層ビード15を形成することにより、初層ビード13の形成時に発生した熱影響部14に、残層ビード15の形成時の溶接熱が初層ビード13を介して加わり、熱影響部14が約600℃程度に1回以上加熱される。これにより、熱影響部14が焼き戻され、硬化していた組織が靭性のある通常の組織に戻される。
特に、残層ビード15の各層における最初のパスと最後のパスの形成時に溶接トーチ12を溶接ビードの幅方向内側に傾斜させながら走査することにより、傾斜させないで走査した場合に比べて、残層ビード15の幅方向の一側と他側とで溶接母材11に対する溶接熱の加わり方に差を生じさせ、溶接熱の加わり方が大きい側を初層ビード13の幅方向外縁部の領域に重ねて、この外縁部の領域に熱を加えながら残層ビード15を形成することができる。
これにより、初層ビード13の幅方向外縁部の領域が良く加熱されるため、熱影響部14を全幅に亘って簡単に焼き戻しすることができ、従来のように熱影響部14の両側縁部において硬化域が残留するという問題を排除することができる。こうして、硬化した熱影響部を確実に焼き戻して靭性のある組織に戻し、強度を確保して、この部分が応力腐食割れや脆性破壊等の起点になる懸念を排除して、溶接母材11の健全性を良好に保つことができる。
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について、図3を参照しながら説明する。
図3(a)〜(c)は、本発明の第2実施形態を示すテンパービード溶接部の縦断面図である。ここで、図3(a)に示す初層ビード13の形成方法と、図3(b)に示す残層ビード15の第1層の形成方法は、図2(a),(b)に示す第1実施形態のものと同一であるため、説明を省略する。
図3(c)に示すように、残層ビード15を形成していく時には、第1実施形態の場合と同様に、残層ビード15の各層の最初のパスと最後のパスの形成時に溶接トーチ12を残層ビード15の幅方向内側に傾斜させながら走査するが、その傾斜角度を、上側の層に向かうにつれて大きくしていく。即ち、残層ビード15の第1層目を形成する時の溶接トーチ12の傾斜角度をθ1とし、残層ビード15の最終層を形成する時の溶接トーチ12の傾斜角度をθnとした場合に、θ1<θ2,…,<θnとなるように傾斜角度を大きくしていく。
このように、残層ビード15の上側の層に向かうにつれて溶接トーチ12の傾斜角度を大きくしていくことにより、初層ビード13を形成する時に溶接母材11に形成された熱影響部14に対して、残層ビード15を形成する時の熱が掛りやすくなる。即ち、残層ビード15の1層目を形成する時に加えて、2層目以降を形成する時に、さらにその熱を溶接母材11の熱影響部14に掛けることができる。これにより、熱影響部14の焼き戻しを確実に行い、溶接母材11の健全性を良好に保つことができる。
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態について、図4を参照しながら説明する。
図4(a)〜(c)は、本発明の第3実施形態を示すテンパービード溶接部の縦断面図である。ここで、図4(b)および(c)に示す残層ビード15の形成方法は、図3(b),(c)に示す第2実施形態のものと同一であるため、説明を省略する。
ここでは、図4(a)に示すように、初層ビード13の最初のパスと最後のパスを形成する時に、溶接トーチ12を初層ビード13の幅方向外側に傾斜させながら走査する。この時の傾斜角度θaは、図4(b)または図3(b)に示す残層ビード15の1層目の最初および最後のパスを形成する時の傾斜角度θ1と同程度でよい。
このようにして初層ビード13の最初のパスと最後のパスを形成することにより、初層ビード13の形成時に溶接母材11に発生する熱影響部14の幅Wを狭めることができる。これにより、図4(b),(c)に示す残層ビード15の形成時に、溶接トーチ12の熱によって、溶接母材11に潜在する熱影響部14をより確実に焼き戻しすることができる。
[第4実施形態]
次に、本発明の第4実施形態について、図5を参照しながら説明する。
前記第1〜第3実施形態のように、初層ビード13の上に残層ビード15を重ねて溶接していく場合において、残層ビード15の各層の最初のパスと最後のパスを形成する時の溶接トーチ12の傾斜角度αn+1は、次式(1),(2)に基づいて設定する。
αn+1<90°−θ・・・(1)
tanθ=Σh/Σd・・・(2)
ここで、nは溶接ビードの層数、即ち初層ビード13と残層ビード15の合計層数であり、hは溶接ビードの積層高さ、dは溶接ビードの積層ピッチである。
即ち、積層された初層ビード13と残層ビード15の稜線がなす角度θを90°(直角)から差し引いた角度よりも、溶接トーチ12の垂直からの傾斜角度αn+1が狭角となるように設定する。
このように溶接トーチ12の傾斜角度を設定すれば、残層ビード15の各層における最初のパスおよび最後のパスを溶接する際に、それぞれ残層ビード15の幅方向の外側に熱が掛りやすくなり、初層ビード13を形成した時に溶接母材11に生じた熱影響部14を確実に焼き戻すことができる。
[第5実施形態]
次に、本発明の第5実施形態について、図6〜図8を参照しながら説明する。
図6に示すように、溶接トーチ12は溶接装置(溶接ロボット)のアーム19にAVC(アーク電圧制御)装置20を介して取り付けられる。AVC装置20は、溶接トーチ12を保持し、溶接トーチ12と溶接母材11との間に形成されるアーク長Dを一定に制御する装置である。溶接トーチ12は、このAVC装置20に対し、アーク長制御軸20aに沿って移動することができ、これによって溶接母材11との間隔、即ちアーク長Dが変更される。このようにアーク長Dが変更されても、溶接トーチ12による溶接母材11上の溶接位置Pは変更しない。
また、図7に示すように、溶接トーチ12は、AVC装置20の傾斜角度調整軸20bを軸にして傾斜することができる。ここで、AVC装置20のアーク長制御軸20aと傾斜角度調整軸20bは別軸にされている。このため、溶接トーチ12を傾斜させた状態でアーク長Dが変更されても溶接位置Pは変更しない。したがって、前述の第2〜第5実施形態のように、溶接トーチ12を溶接方向に直交する方向に傾斜させ、同時にアーク長Dが変更されても、溶接位置Pは溶接方向に直交する方向にずれることがない。
このため、溶接トーチ12による溶接位置Pを正確に保ちながら溶接ビードを形成し、同時に溶接母材11に潜在する熱影響部を焼き戻して溶接母材11の健全性を保つことができる。これに対して従来では、図8に示すように、AVC装置20のアーク長制御軸20cと傾斜角度調整軸20dとが同軸とされていたため、溶接トーチ12を溶接方向に直交する方向に傾斜させた状態でアーク長Dが変更されると、実際の溶接位置が、当初の溶接位置Pから溶接方向に直交する方向にずれてしまい(ずれ量Zが発生する)、アーク長Dの制御が困難であった。
以上のように、本発明の各実施形態に係るテンパービード溶接方法によれば、簡潔な構成により、初層の溶接ビードの形成時に溶接母材に発生した熱影響部を、残層の溶接ビードの重ね溶接時に確実に焼き戻し可能にし、溶接母材の健全性を良好に保つことができる。
なお、本発明は上記実施形態の構成のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において適宜変更や改良を加えることができ、このように変更や改良を加えた実施形態も本発明の権利範囲に含まれるものとする。例えば、第1〜第5実施形態の構成を組み合わせる等してもよい。また、溶接形態は必ずしもTIGでなくてもよく、他種の放電溶接であってもよい。
1,11 溶接母材
2,12 溶接トーチ
3 溶接ビード
4,14 熱影響部
13 初層ビード(初層の溶接ビード)
15 残層ビード(残層の溶接ビード)
19 アーム
20 AVC装置
20a アーク長制御軸
20b 傾斜角度調整軸
D アーク長
d 溶接ビードの積層ピッチ
h 溶接ビードの積層高さ
θ1,θa,θn 溶接トーチの傾斜角度

Claims (4)

  1. 溶接母材上に形成した初層の溶接ビードの上に残層の溶接ビードを重ね溶接し、前記初層の溶接ビードを形成した時に前記溶接母材に生じた熱影響部を、前記残層の溶接ビードの重ね溶接時における溶接熱によって焼き戻すようにした溶接方法であって、
    前記残層の溶接ビードの最初のパスと最後のパスの形成時に、溶接トーチを、前記最初のパスと前記最後のパスの幅方向内側に傾斜させながら走査して前記溶接ビードを形成することにより、前記最初のパスと前記最後のパスの幅方向側と側とで前記溶接母材に対する溶接熱の加わり方に差を生じさせ
    前記溶接熱の加わり方が大きい側を前記初層の溶接ビードの幅方向外縁部の領域に重ねるようにして前記外縁部の領域に熱を加えながら前記残層の溶接ビードを形成し、
    前記残層の溶接ビードの形成時における前記溶接トーチの傾斜角度α n+1 は次式(1),(2)より求めることを特徴とする溶接方法。
    α n+1 <90°−θ ・・・(1)
    tanθ =Σh /Σd ・・・(2)
    但し、nは溶接ビードの層数、hは溶接ビードの積層高さ、dは溶接ビードの積層ピッチである。
  2. 前記残層の溶接ビードを複数層形成する場合において、上側の層に向かうにつれて、前記溶接トーチを前記溶接ビードの幅方向内側に傾斜させる角度を大きくすることを特徴とする請求項1に記載の溶接方法。
  3. 前記初層の溶接ビードの最初のパスと最後のパスの形成時に、前記溶接トーチを前記溶接ビードの幅方向外側に傾斜させながら走査することを特徴とする請求項1または2に記載の溶接方法。
  4. 前記溶接トーチを保持してアーク長を制御するAVC装置のアーク長制御軸に対して、前記溶接トーチの傾斜角度調整軸を別軸にし、前記溶接トーチを傾斜させた状態で前記アーク長を変更しても溶接位置が変化しないようにすることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の溶接方法。
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