JP4601311B2 - 球状粒子及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、水溶性マトリックスを核とし、核内に保持した化合物又は核の周囲を被覆した揮発性成分を皮膚からも体内に移行させることができる球状粒子及びその製造方法に関する。
食物や医薬中に含有される有効成分等の種々の化合物は、一般的には、経口ルートを介して体内に移行する。経口ルートによって摂取されたこのような化合物は、胃又は小腸で吸収され、血流に乗って全身に分布することになる。また、経口以外のルートによっても、こうした化合物を体内に移行させることができ、移行された化合物は、局所適用用の剤形とされていない限り、血流に乗って全身に分布する。
上記のようないかなるルートによる場合においても、化合物を体内に移行させ、体内で分布させるためには、各種化合物の運搬体、すなわちキャリヤが不可欠である。また、到達させたい部位に、選択的に化合物を送達させるためには、こうしたキャリアの選択が鍵となる。
一般的には、上述したルートによって各種の化合物が体内移行するために通過しなければならない障壁が異なることから、こうしたキャリアはルートごとに異なるものが選択されており、それに伴って剤形も異なるものとなっている。
経口ルートを介する場合には、吸収部位の相違によって、剤形を変更しなければならない場合がある。胃で吸収される薬物の場合には、錠剤、顆粒剤、粉剤等、多様な剤形による投与が可能であるが、胃酸で分解される薬物を腸管から吸収させたい場合等がこれに該当する。こうした薬物が胃酸によって分解され、薬効を発揮できなくなることを防止するために、こうした薬物を錠剤とした後にさらにコートして腸溶剤としたり、顆粒剤を腸溶カプセルに詰める等の手段を講じることが必要となる。
そして、上記のような腸溶剤やカプセル剤とするためには、製剤の製造工程が増加するとともに、作業も複雑なものとなる。また、吸収された薬物は血流に乗って全身に分布するために、薬効濃度で患部に到達させるためには、投与量が多くなる。
ところで、投与量が多くなると、薬物に対する耐性となったり、副作用が惹起されたりというマイナスの影響が大きくなることが知られており、こうした影響を小さくするために、様々なドラッグ・デリバリー・システム(DDS)の開発やターゲッティングの研究が進められている。
しかし、従来の剤形を採用する限り、経口ルートで投与すると、投与量の関係で副作用が生じ、治療に必要な量を必要な期間投与できないという問題は残されたままであった。
このため、経口ルートで投与する場合であっても、標的とする器官・組織に効率的に薬物を移行させることができる指向性の高い剤形の開発が望まれていた。
本発明の発明者は、水溶性マトリックスを核とする特定の構造を有する球状粒子が、投与ルートにかかわらず、このマトリックスを被覆している有効成分又はその中に保持されている有効成分を、指向性をもって体内に移行させることができることを見出し、本発明を完成したものである。
本発明は、こうしたドラッグ・デリバリー・システム(DDS)又はターゲッティングにも応用できるものである。
すなわち、本発明は、薬剤を含む水溶性マトリックスと;前記水溶性マトリックス表面を被覆し、被膜を形成する植物精油と;前記植物精油の被膜上に層を形成するリン脂質とを含み、前記薬剤を標的とする器官又は組織に送達するための球状粒子である。ここで、前記水溶性マトリックスは、ヘキソースモノマー、ヘキソースダイマー又はヘキソースモノマーとペントースモノマーとからなる群から選ばれるものであることが好ましい。
ここで、前記ヘキソースモノマーは、ガラクトース、グルコース、及びマンノースからなる群から選ばれる少なくとも1種以上のものであることが好ましい。また、前記ヘキソースダイマー又はヘキソースモノマーとペントースモノマーとからなる二糖類は、スクロース、ラクトース、マルトース及びイソマルトースからなる群から選ばれる少なくとも1種以上のものであることが好ましい。
上記の水溶性マトリックスは、本発明の球状粒子の核を構成し、この水溶性マトリックスを植物精油が被覆している。この植物精油は、それ自身が薬理効果を発揮する薬物として機能する場合もあり、また、水溶性マトリックス中に後述する化合物が保持されている場合には、これらを体内に移行させる吸収促進剤としても機能し得るものである。
上記の水溶性マトリックスは、水分子と接触すると溶解し、上記の植物精油がリン脂質の一重層の中に閉じ込められたリポソーム様の粒子を形成する。そしてこの粒子は、細胞間のタイトジャンクションを通って体内に移行するか、又は細胞膜を通過して細胞内に移行することが可能となる。上記のような化合物が水溶性マトリックスに保持されていた場合には、このリポソーム様粒子内に化合物が閉じ込められることになる。
そして、この粒子は血管内に入ると血流に乗って、又はリンパ管に入りリンパ液によって、標的とする器官又は組織へと運ばれる。
また、これらのヘキソースモノマー又はダイマーは可食性のものでなくともよいが、これらを可食性のものとしておくことが食品添加物等への応用面から好ましい。
前記植物精油は、オレンジ油、ネロリ油、レモン油、ラベンダー油、ローズマリー油、サンダルウッド油、シネオール系ユーカリ油、シトロネラール系ユーカリ油、酢酸ゲラニル系ユーカリ油、ジャスミン油、イランイラン油、ローズ油及びクローブ油からなる群から選ばれる少なくとも1種以上のものであることが好ましい。
上記のような植物精油は、上述した水溶性マトリックスに後述する有効成分(化学物質)を保持させた場合には、これら化学物質を内部に取り込んだ1種のリポソームを形成し、下記の脂質とともにキャリアとして生体内又は細胞内への移行に携わる。また、こうした植物精油はそれ自身が細胞間隙を通過して生体内へ、又は細胞膜を通過して細胞内へ移行し、それらが有する薬理効果を発揮する。
前記リン脂質は、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、ジホスファチジルグリセロール(カルジオリピン)、及びホスファチジン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種以上のものであることが好ましい。
上記のようなリン脂質は、水性環境中においては、疎水性基が上記の精油を接するように、また親水性基が水分子と接するように配列して一層を形成する。これによって、精油によって水溶性マトリックスの表面に形成された被膜を保護するとともに、細胞内又は体内への移行に関与する。こうしたリン脂質は細胞膜となじみやすいことによる。
本発明の球状粒子では、前記リン脂質層の表面を被覆する、ヘキソサミンのモノマー、オリゴマー及びポリマーからなる群から選ばれる糖類で構成される被膜をさらに有することが好ましい。ここで、前記モノマーは、グルコサミン、及びガラクトサミンからなる群から選ばれるものであることが好ましい。また、前記オリゴマーは、グルコサミンの4〜6量体であることが好ましく、前記ポリマーは、キトサン、ヒアルロン酸、コンドロイチン、コンドロイチン硫酸、ヘパリン硫酸、ヘパラン硫酸及びケラタン硫酸からなる群から選ばれるものであることが好ましい。
本発明の球状粒子は、気密状態で保存する場合には、上述したヘキソサミンのモノマー、オリゴマー及びポリマーによる被膜を有していなくてもよい。ただし、長期間にわたって保存するような場合には、上記の被膜を最外層として形成しておくと、粒子同士の結合を防止するという効果がある。
上記ヘキソサミンのモノマー、オリゴマー又はポリマーはいずれを使用することもできる。なお、ここで、オリゴマーとは、10個以下のモノマーが結合したものをいう。
前記薬剤は、抗癌剤、抗ウイルス剤、抗真菌剤、及び抗うつ剤からなる群から選ばれるものであることが好ましい。また、前記抗癌剤は、アルキル化剤、代謝拮抗剤、抗生物質、ホルモン剤、アルカロイド及び細胞分裂阻害剤からなる群から選ばれるものであることが好ましい。
上記のような抗癌剤を上述した水溶性マトリックスに保持させると、経口ルートによる場合よりもはるかに少ない量を投与することによって、標的とする器官又は組織に薬効量でこれらを送達することが可能となる。このため、これらの薬物の投与による副作用を低減させることもできる。
本発明はまた、密閉容器中において、水溶性マトリックスと薬剤とを混合し、薬剤保持マトリックスを製造する有効成分保持工程と、前記マトリックスの表面に前記植物精油で被膜を形成する被膜形成工程と、前記被膜が形成されたマトリックスとリン脂質とを混合し、リン脂質層を形成させるリン脂質層形成工程と、を備える、前記薬剤を標的とする器官又は組織に送達するための球状粒子の製造方法である。
ここで、前記リン脂質層の表面を被覆する、ヘキソサミンのモノマー、オリゴマー及びポリマーからなる群から選ばれる糖類で構成される被膜を形成するヘキソサミン被膜形成工程をさらに備えることが好ましい。
また、本発明の球状粒子の製造方法においては、密閉容器中において、前記水溶性マトリックスと有効成分とを混合し、前記有効成分保持マトリックスを製造する有効成分保持工程をさらに備える物とすることができる。この工程を備えることにより、水溶性マトリックス中に各種の有効成分を保持させることができる。
本発明はさらにまた、密閉容器中において、水溶性マトリックスと薬剤とを混合し、薬剤保持マトリックスを製造する有効成分保持工程と、前記マトリックスの表面に前記植物精油で被膜を形成する被膜形成工程と、前記被膜が形成されたマトリックスとリン脂質とを混合し、リン脂質層を形成させるリン脂質層形成工程と、直接粉末圧縮法によって錠剤を形成する錠剤形成工程と、を備える、前記薬剤を標的とする器官又は組織に送達するための球状粒子を含む錠剤の製造方法である。直接粉末圧縮法を採用することによって、指向性の高い錠剤を製造することができる。

なお、上記の球状粒子の製造方法において使用する水溶性マトリックス、植物精油、リン脂質、有効成分、ヘキソサミンのモノマー、オリゴマー及びポリマーは上述したものと同じである。
本発明の球状粒子は、核となる水溶性マトリックス中に有効成分、特に薬物を保持させておくと、医薬の分野において指向性の高い各種の治療薬として幅広く使用することができる。また、指向性が高いことから、経口ルートで投与した場合であっても、標的とする器官や組織にこうした薬物を薬効量で送達することができるため、副作用を低減させることができる。
また、本発明の球状粒子の製造方法によれば、簡便に標的器官又は組織に高い指向性で送達可能な球状粒子を製造することができる。また、ヘキソサミンのモノマー、オリゴマー又はポリマーでこの球状粒子を被覆することにより、リン脂質の酸化を防止し、これら粒子の保存性を向上させることが可能となる。
また、本発明の球状粒子の製造方法によれば、製造工程において水を使用しないため、少ない工程数で本発明の球状粒子を錠剤とすることができる。
以下に、本発明をさらに詳細に説明する。
本明細書において水溶性マトリックスとは、本発明の球状粒子の核を構成するヘキソースモノマー又はヘキソースモノマーとペントースモノマーとからなる二糖類をいう。ヘキソースモノマーとしては、具体的には、ガラクトース、グルコース、マンノース等を挙げることができる。また、ペントースモノマーとしては、フルクトース、キシロース、アラビノース等を挙げることができる。
こうしたモノマーとしては、グルコースを使用することが安全性及び製造コストの面から最も好ましい。
また、ヘキソースダイマーとしては、マルトース、イソマルトース、ラクトース等を挙げることができる。さらに、ヘキソースモノマーとペントースモノマーとからなる二糖類としては、スクロース、ガラクトース等を挙げることができる。
こうした二糖類としては、マルトース、スクロース等を使用することが安全性及び製造コストの面から好ましく、スクロースを使用することがさらに好ましい。
上述した糖類は、いずれも水溶性であるために水分子と接触すると溶解する。このため、後述する有効成分、例えば、各種の薬物がそのマトリックス内に保持されていた場合には、これらが上記の植物精油とリン脂質とで構成される膜内に閉じ込められたリポソーム様の粒子となる。こうした粒子は、上記のような有効成分を保持したまま細胞間隙又は細胞膜を通過して体内に移行することができることになる。
本明細書において精油とは、種々の植物体から主として水蒸気蒸留、抽出または圧搾等により得られる、特有の芳香を有する揮発性の油状から半固体状までの物質の総称をいう。通常、精油は多種の化合物からなり、モノテルペン、セスキテルペンまたはそれらの酸化還元誘導体を主成分とする。一般に水に不溶で、アルコール等に可溶である。本発明で使用する精油は、後述する各種の植物から常法に従って、水蒸気蒸留により得てもよく、また、小川香料(株)等から市販されている市販品を使用してもよい。
本発明の球状粒子においては、ミカン科植物から得られる精油である、オレンジ油、ネロリ油、及びレモン油;シソ科植物から得られる精油であるラベンダー油、ラバンジン油およびローズマリー油;ビャクダン科植物から得られる精油であるサンダルウッド油;フトモモ科植物から得られる精油であるユーカリ油(シネオール系、シトロネラール系及び酢酸ゲラニル系);ソケイ科植物から得られる精油であるジャスミン油;バンレイシ科植物から得られる精油であるイランイラン油;バラ科植物から得られるローズ油;を、標的とする器官又は組織に応じて使用する。
オレンジ油は、カリフォルニア、フロリダ、スペイン、ブラジル、イタリア、および日本など世界各地で広く栽培されているスイートオレンジ(Citrus sinensis Osbeck var. brasiliensis Tanaka)の果実をそのまま圧搾して果汁と精油とを分離して得ることができる。成分としては、リモネン、シトラール、n-デシルアルデヒド、リナロール、テルピネオール、n-ノニルアルコールなどを含有し、リモネンが90%以上を占める。本発明においては、カリフォルニア産のオレンジから得られる精油を使用することが、n-ノニルアルコールおよびリモネン、シトラールが多く含まれることから好ましい。
ネロリ油は、フランス、イタリア、スペイン、モロッコ、アルジェリア等を産地とするダイダイ(Citrus surantium L. subsp. amara Engel)の花の水蒸気蒸留により得られる。l-リナロール、酢酸リナリル、α-テルピネオール、ゲラニオール、酢酸ゲラニル、ネロリドール、その他α-ピネン、ジペンテン、カンフェン、オシメン等のテルペン類、及びアンスラニル酸、インドール等の含窒素化合物を含む。本発明においては、フランス又はイタリア産のダイダイの花から得られる精油を使用することが、細胞の修復機能が高いことから好ましい。
レモン油は、カリフォルニア、シシリー、カラブリア、スペイン、およびブラジルを主産地とし、その他日本でも栽培されているレモン(Citrus limone (L.))の果皮の圧搾により得られる。d-リモネン、シトラール、オクチルアルデヒド、ノニルアルデヒド、リナロール、ゲラニオール、その他各種のテルペノイドを含む。本発明においては、カリフォルニア産のレモンから得られる精油を使用することがリモネン、シトラールおよびゲラニオールを含有することから好ましい。
ローズマリー油は、スペイン、ユーゴスラビア、チュニジア、フランス、イタリアなどを産地とするマンネンロウ(Rosmarinus officinalis L.)の花、葉または全草の水蒸気蒸留によって得られる。成分としては、ボルネオール、酢酸ボルニル、カンファー、シネオール、その他のテルペン化合物などを含む。本発明においては、フランスまたはイタリア産のローズマリーを使用することがシネオールを多く含有することから好ましい。
ラベンダー油は、フランス、イタリア、ハンガリー、旧ソ連南部、イギリス、北アメリカ、オーストラリアおよび北海道を主産地とし、ラベンダー(Lavendulaofficinalis Chaix.)の花を水蒸気蒸留して得られる。成分としては、リナロール(10〜20%)、酢酸リナリル(30〜60%)、ラバンジュロール、酢酸ラバンジュリル、3−オクタノール、α−ピネン、β−ピネン、リモネン、シネオール、シトロネラールなどの多数の成分を含有する。本発明においては、フランス、イタリアおよび北海道産のラベンダーを使用することが酢酸リナリル、リモネンおよびシネオールを比較的多く含むことから好ましい。
ラバンジン油は、南フランスを産地とするラバンジン(Lavandula hybrida Reverch)の花の水蒸気蒸留で得られる。成分としては、リナロール、酢酸リナリル、リナロールオキシド、シネオール、d-カンファー、d-ラバンジュロールなどを含有する。本発明においては、南フランス産のラバンジンを使用することが酢酸リナリルおよびシネオールを比較的多く含むことから好ましい。
ビャクダン科植物としては、東インド、南インド、マレー、セレベスなどを主産地とするビャクダンを挙げることができ、精油としては、ビャクダン(Santalum album L.)の材、根部の水蒸気蒸留によってサンダルウッド油が得られる。また、成分としては、特有成分であるα−サンタロールおよびβ−サンタロール、サンタレン、サンテノン、サンテノール、テレサンタロール、サンタロン等が含まれる。本発明においては、チュニジア産のビャクダンを使用することが、入手しやすいことから好ましい。
ユーカリ油は、タスマニア原産で、北米、メキシコ、アフリカ、および南部スペインなどを主産地とするシネオール系ユーカリ油、オーストラリアのニューサウスウェールズ、ビクトリア地方を主産地とするピペリトン、フェランドレン系ユーカリ油、オーストラリアのニューサウスウェールズ南部を主産地とする酢酸ゲラニル系ユーカリ油、およびオーストラリアのクインズランド、南アフリカ、ブラジル、ジャバ、インドなどを主産地とするシトロネラール系ユーカリ油とに大別される。
シネオール系ユーカリ油は、Eucalyptus globulus Labill.の葉を水蒸気蒸留して得ることができ、成分としては、シネオール(70〜80%)、α−ピネン、カンフェン、ピノカルベオール、ピノカルボン、ミルテノール、ベルベノン、カルボン、オイデスモールおよびC4〜C6の脂肪族アルデヒドなどを含有する。ピペリトン、フェランドレン系ユーカリ油は、 Eucalyptus dives Schuer Typeの葉および小枝の水蒸気蒸留によって得ることができ、成分としては、ピペリトン(40〜50%)、α−フェランドレン(20〜30%)、p-シメン、カンフェン、ジペンテン、α−ツエンなどを含有する。本発明においては、シネオール系ユーカリ油を使用することが、細胞賦活作用と抗酸化作用が強いことから好ましい。
酢酸ゲラニル系ユーカリ油は、Eucalyptus macarthuri H. Deane et J. H. Maidenの葉および小枝の水蒸気蒸留によって得ることができ、成分としては、酢酸ゲラニル(約70%前後)、ゲラニオール(約3%)、オイデスモール(約16%)、その他脂肪族アルデヒドなどを含む。シトロネラール系ユーカリ油は、Eucalyptus citriodora Hookの葉および小枝の水蒸気蒸留によって得ることができ、成分としては、d-またはl-シトロネラール(65〜80%)、d-またはl-シトロネロール(15〜20%)、フェランドレン、シネオール、酢酸シトロネリル、酢酸ゲラニル、イソプレゴールなどを含有する。本発明においては、酢酸ゲラニル系ユーカリ油を使用することが、細胞賦活作用が強く、またGABAのレベルを向上させることができるために好ましい。
ソケイ科植物としては、南フランス、イタリア、エジプト、モロッコで栽培されているジャスミン(ソケイ、Jasminum officinale L.)またはタイワンソケイ(J. officinale L. var. grandiflorum)を挙げることができる。その花を溶剤抽出してコンクリートを得、これをアルコールで処理するとジャスミンアブソリュートが得られる。成分としては、酢酸ベンジル(65%)、d-リナロール(15.5%)、酢酸リナリル(7.5%)、ジャスモン(特徴成分、3%)、ジャスモン酸メチル(特徴成分)、ジャスミンラクトン(特徴成分)、ベンジルアルコール、アンスラニル酸メチル、インドール、ネロール、ゲラニオール等を含有する。本発明では、南フランスまたはイタリア産のジャスミンを使用することが、抗菌作用が高く、神経興奮作用を有することから好ましい。
バンレイシ科植物としては、インド洋中のコモロやノシベ島を主産地とするイランイランノキ(Cananga odorata froma genuina)を挙げることができ、その花の水蒸気蒸留によってイランイラン油が得られる。リナロール、ゲラニオール、ファルネソール、ベンジルアルコール、安息香酸メチル等のアルコール及びエステル類(50〜60%)、セスキテルペン類(35〜40%)が含まれる。本発明においては、女性ホルモン類似の作用を示すことから、イランイラン油を好適に使用することができる。
バラ科植物としては、ブルガリア、トルコ、ロシア産のRosa damascena Mill. forma trigintipetala Dieck(別名ブルガリアローズ)、フランス又はモロッコ産のRosa centifolia L.(別名五月バラ)を挙げることができ、花を水蒸気蒸留して得られる。開花直前の花を摘み取り、直ちに水蒸気蒸留を行って得たローズ油をローズ・オットー(Otto of rose, Atta of rose)という。l-シトロネラール(主要成分)、フェニルエチルアルコール(主要成分)、ゲラニオール、ネロール、リナロール、ファルネソール、ローズオキサイド(重要成分)、ダマセノン(重要成分)、ダマスコン、ヨノン、ステアロプテン、メチルオイゲノール等が含まれる。本発明においては、鎮静作用、抗不安作用を有することから、ローズ油を好適に使用することができる。
クローブ油は、アフリカ東海岸のザンジバル島、ペンバ島及びマダガスカル島、インドネシア各地、セイロン、及びジャバが原産のフトモモ科のチョウジ(Eugenia caryophllata Thunb.)の開花前の花蕾を採集して乾燥したものを水蒸気蒸留して得られる。成分としては、オイゲノール(70〜90%)及びその酢酸エステル、カリオフィレン、バニリン、フルフラールとフルフリルアルコール並びにその誘導体が含まれる。本発明においては、アフリカ東海岸およびインドネシア産のクローブ油を使用することが肝疾患、特に胆汁うっ滞や薬物起因性肝疾患等を初めとする様々な疾患に有効な化合物を含有することから好ましい。
上述した精油を適宜選択することにより、標的とする器官又は組織への本発明の球状粒子の指向性を向上させることができる。したがって、上述した水溶性マトリックス中に有効成分が保持されていた場合には、従来の剤形を用いた場合と比べて少量を投与することで十分な薬理効果を発揮させることが可能となる。また、これに付随して、副作用の発現を抑制することも可能となる。
また、こうした精油自身が、送達された器官又は組織において薬理効果を有する場合もある。さらに、別々の植物性精油で水溶性マトリックスを被覆してそれぞれ後述する球状粒子とし、これらを適宜混合して後述する製剤を製造することもできる。このようにすることによって、指向性を一層高めることが可能となる。
本発明の球状粒子においては、リン脂質として、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、ジホスファチジルグリセロール(カルジオリピン)、及びホスファチジン酸等を挙げることができ、適宜選択して使用する。これらのリン脂質は、単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
これらのリン脂質は下記式(1)で表される。
Figure 0004601311
ここで、Xは、水素原子、エタノールアミン(−CH2−CH2−N+3)、コリン(−CH2−CH2−N+(CH33)、セリン(−CH2−CH(COO-)−N+CH3)グリセロール(−CH2−CH(OH)−CH2−OH)、下記式(2)で表されるイノシトール及び下記式(3)で表されるホスファチジルグリセロールからなる群から選ばれるものである。
なお、上記式(1)では、グリセロールの1位に飽和脂肪酸としてパルミチン酸が、また2位に不飽和脂肪酸としてオレイン酸が結合している場合を例に挙げているが、C1又はC2に結合する脂肪酸は、ステアリン酸、アラキドン酸その他の飽和又は不飽和脂肪酸を挙げることができ、特にこれらに限定されるものではない。
Figure 0004601311
Figure 0004601311
ホスファチジルコリンは、上記式(1)のXがコリンとなっている化合物である。動物、植物、酵母、カビ類に広く存在するリン脂質で、哺乳動物の膜では総リン脂質の50%近くを占めている。一般にグリセロールの1位に飽和脂肪酸、2位に不飽和脂肪酸を結合するものが多いが、パルミチン酸2分子がこれらの位置に結合しているものもある。ホスファチジルコリンは、あらゆるpH領域で両性イオンとして存在する。
ホスファチジルエタノールアミンは、上記式(1)のXがエタノールアミンとなっている化合物である。動物、植物界ではホスファチジルコリンについで含有量の高いリン脂質で、細菌にも広く分布している。構成脂肪酸は、動物細胞由来のものは不飽和脂肪酸の含量が高く、ホスファチジルコリンと比べて高度不飽和酸が多く含まれる。したがって、空気酸化及び光酸化を受け易く、不安定である。細菌由来のものは、飽和脂肪酸の含量が高く、不飽和脂肪酸はモノ不飽和脂肪酸が多い。ホスファチジルコリンとは異なって、あらゆるpH領域で両性イオンとして存在することはなく、他のリン脂質に比して親水性に乏しく、水に懸濁しにくい。グルコース−6−ホスファターゼ、UDPガラクトース−リポ多糖ガラクトシルトランスフェラーゼの活性化を行い、血液凝固にも関与していることが知られている。
ホスファチジルセリンは、上記式(1)のXがセリンとなっている化合物である。アミノ酸を構成成分とする酸性リン脂質で、生物界に広く分布する。特に、脳や神経組織に多く含まれる。カリウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等が知られており、これらは安定な乳濁液をつくる。血液凝固反応の補助因子として働くことが古くから知られており、血小板の活性化に伴い、形質膜の内層より外層に移動することにより、血小板膜上の血液凝固因子の活性化反応を促進すると考えられている。アポトーシスを誘発した細胞でも細胞表面への露出が観察され、マクロファージにより貪食除去される際の標的分子の1つと考えられている。プロテインキナーゼCやNa+−K+ATPアーゼ等種々の膜結合タンパクの活性発現における補助因子としても働くことが知られている。
ホスファチジルイノシトールは、上記式(1)のXがイノシトールなっている化合物である。動物組織由来のものの脂肪酸組成は他のリン脂質と異なり、1位にステアリン酸、2位にアラキドン酸をもつ分子種が多い。種々の細胞、刺激によって代謝回転が促進されることが明らかになり、その生理的意義が注目を集めているリン脂質である。
ホスファチジルグリセロールは、上記式(1)のXがグリセロールとなっている化合物である。生物界に広く存在し、微生物ではリン脂質の主成分となっている場合もある。ジホスファチジルグリセロールやグリコシルホスファチジルグリセロール等の前駆体でもある。
ジホスファチジルグリセロール(カルジオリピン)は、上記式(1)のXがホスファチジルグリセロールとなっている化合物である。動物、植物、細菌界に広く分布する。動植物では、全リン脂質の1〜15%、細菌によっては全リン脂質の50%以上を占める場合もある。動物組織においては主としてミトコンドリア内膜に局在し、高度不飽和脂肪酸含量が高い。
ホスファチジン酸は、上記式(1)のXが水素原子となっている化合物である。種々の脂質の生合成中間体として重要である。ホスホリパーゼDによって膜脂質が分解されてホスファチジン酸が産生されるが、これはカルシウムイオノフォア、又はアラキドン酸供給源として働くと考えられている。
上述したリン脂質は、上述した水溶性マトリックスを被覆した精油をさらに被覆して精油層の上にさらに一層を形成できるものである必要があることから、粉体状又は樹脂状のものであれば使用できるが、液状のものは使用することができない。具体的には、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン及びホスファチジルセリンを好適に使用することができる。
こうしたリン脂質のなかでも、ホスファチジルコリン(大豆レシチン)を使用することが好ましい。ホスファチジルコリンは現在医薬用又は健康食品用に広く使用されており安全性の面から問題が少ないこと、また安定性もよく、コストの面でも有利であることによる。
本発明の球状粒子を、上述したリン脂質の粉体で、水溶性マトリックス表面に吸着された植物精油の表面を被覆しておくと、長期間にわたって保存したときに粒子同士が接着するのを防止することができる。保存に際しては密閉し、遮光した状態とすることが好ましい。空気酸化及び光による酸化による変質を避けるためである。
リン脂質で被覆した粒子は、直接粉末圧縮法によって球状粒子とする前に、ヘキソサミンのモノマー、オリゴマー及びポリマーからなる群から選ばれる糖類でその表面をさらに被覆することもできる。
ここで、ヘキソサミンのモノマーとしては、グルコサミン、ガラクトサミン等を挙げることができる。酸に強いために本発明の球状粒子を胃酸から保護しつつ、腸まで到達させることが可能となることから、グルコサミン又はガラクトサミンを使用することが好ましく、球状粒子としたときに全体の安定性を確保し易いということから、グルコサミンを使用することが最も好ましい。
また、本発明の球状粒子の被覆には、上記のようなヘキソサミンモノマーの他に、ヘキソサミンのオリゴマーを使用することもできる。こうしたオリゴマーとしては、グルコサミンの4〜6量体を使用することができる。これらのオリゴマーは、単独で使用することもでき、混合して使用することもできる。
さらに、本発明の球状粒子の被覆には、上記のようなヘキソサミンモノマー及びオリゴマーの他に、ヘキソサミンのポリマーを使用することもできる。こうしたポリマーとしては、キトサン、ヒアルロン酸、コンドロイチン、コンドロイチン硫酸、デルマタン酸、ヘパリン、ヘパラン硫酸及びケラタン硫酸等を挙げることができる。
キトサンは、β−1,4−ポリグルコサミンであり、キチンの脱アセチル化物である。水に不溶であるが、希酸に可溶であり、塩は水溶性のものもある。広範囲の重金属吸着体、各種酸性物質(例えば、核酸やエンドトキシン等)の除去剤として使用されている。
ヒアルロン酸は、D−N−アセチルグリコサミンとD−グルコサミンとが交互に結合した直鎖状の高分子である。細胞間質の重要成分で、皮下組織を接合させる作用を持つ。保湿剤として、化粧品や医薬品の分野で使用されている。
コンドロイチンは、N−アセチルコンドロシンのポリマーであり、コンドロイチン硫酸を脱硫することによって得られる。コンドロイチン硫酸は、N−アセチルガラクトサミンの硫酸エステルとウロン酸とが交互に重合したムコ多糖の1種であり、硫酸エステルの位置、構成ウロン酸(グルクロン酸、イズロン酸)の異なるA、B及びCがある。
ヘパリン硫酸は、D−グルコサミン(GlcN)、D−グルクロン酸(GlcUA)及びL−イズロン酸(IdoUA)からなる多糖のN−硫酸、N−アセチル及びO−硫酸置換体である。ヘパリン硫酸は抗凝固薬として使用されている。
ヘパラン硫酸は、D−グルコサミン(GlcN)、D−グルクロン酸(GlcUA)及びL−イズロン酸(IdoUA)からなる多糖のN−硫酸、N−アセチル及びO−硫酸置換体である。ヘパリンと類似しているが、それよりも硫酸基、L−イズロン酸、N−スルホグルコサミンの含有量が低い。毛細血管内皮表面におけるリポタンパクリパーゼのアンカーの役割や、細胞の特異性発現、増殖の調節、相互認識、接着などへの関与が挙げられるが、ヘパリン硫酸のような抗凝性はない。
ケラタン硫酸は、等モルのN−アセチルグルコサミン6−硫酸(GlcNAc−6S)とガラクトース(Gal)とからなる多糖である。ウロン酸を含まない点で他のグリコサミノグリカンと異なる。
本発明の球状粒子においては、上述したヘキソサミンのポリマーのうち、本発明の球状粒子に含まれる植物精油又は担持薬物を胃で吸収させるには、キトサンを好適に使用することができる。そして、こうしたヘキソサミンのポリマーでリン脂質層の外側を被覆しておくと、前述した植物精油の酸化を防止することができるといった効果がある。
本発明の球状粒子は、水溶性マトリックス内に、各種の化合物をさらに保持させることもできる。こうした化合物としては、例えば、水溶性の抗癌剤、抗ウイルス剤、抗真菌剤、抗うつ剤その他の薬物を挙げることができる。
こうした薬物の中でも、抗癌剤、抗ウイルス剤、抗真菌剤及び抗うつ剤等を保持させると、当薬量を低下させることができるため、副作用の抑制効果が高い。
上記の抗癌剤としては、アルキル化剤、代謝拮抗剤、抗生物質、アルカロイド及び細胞分裂阻害剤等、各種のものを挙げることができ、アルキル化剤としては、例えば、シクロホスファミド等を挙げることができる。
また、代謝拮抗剤としては、フルオロウラシル、5’-DFUR、テガフール(登録商標)、カルモフール(登録商標)等のFU系薬物の他、テトラヒドロ葉酸及びその誘導体等を挙げることができる。
抗生物質としては、例えば、マイトマイシン等を挙げることができ、ホルモン剤としては、例えば、タモキシフェン等を挙げることができる。
アルカロイドとしては、例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチン等を挙げることができ、細胞分裂阻害剤としては、例えば、シスプラチン及びその誘導体等を挙げることができる。
こうした薬物を上述した水溶性マトリックス中に保持させ、この水溶性マトリックスを上述した精油で適宜被覆することにより、指向性の高い球状粒子とすることができるため、これらの薬物を効率よく標的とする器官又は組織に送達することができる。
また、これによって、全体としての投与量を減少させることができ、さらに、標的器官又は組織以外の部分において送達された薬物が分解されることを防止することができるため、副作用を低減させることが可能となる。
また、上述したような精油で被覆した粒子を適宜組み合わせて使用することで、栄養補助食品又は栄養強化食品に類した作用を発揮させることもできる。
また、栄養強化剤とは、食品の影響を強化するものをいい、一般には、こうした栄養強化剤としては、例えば、l−アスコルビン酸ナトリウム、チアミン及びその塩、リボフラビン及びその塩、ピリドキシン、パントテン酸及びその塩、シアノコバラミン及びその塩、レチノール及びその塩、コレカルシフェロール及びその塩、抽出トコフェロール及びその塩、カルシウム、鉄、亜鉛、及び銅等が用いられている。
ここで、チアミン及びその塩、リボフラビン及びその塩、ピリドキシン、パントテン酸及びその塩、シアノコバラミン及びその塩、レチノール及びその塩、コレカルシフェロール及びその塩、抽出トコフェロール及びその塩には、これらの化合物とこれらの化合物が形成する塩であって、製剤学上又は食品製造上許容される塩をいい、具体的には、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、リン酸塩等が含まれる。
以下に、本発明の球状粒子の製造方法を、錠剤とする場合を例に挙げて説明する。
まず、所定量の上述した水溶性マトリックス(例えば、グラニュー糖)、上述した植物精油(例えば、酢酸ゲラニル系ユーカリ油)、上述したリン脂質(例えば、レシチン)を別々に秤量する。次いで、上記の水溶性マトリックスを所定の大きさの容器を備える攪拌機に入れ、ここに、上記の植物精油を加え、容器を密閉して、所定の温度で所定の時間攪拌し、水溶性マトリックスの表面に植物精油による被膜を形成させる。ここに、上記のリン脂質をさらに加えて容器を密閉して攪拌し、粉体とする。
上述したグルコサミンのモノマー、オリゴマー又はポリマーを使用する場合には、上記のようにリン脂質を加えて粉体とした後に、これらを所定量で加え、容器を密閉してさらに攪拌する。これによって、リン脂質の表面にこれらによる被膜がさらに形成された粉体が得られる。
なお、ここで使用する水溶性マトリックス、植物精油、リン脂質、グルコサミンのモノマー、オリゴマー又はポリマーは上述した通りである。また、上記の水溶性マトリックス中に上述した各種の化合物を保持させる場合には、流動層造粒法を用いて、グラニュー糖を核となる分子として各種化合物をその表面に担持させる。
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1) 球状粒子の製造
(1)使用した化合物等
水溶性マトリックスとして使用するグラニュー糖は、日本製糖(株)製の48メッシュのものを使用した(カタログ番号食用グラニュー糖)。また、植物精油としては、ローズ油又はローズアブソリュート(小川香料(株)製(カタログ番号Lot 01820219)、ユーカリAG(小川香料(株)製(カタログ番号Lot 05811019)、ラベンダー油(小川香料(株)製(カタログ番号Lot 03821217)を使用した。
リン脂質としては、ホスファチジルコリン(ツルーレシチン工業(株)製(カタログ番号SLP−ホワイト、10メッシュパス)を使用した。また、グルコサミンモノマー(カタログ番号コーヨーグルコサミン、80メッシュパス)、グルコサミンオリゴマー(4〜6量体の混合物:カタログ番号コーヨーオリゴ糖、80メッシュパス)及びキトサン(カタログ番号コーヨーキトサンHF、80メッシュパス)(いずれも甲陽ケミカル(株)製)を使用した。
(2)球状粒子の製造
製造した球状粒子の製造は以下のように行った。
グラニュー糖100g、植物精油1.5g、リン脂質1.5又は2g、キトサン、グルコサミンオリゴマー、グルコサミン1.5gを、別々に秤量した。
0.5Lの混合容器を備えた攪拌機((株)杉山元医理器製、バーチカルシェーカーVSL、)を用い、容器中にグラニュー糖を入れ、容器を密閉し、17℃にて60分間、250RPMで攪拌した。グラニュー糖の表面に精油の被膜が形成された後に、リン脂質を少量ずつ加えて、上記と同様の条件でさらに60分間攪拌し、精油の被膜上にリン脂質の被膜を形成させた。
ついで、キトサンを加えて、上記と同様の条件でさらに60分間攪拌し、リン脂質の被膜上にさらに被膜を形成させた。
以上のようにして得られた球状粒子を分級用スクリーンを用いて分級し、選別した。グルコサミンオリゴマー、又はグルコサミンモノマーを用いる場合には、これらをキトサンに代えて使用した。
以上の手順に従って、以下の組成を有する球状粒子を作製した。
Figure 0004601311
以上説明したように、本発明の球状粒子は、医薬、化粧品及び食品の分野において広く使用することができる。特に、医薬の分野においては、標的とする器官又は組織に効率よく薬物を送達することができるので、副作用の低減という面での有用性が高い。また、副作用の低減に伴って、患者の免疫能の低下も防ぐことができるため、より一層治療効果を高めることが可能となる。
水溶性マトリックス中に薬剤を保持している本発明の球状粒子の構造を示す断面図である。

Claims (15)

  1. 薬剤を含む水溶性マトリックスと;前記水溶性マトリックス表面を被覆し、被膜を形成する植物精油と;前記植物精油の被膜上に層を形成するリン脂質と;を含み、前記薬剤を標的とする器官又は組織に送達するための球状粒子。
  2. 前記水溶性マトリックスは、ヘキソースモノマー、ヘキソースダイマー又はヘキソースモノマーとペントースモノマーとからなる二糖類であることを特徴とする、請求項1に記載の球状粒子。
  3. 前記ヘキソースモノマーは、ガラクトース、グルコース、及びマンノースからなる群から選ばれる少なくとも1種以上のものであることを特徴とする、請求項2に記載の球状粒子。
  4. 前記ヘキソースダイマー又はヘキソースモノマーとペントースモノマーとからなる二糖類は、スクロース、ラクトース、マルトース及びイソマルトースからなる群から選ばれる少なくとも1種以上のものであることを特徴とする、請求項2に記載の球状粒子。
  5. 前記植物精油は、オレンジ油、ネロリ油、レモン油、ラベンダー油、ローズマリー油、サンダルウッド油、シネオール系ユーカリ油、シトロネラール系ユーカリ油、酢酸ゲラニル系ユーカリ油、ジャスミン油、イランイラン油、ローズ油及びクローブ油からなる群から選ばれる少なくとも1種以上のものであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の球状粒子。
  6. 前記リン脂質は、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、ジホスファチジルグリセロール(カルジオリピン)、及びホスファチジン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種以上のものであることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の球状粒子。
  7. 前記リン脂質層の表面を被覆する、ヘキソサミンのモノマー、オリゴマー及びポリマーからなる群から選ばれる糖類で構成される被膜をさらに有することを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の球状粒子。
  8. 前記ヘキソサミンのモノマーは、グルコサミン及びガラクトサミンからなる群から選ばれるものであることを特徴とする、請求項7に記載の球状分子。
  9. 前記ヘキソサミンのオリゴマーは、グルコサミンの4〜6量体であることを特徴とする、請求項7に記載の球状分子。
  10. 前記ヘキソサミンのポリマーは、キトサン、ヒアルロン酸、コンドロイチン、コンドロイチン硫酸、ヘパリン硫酸、ヘパラン硫酸及びケラタン硫酸からなる群から選ばれる1種以上のものであることを特徴とする、請求項7に記載の球状分子。
  11. 前記薬剤は、抗癌剤、抗ウイルス剤、及び抗うつ剤からなる群から選ばれるものであること特徴とする、請求項1〜10のいずれかに記載の球状粒子。
  12. 前記抗癌剤は、アルキル化剤、代謝拮抗剤、抗生物質、ホルモン剤、アルカロイド及び細胞分裂阻害剤からなる群から選ばれる少なくとも1種以上のものであることを特徴とする、請求項11に記載の球状粒子。
  13. 密閉容器中において、水溶性マトリックスと薬剤とを混合し、薬剤保持マトリックスを製造する有効成分保持工程と、前記マトリックスの表面に前記植物精油で被膜を形成する被膜形成工程と、前記被膜が形成されたマトリックスとリン脂質とを混合し、リン脂質層を形成させるリン脂質層形成工程と;を備える、前記薬剤を標的とする器官又は組織に送達するための球状粒子の製造方法。
  14. 前記リン脂質層の表面を被覆する、ヘキソサミンのモノマー、オリゴマー及びポリマーからなる群から選ばれる糖類で構成される被膜を形成するヘキソサミン被膜形成工程をさらに備えることを特徴とする、請求項13に記載の球状粒子の製造方法。
  15. 密閉容器中において、水溶性マトリックスと薬剤とを混合し、薬剤保持マトリックスを製造する有効成分保持工程と、前記マトリックスの表面に前記植物精油で被膜を形成する被膜形成工程と、前記被膜が形成されたマトリックスとリン脂質とを混合し、リン脂質層を形成させるリン脂質層形成工程と、直接粉末圧縮法によって錠剤を形成する錠剤形成工程と、を備える、前記薬剤を標的とする器官又は組織に送達するための球状粒子を含む錠剤の製造方法。
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