JP4598937B2 - 鋼の連続鋳造用パウダー - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、鋼の連続鋳造において鋳型内に添加するパウダーに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に鋼の連続鋳造では、鋳型内における溶鋼の保温、鋳型と凝固鋳片間の潤滑、鋳型内鋳片の抜熱コントロール、溶鋼から浮上する介在物の吸収等の目的で連続鋳造用パウダーが使用されている。
一般的なパウダ−の成分としては、SiO2 :20〜45mass%,CaO:20〜55mass%,Al2 O3 :0〜10mass%,MgO:0〜20mass%,Na2 O:1〜20mass%,F- :1〜20mass%,C:10mass%以下で構成されており、必要に応じてTiO2 ,ZrO2 ,B2O3 ,SrO,MnO,BaO,Li2 O,Cr2 O3 等も使用されている。
【0003】
分析上、弗化物は酸化物とF- に、炭酸塩化合物は酸化物とC(カーボン)として表記されている。またパウダーの物性としては、溶融温度で950〜1250℃のものが、1300℃における粘度で0.5〜10poise、凝固温度(溶融状態から徐々に温度を低下させる過程において粘度が著しく増大し凝固に至る温度で、溶融パウダーの冷却、凝固過程における結晶化温度にほぼ等しいと考えられる)で950〜1260℃のものが実用に供されている。
【0004】
ところで近年、鋳造工程における歩留り向上によるコストダウンの要請が一段と高まる傾向にあり、そのためには鋳造される鋳片の欠陥をできるだけ少なくするよう心掛けなければならない。
しかしながら中炭素鋼(包晶組成の鋼を含む)や[Nb],[Mo],[V],[Mn],[Cr],[S],[B]等の元素を含有する割れ感受性の強い鋼では、鋳片に鋳片欠陥である割れや凹みが発生し易いという問題があり、また鋳型サイズが大きい場合や鋳造速度が早い場合には低炭素鋼においても割れが発生する惧れが多分にあり、割れや凹みの発生は、鋳片歩留りの著しい低下をもたらすため大きな問題となる。
【0005】
これに対し鋳片の割れや凹みの発生を低減する方法として、パウダーの塩基度(CaO/SiO2 )を高く設定することにより溶融パウダー凝固時の結晶性を強め、鋳片から鋳型への抜熱抵抗を大きくしたり、鋳型温度のバラツキを小さくする方法が採られている[CAMP−ISIJ Vol−4,1253(1991)、CAMP−ISIJ Vol−6,287(1993)参照]。これらの方法により抜熱抵抗が増大し鋳片は緩冷却され、割れや凹みは減少する傾向にある。
【0006】
溶融パウダーが凝固時に生成する結晶の有無、生成の程度は、冷却速度によっても異なるが、現在一般的に使用されている連続鋳造用パウダーの場合、生成する結晶としてはカスピダイン(3CaO・2SiO2 ・CaF2 )とカーネギエイト(NaAlSiO4 )の2種類が最も一般的なものであり、この他にパウダーの成分系によっては(CaF2 )や(NaF)の結晶が生成する場合がある。
【0007】
先に述べた割れや凹みの発生を低減するためにパウダーの塩基度(CaO/SiO2 )を高く設定する狙いは、CAMP−ISIJ Vol−8,1010(1995)やCAMP−ISIJ Vol−8,1015(1995)に示されているように、溶融パウダー凝固時にカスピダイン結晶の生成を増大させることにある。
カーネギエイトは、1000℃以下の比較的低温で生成する結晶であり、鋳型・鋳片間の抜熱抵抗の増大にはあまり寄与しないと考えられる。冷却条件によってはカーネギエイトは生成せず、カーネギエイトと同一の組成を有するネフェライン(NaAlSiO4 )が生成する場合もある。
【0008】
溶融パウダーの冷却、凝固過程においてカスピダインが生成し始める温度は、冷却速度やパウダー成分の違いによって異なるが、緩冷却状態においてはパウダーの凝固温度にほぼ等しいと考えられる。カスピダインは、パウダー成分によっては1200℃以上の高い温度から生成し始めることから、カスピダインの生成を促進させることは、鋳型、鋳片間のパウダー流入フィルムの抜熱抵抗を増加させ、鋳片の緩冷却化を図る手段として極めて有効な方法である。
【0009】
しかして、カスピダインの生成量を増加させるためには、カスピダイン(3CaO・2SiO2 ・CaF2 )の成分からも判るように、パウダーの塩基度(CaO/SiO2 )ならびに F- 含有量を高く設定することが必要であるが、高塩基度化を指向すると溶融温度が著しく上昇するため、高溶融温度に起因するスラグベア(鋳型壁近傍に発生するスラグおよび未溶融パウダーからなる焼結物)の増大や潤滑性の低下といった問題が発生する。
このようなスラグベアの増大や潤滑性が低下した場合、操業の悪化や鋳片品質悪化の原因になるとともに、場合によっては鋳片の破断(ブレークアウト)といった重大な事故を引き起こす惧れがある。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、鋳片に発生する割れや凹みの防止に有効な鋳片緩冷却効果を有し、かつパウダーの高溶融温度に起因するスラグベアの増大や潤滑性の低下を防止し、ひいては操業の悪化や鋳片品質の低下を引き起こさないパウダーを提供することを目的とするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、パウダーの化学成分と溶融パウダー凝固時に生成する結晶との関係を詳細に調査した結果、▲1▼SiO2 −CaO系の結晶やSiO2 −CaO−Na2 O系の結晶が、カスピダイン結晶と同様鋳片の緩冷却化効果に優れていること、▲2▼SiO2 −CaO系の結晶やSiO2 −CaO−Na2 O系の結晶を生成せしめる成分系では、パウダーの溶融温度を低く設定することができ、従来、カスピダイン結晶を生成せしめる成分系のパウダーが有する高溶融温度に起因するスラグベアの増大や潤滑性の低下といった根本的な問題を解決できること、▲3▼溶融パウダーが冷却・凝固する過程において生成する結晶の種類は、溶融パウダーを徐冷により凝固させたスラグのX線回折分析により判定可能であり、また生成する結晶のうちどの種類の結晶が主要な結晶であるかは、X線回折分析における種々の結晶の最大回折ピーク高さの比較により充分判定可能であることを見出したものである。
【0012】
本発明の要旨とするところは以下のとおりである。
(1)請求項1の発明は、連続鋳造用パウダーにおいて、前記パウダー中のF − 量を2.8mass%以下とし、溶融パウダーが冷却、凝固する過程において複数の種類の結晶を生成し、かつX線回折分析による生成した結晶の回折X線強度のピーク高さの比較において、カスピダイン(3CaO・2SiO2・CaF2)結晶およびカーネギエイト(NaAlSiO 4 )結晶の最大ピーク高さが、SiO 2 −CaO系の結晶やSiO 2 −CaO−Na 2 O系の結晶の最大ピーク高さよりも低くなる結晶群であることを特徴とする連続鋳造用パウダーである。
【0013】
(2)請求項2の発明は、鋼中カーボンが0.05〜0.20mass%である中炭素鋼の鋳造に際して、前記請求項1に記載した連続鋳造用パウダーを使用することを特徴とする連続鋳造方法である。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の詳細を作用とともに具体的に述べる。
中炭素鋼(包晶組成の鋼を含む)や合金元素を含有し割れ感受性が強い鋼、また鋳型サイズが大きい場合や鋳造速度が早い場合に発生し易い鋳片の割れや凹みを防止する手段としては、先に述べたようにパウダーの塩基度(CaO/SiO2 )やF- 含有量を高く設定することにより、溶融パウダー凝固時のカスピダインの生成量を増大させることにより結晶性を強め、鋳片から鋳型への抜熱抵抗を大きくすることにより鋳片の緩冷却を図ったり、鋳型温度のバラツキを小さくする方法が採られている。
【0015】
鋳型、鋳片間の抜熱抵抗を増大させるためには、溶融パウダー凝固時にできるだけ高い温度で多量の結晶を生成させることが有効である。カスピダインは、パウダーの成分によっては1200℃以上の高い温度から生成し始めるために、鋳型・鋳片間の抜熱抵抗の増大には極めて有効である。しかしながらカスピダインを高い温度で多量に生成させるためには、パウダーの塩基度ならびにF- 含有量を高く設定することが必要であるが、高塩基度化はパウダーの溶融温度を著しく上昇させスラグベアの増大や潤滑性の低下を引き起こす原因となる。
【0016】
特開平10−216907号公報には、高塩基度化やカスピダイン生成量増大にともなう溶融特性の悪化を防止するため、Li2 O,Na2 O,K2 O,Rb2 O,Cs2 O等の酸化物を添加し成分を調整することにより、生成する結晶相をカスピダインよりも溶融温度が低いLiCa2 FSiO4 やNaCa2 FSiO4 にすることが開示されている。
しかしながら、溶融パウダ−凝固時にLiCa2 FSiO4 やNaCa2 FSiO4 といった結晶を積極的に生成させようとする場合にも、パウダー成分としては高塩基度化や高F- 化が必須であり、こためパウダーの溶融温度を十分に低くすることはできない。
【0017】
パウダーの溶融温度を低下させる一般的な手段としては、溶融温度を低下させる効果を有するNa2 OやLi2 Oといったフラックス成分が添加されるが、Na2 OやLi2 Oは溶融温度だけではなく粘度も低下させる効果をも付随して有しているため、高塩基度化や高F- 化で粘度が低くなっている状態でのNa2 OやLi2 Oの添加量には限界があり、このため溶融温度を十分には低下させることができず、スラグベアの増大や潤滑性の低下といった基本的な問題を解決することはできない。
【0018】
本発明者らは、パウダーの化学成分と溶融パウダー凝固時に生成する結晶との関係を詳細に調査・検討した結果、SiO2 −CaO系の結晶やSiO2 −CaO−Na2 O系の結晶が、カスピダインと同様鋳片の緩冷却化効果に優れること、またSiO2 −CaO系の結晶やSiO2 −CaO−Na2 O系の結晶を生成せしめる成分系では、スラグベアの増大や潤滑性の低下といった問題を発生しない程度にまで、溶融温度を十分低く抑えることが可能であることを見出した。
すなわち、十分実用的なパウダー特性有する成分範囲内において、カスピダインと同様高温で生成し、鋳片から鋳型への抜熱抵抗を大きくすることにより鋳片の緩冷却化が可能な結晶は、3CaO・2SiO2 ,2CaO・SiO2 といったSiO2 −CaO系の結晶,Na2 O・3CaO・2SiO2 ,Na2 O・CaO・SiO2 といったSiO2 −CaO−Na2 O系の結晶であり、かつSiO2 −CaO系の結晶やSiO2 −CaO−Na2 O系の結晶を生成せしめる成分系では、溶融温度を十分低く抑えることが容易であることを確認することができた。
鋳型・鋳片間のパウダー流入フィルムの抜熱抵抗を増加させ鋳片の緩冷却化を図るためには、カスピダインのように、溶融パウダー凝固時の結晶生成開始温度がパウダ−の凝固温度近傍である必要がある。結晶生成開始温度が低い場合には、パウダー流入フィルムの抜熱抵抗は小さく鋳片の緩冷却化には余り寄与しないものと考えられる。
【0019】
本発明者らがパウダー成分と溶融パウダー冷却時に生成する結晶の種類と生成開始温度を調査した結果では、結晶生成開始温度がパウダーの凝固温度近傍であるという高い温度での結晶は、3CaO・2SiO2 ,2CaO・SiO2 といったSiO2 −CaO系の結晶,Na2 O・3CaO・2SiO2 ,Na2 O・CaO・SiO2 といったSiO2 −CaO−Na2 O系の結晶であることが判った。
生成する結晶は、常に成分が一定でかつ生成する結晶の種類も一種類であるということはなく、パウダー成分や溶融スラグの冷却条件によっては結晶成分の構成比が異なった結晶が、単一もしくは複数の種類の結晶となって生成する。
すなわちSiO2 −CaO系の結晶ではSiO2 ,CaOの成分比が、XCaO・YSiO2 (X,Yは各成分の量比)のように、またSiO2 −CaO−Na2 O系の結晶ではSiO2 ,CaO,Na2 Oの構成比が、XNa2 O・YCaO・ZSiO2 (X,Y,Zは各成分の量比)のように異なる場合がある。
しかしながらいずれの結晶についても、結晶生成開始温度は高く、ほぼパウダーの凝固温度に近い温度である。
【0020】
先に述べたように、一般的に使用されているパウダーの成分系において、溶融パウダーの凝固過程で生成する結晶はカスピダインが最も主要な結晶であり、かつ最も優先的に生成する傾向にある。またカスピダインの生成はパウダー成分の高塩基度化、高F−化により促進されるが、逆にパウダ−中のF−量が少なくなる程、カスピダインの生成量は減少する。
このため溶融パウダーの凝固過程において生成する主要な結晶をSiO2−CaO系の結晶やSiO2−CaO−Na2O系の結晶にするためには、まず第一にパウダー中のF−量を2.8mass%以下まで少なくしカスピダインの生成を抑制し、次に塩基度やNa2O,Li2O,MgO等の他の成分を調整してやれば良い。
【0021】
溶融パウダーの凝固過程において、SiO2 −CaO系の結晶やSiO2 −CaO−Na2 O系の結晶が生成するか否かは、パウダーを電気炉で溶融した後、1℃〜20℃/分程度の冷却速度で冷却し、凝固したスラグをX線回折装置にかけることにより生成結晶の種類を分析し確認することができる。溶融パウダーの冷却速度が大き過ぎる場合には、過冷により結晶が生成し難くなるため生成結晶の判定が困難となる。
【0022】
本発明における主要点は、溶融パウダーの凝固過程においてSiO2 −CaO系やSiO2 −CaO−Na2 O系の結晶を生成させることにあるが、さらにパウダーに良好な鋳片緩冷却効果やスラグベア防止効果、また潤滑性を保持させるためには、SiO2 −CaO系やSiO2 −CaO−Na2 O系の結晶量を他の種類の結晶量(カスピダインやカーネギエイト等の量)よりも多く生成させる必要がある。
このためには、SiO2 −CaO系やSiO2 −CaO−Na2 O系の結晶の回折ピーク高さが他の種類の結晶の回折ピーク高さよりも高くしなければならない。
【0023】
X線回折装置については、例えば、「X線分析」,共立出版(1968)に記載されている。X線回折による化学分析は、組成分析=状態分析であって、試料中の全鉄分とか、全ケイ酸分とかを決定するものではなく鉄が金属鉄としてあるのか、酸化鉄としてあるのかを調べたり、酸化ケイ素が石英としてどのくらい、ケイ酸塩としてどのくらいあるのかをきめるのに用いられるものである。その意味でこの方法は元素分析である湿式化学分析、発光分光分析、けい光X線その他の機器分析ではなしえない独自の特徴をもっている。
その原理は、結晶はそれぞれ多くの結晶面から成っているが、それぞれの結晶面は−−結晶の原子配列に応じて−−特有の面間隔 di(d1,d2,d3,・・・・,dn) をもっており、またX線に対する反射強度もそれぞれ異なっている。試料結晶についてこれら一連の値を測定し既知のデーダーとの比較によって、その結晶を識別することができる。
このようにX線回折装置は物質の結晶構造を調べるのに適した装置であり、一般的に用いられ実用に供されている。
【0024】
この例に倣って、溶融後、徐冷により凝固させたパウダーがどのような結晶を生成しているかを図1,図2に表してみた。図1,図2における横軸はX線回折装置における回折角度を示したものであり、縦軸はX線回折装置において回折された結晶固有のX線強度を示している。
なお、図において生成結晶の種類を略号で示したが、この略号は後述する実施例でどのような成分系の結晶であるかを示している。
【0025】
通常、回折X線強度のピークは、一つの結晶につき高さの異なる複数のピークが観察される。X線強度のピークが高い程その結晶の量が多いことを示しているが、結晶の種類が異なると回折角度や回折X線の強度が異なることから、一般的にはX線強度のピーク高さの比較で種類の異なる結晶の生成量の多少を厳密には判定できない。しかしながら溶融後に冷却凝固したパウダー中に生成した複数の結晶のうち、どの結晶が主要な結晶であるかを判定するに当たっては、複数の結晶の最大ピーク高さを比較し、「最大ピーク高さの最も高い結晶が主要な結晶である」としても、実用上十分有効である。
【0026】
本発明で特定している溶融パウダーが冷却、凝固する過程において生成する主要な結晶が、SiO2 −CaO系の結晶やSiO2 −CaO−Na2 O系の結晶であると云うことは、前述したように凝固したスラグをX線回折装置にて分析することにより生成結晶の種類を確認し、SiO2 −CaO系の結晶やSiO2 −CaO−Na2 O系の結晶が、例えば他のカスピダインやカーネギエイトの結晶よりも若干でも多い(回折X線強度の最大ピーク高さが高い)ことを意味している。
したがって、本発明の目的を達成のためには、SiO2 −CaO系やSiO2−CaO−Na2 O系の結晶の回折ピーク高さに注目し、例えば他のカスピダインの結晶よりも少しでも高くしなければならない。
【0027】
SiO2 −CaO系やSiO2 −CaO−Na2 O系の結晶の生成を促進させるためには、F- 含有量をできるだけ少なくする必要があるが、F- 含有量を少なくする場合には、F- 含有量減少にともなうパウダー粘度の上昇を補うため、F- と同様パウダーの粘度を低下させる効果を有するNa2 OやLi2 O,MgO等の成分をF- の代替成分として使用すれば良い。この場合Na2 OやLi2O,MgO等の成分は、溶融温度を低下させる効果も大きいため、カスピダインを生成する成分系のパウダーで問題となった溶融温度の上昇を防止することができる。
すなわち、SiO2 −CaO系やSiO2 −CaO−Na2 O系の結晶生成を考慮したパウダー成分系にすることにより、カスピダイン結晶と同様、高い温度で多量の結晶を生成させ、かつ溶融温度を低く保つことが可能であることから、鋳型・鋳片間の抜熱抵抗の増加ならびにスラグベアの抑制、潤滑性の確保を同時に満足させることが可能となる。
【0028】
したがって、鋼中カーボンが0.05〜0.20mass%である中炭素鋼や、[Nb],[Mo],[V],[Mn],[Cr],[S],[B]等の元素を含有する割れ感受性の強い鋼の連続鋳造に適用してその効果が期待できる。また、従来のパウダーでは鋳片品質に不安のあった鋳型幅900mm以上でかつ鋳造速度が1.0m/min以上で鋳造される鋼の連続鋳造に際しても、鋳片の欠陥を危惧することなしに使用することができる。
【0029】
【実施例】
次に、本発明の効果を実施例に基づいて説明する。
表1,2に示す成分、物性を有するパウダーを試作し、実際の製鉄所における連鋳機にて鋳造試験を行った。鋳造した結果によって評価したパウダーの溶融特性ならびに鋳片品質(縦割れ、凹みの発生)の結果を表1,2に併記した。表1には本発明の実施例を示し、表2には比較のための従来例を示した。
なお、表中には溶融パウダー徐冷時に生成する結晶をの略号で示したが、該欄中に記載した略号はその結晶の発生が多い(最大回折ピーク高さが高い)ものから順次上から下へ表示した。
また、鋳造結果の欄の溶融特性の評価については、スラグベア,潤滑性低下の防止効果の良否を、また鋳片品質の評価については、縦割れ,凹みの発生防止効果の良否につきそれぞれ示し、これら全体を判断して総合評価としてまとめた。
【0030】
【表1】
【0031】
【表2】
【0032】
A,B,C,D,Eは、従来のパウダーF,G,H,I,Jと粘度、凝固温度をほぼ同じに設定した本発明のパウダーで、溶融パウダー徐冷時に生成する結晶は、CaO−SiO2 系やSiO2 −CaO−Na2 O系の結晶であり、高塩基度化に伴う溶融特性の低下も無く、鋳片品質も非常に良好であった。
フッ素を若干含有しているAでは、カーネギエイトの他、少量ではあるがカスピダインの生成が認められ、またB,Dではカーネギエイトの生成が、またEではカーネギエイトの他(Li2 O・Al2 O3 ・2SiO2 )といったLi2 O−Al2 O3 −SiO2 系の結晶の生成も認められたが、溶融特性上も、鋳片品質上も、特に問題は無かった。
【0033】
本発明パウダーに対し、F,G,H,I,Jは従来タイプのパウダーで、溶融パウダー徐冷時に生成する結晶は、カスピダインもしくはカスピダインとカーネギエイトであり、塩基度が高くなるに伴い溶融特性が低下しスラグベアの発生が大となるとともに、潤滑性が低下する傾向にあった。
さらに、K,Lは、高塩基度化やカスピダイン結晶生成量増大にともなう溶融特性の悪化を防止するため、Li2 O,Na2 O,K2 O,Rb2 O,Cs2 O等の酸化物を添加し成分を調整することにより、生成する結晶相をカスピダインよりも溶融温度が低いLiCa2 FSiO4 やNaCa2 FSiO4 にすることを目的とし、前述した従来技術の実施例の中で示された成分とほぼ同一の成分を有するパウダーであるが、いずれのパウダーも高塩基度であることから溶融温度が高く、スラグベアの発生が大であり、また特にLのパウダーの場合には潤滑性低下に起因するブレークアウトの事前検知信号が発生し、鋳片品質においても縦割れ発生のため不良品となった。
【0034】
【発明の効果】
本発明は、溶融パウダーが凝固する過程において生成する結晶を、カスピダインではなく、SiO2 −CaO系の結晶やSiO2 −CaO−Na2 O系の結晶にすることにより、鋳片の緩冷却効果に優れ、かつパウダーの高溶融温度に起因するスラグベアの増大や潤滑性の低下を防止し、ひいては操業の悪化や鋳片品質の低下を引き起こさないパウダーを提供するものであり、これにより連続鋳造時の鋳片の割れや凹みの発生を著しく低下させることができ、歩留りの高い鋳片の製造が可能となることから、その工業的価値は極めて高いものがある。
【図面の簡単な説明】
【図1】溶融後徐冷し凝固させた従来パウダーのX線回折結果の一例を示す図であり、結晶の種類とその回折ピーク高さを示す。
【図2】溶融後徐冷し凝固させた本発明パウダーのX線回折結果の一例を示す図であり、結晶の種類とその回折ピーク高さを示す。
Claims (2)
- 連続鋳造用パウダーにおいて、前記パウダー中のF − 量を2.8mass%以下とし、溶融パウダーが冷却、凝固する過程において複数の種類の結晶を生成し、かつX線回折分析による生成した結晶の回折X線強度のピーク高さの比較において、カスピダイン(3CaO・2SiO2・CaF2)結晶およびカーネギエイト(NaAlSiO 4 )結晶の最大ピーク高さが、SiO 2 −CaO系の結晶やSiO 2 −CaO−Na 2 O系の結晶の最大ピーク高さよりも低くなる結晶群であることを特徴とする連続鋳造用パウダー。
- 鋼中カーボンが0.05〜0.20mass%である中炭素鋼の鋳造に際して、前記請求項1に記載した連続鋳造用パウダーを使用することを特徴とする連続鋳造方法。
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