JP4598330B2 - 防食方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、水系における金属防食剤及び防食方法に関し、特に水系において金属部材の腐食を効果的に防止し得る防食剤及び防食方法に関する。本発明は、冷却水処理系、排水処理系、工業用水処理系、純水処理系等の各種水処理系全般に適用することができるものである。
【0002】
【従来の技術】
鉄鋼産業や各種化学プラントなどでは機器の冷却に広範囲で冷却水が利用されている。こうした冷却水系では、配管を軟鋼で形成し、熱交換器は銅や銅合金等の銅系金属で形成する場合が多い。このような金属製の配管や熱交換器の腐食を如何に防ぐかは、冷却水系が抱える一つの大きな問題である。一般に、冷却水系で使用される冷却水の中にはカルシウムなどの硬度成分が存在するのが通常で、冷却のために水の一部が蒸発するため、強制的に冷却水の一部を入れ替えない限り硬度成分が濃縮される。硬度成分が多量に含まれる水は一般に金属を腐食させ難いため、適度に冷却水を濃縮し、硬度成分の濃度を高めることで防食を図ることができる。このような系では、配管の閉塞や熱交換器の伝熱に支障を来すスケールの防止のために水溶性ポリマー系分散剤のみを添加することで冷却水系の障害を防ぐことも可能である。
【0003】
一方、環境問題がクローズアップされている近年は、各種設備や工場から系外への有害物質等を含む排水量を減少させる動きが活発化している。コンビナート等の大型工場では、その補給水は地域の工業用水であることが多く、コストの観点から燐・亜鉛系の沈澱被膜型の防食方法を利用するケースが多いが、冷却水のスケール化を嫌うことから、低濃縮(1〜4倍濃縮程度)運転で操業するケースが多い。そのため、冷却水中の塩化物イオン、硫酸イオン、シリカ、有機物などの水質成分の濃度が低く、このような冷却水系では、一般に硬度成分は10〜200mg/リットル(CaCO3として)程度であり、金属類、特に軟鋼に対する腐食性が高い。このような水質の水系で使用される防食剤としては水溶性ポリマー系分散剤のみでは防食効果が弱いため、コストの利点から、水溶性ポリマー系分散剤と燐・亜鉛系の防食剤とを併用するケースが多い。しかし、大型工場では、冷却水の使用量が多く、これに比例して上記燐・亜鉛系防食剤を始めとする冷却水処理薬剤の使用量も多くなる。そのため、とりわけ環境負荷の大きい燐・亜鉛系防食剤の使用量を少しでも少なくすることは、恒久的な課題である。なお、防食剤として亜鉛系化合物を主成分とする水処理薬剤は、適応できる水質範囲(特にpH等)が限られ、亜鉛水酸化物の析出などのために長時間安定した防食効果を確保することは困難であり、また、亜鉛の多量流出は環境に対して有害である。また、冷却水系は水を一部蒸発させながら水を循環させるので、蒸発の進行による水質の一定以上の悪化を防止するため、冷却水の一部をブローによって排出する操作を繰り返すが、ブロー水と共に燐系化合物を海や河川や湖沼へ排出、放流すれば富栄養化の原因になる
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
亜鉛系化合物としての亜鉛塩類はPRTR法(「Pollutant Release and Transfer Registration」に関する一種の廃棄物規制法)の指定化学物質であり、また、上述の様に燐酸塩類等の燐系化合物を海や河川や湖沼へ排出、放流すれば富栄養化の原因になるため、その使用量は極力低減する必要がある。しかし、燐・亜鉛成分の不足は腐食障害に直結するため、通常は安全を見た量を冷却水処理薬品に配合する。しかしながら、従来の冷却水処理剤の多くは燐酸塩や亜鉛塩等の燐・亜鉛成分に対する水溶性ポリマーの分散力が十分でないため、熱負荷の高い場所等で局所的に燐・亜鉛系の不溶化物を必要以上に析出させ、スケール障害を起こすケースが多く、問題となっている。そのため、燐・亜鉛成分のスケール化により、防食薬剤として燐・亜鉛成分を十分な量を配合しているにも拘らず、水中の燐・亜鉛成分が不足し、二次的に腐食が進行するケースも存在した。本発明は、かかる従来技術の欠点を解消せんとするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者等は、或る特定の水溶性共重合体を冷却水処理剤等の水処理剤に一定量配合することで燐酸塩や亜鉛塩等の燐・亜鉛防食成分を上記水溶性共重合体によって効率良く分散させて燐や亜鉛による防食効率を向上させるとともに、その水溶性共重合体自身が有する防食効果を利用することで防食力に相乗効果を持たせることを実現することで、水処理剤としての防食・分散効果を保持しつつ、燐・亜鉛成分の使用量を格段に低減させ、そのことにより環境負荷を低減させ得ることを見出し、本発明の防食剤と防食方法を完成した。
【0006】
即ち、本発明は、亜鉛化合物と燐化合物、および、少なくとも(メタ)アクリル酸及び/又はその塩の単量体単位、(メタ)アクリルアミド−アルキル−及び/又はアリール−スルホン酸及び/又はその塩の単量体単位及び置換(メタ)アクリルアミドの単量体単位からなる水溶性共重合体を含有することを特徴とする防食剤を提供するものである。
【0007】
本発明の水系における防食剤および防食方法は、燐化合物、亜鉛化合物、上記水溶性共重合体の相乗効果により軟鋼製の配管鋼材等の腐食を効果的に防止し、また、冷却水系の装置内などでは、一般には高温部にスケールとして付着し易い燐酸塩などが良く分散されているために付着することもなく、高温部で伝熱阻害を起すこともないという優れた効果も発揮することができる。
【0008】
本発明の防食剤において、亜鉛化合物としては、具体的には、例えば、硫酸亜鉛、塩化亜鉛、酢酸亜鉛、亜鉛酸ナトリウム、亜鉛酸カリウムなどを挙げることができる。亜鉛化合物による沈澱皮膜防食は、亜鉛化合物単独でも十分な量を添加すれば防食効果がある。しかし、亜鉛のスケール化を防止するため、また、その有害性を考慮に入れると、その使用量は極力抑えたい。本発明は、亜鉛化合物の使用量を減らすために鋭意研究した結果、亜鉛化合物を分散させる効果のある上記水溶性共重合体を同時添加することによって、亜鉛化合物の使用量を減少させつつも、従来と比べて更なる防食効果をもたらすことに成功した。
【0009】
燐化合物としては、具体的には、例えば、オルト燐酸、ピロ燐酸、トリポリ燐酸、ヘキサメタ燐酸などやそれらの塩類等の無機燐化合物類や、ニトリロトリメチレンホスホン酸、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸などやそれらの塩類等の有機燐化合物類を挙げることができる。防食効果を強化する目的で、上記の様な無機燐化合物と上記の様な有機燐化合物を組み合わせて用いるのが好ましく、この場合、無機燐化合物/有機燐化合物重量比が1:10〜10:1であるのが好ましい。本発明では、上記水溶性共重合体の作用により燐化合物の分散効率を向上させた結果、燐化合物の使用量に対しても、その量を減少させつつも、従来と比べて更なる防食効果をもたらすことに成功した。
【0010】
本発明で用いる水溶性共重合体は、高分子電解質であり、スケール成分の抑制効果のほか、燐酸塩、亜鉛塩等の燐化合物と亜鉛化合物を効率良く分散させ、またそれ自身が防食効果を有するため、燐化合物と亜鉛化合物の防食効果を相乗的に向上させる効果をもつ。上記水溶性共重合体は、(メタ)アクリル酸及び/又はその塩の単量体単位、(メタ)アクリルアミドアルキルスルホン酸及び/又はその塩及び/又は(メタ)アクリルアミドアリールスルホン酸及び/又はその塩の単量体単位及び置換(メタ)アクリルアミドの単量体単位を少なくとも含み、代表的には三元共重合体であり、好ましくは、(メタ)アクリル酸及び/又はその塩の単量体単位は下記の式(1)で、(メタ)アクリルアミド−アルキル−及び/又はアリール−スルホン酸及び/又はその塩の単量体単位は下記の式(2)で、置換(メタ)アクリルアミドの単量体単位は下記の式(3)でそれぞれ表わされる。
【0011】
【化1】
【0012】
(式中、R1は水素原子又はメチル基を表し、X1は水素原子、1価又は2価の金属原子、アンモニウム基又は有機アンモニウム基を表す。)
【0013】
【化2】
【0014】
(式中、R2は水素原子又はメチル基を表し、X2はアルキルスルホン酸基又はその塩、または、アリールスルホン酸基又はその塩を表わし、塩の場合は1価又は2価の金属塩、アンモニウム塩又は有機アンモニウム塩である。)
【0015】
【化3】
【0016】
(式中、R3は水素原子又はメチル基を表し、X3とX4はそれぞれ独立に水素原子又はアルキル基を表すが、少なくとも一方がアルキル基である。)
【0017】
なお、式(1)と式(2)中の有機アンモニウム塩は、炭素原子数が1〜4のアルキル又はヒドロキシアルキル基を有する(ヒドロキシ)アルキルアンモニウム基であるのが好ましい。式(2)において、X2がアルキルスルホン酸基又はその塩である場合のアルキル基は炭素原子数が1〜8のアルキル基であるのが好ましく、X2がアリールスルホン酸基又はその塩である場合のアリール基は炭素原子数が8〜10のアリール基又はアラルキル基であるのが好ましい。また、式(3)中のX3とX4の一方又は両方のアルキル基は炭素原子数が1〜8のアルキル基であるのが好ましい。これらの単量体単位の好ましい重量比率は、(メタ)アクリル酸及び/又はその塩単量体単位:(メタ)アクリルアミド−アルキル−及び/又はアリール−スルホン酸及び/又はその塩単量体単位:置換(メタ)アクリルアミド単量体単位=5〜90:5〜50:5〜50である。式(1)、式(2)、式(3)でそれぞれ表わされる各単量体単位は、各式で表わされる1種の単量体単位であっても、複数種の単量体単位の混合であってもよい。
【0018】
本発明の防食剤は一般に配合品として提供され、例えば、その配合組成は、防食性やスケール防止性等の観点から、防食剤組成物の総重量に対して、上記水溶性共重合体の含有量が好ましくは1〜50重量%、より好ましくは5〜30重量%である。上記水溶性共重合体の含有量が1重量%未満の場合には時に充分な防食効果を期待できないこともあり、50重量%を超える場合には時に薬剤の安定性が損なわれることもあると共にコスト高にもなり、あまり好ましくない。亜鉛化合物の配合比率は、上記総重量中、0.1〜10重量%が好ましく、0.2〜6重量%がより好ましい。亜鉛化合物の配合比率が10重量%を超える場合には薬剤の安定性が損なわれるため、あまり好ましくない。燐化合物の配合比率は、上記総重量中、0.1〜15重量%が好ましく、0.2〜10重量%がより好ましい。燐化合物として、無機又は有機燐化合物を1種類単独で配合しても良いが、無機燐化合物と有機燐化合物を1:10〜10:1の重量比で配合するのが好ましい。また、本発明の防食剤は、後に詳述する(メタ)アクリル酸系ポリマー及び/又はマレイン酸系ポリマー、銅防食剤であるアゾール系化合物、菌類抑制剤などの他の成分を含んでもよい。また、本発明の防食剤(配合品)には水が含まれるのが通常で、その水含有量は、好ましくは30〜95重量%、より好ましくは50〜90重量%、更に好ましくは60〜80重量%である。なお、本発明の防食剤の各成分を別々に被処理水系に添加しても同様の効果を得ることができるのは勿論のことであり、被処理水系に各成分を添加した段階で本発明の範囲に含まれることになり、その場合に各成分割合が上記の各成分含有量を比率に換算したものに相当するのが好ましいのも言うまでもない。
【0019】
本発明の防食剤(配合品)は、後述の様に、菌類抑制剤を配合してもよい。防食剤が菌類抑制剤を含有するか否かによって、効果などの観点から、本発明の防食剤(配合品)の使用濃度は異なってくるのが通常である。従って、本発明は、本発明の防食剤が菌類抑制剤を含有していない場合は、水系において該防食剤を20〜300mg/リットルの濃度範囲内に希釈・保持して使用することを特徴とする水系防食方法、並びに、本発明の防食剤が菌類抑制剤を含有している場合は、水系において該防食剤を50〜1000mg/リットルの濃度範囲内に希釈・保持して使用することを特徴とする水系防食方法をも提供する。
【0020】
上記の防食方法において、亜鉛化合物を0.1〜5mg/リットル、前記燐化合物を0.2〜10mg/リットル、および、前記水溶性共重合体を1〜50mg/リットルを水中に保持するのが、効果の点で好ましい。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。本発明の防食方法は、特定の水溶性共重合体と燐化合物と亜鉛化合物を含有する水系防食剤を用いて、冷却水処理系、排水処理系、工業用水処理系、純水処理系等の水処理系全般において、金属部材の腐食を防止するために、適用することができるものであり、好ましくは冷却水系で用いると優れた効果を発揮する。
【0022】
式(1)で表わされる(メタ)アクリル酸及び/又はその塩単量体単位を構成する為に用いられる好ましい単量体としては、例えば、メタアクリル酸、アクリル酸及びそれらのナトリウム塩を挙げることができる。式(2)で表わされる(メタ)アクリルアミド−アルキル−及び/又はアリール−スルホン酸及び/又はその塩単量体単位を構成する為に用いられる好ましい単量体としては、例えば、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸及びその塩などを挙げることができる。また、式(3)で表わされる置換(メタ)アクリルアミド単量体単位を構成する為に用いられる好ましい単量体としては、例えば、t−ブチルアクリルアミド、t−オクチルアクリルアミド、ジメチルアクリルアミドなどを挙げることができる。また、式(1)、式(2)、式(3)で表わされる単量体単位を構成する単量体類に加えて、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸等のジカルボン酸類やその塩又は無水物、ヒドロキシエチルメタクリレートやヒドロキシプロピルアクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類や酢酸ビニールなどを本発明の防食剤の効果を損なわない限りの量で用いることもできる。
【0023】
上記の水溶性共重合体を合成する方法は、(メタ)アクリル酸の共重合体の一般的な合成方法でよく、例えば、特開昭62−129136号公報に開示されているのと同様の方法を用いることができる。より具体的には、例えば、少なくとも式(1)、式(2)及び式(3)に相当する単量体を水やイソプロパノール等の溶媒中で、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過酸化ベンゾイル等の重合開始剤を用いて、所定の温度で、所定の単量体濃度で重合させればよい。この際、必要に応じて、分子量調節のために、塩化第1銅、塩化第2銅、硫酸第2銅、硫酸第1鉄、重亜硫酸ナトリウム等の金属塩類を用いてもよい。
【0024】
本発明の防食剤に亜鉛化合物及び燐化合物と共に含有される上記水溶性共重合体は、上記の式(1)及び式(2)及び式(3)の単量体単位を少なくとも含む特定のアクリル酸系共重合体の高分子電解質であり、この高分子電解質は、スケール成分の抑制効果のほか、燐酸塩、亜鉛塩等の燐化合物と亜鉛化合物を効率良く分散させ、またそれ自身が防食効果を有するため、燐化合物と亜鉛化合物の防食効果を相乗的に向上させる効果をもつ。この水溶性共重合体の重量平均分子量は、1500〜25000が好ましい。
【0025】
亜鉛化合物及び燐化合物と高分子電解質である上記水溶性共重合体に加えて、冷却水系等の処理水系によっては、更に銅や銅合金等の銅系金属用の防食剤であるアゾール系化合物を本発明の防食剤に配合するのが好ましい。そのようなアゾール系化合物としては、例えば、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、アミノトリアゾールなどを挙げることができ、これらは単独でも混合しても用いることができる。ベンゾトリアゾールとトリルトリアゾールが好ましい。また、スケールの抑制効果を強化するために他の(メタ)アクリル酸系ポリマーやマレイン酸系ポリマーを併用することも可能である。そのようなポリマーとしては、具体的には、ポリアクリル酸、ポリマレイン酸、アクリル酸と2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸よりなる重合体等を挙げることができ、これらは単独でも混合しても用いることができる。更に、スライムや微生物腐食の発生を防ぐため、菌類抑制剤を、本発明の防食剤に併用又は配合するのが好ましい場合もある。そのような菌類抑制剤としては、例えば、次亜塩素酸塩類、次亜臭素酸塩類、有機硫黄窒素化合物類、有機臭素窒素化合物類などが挙げられ、これらは単独でも混合しても用いることができる。特に有機硫黄窒素化合物類が好ましく、その具体例としては、2−メチル−3−イソチアゾロン、5−クロロ−2−メチル−3−イソチアゾロン、4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−3−イソチアゾロンなどを挙げることができ、これらは単独でも混合しても用いることができる。アゾール系化合物の配合量は、本発明の防食剤(配合品)の総重量に対して、0.01〜10重量%であるのが効果とコストの点から好ましい。他の(メタ)アクリル酸系ポリマーやマレイン酸系ポリマーを配合する場合は、本発明の防食剤(配合品)の総重量に対して、1〜30重量%が好ましい。菌類抑制剤の配合量は、本発明の防食剤(配合品)の総重量に対して、1〜30重量%であるのが効果とコストの点から好ましい。
【0026】
本発明の防食剤は、上記の様な菌類抑制剤を含有していない場合は、水系において通常20〜300mg/リットルの濃度範囲に希釈・保持して使用すると良く、上記の様な菌類抑制剤を含有している場合は、通常50〜1000mg/リットルの濃度範囲に希釈・保持して使用すると良い。
【0027】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、実施例は本発明を限定するものではない。
【0028】
実施例1〜2及び比較例1〜8
表1に示す成分を含有する水系防食剤を調製し、表1に示す各成分添加濃度となる様に試験水中に添加し、試料水を調製し、工業用水腐食試験法(JIS−K0100)に従った質量減法によって軟鋼の腐食速度を測定した。即ち、各試料水中に試験片を固定した円盤を投入し、一定の速度で回転させながら7日間浸漬した。7日後に試験片を取り出し、除錆して重量を測定した。試験開始前に測定した試験片重量との差から腐食速度を求めた。
【0029】
[試験条件]
試験水:pH7.0、カルシウム硬度60mg/リットル(CaCO3換算)
水温:35℃
攪拌速度:150rpm
試験片:軟鋼(SS400)、30mm×50mm×1mm
薬剤濃度:防食剤製剤として100mg/リットル
試験期間:7日間
【0030】
試験結果を表1に示す。表1において、「HEDP」は1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、「PAA」はポリアクリル酸、「ATER」は本発明で用いる水溶性三元共重合体、「AABI」はアクリル酸系二元共重合体、「PMAA」はポリマレイン酸であり、「MDD」は腐食速度の単位であり、mg/dm2・dayを表し、「分子量」は重量平均分子量である。表1中の各ポリマー種の特徴としては、ポリアクリル酸は式(1)の単量体単位中のX1が水素原子である水溶性単独重合体、本発明で用いる水溶性三元共重合体ATERは式(1)の単量体単位+式(2)の単量体単位+式(3)の単量体単位(重量比率=50:25:25)からなる水溶性共重合体で、アクリル酸系二元共重合体AABIは式(1)の単量体単位+式(2)の単量体単位(重量比率=60:40)からなる水溶性共重合体、ポリマレイン酸はマレイン酸単量体単位のみからなる水溶性単独重合体である。ここで、式(1)に相当する単量体としてはアクリル酸を、式(2)に相当する単量体としては2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸を、式(3)に相当する単量体としてはt−ブチルアクリルアミドを用いた。
【0031】
【表1】
【0032】
表1の比較例1より、燐化合物と亜鉛化合物を2:1の比で、ポリマーの併用なしに使用した場合、確実な防食効果(MDD10以下とする)を得るには、最低でも燐5mg/リットル、亜鉛2.5mg/リットル程度の添加量が必要である。しかしながら、燐化合物、亜鉛化合物の高濃度添加は、防食皮膜のスケール化、系外排出時の環境汚染など問題も多い。
【0033】
比較例2〜3と実施例1より、燐化合物5mgPO4 3- /リットル、亜鉛化合物2.5mgZn/リットルとポリマーとを併用すれば、どのポリマーの種類でも非常に高い腐食抑制能を示す。しかし、比較例5〜8より、燐化合物を1mgPO4 3- /リットル、亜鉛化合物を0.5mgZn/リットルに減少した場合、ポリマーがない場合は大きく腐食速度が増加し(比較例5)、通常のポリマーと併用した場合も腐食速度は依然高かった(比較例6〜8)。一方、水溶性三元共重合体ATERを併用した場合は腐食速度が1.8ととりわけ防食効果が優れていた(実施例2)。このことから、本発明による水溶性三元共重合体ATERと燐化合物及び亜鉛化合物による防食の相乗効果が特に優れていることが分かる。
【0034】
【発明の効果】
本発明の水系防食剤及び防食方法は、特有の水溶性共重合体を用いることで、燐化合物と亜鉛化合物の添加量を抑えることに成功したものである。そのため、燐による海、河川、湖沼の富養化、亜鉛の毒性等による環境汚染の低減、更にはコストダウンを図ることができた。また、特有の水溶性共重合体の分散効果により、冷却水装置系の高温部でもスケールが付着することがなく、冷却水系の装置内で使用すれば高温部で伝熱阻害を起こすこともないという優れた効果も発揮する。
【0035】
本発明の防食剤及び方法は、金属部材の腐食を防止するために、冷却水処理系、排水処理系、工業用水処理系、純水処理系等の各種水処理系全般に適用することができるが、大型工場での冷却水系で特に有利に用いることができる。
Claims (1)
- 亜鉛化合物を0.1〜2.5mgZn/リットル、ニトリロトリメチレンホスホン酸、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸及びそれらの塩類から選ばれる少なくとも一種の燐化合物を0.2〜5mgPO 4 3- /リットル、および、少なくとも(メタ)アクリル酸及び/又はその塩の単量体単位、(メタ)アクリルアミド−アルキル−及び/又はアリール−スルホン酸及び/又はその塩の単量体単位及び置換(メタ)アクリルアミドの単量体単位を少なくとも含む水溶性共重合体を1〜50mg/リットルを水中に保持することを特徴とする防食方法。
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