JP4787433B2 - 水処理方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、水処理薬剤及び方法に関し、特に冷却水等として高硬度水(全硬度でCaCO3として500mg/リットル以上の水)を用いる水系において、金属、非金属部材に対する硬度系スケールの付着を防止するための水処理薬剤及び水処理方法に関する。本発明の水処理薬剤及び方法を利用できる水系は、冷却水処理系が主であるが、本発明は、排水処理系、工業用水処理系、純水処理系等の各種水処理系全般に適用することができるものである。
【0002】
【従来の技術】
ビル空調、鉄鋼産業や各種化学プラントや石油化学コンビナート等の各種工場などでは機器の冷却に広範囲で冷却水が利用されている。こうした冷却水系では、配管を軟鋼で形成し、熱交換器は銅や銅合金等の銅系金属で形成する場合が多い。このような冷却水系の障害防止としては、金属製配管や熱交換器の腐食防止やスケール防止がある。一般に、冷却水系で使用される冷却水の中にはカルシウムなどの硬度成分が存在するのが通常で、冷却のために水の一部が蒸発するため、強制的に冷却水の一部を入れ替えない限り硬度成分が濃縮される。硬度成分が多量に含まれる水は一般に金属を腐食させ難いため、冷却水を2〜6倍程度に濃縮し、硬度成分の濃度を高めることで防食を図ることができる。この場合、硬度成分は200〜500mg/リットル(CaCO3として)程度である。このような系では、配管の閉塞や熱交換器の伝熱に支障を来すスケールの防止のために水溶性ポリマー系分散剤のみを添加する水処理方法で冷却水系の障害を防ぐことも可能である。
【0003】
しかしながら、近年は、省資源や省エネルギーの立場から、今まで以上に冷却水の系外への廃棄(ブロー)を少なくして6〜12倍程度の高濃縮運転を行う場合が増加している。この場合、硬度成分は500〜1000mg/リットル(CaCO3として)程度である。高濃縮運転を行う場合、溶解する塩類が高濃度で濃縮されるため、難溶性の塩となったスケールが加速度的に生成する。生成したスケールは、熱効率の低下や配管の閉塞など、ボイラーや熱交換器の運転に重大な障害を引き起こす。高濃縮運転において生成するスケール種としては、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、燐酸カルシウム、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、水酸化マグネシウムなどの硬度系のスケール種がとりわけ問題となる。このようなカルシウム系やマグネシウム系スケールに対しては、マレイン酸、アクリル酸、イタコン酸などを重合したカルボキシル基を有する単量体のホモポリマーがスケール防止剤として有効であり、更に上記の様なカルボキシル基を有する単量体と、ビニールスルホン酸、アリルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸などのスルホン酸基を有する単量体を組み合わせて共重合したものが一般的に使用されている。また、アルキレン基やカルボニル基を介してポリオキシアルキレン基が結合したビニールモノマーを用いたスケール防止用コポリマーも知られている(特公昭59−16519号公報、特開昭57−94398号公報)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これらの従来のスケール防止剤や方法では、近年の高濃縮運転[硬度成分で500〜1000mg/リットル(CaCO3として)程度の水を用いた運転]においては、水溶性電解質ポリマーでスケール成分を不溶化させないでイオン保持でき得る性能(ポリマーのキレート力によるスケール抑制能)に限界があり、その限界を超えてイオンが加速度的に不溶化するケースが多く、局所的に多量のスケールを生じる可能性がある。また、或る程度大きくなったスケール結晶粒子を分散し得る性能があるといわれるポリマーを用いても、高濃縮運転を行う場合、ポリマーによるスケール分散性能が水から生成するスケール化に追いつかなくなり、結果的にスケール障害が発生する。本発明は、従来技術の上述の様な欠点を解消せんとするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記の様な従来技術の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、冷却水などの中で、カルシウムやマグネシウム等の硬度成分濃度の高い水[硬度成分で500〜1000mg/リットル(CaCO3として)程度の水]で生成する各種スケール成分のうち、とりわけ硬度成分に対して、カルボキシル基を有する2種の特定の単量体の共重合によるコポリマーが、微小な硬度系の不溶解物を意図的に生成させ、それ以上肥大化させないで水中に分散させ続ける効果を有することを見出し、その結果、スケールを配管などに付着させることなく、循環水中に浮遊させ、スケール付着を実質的完全に防止する効果を有することを見出し、冷却水系等の用水系や排水系の高硬度水におけるスケール防止のための水処理薬剤及び方法に関する本発明を完成するに至った。
【0006】
即ち、本発明は、式(1)の単量体単位
【化3】
(ただし、R1は水素原子又はメチル基を表し、X1は水素原子、1価又は2価の金属原子、アンモニウム基又は有機アンモニウム基を表す)
と式(2)の単量体単位
【化4】
(ただし、R2とR3はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を表し、X2とX3はそれぞれ独立に水素原子、1価又は2価の金属原子、アンモニウム基又は有機アンモニウム基を表す)
とからなる二元共重合体である高分子電解質ポリマーを包含することを特徴とする水処理薬剤を提供するものである。
【0007】
式(1)と式(2)中のR1、R2及びR3は、水素原子であるのが好ましい。式(1)と式(2)中のX1、X2及びX3は、それぞれ独立に水素原子又はナトリウム等の1価の金属原子であるのが好ましい。また、式(1)と式(2)中のX1、X2及びX3が有機アンモニウム基である場合は、該有機アンモニウム基は炭素原子数が1〜4のアルキル又はヒドロキシアルキル基を有する(ヒドロキシ)アルキルアンモニウム基であるのが好ましい。
【0008】
上記二元共重合体における式(1)の単量体単位/式(2)の単量体単位の重量比は、スケール防止効果の観点から、1:9〜9:1であるのが好ましく、2:8〜8:2であるのが更に好ましい。また、上記二元共重合体の分子量は、スケール防止効果の観点から、1000〜10000であるのが好ましく、2000〜8000であるのが更に好ましい。
【0009】
本発明の水処理薬剤は一般に水性配合品として提供され、その場合のその配合組成は、防食性やスケール防止性等の観点から、水処理薬剤組成物の総重量に対して、上記二元共重合体の含有量が好ましくは1〜50重量%、より好ましくは5〜30重量%である。上記二元共重合体の含有量が1重量%未満の場合には時に充分な防食効果を期待できないこともあり、50重量%を超える場合には時に薬剤の安定性が損なわれることもあると共にコスト高にもなり、あまり好ましくない。また、本発明の水処理薬剤は、後に詳述する(メタ)アクリル酸系ホモポリマー及び/又はマレイン酸系ホモポリマー、銅防食剤であるアゾール系化合物、菌類抑制剤などの他の成分を含んでもよい。なお、配合品の水含有量は、好ましくは30〜95重量%、より好ましくは50〜90重量%、更に好ましくは60〜80重量%である。
【0010】
本発明の水処理薬剤は、従来の防食剤の主成分である環境に有害な燐化合物や亜鉛化合物は含まなくてもよく、本発明の方法は、上記二元共重合体により高硬度水中に微小な不溶解物を意図的に生成させ、その微小懸濁物質を分散保持したままスケールの肥大化を防止し、配管などに付着させることなく、循環水中に浮遊させ、スケール付着を実質的完全に防止する方法である。本発明の水処理薬剤及び方法は、特に冷却水系で用いて好適である。
【0011】
燐化合物は環境負荷が高いので、本発明の水処理薬剤では、燐化合物の含有量が実質的にゼロであるのが好ましい。燐化合物とは、具体的にはオルト燐酸塩、ポリ燐酸塩、ホスホン酸塩、燐含有ポリマー等の従来の防食剤に用いられるものを言い、従来はこのような燐化合物はカルシウム硬度成分含有量20〜200mg/リットル程度の低・中濃縮冷却水による腐食を防止する上で、特に有効な成分と考えられてきた。「燐化合物の含有量が実質的にゼロ」とは、燐化合物を全く含まない場合や、例えば、冷却装置などの高温部にスケールを起こすことが実質的になく、海や河川や湖沼などに放流しても事実上富栄養化を招かないと評価できる程度に燐化合物を殆ど含まない場合を言う。
【0012】
亜鉛化合物は有害なので、本発明の水処理薬剤は、亜鉛化合物の含有量も実質的にゼロであるのが好ましい。亜鉛化合物とは、具体的には硫酸亜鉛、塩化亜鉛、酢酸亜鉛、亜鉛酸ナトリウム、亜鉛酸カリウム等の従来の防食剤に用いられるものを言う。「亜鉛化合物の含有量が実質的にゼロ」とは、亜鉛化合物を全く含まない場合や、放流しても事実上環境汚染を招かないと評価できる程度に亜鉛化合物を殆ど含まない場合を言う。
【0013】
本発明の水処理薬剤(配合品)は、後述の様に、菌類抑制剤を含有してもよい。菌類抑制剤を含有するか否かによって、効果などの観点から、本発明の水処理薬剤(配合品)の使用濃度は異なってくるのが通常である。従って、本発明は、本発明の水処理薬剤が菌類抑制剤を含有していない場合は、該水処理薬剤を50〜500mg/リットルの濃度範囲内に希釈・保持して使用することを特徴とする水処理方法、並びに、本発明の水処理薬剤が菌類抑制剤を含有している場合は、該水処理薬剤を100〜2000mg/リットルの濃度範囲内に希釈・保持して使用することを特徴とする水処理方法をも提供する。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0015】
コスト低減及び防食性能やスケール抑制率の向上などの為に、式(1)の単量体単位と式(2)の単量体単位からなる水溶性の上記二元共重合体に水溶性の(メタ)アクリル酸系ホモポリマー及び/又はマレイン酸系ホモポリマーを配合し、本発明の水処理薬剤に含有させるようにしてもよい。その配合含有量は、本発明の水処理薬剤の総重量に対して1〜50重量%であるのが好ましく、1〜30重量%であるのがより好ましい。該配合含有量が50重量%を超えると時にゲル化が生じて防食効果が損なわれることもあり、あまり好ましくない。
【0016】
上記二元共重合体を合成する方法は、(メタ)アクリル酸の共重合体の一般的な合成方法でよく、例えば、特開昭62−129136号公報に開示されているのと同様の方法を用いることができる。より具体的には、例えば、少なくとも式(1)及び式(2)に相当する単量体を水やイソプロパノール等の溶媒中で、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過酸化ベンゾイル等の重合開始剤を用いて、所定の温度で、所定の単量体濃度で重合させればよい。この際、必要に応じて、分子量調節のために、塩化第1銅、塩化第2銅、硫酸第2銅、硫酸第1鉄、重亜硫酸ナトリウム等の金属塩類を用いてもよい。
【0017】
水溶性の高分子電解質である上記二元共重合体に加えて、冷却水系等の処理水系によっては、更に銅や銅合金等の銅系金属用の防食剤であるアゾール系化合物を本発明の水処理薬剤に配合するのが好ましい。そのようなアゾール系化合物としては、例えば、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、アミノトリアゾールなどを挙げることができ、これらは単独でも混合しても用いることができる。ベンゾトリアゾールとトリルトリアゾールが好ましい。アゾール系化合物の配合量は、水処理薬剤(配合品)の総重量に対して、0.01〜10重量%であるのが効果とコストの点から好ましい。
【0018】
更に、スライムや微生物腐食の発生を防ぐため、菌類抑制剤を本発明の水処理薬剤に配合するのが好ましい場合もある。そのような菌類抑制剤としては、例えば、有機硫黄窒素化合物類などが挙げられ、その具体例としては、2−メチル−3−イソチアゾロン、5−クロロ−2−メチル−3−イソチアゾロン、4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−3−イソチアゾロンなどを挙げることができ、これらは単独でも混合しても用いることができる。菌類抑制剤の配合量は、水処理薬剤(配合品)の総重量に対して、1〜30重量%であるのが効果とコストの点から好ましい。
【0019】
前述した様に、本発明の水処理薬剤は、水が含まれる配合品として提供されるのが通常であり、水処理薬剤組成物の総重量に対して、水含有量は、好ましくは30〜95重量%、より好ましくは50〜90重量%、更に好ましくは60〜80重量%である。なお、本発明の水処理薬剤が上記二元共重合体の他に水溶性の(メタ)アクリル酸系ホモポリマー及び/又はマレイン酸系ホモポリマー、アゾール系化合物や菌類抑制剤等の成分を併用する場合は、その各成分を別々に被処理水系に添加しても同様の効果を得ることができるのは勿論のことであり、被処理水系に各成分を添加した段階でかかる併用系の薬剤の範囲に含まれることになり、その場合に各成分割合が上記の各成分含有量を比率に換算したものに相当するのが好ましいのも言うまでもない。
【0020】
本発明の水処理薬剤の使用法としては、上記の様な菌類抑制剤を含有していない場合は水系において通常50〜500mg/リットルの濃度範囲内に希釈・保持して使用すると良く、上記の様な菌類抑制剤を含有している場合は通常100〜2000mg/リットルの濃度範囲内に希釈・保持して使用すると良い。
【0021】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、実施例は本発明を限定するものではない。なお、以下、実施例としているものは、本発明の水処理薬剤を用いた場合であり、必ずしも本発明を適用するに好適な条件で水処理を行ったケースだけを実施例としている訳ではなく、また、本発明の目的であるスケール防止以外の試験を行ったものも実施例としている。
【0022】
図1は、実施例及び比較例で用いたスケール評価試験装置を示す概略説明図である。60℃の恒温槽1に1リットルのビーカー2を設置し、試験水を入れ、図示の様に、ビーカー2内に試験片3を吊るし、水処理薬剤を添加し、マグネチックスターラーの攪拌子4により攪拌し、7日後の試験片の重量の増量を測定する。この試験では、試験片の腐食減量は実質的に無視でき、重量の増加分が試験片へのスケール付着量と等しいと考えることができる。即ち、本試験においては、試験片の重量が増加しない方が結果良好であると言える。スケール付着量の単位としては、「mg/cm2・month」を用い、表中ではこれを「MCM」と表す。
【0023】
実施例1、参考例1及び比較例1〜14
スケール評価試験を次の様に行った。表1に示される水質の戸田市水の5倍濃縮水及び10倍濃縮水を試験水として調製し、ビーカー2に入れ、試験片3(SUS−304、10×30×50mm、#400)を吊るし、水処理薬剤を添加し、マグネチックスターラーの攪拌子4により攪拌し、7日後の試験片の重量の増量を測定した。なお、表1中の各項目の単位は、電気伝導率が「μS/cm」、酸消費量(pH=4.8)と全硬度とカルシウム硬度が「mgCaCO3/リットル」、シリカが「mgSiO2/リットル」、塩化物イオンが「mgCl/リットル」である。
【0024】
【表1】
【0025】
水処理薬剤として、表2に示すポリマーを用いた。表2〜4中の各ポリマー種の特徴を説明する。「AMA」が本発明の水処理薬剤に用いられるもので、アクリル酸単量体単位:マレイン酸単量体単位=6:4(重量比)で重量平均分子量が約6000の二元共重合体(ビポリマー)である。「PAA」は重量平均分子量が約4500のアクリル酸単独重合体(ポリアクリル酸)、「PMAA」は重量平均分子量が約1000のマレイン酸単独重合体(ポリマレイン酸)である。「AA BI」はアクリル酸と2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸のアクリル酸系二元共重合体である。「AA TER」はアクリル酸と2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸とアルキルアクリルアミドのアクリル酸系三元共重合体である。比較例5〜7及び12〜14では2種のポリマーを併用した。スケール評価試験の結果を表2に示す。なお、表2〜4において、Lはリットルを表す。
【0026】
【表2】
【0027】
表2より、従来の通常濃縮運転の戸田市水5倍濃縮水においては、ポリマー間で大きなスケール防止性能の差はなく、ほぼ十分な効果(MCM:約1以下)を示した(比較例1〜7、参考例1)。一方、高濃縮運転の戸田市水10倍濃縮水においては、従来からよく使用されるポリマーでは十分な効果が得られなかった(比較例8〜14)が、本発明で使用されるポリマーAMAを用いた場合、とりわけ良好な結果を示した(実施例1)。
【0028】
実施例2、参考例2及び比較例15〜28
防食の評価試験を次の様に行った。実施例1で用いたと同じ試験水と水処理薬剤としての同じポリマーを用いて、工業用水腐食試験法(JIS−K0100)に従った質量減法によって軟鋼の腐食速度を測定した。即ち、各水処理薬剤を添加して得た試料水中に試験片を固定した円盤を投入し、一定速度で7日間攪拌した。7日後に試験片を取り出し、除錆して重量を測定した。試験開始前に測定した試験片重量と試験終了後に測定した試験片重量との差から腐食速度を求めた。防食の評価試験の結果を表3に示す。
【0029】
[試験条件]
試験水:戸田市水の5倍濃縮水及び10倍濃縮水(水質は表1と同等)
水温:35℃
攪拌速度:150rpm
試験片:(軟鋼SS400、10×30×50mm、#400)
試験期間:7日間
【0030】
表3において、「MDD」は腐食速度の単位であり、mg/dm2・dayを表す。
【0031】
【表3】
【0032】
表3より、戸田市水10倍濃縮水では、薬剤を添加した全てのテスト(比較例22〜28、実施例2)で、防食効果として適性値(MDDが10以下を適性とする)が得られることが分った。しかしながら、戸田市水5倍濃縮水では比較例15〜21で防食効果として適性値が得られたのに対し、参考例2は防食効果として適正値が得られなかった。これは、本発明による処理方法に用いられるポリマーAMAはそれ自体の防食力はそれほど高くはないが、水中の硬度成分が濃縮されると、硬度成分が防食に寄与する結果、或る一定の硬度(CaCO3として約500)以上の範囲の水中では、無薬品処理でも腐食速度が充分低くなり、実用上充分に良好な防食効果が得られることによる。即ち、本発明による処理方法でポリマーAMAのみを用いた場合、防食に関しては、高硬度の水質領域のみで効果を有し、高硬度に限定された処理方法であることが言える。しかし、戸田市水5倍濃縮水程度の水でも、例えば、(メタ)アクリル酸系ホモポリマー及び/又はマレイン酸系ホモポリマーをポリマーAMAと併用すると、防食効果として適性値が得られることが期待される。
【0033】
実施例3及び比較例29〜32
スケールの析出抑制性能を次の試験方法で評価した。塩化カルシウム試験液及び炭酸水素ナトリウム試験液を調製し、カルシウムイオン濃度1100mgCaCO3/リットル、炭酸水素イオン濃度1100mgCaCO3/リットルになる様に水中に添加して試験水を調製し、表4に示される薬剤ポリマーを10mg/リットルになる様に添加し、pHを8.5になる様に調整し、70℃で24時間静置後に、サンプル水を0.45μmのメンブランフィルターで濾過し、得られた濾液中のカルシウムイオン濃度を滴定により定量した。また、得られた濃度に対して次の計算式を用いることで、スケールの析出抑制性能を表す「スケール抑制率(%)」を算出し、その結果を表4に示す。
スケール抑制率(%)=[(サンプル水の濾液のカルシウム濃度−ブランクのカルシウム濃度)÷(1100−ブランクのカルシウム濃度)]×100
【0034】
【表4】
【0035】
表4より、ポリマーAMAは従来から使用されているポリマーと比較して特にスケール抑制性能に優れているものとは言えない。即ち、実施例1、参考例1の結果も考慮すると、高硬度水に対してスケール防止水処理薬剤ポリマーに求められる性能は、単にスケール抑制性能だけという訳ではないことが分かる。
【0036】
【発明の効果】
本発明の水処理薬剤は、(メタ)アクリル酸系単量体とマレイン酸系単量体を共重合させて得ることができる二元共重合体の高分子電解質であり、本発明の水処理方法によれば、上記高分子電解質を用いることにより、微小な硬度系の不溶解物を意図的に生成させ、それ以上肥大化させないで水中に分散させ続ける効果を得ることで、高硬度水におけるスケール防止を行うことができる。その結果、従来に比べて冷却水の高濃縮処理を可能にし、冷却水の節水に大きく貢献するものとなる。また、燐化合物、亜鉛化合物を実質的に含有しない様にもできるため、その場合はそれらの系外排出による環境汚染の心配がない。
【0037】
本発明の水処理薬剤は、冷却水処理系、排水処理系、工業用水処理系、純水処理系等の各種水処理系全般に適用することができるが、高濃縮運転の冷却水系で特に有利に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、実施例及び比較例で用いたスケール評価試験装置を示す概略説明図である。
【符号の説明】
1 恒温槽
2 ビーカー
3 試験片
4 攪拌子
Claims (9)
- 前記高分子電解質ポリマー含有量が、1〜50重量%である水処理薬剤を使用することを特徴とする請求項1に記載の水処理方法。
- 更に(メタ)アクリル酸系ホモポリマー及び/又はマレイン酸系ホモポリマーを配合し、その含有量が、1〜50重量%である水処理薬剤を使用することを特徴とする請求項1又は2に記載の水処理方法。
- 更にアゾール系化合物を配合し、その含有量が0.01〜20重量%である水処理薬剤を使用することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の水処理方法。
- 前記アゾール系化合物が、ベンゾトリアゾール又はトリルトリアゾールである水処理薬剤を使用することを特徴とする請求項4に記載の水処理方法。
- 更に菌類抑制剤を配合し、その含有量が1〜30重量%である水処理薬剤を使用することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の水処理方法。
- 前記菌類抑制剤が、有機硫黄窒素化合物である水処理薬剤を使用することを特徴とする請求項6に記載の水処理方法。
- 前記水処理薬剤を50〜500mg/リットルの保持濃度で使用することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の水処理方法。
- 前記水処理薬剤を100〜2000mg/リットルの保持濃度で使用することを特徴とする請求項6又は7に記載の水処理方法。
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