JP4321733B2 - 次亜塩素酸塩を含有する安定な水処理剤組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は冷却水系、温水系、集塵水系、紙パルプ工程水系、製鉄工程水系、金属加工工程水系等の各種用排水系、各種工程水系等における微生物に起因する諸障害を抑制し、併せて水と接触する熱交換器、配管、各種機器類の金属材料の腐食、スケール付着を同時に抑制することができる次亜塩素酸塩を含有する安定な水処理剤組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
冷却水系、温水系、集塵水系、紙パルプ工程水系、製鉄工程水系、金属加工工程水系等の各種工程水中に生育する微生物は、系内で繁殖してスライムを形成し、熱交換器の伝熱効率低下、流路の閉塞及び嫌気性菌による微生物腐食などの微生物障害を引き起こす原因となる。
【0003】
水中にはまたカルシウムやマグネシウムの炭酸塩、硫酸塩、珪酸塩等の塩類が含まれており、水系内で濃縮されたり、pHが高くなったり、温度が高くなったときに析出し、装置表面に付着し、熱交換器の伝熱障害・配管類の閉塞等のスケール障害を引き起こす原因となる。また水に混入してくる土砂、粘土質、有機質等の懸濁粒子は、系内の流速の遅い部分に堆積する。金属表面にスケールが形成したり、堆積物があると、部分的に溶存酸素に濃度差が生じ腐食を引き起こす原因となる。
【0004】
このように水を使用する系では微生物障害、スケール障害、腐食障害は普遍的な問題であり、各種の殺菌剤、スケール防止剤、腐食防止剤、分散剤などを用いて対処している。
【0005】
微生物障害の対策としては、塩素系殺菌剤、臭素系殺菌剤、過酸化水素類などの酸化作用を有する酸化性殺菌剤や、第4級アンモニウム塩類、グルタルアルデヒド、3−イソチアゾロン類、有機臭素化合物類、ヒドラジン類等の非酸化性殺菌剤が使用されている。このうち次亜塩素酸や次亜塩素酸イオンを生成する塩素系殺菌剤は、殺菌効果が優れ、かつ環境中で速やかに分解して無害な塩素イオンとなることから、安全性が高く、飲料水やプールの殺菌などに広く使用されている。
【0006】
スケール障害の対策としては、各種のホスホン酸、カルボン酸基やスルホン酸基を含む不飽和単量体の使用が知られており、さらに末端にスルホン酸基を有するモノエチレン性不飽和カルボン酸重合体を用いる提案(特開昭63−236600号公報)もある。
【0007】
腐食障害の対策としてはホスホン酸、アクリル酸重合体ならびに共重合体、マレイン酸重合体ならびに共重合体以外に各種のアゾール化合物、重合リン酸塩、オルトリン酸塩、モリブデン酸塩等が使用されてきた。
【0008】
このように微生物障害、スケール障害、腐食障害などを抑制するために、水処理剤として複数の薬品の投入が必要であり、注入装置も複数必要となり、また薬品の注入量をそれぞれ別個に管理する必要があるなど、管理・取り扱いが煩雑であった。このため一液の組成物とする試みが行われてきた。特に、第4級アンモニウム塩類、グルタルアルデヒド、3−イソチアゾロン類、有機臭素化合物類、ヒドラジン類等の非酸化性殺菌剤と、スケール防止剤、分散剤等とは相溶性が比較的良好で、かつ安定であることからこれらの化合物を配合した複合剤が提案されている。例えば、ヒドラジンとホスホン酸及び/又はカルボン酸系低分子量ポリマーとアゾール化合物を有効成分として配合した開放用水系障害防止剤(特公平1−60553号公報)、アクリル酸及び/又はマレイン酸を含む重合体とグルタルアルデヒドを有効成分として含む多目的多機能水処理剤(特開昭63−194799号公報)などがある。しかしながら、非酸化性殺菌剤は、酸化性殺菌剤と比較して殺菌効果が劣っており、また自然界においての分解性が低いことから環境への影響が問題となっていた。
【0009】
一方、塩素系殺菌剤をスケール防止剤や分散剤と混合すると、スケール防止剤や分散剤を酸化分解し、有効塩素が減少するので、特に高濃度の次亜塩素酸塩を含有する一液性組成物は安定に保つことができなかった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明の目的は、殺菌力が強く、かつ環境への影響も少ない次亜塩素酸塩を含み、かつ水系における腐食、スケールなどの障害も同時に防止できる複合系の組成物で、次亜塩素酸塩の分解が少なく、安定な水処理剤組成物を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、次亜塩素酸塩の酸化反応性について鋭意実験研究を重ねた結果、次亜塩素酸塩はある特定の重合体に対して酸化分解し難く、むしろその重合体が共存することにより次亜塩素酸塩の安定性が高まり、有効塩素量の失活を少なくすることを見出し本発明に到達した。
【0012】
すなわち、本請求項1に係る発明は、次亜塩素酸塩と、重量平均分子量が300〜5000の末端にスルホン酸基を有するモノエチレン性不飽和カルボン酸重合体を有効成分として含み、かつpHが12以上である次亜塩素酸塩を含有する安定な水処理剤組成物であって、末端にスルホン酸基を有するモノエチレン性不飽和カルボン酸重合体が、亜硫酸塩および/あるいは重亜硫酸塩の存在下でモノエチレン性不飽和カルボン酸単量体および/あるいはその水溶性塩を重合させることにより得られるものであることを特徴とする水処理剤組成物であり、本請求項2に係る発明は、末端にスルホン酸基を有するモノエチレン性不飽和カルボン酸重合体と次亜塩素酸塩の混合比率が、次亜塩素酸塩に基づく有効塩素に対して末端にスルホン酸基を有するモノエチレン性不飽和カルボン酸重合体を1/20〜10倍量(重量)であることを特徴とする請求項1の水処理剤組成物である。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の次亜塩素酸塩を含有する安定な水処理剤組成物は、次亜塩素酸塩と重量平均分子量が300〜5000の末端にスルホン酸基を有するモノエチレン性不飽和カルボン酸重合体(以下「末端にスルホン酸基を有する重合体」と記す)を有効成分として含み、かつpHが12以上の水溶液からなり、末端にスルホン酸基を有する重合体が亜硫酸塩および/あるいは重亜硫酸塩の存在下でモノエチレン性不飽和カルボン酸単量体および/あるいはその水溶性塩を重合させることにより得られるものである。
【0014】
本発明における次亜塩素酸塩は、水に溶解して次亜塩素酸ないし次亜塩素酸イオンを生成する化合物であればよいが、具体的には次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウム、次亜塩素酸リチウム、次亜塩素酸カルシウム等が挙げられる。
【0015】
末端にスルホン酸基を有する重合体は、亜硫酸塩や重亜硫酸塩の存在下でモノエチレン性不飽和カルボン酸単量体および/あるいはその水溶性塩を重合させることにより製造することができる。すなわち適当な重合開始剤、酸素、紫外線等のもとで亜硫酸塩および/あるいは重亜硫酸塩とモノエチレン性不飽和カルボン酸単量体類を反応させると、次式で示されるようにこれら硫酸塩が連鎖移動剤として作用して、重合を停止させて重合度を調整するとともに、これら硫酸塩が重合体に取り込まれ、末端にスルホン酸基を有するテロマーを生成する。このとき、モノエチレン性不飽和カルボン酸単量体類に対して亜硫酸塩および/あるいは重亜硫酸塩の反応比率を変えることにより重合体の重合度を変えることができ、例えば亜硫酸塩および/あるいは重亜硫酸塩の比率を増加させれば重合体の分子量が低くなる。
【0016】
【化1】
【0017】
ここでモノエチレン性不飽和カルボン酸は、例えばアクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、メタクリル酸、クロトン酸、フマル酸等であり、また一部をこれらモノエチレン性不飽和カルボン酸と共重合可能なモノエチレン性不飽和単量体と置き換えてもよい。共重合可能なモノエチレン性不飽和単量体の例として、ビニルホスホン酸、アリルホスホン酸等のモノエチレン性不飽和ホスホン酸類ならびにそれらの水溶性塩、(メタ)アクリルアミド、アルキル(メタ)アクリレートエステル類、アルキル(メタ)アリルエーテル類、ヒドロキシ置換アルキル(メタ)アクリレートエステル類、ヒドロキシ置換アルキル(メタ)アリルエーテル類、(メタ)アリルアルコール等が挙げられる。またモノエチレン性不飽和カルボン酸の水溶性塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩が一般的である。
【0018】
重合体の製造時に使われる亜硫酸塩、重亜硫酸塩はナトリウム塩、カリウム塩が好ましい。アンモニウム塩やアミン塩を使用すると、水処理剤組成物中にアンモニウムやアミンが残り、これが次亜塩素酸塩の分解を促進することがある。
【0019】
末端にスルホン酸基を有する重合体の製造方法は、本発明で限定するものではないが、例えば亜硫酸水素ナトリウムとアクリル酸を含む水溶液に窒素ガス通気下に過硫酸ナトリウム水溶液を滴下して重合を進める方法(特公昭47−11487号公報参照)、無水マレイン酸の水溶液をpH2.5〜6.5に調整してから重亜硫酸塩を加えて、空気を吹き込んで重合を進める方法(特開昭63−236600号公報参照)、沸騰下の水中にアクリル酸と過硫酸塩水溶液と重亜硫酸塩水溶液をそれぞれ別個に滴下して重合を進める方法(特開平11−315115号公報参照)などがある。
【0020】
末端にスルホン酸基を有する重合体の重量平均分子量は、300〜5000の範囲である。重量平均分子量が5000を超えると次亜塩素酸塩の安定性を向上する効果が低下し、また重量平均分子量が300未満ではスケール防止効果が小さくなりいずれも好ましくないことがある。ここで重量平均分子量の測定は、例えばゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーの手法により分子量既知のポリエチレングリコールを標準物質として測定され、市販の分子量計算用コンピュータソフトウェアを用いて重量平均分子量を計算することができる。
【0021】
末端にスルホン酸基を有する重合体と次亜塩素酸塩の混合比率は、次亜塩素酸塩に基づく有効塩素に対して末端にスルホン酸基を有する重合体を、1/20〜10倍量(重量)、好ましくは1/10〜5倍量(重量)である。1/20倍量(重量)より少ないと次亜塩素酸塩の安定化には不充分なことがあり、10倍量(重量)より多いと安定性には悪い影響はないが、それ以上の安定化に寄与しないので経済的に不利になることがある。
【0022】
末端にスルホン酸基を有する重合体は次亜塩素酸塩の安定化剤として働くと同時に、水系に適用したときスケール抑制剤、スケール除去剤、腐食抑制剤としても働く。従って、対象とする水系の殺菌、スライム除去、スケール抑制、スケール除去、腐食抑制を達成させるには、末端にスルホン酸基を有する重合体と次亜塩素酸塩のそれぞれについてその目的を達成するために必要な添加量を設定しておき、両方の必要量が満たされるように組成物の構成比を予め調整しておくのが好ましい。
【0023】
組成物は通常水を溶媒とし、次亜塩素酸塩と末端にスルホン酸基を有する重合体を溶解させる。組成物中におけるこれらの含有量は任意に選ばれるが、通常次亜塩素酸塩は有効塩素量として0.1〜20重量%となるようにし、これに見合う量の末端にスルホン酸基を有する重合体を溶解させる。また、組成物のpHは12以上とする。pH12未満では本発明の安定化効果が充分に発揮されず好ましくない。
【0024】
水処理においては、本発明に述べた次亜塩素酸塩と末端にスルホン酸基を有する重合体以外に、種々の薬品が使用されることがある。本発明では、本発明の効果が損なわれない範囲において他の種類の薬品を組成物中に混合することはなんら妨げるものではない。例えば、水系においては銅や銅合金の腐食抑制を目的としてベンゾトリアゾール類を配合させてもよい。この他、正リン酸塩、重合リン酸塩、モリブデン酸塩、タングステン酸塩、亜鉛酸塩、アルミン酸塩等のpH12以上で次亜塩素酸塩と相溶可能な無機系腐食抑制剤、各種の界面活性剤を用いた洗浄剤等を配合することができる。
【0025】
本発明の組成物を被処理水系に適用する場合、被処理水のpHは特に限定されないが、通常はpH5〜10の範囲内である。本発明組成物の添加量や添加方法などは本発明で限定するものではないが、通常有効塩素として0.1〜100ppm、末端にスルホン酸基を有する重合体を0.1〜100ppmであり、連続的ないし断続的に添加する。また本発明の組成物を高濃度で一括添加することにより系内に存在するバイオフィルムや無機デポジットを剥離分散することもできる。また本発明の組成物の添加により菌類や藻類の繁殖を抑制し、バイオフィルムの形成を抑制すると共に無機デポジットの付着を抑制することができる。
【0026】
本発明の組成物中の有効塩素濃度、被処理水中の残留塩素濃度はジエチル―p―フェニレンジアンモニウム(DPD)−硫酸アンモニウム鉄(II)滴定法やヨード滴定法等公知の方法(JIS K0101−1991 参照)により測定できる。
【0027】
本発明の組成物の適用場所は、開放式循環水系、冷温水系、集塵水系、パルプ工場、製紙工場、製鉄工場、金属加工工場等における各種工程水、その他の各種用排水系である。また連続鋳造プロセスのスプレーノズルの詰まり防止、逆浸透膜の汚れ防止や洗浄、脱臭用洗浄水にも適用可能である。
【0028】
【実施例】
以下に本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0029】
[製剤の調製]
製剤例−1:
末端にスルホン酸基を有するアクリル酸重合体の製造:攪拌装置、還流冷却器、温度計及び窒素ガス吹き込み孔を付した500mL4つ口フラスコに水50gを入れ、窒素ガス通気下で100℃に加熱し、攪拌しながらこれに過硫酸ナトリウム3gを水15gに溶解した水溶液、アクリル酸20g、35%重亜硫酸ナトリウム12gのそれぞれを2時間かけて添加した。添加終了後、同温度でさらに2時間加熱し重合体20重量%含む水溶液とした。重合体の重量平均分子量は約2000であった。
【0030】
組成物の製造:上記で製造したアクリル酸重合体水溶液35gと48重量%水酸化ナトリウム水溶液12g、水3gを混合し、40℃以下になってから次亜塩素酸ナトリウム水溶液(有効塩素12%)50gを加えて攪拌混合した。組成物のpHは13.9、重合体含有量は7.0重量%、有効塩素濃度は6.0重量%であった。
【0033】
製剤例−2:
組成物の製造:水21gに、製剤例−1で製造したアクリル酸重合体水溶液35gと48重量%水酸化ナトリウム水溶液12g、1,2,3−ベンゾトリアゾール2gを溶解し、40℃以下になってから次亜塩素酸ナトリウム水溶液(有効塩素12%)30gを加えて攪拌混合した。組成物のpHは13.9、重合体含有量は7.0重量%、有効塩素濃度は3.6重量%であった。
【0035】
製剤例−3:
組成物の製造:製剤例−1で製造したアクリル酸重合体水溶液7gと48重量%水酸化ナトリウム水溶液2.4g、水0.6gを混合し、40℃以下になってから次亜塩素酸ナトリウム水溶液(有効塩素12%)90gを加えて攪拌混合した。組成物のpHは13.9、重合体含有量は1.4重量%、有効塩素濃度は10.8重量%であった。
【0037】
比較製剤例−1:
水24.0gにポリマレイン酸〔FMC社製、「Belclene200」(商品名)、重量平均分子量:800〕14.0gと48重量%水酸化ナトリウム水溶液12.0g加えて、40℃以下に冷却後、次亜塩素酸ナトリウム水溶液(有効塩素:12重量%)50gを加えて攪拌した。組成物のpHは13.9、重合体含量は7.0重量%、初期の有効塩素濃度は6.0重量%であった。
【0038】
比較製剤例−2:
水26.5gにポリアクリル酸ナトリウム〔BASF社製、「SokalanPA−20」(商品名)、重量平均分子量:2000〕17.5gと48重量%水酸化ナトリウム水溶液6.0g加えて、40℃以下に冷却後、次亜塩素酸ナトリウム水溶液(有効塩素12%)50gを加えて攪拌した。組成物のpHは13.9、重合体含量は7.0重量%、初期の有効塩素濃度は6.0重量%であった。
【0039】
比較製剤例−3:
末端にスルホン酸基を有しないアクリル酸重合体の製造:製剤例−1の重合体製造において、重亜硫酸ナトリウムの代わりにイソプロピルアルコール3gを用い重合体20重量%含む水溶液とした。重合体の重量平均分子量は約2700であった。
【0040】
組成物の製造:上記で製造したアクリル酸重合体水溶液35gと48重量%水酸化ナトリウム水溶液12g、水3gを混合し、40℃以下になってから次亜塩素酸ナトリウム水溶液(有効塩素12%)50gを加えて攪拌混合した。組成物のpHは13.9、重合体含有量は7.0重量%、有効塩素濃度は6.0重量%であった。
【0041】
比較製剤例−4:
末端にスルホン酸基を有しないアクリル酸重合体の製造:製剤例−1の重合体製造において、重亜硫酸ナトリウムの代わりにβ−メルカプトプロピオン酸3gを用い重合体20重量%含む水溶液とした。重合体の重量平均分子量は約2500であった。
【0042】
組成物の製造:上記で製造したアクリル酸重合体水溶液35gと48重量%水酸化ナトリウム水溶液12g、水3gを混合し、40℃以下になってから次亜塩素酸ナトリウム水溶液(有効塩素12%)50gを加えて攪拌混合した。組成物のpHは13.9、重合体含有量は7.0重量%、有効塩素濃度は6.0重量%であった。
【0043】
比較製剤例−5:
組成物の製造:製剤例−1の組成物を、希塩酸にてpH11.0とした。
【0044】
比較製剤例−6:
組成物の製造:製剤例−2の組成物を、希塩酸にてpH11.0とした。
【0045】
〔安定性評価−1〕
各製剤を30℃で1箇月間静置後、目視による製剤中の沈殿・分離の有無、異臭の有無、有効塩素含量を測定した。結果を表1に示す。
【0046】
ここで有効塩素残留率(%)={(有効塩素の残留含量)/(有効塩素の初期含量)}×100
【0047】
【表1】
【0048】
次亜塩素酸塩と末端にスルホン酸基を有する重合体を組み合せ、pHが12以上である組成物は、有効塩素が安定に維持されており沈殿が認められなかった。一方、次亜塩素酸塩と末端にスルホン酸基を有しない重合体との組成物は、いずれも有効塩素濃度が低下し、沈殿が認められた。また次亜塩素酸塩と末端にスルホン酸基を有する重合体重合体を含有していても、pHを12未満にしておくと、有効塩素の濃度が低下していた。
【0049】
〔安定性評価−2〕
有効塩素濃度の高い(10.8重量%)の製剤(製剤例−5,6)、および比較として有効塩素12重量%の次亜塩素酸ナトリウムをそれぞれ40℃で7日間、ないし20℃で1ヶ月間静置後、目視による製剤中の沈殿・分離の有無と有効塩素残留率(%)を測定した。結果を表2に示した。
【0050】
【表2】
【0051】
次亜塩素酸塩と末端にスルホン酸基を有する重合体とを組合せて含有し、pHが12以上である本発明の組成物は、長期間静置した後では次亜塩素酸ナトリウム単独品よりも有効塩素残留率が高くなっており、有効塩素の安定性が高いことが確認された。
【0052】
〔スケール防止効果、殺菌効果の評価〕
ここでは各製剤を製造直後、および前記の安定性評価−1に述べた30℃で1箇月間静置後のそれぞれを評価に使用した。
【0053】
工業冷却水系から採取した循環水に塩化カルシウム、炭酸水素ナトリウムを溶解してカルシウム硬度400mg/L、Mアルカリ度320mg/Lとなるようにし、次亜塩素酸ナトリウムを含む製剤を添加した。試験水のpHは8.8であった。
【0054】
試験水100mLを密閉したガラス容器に取り、50℃恒温槽中に7日間放置した後、No.6定量用濾紙で濾過し、濾液中のカルシウム硬度をEDTA滴定法(JIS K0101)により測定した。下記式によりスケール抑止率を計算した。
【0055】
【数1】
ここで Cs:試験前のカルシウム濃度
Cb:処理剤無添加時の試験後のカルシウム濃度
Ci:処理剤添加時の試験後のカルシウム濃度
【0056】
残りの試験水100mLをガラスビーカーに取り、室温で30分静置後の試験水中の生菌数を測定した。結果を表3に示した。
【0057】
【表3】
【0058】
次亜塩素酸ナトリウムと末端にスルホン酸基を有する重合体を含有する本発明の組成物は、組成物が安定に維持されているため調整直後と30℃で1箇月間静置後の製剤とがほぼ同等の殺菌効果とスケール抑制効果を示した。一方、次亜塩素酸塩と末端にスルホン酸基を有しない重合体を含有する組成物は安定性が充分でなく、30℃で1箇月間静置後では殺菌効果とスケール抑制効果が著しく劣っていた。
【0059】
〔パイロットプラントにおける評価〕
各種製剤を安定性評価−1に述べたのと同じ30℃で1箇月間静置した後、テスト冷水塔試験装置を用いて評価した。
【0060】
60Lの保有水量を有するテスト冷水塔に全長50cmのテスト熱交換器を直列に連結し、循環ポンプにより0.5m/秒の水流速で循環した。試験用伝熱管としてアルミニウム黄銅鋼管(JIS C6871T、外径12.0mm)を使用し、該伝熱管を電気ヒーターにより加熱して40000kcal/m2・hの熱流束を加え、循環水を加熱するとともにテスト熱交換器の出口温度を40℃に調節した。冷却塔の蒸発水量は3.3L/hであり、循環水の濃縮度が一定になるように定量ポンプによりブローダウンを行うと共に、処理剤をケミカルフィーダにより補給して、循環水中の濃度が100mg/リットルになるように維持した。
【0061】
循環水の水質はpH8.9、電気伝導度1570μS/cm、Ca硬度300mg/L、Mg硬度125mg/L、Mアルカリ度250mg/L、塩素イオン150mg/L、シリカ150mg/Lであった。テスト期間は30日間とし、テスト終了後、付着物を取り除いて試験用伝熱管の付着物量を測定した。また、試験前後の試験用伝熱管の重量減より腐食速度を計算した。結果を表4に示した。
【0062】
【表4】
【0063】
次亜塩素酸ナトリウムと末端にスルホン酸基を有する重合体を含む組成物は、調整後30℃で1箇月間静置しても微生物による汚れ付着抑制、スケール付着抑制、腐食抑制に対する効果は持続し、良好な結果を示した。
【0064】
【発明の効果】
本発明の組成物に含まれる末端にスルホン酸基を有する重合体は、重合体自身が次亜塩素酸塩により分解し難いだけでなく、次亜塩素酸塩の分解を抑制し長時間安定に維持することができ、有効成分の失活による殺菌効果の低下を防止することができる。この組成物は、微生物障害、スケールや汚れ障害、腐食障害を同時に効果的に防止でき、注入装置が1台でよく、また薬品の注入量をそれぞれ別個に管理する必要がないなど濃度管理や取り扱いが容易であり、実用上極めて有用である。
Claims (2)
- 次亜塩素酸塩と、重量平均分子量が300〜5000の末端にスルホン酸基を有するモノエチレン性不飽和カルボン酸重合体を有効成分として含み、かつpHが12以上である次亜塩素酸塩を含有する安定な水処理剤組成物であって、末端にスルホン酸基を有するモノエチレン性不飽和カルボン酸重合体が、亜硫酸塩および/あるいは重亜硫酸塩の存在下でモノエチレン性不飽和カルボン酸単量体および/あるいはその水溶性塩を重合させることにより得られるものであることを特徴とする水処理剤組成物。
- 末端にスルホン酸基を有するモノエチレン性不飽和カルボン酸重合体と次亜塩素酸塩の混合比率が、次亜塩素酸塩に基づく有効塩素に対して末端にスルホン酸基を有するモノエチレン性不飽和カルボン酸重合体を1/20〜10倍量(重量)であることを特徴とする請求項1の水処理剤組成物。
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