JP4598216B2 - 曲げ加工方法および曲げ加工装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、ダイの内部に設けられてダイのV溝に突出して上下移動自在の変位計により、パンチのダイに対する相対的ストローク値を直接検出してパンチの相対的ストロークを制御する曲げ加工方法および曲げ加工装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図11に示されているように、曲げ加工装置である例えばプレスブレーキにおいてパンチPとダイDとの協働でワークWに曲げ加工を行う際に、所定の曲げ角度を得るべくパンチPとダイDとの間隔を測定するために、ラム101の上下位置を検出するラム位置検出手段103が設けられている。そして、金型条件やワーク条件等を考慮して、D値を計算により求めて前記ラム位置検出手段103でD値を制御して曲げ加工を行っている。
【0003】
ところが、所定のD値を計算して、そのD値となるようにパンチPとダイDとの相対距離を制御しても、曲げ加工中のワークWからの曲げ反力により、側板の撓み、上下テーブルの撓み、金型の撓み等の機械系の撓みが発生するためこのたわみ分を補正しなければ正確な角度の曲げ加工を行うことができない。しかし、この機械系の撓みを正確に算出して補正するのは非常に困難である。
【0004】
そこで、例えば実公平6−49374号公報に示されているような曲げ加工方法のように、機械系の撓みを考慮しなくてもよいように、D値を直接検出するものがある。すなわち、図12に示されているように、この位置検出手段105では、ダイDのV溝107に突出して上下移動自在の検出ピン109をダイDの内部に設け、この検出ピン109の上下移動を変位計111で検出する。
【0005】
従って、パンチPが下降してワークWを下方へ折り曲げると、曲げられているワークWの下面が前記検出ピン109に当接してこれを押し下げるので、この検出ピン109の下降量を変位計111により検出して、D値を直接検出するものである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながらこのような従来の技術にあっては、1ストロークにて所定角度となるようなD値を正確に算出することは極めて困難であるという問題がある。
【0007】
この発明の目的は、以上のような従来の技術の問題点に着目してなされたものであり、精度の高いD値を求めることにより精度の高い曲げ加工を行うことのできる曲げ加工方法および曲げ加工装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、請求項1による発明の曲げ加工方法は、ダイの内部に設けられダイのV溝に突出して上下移動自在の変位計により、パンチのダイに対する相対的ストローク値を直接検出してパンチの相対的ストロークを制御する曲げ加工方法において、曲げ加工されるワーク条件、金型条件、目標曲げ角度等の種々の条件を入力し、予めデータベースに記憶されているところの曲げ角度と、前記変位計において上下動自在な検出ピンの上端部と前記ダイの上面との間の刃間距離との関係を示す計算式のデータから前記入力された条件に対応するパンチの相対的ストローク値を求め、この相対的ストローク値だけパンチを相対的にストロークさせてダイとの協働により曲げ加工を行い、曲げられたワークを取り出して曲げ角度を実測し、この実測角度と前記目標角度との差が公差内でない場合にはこの差に基づいて前記データベースに記憶されている前記計算式のデータを平行移動により修正し、修正後の計算式のデータに基づいてパンチの相対的なストローク値を求め、この求めたストローク値だけパンチを相対的にストロークさせて追い曲げを行い、実測角度と前記目標角度との差が公差内に納まるまで前記計算式のデータの修正および追い曲げを繰り返すこと、を特徴とするものである。
【0014】
請求項2による発明の曲げ加工装置は、ダイの内部に設けられダイのV溝に突出して上下移動自在の変位計により、パンチのダイに対する相対的ストローク値を直接検出してパンチの相対的ストロークを制御する曲げ加工装置であって、曲げ加工されるワーク条件、金型条件、目標曲げ角度等の種々の条件を入力する入力手段と、前記入力手段から入力された条件に対応しての曲げ角度と、前記変位計において上下動自在な検出ピンの上端部と前記ダイの上面との間の刃間距離との関係を算出するための計算式のデータを記憶してあるデータベースと、曲げられたワークを取り出して実測した曲げ角度の実測角度と前記目標角度との差が公差内であるか否かを判断する比較判断部と、前記実測角度と前記目標角度との差が公差内でない場合にはこの差に基づいて前記データベースに記憶されている前記計算式のデータを平行移動により修正するデータ修正部と、修正された計算式の計算によって得られたパンチの相対的ストローク値に基づいてパンチを相対的にストロークさせるストローク指令部と、を備えてなることを特徴とするものである。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0021】
図1および図2には、この発明に係る曲げ加工装置であるプレスブレーキ1が示されている。なお、プレスブレーキ1自体はすでによく知られているものなので、概略のみ説明する。
【0022】
プレスブレーキ1は、全面中央部にギャップGを有する全体C字状の左右の側板3L、3Rが立設されており、この側板3L、3Rの上部前面にはラムである上部テーブル5Uが上下移動自在に設けられている。この上部テーブル5Uは、下端部にパンチPが交換自在に装着されており、側板3L、3Rの上部に設けられている上下シリンダ7により上下移動する。
【0023】
一方、側板3L、3Rの下部前面には、上端にダイDが交換自在に装着されている下部テーブル5Lが設けられている。なお、ダイDの上部にはワークWの曲げ加工を行うためのV溝9(図4参照)が、ダイDの長手方向に設けられている。また、プレスブレーキ1の近傍には、上下シリンダ7等を制御する制御装置11が設けられている。
【0024】
上記構成により、パンチPとダイDの間に位置決めされたワークWに対してパンチPを上下シリンダ7により下降させて、パンチPとダイDとの協働によりワークWの曲げ加工を行う。
【0025】
図3を併せて参照するに、ダイDの内部にはダイDの長手方向に複数の変位計13が設けられている。この変位計13では、スプリング15により常時上方へ付勢されてダイDのV溝9に上下移動自在に突出する検出ピン17が設けられており、この検出ピン17の上下位置を検出するリニアスケール19がスプリング15の下方に設けられている。
【0026】
従って、パンチPにより押し曲げられたワークWが検出ピン17を下方へ押し、この時の検出ピン17の上下位置をリニアスケール19により検出して、図4に示されているように、検出ピン17の上端部とダイDの上面との距離を刃間距離STとして求める。
【0027】
図5を参照するに、制御装置11では、中央処理装置であるCPU21を有しており、このCPU21には、種々のデータを入力するキーボードのごとき入力手段23や種々のデータを表示するCRTのごとき出力手段25が接続されている。また、CPU21には、後述するデータベース27と、後述する方法によりデータベース27を修正するデータ修正部29と、曲げ加工されたワークWの曲げ角度の実測角度を目標角度と比較する比較判断部31と、上下シリンダ7を制御してパンチPのストロークを制御するストローク指令部33とが接続されている。さらに、変位計13が接続されており、検出信号が伝達されるようになっている。
【0028】
次に、図6〜図10を参照して、この発明に係る曲げ加工方法について説明する。
【0029】
スタートしたら(ステップSS)、曲げ角度θや金型条件であるダイ溝角度DA、ダイV幅V、ダイ肩アールDR、パンチ先端アールPR、また材料条件としてn乗硬化指数、ヤング率E、塑性係数Fおよび板厚t等の曲げ条件を入力する(ステップS1)。
【0030】
図7に示されているようなデータベース27に記憶されている曲げ角度と刃間距離との関係を示すグラフや計算式により、所望の曲げ角度(ここでは90度)に仕上がるような挟み込み角度での刃間距離ST1を求める(ステップS2)。すなわち、このような曲げ角度と刃間距離ST1との関係を示すグラフや計算式では、実際の曲げ角度である仕上がり角度と、予め材料ごとに材料条件からスプリングバック量を計算して考慮した挟み込み角度が示されているので、挟み込み角度を求めることができる。
【0031】
そして、曲げ加工を開始し(ステップS3)、図8に示されているように、変位計13を見ながらステップS2で得られた目標刃間距離ST1への追い込みを行う(ステップS4)。目標刃間距離ST1に達したら除荷する(ステップS5)。
【0032】
パンチPをダイDから離してワークWを取り出し(ステップS6)、仕上がり角度θ´を測定する(ステップS7)。そして、仕上がり角度が公差内か否かを判断して(ステップS8)、公差内であると判断したら、この時の材料条件および曲げ条件に対する最終刃間距離STとして記録して(ステップS9)、終了する(ステップSE)。
【0033】
一方、ステップS8において、公差内でないと判断された場合には、曲げ角度θと刃間距離ST1との関係を修正して修正後の刃間距離ST2を得る(ステップS10)。この修正方法として、ヤング率Eは変化しないと仮定して修正する方法と、n値は変化しないと仮定して修正する方法がある。ここで、目標曲げ角度θが90度の場合を例にとって説明する。
【0034】
まず、図9を参照するに、ヤング率Eすなわちスプリングバックは変化しないと仮定する修正方法では、修正前の目標曲げ角度である90度に対する刃間距離ST1と、実際の仕上がり角度θ´との交点P1を通るように直線を修正する。挟み込み角度と仕上がり角度の角度差が修正前と修正後で変化しないので、目標曲げ角度90度と測定された仕上がり角度θ´との差θ´−90だけ、挟み角度線および仕上がり角度線をずれ量がその時の角度に比例するように一点を中心としてずらす(図9中破線で表示)。その結果、修正後の刃間距離ST2は、目標曲げ角度90度と仕上がり角度の直線との交点P2から得られる。
【0035】
なお、その他挟み角度線および仕上がり角度線をずらす方法として、ずれ量を平行にオフセットする方法や材料定数逆算にて各角度での刃間距離を再計算する方法等がある。
【0036】
また、n値すなわち塑性域は変化しないと仮定する修正方法では、挟み込み角度は変化しないので、図10に示されているように、目標曲げ角度90度と測定された仕上がり角度θ´との差θ´−90だけ、仕上がり角度線をずらす(図10中破線で表示)。
【0037】
なお、仕上がり角度線をずらす方法として、ずれ量がその時の角度に比例するように、一点を中心としてずらす方法の他に、ずれ量を平行にオフセットする方法や材料定数逆算にて各角度での刃間距離を再計算する方法等があるのは、ヤング率Eを変化しないと仮定する方法の場合と同様である。
【0038】
続いて、先に曲げ加工したワークWを再セットして追い込み加工を開始し(ステップS11)、ステップS4に戻って以降の工程を繰り返す。ここで、先に測定された仕上がり角度θ´が90度以下の場合には、すでに曲げすぎているので先に加工したワークWを用いずに、新しいワークWを用いて曲げ加工をやり直す。
【0039】
以上の結果から、第一回目の曲げ加工による曲げ角度を測定して、実測角度と目標角度との差に基づいて、曲げ角度と刃間距離STとの関係を示すグラフや計算式を修正するので、曲げ角度に対する正確な刃間距離STを得ることができる。これにより、同じ材料のワークWに付いて、一度の曲げ加工で正確な角度の曲げ加工を行うことができる。
【0040】
なお、この発明は前述の発明の実施の形態に限定されることなく、適宜な変更を行うことにより、その他の態様で実施し得るものである。
【0041】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、パンチとダイとの協働によりワークの曲げ加工を行う際に、曲げ反力により生じる側板の撓み、上下テーブルの撓み、金型の撓み等の機械系の撓みを考慮しなくてもよいように、ダイに設けられた変位計によりパンチのダイに対する相対的ストローク値を直接検出してパンチのストロークを制御して曲げ加工を行う。この際、ワーク条件、金型条件、目標曲げ角度等の種々の条件を入力し、この入力条件に対応するパンチの相対的ストローク値を予めデータベースに記憶されているところの曲げ角度と、前記変位計において上下動自在な検出ピンの上端部と前記ダイの上面との間の刃間距離との関係を示す計算式のデータにより求め、この相対的ストローク値だけパンチを相対的にストロークさせてダイとの協働により曲げ加工を行う。そして、曲げられたワークを取り出して曲げ角度を実測し、この実測角度と前記目標角度との差が公差内でない場合にはこの差に基づいてデータベースに記憶されている前記計算式のデータを平行移動により修正すると共に追い曲げを行い、実測角度と目標角度との差が公差内に納まるまで繰り返す。これにより、その後同じ条件で曲げ加工を行う場合には、修正された計算式のデータを用いて一度で正確な曲げ角度に曲げ加工を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明に係る曲げ加工装置であるプレスブレーキを示す正面図である。
【図2】図1中II方向から見た側面図である。
【図3】変位計を示す断面図である。
【図4】刃間距離を示す説明図である。
【図5】制御装置の構成を示すブロック図である。
【図6】この発明に係る曲げ加工方法の工程を示すフローチャートである。
【図7】角度と刃間距離の関係を示すグラフである。
【図8】曲げ加工の状態を示す断面図である。
【図9】ヤング率は変化しないと仮定した場合の角度と刃間距離の関係の修正を示すグラフである。
【図10】 n値は変化しないと仮定した場合の角度と刃間距離の関係の修正を示すグラフである。
【図11】従来の曲げ加工装置におけるD値の検出方法を示す説明図である。
【図12】従来より知られている直接D値を測定する変位計を示す断面図である。
【符号の説明】
1 プレスブレーキ(曲げ加工装置)
9 V溝
13 変位計
23 入力手段
27 データベース
29 データ修正部
31 比較判断部
33 ストローク指令部
W ワーク
P パンチ
D ダイ
Claims (2)
- ダイの内部に設けられダイのV溝に突出して上下移動自在の変位計により、パンチのダイに対する相対的ストローク値を直接検出してパンチの相対的ストロークを制御する曲げ加工方法において、曲げ加工されるワーク条件、金型条件、目標曲げ角度等の種々の条件を入力し、予めデータベースに記憶されているところの曲げ角度と、前記変位計において上下動自在な検出ピンの上端部と前記ダイの上面との間の刃間距離との関係を示す計算式のデータから前記入力された条件に対応するパンチの相対的ストローク値を求め、この相対的ストローク値だけパンチを相対的にストロークさせてダイとの協働により曲げ加工を行い、曲げられたワークを取り出して曲げ角度を実測し、この実測角度と前記目標角度との差が公差内でない場合にはこの差に基づいて前記データベースに記憶されている前記計算式のデータを平行移動により修正し、修正後の計算式のデータに基づいてパンチの相対的なストローク値を求め、この求めたストローク値だけパンチを相対的にストロークさせて追い曲げを行い、実測角度と前記目標角度との差が公差内に納まるまで前記計算式のデータの修正および追い曲げを繰り返すこと、を特徴とする曲げ加工方法。
- ダイの内部に設けられダイのV溝に突出して上下移動自在の変位計により、パンチのダイに対する相対的ストローク値を直接検出してパンチの相対的ストロークを制御する曲げ加工装置であって、曲げ加工されるワーク条件、金型条件、目標曲げ角度等の種々の条件を入力する入力手段と、前記入力手段から入力された条件に対応しての曲げ角度と、前記変位計において上下動自在な検出ピンの上端部と前記ダイの上面との間の刃間距離との関係を算出するための計算式のデータを記憶してあるデータベースと、曲げられたワークを取り出して実測した曲げ角度の実測角度と前記目標角度との差が公差内であるか否かを判断する比較判断部と、前記実測角度と前記目標角度との差が公差内でない場合にはこの差に基づいて前記データベースに記憶されている前記計算式のデータを平行移動により修正するデータ修正部と、修正された計算式の計算によって得られたパンチの相対的ストローク値に基づいてパンチを相対的にストロークさせるストローク指令部と、を備えてなることを特徴とする曲げ加工装置。
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